説明

自動車車両のステアリングキックバック抑制システム

【課題】低コストで簡易な機構によってキックバックを抑制することができる自動車車両のステアリングキックバック抑制システムを提供する。
【解決手段】ステアリング系に入力されたキックバックを利用して発電を行う電源部と、前記電源部において発電された電力を用いて前記ステアリングシャフトの転舵を抑制する転舵抑制装置と、を備えることを特徴とする自動車車両のステアリングキックバック抑制システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車両のステアリングキックバック抑制システムに係り、特に、路面状況などに応じて外部から操舵輪となるタイヤに作用する力がステアリングのキックバックとして入力された力を利用して電力を発生し、この電力を用いてキックバックを抑制することを行う自動車車両のステアリングキックバック抑制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の自動車車両に路面からの段差を踏むなどして外部から操舵輪となるタイヤに力が作用するとステアリングのキックバックが発生し、これが入力されると運転時の乗り心地が損なわれる。また、大きなのキックバックが入力するとステアリングが急激に転舵させられて運転者の意図しない方向に車両が進行してしまい、安全性に問題が生じる場合がある。
【0003】
かかる問題を解決するため、運転者の操縦に応じたステアリングホイールの回転に基づき前輪を転舵させるステアリング系と、該ステアリング系の剛性を可変制御できる可変剛性手段と、ステアリング操舵角を検出するステアリング操舵角検出手段と、該ステアリング操舵角検出手段の検出信号を入力し、ステアリング操舵角が小さくなるに従って前記ステアリング系の剛性が高くなるように前記可変剛性手段を制御する剛性制御手段とを備える装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この装置によればステアリング操舵角が小さくなるに従ってステアリング剛性を高くするように制御してキックバックの低減を実現することができる。
【特許文献1】特開平8−230693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この装置は構造が複雑であるので組立工数が増加すると共に、組立工程が煩雑となるので生産効率の低下を招く。また、装置の構造が複雑となる結果、部品点数の増加が生じ、高価なものとなり、製造コストの増加を招くことになる。
【0006】
本発明の課題は、低コストで簡易な機構によってキックバックを抑制することができる自動車車両のステアリングキックバック抑制システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システムは、ステアリング系に入力されたキックバックを利用して発電を行う電源部と、前記電源部において発電された電力を用いて前記ステアリングシャフトの転舵を抑制する転舵抑制装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システムにおいて、前記電源部と前記転舵抑制装置との間には、前記電源部において発生した電力の電圧を上昇させる変圧器が備えられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システムにおいて、前記電源部と前記転舵抑制装置との間には作動装置が配置され、前記作動装置には、前記電源部と前記変圧器とにそれぞれ並列接続されている、前記電源部に対してカソード側を向けて接続されているダイオードと、前記電源部に対してアノード側を向けて接続されているダイオードと、が備えられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システムにおいて、ステアリングギアボックスに収納されたラック軸に取り付けられている永久磁石と、車両の直進時に前記永久磁石が内側に位置するように前記ステアリングギアボックスに巻き付けられていると共に、前記永久磁石が移動することにより誘導起電力を生じさせる起電力コイルと、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システムにおいて、前記電源部は、ステアリングシャフトの軸方向に並行に形成された複数の溝に噛み合う歯部が形成された回転板が供えられていると共に、前記ステアリングシャフトの回転に対応して前記回転板が回転することにより発電を行うモータと、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システムにおいて、前記転舵抑制装置は、前記ステアリングシャフトが貫通するフリクションケースと、前記ステアリングケース内に充填されている磁性流体と、前記電源部により発生させられた電力により磁力を発生させた磁力を