自己免疫疾患又は脱髄疾患を処置するための方法
本発明は、ヒト患者における新規な治療処置又は予防処置に関する。本発明は、IL−18Rαのアンタゴニストが疾患を処置するのにin vivoで有効であるという発見から部分的にもたらされたものである。したがって、本発明は、患者、好ましくはヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法であって、患者に、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。本発明は、さらに、自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の処置のための医薬の製造における、IL−18Rαのアンタゴニストの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト患者における新規な治療処置又は予防処置に関する。本発明は、IL−18Rαのアンタゴニストが疾患を処置するのにin vivoで有効であるという発見から部分的にもたらされたものである。
【0002】
したがって、本発明は、患者、好ましくはヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法であって、患者に、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。本発明は、さらに、自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の処置のための医薬の製造における、IL−18Rαのアンタゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
脱髄疾患は、神経系の髄鞘における異常を伴う病状のグループである。多くの先天性代謝障害は、主にCNSにおける発達中の髄鞘を冒し、脱髄は、多くの神経障害の特徴となる。
【0004】
ヒトにおける中枢神経系の最も知られている慢性炎症性脱髄疾患は、多発性硬化症である。多発性硬化症(MS)の発症は、20歳〜40歳の間に典型的に起こる。女性は、男性よりも約2倍の頻度で冒される。長い間にわたって、MSは、様々な神経障害の蓄積をもたらす可能性がある。MSにおける臨床的障害は、ミエリン及び軸索の続く損失を伴い、組織萎縮につながる、度重なる炎症性損傷の結果であると推定される。
【0005】
MSは、身体症状(再発及び障害進行)、中枢神経系(CNS)炎症、脳萎縮、及び認知機能障害において顕在化される。主症状は、限局性の感覚消失、限局性の脱力、視覚的問題、平衡失調、及び疲労を含む。性機能障害及び括約筋機能不全が起こる可能性がある。MSを有する患者の約半分は、認知機能障害又はうつ病を経験する可能性がある。
【0006】
MSは、現在、多面的な疾患であると考えられており、臨床的な静止状態(寛解)の期間は、増悪の間に起こる。寛解は、長さが変動し、数年間続く可能性があるが、まれに永久的となる。
【0007】
疾患の4つの経過は、個別に扱われる:再発寛解型(RR)多発性硬化症、二次進行型(SP)多発性硬化症、一次進行型(PP)多発性硬化症、及び進行再発型(PR)多発性硬化症。MSを有する80%を超える患者は、最初は、神経症状の臨床的増悪と共にRR経過を呈し、完全である可能性のある又は完全でない可能性のある回復が後に続く(Lublin及びReingold,Neurology,1996,46:907−911)。
【0008】
RRMSの間、障害の蓄積は、再発からの不完全な回復に起因する。RRMSを有する患者の約半分は、病気の発症の10年後に、SPMSと呼ばれる進行型経過に移る。SP期の間、障害の悪化は、増悪の後の残存症状の蓄積に起因するが、増悪の間の潜行性の進行にも起因する(上記のLublin及びReingold)。MS患者の10%は、疾患発症からの、症状の潜行性の進行によって特徴づけられるPPMSを有する。患者の5%未満は、PRMSを有し、PPMSと同じ予後を有すると考えられることが多い。別の病原性機構が、異なる患者サブグループに関与する可能性があり、疾患分類に対して広範な影響を有することが示唆されている(Lassmannら,2001,Trends Mol.Med.,7,115−121;Lucchinettiら,Curr.Opin.Neurol.,2001,14,259−269)。
【0009】
MS発症は、CNS機能不全といった第1の神経症状の出現によって定義される。脳脊髄液(CSF)分析及び磁気共鳴画像法(MRI)における進歩は、診断プロセスを単純化し、早期診断を容易にした(Noseworthyら,The New England Journal of Medicine,2000,343,13,938−952)。MSの診断に関する国際パネルは、MSの診断を容易にし、且つ臨床診断法及び臨床外診断法と共にMRIを含む改訂基準を発行した(Mc Donaldら,2001,Ann.Neurol.,50:121−127)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多発性硬化症の処置のための今のところ利用可能な処置は、疾患の症状に対して実際のところ作用するものである。その結果として、患者への、改善された臨床的利点を提供する代替治療に対する強い要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ヒト患者における新規な治療処置又は予防処置に関する。本発明は、IL−18Rαのアンタゴニストが疾患を処置するのにin vivoで有効であるという発見から部分的にもたらされたものである。
【0012】
したがって、本発明は、患者、好ましくはヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法であって、患者に、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。特定の態様では、脱髄疾患は多発性硬化症である。本発明は、さらに、自己免疫疾患又は脱髄疾患の処置のための医薬の製造における、IL−18Rαのアンタゴニストの使用に関する。特定の態様では、脱髄疾患は多発性硬化症である。
【0013】
特定の態様では、本発明は、上記に定義される方法又は使用に関し、患者は、再発寛解型(RR)多発性硬化症、二次進行型(SP)多発性硬化症、一次進行型(PP)多発性硬化症、又は進行再発型(PR)多発性硬化症に冒されている。
【0014】
他の態様では、本発明は、上記に定義される方法又は使用に関し、アンタゴニストは、IL−18Rαの産生を低下させる又は予防する、又はアンタゴニストは、部分的に、実質的に、又は完全にIL−18Rαの活性をブロックする。
【0015】
本発明は、上記に定義される方法又は使用にさらに関し、アンタゴニストは、低分子、抗体、siRNA、アンチセンス核酸、及びリボザイムからなる群から選択される。
【0016】
特定の態様では、アンタゴニストは、IL18−Rα、特に、IL18−Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体である。より具体的には、抗体は、配列番号2のポリペプチドに選択的に結合し、さらに具体的には、抗体は、配列番号2の残基1〜329又は配列番号2の残基19〜329又は配列番号2の残基330〜350又は配列番号2の残基351〜541に選択的に結合する。特定の態様では、抗体は、配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329に選択的に結合する。他の特定の態様では、抗体は、配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329に選択的に結合する。
【0017】
本発明の他の対象は、上記に定義される方法又は使用に関し、抗体は、ヒトIL−18Rαの細胞外ドメインに位置するエピトープに選択的に結合する。特定の態様では、エピトープは、配列番号2のアミノ酸19〜329に又は配列番号2のアミノ酸残基19〜219に又は配列番号2のアミノ酸残基122〜329に位置する。他の特定の態様では、エピトープは、配列番号2のアミノ酸19〜132又は配列番号2の122〜219又は配列番号2の213〜329に位置する。
【0018】
本発明のさらなる対象は、上記に定義される方法又は使用に関し、抗体は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1、2、3、4、5、又は6個のCDRを含む抗原結合ドメインを有する。特定の態様では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号4のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。より具体的には、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列にあるVHドメイン及び配列番号4のアミノ酸配列にあるVLドメインを含む。さらに具体的には、抗体は、Ig定常重鎖領域、ヒトIgカッパ定常ドメイン及びヒトIgラムダ定常ドメインからなる群から選択されるIg定常軽鎖領域、配列番号3のアミノ酸配列を有するIg可変重鎖領域、並びに配列番号4のアミノ酸配列を有するIg可変軽鎖領域としてヒトIgG1を含む。
【0019】
特定の態様では、本発明は、上記に定義される方法又は使用に関し、抗体は、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70614、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70625、モノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンB−E43、及びモノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンH44からなる群から選択される。
【0020】
本発明は、上記に定義される方法又は使用にさらに関し、抗体は、Ab1、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70614、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70625、モノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンB−E43、及び/又はモノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンH44と、ヒトIL−18Rαへの結合について競合する抗体である。
【0021】
本発明は、さらに、上記に定義される方法又は使用に関し、抗体は、
− 配列番号2の残基19〜329又は配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329又は配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329を含む免疫剤を用いて宿主動物を免疫するステップ、
− 上述の宿主動物によって産生されたリンパ球を不死化細胞系と融合させてハイブリドーマ細胞を形成するステップ、
− 免疫ペプチドに対する抗体を産生するハイブリドーマ細胞のクローンを選択するステップ、
− EAE動物モデル中のハイブリドーマ細胞の異なるクローンによって産生された抗体の活性を試験し、上述の動物モデルにおけるEAEの進行を阻害する抗体を選択するステップ、
− 分泌されたモノクローナル抗体を産生するステップ
を含むプロセスによって得ることができる。
【0022】
より具体的には、免疫剤は、配列番号2の残基19〜329又は配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329又は配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329又はその融合タンパク質からなるものであってもよい。
【0023】
本発明は、上記に定義される方法又は使用にさらに関し、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はその断片である。
【0024】
本発明の他の対象は、上記に定義される方法又は使用に関し、アンタゴニストは、配列番号1の配列の18〜25個の連続したヌクレオチドに対して100%相補的なsiRNAであり、ヒトIL−18Rαの発現又は生物活性を低下させる又は阻害することができる。
【0025】
本発明の他の対象は、上記に定義される方法又は使用に関し、アンタゴニストは、長さが15〜35個のヌクレオチドの範囲のアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、配列番号1に記載される核酸配列に対して相補的である。
【0026】
本発明の他の対象は、上記に定義される方法又は使用に関し、アンタゴニストは、それぞれが配列番号1の長さが少なくとも5個の隣接したヌクレオチドである1又は2個の領域に対して相補的なハイブリダイズ領域を含有するリボザイムである。
【0027】
本発明は、上記に定義される方法又は使用にさらに関し、アンタゴニストは、抗原提示細胞中のIL18Rαの活性を阻害する。特定の態様では、抗原提示細胞は、単核食細胞、多核食細胞、樹状細胞、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される。
【0028】
本発明は、上記に定義される方法又は使用にさらに関し、IL−18Rαの阻害は、IL−17産生ヘルパーT細胞の減少をもたらす。
【0029】
本発明は、さらに、上記に定義される方法又は使用に関し、IL−18Rαのアンタゴニストは、MSを処置する又は予防するための第2の治療薬と共に投与される。特定の態様では、IL−18Rαのアンタゴニストは、コルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンと共に投与される。
【0030】
本発明の他の態様は、哺乳動物患者、好ましくはヒト患者のMSの治療における同時の、別個の、又は順次の使用のための、IL−18Rαのアンタゴニスト及び併用調製物としてのコルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンを含む産物を含む。IL−18Rαのアンタゴニストは、医薬としての使用のためのものである。また、IL18−Rα、特に、IL18−Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体は、医薬としての使用のためのものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、IL−18Rαにアンタゴナイズする作用物質を用いて動物を処置することにより、MSについて動物モデルにおける症状が低下するという発見に部分的に基づく。したがって、本発明は、患者に、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することにより、ヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(MS等)の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法を提供する。
【0032】
IL−18受容体は、リガンド結合IL−18Rαサブユニット(文献中ではIL−1Rrp又はIL−1 R5とも命名されている)及びシグナル伝達IL−18Rβサブユニットからなるヘテロ二量体として記載されてきた。IL−18Rの下流シグナル伝達は、TLR経路の下流シグナル伝達と同様に、IRAK4及びMyD88を活性化する。IL−18Rαは、リンパ球上に発現し、より最近では、アクセサリー細胞上に発現することが発見された(Kaser,A.ら Blood 103,648−655(2004),Tomura,M.ら Immunol.160,3759−3765(1998),Xu,D.ら J.Exp.Med.188,1485−1492(1998),Yoshimoto,T.ら J.Immunol.161,3400−3407(1998))。
【0033】
IL−18がIL−18R複合体に結合することができることが確証されているが、IL−18Rαのみへのその親和性は、弱い親和性にすぎない(Boraschi,D.ら Eur.Cytokine Netw.9,205−212(1998),Torigoe,K.ら J.Biol.Chem.272,25737−25742(1997))。IL−18は、T細胞によるIFN−γの産生を刺激するようIL−12と共に共同して働き、またNK細胞の細胞傷害性活性を単独で刺激することができる。IL−18及びIL−12は、TH1サイトカイン応答に向けてT細胞を極性化するために相乗的に作用し、これは、脳炎誘発に対する必要条件であると考えられた。
【0034】
IL−18−/−マウスは、EAE抵抗性であるとして記載されてきた、またIL−18−/−マウスにおける不十分なNK細胞活性化は、脳炎誘発性の免疫応答を生成することができない原因であると考えられた(Shi,F.D.,ら,J.Immunol.165,3099−3104(2000))。それにもかかわらず、IL−12の明らかな防御活性を考慮すれば、EAEにおけるIL−18の提唱された役割は、ジレンマを引き起こす(Cua,D.J.ら Nature 421,744−748(2003),Becher,B.ら,J.Clin.Invest 110,493−497(2002))。
【0035】
本発明者は、EAEに対するIL−18−/−マウスの感受性によって推定されるように、以前に公表されたデータとは対照的に、IL−18が、EAEにおいて明白な病原性の影響を及ぼさないことをこれから実証する。しかしながら、その提唱される受容体(IL−18Rα)の欠失は、EAE誘発に対する完全な抵抗性をもたらし、これは、脳炎誘発性の特性を有する代替リガンド(IL−18RL)の存在を示唆する。IL−18Rαに対するIL−18の親和性は、かなり乏しく、親和性の増加のためにIL−18Rβとのヘテロ三量体化を必要とするので、IL−18Rαに対するより高い親和性を有する他のリガンドがある可能性は非常に強い。IL−1Rスーパーファミリー内には多くのオーファン受容体があり、これらの受容体サブユニットが互いにヘテロ二量体を形成する事実を考慮すれば、おそらく、IL−18Rαは、異なる結合パートナーを有するだけではなく、異なるリガンドもまた有していそうである。
【0036】
本発明者は、抗IL−18Rα抗体を使用して、IL−18−/−マウスにおける疾患発生を著しく減衰させることにより、本明細書でこの推定上のリガンドの性能を実証する。承認されているIL−18RαリガンドであるIL−18は、これらのマウス中に存在せず、それらの細胞構成要素は、抗体の注射の結果として冒されなかったことを考慮すれば、これらの結果は、上記代替IL−18Rαリガンドの実在についての実質的証拠を提供する。
【0037】
EAEの間のT細胞の重要性にもかかわらず、本発明者は、IL−18Rαの欠失が、増大に関するT細胞プライミング及びTh1極性化に影響を及ぼさないことを本明細書で示す。その代わりに、マイトジェンConAを用いて刺激した場合、IL−18及びIL−18Rαは、共に、効率的なT細胞活性化に必要であり、これは、様々な細菌及びウイルス感染モデルにおいて観察されるように、IL−18−/−マウスがIFNγ分泌の刺激に欠陥を有するという発見に一致する。T細胞活性化のレベルでの障害の欠如に一致して、本発明者は、wt(野生型)樹状細胞、IL−18−/−樹状細胞、又はIL−18Rα−/−樹状細胞(DC)と共に培養された場合にTcR Tg T細胞が同じ程度まで増殖したように、IL−18Rα破壊が、抗原提示細胞(APC)の活性化機能に影響を及ぼさないことを本明細書で示す。
【0038】
EAEの終点でのCNS中の炎症細胞の不在とは対照的に、本発明者は、疾患の発症の前に、IL−18Rα−/−CNS中で、比較に値するCD4+T細胞浸潤を検出することができた。他の炎症細胞もまた、wtマウス及びIL−18−/−マウスと同じ程度までCNSを浸潤した。したがって、IL−18Rα欠損は、CNS中への免疫細胞の侵入に影響を及ぼさないが、存続するためのそれらの能力に影響を及ぼすにちがいない。興味深いことには、随伴性EAE感受性を伴わない、IL−18Rα−/−CNS中の炎症性浸潤物の存在は、IL−23−/−マウスにおいて起こる応答に似ている。
【0039】
本発明者は、IL−18Rα−/−KLHリコールリンパ球によるIL−17産生を分析し、RNA及びタンパク質の両レベルでIL−17の産生における著しい減少が実際にあることを実証する。したがって、IL−18Rα−/−マウスのEAEに対する抵抗性は、THIL−17発生が不十分である結果として説明することができるかもしれない。
【0040】
THIL−17細胞の欠如は、T細胞のこの亜集団上のIL−18Rα発現の不在に起因したように思われた。しかしながら、BM−キメラの生成により、RAG−/−BM細胞の存在下でのみ、IL−18Rα−/−マウス(RAG−/−+IL−18Rα−/−>wt)のEAEに対する感受性をよみがえらせることができたことを実証したように、これは事実ではなかった。IL−18Rα−/−>wtマウスは、他方、疾患誘発に対して抵抗性であった。したがって、IL−18Rαの存在は、非リンパ球白血球上で必要とされ、前THIL−17細胞上に直接位置しない。さらに、アクセサリー細胞上のIL−18Rαの重要性は、脳炎誘発性wt T細胞が、IL−18Rα−/−マウスにおいてEAEを誘発することができなかった養子移入実験において強められた。
【0041】
要約すると、本発明者は、EAEにおけるIL−18の非病原性の役割を実証することにより、MS及びEAEのTH1仮説を反駁する証拠を示す。しかしながら、対照的に、いわゆるIL−18Rαは、EAEの発生にとって決定的であり、したがって代替IL−18Rα結合リガンドの存在を暗示するものであり、これを、本発明者は、抗IL−18Rα抗体を用いてIL−18−/−マウスを処置し、それによってEAE重症度を減じることにより、確認することができた。あるいは、本発明者は、IL−18Rαシグナル伝達が脳炎誘発性THIL−17細胞の発生にとって決定的なことを示し、それによって、MOG35−55に誘発されるEAEに対するIL−18Rα−/−マウスの抵抗性を説明する。
【0042】
上記本明細書及び本出願の実施例で開示される結果は、本発明にとって、部分的に基礎となる。本明細書に説明されるように、本発明の発明者は、IL−18Rαのアンタゴニストが疾患を処置するのにin vivoで有効であることを発見した。具体的には、IL−18Rαの細胞外ドメインに結合する抗体は、この疾患のマウスモデルにおける実験的に誘発されたMSを予防するのに有用であることが分かった。さらに、IL−18Rαアンタゴニストはまた、同じ動物モデルにおいて既に確立された疾患の進行をも阻害した。したがって、これらのin vivoデータは、IL−18Rαの阻害がMSを処置するのに有効であることを示す。IL−18Rα活性を中和する又はIL−18Rα遺伝子の発現を阻害する(転写又は翻訳のいずれか)任意の方法は、MSの症状を低下させるために使用することができる。
【0043】
したがって、本発明は、患者、特にヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法であって、患者に、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。本明細書に使用されるように、化合物の「治療的有効量」は、自己免疫疾患若しくは脱髄疾患(特にMS)又はその症状を処置する、寛解させる、又は予防するのに有効な化合物の最小限の量を意味する。本発明は、さらに、自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)の処置のための医薬の製造における、IL−18Rαのアンタゴニストの使用に関する。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態では、処置するための疾患は、再発寛解型(RR)MS、二次進行型(SP)MS、一次進行型(PP)MS、又は進行再発型(PR)MSである。
【0045】
本発明の文脈内の用語「IL−18Rαのアンタゴニスト」は、IL−18Rαの産生及び/又は作用が減衰する、低下する、又は部分的に、実質的に、若しくは完全にブロックされるように、IL−18Rαの産生及び/又は作用を調整する任意の分子を指す。特定の実施形態では、アンタゴニストは、IL−18Rαの産生を低下させる又は予防する。他の特定の実施形態では、アンタゴニストは、部分的に、実質的に、又は完全にIL−18Rαの活性をブロックする。
【0046】
IL−18Rαの産生及び/又は作用が減衰する、低下する、又は部分的に、実質的に、若しくは完全にブロックされるように、IL−18Rαの産生及び/又は作用を阻害する任意のアンタゴニストは、本発明の方法に従って自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)を処置するために使用されてもよい。たとえば、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、IL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの生物活性を阻害する低分子は、自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)を処置する又は予防するために使用することができる。さらに、IL−18Rαの発現を阻害する産物(たとえばsiRNA分子、アンチセンス分子、リボザイム等)は、自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)を処置する又は予防するために使用することができる。
【0047】
したがって、本発明は、患者、特にヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法であって、患者に、低分子、抗体、siRNA、アンチセンス核酸、及びリボザイムからなる群から選択される、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。本発明は、さらに、自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)の処置のための医薬の製造における、低分子、抗体、siRNA、アンチセンス核酸、及びリボザイムからなる群から選択される、IL−18Rαのアンタゴニストの使用に関する。
【0048】
本明細書に説明されるように、本発明の発明者は、IL−18Rαのアンタゴニストが疾患を処置するのにin vivoで有効であることを発見した。本発明者によって得られたデータは、IL−18Rαの阻害がIL−18に無関係の様式でMSの処置に有効であることを示す。したがって、本発明の一実施形態では、自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)を処置するために使用されるIL−18Rαのアンタゴニストは、IL−18活性を単に阻害するものではない。好ましくは、本発明で使用されるIL−18Rαのアンタゴニストは、IL−18(たとえばヒトIL−18)に選択的に結合する抗体ではない。
【0049】
IL−18結合タンパク質(IL−18BP、PCT国際公開第99/09063号に記載される)は、本発明によるIL−18Rαのアンタゴニストと考えられない。
【0050】
本発明は、さらに、医薬としての使用のための上記又は下記のIL−18Rαのアンタゴニストのいずれかに関する。
【0051】
本発明の特定の実施形態では、アンタゴニストは、抗原提示細胞中の、より具体的には単核食細胞、多核食細胞、樹状細胞、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される抗原提示細胞中のIL−18Rαの活性を阻害することができる。
【0052】
本発明の実施形態では、IL−18Rαのアンタゴニストは、IL−17産生TH細胞の発生を阻害することができる。
【0053】
ヒトIL−18RαをコードするcDNAは、配列番号1に示される。このcDNAは、541個のアミノ酸長のタンパク質(配列番号2)をコードし、このタンパク質は、18個のアミノ酸のシグナルペプチド(配列番号2の残基1〜18)を含む、329個のアミノ酸の細胞外ドメイン(配列番号2の残基1〜329)、21個のアミノ酸の膜貫通領域(配列番号2の残基330〜350)、及び配列番号2のアミノ酸351〜541からの細胞質ドメインを含む。
【0054】
1)低分子:
一実施形態では、本発明の方法での使用のためのアンタゴニストは低分子である。IL−18Rαの任意の低分子アンタゴニストは、MSを処置する又は予防するために本発明の方法に従って使用することができる。一般に、低分子は、質量が1000ダルトン未満であろう、また500ダルトン未満であることが多いであろう。典型的に、低分子は、自然発生のもの又は人工的に作り出されたもの(たとえば化学合成を介して)にかかわらず、有機化合物を指し、タンパク質、ポリペプチド、又は核酸ではなく、複数の炭素−炭素結合を有する。
【0055】
2)抗体:
本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法での使用のためのアンタゴニストは、IL−18Rαに選択的に結合する抗体である。上記抗体は、患者、好ましくはヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)の症状を処置する、予防する、又は寛解させるために使用される。適した抗体は、後に本明細書で記載されるポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体、免疫抱合体、並びに抗体断片(Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、及びFv断片、抗体断片から形成される二特異性抗体、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、一特異性抗体、並びに多特異性抗体等)を含む。好ましい実施形態では、抗体は、IL−18Rαの細胞外ドメインに結合する。
【0056】
特定の実施形態では、本発明の方法で使用される抗体は、配列番号2のポリペプチド、より具体的には配列番号2の残基1〜329、配列番号2の残基19〜329、配列番号2の残基330〜350、又は配列番号2の残基351〜541に選択的に結合する。特定の態様では、抗体は、配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329に選択的に結合する。他の特定の態様では、抗体は、配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329に選択的に結合する。好ましい実施形態では、抗体は、ヒトIL−18Rαの細胞外ドメインに位置するエピトープに選択的に結合する。さらに好ましくは、このエピトープは、配列番号2のアミノ酸19〜329に位置する。他の実施形態では、このエピトープは、配列番号2のアミノ酸残基19〜219に又は配列番号2のアミノ酸残基122〜329に位置する。他の特定の態様では、エピトープは、配列番号2のアミノ酸19〜132又は配列番号2の122〜219又は配列番号2の213〜329に位置する。
【0057】
本発明の文脈内で、用語「選択的に」結合するは、抗体が、標的ポリペプチド又はエピトープに優先的に、つまり他のいかなる抗原又はエピトープに対するいかなる結合よりも高度な親和性で結合することを示す。言い換えれば、標的ポリペプチドへの結合は、他の抗原への非特異的結合と区別することができる。本発明による抗体は、標的ポリペプチド又はエピトープに対して、106M−1以上、好ましくは107M−1以上、より好ましくは108M−1以上、最も好ましくは109M−1以上の結合親和性(Ka)を示すことが好ましい。抗体の結合親和性は、たとえばScatchard解析によって当業者によって容易に決定することができる(Scatchard G.,Ann NY Acad.Sci.51:660−672,1949)。
【0058】
本発明の方法での使用に適した抗体は、後に本明細書で記載されるポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体、免疫抱合体、並びに抗体断片(Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、及びFv断片、抗体断片から形成される二特異性抗体、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、一特異性抗体、並びに多特異性抗体等)を含む。
【0059】
A.ポリクローナル抗体:
げっ歯類、霊長類、及びウマを含む様々な種からのポリクローナル抗体を調製する方法は、たとえばVaitukaitisらに記載されている(J Clin Endocrinol Metab.33(1971)p.988)。ポリクローナル抗体は、たとえば免疫剤及び所望であればアジュバントの1回又は複数回の注射によって哺乳動物中で産生することができる。典型的に、免疫剤及び/又はアジュバントは、複数回の皮下注射又は腹腔内注射によって哺乳動物に注射されるであろう。免疫剤は、配列番号2のポリペプチド又はより具体的には、配列番号2の残基1〜329若しくは配列番号2の残基19〜329若しくは配列番号2の残基330〜350若しくは配列番号2の残基351〜541若しくはその融合タンパク質、さらに具体的には、配列番号2の残基19〜219若しくは配列番号2の残基122〜329若しくは配列番号2の残基19〜132若しくは配列番号2の残基122〜219若しくは配列番号2の残基213〜329若しくはその融合タンパク質を含んでいてもよい。免疫されている哺乳動物中で免疫原性であることが知られているタンパク質に免疫剤を抱合することは有用である可能性がある。上記免疫原性タンパク質の例は、キーホールリンペットヘモシニアン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、及び大豆トリプシンインヒビターを含むが、これらに限定されない。用いられてもよいアジュバントの例は、フロインド完全アジュバント及びMPL−TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)を含む。繰り返し注射が行われてもよい。血液サンプルは収集され、免疫グロブリン又は血清は分離される。
【0060】
B.モノクローナル抗体
あるいは、抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質の抗体の集団から得られた抗体を指す、つまり集団を含む個々の抗体は、微量で存在する可能性のある、起こり得る自然発生の突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して作られる。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質の集団から得られた抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の産生を必要とするとして解釈されるものではない。
【0061】
モノクローナル抗体を産生する方法は、参照によって本明細書に組み込まれるたとえばHarlowら(Antibodies:A laboratory Manual,CSH Press,1988)又はKohlerら(Nature 256(1975)495)に見出されてもよい。
【0062】
ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物は、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生する又は産生することができるリンパ球を誘発するために免疫剤を用いて典型的に免疫される(免疫剤は、配列番号2のポリペプチド又はより具体的には、配列番号2の残基1〜329若しくは配列番号2の残基19〜329若しくは配列番号2の残基330〜350若しくは配列番号2の残基351〜541若しくはその融合タンパク質、さらに具体的には、配列番号2の残基19〜219若しくは配列番号2の残基122〜329若しくは配列番号2の残基19〜132若しくは配列番号2の残基122〜219若しくは配列番号2の残基213〜329若しくはその融合タンパク質を典型的に含むであろう)。あるいは、リンパ球は、in vitroで免疫されてもよい。一般に、ヒト起源の細胞が所望であれば、末梢血リンパ球(「PBL」)が使用される、又は非ヒト哺乳動物源が所望であれば、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、リンパ球は、ハイブリドーマ細胞を形成するために、ポリエチレングリコール等の適した融合剤を使用して不死化細胞系と融合される(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−103)。不死化細胞系は、普通、形質転換された哺乳動物細胞、詳細にはげっ歯類、ウシ、及びヒト起源の骨髄腫細胞である。普通、ラット又はマウスの骨髄腫細胞系が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、非融合不死化細胞の成長又は生存を阻害する1つ又は複数の物質を好ましくは含有する適した培地中で培養されてもよい。たとえば、親細胞が、酵素であるヒポキサンチングアニンホスホリボシル転移酵素(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培地は、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを典型的に含むであろう(「HAT培地」)、またこれらの物質は、HGPRT欠損の細胞の成長を予防する。好ましい不死化細胞系は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高度なレベルの発現を維持し、且つHAT培地等の培地に敏感である不死化細胞系である。より好ましい不死化細胞系はネズミ骨髄腫系であり、これらは、たとえばSalk Institute Cell Distribution Center、サンディエゴ、カリフォルニア及びAmerican Type Culture Collection、マナッサス、バージニアから得ることができる。ヒト骨髄腫細胞系及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系は、さらに、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987)pp.51−63)。
【0063】
次いで、ハイブリドーマ細胞が培養される培地は、免疫ペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又は放射免疫アッセイ(RIA)若しくは酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)等のin vitro結合アッセイによって決定される。上記技術及びアッセイは、当技術分野で知られている。モノクローナル抗体の結合親和性は、たとえば、Munson及びPollard,Anal.Biochem.,107:220(1980)のScatchard解析によって決定することができる。
【0064】
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローニングし、標準の方法(Goding,前掲)によって成長させてもよい。この目的に適した培養液は、たとえば、ダルベッコ修飾イーグル培地及びRPMI−1640培地を含む。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物中の腹水としてin vivoで成長させてもよい。
【0065】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、たとえばプロテインAセファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製手順によって培養液又は腹水から単離されてもよい又は精製されてもよい。
【0066】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4816567号に記載される方法等の組換えDNA方法によって作製されてもよい。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して、容易に単離し、配列決定することができる(たとえば、ネズミ抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブの使用によって)。本発明のハイブリドーマ細胞は、上記DNAの好ましい源として役立つ。DNAは、一度単離されると、発現ベクター中に配置されてもよく、次いで、発現ベクターは、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を達成するために、他の状態では免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞等の宿主細胞中に形質移入される。
【0067】
「モノクローナル抗体」はまた、たとえばClacksonら,Nature,352:624−628[1991]及びMarksら,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載される技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0068】
抗体は、一価抗体であってもよい。一価抗体を調製する方法は、当技術分野でよく知られている。たとえば、ある方法は、免疫グロブリンの軽鎖及び修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、重鎖架橋を予防するために、Fc領域の任意のポイントで一般に切断される。あるいは、関連するシステイン残基は、架橋を予防するために他のアミノ酸残基と置換される又は取り除かれる。
【0069】
in vitro方法もまた一価抗体を調製するのに適している。抗体の断片、詳細にはFab断片を産生するための抗体の消化は、当技術分野で知られているルーチン的な技術を使用して達成することができる。
【0070】
抗体は、たとえばWardら(Nature 341(1989)544)に開示されるように、免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーの選択によって産生されてもよい。
【0071】
C.ヒト抗体及びヒト化抗体:
好ましくは、本発明での使用のための抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体である。非ヒト(たとえばネズミ)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ免疫グロブリン、キメラ免疫グロブリン鎖、又はその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は抗体の他の抗原結合部分配列等)である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、及び性能を有する、マウス、ラット、又はウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基と交換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。いくつかの場合では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は対応する非ヒト残基と交換される。
【0072】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当技術分野でよく知られている。ヒト化は、ヒト抗体の対応する配列の代わりにげっ歯類のCDR又はCDR配列を用いることによって、Winter及び共同研究者らの方法に従って本質的に行うことができる(Jonesら,Nature,321:522−525(1986);Riechmannら,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら,Science,239:1534−1536(1988))。したがって、上記「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4816567号)、実質的に無処置ではないヒト可変ドメインは、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている。
【0073】
いくつかの場合では、ヒトフレームワークへのCDRの移入は、ヒト化抗体の特異性の損失をもたらす。これらの場合では、復帰突然変異を、抗体のヒト部分のフレームワーク領域中に導入することができる。復帰突然変異を作製する方法は、当技術分野でよく知られており、たとえばCoら,PNAS USA 88;2269−2273(1991)及び国際公開第90/07861号に記載される。
【0074】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野で知られている様々な技術を使用して産生することもできる(Hoogenboom及びWinter,J.Mol.Biol,227:381(1991);Marksら,J.Mol.Biol,222:581(1991))。Coleら及びBoernerらの技術もまたヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Coleら,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)及びBoernerら,J.Immunol.,147(1):86−95(1991))。同様に、ヒト抗体は、トランスジェニック動物、たとえば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されたマウス中へのヒト免疫グロブリン座の導入によって作製することができる。抗原投与に際して、ヒト抗体産生は、観察され、遺伝子の再構成、構築、及び抗体レパートリーを含むすべての点でヒトで見られるものに非常によく似ている。このアプローチは、たとえば米国特許第5545807号;第5545806号;第5569825号;第5625126号;第5633425号;第5661016号;並びに以下の科学刊行物:Marksら,Bio/Technology,10:779−783(1992);Lonbergら,Nature,368:856−859(1994);Morrison,Nature,368:812−13(1994);Fishwildら,Nature Biotechnology,14:845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology,14:826(1996);Lonberg及びHuszar,Intern.Rev.Immunol.,13:65−93(1995)に記載される。
【0075】
D.免疫抱合体:
本発明は、さらに、共有結合で又は非共有結合で、直接又はカップリング剤若しくはリンカーの使用を通して細胞毒、標識、薬剤、又は他の治療薬等の異種の部分に抱合された抗体を含む免疫抱合体の使用に関する。細胞毒は、化学療法剤、毒素(たとえば細菌、菌類、植物、又は動物起源の酵素活性毒素又はその断片)又は放射性同位体(つまり放射性抱合体)を含む。
【0076】
使用することができる酵素活性毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌からの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、ニガウリインヒビター、クルシン、クロチン、サパオナリアオフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、リストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、及びトリコテセネス(tricothecenes)を含む。種々の放射性核種は、放射性抱合抗体の産生に利用可能である。例として212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reを含む。
【0077】
他の実施形態では、抗体は、細胞プリターゲッティングにおける利用のために「受容体」(ストレプトアビジン等)に抱合させてもよく、抗体−受容体抱合体は、患者に投与され、その後、除去剤を使用して血行路から結合していない抱合体を除去し、次いで、細胞毒(たとえば放射性ヌクレオチド)に抱合されている「リガンド」(たとえばアビジン)を投与する。
【0078】
さらに、本発明の抗体又は抗体断片は、当技術分野の又は本明細書に記載される方法を使用してペグ化することができる。本明細書に開示される抗体はまた、免疫リポソームとして製剤されてもよい。抗体を含有するリポソームは、Epsteinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688(1985);Hwangら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030(1980);並びに米国特許第4485045号及び第4544545号に記載される等の、当技術分野で知られている方法によって調製される。循環時間が増強されたリポソームは米国特許第5013556号に開示される。
【0079】
E.抗体断片:
本発明は、さらに、無処置抗体の一部分、好ましくは無処置抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む「抗体断片」の使用に関する。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、抗体断片から形成される二特異性抗体、直鎖状抗体(Zapataら,Protein Eng.,8(10):1057−1062[1995])、一本鎖抗体分子、一特異性抗体、並びに多特異性抗体を含む。
【0080】
「Fv」は、完全抗原認識部位及び完全抗原結合部位を含有する最小限の抗体断片である。この領域は、密接に、非共有的に結びつけられた1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用するのはこの立体配置においてであり、VH−VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義している。共同して、6個のCDRは、抗原結合特異性を抗体に付与する。しかしながら、全結合部位よりも親和性が低いが、単一の可変ドメインでさえ(又は抗原に特異的な3つのCDRしか含まない半分のFv)抗原を認識し、且つ結合する能力を有する。
【0081】
Fab断片は、さらに、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab断片は、Fab’断片と異なり、Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ又は複数のシステインを含むごくわずかな残基が重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に追加されている。Fab’−SHは、Fab’に対する本明細書での呼称であり、定常領域のシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つ。F(ab’)2抗体断片は、Fab’断片の間にヒンジシステインを有する、Fab’断片のペアとしてもともとは産生された。抗体断片の他の化学的カップリングもまた知られている。任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常領域のアミノ酸配列に基づき、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に別とされる種類のうちの一方に指定することができる。
【0082】
「一本鎖抗体分子」は、上述の抗体のVHドメイン及びVLドメインを含む抗体の断片であり、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、一本鎖抗体分子が抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VHドメイン及びVLドメイン間のポリペプチドリンカーをさらに含む。一本鎖抗体分子の検討については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,Vol.113,Rosenburg及びMoore編,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。
【0083】
用語「二特異性抗体」は、2つの抗原結合部位を有する低分子抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖中に、軽鎖可変ドメイン(VL)に対してつながれた重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH−VL)。好ましくは、同じ鎖上の2つのドメイン間でペア形成させるには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、他の鎖のうちの相補的ドメインとペア形成するように強いられ、2つの抗原結合部位を作り出す。二特異性抗体は、たとえば、欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollingerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)に、より十分に記載される。
【0084】
本明細書で使用される用語「一特異性抗体」は、重鎖可変ドメインを有し、且つ軽鎖可変ドメインを有していない抗原結合分子を指す。一特異性抗体は、軽鎖がない状態で抗原に結合することができ、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3と示される3つのCDR領域を典型的に有する。一特異性抗体は、2本の足指及び強靭な足底を有する足を有する動物を含む、ラクダ科の動物源から得られた「ラクダ科動物一特異性抗体」を含む。ラクダ科の動物は、ラクダ、ラマ、及びアルパカを含む。ラクダ(ヒトコブラクダ及びフタコブラクダ)は、それらの血清からの物質を分析すると可変軽鎖ドメインを欠くことが多いことが報告されており、十分な抗体特異性及び親和性は、VHドメイン(3つのCDRループ)のみに由来し得ることを示唆する。一特異性抗体はまた、様々な動物源、特に哺乳動物(たとえばマウス、ラット、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ、又はヒト)からの修飾VHも含み、VLがない状態で抗原に結合することができる。好ましくは、VHは、VLがない状態で抗原にVHが結合するために、VLとの接合点の位置で修飾される。Davies及びRiechmannは、たとえば、高度な親和性(107M−1以上の、標的ポリペプチドに対する結合親和性(Ka))及び高度な特異性を有する「ラクダ化一特異性抗体」を生成することができることを実証した(Davies&Riechmann,1995,Biotechnology(NY),13(5):475−9)。軽鎖可変ドメイン(VL)に対するその接合点を通したVHの非特異的結合は、この接合点における3つの突然変異(G44E、L45R、及びW47G)によって予防された。これらの突然変異は、軽鎖パートナーが自然で欠けているラクダ科動物抗体重鎖を模倣するよう導入された。
【0085】
F.本発明の方法での使用のための他の抗体:
本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法での使用のためのアンタゴニストは、IL−18Rαに選択的に結合する本明細書で上記に記載される抗体である。本発明の方法での使用のための抗体は、たとえばPCT出願国際公開第97/31010号又は欧州出願第0850952号に記載され、それらの全体が本出願に参照により組み込まれる。
【0086】
好ましくは、本発明の方法での使用のための抗体は、ヒトIL−18Rαに、さらに好ましくはヒトIL−18Rαの細胞外ドメインに位置するエピトープに選択的に結合する。上記抗体は、ヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(MS等)の症状を処置する、予防する、又は寛解させるために使用される。
【0087】
特定の実施形態では、上記抗体は、本明細書で上記に記載されるモノクローナル抗体、ヒト抗体若しくはヒト化抗体、免疫抱合体、又は抗体断片(Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、及びFv断片、抗体断片から形成される二特異性抗体、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、一特異性抗体、並びに多特異性抗体等)である。
【0088】
本発明の特定の一態様では、上記抗体は、ヒトIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する。より具体的には、上述の抗体は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1、2、3、4、5、又は6個のCDRを含む抗原結合ドメインを有する。好ましくは、上述の抗体の抗原結合ドメインは、配列番号5、配列番号6、及び配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1、2、又は3個のCDR並びに配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1、2、又は3個のCDRを含む。より好ましくは、上述の抗体の抗原結合ドメインは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のアミノ酸配列を有する6個のCDRを含む。
【0089】
