説明

自動食器洗浄機用洗浄剤組成物

【課題】優れた洗浄力を有し、被洗物に対し低腐食性の、安全で環境に優しい自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。特に業務用自動食器洗浄機において優れた性能を示す、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)ノニオン界面活性剤、(B)酵素、(C)ヒドロキシカルボン酸塩および(D)硫酸塩を含有することを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供することにより前記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた洗浄力を有し、被洗物に対し低腐食性の、安全で環境に優しい中性自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動食器洗浄機用洗浄剤、特に業務用自動食器洗浄機用洗浄剤は、アルカリ剤を主成分とし、その液性は、pH11を超える強アルカリ性である。このため、洗浄剤、あるいは洗浄液に接触した場合、皮膚及び粘膜への刺激が強く、安全性に問題があった。また、このような強アルカリ性の洗浄液の洗浄排水は、環境へ悪影響を及ぼし好ましくない。さらに、被洗物(陶磁器、グラス、木製製品、金属(アルミニウム、鉄、銅、ステンレス等)製品、プラスチック製品等)に対する腐食の問題があった。以上のような、安全性、環境への負荷軽減、腐食等の観点から、近年、業務用自動食器洗浄機に用いられる洗浄剤において、弱アルカリ化もしくは中性化が強く求められている。しかし、この対策として、単にアルカリ剤を低減すなわち、pHの低下(中性化)をした場合、金属、特に鉄類に対する腐食性の増加を引き起こす問題が生じてしまう。
【0003】
これに対し、アルカリ剤による、壁やタイル等の固体表面の腐食を軽減した硬表面洗浄剤組成物が提案されている(特許文献1)。しかし、この発明は、ケイ酸塩を中和して生成したコロイド状の二酸化ケイ素を含有し、壁、タイル等の硬表面に吹き付けて使用するものであり、また洗浄剤を付着後、30分放置して使用するなど、自動食器洗浄機用の洗浄剤とは、まったく異なる状況で使用されるものであり、この発明を自動食器洗浄機用洗浄剤として応用することは困難である。さらに、これらの配合では、自動食器洗浄機において、優れた洗浄力と低腐食性を実現することはできない。
【0004】
また、特許文献2には、プラスチック樹脂成型食器を洗浄するための洗浄剤組成物と洗浄方法が提案されている。しかし、この洗浄剤は、アルカリ水溶液と有機酸水溶液の2液タイプのものであり、まずプラスチック樹脂成型食器をアルカリ水溶液に浸漬後、次に有機酸水溶液に浸漬するものである。この発明の洗浄剤は、2液であること、さらに浸漬時間はアルカリ水溶液、酸水溶液それぞれ、0.5時間〜6時間であり、短時間で連続的に洗浄を行なう自動食器洗浄機、特に業務用自動食器洗浄機の洗浄剤を、これらから発明することはできない。さらに、これらの配合では、自動食器洗浄機において、優れた洗浄力と低腐食性を実現することはできない。
【0005】
また、特許文献3には、金属の腐食を抑制した、金属の酸洗浄液組成物として、無機酸または有機酸の水溶液に、アニオン界面活性剤と、チオ尿素誘導体やベンゾチアゾール誘導体等の有機硫黄化合物を配合したものが提案されている。しかしながらこれは、金属表面の錆、熱延スケールなどの酸化物被膜やボイラ、熱交換器などの金属表面に蓄積した硬度成分を除去するためのものであり、これをそのまま自動食器洗浄機用洗浄剤に使用することはできない。また液性が酸性であり、安全性や環境への負荷の点で問題がある。さらに、有機硫黄化合物を使用した場合、金属素地表面の色調が黒くなることがあり、美観を損ねるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特公平7−21156号公報
【特許文献2】特開2001−271095号公報
【特許文献3】特開2001−316858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた洗浄力を有し、被洗物に対し低腐食性の、安全で環境に優しい自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供することにある。特に業務用自動食器洗浄機において優れた性能を示す、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、前記課題を解決できる優れた性能を有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記の(A)〜(D)成分、
(A)ノニオン界面活性剤
(B)酵素
(C)ヒドロキシカルボン酸塩
(D)硫酸塩
を含有することを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供するものである。
本発明は、さらに(E)成分としてケイ酸塩を含有することを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供するものである。
本発明は、さらに(F)成分としてアルカノールアミンを含有することを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供するものである。
本発明は、さらに(G)成分としてpH調整剤を含有することを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供するものである。
本発明は、前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分の比率が0.5〜20000質量部であり、前記(C)成分の比率が0.5〜80000質量部、前記(D)成分の比率が0.5〜90000質量部であることを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供するものである。
本発明は、前記(A)成分100質量部に対して、前記(E)成分の比率が0.5〜30000質量部であることを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供するものである。
