説明

自動食器洗浄機用洗浄剤組成物

【課題】ウォータースポット形成抑制効果に優れ、貯蔵安定性や貯蔵後の洗浄性能に問題のない自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】両性高分子化合物を0.05〜10質量%含有する粒子(A)を5〜90質量%、無機過酸化物粒子(B)を5〜70質量%、及び漂白活性化剤粒子(C)を0.1〜5質量%、含有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に両性高分子化合物を応用する技術はすでに知られており、特許文献1〜3を参考にすることができる。また、両性高分子化合物を硬質表面に適用する例は、特許文献4、5を参考にすることができる。
【特許文献1】国際公開第99/58633号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/20709号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第0998548号明細書
【特許文献4】特表2004−503370号公報
【特許文献5】特表2003−524681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、自動食器洗浄機は急速に普及しており、また、省エネルギー、省資源の観点から使用する洗浄水の量を低減化し、且つ一回に洗浄する食器の量を増加させる洗浄機が主流を占めている。しかしながら、このような洗浄機で汚れ量が多い食器を洗浄すると、洗浄/乾燥後の食器にいわゆるウォータースポットとして知られている白い付着物が形成されることが多々起こるという問題があり、この解決が強く求められる。
【0004】
このウォータースポットの形成を抑制する洗浄剤の技術として特許文献1に陽イオン性高分子化合物又は両性高分子化合物を応用する技術が開示されている。また、特許文献2にはリン酸スケール形成抑制剤として、特許文献3には褪色又は腐食抑制剤として陽イオン性高分子化合物又は両性高分子化合物を応用する技術が開示されている。また、これら公報には無機過酸化物や漂白活性化剤を含有することも記載されている。
【0005】
一方、粉末状ないし顆粒状の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に陽イオン性高分子化合物又は両性高分子化合物を配合する場合、漂白活性化剤や無機過酸化物の貯蔵安定性に悪影響を及ぼし、貯蔵後の洗浄性能が著しく低下するという課題がある。また、ウォータースポット形成抑制効果も低下するため、この改善が強く求められている。
【0006】
従って、本発明の課題は、ウォータースポット形成抑制効果に優れ、無機過酸化物や漂白活性化剤の貯蔵安定性に問題がない自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、両性高分子化合物〔以下、(a)成分という〕を0.05〜10質量%含有する粒子(A)を5〜90質量%、無機過酸化物粒子(B)を5〜70質量%、及び漂白活性化剤粒子(C)を0.1〜5質量%、含有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ウォータースポット形成抑制効果に優れ、無機過酸化物や漂白活性化剤の貯蔵安定性に問題がない自動食器洗浄機用洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では(a)成分として両性高分子化合物を含有する。具体的には陽イオン性基を有するモノマー構成単位〔以下モノマー構成単位(a1)という〕、陰イオン性基を有するモノマー構成単位〔以下モノマー構成単位(a2)という〕、及びN−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジンN−オキシドから選ばれる1種以上を重合して得られるモノマー構成単位〔以下モノマー構成単位(a3)という〕、から選ばれ(a1)、(a2)、(a3)の合計が分子中に30〜100モル%含有し、且つ、(a1)、(a3)の合計が30〜100モル%の高分子化合物である。
【0010】
モノマー構成単位(a1)としては下記一般式(1)及び/又は一般式(2)のモノマー構成単位が好適である。
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、R11は水素原子又はメチル基であり、R12は水素原子、メチル基、又はヒドロキシ基であり、R13は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。Xは−COOR14−、−CON(R15)R16−であり、ここでR14、R16は炭素数2〜5のアルキレン基であり、R15は水素原子又はメチル基である。R21は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、nは0又は1の数である。Y-は陰イオン基である。〕
【0013】
一般式(1)においてR11は水素原子が好ましく、R12は水素原子、メチル基が好ましい。Xは−CON(R15)R16−が好ましく、R15は水素原子が好適である。R13はメチル基が好ましく、Y-はハロゲンイオン、硫酸イオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、燐酸イオン、炭素数1〜12の脂肪酸イオン、炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンが好適であり、特にクロルイオンが好ましい。
【0014】
一般式(2)においてR21はメチル基が好ましく、Y-はハロゲンイオン、硫酸イオン、燐酸イオン、炭素数1〜12の脂肪酸イオン、炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンが好適であり、特にクロルイオンが好ましい。nは0が好適である。
【0015】
モノマー構成単位(a2)としては下記一般式(3)のモノマー構成単位が好適である。
【0016】
【化2】

【0017】
〔式中、R31は水素原子、メチル基、又は−COOMであり、R32は水素原子、メチル基、又はヒドロキシ基である。Zは−COOM、−ph−SO3Mである。ここでMは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、phはベンゼン環を示す。〕
【0018】
本発明の(a)成分は、陽イオン性基及び陰イオン性基を1つのモノマー構成単位に有する構造(a12)であっても差し支えない。具体的には下記一般式(4)又は一般式(5)のモノマー構成単位が好適である。
【0019】
【化3】

【0020】
〔式中R41、R51は水素原子又はメチル基であり、R42、R52は水素原子、メチル基、又はヒドロキシ基である。X、Y-、Mは上述と同一の意味であり、R43、R53は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R54は−CH2COO-、−C36SO3-、−CH2CH(OH)CH2−SO3-から選ばれる基である。〕
【0021】