本発明の他の実施形態では、上述の抗体はVHドメインを含む。好ましくは、VHドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を含む又はそこにある。他の実施形態では、抗体はVLドメインを含む。好ましくは、VLドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を含む又はそこにある。好ましい実施形態では、抗体は、VHドメイン及びVLドメインを含む。より好ましくは、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む又はそこにあるVHドメイン及び配列番号4のアミノ酸配列を含む又はそこにあるVLドメインを含む。
【0090】
他の実施形態では、抗体は、ヒトIgG1定常ドメイン、ヒトIgG2定常ドメイン、ヒトIgG3定常ドメイン、ヒトIgG4定常ドメイン、ヒトIgM定常ドメイン、ヒトIgE定常ドメイン、及びヒトIgA定常ドメインからなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。好ましくは、重鎖免疫グロブリン定常領域ドメインはヒトIgG1定常ドメインである。他の実施形態では、抗体は、ヒトIgカッパ定常ドメイン及びヒトIgラムダ定常ドメインからなる群から選択される軽鎖免疫グロブリン定常ドメインをさらに含む。
【0091】
他の実施形態では、抗体は、Ig定常重鎖領域、ヒトIgカッパ定常ドメイン及びヒトIgラムダ定常ドメインからなる群から選択されるIg定常軽鎖領域、配列番号3のアミノ酸配列を有するIg可変重鎖領域、並びに配列番号4のアミノ酸配列を有するIg可変軽鎖領域としてヒトIgG1を含む(後にAb1と命名される)。
【0092】
詳細には、本明細書に開示される抗体の好ましい実施形態は、本明細書で上記に定義されるヒト抗体若しくはヒト化抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、抗体断片から形成される二特異性抗体、直鎖状抗体、一本鎖抗体、一特異性抗体、又は多特異性抗体等の抗体断片である。最も好ましくは、抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0093】
本発明の方法での使用に適した他の抗体は、以下のモノクローナル抗体を含む:モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70614(R&D Systems社、ミネアポリス、MN、米国、カタログ番号:MAB8401によって市販化)、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70625(R&D Systems社、ミネアポリス、MN、米国、カタログ番号:MAB840によって市販化)、モノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンB−E43(抗体番号80232(Diaclone社、ブザンソン、フランス、カタログ番号854 900 000によって市販化))、モノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンH44(抗体番号80438(Diaclone社、ブザンソン、フランスによって市販化))。上述の抗体のヒト化形態は、好ましい。
【0094】
一実施形態では、本発明の方法での使用のための抗体は、本明細書で上記に記載されるAb1、クローン70614、クローン70625、クローンB−E43、及び/又はクローンH44とヒトIL−18Rαへの結合について競合する抗体である。競合結合アッセイは、Ab1、クローン70614、クローン70625、クローンB−E43、及び/又はクローンH44とヒトIL−18Rαへの結合について競合する抗体を同定するために使用することができる。当技術分野で知られている多くの競合結合アッセイのいずれも、同じ抗原に対する2つの抗体間の競合を測定するために使用することができる。手短に言えば、異なる抗体が他の抗体の結合を阻害する能力が試験される。たとえば、抗体は、サンドイッチELISAアッセイを使用して、それらが結合するエピトープによって区別することができる。これは、ウェルの表面をコーティングするために捕捉抗体を使用することにより実行される(捕捉抗体は、たとえばAb1、クローン70614、クローン70625、クローンB−E43、及び/又はクローンH44とすることができる)。次いで、半飽和濃度のタグ付き抗原を、捕捉表面に追加する(たとえばヒトIL−187Rα又はその一部(たとえばヒトIL−187Rαの細胞外ドメイン)。このタンパク質は、特異的な抗体:エピトープ相互作用を通して抗体に結合するであろう。洗浄後、検出可能な部分(たとえば、検出抗体として定義される標識抗体に対するHRP)に連結された二次抗体を、ELISAに追加する。この抗体が捕捉抗体と同じエピトープを認識する場合、その特定のエピトープはもはや結合するために利用可能ではないので、標的タンパク質に結合することはできないであろう。しかしながら、この二次抗体が標的タンパク質上の異なるエピトープを認識する場合、二次抗体は結合することができるであろう、また、この結合は、関連する基質を使用して、活性(したがって結合した抗体)のレベルを定量することにより検出することができる。バックグラウンドは、捕捉抗体及び検出抗体の両方として単一の抗体を使用することにより定義されるが、最大シグナルは、抗原特異的抗体を用いて抗原上のタグを捕捉し、且つ抗原上のタグに対する抗体を検出することにより確立することができる。参考としてバックグラウンド及び最大シグナルを使用することによって、抗体は、エピトープ特異性を決定するためにペアの様式で評価することができる。上記に記載されるアッセイのいずれかを使用して、第1の抗体の存在下で、抗原への二次抗体の結合が少なくとも30%、普通少なくとも約40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又は85%、多くの場合少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、又は99%低下した場合、第1の抗体は二次抗体の結合を競合的に阻害すると考えられる。本明細書で上記に開示されるように、上記に記載されるアッセイのいずれかを使用して、Ab1、クローン70614、クローン70625、クローンB−E43、及び/又はクローンH44の存在下で、少なくとも30%、普通少なくとも約40% 50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又は85%、多くの場合少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、又は99%低下させる等で、Ab1、クローン70614、クローン70625、クローンB−E43、及び/又はクローンH44とヒトIL−18Rα、特にヒトIL−187Rαの細胞外ドメインへの結合について競合する抗体は、本発明の方法での使用のための抗体に相当する。詳細には、これらの競合抗体の好ましい実施形態は、本明細書で上記に定義されるヒト抗体若しくはヒト化抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、抗体断片から形成される二特異性抗体、直鎖状抗体、一本鎖抗体、一特異性抗体、又は多特異性抗体等の抗体断片である。最も好ましくは、これらの競合抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0095】
本発明の一実施形態では、本発明の方法での使用のための抗体は、以下の技術によって得ることができる又は得られた抗体である。宿主動物(たとえばマウス、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ロバ、サル、又は他の適切な宿主)は、免疫剤に特異的に結合するであろう抗体を産生するリンパ球を誘発するために、配列番号2のポリペプチド若しくはその融合タンパク質を含む若しくはそれからなる又はより具体的には、配列番号2の残基19〜329若しくはその融合タンパク質、さらに具体的には、配列番号2の残基19〜219若しくは配列番号2の残基122〜329若しくは配列番号2の残基19〜132若しくは配列番号2の残基122〜219若しくは配列番号2の残基213〜329若しくはその融合タンパク質を含む若しくはそれからなる免疫剤を用いて免疫される。あるいは、リンパ球はin vitroで免疫される。その場合、ヒト起源の細胞が所望であれば、末梢血リンパ球(「PBL」)が使用される又は非ヒト哺乳動物源が所望であれば、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、リンパ球は、ハイブリドーマ細胞を形成するために、適した融合剤(ポリエチレングリコール等)を使用して不死化細胞系と融合される(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−103)。次いで、ハイブリドーマ細胞が培養される培地は、免疫ペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又は放射免疫アッセイ(RIA)若しくは酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)等のin vitro結合アッセイによって決定される。IL−18Rαの結合についてのELISA試験は、たとえば、参照により組み込まれるVermot−Desroches Cら Cell Immunol.2005.236(1−2):101−4に記載されている。所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローニングし、標準の方法(Goding,前掲)によって成長させてもよい。この目的に適した培養液は、たとえば、ダルベッコ修飾イーグル培地及びRPMI−1640培地を含む。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物中の腹水としてin vivoで成長させてもよい。サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、たとえばプロテインAセファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製手順によって培地又は腹水から単離又は精製されてもよい。
【0096】
任意選択で、得られた抗体はヒト化されてもよい。非ヒト抗体をヒト化する方法は、当技術分野でよく知られている。ヒト化は、ヒト抗体の対応する配列の代わりにげっ歯類のCDR又はCDR配列を用いることによって、Winter及び共同研究者らの方法に従って本質的に行うことができる(Jonesら,Nature,321:522−525(1986);Riechmannら,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら,Science,239:1534−1536(1988))。したがって、上記「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4816567号)、実質的に無処置ではないヒト可変ドメインは、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている。いくつかの場合では、ヒトフレームワークへのCDRの移入は、ヒト化抗体の特異性の損失をもたらす。これらの場合では、復帰突然変異を、抗体のヒト部分のフレームワーク領域中に導入することができる。復帰突然変異を作製する方法は、当技術分野でよく知られており、たとえばCoら,PNAS USA 88;2269−2273(1991)及び国際公開第90/07861号に記載される。あるいは、ヒト抗体は、トランスジェニック動物、たとえば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されたマウス中へのヒト免疫グロブリン座の導入により作製することができる。抗原投与に際して、ヒト抗体産生は、観察され、遺伝子の再構成、構築、及び抗体レパートリーを含むすべての点でヒトで見られるものに非常によく似ている。このアプローチは、たとえば米国特許第5545807号;第5545806号;第5569825号;第5625126号;第5633425号;第5661016号;並びに以下の科学刊行物:Marksら,Bio/Technology,10:779−783(1992);Lonbergら,Nature,368:856−859(1994);Morrison,Nature,368:812−13(1994);Fishwildら,Nature Biotechnology,14:845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology,14:826(1996);Lonberg及びHuszar,Intern.Rev.Immunol.,13:65−93(1995)に記載される。
【0097】
一実施形態では、本発明は、ヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法であって、患者に、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することを含む方法に関し、アンタゴニストは、IL18−Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体であり、抗体は、
− 配列番号2の残基19〜329を含む(又は配列番号2の残基19〜329若しくは配列番号2の残基122〜329若しくは配列番号2の残基19〜132若しくは配列番号2の残基122〜219若しくは配列番号2の残基213〜329若しくはその融合タンパク質からなる)免疫剤を用いて宿主動物を免疫するステップ、
− 上述の宿主動物によって産生されたリンパ球を不死化細胞系と融合させてハイブリドーマ細胞を形成するステップ、
− 免疫ペプチドに対する抗体を産生するハイブリドーマ細胞のクローンを選択するステップ、
− EAE動物モデル中のハイブリドーマ細胞の異なるクローンによって産生された抗体の活性を試験し、上述の動物モデルにおけるEAEの進行を阻害する抗体を選択するステップ、
− 分泌されたモノクローナル抗体を産生するステップ
を含む又はそれらからなるプロセスによって得ることができる。
【0098】
任意選択で、さらなるステップにおいて、得られた抗体はヒト化されてもよい。あるいは、免疫された宿主動物は、本明細書で上記に開示される、内在性免疫グロブリン遺伝子がヒト免疫グロブリンと交換されたトランスジェニック動物、たとえば、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されたマウスである。抗原投与に際して、ヒト抗体産生は、観察され、遺伝子の再構成、構築、及び抗体レパートリーを含むすべての点でヒトで見られるものに非常によく似ている。
【0099】
本発明の他の実施形態では、本発明の方法での使用のための抗体は、ファージディスプレイによって得ることができる又は得られた抗体である。その場合、「モノクローナル抗体」は、たとえばClacksonら,Nature,352:624−628[1991]及びMarksら,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載される技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離される。
【0100】
好ましくは、本明細書で上記に記載され、本発明の方法で使用される抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体であり、上記ヒト抗体又はヒト化抗体を作り出すための技術もまたよく知られており、たとえばProtein Design Labs社(フリーモント、CA)、Medarex社(プリンストン、NJ)、及びAbgennix社(フリーモント、CA)から市販されている。
【0101】
3)IL−18Rαの発現の阻害:
上記に論じられるように、本発明は、IL−18Rαにアンタゴナイズする作用物質を用いて動物を処置することにより、MSについて動物モデルにおける症状が低下するという発見に部分的に基づく。たとえば、下記の実施例2及び3に記載されるように、本本発明者は、IL−18Rα−/−マウスがEAEに対して抵抗性であること及びIL−18RαのブロックがIL−18−/−マウスにおいてEAEを予防することを実証した。したがって、転写又は翻訳のレベルでIL−18Rα遺伝子の特異的発現を妨害するヌクレオチド配列は、自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)を処置する又は予防するために使用することができる。このアプローチは、たとえば、siRNA及び/若しくはリボザイムを用いてmRNAの分解を誘発することによって又はアンチセンス核酸を用いてmRNAをマスクすることによって特異的mRNAの転写又は翻訳をブロックするために、siRNA及び/若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド並びに/又はリボザイムを利用してもよい。
【0102】
A.siRNA
本発明の一実施形態では、本発明の方法での使用のためのアンタゴニストはsiRNAである。RNA干渉(RNAi)は、興味のある遺伝子又はmRNAに対応する二本鎖RNA(dsRNA)が生物中に導入され、対応するmRNAの分解をもたらす転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)のメカニズムを指す。哺乳動物細胞の実験的操作のためにこの現象を利用するための最初の試みは、長いdsRNA分子に応じて活性化された頑強で非特異的な抗ウイルス性防御メカニズムにより妨害された(Gilら Apoptosis 2000,5:107−114)。
【0103】
IL−18Rα遺伝子に対応する二本鎖siRNAは、IL−18Rα mRNA転写物の分解を誘発することにより、IL−18Rαの転写及び/又は翻訳をサイレンシングするために使用することができ、したがって、IL−18Rαの発現を予防することにより自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)を処置する又は予防することができる。RNAi反応では、dsRNA分子のセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、典型的に長さが約10〜約30個のヌクレオチド、より典型的に長さが19〜25個のヌクレオチド(nt)、好ましくは長さが21〜23個のntの範囲の、2個のヌクレオチドの3’末を有する低分子のRNA断片又はRNAセグメントに処理される。これらのdsRNAは、「ガイドRNA」又は「低分子干渉RNA」(siRNA)として知られている。siRNAは、さらに、siRNA二重鎖の両方の鎖が単一のRNA分子内に含まれる、低分子U字型RNA(shRNA)を含むことができる。あるいは、長さが19〜25個のntであり、好ましくは長さが21〜23個のntであり、2個のヌクレオチドの3’末を有する合成dsRNAは、合成し、精製し、且つ反応において使用することができる。したがって、RNAiは、低分子干渉RNA(siRNA)によって典型的に媒介され、低分子干渉RNAは、長さが約19個のヌクレオチドで、各鎖上に1〜2個のヌクレオチドの3’オーバーハングを有し、全長が約21〜23個の間のヌクレオチドの二本鎖領域を典型的に含む。
【0104】
次いで、siRNA二重鎖は、siRNAに対して相同性を有する内在性mRNAを標的にし、且つ複合体内で破壊するタンパク質から構成されるヌクレアーゼ複合体に結合する。この様式で、特異的mRNAを標的にし、分解することができ、それによって、標的にされたmRNAからのタンパク質発現の損失がもたらされる。dsRNAの特定の条件及び修飾は、PCT国際公開第01/75164号に記載される(参照により本明細書に組み込まれる)。dsRNA分子は、長さが変動し得るが、長さが19〜25個のnt、最も好ましくは長さが21〜23個のヌクレオチドであり、特徴的な2〜3個のヌクレオチドの3’オーバーハング端、典型的に(2’−デオキシ)チミジン又はウラシルを有するsiRNA分子を使用することが好ましい。siRNAは、3’水酸基を典型的に含む。単鎖siRNA及びdsRNAの平滑末端形態もまた使用することができる。RNAの安定性をさらに増強するために、3’オーバーハングは、分解に対して安定化することができる。上記一実施形態では、RNAは、アデノシン又はグアノシン等のプリンヌクレオチドを含むことにより安定化される。あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、たとえば(2’−デオキシ)チミジンによるウリジン2−ヌクレオチドオーバーハングの置換は、許容され、RNAiの効率に影響を及ぼさない。2’水酸基がないと、組織培養培地における、オーバーハングのヌクレアーゼ抵抗性が著しく増強される。siRNAは、PCT国際公開第01/75164号に記載される方法を含む、当技術分野で知られている方法のいずれかを使用して又はRNAのin vitro転写のための標準の手順及びElbashirら(Genes&Dev.,15:188−200,2001)に記載されるdsRNAアニーリング手順を使用して調製することができる。
【0105】
本発明では、dsRNA又はsiRNAは、ヒトIL−18RαをコードするmRNAの配列の少なくとも一部に対応し、ヒトIL−18Rαの発現又は生物活性を低下させる又は阻害することができる。好ましくは、dsRNA又はsiRNAは、配列番号1に示されるcDNA配列の少なくとも一部に対応し(つまりsiRNAは、配列番号1に示されるcDNA配列の二本鎖領域である)、ヒトIL−18Rαの発現又は生物活性を低下させる又は阻害することができる。望ましくは、siRNAは、ヒトIL−18Rαの18〜25個の連続したヌクレオチドに100%相補的であり、ヒトIL−18Rαの発現又は生物活性を低下させる又は阻害することができる。さらに好ましくは、siRNAは、配列番号1に示される配列の18〜25個の連続したヌクレオチドに100%相補的であり、ヒトIL−18Rαの発現又は生物活性を低下させる又は阻害することができる。好ましい実施形態では、IL−18Rα生物活性の減少率は、コントロールのdsRNA、shRNA、又はsiRNAを用いて処置した細胞と比較して、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%、最も好ましくは少なくとも95%である。タンパク質発現のレベルをアッセイする方法は、当技術分野で知られており、ウエスタンブロット、免疫沈降、及びELISAを含む。IL−18Rαポリペプチド生物活性をアッセイする方法は、本明細書に記載されるアッセイを含む。
【0106】
本発明の状況において、siRNA等のRNAi誘発剤は、治療目的、たとえば、自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)を処置する又は予防するために有用である。いくつかの実施形態では、処置するための疾患は、再発寛解型(RR)MS、二次進行型(SP)MS、一次進行型(PP)MS、又は進行再発型(PR)MSである。特に、RNAiは、哺乳動物脳において有効であることが示されたこと及びshRNA分子の転写のための鋳型を提供するベクターは、脳中に導入されると局所的な遺伝子発現をダウンレギュレートすることが示されたことが注目されている(Hommel,JDら,Nature Medicine,9(12)1539−1544)。干渉RNAがない状態で検出された症状と比較した、MS症状の重症度における減少は、siRNAの効果を監視するために使用することができる。
【0107】
siRNAは、siRNAの注射、吸入、又は経口摂取を含む、当技術分野で知られている任意の手段を使用して、患者に送達することができる。他のsiRNAに適した送達系は、たとえば、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、並びに水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベース系等のコロイド分散系である。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、in vitro及びin vivoでの送達媒体として有用な人工膜小胞である。リポソーム内のRNA及びDNAを含む核酸は、生物学的活性形態で細胞に送達される(Fraleyら,Trends Biochem.Sci.,6:77,1981)。リポソームは、当技術分野で知られている任意の手段を使用して、特定の細胞型又は組織を標的にすることができる。
【0108】
多数の化学的修飾は、siRNA二重鎖又は一方若しくは両方の鎖の部分及び/又は3’オーバーハング(複数可)に対して成すことができるが、サイレンシング活性を消失させず、またサイレンシング活性を著しく減じないことが多い(Dorsett,Y及びTuschl,T.,Nat Rev Drug Discov.2004.3(4):318−29)。上記修飾は、一般に、安定性、細胞取り込み、及び/又はsiRNAの細胞内効果を増強する可能性がある。本発明は、任意の上記修飾、たとえばホスホロチオエート、2’−Oメチル、2’−O,4’−メチレンヌクレオチド等及び当技術分野、たとえばアンチセンス分野からの知られている他の修飾を有するsiRNA又はshRNAの使用を包含する。
【0109】
B.アンチセンス
本発明の一実施形態では、本発明の方法での使用のためのアンタゴニストは、完全な又は部分的な長さのアンチセンスRNA転写物である。アンチセンス核酸は、一般に、標的核酸(たとえばmRNA転写物)の一部分に相補的な単鎖核酸(DNA、RNA、修飾DNA、又は修飾RNA)であり、したがって、二重鎖を形成するよう標的に結合することができる。典型的に、アンチセンス核酸は、長さが15〜35個のヌクレオチド、好ましくは長さが15〜25個のヌクレオチドの範囲であるが、長さが10〜約50個までのヌクレオチドの範囲であってもよいオリゴヌクレオチドである。結合は、典型的に、標的核酸の機能を低下させる又は阻害する。たとえば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNAに結合すると転写をブロックし、mRNAに結合すると翻訳を阻害し、及び/又は核酸の分解をもたらす可能性がある。細胞中で、アンチセンス核酸は、対応するmRNAにハイブリダイズし、二本鎖分子を形成する。細胞は二本鎖であるmRNAを翻訳しないので、アンチセンス核酸はmRNAの翻訳を妨害する。それほど多くはないが、DNAに直接結合するアンチセンス分子が使用されてもよい。
【0110】
IL−18Rαの発現における低下は、ポリペプチドをコードするmRNAの配列に相補的な配列を含むアンチセンス核酸又はペプチド核酸の投与によって達成されてもよい。ヒトIL−18Rαポリペプチドをコードする核酸配列に特異的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドが好ましい。それらは、IL−18Rαの転写及び/又は翻訳をサイレンシングするために使用することができ、したがって自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)を処置する又は予防することができる。たとえば、配列番号1に記載される核酸配列に特異的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本発明の方法で使用することができる。典型的に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが15〜35個のヌクレオチド、好ましくは長さが15〜25個のヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチドであり、配列番号1に記載される核酸配列に相補的である。アンチセンス核酸がない状態で検出された症状と比較した、MS症状の重症度における減少は、アンチセンス核酸の効果を監視するために使用することができる。
【0111】
アンチセンス核酸は、自然発生ヌクレオチド又は(i)ホスホジエステル骨格の置換(たとえばペプチド核酸、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、及びホスホロアミダートオリゴヌクレオチド)、(ii)糖塩基の修飾(たとえば2’−O−プロピルリボース及び2’−メトキシエトキシリボース)、並びに(iii)ヌクレオシドの修飾(たとえばC−5プロピニルU、C−5チアゾールU、及びフェノキサジンC)を含む修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい(Wagner,Nat.Medicine,1:1116,1995;Vargaら,Immun.Lett.,69:217,1999;Neilsen,Curr.Opin.Biotech.,10:71,1999;Woolf,Nucleic Acids Res.,18:1763,1990)。
【0112】
ヒトIL−18Rα遺伝子に特異的なアンチセンスポリヌクレオチドの送達は、たとえば、ポリヌクレオチドの直接的な注射、吸入、又は摂取を含む、当技術分野で知られている任意の手段を使用して達成することができる。さらに、アンチセンスポリヌクレオチドは、組換え発現ベクター(たとえばアデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、又はレトロウイルスベースのウイルスベクター)又は本明細書に記載されるコロイド分散系(たとえばリポソーム)を使用して送達することができる。