本発明は、前記(A)成分100質量部に対して、前記(F)成分の比率が0.5〜30000質量部であることを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供するものである。
本発明は、前記(A)成分100質量部に対して、前記(G)成分の比率が0.5〜50000質量部であることすることを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供するものである。
また、本発明は、0.01〜0.5質量%水溶液のpHが6.0〜8.5の範囲内であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた洗浄力を有し、被洗物に対し低腐食性の、安全で環境に優しい自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供することができる。特に業務用自動食器洗浄機において優れた性能を示す、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は必須成分として、(A)〜(D)成分を含有する。
【0011】
まず(A)成分について説明する。本発明の(A)成分はノニオン界面活性剤である。ノニオン界面活性剤の例としては、一般的に知られているノニオン界面活性剤を使用することが可能である。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、プルロニック型ブロックポリマー、テトロニック型ブロックポリマー、リバースプルロニック型ブロックポリマー、リバーステトロニック型ブロックポリマー、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:2)、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ミリスチン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、パーム核脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド類、アルキルグルコシド類、アミンオキサイド類等があげられる。これらのノニオン界面活性剤は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
上記ノニオン界面活性剤のなかでも、特に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが好ましく、また、一般式(1)
R−O−(EO)m(PO)n−R’ (1)
(式中、Rは平均炭素数11〜16の直鎖または分岐のアルキル基、R’は水素原子又はメチル基、EOはエチレンオキサイドの付加単位、POはプロピレンオキサイドの付加単位を表し、ここでmは2.0〜11.0、nは0.4〜9.5であり、EO/POの付加単位比m/n=0.8〜5.0である)で表されるものがより好ましい。
【0013】
(A)成分の含有量は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中の水を除いたうちで、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1.0〜5.0質量%が最も好ましい。0.1質量%未満では洗浄性が充分でなく、20質量%超過では、配合成分のバランス及び経済性の観点から好ましくない。
【0014】
次に(B)成分について説明する。本発明の(B)成分は酵素である。酵素の例としては、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、プルラナーゼ等の公知の酵素を、単独または混合物として使用できる。これらの酵素の中では、食器の汚れの成分は澱粉や蛋白質であることを考慮すると、アミラーゼとプロテアーゼが特に好ましく、両者を併用することが好ましい。(B)成分の酵素は1種でも2種以上併用してもよい。
【0015】
(B)成分の比率は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜20000質量部が好ましく、5〜2000質量部がより好ましく、20〜500質量部が最も好ましい。この範囲内であれば、優れた洗浄力を発揮することができる。
【0016】
(B)成分の好ましい含有量は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中の水を除いたうちで、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1.0〜5.0質量%が最も好ましい。0.1質量%未満では酵素活性が不十分であり、20質量%超過では経済性及びすすぎ性悪化のため、好ましくない。
【0017】
次に(C)成分について説明する。本発明の(C)成分は、ヒドロキシカルボン酸塩である。ヒドロキシカルボン酸塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、エタノールアミン塩等が挙げられ、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。好ましい具体的な例としては、グルコン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ヒドロキシ酢酸ナトリウム、グリセリン酸ナトリウム、ヘプトン酸ナトリウム等が挙げられ、金属、特に鉄に対する腐食性を改善する点から、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、ヘプトン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウムが好ましく、グルコン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0018】
(C)成分の比率は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜80000質量部が好ましく、50〜8000質量部がより好ましく、200〜3000質量部が最も好ましい。この範囲内であれば、優れた防食性を発揮することができる。
【0019】