(a1)又は(a12)のモノマー構成単位は、(a1)又は(a12)を構成するモノマー構成単位に対応する単量体を通常の重合反応を行って製造することができる。あるいは、高分子化合物に後処理を施すことにより、最終的に(a1)又は(a12)のモノマー構成単位を得ても良い。例えば、陽イオン性基として4級アンモニウム基を有する高分子化合物の場合は、当初の単量体中に4級アンモニウム基を有する単量体を重合反応により得る方法の他に、アミノ基を有する単量体を用いて重合反応を行った物に4級化処理を施すことによって(a1)又は(a12)のモノマー構成単位を得てもよい。もちろん陰イオン性基についても同様である。当然ながら、後処理を必要とする高分子化合物を得るために用いられる単量体は、後処理を考慮した構造のものが選ばれる。
【0022】
具体的な一般式(1)のモノマー構成単位に対応する単量体としてはアクリロイル(又はメタクリロイル、α−ヒドロキシアキリロイル、もしくはクロトノイル)アミノアルキル(炭素数2〜5)−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、アクリロイル(又はメタクリロイル、α−ヒドロキシアキリロイル、もしくはクロトノイル)オキシアルキル(炭素数2〜5)−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩を挙げることができる。塩としては上述のY-に相当する塩が好ましい。また、アクリロイル(又はメタクリロイル、α−ヒドロキシアキリロイル、もしくはクロトノイル)アミノアルキル(炭素数2〜5)−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、アクリロイル(又はメタクリロイル、α−ヒドロキシアキリロイル、もしくはクロトノイル)オキシアルキル(炭素数2〜5)−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミンを重合させたモノマー構成単位に、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどの4級化剤を用いてアルキル化することで製造することもできる。なお、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを用いる場合にはYH(Yは上記陰イオン化合物)で示される酸でアミノ基を中和して反応させる必要がある。
【0023】
一般式(2)に対応する単量体としてはN,N−ジアリル−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩を用いることができる。また、N,N−ジアリル−N−アルキル(炭素数1〜3)アミンを重合させたモノマー構成単位に、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどの4級化剤を用いてアルキル化することで製造することもできる。なお、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを用いる場合にはYH(Yは上記陰イオン化合物)で示される酸でアミノ基を中和して反応させる必要がある。
【0024】
一般式(3)に対応する単量体としてはアクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、クロトン酸又はその塩、α−ヒドロキシアクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、無水マレイン酸、スチレンスルホン酸塩を挙げることができる。また、スチレンスルホン酸塩を重合して得られるモノマー構成単位は、スチレンを重合して得られた化合物に3酸化イオウ、クロルスルホン酸、硫酸などのスルホン化剤を用いてスルホン化し、中和することでも得ることができる。
【0025】
一般式(4)のモノマー構成単位を有する高分子化合物は、無水マレイン酸を予め重合したモノマー構成単位にアミノアルキル(炭素数2〜5)ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、又はN,N−ジアルキル(炭素数1〜3)−N−アルカノール(炭素数2〜5)アミンを反応させ、続いてメチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどの4級化剤を用いてアルキル化することで製造することもできる。なお、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを用いる場合にはYH(Yは上記陰イオン化合物)で示される酸でアミノ基を中和して反応させる必要がある。
【0026】
一般式(5)に対応する単量体としてはN−〔アクリロイル(又はメタクリロイル、α−ヒドロキシアクリロイル、もしくはクロトノイル)アミノアルキル(炭素数2〜3)〕−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)−N−カルボキシメチル アンモニウムカルボベタイン、N−〔アクリロイル(又はメタクリロイル、α−ヒドロキシアクリロイル、もしくはクロトノイル)アミノアルキル(炭素数2〜3)〕−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)−N−〔2−ヒドロキシスルホプロピル〕 アンモニウムスルホベタイン、N−〔アクリロイル(又はメタクリロイル、α−ヒドロキシアクリロイル、もしくはクロトノイル)アミノアルキル(炭素数2〜3)〕−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)−N−スルホプロピル〕 アンモニウムスルホベタイン、N−〔アクリロイル(又はメタクリロイル、α−ヒドロキシアクリロイル、もしくはクロトノイル)オキシアルキル(炭素数2〜3)〕−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)−N−カルボキシメチル アンモニウムカルボベタイン、N−〔アクリロイル(又はメタクリロイル、α−ヒドロキシアクリロイル、もしくはクロトノイル)オキシアルキル(炭素数2〜3)〕−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)−N−〔2−ヒドロキシスルホプロピル〕 アンモニウムスルホベタイン、N−〔アクリロイル(又はメタクリロイル、α−ヒドロキシアクリロイル、もしくはクロトノイル)オキシアルキル(炭素数2〜3)〕−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)−N−スルホプロピル〕 アンモニウムスルホベタインを挙げることができる。
【0027】
本発明では(a1)、(a2)、(a3)及び(a12)から選ばれるモノマー構成単位の合計が分子中に30〜100モル%、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%の高分子化合物が好ましい。また、(a1)、(a3)の合計が30〜100モル%含有する高分子化合物である。また、(a1)及び(a2)から選ばれるモノマー構成単位を30〜100モル%含有する場合には(a1)/(a2)=30/70〜90/10、好ましくは35/65〜80/20、より好ましくは40/60〜70/30の高分子化合物が好適である。また、(a3)のモノマー構成単位を選択する場合には分子中に(a3)を30〜100モル%、好ましくは50〜100モル%、特に好ましくは60〜100モル%が好適である。