前記磁性流体に及ぼすことにより前記磁性流体に粘性抵抗を生じさせて前記ステアリングシャフトの転舵を抑制する磁性流体用電磁石と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システムにおいて、前記転舵抑制装置は、前記ステアリングギアボックス内に設けられた前記ラック軸が貫通している磁性流体充填領域と、前記磁性流体充填領域に充填された磁性流体と、前記電源部により発生させられた電力により磁力を発生させた磁力を前記磁性流体に及ぼすことにより前記磁性流体に粘性抵抗を生じさせて前記ステアリングシャフトの転舵を抑制する磁性流体用電磁石と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システムにおいて、前記転舵抑制装置は、前記ステアリングシャフトによって貫通されていると共に、前記ステアリングシャフトの転舵を抑制する転舵抑制用電磁石であることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システムにおいて、前記作動装置には、前記電源部から入力される電力により順方向電圧がかけられるように接続されているダイオードの前記電源部側には可変抵抗が直列接続されていると共に、前記電源部から入力される電力により逆方向電圧がかけられるように接続されているダイオードの変圧器側には前記可変抵抗が直列接続されていることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システムにおいて、前記変圧器には、前記磁性流体用電磁石又は前記転舵抑制用電磁石と並列接続された可変抵抗器が備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、複雑な回路構成を必要とせず、簡易な回路構成を持つシステムによりキックバックを抑制することができる。
【0018】
また、請求項1に記載の発明によれば、キックバックの入力を利用してキックバック抑制システムを駆動させるので外部電源を必要とせずシステム構成を簡易なものとすることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、電源部で発生した電力が小さなものでも変圧器により電圧を大きなものとすることができるのでキックバック抑制システムを駆動させるのに十分な電力を確保することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、作動装置に一定以上の電圧がかかった場合のみに電流を通電させることとすることで、運転に支障を生じさせない程度のキックバックが生じた場合にキックバック抑制システムが作動することを防止し、運転の質感を保つことができる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明によれば、それぞれ異なる方向にアノード又はカソードを向けてダイオードが並列接続されている為、キックバックによる入力される交流電流の向きがいずれの方向であっても、いずれかダイオードの不感帯Xの部分を閾値として用いてキックバック抑制システムの駆動を制御することができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、ラック軸がキックバックにより移動することを利用して永久磁石を起電力コイルの内側を移動させて誘導起電力を生じさせ、その誘導起電力をキックバック抑制システムを駆動させる電力に用いるので外部電源が不用となり簡易なシステム構成をとることができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、キックバックの入力により生じるステアリングシャフトの回転をモータに伝達してキックバック抑制システムを駆動するのに必要な電力を生じさせるという構成により電力を発生させることを可能としているので、当初はキックバック抑制システムが搭載されていない自動車車両にも簡易にキックバック抑制システムの電源を取り付けることができる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、電磁石により磁性流体に磁力を及ぼして磁性流体の粘性抵抗を上げることにより磁性流体内にあるステアリングシャフトが回転を抑制し、キックバンクを抑制することを可能にする。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、電磁石により磁性流体に磁力を及ぼして磁性流体の粘性抵抗を上げて、磁性流体内にあるラック軸の移動を抑制してラックよりピニオンに入力されたキックバックが伝達されるのを防止することでステアリングシャフトが転舵することを抑制することを可能とする。
【0026】