(C)成分の好ましい含有量は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中の水を除いたうちで、0.1〜80質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%がより好ましい。0.1質量%未満では防食性が不十分であり、80質量%超過では経済性及び他の成分との配合バランスの点から好ましくない。(C)成分のヒドロキシカルボン酸塩は1種でも2種以上併用してもよい。
【0020】
次に本発明の(D)成分について説明する。本発明の(D)成分は、硫酸塩である。硫酸塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられ、硫酸ナトリウム(ボウ硝)、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム及びそれらの無水物が挙げられ、特に無水硫酸ナトリウムが好ましい。
【0021】
(D)成分の比率は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜90000質量部が好ましく、50〜16000質量部がより好ましく、200〜7000質量部が最も好ましい。この範囲内であれば、優れた洗浄性能を発揮することができる。
【0022】
(D)成分の好ましい含有量は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中の水を除いたうちで、0.1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がより好ましく、10〜70質量%が最も好ましい。0.1質量%未満では洗浄性能の点で好ましくなく、90質量%超過では経済性及び他の成分との配合バランスの点から好ましくない。(D)成分の硫酸塩は1種でも2種以上併用してもよい。
【0023】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、更に(E)成分として、ケイ酸塩、及び/または、(F)成分としてアルカノールアミンを含有することも好ましい。これらの成分を配合することにより、金属、特に鉄に対する腐食性を好ましく改善できる。
【0024】
まず本発明の好ましい配合成分である(E)成分のケイ酸塩について説明する。本発明のケイ酸塩の例としては、アルカリ金属ケイ酸塩、具体的には、オルソケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、1号ケイ酸ナトリウム、2号ケイ酸ナトリウム、3号ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸カリウム、メタケイ酸カリウムあるいは層状ケイ酸ナトリウム等の結晶性ケイ酸ナトリウムが挙げられ、防食性の点から2号ケイ酸ナトリウム、あるいは層状ケイ酸ナトリウムが好ましい。
【0025】
(E)成分を配合する場合の比率は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜30000質量部が好ましく、10〜4000質量部がより好ましく、100〜1500質量部が最も好ましい。この範囲内であれば、優れた防食性を発揮することができる。
【0026】
(E)成分を配合する場合の好ましい配合量は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中の水を除いたうちで、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%が最も好ましい。0.1質量%未満では防食性が不十分であり、30質量%超過では経済性及びすすぎ性悪化のため好ましくない。(E)成分のケイ酸塩は1種でも2種以上併用してもよい。
【0027】
次に本発明の好ましい配合成分である(F)成分のアルカノールアミンについて説明する。(F)成分のアルカノールアミンの例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノイソブタノールアミン、ジイソブタノールアミン、トリイソブタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等が挙げられるが、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが、防食性の点から好ましい。
【0028】
(F)成分を配合する場合の比率は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜30000質量部が好ましく、10〜4000質量部がより好ましく、100〜1500質量部が最も好ましい。この範囲内であれば、優れた防食性を発揮することができる。
【0029】
(F)成分を配合する場合の好ましい配合量は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中の水を除いたうちで、0.1〜30質量%であり、1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。0.1質量%未満では防食性が不十分であり、30質量%超過では経済性及び他の成分との配合バランスの点から好ましくない。(F)成分のアルカノールアミンは1種でも2種以上併用してもよい。
【0030】
また、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、更に(G)成分として、pH調整剤を含有することも好ましい。(G)成分のpH調整剤は、洗浄液のpHを調整(中性化)するために用いられ、特にアルカリ成分である(E)成分のケイ酸塩を配合した場合に、添加することによりアルカリを中和して、pHを調整(中性化)するために用いられるのが好ましい。(G)成分のpH調整剤の例としては、無機酸や有機酸が例として挙げられ、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられ、有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ギ酸、酢酸、乳酸等が挙げられる。このうち、特にフマル酸、クエン酸が好ましい。
【0031】
(G)成分を配合する場合、その比率はpHを調整(中性化)できる量であればよいが、(A)成分100質量部に対して、0.5〜50000質量部であり、5〜6000質量部がより好ましく、20〜1000質量部が最も好ましい。
【0032】