【0028】
本発明では(a1)を構成するモノマー構成単位として、特にN,N−ジアリル−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩を重合して得られるモノマー構成単位、またはN,N−ジアリル−N−アルキル(炭素数1〜3)アミンを重合させたモノマー構成単位をメチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどの4級化剤を用いてアルキル化したモノマー構成単位が好ましく、(a2)を構成するモノマー構成単位としてアクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、無水マレイン酸から選ばれる単量体を重合して得られるモノマー構成単位を分子中に30〜100モル%有する高分子化合物が最も好ましい。
【0029】
本発明では上記(a1)、(a2)、(a3)、(a12)以外に、本発明の効果を損なわない程度にこれらと共重合可能単な単量体を共重合させて得られるモノマー構成単位を含んでいてもよい。具体的にはアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアクリル(又はメタクリル)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N−ビニル−2−カプロラクタム、アクリル酸(又はメタクリル酸)アルキル(炭素数1〜5)、アクリル酸(又はメタクリル酸)2−ヒドロキシエチル、アクリル酸(又はメタクリル酸)−N,N−ジメチルアミノアルキル(炭素数1〜5)、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、N−ブチレン、イソブチレン、N−ペンテン、イソプレン、2−メチル−1−ブテン、N−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ブテン、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アリルアミン、N,N−ジアリルアミン、N,N−ジアリル−N−アルキル(炭素数1〜5)アミン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、二酸化硫黄を挙げることができる。
【0030】
本発明では特に二酸化硫黄を(a)成分中に1〜15モル%共重合させた化合物が最も好ましい。
【0031】
本発明の(a)成分はいかなる重合法によって得てもよいが、ラジカル重合法が特に好ましく、塊状、溶液、又は乳化系にてこれを行うことができる。ラジカル重合は加熱によりこれを開始してもよいが、開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(N,N−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、などのアゾ系開始剤、過酸化水素及び、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、過安息香酸などの有機過酸化物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素−Fe3+などのレドックス開始剤、など既存のラジカル開始剤を用いてもよいし、光増感剤の存在/又は非存在下での光照射や、放射線照射により重合を開始させてもよい。
【0032】
本発明の(a)成分の重量平均分子量は5千〜1000万、好ましくは5千〜500万、特に好ましくは1万〜200万であり、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、アセトニトリルと水の混合溶液(リン酸緩衝液)を展開溶媒とし、ポリエチレングリコールを標準物質として測定することができる。
【0033】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、上記(a)成分を0.05〜10質量%の濃度で担持した粒子〔以下、粒子(A)という〕として含有する。特には(A)粒子中の(a)成分は、ウォータースポット防止の点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、最も好ましくは0.4質量%以上であって、無機過酸化物粒子の貯蔵安定性の点から好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、最も好ましくは4質量%以下を含有する粒子〔以下、粒子(A)という〕として含有する。
【0034】
また、粒子(A)は、1質量%水溶液の20℃におけるpHが3〜12、好ましくは4〜10、より好ましくは5〜10の固体状水溶性有機化合物又は水溶性無機塩を含有する粒子が好適である。固体状水溶性有機化合物及び/又は水溶性無機塩の含有量は粒子(A)中に好ましくは70〜99.9質量%、より好ましくは80〜99.9質量%、最も好ましくは90〜99質量%である。
【0035】
固体状水溶性有機化合物としては分子量40〜400、好ましくは90〜360、より好ましくは100〜300の水溶性有機酸、特に分子中に2つ以上、好ましくは2〜6個のカルボン酸基を有する多価カルボン酸又はそれらの塩が好ましい。具体的にはギ酸、酢酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸から選ばれるカルボン酸、エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、メチルグリシン2酢酸、グルタミン酸2酢酸、セリン2酢酸、アスパラギン酸2酢酸から選ばれるアミノカルボン酸、及びこれらの塩が好適であり、特にクエン酸、メチルグリシン2酢酸、エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸が好ましい。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
【0036】
水溶性無機塩としては硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩が好ましく、特に結晶水を持ちうる塩が好ましい。具体的には硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウムが好適である。
【0037】
本発明の粒子(A)には、固体状水溶性有機化合物及び水溶性無機塩を併用してもよく、無リン系の場合は固体状水溶性有機化合物/水溶性無機塩の質量比は、好ましくは90/10〜10/90、より好ましくは70/30〜10/90、特に好ましくは50/50〜10/90が好適である。また、水溶性無機塩がリン酸塩の場合は、固体状水溶性有機化合物/水溶性無機塩の質量比は、好ましくは0/100〜20/80、特に好ましくは0/100が好適である。
【0038】