また、請求項7に記載の発明によれば、キックバックの抑制装置をステアリングギアボックスの中に収納することで自動車車両内の省スペース化を図ることが可能となり、車両内の設計の自由度を向上させることができる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、電磁石によって生じさせる磁力によってステアリングシャフトに回転抵抗をかけ、キックバックの抑制を行うことができる。
【0028】
また、請求項8に記載の発明によれば、電磁石が発する磁力そのものによりステアリングシャフトに回転抵抗をかけるので、磁性流体を用いる必要が無くなり、磁性流体が充填された容器から磁性流体がこぼれることを防ぐ為の措置をとる必要が無くなり、組立工数を減少させることができ、生産効率を向上させることができる。
【0029】
請求項9に記載の発明によれば、作動装置のそれぞれのダイオードには可変抵抗を設けることで、キックバック抑制システムの作動する電流の値を調整できることとなり、キックバックが大入力の場合のみキックバック抑制システムを作動させるレベルを任意に設定することができる。
【0030】
請求項10に記載の発明によれば、転舵角に応じて電磁石に流れ込む電流の量を調整して電磁石により発生させられる磁力を調整することを可能とすることで、転舵角に応じてステアリングシャフトの回転抑制力を加えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第一の実施形態)
以下において、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0032】
図1は、キックバック抑制システム1の概略構成図である。起電力コイル2を貫通するステアリングギアボックス3にはラック4が取り付けられたラック軸5が備えられている。このラック軸5の両端には、それぞれ図示しないサイドロッド及びナックルアームに連結されており、ラック軸5の移動はサイドロッド及びナックルアームを経て回転運動に変換され、図示しないタイヤが転舵することとなっている。またステアリングギアボックス3には、車両の直進時には起電力コイル2の内側に位置するように永久磁石6が取り付けられている。即ち、永久磁石6が起電力コイル2の内側を移動することによって誘導起電力を生じさせることで、電源部としての役割を果たすようになっている。
【0033】
起電力コイル2の一端には、作動装置9が接続されている。作動装置9は、例えば、起電力コイル2に並列接続されていると共に、起電力コイル2から入力される電力により順方向電圧がかけられるように接続されているダイオード10と、起電力コイル2から入力される電力により逆方向電圧がかけられるように接続されているダイオード11とが備えられている。
【0034】
ダイオード10,11は、起電力コイル2から入力された電流の電圧が所定以上の値の場合に電流を通電させるようになっている。即ち、図2に示すように、ダイオードに順方向電圧がかかり、順方向電圧が不感帯Xを越える値となった場合に電流を流すようになっている。これによって、入力されたキックバックが運転の質に影響を及ぼす場合や運行の安全性に問題を生じさせる程度の大きさの場合にのみキックバック抑制システムを駆動させることができるようにすることが可能となる。
【0035】
また、作動装置9には、図1に示すようにダイオード10のカソード側には可変抵抗器12を直列接続され、ダイオード11のカソード側には可変抵抗器13を直列接続されている。作動装置9に可変抵抗器12,13を備えることによってダイオード10,11に入力される電圧の大きさを調節することが可能になる為、可変抵抗器12,13の抵抗値の設定を変更することによりどの程度のキックバックの入力によってキックバック抑制システムを駆動させるかを任意に設定することができるようになっている。
【0036】
なお、ここで用いる可変抵抗器12,13は、例えば、それぞれ図示しない操作盤を操作することにより抵抗値を変化させることができる。
【0037】
また、図1に示すように、ダイオード10及び可変抵抗器13は変圧器14に接続されている。変圧器14には、一次コイル15及び二次コイル16が備えられている。一次コイル15の一端には、ダイオード10及び可変抵抗器13が並列接続されており、一次コイル15の他端には起電力コイル2が接続されている。また、二次コイル16の巻数は一次コイル15の巻数よりも多くなっており、一次コイル15に起電力コイル2から加わる一次電圧は、二次コイル16において一次電圧より高い電圧に変換されるようになっている。二次コイル16の一端には、転舵抑制装置19及び可変抵抗器20が並列接続されている。
【0038】
転舵抑制装置19は、ステアリングシャフト21及びステアリングシャフト21の近傍に配置された第一磁性流体用電磁石22、第一磁性流体用電磁石22に直列接続された第二磁性流体用電磁石23、ステアリングシャフト21が貫通するフリクションケース24及び、フリクションケース24に充填された磁性流体25を備えて構成されている。このうち、第一磁性流体用電磁石22及び第二磁性流体用電磁石23は、その発生させた磁力を磁性流体25に十分及ぼすことができる程度にフリクションケース24の近傍に配置されている。