(G)成分のpH調整剤を配合する場合の配合量は、pHを調整(中性化)できる量であればよく、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中の水を除いたうちで、0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは、0.5〜30質量%、最も好ましくは1〜10質量%である。(G)成分のpH調整剤は1種でも2種以上併用してもよい。
【0033】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、洗浄時の洗浄液は中性、すなわちpHが6.0〜8.5であることが好ましく、より好ましくは6.0〜8.0である。このような中性でも、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、良好な洗浄性を示すことができる。本発明において、「洗浄時の洗浄液」とは、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を水に溶解し、0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.03〜0.3質量%の濃度とした水溶液のことを言う。また、洗浄時の使用温度は40〜80℃であることが好ましく、50〜70℃がより好ましい。
【0034】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、粉末や粒子の飛散のない、安全かつ便利な洗浄形態である固形ブロック洗浄剤として使用できる。本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、固形ブロック状とするために、さらに、任意の成分として、常温(25℃)で固体のポリアルキレングリコールを含有することができる。
【0035】
使用されるポリアルキレングリコールの例としては、ポリエチレングリコールが挙げられ、好ましくはその重量平均分子量が1000以上、より好ましくは1000〜6000であり、常温(25℃)、好ましくは40〜65℃で、固体であることが好ましい。
【0036】
このポリアルキレングリコールを配合する場合の比率は、(A)成分100質量部に対して、5〜30000質量部が好ましく、30〜2000質量部がより好ましい。この範囲内であれば、溶解性も良好な固形ブロック状とすることができる。
【0037】
また、このポリアルキレングリコールを配合する場合の好ましい配合量は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中の水を除いたうちで、1〜30質量%であり、より好ましくは3〜10質量%である。1質量%未満では固化せず、一方、30質量%超過では溶解性が悪くなるため、好ましくない。
【0038】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、配合成分を上記ポリアルキレングリコールで固めた固体状態の形態の製品(固形ブロック洗浄剤)としてもよいし、その他従来公知の方法で固めた固形ブロック洗浄剤としてもよい。もちろんそのまま紛体の形態の製品としてもよい。また任意の量の水及び/または有機溶剤に溶解して、液状の製品としてもよい。酵素の安定性からは、固体状態が最も好ましく、粉体が次に好ましい。
【0039】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、上記必須の(A)〜(D)成分、および好ましい配合成分である(E)〜(G)成分、更にはポリアルキレングリコール以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を配合することができる。もちろん任意成分を配合した場合も、洗浄時の洗浄液のpHは6.0〜8.5が好ましく、6.0〜8.0がより好ましい。
【0040】
好ましい任意成分の例としては、キレート剤、無機中性塩、および防食剤があげられる。キレート剤の例を挙げると、アミノポリ酢酸およびその塩、各種リン酸塩、ホスホン酸またはホスホノカルボン酸およびその塩、有機酸塩、ポリカルボン酸およびその塩、アミノ酸およびその塩等があげられる。
【0041】
上記アミノポリ酢酸およびその塩としては、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ビス(2−ヒドロキシフェニル酢酸)エチレンジアミン、ジエンコル酸、イミノジ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸およびその塩等のアミノポリ酢酸およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、若しくはアルカノールアミン塩等があげられる。
【0042】
また、上記各種リン酸塩としては、オルソリン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸およびそのアルカリ金属塩が用いられる。これらと化合させるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等があげられる。
【0043】
さらに、上記ホスホン酸またはホスホノカルボン酸およびその塩としては、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸等のホスホン酸化合物、またはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩もしくはアルカノールアミン塩、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸等のホスホノカルボン酸化合物、またはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩もしくはアルカノールアミン塩等があげられる。
【0044】
そして、上記有機酸塩としては、マレイン酸、フマル酸、ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩若しくはアルカノールアミン塩、または硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸塩のほか、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸またはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩もしくはアルカノールアミン塩等を用いることができる。