本発明において、上記(a)成分と固体状水溶性有機化合物、水溶性無機塩又はそれらの混合物を混合して粒子(A)を得るが、洗浄性能及びウォータースポット形成抑制効果の点から(a)成分を5〜80質量%、好ましくは8〜50質量%、特に好ましくは20〜50質量%含有する水溶液と、固体状水溶性有機化合物及び/又は水溶性無機塩とを混合する方法で粒子(A)を製造する方法が好ましい。(a)成分を含有する水溶液の水の量が本発明の効果に影響を及ぼし、水溶液中の(a)成分濃度が上記範囲以下では、貯蔵安定性が低下し、貯蔵後の洗浄効果が低下する傾向にあり、また、(a)成分の濃度が上記範囲を超えると洗浄効果が低下する傾向にある。
【0039】
本発明では上記(a)成分の水溶液(X)と、固体状水溶性有機化合物、水溶性無機塩又はそれらの混合物(Y)との混合比率は、(X)/(Y)質量比で好ましくは0.2/99.8〜40/60、より好ましくは0.5/99.5〜20/80、特に好ましくは1/99〜15/85である。
【0040】
通常、活性物質の製剤化にはバインダー物質を用いることが行われるが、本発明では上記(a)成分水溶液中の少量の水がバインダーとして作用する。その他バインダー物質としては分子量2000〜20000のポリエチレングリコール、炭素数10〜20の脂肪酸、炭素数10〜20の脂肪アルコールを挙げることができる。このようなバインダー物質は粒子(A)中に10質量%以下、好ましくは5質量%以下、特に3質量%以下が好適である。しかしながら、最も好ましくは(a)成分を溶解させる際の水をバインダーとして用いることが好ましい。
【0041】
本発明では上記(a)成分の水溶液と固体状水溶性有機化合物及び/又は水溶性無機塩とを混合した後、粒子物性を改善させる目的から該混合物と水不溶性無機粉体を混合することが好ましい。水不溶性無機粉体としては一次粒子径5nm〜200μm、好ましくは20nm〜100μm、特に好ましくは20nm〜50μmのものが好ましく、具体的には、結晶性珪酸塩、アルミノ珪酸塩、シリカ、アルミナが好ましい。本発明では、上記混合物(Y)に対する水不溶性無機粉体(Z)の質量比(Z)/(Y)は、好ましくは99.9/0.1〜95/5、より好ましくは99.5/0.5〜97.5/2.5、特に好ましくは99.3/0.7〜98/2である。
【0042】
水不溶性無機粉体としてシリカを用いる場合には、アエロジル(日本アエロジル(株)製)、トクシール、ファインシール、レオロシール((株)トクヤマ製)、サイロピュア(富士シリシア(株)製)等を用いること好ましい。
【0043】
本発明では上記混合工程を例えば、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)、ハイスピードミキサー(深江工業株式会社製)、ナウターミキサー(ホソカワミクロン株式会社製)等の周知の混合機を用いることができ、特に攪拌時にせん断力があまりかからないナウターミキサーを用いることが好ましい。
【0044】
本発明の粒子(A)は、(a)成分を0.05〜10質量%、好ましくは0.3〜8質量%、より好ましくは0.4〜5質量%、固体状水溶性有機化合物及び/又は水溶性無機塩を無水換算として70〜99.9質量%、好ましくは80〜99.9質量%、特に好ましくは90〜99質量%、水不溶性無機粉体を0.1〜3質量%、好ましくは0.5〜2.5質量%、特に好ましくは0.7〜2質量%を含有する粒子であり、また、水分の含有量は0.05〜15質量%、好ましくは0.3〜15質量%、特に好ましくは0.3〜10質量%が好適である。
【0045】
粒子(A)の平均粒径は、好ましくは50〜1000μm、より好ましくは100〜800μm、特に好ましくは100〜600μmである。
【0046】
粒子(A)は、好ましくは10〜800μm、より好ましくは50〜800μm、特に好ましくは100〜500μmの固体状水溶性有機化合物、水溶性無機塩又はそれらの混合物を含有する粒子から得られることが好ましい。
【0047】
粒子(A)はこれら固体状水溶性有機化合物や水溶性無機塩の粒子表面に(a)成分が付着した粒子であってもよく、更にその表面に上記の水不溶性無機粉体が塗布された状態(ないし被覆された状態)になっているものが流動性に富むため理想的である。なお固体状水溶性有機化合物や水溶性無機塩の種類あるいはバインダーの種類やその濃度によっては、(a)成分を含む水溶液の添加後、あるいは上記バインダー物質を添加した場合、凝集して(a)成分を包含する凝集した粒子になる場合もある。更にその凝集粒子表面が水不溶性無機粉体により被覆された状態になっていてもよい。
【0048】
本発明の洗浄剤組成物は、(a)成分を組成物中に0.05〜1.5質量%、好ましくは0.2〜1.5質量%、より好ましくは0.3〜1.4質量%含有する。粒子(A)は、(a)成分の含有量がこの範囲となるように用いられる。組成物中の全(a)成分のうち、80質量%以上、更に90質量%以上、特には実質的には100質量%が、粒子(A)中に存在することが好ましい。粒子(A)を製造する際には、(a)成分は水溶液で添加することが好ましい。その場合、粒子(A)と他の粒子との混合後に(a)成分が他の粒子に少量移行する可能性もあるが、本発明の粒子(A)が本発明の範囲で存在すればよい。
【0049】
本発明では粒子(B)として無機過酸化物粒子を含有する。具体的には過炭酸塩、好ましくは過炭酸ナトリウム(以下、PCと表記することもある)、過ホウ酸塩、好ましくは過ホウ酸ナトリウムである。また、過炭酸塩を採用する場合には、貯蔵安定性の点から被覆された過炭酸塩を用いることが好適である。粒子(B)は、無機過酸化物を含有する粒子である。
【0050】
被覆された過炭酸塩としては、好ましくは水溶性ポリマーや無機塩等で被覆したものが好適である。具体的な例としては、公知の方法で被覆された過炭酸ナトリウムを用いることができ、例えば、特公昭47−32200号(PCをパラフィンで被覆)、特公昭53−15717号(PCを過ホウ酸ソーダで被覆)、米国特許第4131562 号(PCを過ホウ酸ソーダとアルコールのエチレンオキサイド付加物で被覆)、米国特許第4120812号(PCと過ホウ酸ソーダをポリエチレングリコールで被覆)、ドイツ特許第2712139号(PCをシリケートで被覆)、ドイツ特許第2800916号(PCをホウ酸で被覆)、欧州特許第30759号(PCをワックスで被覆)、特開昭58−217599号(PCをホウ酸塩で被覆)、特開昭59−196399号(PCをホウ酸塩で被覆)、特開平4−31498号(PCをホウ酸と珪酸塩で別々に噴霧して被覆)等に記載された方法により得られたものが使用できる。
【0051】
これらのなかでも特に、(i)ホウ酸ナトリウム、好ましくはメタホウ酸ナトリウム、オルトホウ酸ナトリウムを過炭酸塩に対して0.1〜30質量%の割合で被覆した過炭酸塩、(ii)オルトホウ酸、メタホウ酸及び4ホウ酸から選ばれるホウ酸を過炭酸塩に対して0.3〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜8質量%被覆した過炭酸塩、及び(iii)(ii)にさらにメタ珪酸ナトリウム、オルト珪酸ナトリウム、水ガラス1号、2号、3号のナトリウム塩、メタ珪酸カリウム、オルト珪酸カリウム、好ましくは水ガラス1号、2号、3号のナトリウム塩を過炭酸塩に対してSiO2に換算して0.1〜10質量%、0.2〜7質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%を被覆させた過炭酸塩が好ましい。特に貯蔵安定性の点から(i)の過炭酸塩が好ましい。過炭酸塩としては過炭酸ナトリウムが好ましい。