【0039】
第一磁性流体用電磁石22は、二次コイル16に対して可変抵抗器20の一端とともに並列接続されている。また、第二磁性流体用電磁石23には、二次コイル16の他端及び可変抵抗器20の他端が並列接続されている。
【0040】
第一磁性流体用電磁石22及び第二磁性流体用電磁石23に通電されると、第一磁性流体用電磁石22及び第二磁性流体用電磁石23はそれぞれ磁力を生じ、その生じた磁力によってフリクションケース24内の磁性流体の粘性抵抗が高まりステアリングシャフト21の転舵が抑制されるようになっている。
【0041】
また、転舵抑制装置としては、図3に示すような転舵抑制用電磁石26を用いることとしてもよい。転舵抑制用電磁石26は、ステアリングシャフト21の周方向を囲むように配置されている。転舵抑制用電磁石26の一端には、可変抵抗器20と共に二次コイル16に対して並列接続されている。また、転舵抑制用電磁石26の多端には、可変抵抗器20の他端及び二次コイル16の他端が並列接続されている。
【0042】
そして、転舵抑制用電磁石26に通電がなされると、転舵抑制用電磁石26から磁力が生じ、その磁力がステアリングシャフト21に及びステアリングシャフト21の転舵が抑制されるようになる。
【0043】
ステアリングシャフト21の基端部にはピニオン29が備えられており、ピニオン29はラック軸5と噛み合わされている。
【0044】
また、図4に示すようにラック4又はステアリングシャフト21には、ステアリング舵角検出部30が接続されている。
【0045】
ステアリング舵角検出部30は、例えば、ピニオン29上を転動するラック4の移動量を検出すること、または、ステアリングシャフト21の回転量を検出することでステアリングの舵角を検出するようになっている。そして
【0046】
また、ステアリング舵角検出部30は、例えば可変抵抗器20により構成されており、舵角が小さい時には抵抗が小さくなり、舵角が大きくなるほど抵抗が大きくなるような設定がされている。
【0047】
即ち、図5に示すように、転舵角が大きくなるにつれて可変抵抗器20は流れる電流の量を多くして、ステアリングシャフト21の転舵を抑制する抑制力を大きくするようになっている。
【0048】
なお、作動装置9は、図6に示すように二次コイル側に配置することとしてもよい。このことは以下の実施形態においても同様である。
【0049】
以下において、本実施の形態の作用について説明する。なお、以下においては、自動車の前輪にキックバックの入力があった場合には、ステアリングギアボックス3は、車両進行方向左側に急激に移動させられるものとする。また、起電力コイル2より流れる誘導電流Iの電圧は、ダイオード11に対して順方向電圧をかける方向に流れると共に、ダイオード11の不感帯Xの値を超えるものとする。
【0050】
自動車が進行中に車両の前輪にキックバックが入力されるとステアリングギアボックスが急激に車両進行方向左側に移動する。その結果、ラック軸5と噛み合っているピニオン29が回転を開始し、それと同時にステアリングシャフト21も回転を開始する。また、とステアリングギアボックス3が急激に車両進行方向左側に移動することにより起電力コイル2内に位置している永久磁石6も起電力コイル2内を車両進行方向左側に移動し誘導起電力が生じ、起電力コイル2から誘導電流Iが作動装置9に向かって流れる。
【0051】
そして、誘導電流Iが作動装置9のダイオード11に入力し、ダイオード11に所定値以上の電圧がかかるとダイオード11は誘導電流Iを流し始める。ダイオード11を通過した誘導電流Iは可変抵抗器13によって電圧が所定値減ぜられた後に変圧器14に入力される。そして、変圧器14内の一次コイルに誘導電流Iが流れ込むと一次コイル15には所定の電圧がかかる。それとほぼ同時に二次コイル16にも誘導起電力が生じ誘導電流Iの電圧は上昇させられる。
【0052】
一方、キックバックが入力されるとピニオン29上をラック4が転動する。ステアリング舵角検出部30はラック4の転動量、またはステアリングシャフト21の回転量よりステアリング舵角検出部30を構成する可変抵抗器20の抵抗値を設定する。
【0053】
そして、誘導電流Iは、可変抵抗器20において電圧を調整された後に、第一磁性流体用電磁石22及び第二磁性流体用電磁石23に入力し、第一磁性流体用電磁石22及び第二磁性流体用電磁石23は磁力を生じさせる。その結果、フリクションケース24内の磁性流体25は粘性抵抗を増加させ、ステアリングシャフト21の回転が抑制されるようになる。
【0054】
以上のように、本実施の形態にかかる発明によれば、複雑な回路構成を必要とせず、簡易な構成によりキックバックを抑制することができる。
【0055】