【0045】
上記ポリカルボン酸およびその塩の例としてはポリアクリル酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−エチレン共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸−アクリル酸エステル共重合体等およびこれらのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0046】
これらのキレート剤のうち、なかでも、洗浄性能、イオン封鎖性能の点から、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム等が、好適に用いられる。そして、これらのキレート剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
上記キレート剤を使用する場合の比率は、(A)成分100質量部に対して、25〜50000質量部が好ましい。この範囲内であれば、優れた洗浄性能とイオン封鎖性能を発揮することができる。
【0048】
また、上記キレート剤を使用する場合の配合量は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中の水を除いたうちで、5〜50質量%の範囲内に設定されるのが好ましい。すなわち、5質量%未満の配合量では、洗浄性能およびイオン封鎖性能が得られず、また、50質量%を超えると、他の洗浄成分とのバランスや経済性の点で好ましくない。
【0049】
次に無機中性塩の例をあげると、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等があげられる。
上記無機中性塩を使用する場合の比率は、(A)成分100質量部に対して、25〜80000質量部が好ましい。この範囲内であれば、優れた洗浄性能を発揮することができる。
また、上記無機中性塩を使用する場合の配合量は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中の水を除いたうちで、5〜80質量%の範囲内に設定されるのが好ましい。
【0050】
防食剤の例としてはポリビニルイミダゾリン、モリブデン酸塩、クロム酸塩、亜硝酸塩、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、亜鉛塩、安息香酸塩、脂肪族アミンおよび他のアミン類、モルホリン類、タンニン類、エステル類など一般に防食剤として添加する化合物を添加してもよい。ただし、一般的な防食剤の中で、有機硫黄化合物はそのもの自体あるいは分解物が銀や銅、鉄と結合し外観を損ねることから好ましくない。それら有機硫黄化合物の例としては、チオ尿素、チオセミルカルバジド、フェニルチオ尿素、トリルチオ尿素、N−メチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、メチルイソチオ尿素、ベンジルイソチオ尿素、ジイソプロピルチオ尿素、エチレンチオ尿素、メルカプトベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプト1,3,4-チアジアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2-(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、3-(2-ベンゾチアルチオ)プロピオン酸、(2−ベンゾチアジルチオ)酢酸、2−メルカプトイミダゾリンエチレンチオ尿素などが挙げられる。
【0051】
本発明の、その他の任意成分としては、水、有機溶剤、カチオン界面活性剤、漂白剤、漂白活性化剤、香料、色素、高分子カルボン酸などの分散剤、防食剤等が挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0052】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、中性でありながら、優れた洗浄力を示す。このため、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、安全性及び環境に対する負荷の面からも、非常に優れているといえる。
また、陶磁器、グラス、木製製品、プラスチック製品、金属(鉄、銅、銀、アルミニウム、ステンレス等)製品等の被洗物(グラス、食器等)あるいは自動食器洗浄機自体に対し、低腐食性であり、特に鉄類(鉄、鉄を含有する合金)に対しての低腐食性であることが優れている。
また、固形ブロック洗浄剤として使用した場合も、経時的に膨張したり、亀裂が生じることがなく、さらに酵素や漂白成分、キレート剤等の活性成分が失活することなく、洗浄剤の溶解性に優れ、供給水温や供給水圧が低い場合にも必要量の洗浄剤を充分に供給することができる。
【0053】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、家庭用自動食器洗浄機や業務用自動食器洗浄機等の自動食器洗浄機で使用される。特に、家庭用自動食器洗浄機に比較して稼動条件に制約の多い業務用自動食器洗浄機において、より優れた洗浄性能を示す。
例えば、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、洗浄時間が5分以下、より短くは1分以下の時間でも優れた洗浄性能を示し、さらに洗浄温度が常に45〜70℃の範囲でも優れた洗浄性能を示す。
【0054】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、油脂、蛋白質、でんぷん等、あらゆる汚れに対して優れた洗浄性能を示し、アルミ製、ステンレス製、銀製等の金属製、メラミン製、プラスチック製、ガラス製、磁器、漆器、陶磁器などあらゆる素材の食器に対して優れた洗浄性能を示し、これらに対して低腐食性である。さらに、中性であるため安全であり、環境への負荷も少ない。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0056】
まず、実施例で用いた評価方法を説明する。本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物の効果を確認するために、洗浄力試験と、クリスタルグラス、磁性皿、アルミニウム、鉄に対する腐食試験を行なった。また洗浄液のpHを測定し、評価を行なった。