【0113】
アンチセンス技術及びその適用は当技術分野でよく知られており、Phillips,M.I.(編)Antisense Technology,Methods Enzymol.,Volumes 313及び314,Academic Press,San Diego,2000並びにそこに言及される参考文献に記載される。Crooke,S.(編)「Antisense Drug Technology:Principles,Strategies,and Applications」(第1版),Marcel Dekker;ISBN:0824705661;第1版(2001)及びそこに言及される参考文献もまた参照されたい。
【0114】
C.リボザイム
リボザイムは、RNAの特異的開裂を触媒することができる酵素RNA分子である。検討のために、Rossi,1994,Current Biology 4:469−471を参照されたい、たとえばCotten及びBimstiel,EMBO J.8:3861−3866,1989;Usmanら,Nucl.Acids Mol.Biol.,10:243,1996;Usmanら,Curr.Opin.Struct.Biol.,1:527,1996;Sunら,Pharmacol.Rev.,52:325,2000もまた参照されたい。リボザイム作用のメカニズムは、相補的な標的RNAに対するリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションを含み、その後エンドヌクレアーゼ開裂イベントが続く。リボザイム分子の組成は、標的mRNAに相補的な1つ又は複数の配列及びmRNAの開裂を担う、よく知られている触媒配列又は機能的に等価な配列を好ましくは含む(たとえばその全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5093246号を参照されたい)。標的mRNA転写物を触媒的に開裂させるよう設計したリボザイム分子はまた、対象となる標的mRNAの翻訳を予防するために使用することもできる。
【0115】
部位特異的認識配列でmRNAを開裂させるリボザイムは、標的mRNAを破壊するために使用することができるが、ハンマーヘッド型リボザイムの使用が好まれる。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的mRNAと相補的塩基対を形成するフランキング領域によって決定された位置でmRNAを開裂する。好ましくは、標的mRNAは、2つの塩基の以下の配列を有する:5’−UG−3’。ハンマーヘッド型リボザイムの構築及び産生は、当技術分野でよく知られており、Haseloff及びGerlach,1988,Nature 334:585−591;並びにPCT出願国際公開第89/05852号に、より十分に記載され、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。ハンマーヘッド型リボザイム配列は、in vivoでの開裂効率を増加させるために、転移RNA(tRNA)等の安定したRNAに埋め込むことができる(Perrimanら,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:6175−79;de Feyter及びGaudron,Methods in Molecular Biology,Vol.74,Chapter 43,「植物におけるリボザイムの発現(Expressing Ribozymes in Plants)」,Turner,P.C編,Humana Press Inc.,Totowa,N.J.)。特に、tRNA融合リボザイムのRNAポリメラーゼIII媒介性の発現は、当技術分野でよく知られている(Kawasakiら,1998,Nature 393:284−9;Kuwabaraら,1998,Nature Biotechnol.16:961−5;及びKuwabaraら,1998,Mol.Cell 2:617−27;Kosekiら,1999,J.Virol 73:1868−77;Kuwabaraら,1999,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96:1886−91;Tanabeら,2000,Nature 406:473−4を参照されたい)。所与の標的cDNA配列内に多くの潜在的なハンマーヘッド型リボザイム開裂部位が典型的にある。好ましくは、効率を増加させ、且つ機能しないmRNA転写物の細胞内蓄積を最小限にするために開裂認識部位が標的mRNAの5’端の近くに位置するように、リボザイムは操作される。さらに、標的mRNAの異なる部分をコードする標的配列に位置する任意の開裂認識部位の使用により、一方又は他方の標的遺伝子の選択的なターゲティングを可能にすると思われる。
【0116】
本発明の遺伝子ターゲティングリボザイムは、それぞれが長さが少なくとも5個、好ましくはそれぞれが6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の隣接したヌクレオチドである、標的mRNAの1又は2個の領域に対して相補的なハイブリダイズ領域を含有する(好ましくは、遺伝子ターゲティングリボザイムは、配列番号1に記載される核酸配列の1又は2個の領域に対して相補的である)。さらに、リボザイムは、標的センスmRNAを自己触媒的に開裂させる高度に特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を持つ。
【0117】
本発明のリボザイムはまた、テトラヒメナサーモフィラにおいて自然に生じ(IVS又はL−19 IVS RNAとして知られている)、且つZaugら,1984,Science,224:574−578;Zaugら,1986,Science 231:470−475;Zaugら,1986,Nature 324:429−433;公開国際特許出願国際公開第88/04300号;及びBeenら,1986,Cell 47:207−216に広範囲に記載されているRNAエンドリボヌクレアーゼ等のRNAエンドリボヌクレアーゼ(「Cech型リボザイム」)も含む。Cech型リボザイムは、標的RNA配列にハイブリダイズする8つの塩基対活性部位を有し、その後、標的RNAの開裂は起こる。本発明は、標的遺伝子又は標的核酸配列に存在する8つの塩基対活性部位配列を標的にするそれらのCech型リボザイムを包含する。
【0118】
リボザイムは、修飾オリゴヌクレオチド(たとえば安定性、ターゲティング等の改善ために)から構成することができ、in vivoで標的遺伝子を発現させる細胞に送達されるはずである。送達の好ましい方法は、形質移入された細胞が、内在性標的メッセージを破壊し、且つ翻訳を阻害するのに十分な量のリボザイムを産生するように、強力な構成プロモーターの制御下で、リボザイムを「コードする」DNA構築物を使用することを含む。
【0119】
IL−18Rαの発現の低下は、本明細書で上記に記載されるリボザイムのいずれかの投与によって達成されてもよい。ヒトIL−18Rαポリペプチドをコードする核酸配列に特異的にハイブリダイズするリボザイムが好ましい。それらは、IL−18Rαの翻訳をサイレンシングし、したがって、MSを処置する又は予防するために使用することができる。たとえば、配列番号1に記載される核酸配列に特異的にハイブリダイズするリボザイムは本発明の方法で使用することができる。リボザイムがない状態で検出された症状と比較した、MS症状の重症度における減少は、リボザイムの効果を監視するために使用することができる。
【0120】
4)本明細書で上記に開示されるIL−18Rαアンタゴニストの薬学的使用:
本発明は、医薬としての使用のための、上記又は下記に記載される、IL−18Rαのアンタゴニストのいずれかに関する。好ましくは、IL−18Rαの上記又は下記に記載されるアンタゴニストのいずれかは、自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の症状を低下させるための能力を有する。したがって、好ましくは、本明細書に記載されるIL−18Rαのアンタゴニストに対するすべての修飾が、MSの症状を低下させるそれらの能力に著しく影響を及ぼすわけではない。さらに好ましくは、本明細書に記載されるIL−18Rαのアンタゴニストに対する修飾は、MSの症状を低下させるそれらの能力を増強する(たとえばそれらの半減期を増強することによって等)。
【0121】
本発明は、さらに、患者に、IL−18Rαの有効量のアンタゴニストを投与することにより、ヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法に関する。IL−18Rαの産生及び/又は作用が減衰する、低下する、又は部分的に、実質的に、若しくは完全にブロックされるように、IL−18Rαの産生及び/又は作用を阻害する任意のアンタゴニストは、本発明の方法に従って自己免疫疾患又は脱髄疾患(特に多発性硬化症)を処置するために使用することができる。本発明の方法は、IL−18Rαのアンタゴニストを、MSに罹患した個人に対して、患者の状態における持続性の改善を誘発するのに十分な期間投与することを含む。本発明は、さらに、部分的に、自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の処置のための医薬の製造における、IL−18Rαのアンタゴニストの使用を提供する。いくつかの実施形態では、アンタゴニストは、本明細書で上記に開示されるアンタゴニストである。たとえば、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、IL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの生物活性を阻害する低分子は、MSを処置する又は予防するために使用することができる。さらに、IL−18Rαの発現を阻害する産物(たとえばsiRNA分子、アンチセンス分子、リボザイム等)は、MSを処置する又は予防するために使用することができる。いくつかの実施形態では、処置するための疾患は、再発寛解型(RR)MS、二次進行型(SP)MS、一次進行型(PP)MS、又は進行再発型(PR)MSである。
【0122】
IL−18Rαのインヒビターが疾患を処置するのにin vivoで有効であるという発見は、本発明にとって、部分的に基礎となる。具体的には、IL−18Rαの細胞外ドメインに結合する抗体は、この疾患のマウスモデルにおける実験的に誘発されたMSを予防するのに有用であることが分かった。さらに、IL−18Rαアンタゴニストはまた、同じ動物モデルにおいて既に確立された疾患の進行をも阻害した。したがって、これらのin vivoデータは、IL−18Rαの阻害がMSを処置するのに有効であることを示す。IL−18Rα活性を中和する又はIL−18Rα遺伝子の発現を阻害する(転写又は翻訳のいずれか)任意の方法は、MSの症状を低下させるために使用することができる。
【0123】
対象となる方法は、産生されるIL−18Rαの量を低下させることによる又はその生物活性を予防することによる等で、有効量の内在性生物学的活性IL−18Rαを低下させることができるIL−18Rαアンタゴニストを患者に対して投与することを含む。上記アンタゴニストは、本明細書で上記に開示されるアンタゴニストを含む。
【0124】
好ましい態様では、タンパク質ベースの治療剤は、IL−18Rαタンパク質の活性を阻害するために使用することができる。たとえば、本発明の好ましい方法は、本明細書で上記に定義される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体を利用する。
【0125】
本発明の好ましい一実施形態では、本明細書で上記に記載される、IL−18Rαのアンタゴニスト、特に本明細書で上記に記載される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、IL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体の徐放性形態が使用される。開示される方法での使用に適した徐放性形態は、上記ポリマーと混合された、徐々に溶解する生体適合性ポリマー中にカプセル化された及び/又は生体適合性半浸透性インプラント中に包まれたIL−18Rαアンタゴニストを含むが、これらに限定されない。分解性ポリマーマイクロスフェアは、治療用タンパク質の高度な全身性のレベルを維持するよう設計されてきた。マイクロスフェアは、ポリ(ラクチドコグリコリド)(PLG)、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、非生物分解性酢酸エチルビニルポリマー等の分解性ポリマーから調製され、タンパク質は、ポリマー中に閉じ込められる(Gombotz及びPettit,Bioconjugate Chem.6:332(1995);Drug Delivery Systems,Ranade及びHollinger(編),pages 51−93(CRC Press 1995)中のRanade,「薬物送達におけるポリマーの役割(Role of Polymers in Drug Delivery)」;Protein Delivery:Physical Systems,Sanders及びHendren(編),pages 45−92(Plenum Press 1997)中のRoskos及びMaskiewicz,「タンパク質送達に有用な分解性放出制御系(Degradable Controlled Release Systems Useful for Protein Delivery)」;Bartusら,Science 281:1161(1998);Putney及びBurke,Nature Biotechnology 16:153(1998);Putney,Curr.Opin.Chem.Biol.2:548(1998))。ポリエチレングリコール(PEG)にコーティングされたナノスフェアもまた、治療用タンパク質の静脈内投与のためのキャリアを提供することができる。(たとえばGrefら,Pharm.Biotechnol.10:167(1997)を参照されたい)。さらに、IL−18Rαアンタゴニストは、その血清半減期を延長する又はタンパク質送達を増強するために、ポリエチレングリコールと抱合することができる(ペグ化)。
【0126】
MSを処置するために、IL−18Rαアンタゴニスト、好ましくはIL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体は、疾患の重症度を反映する少なくとも1つの指標において持続性の改善を誘発するのに十分な量及び時間で、患者に対して投与される。改善度は、徴候又は症状に基づいて決定され、クオリティオブライフ質問表等の、患者に対して行われる質問表を用いてもよい。IL−18Rαアンタゴニストの治療的有効量は、上記持続性の改善を達成するのに十分な量である。
【0127】
改善は、患者が、選ばれた1つ又は複数の指標についてのベースラインに対する改善を顕在化させるまで、ある用量のIL−18Rαアンタゴニストを繰り返し投与することにより誘発されるかもしれない。処置の後の、患者の病気の程度は、1つ又は複数の指標に従って改善されたように思われる可能性があるが、処置は、同じレベルで又は用量若しくは頻度を低下させて、無期限に継続してもよい。一度処置が減らされ又は中止され、症状が再発すれば、処置は、後に、最初のレベルで再開されてもよい。
【0128】
本発明の方法で使用される医薬組成物は、活性成分としてのIL−18Rαアンタゴニストと組み合わせて、動物に対する投与に適した、適した薬学的に許容し得る希釈剤、キャリア、生物学的適合性媒体、及び添加剤(たとえば生理食塩水)を含有していてもよく、薬学的に使用することができる調製物中への活性化合物の処理を容易にする助剤(賦形剤、安定剤、又はアジュバントのような)を任意選択で含んでいてもよい。医薬組成物は、投与のモードの必要性を満たすために、任意の許容し得る方法で製剤されてもよい。たとえば、薬剤送達のための生体材料及び他のポリマーの使用、その上、投与の特定のモードを有効にするための異なる技術及びモデルが文献に開示されている(Luo B及びPrestwich GD,2001;Cleland JLら,Curr Opin Biotechnol.(2001),12(2):212−9)。「薬学的に許容し得る」は、活性成分の生物活性の有効性を妨害せず、且つ投与される宿主にとって有毒ではない任意のキャリアを包含することを意味する。たとえば非経口投与については、上記の活性成分は、食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン、及びリンゲル液等の媒体中での注射のために、単位剤形で製剤されてもよい。キャリアはまた、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、及び石油、動物、植物、又は合成起源の油を含む様々な油(落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油)から選択することができる。
【0129】
医薬組成物は、液体形態又は凍結乾燥形態であってもよく、様々なpH価及びイオン強度を有する希釈剤(Tris、クエン酸塩、酢酸塩、又はリン酸緩衝液)、Tween又はポリソルベート等の可溶化剤、ヒト血清アルブミン又はゼラチン等のキャリア、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコニウムクロリド、又はベンジルアルコール等の防腐剤、アスコルビン酸又はメタ重亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、及びリシン又はグリシン等の他の成分を含む。特定の組成物の選択は、処置されている状態、投与の経路、及び所望される薬物動態パラメータを含む多くの因子に依存するであろう。医薬組成物に適した成分に関するより大規模な調査は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版 A.R.Gennaro編 Mack,Easton,PA(1980)に見い出される。
【0130】
好ましい実施形態では、タンパク質ベースの治療剤は、IL−18Rαタンパク質の活性を阻害するために使用される。本発明の好ましい方法は、本明細書で上記に定義される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体を利用する。このようなタンパク質は、精製された組換えタンパク質を含む生理学的に許容し得る組成物の形態で、生理学的に許容し得るキャリア、賦形剤、又は希釈剤と共に投与される。上記キャリアは、用いられる投与量及び濃度で、レシピエントにとって有毒でない。通常、上記組成物の調製は、緩衝液、アスコルビン酸等の酸化防止剤、低分子量ポリペプチド(10個未満のアミノ酸を有するポリペプチド等)、タンパク質、アミノ酸、グルコース、スクロース、又はデキストリン等の炭水化物、EDTA、グルタチオン、及び他の安定剤等のキレート剤、並びに賦形剤とIL−18Rαアンタゴニストを組み合わせることを要する。中性緩衝食塩水又は同種の血清アルブミンと混合した食塩水は、例示的な適切な希釈剤である。IL−18Rαアンタゴニストは、希釈剤としての適切な賦形剤溶液(たとえばスクロース)を使用して、凍結乾燥物として好ましくは製剤される。適切な投与量は、標準の投薬試験で決定することができ、投与の選ばれた経路に従って変動してもよい。適切な業界基準に従って、ベンジルアルコール等の防腐剤もまた追加されてもよい。もちろん、投与の量及び頻度は、処置されている徴候の重症度、所望の応答、患者の年齢及び状態等のような因子に依存するであろう。
【0131】
投与の任意の承認されたモードは、活性成分の所望の血中濃度を確立するために当業者によって使用し、且つ決定することができる。たとえば、投与は、皮下経路、静脈内経路、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、鼻腔内経路、経皮的経路、直腸経路、口腔経路、又は頬側経路等の様々な非経口経路によるものであってもよい。好ましくは、本発明の医薬組成物は、皮下又は静脈内に注射によって投与される。最終的に選ばれた投与の経路は、多くの因子に依存するであろう、そして当業者によって確認されてもよい。
【0132】
本発明の方法で使用される医薬組成物はまた、蓄積注射、浸透圧ポンプ等を含む徐放性剤形態又は放出制御剤形態で、IL−18Rαアンタゴニストの長期投与について、所定の速度で、好ましくは正確な投与量の単一の投与に適した単位剤形で投与することができる。
【0133】
非経口投与は、大量注射又は長い間にわたっての緩やかな灌流によるものとすることができる。非経口投与のための調製物は、無菌の水性溶液又は非水性溶液、懸濁液、及び乳濁液を含み、これらは、当技術分野で知られている補助的作用物質又は賦形剤を含有していてもよく、ルーチン的な方法に従って調製することができる。さらに、適切な油性注射懸濁液としての活性化合物の懸濁液が投与されてもよい。適した親油性の溶媒又は媒体は、脂肪油、たとえばゴマ油又は合成脂肪酸エステル、たとえばゴマ油又は合成脂肪酸エステル、たとえばオレイン酸エチル又はトリグリセリドを含む。懸濁液の粘度を増加させる物質を含有していてもよい水性注射懸濁液は、たとえば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランを含む。任意選択で、懸濁液はまた、安定剤を含有していてもよい。医薬組成物は、注射による投与に適した溶液を含み、約0.01〜99.99パーセント、好ましくは約20〜75パーセントの活性化合物を賦形剤と共に含有する。
【0134】
投与される投与量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態、及び体重、併用処置の種類、それがもしあれば処置の頻度、並びに所望される効果の性質に依存性であろうということが理解される。投与量は、当業者によって理解され、決定できるように、個々の患者に適合されるであろう。各処置に必要な全用量は、複数回用量によって又は単一用量で投与されてもよい。
【0135】
本発明の一実施形態では、本明細書で上記に開示されるIL−18Rαアンタゴニストは、MSを処置するために1週間当たり1回投与され、他の実施形態では、1週間当たり少なくとも2回投与され、他の実施形態では、1日当たり少なくとも1回投与される。IL−18Rαアンタゴニストが抗体(つまり、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体又は好ましくは、IL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)である場合、用量は、0.1〜10mg/kgとすることができ、好ましくは15分〜3時間の注入として静脈内に与えられる。この用量は、二週間に1回、毎週、又は数週間(2〜8週間)間隔をあけて繰り返し投与される。
【0136】
注射以外のIL−18Rαアンタゴニストの投与の経路が使用される場合、用量は、標準の医療行為に合わせて適切に合わせられる。たとえば、投与の経路が吸入である場合、投薬は、10mg/用量〜1用量当たり50mgの用量範囲で、1週間当たり1〜7回であってもよい。
【0137】
多くの場合、より長い期間の処置が、所望の改善度を誘発するのに必要である可能性があるが、患者の状態における改善は、少なくとも3週間の期間にわたり1週間当たり1〜3回、本明細書で上記に開示されるIL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体の約100mgまでの用量を注射することにより得られるであろう。レジメンは無期限に継続されてもよい。
【0138】
5)併用治療:
いくつかの実施形態では、本明細書で上記に定義されるIL−18Rαのアンタゴニストは、MSを処置する又は予防するための第2の治療薬と共に投与される。たとえば、IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)は、たとえばコルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンを含む、MSに対する標準の処置薬のいずれかと共にも投与されてもよい。
【0139】
本発明の一実施形態では、IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)は、コルチコステロイドと共に投与される。「コルチコステロイド」は、コレステロールに由来し、水素化されたシクロペンタノペルヒドロフェナントレン環構造によって特徴づけられ得る任意の自然発生ステロイドホルモン又は合成ステロイドホルモンが意味される。自然発生コルチコステロイドは、副腎皮質によって一般に産生される。合成コルチコステロイドは、ハロゲン化されてもよい。コルチコステロイドは、グルココルチコイド活性及び/又は鉱質コルチコイド活性を有していてもよい。
【0140】
例示的なコルチコステロイドは、たとえばデキサメタゾン、ベータメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンヘキサアセトニド、ベクロメタゾン、ジプロピオナート、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水化物、フルメタゾンピバレート、酢酸ジフロラゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオロメトロン、酢酸フルオロメトロン、プロピオン酸クロベタゾール、デソキシメタゾン、フルオキシメステロン、フルプレドニソロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、ヒドロコルチゾンシピオネート、ヒドロコルチゾンプロブテート(hydrocortisone probutate)、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、酢酸パラメタゾン、メチルプレドニソロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロンテブテート、ピバル酸クロコルトロン、フルオシノロン、酢酸デキサメタゾン21、吉草酸ベータメタゾン17、イソフルプレドン、9−フロオロコルチゾン、6−ヒドロキシデキサメタゾン、ジクロリゾン、メクロリゾン(meclorisone)、フルプレジデン、ドキシベタソール、ハロプレドン、ハロメタゾン、クロベタゾン、ジフルコルトロン、イソフルプレドンアセテート、フルオロヒドロキシアンドロステンジオン、ベクロメタゾン、フルメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノロン、クロベタゾール、コルチゾン、パラメタゾン、クロコルトロン、プレドニゾロン21−ヘミスクシネート遊離酸、メタスルホ安息香酸プレドニゾロン、プレドニゾロンテルブテート(prednisolone terbutate)、及びトリアムシノロンアセトニド21−パルミテートを含む。
【0141】
IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)と共に投与されるコルチコステロイドの好ましい例は、プレドニゾン及び/又はIVメチルプレドニソロンである。
【0142】
本発明の一実施形態では、IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)は、免疫抑制剤と共に投与される。本発明の実施形態では、免疫抑制剤は、メトトレキセート、アザチオプリン、シクロホスファミド、及びクラドリビンからなる群から選ばれ、これらは、脱髄疾患の重篤な進行型形態に一般に使用される。
【0143】
本発明の他の実施形態では、IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)は、神経保護薬と共に投与される。本発明の一実施形態では、神経保護薬は、経口ミエリン、コパクソン(Teva社製の酢酸グラチラマー)、タイサブリ(Biogen社/Elan社)、ノバントロン(Serono社)、テリフルノミド(Aventis社)、クラドリビン(Serono社/IVAX社)、GSK社/田辺製薬の683699(T−0047)、ダクリズマブ(Roche社)、ラキニモド(Active Biotech社)、及びZK−117137(Schering AG社)からなる群から選ばれる。これらの化合物はすべて、販売されている又はMSを処置するための臨床試験の最中である。
【0144】
本発明の他の実施形態では、IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)は、免疫調節剤と共に投与される。この点で、本発明での使用のための特定の免疫調節剤は、FTY720(2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、フィンゴリモド)を含む。MSを処置するためのII期でのFTY720(Novartis社)は、以下の化学式を有する。
【化1】
【0145】
FTY720は、ミリオシンの化学的修飾によって得られた、経口的に活性の免疫抑制剤(たとえば国際公開第94/08943号;国際公開第99/36065号を参照されたい)として同定された。本発明での使用のための他の免疫調節剤は、FTY720の誘導体を含む。FTY720の誘導体は、国際公開第94/08943号に記載される、以下の化学式を有する2−アミノ−1,3−プロパンジオール化合物及びその任意の薬学的に許容し得る塩を含み、
