説明

自動車用流量計

【課題】本発明の目的は、センシング部と回路部で温度差が生じた場合においても精度の良い特性が得られる自動車用流量計を提供することにある。
【解決手段】複数個の抵抗で構成したブリッジ回路を有する自動車用流量計において、ブリッジ回路からの出力を補正する演算回路を備え、演算回路には吸気温度センサからの空気温度及び温度センサからのセンサモジュール温度を出力特性の調整要素として取り入れるようにし、空気温度及びセンサモジュール温度の差分に応じた出力特性の温度補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の抵抗で構成したブリッジ回路を有する自動車用流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車用流量計は、センシングした物理情報を電気信号に変換し、エンジンコントロールユニットに出力する。この時、正確な物理情報をエンジンコントロールユニットに出力するため、温度の影響を考慮し温度補正を行っている。そのため、自動車用流量計には1個の温度センサが内蔵され、その温度情報を基に温度補正を行っている場合が多い(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−03704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術の温度補正時においては、センシング部と回路部の温度が同じ場合は、精度の良い温度補正が可能となる。しかし、図4に示すようにエンジン停止後すぐにエンジンを始動した時などは、エンジンからの熱でボディやセンサモジュールの温度は高温となっているのに対し、吸入する空気は、大気温であるためセンシング部周囲の温度は大気温と同じである。このようなセンシング部と回路部で温度差が生じる場合、回路部の温度情報あるいはセンシング部の温度情報のどちらか一方にて温度補正を行うため、センサ出力は温度誤差を持った結果となってしまう。このため、センシング部と回路部で温度差が生じにくいような構造を採用し、この問題に対応していた。しかし構造にて対策を行ったとしても、センシング部と回路部の温度差をゼロにすることは不可能であり、温度差により特性誤差を生じさせてしまっていた。
【0005】
本発明の目的は、センシング部と回路部で温度差が生じた場合においても精度の良い特性が得られる自動車用流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するために、センシング部と回路部に設けた温度センサ出力を用い、出力差に応じて温度補正を実施する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、センシング部と回路部に温度差が生じる場合においても精度の高い出力を供給できる自動車用流量計を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態の回路構成図。
【図2】図1に示す回路のうち出力調整を行う演算回路の機能ブロック図。
【図3】図2に示す機能ブロック図における壁温補正ブロック図。
【図4】壁温状態時の温度分布。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
本発明の第1形態である熱式空気流量計に使用時の回路構成を図1に示す。定温度制御ブリッジ1は、発熱抵抗体素子4,ブリッジ回路温度測定用測温抵抗体5,吸気温度補償用の測温抵抗体6,固定抵抗体7,8より構成される。ヒータ制御回路14は、ブリッジ回路温度測定用測温抵抗体5と吸気温度補償用測温抵抗体6の温度差が一定となるように発熱抵抗体4へ流す電流を制御する。
【0011】
定温度制御ブリッジ1の発熱抵抗体素子4の周囲に、発熱抵抗体素子4から放出される熱量を検出する温度差ブリッジ2が配置される。温度差ブリッジ2は、測温抵抗体9〜12で構成され、空気流量及び方向を検出することができる。
【0012】
空気温度を測定する吸気温度センサ3は、固定抵抗12,温度により抵抗が変化する感温抵抗素子13により構成される。
【0013】
温度差ブリッジ2で検出された流量信号は、個々の回路によりばらつきがあるため目標の出力特性になるように調整する必要がある。また吸気温度センサ3の出力も目標の特性に調整する必要がある。
【0014】
目標出力特性への調整方法としては、2次以上の多項式による調整や、補正マップによる調整が挙げられる。また調整は、外部コンピュータと接続して行うものである。
【0015】