【0052】
本発明の被覆された過炭酸塩は通常の方法で製造することができる。例えば湿式状態もしくは乾燥状態の過炭酸塩に上記被覆剤を含有する溶液もしくは粉末を混合吸着させて乾燥させる方法が使用できる。
【0053】
被覆された過炭酸塩は平均粒径が100〜2000μm、更に250〜1000μmであることが、漂白洗浄効果の点から好ましい。
【0054】
また、粒子(B)の組成物中の含有量は、好ましくは5〜70質量%、より好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは5〜50質量%である。
【0055】
本発明では粒子(C)として漂白活性化剤粒子を含有する。漂白活性化剤としては、テトラアセチルエチレンジアミン、グルコースペンタアセテート、テトラアセチルグリコールウリル、アルカノイル若しくはアルケノイル(これらの基の炭素数は8〜14)オキシベンゼンカルボン酸又はその塩、アルカノイル又はアルケノイル(これらの基の炭素数は8〜14)オキシベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。また、下記一般式(6)の化合物、下記一般式(7)の化合物も本発明において好適な漂白活性化剤である。粒子(C)は、漂白活性化剤を含有する粒子である。
【0056】
【化4】

【0057】
〔式中、R61は炭素数1〜12、好ましくは1〜10の炭化水素基、好ましくはアルキル基であり、R62、R63、R71、R72、R74、R75は炭素数1〜3のアルキル基、好ましくはメチル基であり、R73は炭素数1〜6のアルキレン基であり、Xは無機又は有機の陰イオン、好ましくはハロゲンイオン、硫酸イオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオン、又はナフタレンスルホン酸イオン、炭素数1〜12の脂肪酸イオンである。〕
【0058】
本発明では特にテトラアセチルエチレンジアミン及びアルカノイル又はアルケノイル(これらの基の炭素数は8〜14、漂白効果の点から好ましくは10〜14)オキシベンゼンスルホン酸塩から選ばれる1種以上が好ましい。
【0059】
本発明では、上記漂白活性化剤を粉末状又は顆粒状に整形したのものを使用することが好ましく、嵩密度は0.3〜0.7g/ml、特に好ましくは0.35〜0.6g/mlである。また、粒径125μmm以上のものが、好ましく粒子(C)中に15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下のものが良好である。また、粉末又は顆粒中の漂白活性化剤の含有量は50〜90質量%、好ましくは60〜90質量%である。
【0060】
本発明の漂白活性化剤はバインダー物質を用いて製剤化したものを用いても良い。バインダー物質としてはポリオキシエチレン及び脂肪酸から選ばれる1種以上が好ましい。ポリオキシエチレンとしては重量平均分子量2千〜2万、好ましくは4千〜1万、より好ましくは4千〜8千のものが良好である。また、脂肪酸の炭素数は8〜20、好ましくは10〜18、より好ましくは12〜18であり、これらは一部又は全部がナトリウムあるいはカリウム石鹸の状態であってもよい。このようなバインダー物質は造粒物中に0.5〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは5〜20質量%使用する。
【0061】
本発明では、特にアルカノイル又はアルケノイルオキシベンゼンスルホン酸塩型漂白活性化剤を用いる場合には漂白活性化剤の溶解性を高める目的から陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上を粒子(C)に含有することが好適であり、陰イオン界面活性剤としては炭素数10〜14のアルキル硫酸エステル塩、オキシエチレン基の平均付加モル数が1〜6でありアルキル基の炭素数が10〜14のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、非イオン界面活性剤としてはアルキル基の炭素数が10〜16でありオキシアルキレンの炭素数が2及び/又は3であり、平均付加モル数が4〜20のポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好適である。このような界面活性剤は粒子(C)中に1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%である。
【0062】
本発明の粒子(C)には漂白活性化剤の貯蔵安定性を向上させる目的から、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸から選ばれる酸剤を含有することが好ましく、特にクエン酸、コハク酸が好適である。このような酸剤を(C)成分中に0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜7質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。
【0063】
粒子(C)の造粒に用いる造粒機は、押出造粒機が適している。押出造粒機の具体例として、不二パウダル(株)製のペレッターダブル及びツインドームグラン、(株)菊水製の顆粒機等が挙げられる。
【0064】
粒子(C)の造粒の際の温度は、微粉の発生を抑制するとともに適度な粒子強度を付与させるためにバインダー物質の融点付近、更にはバインダー物質の融点より20℃高い温度から5℃低い温度の範囲で押し出すことが好ましい。その際、例えば、平均粒径が700・m〜1500・mの造粒物になるようにスクリーンを選択し、又嵩密度が0.5〜0.8g/mLになるように押し出し圧を調整する。
【0065】
また、その他の造粒法としてはブリケット機による錠剤形状にすることも好ましい造粒法として挙げることができる。
【0066】
本発明では、粒子(C)を得るための造粒後、必要に応じ、解砕、球形化等により整粒を行ってもよい。解砕に用いる装置として、不二パウダル(株)製のフラッシュミル、Fitzpatrick社(米国)製のフィッツミル等が挙げられ、球形化に用いる装置として、不二パウダル(株)製のマルメライザー等が挙げられる。解砕機に供給する温度は常温付近まで冷却されていることが好ましく、例えば、造粒物を振動冷却機に供給し、所定の温度まで冷却後に解砕すると、解砕物の解砕機内での付着が抑制される。また、解砕、球形化により発生する微粉や十分に解砕、球形化されなかった粗粉をより低減させるために、更に解砕物を分級してもよい。