【化2】
Rは、二重結合、三重結合、酸素、硫黄、スルフィニル基、スルホニル基、−N(R6)−からなる群から選択される結合、ヘテロ原子、又は基を鎖中で有していてもよく、R6は、水素、アルキル、アラルキル、アシル、又はアルコキシカルボニル、カルボニル、任意選択で置換されたアリーレン、任意選択で置換されたシクロアルキルエン、任意選択で置換されたヘテロアリーレン、及びその脂環式化合物(alicycle)であり、且つ二重結合、三重結合、任意選択で置換されたアリル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアリル、又はその脂環式化合物;任意選択で置換されたアリル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアリル、又はその脂環式化合物によってその鎖端で置換されていてもよい任意選択で置換された直鎖状炭素鎖又は分枝炭素鎖であり、
R2、R3、R4、及びR5は、同じ又は異なり、それぞれは、水素、アルキル、アラルキル、アシル、又はアルコキシカルボニルを表し、又はR4及びR5は、アルキル、アリル、又はアラルキルによって置換されていてもよいアルキレン鎖を形成するよう結合していてもよい。
【0146】
上記の任意選択で置換された直鎖状炭素鎖又は分枝炭素鎖は、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アラルキルオキシ、アルキルエンジオキシ、アシル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アシルアミノ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アシルオキシ、アルキルカルバモイル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシイミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、任意選択で置換されたアリル、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアリル、及びその脂環式化合物からなる群から選択される置換基を有してもよく、前述の任意選択で置換されたアリーレン、任意選択で置換されたシクロアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアリーレン、及びその脂環式化合物は、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アラルキルオキシ、アルキルエンジオキシ、アシル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アシルアミノ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アシルオキシ、アルキルカルバモイル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、及びカルボキシからなる群から選択される置換基を有してもよく、任意選択で置換されたアリル、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアリル、及びその脂環式化合物は、アルキル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アラルキルオキシ、アルキルエンジオキシ、アシル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アシルアミノ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アシルオキシ、アルキルカルバモイル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、及びカルボキシからなる群から選択される置換基を有していてもよい。
【0147】
上記2−アミノ−1,3−プロパンジオール化合物の特定の例は、2−アミノ−2−[2−(4−ヘプチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ノニルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール 2−アミノ−2−[2−(4−デシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ウンデシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ドデシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−トリデシルフェニル)−エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−テトラデシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ヘキシルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ヘプチルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ノニルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−デシルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ウンデシルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ドデシルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−トリデシルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−(8−フルオロオクチル)フェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−(12−フルオロドデシル)フェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−(7−フルオロヘプチルオキシ)フェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−(11−フルオロウンデシルオキシ)フェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−(7−オクテニルオキシ)フェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ヘプチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ノニルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−デシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ウンデシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ドデシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ヘプチルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ノニルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ウンデシルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、又は2−アミノ−2−[2−(4−(7−オクテニルオキシ)フェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、及びその任意の薬学的に許容し得る塩を含む。
【0148】
本発明の他の実施形態では、IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)は、インターフェロンと共に投与される。この点で、本発明での使用のための特定のインターフェロンは、インターフェロン−ベータである。用語「インターフェロン(IFN)」及び「インターフェロン−ベータ(IFN−ベータ)」は、本明細書で使用されるように、体液からの単離によって得られた又は原核生物若しくは真核生物の宿主細胞からのDNA組換え技術によって得られた特にヒト起源の線維芽細胞インターフェロン並びにその塩、機能的誘導体、変異体、類似体、及び活性断片を含むことが意図される。特定の種類のインターフェロンベータは、インターフェロンベータ−1aである。
【0149】
ヒト起源のインターフェロンの使用は、本発明で使用するのに好ましい。本発明で使用する適したIFN−ベータは、たとえばRebif(登録商標)(Serono社)、Avonex(登録商標)(Biogen社)、又はBertaseron/Betaferon(登録商標)(Schering社)として市販で入手可能である。Rebif(登録商標)(組換えヒトインターフェロン)は、多発性硬化症(MS)のためのインターフェロン治療において最近開発されたものであり、これは処置における著しい進歩を表す。Rebif(登録商標)は、哺乳動物細胞系から産生されたインターフェロン(IFN)−ベータ1aである。皮下に1週間当たり3回与えられたインターフェロンベータ−1aは、再発寛解型多発性硬化症(RRAMS)の処置において効果的であることが確立された。インターフェロンベータ−1aは、再発の数及び重症度を低下させ、且つMRIによって測定される疾患の負担及び疾患活性を低下させることによって、MSの長期的経過にプラスの効果を有し得る。したがって本発明の方法での使用のためのIL−18Rαアンタゴニストと共に投与されるインターフェロンの特定の例は、Rebif(登録商標)(Serono社)、Avonex(登録商標)(Biogen社)、又はBertaseron/Betaferon(登録商標)(Schering社)である。
【0150】
本発明の特定の態様は、上記処置を必要とする患者におけるMS、特に再発寛解型(RR)MS、二次進行型(SP)MS、一次進行型(PP)MS、又は進行再発型(PR)MSを処置する方法に関し、患者に、本明細書で上記に開示されるIL−18Rαのアンタゴニスト及び本明細書で上記に開示されるコルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンの組み合わせの治療的有効量を投与することを含む。ある実施形態では、コルチコステロイドは、プレドニゾン又はIVメチルプレドニソロンである。ある実施形態では、免疫抑制剤は、メトトレキセート、アザチオプリン、シクロホスファミド、又はクラドリビンである。ある実施形態では、神経保護薬は、経口ミエリン、コパクソン、タイサブリ、ノバントロン、テリフルノミド、クラドリビン、683699(T−0047)、ダクリズマブ、ラキニモド、又はZK−117137である。ある実施形態では、免疫調節剤は、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール(FTY720)である。ある実施形態では、インターフェロンは、インターフェロンベータ−1a(特にRebif(登録商標)(Serono社))である。
【0151】
IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)及び本明細書で上記に開示される第2の治療薬は、同時に、別々に、又は連続して投与されてもよい。たとえば、IL−18Rαのアンタゴニストが最初に投与され、その後に第2の治療薬が投与されてもよい。その代わりに、第2の治療薬が最初に投与され、その後にIL−18Rαのアンタゴニストが投与されてもよい。いくつかの場合では、IL−18Rαのアンタゴニスト及び第2の治療薬は、同じ製剤中で投与される。他の場合では、IL−18Rαのアンタゴニスト及び第2の治療薬は、異なる製剤中で投与される。IL−18Rαのアンタゴニスト及び第2の治療薬が異なる製剤中で投与される場合、それらの投与は、同時であってもよく又は順次であってもよい。
【0152】
本発明は、哺乳動物患者、好ましくはヒト患者におけるMSの治療での同時の、別個の、又は順次の使用のための、上記又は下記に記載されるIL−18Rαのアンタゴニストのいずれか及び併用調製物としての本明細書で上記に開示されるコルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンを含む産物にさらに関する。
【0153】
本明細書に引用されたすべての特許及び参考文献は、それらの全体が参照によって本明細書に含まれる。
【0154】
本発明の他の態様及び利点は、以下の実施例に開示されることとなり、説明的なものとしてのみ考えられるべきであり、本出願の範囲を限定しない。
【実施例】
【0155】
(実施例1)
p35−/−IL−18−/−二重ノックアウトマウスはEAEに対して感受性である
IL−12p35の欠失は、マウスにおいて、MOG(ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質)ペプチド誘発性実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)に対してマウスを感受性過度にすることが以前に示された(Becher,B.ら J.Clin.Invest 110,493−497(2002))。IL−18は、Th1細胞(1型ヘルパーT細胞)を極性化するようIL−12と相乗作用で作用し、またShiらは、IL−18が欠損したマウスはEAEに対して抵抗性であることを実証する証拠を提示した(Shi,F.D.ら,J.Immunol.165,3099−3104(2000))。
【0156】
IL−18がp35−/−マウスにおけるIL−12の損失を代償し、したがってそれらのEAE感受性につながり得るかどうかを評価するために、我々は、IL−12p35及びIL−18の両方が欠損したマウスを生成した(p35−/−×IL−18−/−)。
【0157】
マウス(n=5マウス/グループ)を、CFA(DIFCO社、デトロイト、MI)中で乳化した、GenScript社から得たMOG35−55ペプチド(アミノ酸配列:MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK(配列番号11))の200μgを用いて皮下に免疫した。マウスは、免疫時に及び48時間後に、200ng百日咳毒素(Sigma−Aldrich社)を腹腔内に受けた。
【0158】
マウスは、以下のように毎日スコア化した:0)検出可能なEAEの徴候なし;0.5)末端の尾部がぐったりしている;1)全尾部がぐったりしている;2)片側の部分的な後肢の麻痺;2.5)両側の部分的な肢の麻痺;3)両側の全後肢の麻痺;3.5)全後肢の麻痺及び片側の前肢の麻痺;4)前肢及び後肢の全麻痺(スコア>4は安楽死させる);5)死。各時点で、各グループの平均疾患スコアを示す。統計的有意差は、独立スチューデントt検定を使用して評価した。
【0159】
CFA中で乳化したMOG35−55を用いた免疫は、p35−/−×IL−18−/−マウスがEAEに対して完全に感受性であり、wtで産生されるものに類似する疾患スコア及び疾患発生を有することを示した(図1aを参照されたい)。したがって、p35−/−マウスにおけるIL−18欠失によって生成された、保護の欠如は、IL−18が、p35−/−マウスにおけるEAE感受性を誘発する原因ではないことを示すが、IL−18自体が、EAE病因にほとんど又はまったく効果を有していないサイトカインであることをも示唆する。
【0160】
(実施例2)
IL−18Rα−/−マウスではなくIL−18−/−マウスがEAEに対して感受性である
p35−/−×IL−18−/−マウスにおける我々の実験は、EAEにおけるIL−18の、以前に提唱された病原性の役割に矛盾するように思われたので、我々は、MOGペプチド(実施例1に記載される)を用いてwtマウス及びIL−18−/−マウスを能動免疫し、IL−18−/−マウスがEAEに対して完全に感受性であり、実際に、wtマウスに匹敵する臨床スコア及び疾患進行を有することを見い出した(図1b及び表1を参照されたい)。
【0161】
IL−18Rαが欠損したマウスは、IFNγ産生が低下するという点で、IL−18−/−マウスに類似する表現型を有するとして記載された。興味深いことには、wtマウス及びIL−18−/−マウスの両方と著しい対照をなして、IL−18Rα−/−マウスは、EAE誘発に対して完全に抵抗性であった(図1b及び表1を参照されたい)。
【0162】
EAE誘発後に得られたwtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスからの脊髄の組織学的分析は、CNS中への白血球浸潤が、疾患の臨床的な重症度と十分に相互に関連することを実証した。
【0163】
そうするために、マウスを、CO2を用いて安楽死させ、その後、PBSを用いて灌流し、続いてPBS中4%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて灌流した。脊柱を摘出し、PBS中4%PFA中で固定した。次いで、炎症細胞の浸潤を評価するためのヘマトキシリン&エオシン又はCD3抗体、B220抗体、及びMAC−3抗体(BD Pharmingen社)又は脱髄の程度を決定するためのルクソールファストブルーを用いて染色する前に、脊髄を解剖し、パラフィン包埋した。
【0164】
EAE感受性のwtマウス及びIL−18−/−マウスは、T細胞(図2c)、マクロファージ(図2e)、及びB細胞(図2d)等の炎症細胞の浸潤(図2a)及び脱髄(図2b)によって特徴づけられる著しい炎症を有したが、EAE抵抗性のIL−18Rα−/−マウスの脊髄中に炎症性浸潤物又は脱髄は存在しなかった(図2a〜e)。
【0165】
IL−18−/−マウスがIL−18を分泌することができないことを確認するために、我々は、ターゲティング戦略及びマウスの遺伝子型について広範囲に確認し、IL−18−/−マウスがIL−18mRNA又はIL−18タンパク質を含有しないことを明確に立証することができた。我々はまた、我々が、wtマウス及びIL−18−/−マウスに由来する活性化脾細胞から分泌されたIL−18を検出することができるかどうかを分析し、IL−18−/−マウスが、wtマウスとは対照的に、実際に、完全に、IL−18欠損であることを示した(図3を参照されたい)。
【0166】
IL−18の欠失がIFNγ応答の不足を一貫してもたらすことが多くの実験系で観察されたので(Wei,X.Q.ら J.Immunol.163,2821−2828(1999),Kinjo,Y.ら J.Immunol.169,323−329(2002))、我々は、16時間、レクチンコンカナバリンA(ConA)を用いて、in vitroで、未処置wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスに由来するリンパ球を刺激し、IFN−γ産生を、ELISAによって続いて測定した。
【0167】
そうするために、腋窩リンパ節及び鼠径リンパ節(LN)を未処置マウスから単離した。2×105細胞を三通り、96ウェルプレート中に配置した。5μg/ml ConAを16時間の刺激のために使用し、IFN−γ産生を、ELISA(Pharmingen社、ラホーヤ、CA)によって続いて測定した。
【0168】
IL−18がIFNγ産生に影響を有するという原理と一致して、IL−18−/−マウス及びIL−18Rα−/−マウスの両方からのLN細胞は、wt LN細胞とは対照的にIFNγを分泌しなかった(図4a)。
【0169】
(実施例3)
IL−18Rαのブロックは、IL−18−/−マウスにおけるEAEを予防する
EAEに関してのIL−18欠損マウス及びIL−18Rα欠損マウスの性質の不一致は、強力な脳炎誘発性特性を有するさらなるIL−18Rαリガンドを強く示すものである。IL−18Rα及びIL−18が、無関係の生物学的機能を有するかどうかを評価するために、我々は、EAE感受性のIL−18−/−マウスにおいてIL−18Rαをブロックした。
【0170】
マウス(n=5マウス/グループ)を、CFA(DIFCO社、デトロイト、MI)中で乳化した、GenScript社から得たMOG35−55ペプチド(アミノ酸配列:MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK(配列番号11))の200μgを用いて皮下に免疫した。マウスは、免疫時に及び48時間後に、200ng百日咳毒素(Sigma−Aldrich社)を腹腔内に受けた。モノクローナル抗IL−18Rα抗体(クローン112624)(R&D Systems社)を、免疫の1日前に(450μg/マウス)及びその後3日ごと(300μg/マウス)若しくは疾患発症から始めて3日ごと(300μg/マウス)投与した又はしなかった。
【0171】
マウスは、以下のように毎日スコア化した:0)検出可能なEAEの徴候なし;0.5)末端の尾部がぐったりしている;1)全尾部がぐったりしている;2)片側の部分的な後肢の麻痺;2.5)両側の部分的な肢の麻痺;3)両側の全後肢の麻痺;3.5)全後肢の麻痺及び片側の前肢の麻痺;4)前肢及び後肢の全麻痺(スコア>4は安楽死させる);5)死。
【0172】
各時点で、各グループの平均疾患スコアを示す。統計的有意差は、独立スチューデントt検定を使用して評価した。
【0173】
免疫の1日前及びその後、実験の終了まで3日ごとに与えた抗IL−18Rα mAbを用いたIL−18−/−マウスの処置は、疾患発生を著しく低下させた(図5a)。抗IL−18Rα mAbの投与は、IL−18Rα発現細胞の欠失につながりもせず、血液、LN、又は脾臓中の末梢白血球の組成を変えもしなかった(図11を参照されたい)。
【0174】
IL−18Rαアンタゴニストは、そのリガンドが遺伝子ターゲティングによって完全に除去されたマウスにおいてでさえEAEを予防するという事実及びIL−18は、報告によれば、IL−18Rαに対するほんの低い親和性しか有していないという事実を組み合わせて、我々は、他のリガンドが、IL−18Rαによって媒介される結合、シグナル伝達、及び免疫発生の原因にちがいないと提唱する。
【0175】
興味深いことには、免疫後(p.i.10日目)にアンタゴニストmAbを用いた、IL−18−/−マウスの処置もまた、EAE進行を抑止し(図5b)、これは、免疫前に投与されたAbと同じ程度まで起こり、IL−18Rα結合は、EAEのエフェクター期の間の重要なイベントであることを示唆する。
【0176】
(実施例4)
Ag駆動性ではなくマイトジェン駆動性の活性化は、Th1極性化のためにIL−18を必要とする
EAE感受性に関する、IL−18−/−マウス及びIL−18Rα−/−マウス間の対立的な分裂を考慮すれば、我々は、エフェクター表現型に向けて、未処置T細胞を正しくプライムし、且つ極性化する両マウスの能力を決定することを望んだ。wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスを、KLHを用いて皮下で免疫し、7日後、リンパ球を、単離し、続いて、KLHを用いてin vitroで再刺激した。
【0177】
そうするために、CFA中で乳化した100μg/側腹部のキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(Sigma社)を7日前に注射によってプライムしたマウスから腋窩リンパ節及び鼠径リンパ節を単離した。2×105細胞を三通り、96ウェルプレート中に配置した。KLHリコール細胞を、50μg/ml KLH、5μg/ml ConA、又は培地を用いて48時間刺激し、0.5μCi/ml 3[H]−チミジンを、増殖応答を観察するために24時間後に追加した。チミジン取り込みは、Filtermate Harvester及びシンチレーション発光カウンターを使用して評価した。サイトカイン分析については、姉妹培養物の培養上清を、48時間後に採取し、ELISA(Pharmingen社、ラホーヤ、CA)によってIFNγ産生を及びサイトカインアレイ(Raybiotech社)によって全体的なサイトカイン/ケモカイン分泌を分析した。
【0178】
驚いたことに、我々は、IL−18−/−マウス及びIL−18Rα−/−マウスのIFNγ産生能力においていかなる有意差をも観察しなかった、そして、IL−18−/−マウス又はIL−18Rα−/−マウスに由来するリンパ球によって産生されたIFNγのレベルは、wtマウスから得られた細胞と同一であった(図4b)。さらに、異なるマウス株間のAg駆動性リンパ球の増殖能は、同一であった(図4c)。IL−18は、多クローン性に活性化された直後のT細胞の早期IFNγ応答のための決定的な共同因子である(図4a)が、Ag駆動性Th1極性化は、IL−12に単独で、より依存性であり、したがってIL−18とは無関係であるという考えを我々のデータは支持する。
【0179】
TH1発生は、IL−18Rα−/−マウスにおいて影響されないように思われたが、我々は、次に、IL−18Rα欠損抗原提示細胞(APC)が未処置T細胞をプライムする性能を評価することを望んだ。
【0180】
そうするために、我々は、成熟SMARTAペプチド(p11)パルスwt、IL−18−/−、及びIL−18Rα−/−BM(骨髄)由来樹状細胞(DC)をSMARTA−TcRトランスジェニックCD4+T細胞と同時培養し、チミジン取り込みによって増殖を測定した(図4d)。
【0181】
使用したプロトコールは以下のとおりであった。
BM由来DCの生成:BMドナーマウスを、CO2を使用して安楽死させ、大腿骨及び脛骨を摘出した。BM細胞は、PBSを用いて骨を洗い流すことにより単離し、100μm細胞濾過器を通して濾過した。細胞(10ml中2〜2.5x106)を、10%GM−CSFを追加した完全RPMI中で培養した。少なくとも6日後に、BM由来DCを、10μg/mlリポ多糖(LPS)を用いて一晩成熟させたが、未成熟BM由来DCは、GM−CSF含有培地中に維持した。少なくとも7日目に、BM由来DCを実験的に使用した。
トランスジェニック(Tg)T細胞増殖:トランスジェニックT細胞のin vitro増殖については、脾臓を、未処置TcR Tgマウスから単離し、CD4+T細胞を、BD Biomag磁気ビーズを使用して精製した。T細胞単離の純度をFACS分析によって確認した。1×105 Smarta T細胞を、300〜30,000の未成熟の又は成熟した骨髄由来の樹状細胞と共に96ウェルプレート中で培養した。同時培養前に、BM由来DCを、3時間、RPMI中で1μg/ml SMARTA p11ペプチド(GPDIYKGVYQFKSVEFD(配列番号12))(GenScript社)を用いてパルスし、その後洗浄し、2000ラドで照射した。非パルスDCは、単独で培養したT細胞と同様にコントロールとして使用した。細胞を4日間培養し、そして3[H]−チミジンを培養の最後の18時間追加した。
【0182】
未成熟DCがSMARTA T細胞を活性化するために使用された場合でさえ、T細胞プライミングにおける有意差は観察されなかった。
【0183】
たとえIL−18Rα−/−DC及びT細胞が活性化される能力に欠損がないということを上記のデータが示唆しても、我々は、活性化マーカー発現のレベルで、両細胞型の活性化ステータスを確認することに決めた。我々は、FACSによって、LPS成熟DC及びKLH再刺激T細胞上の発現マーカーを調べ、IL−18Rα−/−DC上のCD80、CD86、及びCD40のアップレギュレーションに差異がないこと、さらにIL−18Rα−/−T細胞によるCD5、CD62L、及びCD44の発現に、wt細胞及びIL−18−/−細胞と比較して差異がないことを示した(図6)。したがって、IL−18Rα破壊は、T細胞又はDCの活性化に、少なくとも、適切な刺激に必要な表面マーカーのアップレギュレーションのレベルでは、影響を及ぼさない。
【0184】
(実施例5)
IL−18Rα−/− CD4+T細胞は、EAEの間、CNSに侵入する
EAEは、疾患のピークでの、CNS中への炎症細胞の大量の流入によって特徴づけられるが、免疫細胞はまた、臨床症状の発症前にもCNSに侵入する(Hickey,W.F.Brain Pathol.1,97−105(1991),Wekerle,H.ら,J.Exp.Biol.132,43−57(1987))。たとえば、CNS中へのCD4+T細胞の動員は、EAEのエフェクター期の開始に決定的であるが、CNS中への多形核白血球の浸潤は、これらのイベントを組織化することにおける役割を有するように思われる(McColl,S.R.ら,J.Immunol.161,6421−6426(1998))。したがって、IL−18Rα−/−炎症細胞が、症状発現前の疾患の時点でのCNSに完全に不在であるかどうかを立証するために、我々は、マウスを免疫し、免疫後の5、7、及び9日目に炎症性浸潤物についてCNSを分析した。
【0185】