出力特性調整回路27は、ヒータ制御回路及び演算機能が一体となったLSI回路であり、回路全体を駆動するための発振器(以下OSCと称する)20,定温度制御ブリッジ1を制御するヒータ制御回路14,定温度制御ブリッジ1,温度差ブリッジ2,吸気温度センサ3及び出力特性調整回路27を駆動する電源である定電圧回路15,回路チップの温度を検出する温度センサ19,空気流量信号を変換するA/D変換器16,吸気温度センサ3出力信号を変換するA/D変換器17,温度センサ19の出力信号を変換するA/D変換器18,空気流量信号及び吸気温度センサ信号の補正を実施する演算回路(ディジタルシグナルプロセッサ、以下DSPと称す)22,DSP22で演算したデジタル出力値を電圧値へ変換するD/A変換器25,26,出力調整を行うため外部コンピュータと通信を行う通信回路(シリアルコミュニケーションインターフェース、以下SCIと称す)24,調整データを書込む記憶回路(例えばPROM)21を備えている。
【0016】
本実施例におけるDSP22は、図2に示すような出力調整機能を有している。
【0017】
図2の出力調整機能は、基本的にはゼロ点調整後にスパン調整・ノンリニア調整を行う演算回路である。入力信号として流量信号(温度差ブリッジ2出力),回路(センサモジュール)温度(温度センサ19の出力),吸気温度センサ3の出力を出力特性の調整要素として取り込んでいる。調整は、まず温度センサ19の出力と吸気温度センサ3の出力を同じ目標値に調整する。この調整値は任意に設定可能で、温度と目標値をリニアな関係に設定することが望ましい。次に補正後の温度センサ19の出力と補正後の吸気温度センサ3の出力差を計算し、その差に応じた補正を壁温補正マップのデータを用いて流量信号を補正する。最後に、補正後の温度センサ19の出力あるいは補正後の吸気温度センサ3の出力に応じた補正を出力補正マップのデータを用いて流量信号を補正し、流量信号を目標値に合わせる。また同時に、補正後の吸気温度センサ3の出力は、温度信号として出力される。また本補正は、マップによる補正のみでなく、多項式による補正でも対応可能である。多項式による補正のメリットとしては、記憶回路21の容量が小さくて済むことであり、容量が小さければチップサイズの縮小が可能となり低コストができる。またマップによる補正のメリットとしては、入力に対する補正量の急激な変化に対応可能であり、高精度化が可能となる点である。
【0018】
次に吸気温度と回路温度に差が生じた場合(以下壁温状態と称す)の本実施例における出力調整を図3に示す。壁温状態では、吸気温度センサ出力Taと温度センサの出力Tsに差が生じる。その差を比較し、その結果を元に壁温補正マップの補正量を選択する。さらに、その出力差に応じてマップ補正値にゲインを加える。ここで、吸気温度センサ出力Taと温度センサ出力Tsに差がない状態では、壁温補正量はゼロとなる。
【符号の説明】
【0019】
1 定温度制御ブリッジ
2 温度差ブリッジ
3 吸気温度センサ
4 発熱抵抗体素子
5 ブリッジ回路温度測定用測温抵抗体
6 吸気温度補償用の測温抵抗体
7,8 固定抵抗体
9〜12 測温抵抗体
13 感温抵抗素子
14 ヒータ制御回路
15 定電圧回路
16〜18 A/D変換器
19 温度センサ
20 発振器
21 記憶回路(PROM)
22 ディジタルシグナルプロセッサ
24 通信回路(SCI)
25,26 D/A変換器
27 出力特性調整回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の抵抗で構成したブリッジ回路を有する自動車用流量計において、
前記ブリッジ回路からの出力を補正する演算回路を備え、前記演算回路には空気温度及びセンサモジュール温度を出力特性の調整要素として取り入れるようにし、前記空気温度及び前記センサモジュール温度の差分に応じた出力特性の温度補正を行うことを特徴とする自動車用流量計。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用流量計において、前記空気温度及び前記センサモジュール温度の差分に応じた出力特性の温度補正を2次以上の補正式により行うことを特徴とする自動車用流量計。
【請求項3】
請求項1に記載の自動車用流量計において、前記空気温度及び前記センサモジュール温度の差分に応じた出力特性の温度補正を専用のマップにより行うことを特徴とする自動車用流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−216906(P2010−216906A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62224(P2009−62224)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】