また、キックバックの入力を利用してキックバック抑制システム1を駆動させるので外部電源を必要とせずシステム構成を簡易なものとすることができる。
【0056】
また、起電力コイル2で発生した電力が小さなものでも変圧器14により電圧を大きなものとすることができるのでキックバック抑制システム1を駆動させるのに十分な電力を確保することができる。
【0057】
また、ラック軸がキックバックにより移動することを利用して永久磁石6を起電力コイル2の内側を移動させて誘導起電力を生じさせ、その誘導起電力をキックバック抑制システム1を駆動させる電力に用いるので外部電源が付与うとなり簡易なシステム構成をとることができる。
【0058】
(第二の実施形態)
以下において、図面を参照しつつ第二の実施形態について説明する。なお、第二の実施形態の説明においては、第一の実施形態と共通する部分については説明を省略し、第二の実施形態の特徴的な部分について説明する。
【0059】
図7は、キックバック抑制システム40の概略構成図である。起電力コイル2を貫通するステアリングギアボックス3には、ラック4が取り付けられているラック軸5が備えられている。
【0060】
また、ラック軸5には、車両の直進時に起電力コイル2の内側に位置するように永久磁石6が取り付けられている。本実施の形態においても、永久磁石6が起電力コイル2の内側を移動することによって誘導起電力を生じさせることで、電源部としての役割を果たすようになっている。
【0061】
また、起電力コイル2の一端には、作動装置9が接続されている。作動装置9は、起電力コイル2から入力された電流が所定以上の値の場合にのみ、電流を通電させるようになっている。
【0062】
ダイオード10,11は、起電力コイル2から入力された電流の電圧が所定以上の値の場合にのみ、電流を通電させるようになっている。また、作動装置9には図7に示すように、ダイオード10のカソード側には可変抵抗器12を直列接続され、ダイオード11のカソード側には可変抵抗器13を直列接続されている。
【0063】
図7に示すように、ダイオード10及び可変抵抗器13は変圧器14に接続されている。変圧器14には、一次コイル15及び二次コイル16が備えられている。一次コイル15の一端には、ダイオード10及び可変抵抗器13が並列接続されており、一次コイル15の他端には起電力コイル2が接続されている。また、二次コイル16の巻数は一次コイル15の巻数よりも多くなっており、一次コイル15に起電力コイル2から加わる一次電圧は、二次コイル16において一次電圧より高い電圧に変換されるようになっている。
【0064】
二次コイル16の一端には、転舵抑制装置45及び可変抵抗器20が並列接続されている。
【0065】
転舵抑制装置45は、ステアリングシャフト21及びステアリングシャフト21の近傍に配置された第一磁性流体用電磁石22、第一磁性流体用電磁石に直列接続された第二磁性流体用電磁石23、ステアリングギアボックス3内に設けられた仕切り板41,42によって仕切られた磁性流体充填領域43及び、磁性流体充填領域43に充填された磁性流体25によって構成されている。このうち、第一磁性流体用電磁石22及び第二磁性流体用電磁石23は、その発生させた磁力を磁性流体25に十分及ぼすことができる程度にステアリングギアボックス3の近傍に配置されている。
【0066】
第一磁性流体用電磁石22は、変圧器14に対して可変抵抗器20の一端とともに並列接続されている。また、第二磁性流体用電磁石23には、二次コイル16の他端及び可変抵抗器20の他端が並列接続されている。
【0067】
第一磁性流体用電磁石22及び第二磁性流体用電磁石23に通電されると、第一磁性流体用電磁石22及び第二磁性流体用電磁石23はそれぞれ磁力を生じ、その生じた磁力によって磁性流体充填領域43内の磁性流体25の粘性抵抗が高まり、ラック軸5の移動が抑制されることによってラック4の移動が抑制されるため、ラック4と噛み合っているピニオン29の転動も抑制されるのでステアリングシャフト21の転舵が抑制されるようになっている。
【0068】
また、転舵抑制装置としては、転舵抑制用電磁石を用いることとしてもよい。転舵抑制用電磁石は、ステアリングシャフト21の周方向を囲むように配置されている。転舵抑制用電磁石の一端には、可変抵抗器20と共に二次コイル16に対して並列接続されている。また、転舵抑制用電磁石の他端には、可変抵抗器20の他端及び二次コイル16の他端が並列接続されている。
【0069】
また、二次コイル16の他端には、第二磁性流体用電磁石23及び可変抵抗器20が並列接続されている。また、ステアリングシャフト21の基端部にはピニオン29が備えられており、ピニオン29はラック軸5と噛み合わされている。
【0070】
また、図4に示すようにラック4またはステアリングシャフト21にはステアリング舵角検出部30が接続されており、ステアリング舵角検出部30は可変抵抗器20により構成されている。
【0071】