IL−18Rα−/−マウスにおける疾患の終点での免疫細胞の欠如とは対照的に(図2a〜e)、IL−18Rα−/− CD4+T細胞は、フローサイトメトリーによって分析されたように、免疫後の5、7、及び9日目に、wtマウス及びIL−18−/−マウスと同じ程度までCNS浸潤が可能であった(図7)。CNS中に存在する、匹敵する数の顆粒球、マクロファージ、及びB細胞もあった。しかしながら、図2に見られるように、臨床的な疾患の時点での、CNS中のIL−18Rα−/−炎症細胞の存在に有意差があり、したがって、それらが、EAEのエフェクター期中に存続することができないことを実証する。興味深いことには、これらの結果は、IL−23p19−/−マウスで得られたデータを反映し、このマウスは、MOG35−55誘発性EAEに対して抵抗性であり、このマウスにおいて、欠損は、免疫後7日目に観察されたように、CNS中への炎症細胞の浸潤を予防するものではない(Langrish,C.L.ら,J Exp.Med.201,233−240(2005))。
【0186】
(実施例6)
IL−18Rαの欠如がIL−17産生を予防する
CNS中への随伴性炎症細胞侵入を伴う、EAE抵抗性に関するIL−18Rα−/−マウス及びIL−23−/−マウス間の類似性は、我々のマウスにおける、IL−17産生へのIL−18Rαの影響を評価するよう我々を駆り立てた。IL−17産生TH細胞(THIL−17)は、自己免疫炎症の間の主な病原性集団であることが現在承認されている。サイトカイン分泌に関する、EAE感受性IL−18−/−マウス及びEAE抵抗性IL−18Rα−/−マウスの間の差異を定義するために、我々は、同系統のリコールAgに出会った際にリンパ球によって分泌された62種の異なるサイトカインの同時分析を可能にするサイトカインタンパク質アレイ(Raybiotech社)を使用した。
【0187】
wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスをKLHを用いて免疫し、7日後に、リンパ球を単離し、50μg/ml KLHを用いて再刺激した(図8を参照されたい)。
【0188】
IL−18−/−リンパ球と比較して、IL−18Rα−/−リンパ球は、IL−17の産生が非常に少なかった。この調査結果を確かめるために、我々は、RNAレベル及びタンパク質レベルの両方でこのサイトカインのレベルを分析した。KLHを用いた再刺激の際にリンパ球から得られたRNAのリアルタイムPCRは、両方のIL−17 mRNAの発現が、wt細胞及びIL−18−/−細胞と比較して、IL−18Rα−/−細胞中で著しく減少することを示した(図8a)。これらの調査結果は、同じKLH再刺激細胞の上清を使用したIL−17 ELISAによって確証を与えられた(図8b)。
【0189】
(実施例7)
IL−18Rα破壊は、アクセサリー細胞免疫区画中の細胞に影響を及ぼす
IL−18Rαの欠如は、THIL−17発生の予防を介してEAEの発生を完全に予防するが、その推定上のリガンドIL−18は無関係のように思われる。
【0190】
IL−18Rαがその主要な影響を及ぼす細胞型は知られていないままである。これは、主に、IL−18Rsが様々な細胞型及び組織によって発現されるという事実によるものである。しかしながら、CD4+T細胞上のIL−18Rαの存在が、THIL−17細胞の続く極性化に対して絶対的に決定的であると推定されそうである。EAEにおける、IL−18Rα破壊の、細胞及び組織の位置を同定するために、我々は、照射骨髄(BM)キメラを使用して、白血球区画の細胞上にIL−18Rαを選択的に発現させた。
【0191】
照射骨髄(BM)キメラマウス:
BMドナーマウスを、CO2を使用して安楽死させ、BM細胞を、リン酸塩緩衝液(PBS)を用いて、大腿骨、脛骨、とう骨、及び寛骨を洗い流すことにより単離した。次いで、BM細胞を100μm細胞濾過器に通過させ、細胞をPBSを用いて洗浄した。レシピエントマウスを、1100ラド(分割線量)で致死的に照射し、12〜25×106BM細胞をi.v.注射する。移植は、8週間の回復の間に起こる。
【0192】
照射及び再形成の後で、レシピエントマウスの第2のリンパ組織中のAPC区画は、ドナーマウスに由来するBM細胞で全体的に構成される(Becher,B.ら,J.Exp.Med.193,967−974(2001))。
【0193】
我々は、4:1の比のRAG−/−BM及びIL−18Rα−/−BMをwtレシピエント中に(RAG−/−+IL−18Rα−/−→wt)又はIL−18Rα−/−BMのみをwtレシピエント中に(IL−18Rα−/−→wt)移入することによりBMキメラを生成した。wt−BMは、コントロールとしてwtレシピエント中に移入した(wt→wt)(表2)。
【0194】
RAG−/−マウスは、リンパ球を有さず、したがって、結果として生じるキメラ(RAG−/−+IL−18Rα−/−→wt)は、IL−18Rα欠損リンパ球区画を有するが、大多数の他のすべての白血球は、非破壊IL−18Rα対立遺伝子を有する。
【0195】
予想どおり、IL−18Rα−/−→wtマウスは、MOGペプチドを用いた免疫の際にEAEに対して抵抗性であった。その代わりに、T細胞又はB細胞を有さず、したがってリンパ球上ではなくアクセサリー細胞上のみにIL−18Rαを発現させる、RAG−/−マウスからのBMの追加により、EAEに対するIL−18Rα−/−マウスの抵抗性を弱らせることができた(図9)。したがって、IL−18Rαは、アクセサリー細胞(単核食細胞及び多核食細胞、DC&NK細胞)区画中でその主要な影響を及ぼすにちがいない。さらに、IL−18がT細胞及びNK細胞にその影響を及ぼすと考えられていることを考慮すれば、この発見は、非常に予期せぬことであるが、これまでのところ我々の観察と完全に一致している。
【0196】
(実施例8)
宿主細胞上のIL−18Rαの欠如は、MOG反応性T細胞の養子移入によって誘発されたEAE発生を予防する
上記のデータは、アクセサリー細胞上のIL−18Rαの欠如が、TH細胞のプライミング及び増大に影響を及ぼさないことを示す。さらに、RAG−/−+IL−18Rα−/−→wt混合BMキメラは(図9)、IL−18Rαの欠損が、EAEの発生に不可欠なアクセサリー細胞機能に障害を生じさせることを明確に実証する。我々は、EAEの間のアクセサリー細胞のIL−18Rシグナル伝達の役割及び機能を明らかにするために養子移入実験を続いて行った。そうするために、我々は、wtレシピエントマウス及びIL−18Rα−/−レシピエントマウスの両方のグループ中にwtドナーマウスに由来する脳炎誘発性MOG反応性T細胞を養子移入した。予想どおり、wtマウスに由来する、十分にプライムされ、且つ活性化された脳炎誘発性T細胞は、wtレシピエントマウスにおいてEAEを誘発したが、それらは、IL−18Rα欠損宿主において臨床的なEAEを誘発することができなかった(図10)。この発見は、IL−18Rαの欠損が、EAEの発生に必須の、宿主の非リンパ球の白血球に、T細胞活性と無関係に障害を生じさせるということをさらに強調する。
【表1】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】IL−18Rシグナル伝達は、IL−18と無関係に、EAE誘発に必要である。マウスは、CFA中のMOG35−55を用いて能動免疫し、0日目及び2日目に百日咳毒素をi.p.注射した。(a)p35−/−×IL−18−/−二重ノックアウトマウス及びwtマウスにおけるEAE進行を示す図である。2回の実験のうちの一方の代表的実験を示す(n=5マウス/グループ)。(b)wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスにおけるEAE進行を示す図である。3回の実験のうちの1つの代表的実験を示す(n=5マウス/グループ)。
【図2】IL−18Rシグナル伝達は、IL−18と無関係に、EAE誘発に必要である。マウスは、CFA中のMOG35−55を用いて能動免疫し、0日目及び2日目に百日咳毒素をi.p.注射した。疾患に関する浸潤のスコアを示すwt(スコア2)EAEマウス、IL−18−/−(スコア2)EAEマウス、IL−18Rα−/−(スコア0)EAEマウス、及び未処置マウスからのPFA固定脊髄の(a)H&E染色、(b)LFB染色、(c)CD3染色、(d)MAC3染色、及び(e)B220染色を示す図である。
【図3】IL−18−/−LN細胞は、それらの提唱される遺伝子型に一致してIL−18を産生しない。1μg/ml LPS、100ユニット/ml IFNγ、5μg/mlコンカナバリンA(ConA)、及び2.5ng/ml IL−12の示す混合物を用いて16時間刺激した未処置wt LN細胞並びにIL−18−/−LN細胞によるIL−18分泌を評価するELISAを示す図である。
【図4】IL−18及びIL−18Rαは、マイトジェンに刺激されたT細胞活性化に必要であるが、Th1発生に必要でない。(a)5μg/mlコンカナバリンA(ConA)を用いて16時間刺激した未処置wt LN細胞、IL−18−/−LN細胞、及びIL−18Rα−/−LN細胞によるIFNγ分泌を評価するELISAを示す図である。(b、c)マウスを200μg KLHで免疫し、7日後、LNを単離して再刺激した。(b)48時間、50μg/ml KLH又は5μg/ml ConAを用いて二通り再刺激したKLH免疫マウスからの上清中のIFNγのELISAを示す図である。(c)48時間、50μg/ml KLH、5μg/ml ConA、又は培地を用いて三通り再刺激したKLH免疫マウスからのLN細胞の増殖アッセイを示す図である。3H−チミジンを、カウント毎分(CPM)で増殖を測定する24時間前に培養物に追加した。(d)BM由来DCを、wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL18R−/−マウスから生成し、LPSを用いて成熟させ、続いて1μg/ml SMARTAペプチド、p11を用いてパルスした。p11特異的CD4+T細胞を、未処置SMARTA−Tgマウスから得、増殖が、カウント毎分(CPM)でチミジン取り込みによって評価された場合に、ペプチドパルスし、且つ照射(2000ラド)したDCと共に72時間同時培養した。
【図5】代替IL−18Rα結合リガンドは、IL−18−/−マウスにおいてEAEを誘発する。(a)IL−18−/−は、MOG35−55を用いる免疫の1日前に、450μg抗IL−18Rα抗体(白色の正方形)又はコントロールIgG(黒色の菱形)を用いて処置し、その後の3日ごとに300μg抗体を用いて処置した。2回の実験のうちの一方の代表的実験を示す(n=5マウス/グループ)。(b)IL−18−/−マウス(n=6マウス/グループ)は、MOG35−55を用いて免疫し、疾患の第1の徴候の時点で、300μg抗IL−18Rα抗体(白色の正方形)又はコントロールIgG(黒色の菱形)を用いて処置した。
【図6】IL−18R−/−CD4+T細胞は、wt CD4+T細胞及びIL−18−/−CD4+T細胞に類似して活性化される。50μg/ml KLH又は培地を用いて2日間、in vitroで再刺激したKLH免疫wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18R−/−マウスに由来する脾細胞のFACSを示す図である。2日後に、脾臓細胞を、CD4−FITC及び(a)CD5−APC、(b)CD62L−bio−SA−PerCP−Cy5.5、又は(c)CD44−PEを用いて染色した。
【図7】IL−18Rα−/−CD4+T細胞は、疾患発症前に、wt CD4+T細胞及びIL−18−/−CD4+T細胞と同じ程度までCNSを浸潤する。wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスを、MOG35−55を用いて能動免疫し、免疫7日後に、マウスをPBSを用いて灌流し、CNSを単離した。勾配により小膠細胞を単離し、この部分における炎症細胞の浸潤をフローサイトメトリーによって評価した。細胞は、CD45−PerCP及びCD4−APCを用いて染色した。IL−18Rα−/−CD4+T細胞は、CNSに侵入し、免疫7日後に、wt CD4+T細胞及びIL−18−/−CD4+T細胞と同じように侵入する。
【図8】IL−18Rα破壊は、IL−17の産生及びTHIL−17細胞の発生に影響を及ぼす。wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスを、KLHを用いて免疫し、7日後に、脾細胞を単離し、50μg/ml KLHを用いて再刺激した。(a)KLHを用いたin vitro再刺激の2日後の、wtリンパ球、IL−18−/−リンパ球、及びIL−18Rα−/−リンパ球によるIL−17 mRNA発現のリアルタイムPCR比較を示す図である。結果は、β−アクチン発現を基準に合わせ、二通り分析した。(b)二通りin vitroでKLHを用いて2日間再刺激したリンパ球によるIL−17タンパク質発現のELISAを示す図である。データは、1グループ当たり少なくとも2匹のマウスを組み合わせたものである。
【図9】IL−18Rαの不在はT細胞又はB細胞に障害を生じさせない。BMキメラマウスは、致死的に照射したwtマウス中に12〜25x106BM細胞を移入することにより生成した。6週間後に、再形成したIL−18Rα−/−→wt(灰色の三角形)、IL−18Rα−/−+RAG−/−→wt(白色の正方形)、及びwt→wt(黒色の菱形)骨髄キメラマウスは、MOG35−55ペプチドを用いて能動免疫し、臨床スコアを評価した。RAG−/−骨髄に由来する非T細胞及び非B細胞上のIL−18Rαの存在は、EAEに対する、IL−18Rα−/−→wtマウスの感受性をよみがえらせた。
【図10】IL−18Rα−/−マウスは、EAEの受身移入に対して抵抗性である。MOG反応性リンパ球は、wtマウスを能動免疫することにより生成し、11日後に脾臓及びLN細胞を単離し、それらを、4日間、in vitroで、20μg/ml MOG35−55及び2.5ng/ml IL−12を用いて再刺激した。EAEは、IL−18Rα−/−(灰色の三角形)マウス及びwt(黒色の菱形)マウス中への20〜30×106MOG反応性リンパ球の養子移入によってレシピエントマウスにおいて誘発された。2回の実験のうちの一方の代表的実験を示す(n=5マウス/グループ)。
【図11】抗IL−18RαAb処置は、周辺の免疫細胞の組成を変えない。IL−18−/−マウスは、MOG35−55を用いる免疫の1日前に、300μg抗IL−18Rα抗体又はコントロールIgGを用いて処置し、7日後に、脾臓を単離し、均質化して、免疫細胞組成をフローサイトメトリーによって評価した。細胞は、CD8−FITC、CD4−APC、NK1.1−bio−SA−PerCP、及びB220−PE又はCD11b−FITC、CD11c−APC、及びGR1−bio−SA−PerCPについて染色した。抗IL−18RαAb処置IL−18−/−マウスにおいて免疫細胞組成に差異はない。2匹のマウス/グループの一方の代表的なFACSを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト患者における新規な治療処置又は予防処置に関する。本発明は、IL−18Rαのアンタゴニストが疾患を処置するのにin vivoで有効であるという発見から部分的にもたらされたものである。
【0002】
したがって、本発明は、患者、好ましくはヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法であって、患者に、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。本発明は、さらに、自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の処置のための医薬の製造における、IL−18Rαのアンタゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
脱髄疾患は、神経系の髄鞘における異常を伴う病状のグループである。多くの先天性代謝障害は、主にCNSにおける発達中の髄鞘を冒し、脱髄は、多くの神経障害の特徴となる。
【0004】
ヒトにおける中枢神経系の最も知られている慢性炎症性脱髄疾患は、多発性硬化症である。多発性硬化症(MS)の発症は、20歳〜40歳の間に典型的に起こる。女性は、男性よりも約2倍の頻度で冒される。長い間にわたって、MSは、様々な神経障害の蓄積をもたらす可能性がある。MSにおける臨床的障害は、ミエリン及び軸索の続く損失を伴い、組織萎縮につながる、度重なる炎症性損傷の結果であると推定される。
【0005】
MSは、身体症状(再発及び障害進行)、中枢神経系(CNS)炎症、脳萎縮、及び認知機能障害において顕在化される。主症状は、限局性の感覚消失、限局性の脱力、視覚的問題、平衡失調、及び疲労を含む。性機能障害及び括約筋機能不全が起こる可能性がある。MSを有する患者の約半分は、認知機能障害又はうつ病を経験する可能性がある。
【0006】
MSは、現在、多面的な疾患であると考えられており、臨床的な静止状態(寛解)の期間は、増悪の間に起こる。寛解は、長さが変動し、数年間続く可能性があるが、まれに永久的となる。
【0007】
疾患の4つの経過は、個別に扱われる:再発寛解型(RR)多発性硬化症、二次進行型(SP)多発性硬化症、一次進行型(PP)多発性硬化症、及び進行再発型(PR)多発性硬化症。MSを有する80%を超える患者は、最初は、神経症状の臨床的増悪と共にRR経過を呈し、完全である可能性のある又は完全でない可能性のある回復が後に続く(Lublin及びReingold,Neurology,1996,46:907−911)。
【0008】
RRMSの間、障害の蓄積は、再発からの不完全な回復に起因する。RRMSを有する患者の約半分は、病気の発症の10年後に、SPMSと呼ばれる進行型経過に移る。SP期の間、障害の悪化は、増悪の後の残存症状の蓄積に起因するが、増悪の間の潜行性の進行にも起因する(上記のLublin及びReingold)。MS患者の10%は、疾患発症からの、症状の潜行性の進行によって特徴づけられるPPMSを有する。患者の5%未満は、PRMSを有し、PPMSと同じ予後を有すると考えられることが多い。別の病原性機構が、異なる患者サブグループに関与する可能性があり、疾患分類に対して広範な影響を有することが示唆されている(Lassmannら,2001,Trends Mol.Med.,7,115−121;Lucchinettiら,Curr.Opin.Neurol.,2001,14,259−269)。
【0009】
MS発症は、CNS機能不全といった第1の神経症状の出現によって定義される。脳脊髄液(CSF)分析及び磁気共鳴画像法(MRI)における進歩は、診断プロセスを単純化し、早期診断を容易にした(Noseworthyら,The New England Journal of Medicine,2000,343,13,938−952)。MSの診断に関する国際パネルは、MSの診断を容易にし、且つ臨床診断法及び臨床外診断法と共にMRIを含む改訂基準を発行した(Mc Donaldら,2001,Ann.Neurol.,50:121−127)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多発性硬化症の処置のための今のところ利用可能な処置は、疾患の症状に対して実際のところ作用するものである。その結果として、患者への、改善された臨床的利点を提供する代替治療に対する強い要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ヒト患者における新規な治療処置又は予防処置に関する。本発明は、IL−18Rαのアンタゴニストが疾患を処置するのにin vivoで有効であるという発見から部分的にもたらされたものである。
【0012】
したがって、本発明は、患者、好ましくはヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法であって、患者に、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。特定の態様では、脱髄疾患は多発性硬化症である。本発明は、さらに、自己免疫疾患又は脱髄疾患の処置のための医薬の製造における、IL−18Rαのアンタゴニストの使用に関する。特定の態様では、脱髄疾患は多発性硬化症である。
【0013】
特定の態様では、本発明は、上記に定義される方法又は使用に関し、患者は、再発寛解型(RR)多発性硬化症、二次進行型(SP)多発性硬化症、一次進行型(PP)多発性硬化症、又は進行再発型(PR)多発性硬化症に冒されている。
【0014】
他の態様では、本発明は、上記に定義される方法又は使用に関し、アンタゴニストは、IL−18Rαの産生を低下させる又は予防する、又はアンタゴニストは、部分的に、実質的に、又は完全にIL−18Rαの活性をブロックする。
【0015】
本発明は、上記に定義される方法又は使用にさらに関し、アンタゴニストは、低分子、抗体、siRNA、アンチセンス核酸、及びリボザイムからなる群から選択される。
【0016】
特定の態様では、アンタゴニストは、IL18−Rα、特に、IL18−Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体である。より具体的には、抗体は、配列番号2のポリペプチドに選択的に結合し、さらに具体的には、抗体は、配列番号2の残基1〜329又は配列番号2の残基19〜329又は配列番号2の残基330〜350又は配列番号2の残基351〜541に選択的に結合する。特定の態様では、抗体は、配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329に選択的に結合する。他の特定の態様では、抗体は、配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329に選択的に結合する。
【0017】
本発明の他の対象は、上記に定義される方法又は使用に関し、抗体は、ヒトIL−18Rαの細胞外ドメインに位置するエピトープに選択的に結合する。特定の態様では、エピトープは、配列番号2のアミノ酸19〜329に又は配列番号2のアミノ酸残基19〜219に又は配列番号2のアミノ酸残基122〜329に位置する。他の特定の態様では、エピトープは、配列番号2のアミノ酸19〜132又は配列番号2の122〜219又は配列番号2の213〜329に位置する。
【0018】
本発明のさらなる対象は、上記に定義される方法又は使用に関し、抗体は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1、2、3、4、5、又は6個のCDRを含む抗原結合ドメインを有する。特定の態様では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号4のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。より具体的には、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列にあるVHドメイン及び配列番号4のアミノ酸配列にあるVLドメインを含む。さらに具体的には、抗体は、Ig定常重鎖領域、ヒトIgカッパ定常ドメイン及びヒトIgラムダ定常ドメインからなる群から選択されるIg定常軽鎖領域、配列番号3のアミノ酸配列を有するIg可変重鎖領域、並びに配列番号4のアミノ酸配列を有するIg可変軽鎖領域としてヒトIgG1を含む。
【0019】
特定の態様では、本発明は、上記に定義される方法又は使用に関し、抗体は、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70614、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70625、モノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンB−E43、及びモノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンH44からなる群から選択される。
【0020】
本発明は、上記に定義される方法又は使用にさらに関し、抗体は、Ab1、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70614、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70625、モノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンB−E43、及び/又はモノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンH44と、ヒトIL−18Rαへの結合について競合する抗体である。
【0021】
本発明は、さらに、上記に定義される方法又は使用に関し、抗体は、
− 配列番号2の残基19〜329又は配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329又は配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329を含む免疫剤を用いて宿主動物を免疫するステップ、
− 上述の宿主動物によって産生されたリンパ球を不死化細胞系と融合させてハイブリドーマ細胞を形成するステップ、
− 免疫ペプチドに対する抗体を産生するハイブリドーマ細胞のクローンを選択するステップ、
− EAE動物モデル中のハイブリドーマ細胞の異なるクローンによって産生された抗体の活性を試験し、上述の動物モデルにおけるEAEの進行を阻害する抗体を選択するステップ、
− 分泌されたモノクローナル抗体を産生するステップ
を含むプロセスによって得ることができる。
【0022】
より具体的には、免疫剤は、配列番号2の残基19〜329又は配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329又は配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329又はその融合タンパク質からなるものであってもよい。
【0023】
本発明は、上記に定義される方法又は使用にさらに関し、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はその断片である。
【0024】
本発明の他の対象は、上記に定義される方法又は使用に関し、アンタゴニストは、配列番号1の配列の18〜25個の連続したヌクレオチドに対して100%相補的なsiRNAであり、ヒトIL−18Rαの発現又は生物活性を低下させる又は阻害することができる。
【0025】
本発明の他の対象は、上記に定義される方法又は使用に関し、アンタゴニストは、長さが15〜35個のヌクレオチドの範囲のアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、配列番号1に記載される核酸配列に対して相補的である。
【0026】
本発明の他の対象は、上記に定義される方法又は使用に関し、アンタゴニストは、それぞれが配列番号1の長さが少なくとも5個の隣接したヌクレオチドである1又は2個の領域に対して相補的なハイブリダイズ領域を含有するリボザイムである。
【0027】
本発明は、上記に定義される方法又は使用にさらに関し、アンタゴニストは、抗原提示細胞中のIL18Rαの活性を阻害する。特定の態様では、抗原提示細胞は、単核食細胞、多核食細胞、樹状細胞、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される。
【0028】
本発明は、上記に定義される方法又は使用にさらに関し、IL−18Rαの阻害は、IL−17産生ヘルパーT細胞の減少をもたらす。
【0029】
本発明は、さらに、上記に定義される方法又は使用に関し、IL−18Rαのアンタゴニストは、MSを処置する又は予防するための第2の治療薬と共に投与される。特定の態様では、IL−18Rαのアンタゴニストは、コルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンと共に投与される。
【0030】
本発明の他の態様は、哺乳動物患者、好ましくはヒト患者のMSの治療における同時の、別個の、又は順次の使用のための、IL−18Rαのアンタゴニスト及び併用調製物としてのコルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンを含む産物を含む。IL−18Rαのアンタゴニストは、医薬としての使用のためのものである。また、IL18−Rα、特に、IL18−Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体は、医薬としての使用のためのものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、IL−18Rαにアンタゴナイズする作用物質を用いて動物を処置することにより、MSについて動物モデルにおける症状が低下するという発見に部分的に基づく。したがって、本発明は、患者に、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することにより、ヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(MS等)の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法を提供する。
【0032】