【0067】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、粒子(A)、粒子(B)、粒子(C)だけで構成されてもよいが、その場合は、水溶性無機塩や固体状水溶性有機化合物として洗浄力を上げる物質を粒子(A)に混合することが好ましい。例えばリン酸塩は優れたキレート能の性質以外にアルカリ性と緩衝能を示す。洗浄液のアルカリ性を高める上でアルカリ剤を追加して用いることも可能である。また固体状水溶性有機化合物としてクエン酸(塩)などの有機キレート剤と水溶性無機固体としての炭酸塩などのアルカリ剤を併用することもまた提案される。しかしながら、本発明では保存安定性などの観点からアルカリ性の強い剤などは別粒子として配合することが好ましい。また酵素や漂白剤などについても、安定性や取り扱いの観点から、別の粒子として配合されることが好適である。具体的には粒子(A)、粒子(B)、粒子(C)以外の粒子として、炭酸アルカリ金属塩を含有する粒子(D)、アルミノ珪酸塩、珪酸塩を主として含有する粒子(E)、酵素を含有する粒子(F)から選ばれる一種以上の粒子を含有することが好ましく、特には(D)〜(F)粒子をすべて含有することが好ましい。またこれらの粒子以外に、任意の粒子(G)を含有してもよい。
【0068】
粒子(D)としては、炭酸ナトリウム(ライト灰、デンス灰)を用いることができ、特に平均粒径50〜600μm、好ましくは100〜500μmのデンス灰を用いることが好適である。また、粒子(B)の組成物中の含有量は、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜70質量%、特に好ましくは5〜40質量%である。
【0069】
粒子(E)としては洗浄液のアルカリ性を高めることや洗浄液の硬度を低減することで洗浄効果を向上させる目的や、珪酸塩の場合は、防錆効果の目的で使用される粒子であるが、粒子(A)の粉末物性改質剤や粒子(B)の無機過酸化物粒子のための安定化剤と使用目的が若干ことなるが、一部同じ化合物である。珪酸塩は1〜3号珪酸ナトリウム等の非晶質珪酸ナトリウム、特開平7−89712号公報、特開昭60−227895号公報及び Phys. Chem. Glasses. 7, p127-p138(1966)、Z.Kristallogr., 129, p396-p404(1969)に記載されている結晶性珪酸塩、並びに(株)トクヤマシルテックより商品名「プリフィード」(δ−Na2Si25)として市販されている結晶性珪酸ナトリウムが好ましい。アルミノ珪酸塩としては、非晶質アルミノ珪酸塩が好ましく、特開昭62−191417号公報第2頁右下欄第19行〜第5頁左上欄第17行(特に初期温度は15〜60℃の範囲が好ましい)、特開昭62−191419号公報第2頁右下欄第20行〜第5頁左上欄第11行に記載されている非晶質アルミノシリケートや、特開平9−132794号公報、特開平7−10526号公報、特開平6−227811号公報、特開平8−119622号公報に記載されている非晶質アルミノ珪酸塩等を挙げることができる。珪酸塩とアルミノ珪酸塩は併用して用いてもよく、それぞれまたは双方が造粒された粒子として、配合してもよい。造粒物としては市販されているものを用いることができる。
【0070】
粒子(E)としては、平均粒径1〜1000μm、好ましくは5〜800μmの珪酸ナトリウムが好ましく、結晶性珪酸ナトリウムが最も好適である。
【0071】
また、粒子(E)の組成物中の含有量は、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。
【0072】
本発明では酵素を含有する粒子(F)を含有することが好適であり、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、エステラーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼおよびペルオキシダーゼを挙げることができ、特にプロテアーゼ、アミラーゼが好適である。
【0073】
プロテアーゼとして使用できる市販の酵素としては、アルカラーゼ、サビナーゼ、エバラーゼ、カンナーゼ、エスペラーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー(株))、オボザイム、プラフェクト、プロペラーゼ、プラフェクトOX(ジェネンコア・インターナショナル社)を挙げることができる。
【0074】
アミラーゼとして使用できる市販の酵素としてはラピダーゼ(ギスト−ブロカーズ)、およびターマミル、デュラミル、ステインザイム(ノボノルディスクバイオインダストリー(株))、プラスターST、プラスターOxAm(ジェネンコア・インターナショナル社)を挙げることができる。
【0075】
本発明ではプロテアーゼとアミラーゼを併用することが好ましく、酵素タンパク量としてアミラーゼ/プロテアーゼの質量比は、好ましくは1/99〜94/6、より好ましくは2/98〜90/10、特に好ましくは20/80〜80/20である。
【0076】
本発明ではこれら酵素を造粒した粒子として含有することが好ましい。造粒物中の酵素タンパク量は粒子(F)中に1〜30質量%、好ましくは2〜25質量%である。また、粒子(F)の平均粒径は50〜1000μm、好ましくは150〜800μmである。
【0077】
また、粒子(F)の組成物中の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜7質量%、特に好ましくは0.2〜5質量%である。
【0078】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤を含有する場合は、ウォータースポット形成抑制効果の点からできるだけ低減化させることが好適であり、界面活性剤の含有量は組成物中、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下が好適である。特に粒子(C)中に漂白活性化剤の可溶化剤として用いる界面活性剤を、組成物中に5質量%以下になるように設計することが必要である。
【0079】
本発明では、重量平均分子量が600〜5000、好ましくは2000〜4000のポリプロピレングリコールを該組成物に配合することが洗浄効果を付与し、且つ洗浄後の食器への残香性を抑制できるため好ましい。ポリプロピレングリコールは組成物中に好ましくは0.1〜10質量%、更に0.5〜5質量%、特に1〜5質量%含有することが好適である。
【0080】
その他、色素、香料、消泡剤、ポリアクリル酸及びその塩、アクリル酸/マレイン酸共重合体及びその塩を任意の成分としてあげることができる。
【0081】
これら任意に配合可能な化合物は各粒子に安定性や該成分の性質を損なわない程度で添加してもよく、別途粒子(G)として配合してもよい。あるいは粒子(A)〜(F)の混合後に、液状として噴霧するなどして添加したり、微粒子(ないし粉末)として添加してもよい。
【0082】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、平均粒径が100〜1000μm、更に200〜700μmであることが好ましい。また、組成物の嵩密度は0.8〜1.5g/cm3、更に0.8〜1.2g/cm3であることが好ましい。
【0083】
本発明に記載の平均粒径、一次粒子径及び嵩密度の測定は下記の通りである。
<平均粒径の測定法>
平均粒径はメジアン径であり、JIS Z 8801に規定の篩を用いて求める。例えば、目開きが2000μm、1400μm、1000μm、710μm、500μm、350μm、250μm、180μm、125μmである9段階の篩と受け皿を用い、ロータップマシーン(HEIKOSEISAKUSHO製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、100gの試料を5分間振動させた後、篩目開きのサイズによる質量分率から各粒径の粒子の割合を測定し、平均粒径を求める。