以下において、本実施の形態の作用について説明する。なお、以下においては、自動車の前輪にキックバックの入力があった場合には、ステアリングギアボックス3は、車両進行方向左側に急激に移動させられるものとする。また、起電力コイル2より流れる誘導電流Iの電圧は、ダイオード11に対して順方向電圧をかける方向に流れると共に、ダイオード11の不感帯Xの値を超えるものとする。
【0072】
自動車が進行中に車両の前輪にキックバックが入力されるとステアリングギアボックスが急激に車両進行方向左側に移動する。その結果、ラック軸5と噛み合っているピニオン29が回転を開始し、それと同時にステアリングシャフト21も回転を開始する。また、とステアリングギアボックス3が急激に車両進行方向左側に移動することにより起電力コイル2内に位置している永久磁石6も起電力コイル2内を車両進行方向左側に移動し誘導起電力が生じ、起電力コイルのS極側から誘導電流Iが作動装置9に向かって流れる。
【0073】
そして、誘導電流Iが作動装置9のダイオード11に入力し、ダイオード11に所定値以上の電圧がかかるとダイオード11は誘導電流Iを流し始める。ダイオード11を通過した誘導電流Iは可変抵抗器13によって電圧が所定値減ぜられた後に変圧器14に入力される。そして、変圧器14内の一次コイルに誘導電流Iが流れ込むと一次コイル15には所定の電圧がかかる。それとほぼ同時に二次コイル16にも誘導起電力が生じ誘導電流Iの電圧は上昇させられる。
【0074】
その後、誘導電流Iは可変抵抗器20に入力され、電圧を調整された後、第一磁性流体用電磁石22及び第二磁性流体用電磁石23に入力し、第一磁性流体用電磁石22及び第二磁性流体用電磁石23は磁力を生じさせる。
【0075】
その結果、ステアリングギアボックス3内の磁性流体充填領域43内の磁性流体25は粘性抵抗を増し、ラック軸5の移動が抑制される。その結果、ステアリングシャフト21の基端部に取り付けられたピニオン29が転動することも抑制される抑制されるのでステアリングシャフト21の転舵も抑制される。
【0076】
以上のように、本実施の形態にかかる発明によれば、複雑な回路構成を必要とせず、簡易な構成によりキックバックを抑制することができる。
【0077】
(第三の実施形態)
以下において、図面を参照しつつ第三の実施形態について説明する。なお、第三の実施形態の説明においては、第一の実施形態と共通する部分については説明を省略し、第三の実施形態の特徴的な部分について説明する。
【0078】
図8は、キックバック抑制システム50の概略構成図である。ステアリングシャフト21には、図9に示すようにステアリングシャフト21の回転に応じて電流を生じさせるモータ51が配置されている。モータ51は、回転板52が所定以上の速度で回転した場合にのみ発電を行うようになっている。即ち、本実施の形態においては、ステアリングシャフト21の回転を利用してモータ51を回転させて電力を生じさせることで、電源部としての役割を果たすようになっている。
【0079】
モータ51の一端は、作動装置9が接続されている。作動装置9は、起電力コイル2から入力された電流が所定以上の値の場合に電流を通電させるようになっている。作動装置9は、起電力コイル2から入力された電流が所定以上の値の場合にのみ、電流を通電させるようになっている。
【0080】
ダイオード10,11は、起電力コイル2から入力された電流が所定以上の値の場合にのみ、電流を通電させるようになっている。また、作動装置9には図8に示すように、ダイオード10のカソード側には可変抵抗器12を直列接続され、ダイオード11のカソード側には可変抵抗器13を直列接続されている。
【0081】
また、図8に示すように、ダイオード10及び可変抵抗器13は変圧器14に接続されている。変圧器14には、一次コイル15及び二次コイル16が備えられおり、一次コイル15の一端には、モータ51の他端が接続されている。また、一次コイル15の他端には、ダイオード10及び可変抵抗器13が並列接続されており、一次コイル15の他端にはモータ51が接続されている。また、二次コイル16の巻数は一次コイル15の巻数よりも多くなっており、一次コイル15にモータ51から加わる一次電圧は、二次コイル16において一次電圧より高い電圧に変換されるようになっている。
【0082】
二次コイル16の一端には、転舵抑制装置19及び可変抵抗器20が並列接続されている。
【0083】
転舵抑制装置19は、ステアリングシャフト21及びステアリングシャフト21の近傍に配置された第一磁性流体用電磁石22、第一磁性流体用電磁石22に直列接続された第二磁性流体用電磁石23、ステアリングシャフト21が貫通するフリクションケース24及び、フリクションケース24に充填された磁性流体25を備えて構成されている。このうち、第一磁性流体用電磁石22及び第二磁性流体用電磁石23は、その発生させた磁力を磁性流体25に十分及ぼすことができる程度にフリクションケース24の近傍に配置されている。