IL−18受容体は、リガンド結合IL−18Rαサブユニット(文献中ではIL−1Rrp又はIL−1 R5とも命名されている)及びシグナル伝達IL−18Rβサブユニットからなるヘテロ二量体として記載されてきた。IL−18Rの下流シグナル伝達は、TLR経路の下流シグナル伝達と同様に、IRAK4及びMyD88を活性化する。IL−18Rαは、リンパ球上に発現し、より最近では、アクセサリー細胞上に発現することが発見された(Kaser,A.ら Blood 103,648−655(2004),Tomura,M.ら Immunol.160,3759−3765(1998),Xu,D.ら J.Exp.Med.188,1485−1492(1998),Yoshimoto,T.ら J.Immunol.161,3400−3407(1998))。
【0033】
IL−18がIL−18R複合体に結合することができることが確証されているが、IL−18Rαのみへのその親和性は、弱い親和性にすぎない(Boraschi,D.ら Eur.Cytokine Netw.9,205−212(1998),Torigoe,K.ら J.Biol.Chem.272,25737−25742(1997))。IL−18は、T細胞によるIFN−γの産生を刺激するようIL−12と共に共同して働き、またNK細胞の細胞傷害性活性を単独で刺激することができる。IL−18及びIL−12は、TH1サイトカイン応答に向けてT細胞を極性化するために相乗的に作用し、これは、脳炎誘発に対する必要条件であると考えられた。
【0034】
IL−18−/−マウスは、EAE抵抗性であるとして記載されてきた、またIL−18−/−マウスにおける不十分なNK細胞活性化は、脳炎誘発性の免疫応答を生成することができない原因であると考えられた(Shi,F.D.,ら,J.Immunol.165,3099−3104(2000))。それにもかかわらず、IL−12の明らかな防御活性を考慮すれば、EAEにおけるIL−18の提唱された役割は、ジレンマを引き起こす(Cua,D.J.ら Nature 421,744−748(2003),Becher,B.ら,J.Clin.Invest 110,493−497(2002))。
【0035】
本発明者は、EAEに対するIL−18−/−マウスの感受性によって推定されるように、以前に公表されたデータとは対照的に、IL−18が、EAEにおいて明白な病原性の影響を及ぼさないことをこれから実証する。しかしながら、その提唱される受容体(IL−18Rα)の欠失は、EAE誘発に対する完全な抵抗性をもたらし、これは、脳炎誘発性の特性を有する代替リガンド(IL−18RL)の存在を示唆する。IL−18Rαに対するIL−18の親和性は、かなり乏しく、親和性の増加のためにIL−18Rβとのヘテロ三量体化を必要とするので、IL−18Rαに対するより高い親和性を有する他のリガンドがある可能性は非常に強い。IL−1Rスーパーファミリー内には多くのオーファン受容体があり、これらの受容体サブユニットが互いにヘテロ二量体を形成する事実を考慮すれば、おそらく、IL−18Rαは、異なる結合パートナーを有するだけではなく、異なるリガンドもまた有していそうである。
【0036】
本発明者は、抗IL−18Rα抗体を使用して、IL−18−/−マウスにおける疾患発生を著しく減衰させることにより、本明細書でこの推定上のリガンドの性能を実証する。承認されているIL−18RαリガンドであるIL−18は、これらのマウス中に存在せず、それらの細胞構成要素は、抗体の注射の結果として冒されなかったことを考慮すれば、これらの結果は、上記代替IL−18Rαリガンドの実在についての実質的証拠を提供する。
【0037】
EAEの間のT細胞の重要性にもかかわらず、本発明者は、IL−18Rαの欠失が、増大に関するT細胞プライミング及びTh1極性化に影響を及ぼさないことを本明細書で示す。その代わりに、マイトジェンConAを用いて刺激した場合、IL−18及びIL−18Rαは、共に、効率的なT細胞活性化に必要であり、これは、様々な細菌及びウイルス感染モデルにおいて観察されるように、IL−18−/−マウスがIFNγ分泌の刺激に欠陥を有するという発見に一致する。T細胞活性化のレベルでの障害の欠如に一致して、本発明者は、wt(野生型)樹状細胞、IL−18−/−樹状細胞、又はIL−18Rα−/−樹状細胞(DC)と共に培養された場合にTcR Tg T細胞が同じ程度まで増殖したように、IL−18Rα破壊が、抗原提示細胞(APC)の活性化機能に影響を及ぼさないことを本明細書で示す。
【0038】
EAEの終点でのCNS中の炎症細胞の不在とは対照的に、本発明者は、疾患の発症の前に、IL−18Rα−/−CNS中で、比較に値するCD4+T細胞浸潤を検出することができた。他の炎症細胞もまた、wtマウス及びIL−18−/−マウスと同じ程度までCNSを浸潤した。したがって、IL−18Rα欠損は、CNS中への免疫細胞の侵入に影響を及ぼさないが、存続するためのそれらの能力に影響を及ぼすにちがいない。興味深いことには、随伴性EAE感受性を伴わない、IL−18Rα−/−CNS中の炎症性浸潤物の存在は、IL−23−/−マウスにおいて起こる応答に似ている。
【0039】
本発明者は、IL−18Rα−/−KLHリコールリンパ球によるIL−17産生を分析し、RNA及びタンパク質の両レベルでIL−17の産生における著しい減少が実際にあることを実証する。したがって、IL−18Rα−/−マウスのEAEに対する抵抗性は、THIL−17発生が不十分である結果として説明することができるかもしれない。
【0040】
THIL−17細胞の欠如は、T細胞のこの亜集団上のIL−18Rα発現の不在に起因したように思われた。しかしながら、BM−キメラの生成により、RAG−/−BM細胞の存在下でのみ、IL−18Rα−/−マウス(RAG−/−+IL−18Rα−/−>wt)のEAEに対する感受性をよみがえらせることができたことを実証したように、これは事実ではなかった。IL−18Rα−/−>wtマウスは、他方、疾患誘発に対して抵抗性であった。したがって、IL−18Rαの存在は、非リンパ球白血球上で必要とされ、前THIL−17細胞上に直接位置しない。さらに、アクセサリー細胞上のIL−18Rαの重要性は、脳炎誘発性wt T細胞が、IL−18Rα−/−マウスにおいてEAEを誘発することができなかった養子移入実験において強められた。
【0041】
要約すると、本発明者は、EAEにおけるIL−18の非病原性の役割を実証することにより、MS及びEAEのTH1仮説を反駁する証拠を示す。しかしながら、対照的に、いわゆるIL−18Rαは、EAEの発生にとって決定的であり、したがって代替IL−18Rα結合リガンドの存在を暗示するものであり、これを、本発明者は、抗IL−18Rα抗体を用いてIL−18−/−マウスを処置し、それによってEAE重症度を減じることにより、確認することができた。あるいは、本発明者は、IL−18Rαシグナル伝達が脳炎誘発性THIL−17細胞の発生にとって決定的なことを示し、それによって、MOG35−55に誘発されるEAEに対するIL−18Rα−/−マウスの抵抗性を説明する。
【0042】
上記本明細書及び本出願の実施例で開示される結果は、本発明にとって、部分的に基礎となる。本明細書に説明されるように、本発明の発明者は、IL−18Rαのアンタゴニストが疾患を処置するのにin vivoで有効であることを発見した。具体的には、IL−18Rαの細胞外ドメインに結合する抗体は、この疾患のマウスモデルにおける実験的に誘発されたMSを予防するのに有用であることが分かった。さらに、IL−18Rαアンタゴニストはまた、同じ動物モデルにおいて既に確立された疾患の進行をも阻害した。したがって、これらのin vivoデータは、IL−18Rαの阻害がMSを処置するのに有効であることを示す。IL−18Rα活性を中和する又はIL−18Rα遺伝子の発現を阻害する(転写又は翻訳のいずれか)任意の方法は、MSの症状を低下させるために使用することができる。
【0043】
したがって、本発明は、患者、特にヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法であって、患者に、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。本明細書に使用されるように、化合物の「治療的有効量」は、自己免疫疾患若しくは脱髄疾患(特にMS)又はその症状を処置する、寛解させる、又は予防するのに有効な化合物の最小限の量を意味する。本発明は、さらに、自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)の処置のための医薬の製造における、IL−18Rαのアンタゴニストの使用に関する。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態では、処置するための疾患は、再発寛解型(RR)MS、二次進行型(SP)MS、一次進行型(PP)MS、又は進行再発型(PR)MSである。
【0045】
本発明の文脈内の用語「IL−18Rαのアンタゴニスト」は、IL−18Rαの産生及び/又は作用が減衰する、低下する、又は部分的に、実質的に、若しくは完全にブロックされるように、IL−18Rαの産生及び/又は作用を調整する任意の分子を指す。特定の実施形態では、アンタゴニストは、IL−18Rαの産生を低下させる又は予防する。他の特定の実施形態では、アンタゴニストは、部分的に、実質的に、又は完全にIL−18Rαの活性をブロックする。
【0046】
IL−18Rαの産生及び/又は作用が減衰する、低下する、又は部分的に、実質的に、若しくは完全にブロックされるように、IL−18Rαの産生及び/又は作用を阻害する任意のアンタゴニストは、本発明の方法に従って自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)を処置するために使用されてもよい。たとえば、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、IL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの生物活性を阻害する低分子は、自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)を処置する又は予防するために使用することができる。さらに、IL−18Rαの発現を阻害する産物(たとえばsiRNA分子、アンチセンス分子、リボザイム等)は、自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)を処置する又は予防するために使用することができる。
【0047】
したがって、本発明は、患者、特にヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法であって、患者に、低分子、抗体、siRNA、アンチセンス核酸、及びリボザイムからなる群から選択される、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。本発明は、さらに、自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)の処置のための医薬の製造における、低分子、抗体、siRNA、アンチセンス核酸、及びリボザイムからなる群から選択される、IL−18Rαのアンタゴニストの使用に関する。
【0048】
本明細書に説明されるように、本発明の発明者は、IL−18Rαのアンタゴニストが疾患を処置するのにin vivoで有効であることを発見した。本発明者によって得られたデータは、IL−18Rαの阻害がIL−18に無関係の様式でMSの処置に有効であることを示す。したがって、本発明の一実施形態では、自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)を処置するために使用されるIL−18Rαのアンタゴニストは、IL−18活性を単に阻害するものではない。好ましくは、本発明で使用されるIL−18Rαのアンタゴニストは、IL−18(たとえばヒトIL−18)に選択的に結合する抗体ではない。
【0049】
IL−18結合タンパク質(IL−18BP、PCT国際公開第99/09063号に記載される)は、本発明によるIL−18Rαのアンタゴニストと考えられない。
【0050】
本発明は、さらに、医薬としての使用のための上記又は下記のIL−18Rαのアンタゴニストのいずれかに関する。
【0051】
本発明の特定の実施形態では、アンタゴニストは、抗原提示細胞中の、より具体的には単核食細胞、多核食細胞、樹状細胞、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される抗原提示細胞中のIL−18Rαの活性を阻害することができる。
【0052】
本発明の実施形態では、IL−18Rαのアンタゴニストは、IL−17産生TH細胞の発生を阻害することができる。
【0053】
ヒトIL−18RαをコードするcDNAは、配列番号1に示される。このcDNAは、541個のアミノ酸長のタンパク質(配列番号2)をコードし、このタンパク質は、18個のアミノ酸のシグナルペプチド(配列番号2の残基1〜18)を含む、329個のアミノ酸の細胞外ドメイン(配列番号2の残基1〜329)、21個のアミノ酸の膜貫通領域(配列番号2の残基330〜350)、及び配列番号2のアミノ酸351〜541からの細胞質ドメインを含む。
【0054】
1)低分子:
一実施形態では、本発明の方法での使用のためのアンタゴニストは低分子である。IL−18Rαの任意の低分子アンタゴニストは、MSを処置する又は予防するために本発明の方法に従って使用することができる。一般に、低分子は、質量が1000ダルトン未満であろう、また500ダルトン未満であることが多いであろう。典型的に、低分子は、自然発生のもの又は人工的に作り出されたもの(たとえば化学合成を介して)にかかわらず、有機化合物を指し、タンパク質、ポリペプチド、又は核酸ではなく、複数の炭素−炭素結合を有する。
【0055】
2)抗体:
本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法での使用のためのアンタゴニストは、IL−18Rαに選択的に結合する抗体である。上記抗体は、患者、好ましくはヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(特にMS)の症状を処置する、予防する、又は寛解させるために使用される。適した抗体は、後に本明細書で記載されるポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体、免疫抱合体、並びに抗体断片(Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、及びFv断片、抗体断片から形成される二特異性抗体、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、一特異性抗体、並びに多特異性抗体等)を含む。好ましい実施形態では、抗体は、IL−18Rαの細胞外ドメインに結合する。
【0056】
特定の実施形態では、本発明の方法で使用される抗体は、配列番号2のポリペプチド、より具体的には配列番号2の残基1〜329、配列番号2の残基19〜329、配列番号2の残基330〜350、又は配列番号2の残基351〜541に選択的に結合する。特定の態様では、抗体は、配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329に選択的に結合する。他の特定の態様では、抗体は、配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329に選択的に結合する。好ましい実施形態では、抗体は、ヒトIL−18Rαの細胞外ドメインに位置するエピトープに選択的に結合する。さらに好ましくは、このエピトープは、配列番号2のアミノ酸19〜329に位置する。他の実施形態では、このエピトープは、配列番号2のアミノ酸残基19〜219に又は配列番号2のアミノ酸残基122〜329に位置する。他の特定の態様では、エピトープは、配列番号2のアミノ酸19〜132又は配列番号2の122〜219又は配列番号2の213〜329に位置する。
【0057】
本発明の文脈内で、用語「選択的に」結合するは、抗体が、標的ポリペプチド又はエピトープに優先的に、つまり他のいかなる抗原又はエピトープに対するいかなる結合よりも高度な親和性で結合することを示す。言い換えれば、標的ポリペプチドへの結合は、他の抗原への非特異的結合と区別することができる。本発明による抗体は、標的ポリペプチド又はエピトープに対して、106M−1以上、好ましくは107M−1以上、より好ましくは108M−1以上、最も好ましくは109M−1以上の結合親和性(Ka)を示すことが好ましい。抗体の結合親和性は、たとえばScatchard解析によって当業者によって容易に決定することができる(Scatchard G.,Ann NY Acad.Sci.51:660−672,1949)。
【0058】
本発明の方法での使用に適した抗体は、後に本明細書で記載されるポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体、免疫抱合体、並びに抗体断片(Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、及びFv断片、抗体断片から形成される二特異性抗体、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、一特異性抗体、並びに多特異性抗体等)を含む。
【0059】
A.ポリクローナル抗体:
げっ歯類、霊長類、及びウマを含む様々な種からのポリクローナル抗体を調製する方法は、たとえばVaitukaitisらに記載されている(J Clin Endocrinol Metab.33(1971)p.988)。ポリクローナル抗体は、たとえば免疫剤及び所望であればアジュバントの1回又は複数回の注射によって哺乳動物中で産生することができる。典型的に、免疫剤及び/又はアジュバントは、複数回の皮下注射又は腹腔内注射によって哺乳動物に注射されるであろう。免疫剤は、配列番号2のポリペプチド又はより具体的には、配列番号2の残基1〜329若しくは配列番号2の残基19〜329若しくは配列番号2の残基330〜350若しくは配列番号2の残基351〜541若しくはその融合タンパク質、さらに具体的には、配列番号2の残基19〜219若しくは配列番号2の残基122〜329若しくは配列番号2の残基19〜132若しくは配列番号2の残基122〜219若しくは配列番号2の残基213〜329若しくはその融合タンパク質を含んでいてもよい。免疫されている哺乳動物中で免疫原性であることが知られているタンパク質に免疫剤を抱合することは有用である可能性がある。上記免疫原性タンパク質の例は、キーホールリンペットヘモシニアン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、及び大豆トリプシンインヒビターを含むが、これらに限定されない。用いられてもよいアジュバントの例は、フロインド完全アジュバント及びMPL−TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)を含む。繰り返し注射が行われてもよい。血液サンプルは収集され、免疫グロブリン又は血清は分離される。
【0060】
B.モノクローナル抗体
あるいは、抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質の抗体の集団から得られた抗体を指す、つまり集団を含む個々の抗体は、微量で存在する可能性のある、起こり得る自然発生の突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して作られる。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質の集団から得られた抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の産生を必要とするとして解釈されるものではない。
【0061】
モノクローナル抗体を産生する方法は、参照によって本明細書に組み込まれるたとえばHarlowら(Antibodies:A laboratory Manual,CSH Press,1988)又はKohlerら(Nature 256(1975)495)に見出されてもよい。
【0062】
ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物は、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生する又は産生することができるリンパ球を誘発するために免疫剤を用いて典型的に免疫される(免疫剤は、配列番号2のポリペプチド又はより具体的には、配列番号2の残基1〜329若しくは配列番号2の残基19〜329若しくは配列番号2の残基330〜350若しくは配列番号2の残基351〜541若しくはその融合タンパク質、さらに具体的には、配列番号2の残基19〜219若しくは配列番号2の残基122〜329若しくは配列番号2の残基19〜132若しくは配列番号2の残基122〜219若しくは配列番号2の残基213〜329若しくはその融合タンパク質を典型的に含むであろう)。あるいは、リンパ球は、in vitroで免疫されてもよい。一般に、ヒト起源の細胞が所望であれば、末梢血リンパ球(「PBL」)が使用される、又は非ヒト哺乳動物源が所望であれば、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、リンパ球は、ハイブリドーマ細胞を形成するために、ポリエチレングリコール等の適した融合剤を使用して不死化細胞系と融合される(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−103)。不死化細胞系は、普通、形質転換された哺乳動物細胞、詳細にはげっ歯類、ウシ、及びヒト起源の骨髄腫細胞である。普通、ラット又はマウスの骨髄腫細胞系が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、非融合不死化細胞の成長又は生存を阻害する1つ又は複数の物質を好ましくは含有する適した培地中で培養されてもよい。たとえば、親細胞が、酵素であるヒポキサンチングアニンホスホリボシル転移酵素(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培地は、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを典型的に含むであろう(「HAT培地」)、またこれらの物質は、HGPRT欠損の細胞の成長を予防する。好ましい不死化細胞系は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高度なレベルの発現を維持し、且つHAT培地等の培地に敏感である不死化細胞系である。より好ましい不死化細胞系はネズミ骨髄腫系であり、これらは、たとえばSalk Institute Cell Distribution Center、サンディエゴ、カリフォルニア及びAmerican Type Culture Collection、マナッサス、バージニアから得ることができる。ヒト骨髄腫細胞系及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系は、さらに、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987)pp.51−63)。
【0063】
次いで、ハイブリドーマ細胞が培養される培地は、免疫ペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又は放射免疫アッセイ(RIA)若しくは酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)等のin vitro結合アッセイによって決定される。上記技術及びアッセイは、当技術分野で知られている。モノクローナル抗体の結合親和性は、たとえば、Munson及びPollard,Anal.Biochem.,107:220(1980)のScatchard解析によって決定することができる。
【0064】
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローニングし、標準の方法(Goding,前掲)によって成長させてもよい。この目的に適した培養液は、たとえば、ダルベッコ修飾イーグル培地及びRPMI−1640培地を含む。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物中の腹水としてin vivoで成長させてもよい。
【0065】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、たとえばプロテインAセファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製手順によって培養液又は腹水から単離されてもよい又は精製されてもよい。
【0066】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4816567号に記載される方法等の組換えDNA方法によって作製されてもよい。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して、容易に単離し、配列決定することができる(たとえば、ネズミ抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブの使用によって)。本発明のハイブリドーマ細胞は、上記DNAの好ましい源として役立つ。DNAは、一度単離されると、発現ベクター中に配置されてもよく、次いで、発現ベクターは、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を達成するために、他の状態では免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞等の宿主細胞中に形質移入される。
【0067】
「モノクローナル抗体」はまた、たとえばClacksonら,Nature,352:624−628[1991]及びMarksら,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載される技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0068】
抗体は、一価抗体であってもよい。一価抗体を調製する方法は、当技術分野でよく知られている。たとえば、ある方法は、免疫グロブリンの軽鎖及び修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、重鎖架橋を予防するために、Fc領域の任意のポイントで一般に切断される。あるいは、関連するシステイン残基は、架橋を予防するために他のアミノ酸残基と置換される又は取り除かれる。
【0069】
in vitro方法もまた一価抗体を調製するのに適している。抗体の断片、詳細にはFab断片を産生するための抗体の消化は、当技術分野で知られているルーチン的な技術を使用して達成することができる。
【0070】
抗体は、たとえばWardら(Nature 341(1989)544)に開示されるように、免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーの選択によって産生されてもよい。
【0071】
C.ヒト抗体及びヒト化抗体:
好ましくは、本発明での使用のための抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体である。非ヒト(たとえばネズミ)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ免疫グロブリン、キメラ免疫グロブリン鎖、又はその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は抗体の他の抗原結合部分配列等)である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、及び性能を有する、マウス、ラット、又はウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基と交換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。いくつかの場合では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は対応する非ヒト残基と交換される。
【0072】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当技術分野でよく知られている。ヒト化は、ヒト抗体の対応する配列の代わりにげっ歯類のCDR又はCDR配列を用いることによって、Winter及び共同研究者らの方法に従って本質的に行うことができる(Jonesら,Nature,321:522−525(1986);Riechmannら,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら,Science,239:1534−1536(1988))。したがって、上記「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4816567号)、実質的に無処置ではないヒト可変ドメインは、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている。
【0073】