【0057】
(1)洗浄力試験
<洗浄条件>
使用洗浄機:HOBART製自動食器洗浄機(機種AM−14型)
洗浄温度:66℃
洗浄時間:40秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:9秒
洗浄剤濃度:0.1質量%
使用水:硬度10°DHの水(塩化カルシウムで調整)
<被洗物の調整>
米澱粉5gをお湯20gに溶解し、80℃で5分間糊化させる。これに溶解させた牛脂20gを加え、よく攪拌し、50℃まで冷却した後、卵黄10gを加え均一に攪拌したものを汚れに供する。この複合汚れを、150mm×150mmのメラミン製樹脂プレートにコーティングロッドを用いて均一に塗布し、室温で乾燥させたものを洗浄試験用プレートとした。
<洗浄力評価方法>
洗浄試験用プレート5枚を洗浄ラックの所定の位置に設置し、前記洗浄条件で洗浄/すすぎ後、室温で乾燥させた。このプレートの表面を5mm×5mmの碁盤目上に分画し、清浄な碁盤目を数え、全体に対する清浄な碁盤目の割合(%)を洗浄率として算出し、下記評価基準に従い評価した。
◎:洗浄率80%〜100%
○:洗浄率60%〜80%
△:洗浄率40%〜60%
×:洗浄率40%以下
【0058】
(2)腐食性試験1
使用洗浄機:三洋電機(株)製自動食器洗浄機(機種DW-DR62型)
洗浄温度:67℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:9秒
洗浄剤濃度:0.1質量%
使用水:軟水化処理水
被洗物:クリスタルグラスおよび磁性皿(絵付け、金線模様)
<評価方法>
磁性皿およびクリスタルグラスを洗浄ラックの所定の位置に設置し、上記試験条件にて洗浄、すすぎを行った後、室温にて風乾する一連の操作を1000回繰り返した後、各食器を暗室内において蛍光灯を反射させて外観を目視し、下記の基準にて腐食性を評価した。
◎:クリスタルグラスおよび磁性皿とも試験前と比較して差がなく、腐食性が低い。
○:磁性皿は試験前と比較して差が無いが、クリスタルグラスには薄い曇りが認められ、やや腐食性がある。
△:磁性皿は試験前と比較して差が無いが、クリスタルグラスには損傷が認められ、腐食性がある。
×:磁性皿(特に絵付けの部分)及びクリスタルグラスには損傷が認められ、腐食性がおおきい。
【0059】
(3)腐食性試験2(アルミニウム)
各洗浄剤組成物0.1質量%水溶液にアルミパネルを60℃で6時間浸漬した。浸漬後風乾し、浸漬面の外観変化を目視にて下記の評価基準で評価した。
◎:変化無し
○:わずかに白化
△:全面が白化
×:全面が黒色化
【0060】
(4)腐食性試験3(銀および銅)
各洗浄剤組成物0.1質量%水溶液に銀製パネルおよび銅製パネルを60℃で6時間浸漬後、乾燥(90℃)を行った。この操作を10回繰り返し、試験後の外観変化を目視にて下記の評価基準で評価した。
◎:変化無し
○:わずかに黒化
△:全面が少し黒化
×:全面が黒色化
【0061】
(5)腐食性試験4(鉄:FC200(鋳鉄))
各洗浄剤組成物0.1質量%水溶液に鋳鉄パネルを60℃で3日間浸漬した。浸漬面積あたりの重量減少量を基準に下記計算式により腐食度を判定した。
【0062】
腐食度=腐食減量A*1×0.365/7.87*2
*1腐食減量A:減量の単位時間、単位面積あたりの腐食量(g/m2day)
*2鉄密度(g/cc)
【0063】
実施例1〜10、比較例1〜6
表1及び表2に記載した配合組成に洗浄剤組成物を調製し、各試験を行った。
結果を表1及び表2に示した。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

*3 ノニオン界面活性剤:R−O−(EO)m(PO)n−H
(Rは炭素数12〜14のアルキル基、平均付加モル数mは約8、nは約5)であらわされるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(D)成分、
(A)ノニオン界面活性剤
(B)酵素
(C)ヒドロキシカルボン酸塩
(D)硫酸塩
を含有することを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに、(E)成分としてケイ酸塩を含有することを特徴とする請求項1記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに、(F)成分としてアルカノールアミンを含有することを特徴とする請求項1または2記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項4】
さらに、(G)成分としてpH調整剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分の比率が0.5〜20000質量部であり、前記(C)成分の比率が0.5〜80000質量部、前記(D)成分の比率が0.5〜90000質量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記(A)成分100質量部に対して、前記(E)成分の比率が0.5〜30000質量部であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項7】
前記(A)成分100質量部に対して、前記(F)成分の比率が0.5〜30000質量部であることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項8】
前記(A)成分100質量部に対して、前記(G)成分の比率が0.5〜50000質量部であることすることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項9】
0.01〜0.5質量%水溶液のpHが6.0〜8.5の範囲内であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−257352(P2006−257352A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79606(P2005−79606)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【出願人】(593085808)ADEKAクリーンエイド株式会社 (25)
【Fターム(参考)】