【0084】
第一磁性流体用電磁石22は、変圧器14に対して可変抵抗器20の一端とともに並列接続されている。また、第二磁性流体用電磁石23には、二次コイル16の他端及び可変抵抗器20の他端が並列接続されている。
【0085】
また、転舵抑制装置としては、転舵抑制用電磁石を用いることとしてもよい。転舵抑制用電磁石は、ステアリングシャフト21の周方向を囲むように配置されている。転舵抑制用電磁石の一端には、可変抵抗器20と共に二次コイル16に対して並列接続されている。また、転舵抑制用電磁石の他端には、可変抵抗器20の他端及び二次コイル16の他端が並列接続されている。
【0086】
ステアリングシャフト21の基端部にはピニオン29が備えられており、ピニオン29はラック軸5と噛み合わされている。
【0087】
また、図4に示すようにラック4またはステアリングシャフト21にはステアリング舵角検出部30が接続されており、ステアリング舵角検出部30は可変抵抗器20により構成されている。
【0088】
以下において、本実施の形態の作用について説明する。なお、以下においては、自動車の前輪にキックバックの入力があった場合には、ステアリングギアボックス3は、車両進行方向左側に急激に移動させられるものとする。また、起電力コイル2より流れる誘導電流Iの電圧は、ダイオード11に対して順方向電圧をかける方向に流れると共に、ダイオード11の不感帯Xの値を超えるものとする。
【0089】
自動車が進行中に車両の前輪にキックバックが入力されるとステアリングギアボックスが急激に車両進行方向左側に移動する。その結果、ラック軸5と噛合っているピニオン29が回転を開始し、それと同時にステアリングシャフト21も回転を開始する。また、とステアリングギアボックス3が急激に車両進行方向左側に移動することによりモータ51内に位置している永久磁石6もモータ51内を車両進行方向左側に移動し誘導起電力が生じ、起電力コイルのS極側から誘導電流Iが作動装置9に向かって流れる。
【0090】
そして、誘導電流Iが作動装置9のダイオード11に入力し、ダイオード11に所定値以上の電圧がかかるとダイオード11は誘導電流Iを流し始める。ダイオード11を通過した誘導電流Iは可変抵抗器13によって電圧が所定値減ぜられた後に変圧器14に入力される。そして、変圧器14内の一次コイルに誘導電流Iが流れ込むと一次コイル15には所定の電圧がかかる。それとほぼ同時に二次コイル16にも誘導起電力が生じ誘導電流Iの電圧は上昇させられる。
【0091】
一方、キックバックが入力されるとピニオン29上をラック4が転動し、ステアリングシャフト21が回転する。ステアリング舵角検出部30はラック4の転動量またはステアリングシャフト21の舵角を検出し、可変抵抗器20の抵抗値を設定する。
【0092】
そして、誘導電流Iは、可変抵抗器20において電圧を調整された後に、第一磁性流体用電磁石22及び第二磁性流体用電磁石23に入力し、第一磁性流体用電磁石22及び第二磁性流体用電磁石23は磁力を生じさせる。その結果、フリクションケース24内の磁性流体25は粘性抵抗を増加させ、ステアリングシャフト21の回転が抑制されるようになる。
【0093】
以上のように本実施の形態に係る発明によれば、キックバックの入力により生じるステアリングシャフト21の回転をモータ51に伝達してキックバック抑制システム50を駆動するのに必要な電力を生じさせるという簡易な構成により電力を発生させることを可能としているので、当初はキックバック抑制システムが搭載されていない自動車車両にも簡易にキックバック抑制システムの電源を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】第一の実施形態に係るキックバック抑制システムの概略構成図である。
【図2】ダイオードの特性を表した図である。
【図3】第一の実施形態に係るキックバック抑制システムの変形例の概略構成図である。
【図4】電磁石に流す電流の量を調整する部位を表すブロック図である。
【図5】電流の量とステアリングシャフトの転舵する量の抑制量の関係を表すグラフである。
【図6】第一の実施形態に係るキックバック抑制システムの変形例の概略構成図である。
【図7】第二の実施形態に係るキックバック抑制システムの概略構成図である。
【図8】第三の実施形態に係るキックバック抑制システムの概略構成図である。
【図9】ステアリングシャフトにモータを取り付ける状態の一例を表した斜視図である。
【符号の説明】
【0095】
1 キックバック抑制システム
2 起電力コイル
3 ステアリングギアボックス
4 ラック
5 ラック軸
6 永久磁石
9 作動装置
10 ダイオード
11 ダイオード
12 可変抵抗器
13 可変抵抗器
14 変圧器
15 一次コイル
16 二次コイル
19 転舵抑制装置
20 可変抵抗器
21 ステアリングシャフト
22 第一磁性流体用電磁石
