説明

自動車用発熱部品の冷却構造

【課題】車室内の静音性を高く維持できる自動車用発熱部品の冷却構造を提供する。
【解決手段】冷却構造は、車室内に配設した発熱部品と、該発熱部品にダクトを介して空気を送り該空気との熱交換によって前記発熱部品を冷却する送風装置37と、を備えている。リアドア15に車室内側に向けて突出するアームレスト21および小物入れ23を設け、前記送風装置37のダクトの前端に設けたダクト吸気口85を、前記アームレスト21および小物入れ23の後端に設けた後面25に近接して対向配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用発熱部品の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の観点から電気自動車やハイブリッド車等が注目されている。これらの車両には、通電によって発熱する発熱部品、例えばバッテリ等が搭載されており、発熱部品を冷却するために種々の冷却装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1においては、車室後部のトランクルーム内に発熱部品であるバッテリを収容し、このトランクルームの上部にパーセルシェルフを設け、送風装置のダクトにおける吸気口を前記パーセルシェルフに形成した開口部に取り付けている。これによって、前記開口部から吸気口およびダクトを介して空気を吸入しバッテリを冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−141945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の送風装置においては、送風装置のダクトの吸気口が後席に着座した乗員の耳位置近くに配置されているため、車室内の静音性が低下するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、車室内の静音性を高く維持できる自動車用発熱部品の冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動車用発熱部品の冷却構造では、車室内に設けた発熱部品にダクトを介して車室内の空気を送って前記発熱部品を冷却する送風装置を設けている。ドアに車室内側に向けてアームレストを突設し、前記送風装置のダクトの先端に設けたダクト吸気口を、前記アームレストの後面に近接して対向配置させている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る自動車用発熱部品の冷却構造によれば、ダクト吸気口が後席に着座した乗員の耳位置から離間した位置に配置されるため、空気の吸い込み音が乗員に聞こえにくくなり、車室内の静音性が向上する。また、乗員からはダクト吸気口が見えにくくなり、車室内の見映えが向上するという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態による車両室内の後部を斜め前方から見た斜視図である。
【図2】図1を車両前方から見た正面図である。
【図3】図1を車両左側から見た側面図である。
【図4】シートバック側部の近傍を拡大した断面図である。
【図5】本発明の実施形態による発熱部品を後方から前方に向けて見た背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0011】
図1〜図4に示すように、車両室内の後部には、リアシート1が配設されている。リアシート1は、フロアパネル3に取り付けられたシートクッション5と、該シートクッション5に対して前後方向に回動可能に支持されたシートバック7と、該シートバック7の上端に配設されたヘッドレスト9と、を備えている。前記シートバック7は、車幅方向および上下方向に延在するシートバック本体部11と、該シートバック本体部11の左右両端に配設され、車両斜め前方に向けて延在するシートバック側部13と、を備えている。
【0012】
前記リアシート1の側方には、前端を中心に開閉可能なリアドア15が配設されている。このリアドア15の車室内側にはドアトリム17が配設されており、ドアトリム17には車室内側に向けて突出するアームレスト21と小物入れ23が形成されている。これらのアームレスト21と小物入れ23は、車両前後方向に沿って延設されており、後端に後面25が形成されている。
【0013】
さらに、リアシート1の後側には、トランクルーム27が配設されている。このトランクルーム27は、シートバック7の上端高さに配置されて前後方向および車幅方向に沿って延設されたパーセルシェルフ29と、フロアパネル3と、シートバック7と、によって画成されている。
【0014】
このトランクルーム27には、発熱部品31であるバッテリ33とDC/DCコンバータ35が配設されている。ここで、バッテリ33とDC/DCコンバータ35は、通電することによって発熱する電気部品である。そして、前記バッテリ33とDC/DCコンバータ35は、本実施形態による送風装置37で送られる空気と熱交換することによって冷却される。
【0015】
ここで、バッテリ33とDC/DCコンバータ35との搭載状態について説明する。
【0016】
前記パーセルシェルフ29の前端部は、折れ曲がって下方に延びる上端取付部39に形成されており、フロアパネル3の段差部41には車幅方向に沿ってフロアメンバ43が接合されている。一方、上下方向に沿って延在する支持メンバ45が車幅方向に所定間隔をおいて3本配置され、これらの上端および下端はボルトを介して前記上端取付部39およびフロアメンバ43に締結されている。そして、正面視矩形状の支持板47が前記支持メンバ45の後側に接合されており、この支持板47に、前記バッテリ33を収容したバッテリケース49およびDC/DCコンバータ35を収容したDC/DCコンバータケース51が取り付けられている。