【0084】
<一次粒子径の測定法>
走査型または透過型電子顕微鏡により粒子3,000個の粒径を計測し、個数で平均した粒径を求める。
【0085】
<嵩密度の測定法>
嵩密度は、JIS K 3362により規定された方法で測定する。
【0086】
本発明の最も好ましい態様を以下に示す。
・粒子(A):粒子(A)は(a)成分として洗浄剤組成物中に0.3〜1.5質量%となる量で含有される。
但し、粒子(A)は、平均粒径100〜500μmであって、高分子化合物(a)を0.3〜4質量%、硫酸ナトリウム、トリポリ燐酸ナトリウム、硫酸カリウムから選ばれ、平均粒径が100〜500μmの水溶性無機塩を一種以上と、クエン酸、メチルグリシン2酢酸、エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸及びこれらの塩から選ばれる平均粒径100〜500μmの固体状水溶性有機化合物と、を合計で90〜99質量%、且つ固体状水溶性有機化合物/水溶性無機塩を質量比で、無リンの場合は50/50〜10/90、有リンの場合は0/100〜80/20で含有し、更に結晶性珪酸塩、アルミノ珪酸塩、シリカ、アルミナから選ばれる粒子(A)を被覆している水不溶性無機粉体を0.5〜2質量%および水分を含有してなる粒子である。
・粒子(B):組成物中の含有量が5〜70質量%である。
但し、粒子(B)は平均粒径250〜1000μmである過炭酸ナトリウムである。
・粒子(C):組成物中の含有量が0.1〜5質量%である。
但し、粒子(C)の平均粒径は250〜1000μmであって、テトラアセチルエチレンジアミン及びアルカノイル又はアルケニル(これらの基の炭素数は8〜14)オキシベンゼンスルホン酸塩から選ばれる粒子からなる。
・粒子(D):組成物中の含有量が5〜40質量%である。
但し、粒子(D)は平均粒径100〜500μmであるライト灰、デンス灰である。
・粒子(E):組成物中の含有量が3〜10質量%である。
但し、粒子(E)は平均粒径5〜800μmである結晶性層状珪酸ナトリウムである。
・粒子(F):組成物中の含有量が0.2〜5質量%である。
但し、粒子(F)はアミラーゼとプロテアーゼとを含有し、平均粒径150〜800μmである。
・粒子(G):組成物中の含有量が0〜5質量%である。
但し、粒子(G)は任意の粒子であり、平均粒径50〜1500μmであって、その他補助剤や付加価値を高めるための粒子であり、例えば消臭性能を性質を示すような香料粒子、アクリル酸/マレイン酸共重合体の塩のような汚れの分散性能を示す粒子を提案することができる。更に、上記に示される性質の異なる粒子群を含有し、該粒子(A)〜(F)は振動などによって粒子が層状に分かれること(一般的に分級)を抑制するために、なるべく他の粒子と粒径が揃ったものとして配合されているものである自動食器洗浄機用洗浄剤組成物である。
【実施例】
【0087】
<粒子(A)の製法>
実施例1〜4及び比較例1:30Lナウターミキサー(自転:110r/min、公転:4r/min)に硫酸ナトリウム及びクエン酸3ナトリウムを添加し、1分間混合した。次に両性高分子化合物(a−1)〜(a−3)の水溶液を添加し、5分間混合した。次に表面改質剤(洗浄剤組成物中に添加する量の半量)を添加し、さらに1分間混合して粒子(A)を得た。なお、各成分の添加量は、洗浄剤組成物30kgに相当する表1に示す配合比率より計算される量とした。
【0088】
<粒子(C−1)の製法>
下記式(8)で示す漂白活性化剤9.88kg、コハク酸(川崎化成工業(株)製:コハク酸(20メッシュパス品)、以下コハク酸と略記)0.39kg、ポリエチレングリコール(花王(株)製:K−PEG6000、以下PEG6000と略記)2.21kg、エマルゲンKS−108(花王(株)製、融点−9℃、以下E−KS−108と略記)0.52kgを混合機(ホソカワミクロン(株)製:ナウターミキサーNX−S型)に仕込み(仕込量13kg/Batch)、ジャケット温度を80℃、自動回転数121r/min、公転回転数5.5r/minで混合、昇温し、粉体の温度が75℃になった時点で混合物を抜き出した。次に、得られた混合物を押出造粒機(不二パウダル(株)製:ペレッターダブルEXD−60型)により孔径900μmのスクリーンを通して押し出して圧密化した。得られた押出物を振動冷却機(不二パウダル(株)製:バイブロ/フロードライヤーVDF16000型)で冷却した後、整粒機(不二パウダル(株)製:フラッシュミルFL200型)にて解砕した。得られた解砕物を分級機(徳寿製作所(株)製:寿円型振動篩)により、分級し、粒子径350〜410μmの粒子(C−1)を得た。
【0089】
【化5】

【0090】
<粒子(C−2)の製法>
下記式(9)で示す漂白活性化剤9.88kg、コハク酸(川崎化成工業(株)製:コハク酸(20メッシュパス品)、以下コハク酸と略記)0.39kg、ポリエチレングリコール(花王(株)製:K−PEG6000、以下PEG6000と略記)2.21kg、エマルゲンKS−108(花王(株)製、融点−9℃、以下E−KS−108と略記)0.52kgを混合機(ホソカワミクロン(株)製:ナウターミキサーNX−S型)に仕込み(仕込量13kg/Batch)、ジャケット温度を80℃、自動回転数121r/min、公転回転数5.5r/minで混合、昇温し、粉体の温度が75℃になった時点で混合物を抜き出した。次に、得られた混合物を押出造粒機(不二パウダル(株)製:ペレッターダブルEXD−60型)により孔径900μmのスクリーンを通して押し出して圧密化した。得られた押出物を振動冷却機(不二パウダル(株)製:バイブロ/フロードライヤーVDF16000型)で冷却した後、整粒機(不二パウダル(株)製:フラッシュミルFL200型)にて解砕した。得られた解砕物を分級機(徳寿製作所(株)製:寿円型振動篩)により、分級し、粒子径350〜410・mの粒子(C−2)を得た。
【0091】
【化6】

【0092】
<洗浄剤組成物の製法>
実施例1〜4及び比較例1:粒子(A)を製造後、さらに粒子(D)、粒子(E)、粒子(G)を添加して1分間混合した。次にポリプロピレングリコールを添加し、3分間混合し、表面改質剤(洗浄剤組成物中に添加する量の半量)を添加し、さらに1分間混合した。次に粒子(B)及び粒子(C)を添加し、香料を添加してさらに3分間混合して洗浄剤組成物30kgを得た。
【0093】
比較例2:粒子(A)製造(ただし(a)成分、表面改質剤は含まない)後、さらに粒子(D)、粒子(E)、粒子(G)を添加して1分間混合した。次にポリプロピレングリコールを添加し、3分間混合し、表面改質剤(洗浄剤組成物中に添加する量の半量)を添加し、さらに1分間混合した。次に粒子(B)、粒子(C)及び(a)成分を噴霧乾燥により粉末化した成分(両性高分子化合物(a−1)粉末化品)を添加し、香料を添加してさらに3分間混合して洗浄剤組成物30kgを得た。
【0094】
<洗浄条件>
使用洗浄機:松下電器産業株式会社製自動食器洗い機(機種NP−60SS5)を用い、下記食器、表1の洗浄剤組成物を入れて標準コースで運転した。この洗浄機は、2.2Lの水を20℃から60℃まで徐々に昇温して洗浄し、その後すすぎを3回(昇温しない)行い、最終すすぎ(20℃から70℃まで徐々に昇温してすすぎ)後、乾燥する形式のものである。