23 第二磁性流体用電磁石
24 フリクションケース
25 磁性流体
26 転舵抑制用電磁石
29 ピニオン
30 ステアリング舵角検出部
40 キックバック抑制システム
43 磁性流体充填領域
45 転舵抑制装置
50 キックバック抑制システム
51 モータ
52 回転板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング系に入力されたキックバックを利用して発電を行う電源部と、
前記電源部において発電された電力を用いて前記ステアリングシャフトの転舵を抑制する転舵抑制装置と、
を備えることを特徴とする自動車車両のステアリングキックバック抑制システム。
【請求項2】
前記電源部と前記転舵抑制装置との間には、前記電源部において発生した電力の電圧を上昇させる変圧器が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システム。
【請求項3】
前記電源部と前記転舵抑制装置との間には作動装置が配置され、
前記作動装置には、前記電源部と前記変圧器とにそれぞれ並列接続されている前記電源部に対してカソード側を向けて接続されているダイオードと、前記電源部に対してアノード側を向けて接続されているダイオードと、
が備えられていることを特徴とする請求項2に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システム。
【請求項4】
ステアリングギアボックスに収納されたラック軸に取り付けられている永久磁石と、
車両の直進時に前記永久磁石が内側に位置するように前記ステアリングギアボックスに巻き付けられていると共に、前記永久磁石が移動することにより誘導起電力を生じさせる起電力コイルと、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システム。
【請求項5】
前記電源部は、
ステアリングシャフトの軸方向に並行に形成された複数の溝に噛み合う歯部が形成された回転板が供えられていると共に、前記ステアリングシャフトの回転に対応して前記回転板が回転することにより発電を行うモータと、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システム。
【請求項6】
前記転舵抑制装置は、
前記ステアリングシャフトが貫通するフリクションケースと、
前記ステアリングケース内に充填されている磁性流体と、
前記電源部により発生させられた電力により磁力を発生させた磁力を前記磁性流体に及ぼすことにより前記磁性流体に粘性抵抗を生じさせて前記ステアリングシャフトの転舵を抑制する磁性流体用電磁石と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システム。
【請求項7】
前記転舵抑制装置は、
前記ステアリングギアボックス内に設けられた前記ラック軸が貫通している磁性流体充填領域と、
前記磁性流体充填領域に充填された磁性流体と、
前記電源部により発生させられた電力により磁力を発生させた磁力を前記磁性流体に及ぼすことにより前記磁性流体に粘性抵抗を生じさせて前記ステアリングシャフトの転舵を抑制する磁性流体用電磁石と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システム。
【請求項8】
前記転舵抑制装置は、
前記ステアリングシャフトによって貫通されていると共に、前記ステアリングシャフトの転舵を抑制する転舵抑制用電磁石であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システム。
【請求項9】
前記作動装置には、前記電源部から入力される電力により順方向電圧がかけられるように接続されているダイオードの前記電源部側には可変抵抗が直列接続されていると共に、
前記電源部から入力される電力により逆方向電圧がかけられるように接続されているダイオードの変圧器側には前記可変抵抗が直列接続されていることを特徴とする請求項7に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システム。
【請求項10】
前記変圧器には、前記磁性流体用電磁石又は前記転舵抑制用電磁石と並列接続された可変抵抗器が備えられていることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の自動車車両のステアリングキックバック抑制システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−186153(P2007−186153A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7401(P2006−7401)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】