【0017】
具体的には、支持板47の後側にバッテリケース49が取り付けられ、該バッテリケース49の後側にDC/DCコンバータケース51が取り付けられている。なお、バッテリ内には複数のセル53が配設されている。また、フロアパネル3の段差部41の上に支持台55が設けられ、該支持台55の上にバッテリケース49が載置されている。従って、シートバック7、支持メンバ45、支持板47、バッテリケース49およびDC/DCコンバータケース51は全て、車両後方に向かうにつれて斜め上方に延びるように傾斜配置されている。なお、フロアパネル3の車幅方向両端部の下側には、車両前後方向に沿ってサイドメンバ93およびサイドシル95が設けられている。
【0018】
前記シートバック本体部11の後側からシートバック側部13にかけて本実施形態による送風装置37が配設されている。具体的には、送風装置37は、バッテリ33およびDC/DCコンバータ35の上端部に連結されてこれらに空気を送り込むエア排出部61と、該エア排出部61に接続されてバッテリケース49およびDC/DCコンバータケース51の側方に配置された送風機63と、該送風機63に接続されてほぼ車両前後方向に延びるダクト65と、を備えている。
【0019】
前記ダクト65は、送風機63に接続されて車幅方向に延びる連結部67と、該連結部67に接続された接続部69と、該接続部69から車幅方向端の屈曲部71まで延びる湾曲部73と、前記屈曲部71から車両前方に延びるダクト先端部75とから構成されている。前記湾曲部73は、平面視で、接続部69と屈曲部71とを結ぶ直線に対して車室内側に向けて円弧状に凹んで形成されており、ホイールハウス81にブラケット83を介して取り付けられている。また、前記ダクト先端部75の前端には、車室内の空気を吸い込むグリル状のダクト吸気口85が設けられている。このダクト吸気口85は、後席に着座した乗員の耳位置から離間して配置されており、鉤型クリップ87を車体側の係止片89に差し込んで係止されている。また、前述したように、アームレスト21および小物入れ23の後端には、後面25が形成されており、前記ダクト吸気口85はこの後面25に近接して対向配置されている。なお、前記ダクト65における湾曲部73は、車両側方から見ると、車両後方に向かうにつれて斜め上方に傾斜して配置されている。
【0020】
図5に示すように、DC/DCコンバータケース51の内部には、車両左側にDC/DCコンバータ35が配設され、車両右側に中継盤91が配設されている。これらのDC/DCコンバータ35および中継盤91は、通電することによって発熱する発熱部品31である。
【0021】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0022】
(1)本実施形態による自動車用発熱部品の冷却構造は、車室内に配設した発熱部品31と、該発熱部品31にダクト65を介して車室内の空気を送り該空気との熱交換によって前記発熱部品31を冷却する送風装置37と、を備えた自動車用発熱部品の冷却構造である。リアドア15に車室内側に向けて突出するアームレスト21および小物入れ23を設け、前記送風装置37のダクト65の先端に設けたダクト吸気口85を、前記アームレスト21および小物入れ23の後端に設けた後面25に近接して対向配置している。
【0023】
従って、ダクト吸気口85が後席に着座した乗員の耳位置から離間した位置に配置されるため、空気の吸い込み音が乗員に聞こえにくくなり、車室内の静音性が向上する。また、乗員からはダクト吸気口85が見えにくくなり、車室内の見映えが向上するという効果がある。
【0024】
(2)前記送風装置37のダクト65の少なくとも一部である湾曲部73を、後方に向かうにつれて斜め上方に延在するように傾斜配置している。
【0025】
従って、仮にダクト吸気口85から雨水等が浸入した場合であっても、重力によって湾曲部73に溜まるため、発熱部品31まで送られることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0026】
15…リアドア(ドア)
21…アームレスト
23…小物入れ
25…後面
31…発熱部品
33…バッテリ(発熱部品)
35…DC…DC/コンバータ(発熱部品)
37…送風装置
65…ダクト
85…ダクト吸気口
91…中継盤(発熱部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に配設した発熱部品と、該発熱部品にダクトを介して車室内の空気を送り該空気との熱交換によって前記発熱部品を冷却する送風装置と、を備えた自動車用発熱部品の冷却構造であって、
ドアに車室内側に向けて突出するアームレストを設け、前記送風装置のダクトの先端に設けたダクト吸気口を、前記アームレストの後面に対向して配置したことを特徴とする自動車用発熱部品の冷却構造。
【請求項2】
前記送風装置のダクトの少なくとも一部を、後方に向かうにつれて斜め上方に延在するように傾斜配置したことを特徴とする請求項1に記載の自動車用発熱部品の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210878(P2012−210878A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77997(P2011−77997)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】