汚染皿:10枚(下記方法で調製されたもの)
未汚染ガラスコップ:9個
未汚染スライドガラス:3枚
紅茶汚染湯のみ:3個
使用水:3.5°DHの水
洗浄剤組成物添加量:6g
【0095】
<汚染皿の調製>
半熟目玉焼きをすりつぶし、口径1mmのネットで濾過し、濾液を直径11cmの磁性皿に1枚当たり1.8gできるだけ均一に塗布し、1時間放置したものを洗浄に用いた。
【0096】
<紅茶汚染湯のみの調製>
日東紅茶(黄色パッケージ)80gを3リットルの水道水にて約15分間煮沸後、糊抜きしたさらし木綿でこし、この液をメラミン樹脂製湯のみに100gずつ入れ、1時間放置した。その後、中身を捨て、室温で24時間自然乾燥させたものを洗浄に用いた。
【0097】
<ガラスコップの仕上がり評価方法>
洗浄後のガラスコップに形成されたウォータースポットの数を蛍光灯にかざして数え、下記判定基準にて評価した。結果を表1に示した。
◎:9個のガラスコップのウォータースポットの数の平均値が25個以内
○:9個のガラスコップのウォータースポットの数の平均値が26個〜40個
△:9個のガラスコップのウォータースポットの数の平均値が41個〜100個
×:9個のガラスコップのウォータースポットの数の平均値が101個以上
【0098】
<漂白効果>
洗浄後のメラミン樹脂製湯のみを30歳代の男性及び女性4人(各2人ずつ)のパネルに観察してもらい、茶渋の残留がない場合を4点、ほとんどない場合を3点、少し残留している場合を2点、はっきりと残留している場合を1点とし、パネル4名の平均点が3.5点以上を◎、3.0点以上、3.5点未満を○、2点以上、3点未満を△、2点未満を×として漂白効果を評価した。
【0099】
<過炭酸ナトリウム貯蔵安定性>
表1の洗浄剤組成物700gを箱型容器(花王株式会社製キッチンクイックル容器)に入れ、40℃、湿度80%の恒温槽で30日間保存し、保存後の組成物から過炭酸ナトリウム0.1gを拾い出し、これに20%硫酸水溶液10mlを加え溶解させ、N/10過マンガン酸カリウム水溶液で滴定を行い、下式より有効酸素を求めた。
【0100】
【数1】

【0101】
<漂白活性化剤貯蔵安定性>
表1の洗浄剤組成物700gを箱型容器(花王株式会社製キッチンクイックル容器)に入れ、40℃、湿度80%の恒温槽で30日間保存し、保存前と保存後のサンプルの漂白活性化剤残存量を下記の滴定法により求め下式により残存率を算出した。
【0102】
【数2】

【0103】
<滴定法>
洗浄剤組成物5gを20℃の水1リットルに良く溶解し、10分間攪拌した後、0.3 %カタラーゼ溶液10mLを加え、1分間攪拌する。この溶液に10%ヨウ化カリウム水溶液10mLと20%硫酸水溶液20mlを添加し0.1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定を行った。
【0104】
<貯蔵後の漂白効果>
表1の洗浄剤組成物700gを箱型容器(花王株式会社製キッチンクイックル容器)に入れ、40℃、湿度80%の恒温槽で30日間保存し、保存後の洗浄剤組成物にて、前記同様に紅茶汚染湯のみを洗浄し、漂白効果を評価した。
【0105】
【表1】

【0106】
(注)
1)N,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリドとアクリル酸を69.5:30.5のモル比で重合させた共重合体(重量平均分子量45万)
2)N,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド/マレイン酸/二酸化硫黄=66.7/26.7/6.6のモル比で重合させた共重合体(重量平均分子量2万)
3)N,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸/アクリルアミド=36/32/32のモル比で重合させた共重合体(重量平均分子量150万)
4)トクシールNR((株)トクヤマ製、吸油能:210〜270mL/100g)、一次粒子径約20nm
5)メタホウ酸ナトリウムで表面を被覆した過炭酸ナトリウム。平均粒径700μm
6)デュラミル60T(ノボノルディスクバイオインダストリー株式会社)、平均粒径600μm
7)サビナーゼ18.0T(ノボノルディスクバイオインダストリー株式会社)、平均粒径600μm
8)ソカランCP45(B.A.S.F.社、)、平均粒径400μm
9)N,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリドとアクリル酸を69.5:30.5のモル比で重合させた共重合体(重量平均分子量45万)を40質量%含有する水溶液を噴霧乾燥により粉末化したもの。平均粒径200μm
10)重量平均分子量約3000、平均縮合度約50(ジオールタイプ、和光純薬工業株式会社)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両性高分子化合物を0.05〜10質量%含有する粒子(A)を5〜90質量%、無機過酸化物粒子(B)を5〜70質量%、及び漂白活性化剤粒子(C)を0.1〜5質量%、含有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項2】
粒子(A)中に1質量%水溶液の20℃におけるpHが3〜12の固体状水溶性有機化合物又は水溶性無機塩を含有する請求項1記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項3】
粒子(A)中に固体状水溶性有機化合物及び水溶性無機塩から選ばれる1種以上を70〜99.9質量%含有する請求項2記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項4】
粒子(A)の平均粒径が50〜1000μmである請求項1〜3の何れか1項記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項5】
固体状水溶性有機化合物が、分子中に2つ以上のカルボン酸基を有する分子量40〜400の多価カルボン酸又はそれらの塩である請求項2〜4の何れか1項記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項6】
水溶性無機塩が、硫酸塩、塩酸塩及びリン酸塩から選ばれる1種以上である請求項2〜6の何れか1項記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項7】
粒子(A)、粒子(B)、粒子(C)以外に、炭酸アルカリ金属塩を含有する粒子(D)、アルミノ珪酸塩及び珪酸塩から選ばれる1種以上を含有する粒子(E)、並びに酵素を含有する粒子(F)から選ばれる一種以上の粒子を含有する請求項1〜6の何れか1項記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2007−314722(P2007−314722A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148270(P2006−148270)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】