いくつかの場合では、ヒトフレームワークへのCDRの移入は、ヒト化抗体の特異性の損失をもたらす。これらの場合では、復帰突然変異を、抗体のヒト部分のフレームワーク領域中に導入することができる。復帰突然変異を作製する方法は、当技術分野でよく知られており、たとえばCoら,PNAS USA 88;2269−2273(1991)及び国際公開第90/07861号に記載される。
【0074】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野で知られている様々な技術を使用して産生することもできる(Hoogenboom及びWinter,J.Mol.Biol,227:381(1991);Marksら,J.Mol.Biol,222:581(1991))。Coleら及びBoernerらの技術もまたヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Coleら,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)及びBoernerら,J.Immunol.,147(1):86−95(1991))。同様に、ヒト抗体は、トランスジェニック動物、たとえば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されたマウス中へのヒト免疫グロブリン座の導入によって作製することができる。抗原投与に際して、ヒト抗体産生は、観察され、遺伝子の再構成、構築、及び抗体レパートリーを含むすべての点でヒトで見られるものに非常によく似ている。このアプローチは、たとえば米国特許第5545807号;第5545806号;第5569825号;第5625126号;第5633425号;第5661016号;並びに以下の科学刊行物:Marksら,Bio/Technology,10:779−783(1992);Lonbergら,Nature,368:856−859(1994);Morrison,Nature,368:812−13(1994);Fishwildら,Nature Biotechnology,14:845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology,14:826(1996);Lonberg及びHuszar,Intern.Rev.Immunol.,13:65−93(1995)に記載される。
【0075】
D.免疫抱合体:
本発明は、さらに、共有結合で又は非共有結合で、直接又はカップリング剤若しくはリンカーの使用を通して細胞毒、標識、薬剤、又は他の治療薬等の異種の部分に抱合された抗体を含む免疫抱合体の使用に関する。細胞毒は、化学療法剤、毒素(たとえば細菌、菌類、植物、又は動物起源の酵素活性毒素又はその断片)又は放射性同位体(つまり放射性抱合体)を含む。
【0076】
使用することができる酵素活性毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌からの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、ニガウリインヒビター、クルシン、クロチン、サパオナリアオフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、リストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、及びトリコテセネス(tricothecenes)を含む。種々の放射性核種は、放射性抱合抗体の産生に利用可能である。例として212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reを含む。
【0077】
他の実施形態では、抗体は、細胞プリターゲッティングにおける利用のために「受容体」(ストレプトアビジン等)に抱合させてもよく、抗体−受容体抱合体は、患者に投与され、その後、除去剤を使用して血行路から結合していない抱合体を除去し、次いで、細胞毒(たとえば放射性ヌクレオチド)に抱合されている「リガンド」(たとえばアビジン)を投与する。
【0078】
さらに、本発明の抗体又は抗体断片は、当技術分野の又は本明細書に記載される方法を使用してペグ化することができる。本明細書に開示される抗体はまた、免疫リポソームとして製剤されてもよい。抗体を含有するリポソームは、Epsteinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688(1985);Hwangら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030(1980);並びに米国特許第4485045号及び第4544545号に記載される等の、当技術分野で知られている方法によって調製される。循環時間が増強されたリポソームは米国特許第5013556号に開示される。
【0079】
E.抗体断片:
本発明は、さらに、無処置抗体の一部分、好ましくは無処置抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む「抗体断片」の使用に関する。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、抗体断片から形成される二特異性抗体、直鎖状抗体(Zapataら,Protein Eng.,8(10):1057−1062[1995])、一本鎖抗体分子、一特異性抗体、並びに多特異性抗体を含む。
【0080】
「Fv」は、完全抗原認識部位及び完全抗原結合部位を含有する最小限の抗体断片である。この領域は、密接に、非共有的に結びつけられた1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用するのはこの立体配置においてであり、VH−VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義している。共同して、6個のCDRは、抗原結合特異性を抗体に付与する。しかしながら、全結合部位よりも親和性が低いが、単一の可変ドメインでさえ(又は抗原に特異的な3つのCDRしか含まない半分のFv)抗原を認識し、且つ結合する能力を有する。
【0081】
Fab断片は、さらに、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab断片は、Fab’断片と異なり、Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ又は複数のシステインを含むごくわずかな残基が重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に追加されている。Fab’−SHは、Fab’に対する本明細書での呼称であり、定常領域のシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つ。F(ab’)2抗体断片は、Fab’断片の間にヒンジシステインを有する、Fab’断片のペアとしてもともとは産生された。抗体断片の他の化学的カップリングもまた知られている。任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常領域のアミノ酸配列に基づき、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に別とされる種類のうちの一方に指定することができる。
【0082】
「一本鎖抗体分子」は、上述の抗体のVHドメイン及びVLドメインを含む抗体の断片であり、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、一本鎖抗体分子が抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VHドメイン及びVLドメイン間のポリペプチドリンカーをさらに含む。一本鎖抗体分子の検討については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,Vol.113,Rosenburg及びMoore編,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。
【0083】
用語「二特異性抗体」は、2つの抗原結合部位を有する低分子抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖中に、軽鎖可変ドメイン(VL)に対してつながれた重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH−VL)。好ましくは、同じ鎖上の2つのドメイン間でペア形成させるには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、他の鎖のうちの相補的ドメインとペア形成するように強いられ、2つの抗原結合部位を作り出す。二特異性抗体は、たとえば、欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollingerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)に、より十分に記載される。
【0084】
本明細書で使用される用語「一特異性抗体」は、重鎖可変ドメインを有し、且つ軽鎖可変ドメインを有していない抗原結合分子を指す。一特異性抗体は、軽鎖がない状態で抗原に結合することができ、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3と示される3つのCDR領域を典型的に有する。一特異性抗体は、2本の足指及び強靭な足底を有する足を有する動物を含む、ラクダ科の動物源から得られた「ラクダ科動物一特異性抗体」を含む。ラクダ科の動物は、ラクダ、ラマ、及びアルパカを含む。ラクダ(ヒトコブラクダ及びフタコブラクダ)は、それらの血清からの物質を分析すると可変軽鎖ドメインを欠くことが多いことが報告されており、十分な抗体特異性及び親和性は、VHドメイン(3つのCDRループ)のみに由来し得ることを示唆する。一特異性抗体はまた、様々な動物源、特に哺乳動物(たとえばマウス、ラット、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ、又はヒト)からの修飾VHも含み、VLがない状態で抗原に結合することができる。好ましくは、VHは、VLがない状態で抗原にVHが結合するために、VLとの接合点の位置で修飾される。Davies及びRiechmannは、たとえば、高度な親和性(107M−1以上の、標的ポリペプチドに対する結合親和性(Ka))及び高度な特異性を有する「ラクダ化一特異性抗体」を生成することができることを実証した(Davies&Riechmann,1995,Biotechnology(NY),13(5):475−9)。軽鎖可変ドメイン(VL)に対するその接合点を通したVHの非特異的結合は、この接合点における3つの突然変異(G44E、L45R、及びW47G)によって予防された。これらの突然変異は、軽鎖パートナーが自然で欠けているラクダ科動物抗体重鎖を模倣するよう導入された。
【0085】
F.本発明の方法での使用のための他の抗体:
本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法での使用のためのアンタゴニストは、IL−18Rαに選択的に結合する本明細書で上記に記載される抗体である。本発明の方法での使用のための抗体は、たとえばPCT出願国際公開第97/31010号又は欧州出願第0850952号に記載され、それらの全体が本出願に参照により組み込まれる。
【0086】
好ましくは、本発明の方法での使用のための抗体は、ヒトIL−18Rαに、さらに好ましくはヒトIL−18Rαの細胞外ドメインに位置するエピトープに選択的に結合する。上記抗体は、ヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(MS等)の症状を処置する、予防する、又は寛解させるために使用される。
【0087】
特定の実施形態では、上記抗体は、本明細書で上記に記載されるモノクローナル抗体、ヒト抗体若しくはヒト化抗体、免疫抱合体、又は抗体断片(Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、及びFv断片、抗体断片から形成される二特異性抗体、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、一特異性抗体、並びに多特異性抗体等)である。
【0088】
本発明の特定の一態様では、上記抗体は、ヒトIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する。より具体的には、上述の抗体は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1、2、3、4、5、又は6個のCDRを含む抗原結合ドメインを有する。好ましくは、上述の抗体の抗原結合ドメインは、配列番号5、配列番号6、及び配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1、2、又は3個のCDR並びに配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1、2、又は3個のCDRを含む。より好ましくは、上述の抗体の抗原結合ドメインは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のアミノ酸配列を有する6個のCDRを含む。
【0089】
本発明の他の実施形態では、上述の抗体はVHドメインを含む。好ましくは、VHドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を含む又はそこにある。他の実施形態では、抗体はVLドメインを含む。好ましくは、VLドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を含む又はそこにある。好ましい実施形態では、抗体は、VHドメイン及びVLドメインを含む。より好ましくは、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む又はそこにあるVHドメイン及び配列番号4のアミノ酸配列を含む又はそこにあるVLドメインを含む。
【0090】
他の実施形態では、抗体は、ヒトIgG1定常ドメイン、ヒトIgG2定常ドメイン、ヒトIgG3定常ドメイン、ヒトIgG4定常ドメイン、ヒトIgM定常ドメイン、ヒトIgE定常ドメイン、及びヒトIgA定常ドメインからなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。好ましくは、重鎖免疫グロブリン定常領域ドメインはヒトIgG1定常ドメインである。他の実施形態では、抗体は、ヒトIgカッパ定常ドメイン及びヒトIgラムダ定常ドメインからなる群から選択される軽鎖免疫グロブリン定常ドメインをさらに含む。
【0091】
他の実施形態では、抗体は、Ig定常重鎖領域、ヒトIgカッパ定常ドメイン及びヒトIgラムダ定常ドメインからなる群から選択されるIg定常軽鎖領域、配列番号3のアミノ酸配列を有するIg可変重鎖領域、並びに配列番号4のアミノ酸配列を有するIg可変軽鎖領域としてヒトIgG1を含む(後にAb1と命名される)。
【0092】
詳細には、本明細書に開示される抗体の好ましい実施形態は、本明細書で上記に定義されるヒト抗体若しくはヒト化抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、抗体断片から形成される二特異性抗体、直鎖状抗体、一本鎖抗体、一特異性抗体、又は多特異性抗体等の抗体断片である。最も好ましくは、抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0093】
本発明の方法での使用に適した他の抗体は、以下のモノクローナル抗体を含む:モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70614(R&D Systems社、ミネアポリス、MN、米国、カタログ番号:MAB8401によって市販化)、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70625(R&D Systems社、ミネアポリス、MN、米国、カタログ番号:MAB840によって市販化)、モノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンB−E43(抗体番号80232(Diaclone社、ブザンソン、フランス、カタログ番号854 900 000によって市販化))、モノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンH44(抗体番号80438(Diaclone社、ブザンソン、フランスによって市販化))。上述の抗体のヒト化形態は、好ましい。
【0094】
一実施形態では、本発明の方法での使用のための抗体は、本明細書で上記に記載されるAb1、クローン70614、クローン70625、クローンB−E43、及び/又はクローンH44とヒトIL−18Rαへの結合について競合する抗体である。競合結合アッセイは、Ab1、クローン70614、クローン70625、クローンB−E43、及び/又はクローンH44とヒトIL−18Rαへの結合について競合する抗体を同定するために使用することができる。当技術分野で知られている多くの競合結合アッセイのいずれも、同じ抗原に対する2つの抗体間の競合を測定するために使用することができる。手短に言えば、異なる抗体が他の抗体の結合を阻害する能力が試験される。たとえば、抗体は、サンドイッチELISAアッセイを使用して、それらが結合するエピトープによって区別することができる。これは、ウェルの表面をコーティングするために捕捉抗体を使用することにより実行される(捕捉抗体は、たとえばAb1、クローン70614、クローン70625、クローンB−E43、及び/又はクローンH44とすることができる)。次いで、半飽和濃度のタグ付き抗原を、捕捉表面に追加する(たとえばヒトIL−187Rα又はその一部(たとえばヒトIL−187Rαの細胞外ドメイン)。このタンパク質は、特異的な抗体:エピトープ相互作用を通して抗体に結合するであろう。洗浄後、検出可能な部分(たとえば、検出抗体として定義される標識抗体に対するHRP)に連結された二次抗体を、ELISAに追加する。この抗体が捕捉抗体と同じエピトープを認識する場合、その特定のエピトープはもはや結合するために利用可能ではないので、標的タンパク質に結合することはできないであろう。しかしながら、この二次抗体が標的タンパク質上の異なるエピトープを認識する場合、二次抗体は結合することができるであろう、また、この結合は、関連する基質を使用して、活性(したがって結合した抗体)のレベルを定量することにより検出することができる。バックグラウンドは、捕捉抗体及び検出抗体の両方として単一の抗体を使用することにより定義されるが、最大シグナルは、抗原特異的抗体を用いて抗原上のタグを捕捉し、且つ抗原上のタグに対する抗体を検出することにより確立することができる。参考としてバックグラウンド及び最大シグナルを使用することによって、抗体は、エピトープ特異性を決定するためにペアの様式で評価することができる。上記に記載されるアッセイのいずれかを使用して、第1の抗体の存在下で、抗原への二次抗体の結合が少なくとも30%、普通少なくとも約40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又は85%、多くの場合少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、又は99%低下した場合、第1の抗体は二次抗体の結合を競合的に阻害すると考えられる。本明細書で上記に開示されるように、上記に記載されるアッセイのいずれかを使用して、Ab1、クローン70614、クローン70625、クローンB−E43、及び/又はクローンH44の存在下で、少なくとも30%、普通少なくとも約40% 50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又は85%、多くの場合少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、又は99%低下させる等で、Ab1、クローン70614、クローン70625、クローンB−E43、及び/又はクローンH44とヒトIL−18Rα、特にヒトIL−187Rαの細胞外ドメインへの結合について競合する抗体は、本発明の方法での使用のための抗体に相当する。詳細には、これらの競合抗体の好ましい実施形態は、本明細書で上記に定義されるヒト抗体若しくはヒト化抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、抗体断片から形成される二特異性抗体、直鎖状抗体、一本鎖抗体、一特異性抗体、又は多特異性抗体等の抗体断片である。最も好ましくは、これらの競合抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0095】
本発明の一実施形態では、本発明の方法での使用のための抗体は、以下の技術によって得ることができる又は得られた抗体である。宿主動物(たとえばマウス、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ロバ、サル、又は他の適切な宿主)は、免疫剤に特異的に結合するであろう抗体を産生するリンパ球を誘発するために、配列番号2のポリペプチド若しくはその融合タンパク質を含む若しくはそれからなる又はより具体的には、配列番号2の残基19〜329若しくはその融合タンパク質、さらに具体的には、配列番号2の残基19〜219若しくは配列番号2の残基122〜329若しくは配列番号2の残基19〜132若しくは配列番号2の残基122〜219若しくは配列番号2の残基213〜329若しくはその融合タンパク質を含む若しくはそれからなる免疫剤を用いて免疫される。あるいは、リンパ球はin vitroで免疫される。その場合、ヒト起源の細胞が所望であれば、末梢血リンパ球(「PBL」)が使用される又は非ヒト哺乳動物源が所望であれば、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、リンパ球は、ハイブリドーマ細胞を形成するために、適した融合剤(ポリエチレングリコール等)を使用して不死化細胞系と融合される(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−103)。次いで、ハイブリドーマ細胞が培養される培地は、免疫ペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又は放射免疫アッセイ(RIA)若しくは酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)等のin vitro結合アッセイによって決定される。IL−18Rαの結合についてのELISA試験は、たとえば、参照により組み込まれるVermot−Desroches Cら Cell Immunol.2005.236(1−2):101−4に記載されている。所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローニングし、標準の方法(Goding,前掲)によって成長させてもよい。この目的に適した培養液は、たとえば、ダルベッコ修飾イーグル培地及びRPMI−1640培地を含む。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物中の腹水としてin vivoで成長させてもよい。サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、たとえばプロテインAセファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製手順によって培地又は腹水から単離又は精製されてもよい。
【0096】
任意選択で、得られた抗体はヒト化されてもよい。非ヒト抗体をヒト化する方法は、当技術分野でよく知られている。ヒト化は、ヒト抗体の対応する配列の代わりにげっ歯類のCDR又はCDR配列を用いることによって、Winter及び共同研究者らの方法に従って本質的に行うことができる(Jonesら,Nature,321:522−525(1986);Riechmannら,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら,Science,239:1534−1536(1988))。したがって、上記「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4816567号)、実質的に無処置ではないヒト可変ドメインは、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている。いくつかの場合では、ヒトフレームワークへのCDRの移入は、ヒト化抗体の特異性の損失をもたらす。これらの場合では、復帰突然変異を、抗体のヒト部分のフレームワーク領域中に導入することができる。復帰突然変異を作製する方法は、当技術分野でよく知られており、たとえばCoら,PNAS USA 88;2269−2273(1991)及び国際公開第90/07861号に記載される。あるいは、ヒト抗体は、トランスジェニック動物、たとえば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されたマウス中へのヒト免疫グロブリン座の導入により作製することができる。抗原投与に際して、ヒト抗体産生は、観察され、遺伝子の再構成、構築、及び抗体レパートリーを含むすべての点でヒトで見られるものに非常によく似ている。このアプローチは、たとえば米国特許第5545807号;第5545806号;第5569825号;第5625126号;第5633425号;第5661016号;並びに以下の科学刊行物:Marksら,Bio/Technology,10:779−783(1992);Lonbergら,Nature,368:856−859(1994);Morrison,Nature,368:812−13(1994);Fishwildら,Nature Biotechnology,14:845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology,14:826(1996);Lonberg及びHuszar,Intern.Rev.Immunol.,13:65−93(1995)に記載される。
【0097】
一実施形態では、本発明は、ヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法であって、患者に、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することを含む方法に関し、アンタゴニストは、IL18−Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体であり、抗体は、
− 配列番号2の残基19〜329を含む(又は配列番号2の残基19〜329若しくは配列番号2の残基122〜329若しくは配列番号2の残基19〜132若しくは配列番号2の残基122〜219若しくは配列番号2の残基213〜329若しくはその融合タンパク質からなる)免疫剤を用いて宿主動物を免疫するステップ、
− 上述の宿主動物によって産生されたリンパ球を不死化細胞系と融合させてハイブリドーマ細胞を形成するステップ、
− 免疫ペプチドに対する抗体を産生するハイブリドーマ細胞のクローンを選択するステップ、
− EAE動物モデル中のハイブリドーマ細胞の異なるクローンによって産生された抗体の活性を試験し、上述の動物モデルにおけるEAEの進行を阻害する抗体を選択するステップ、
− 分泌されたモノクローナル抗体を産生するステップ
を含む又はそれらからなるプロセスによって得ることができる。
【0098】
任意選択で、さらなるステップにおいて、得られた抗体はヒト化されてもよい。あるいは、免疫された宿主動物は、本明細書で上記に開示される、内在性免疫グロブリン遺伝子がヒト免疫グロブリンと交換されたトランスジェニック動物、たとえば、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されたマウスである。抗原投与に際して、ヒト抗体産生は、観察され、遺伝子の再構成、構築、及び抗体レパートリーを含むすべての点でヒトで見られるものに非常によく似ている。
【0099】
本発明の他の実施形態では、本発明の方法での使用のための抗体は、ファージディスプレイによって得ることができる又は得られた抗体である。その場合、「モノクローナル抗体」は、たとえばClacksonら,Nature,352:624−628[1991]及びMarksら,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載される技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離される。
【0100】
好ましくは、本明細書で上記に記載され、本発明の方法で使用される抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体であり、上記ヒト抗体又はヒト化抗体を作り出すための技術もまたよく知られており、たとえばProtein Design Labs社(フリーモント、CA)、Medarex社(プリンストン、NJ)、及びAbgennix社(フリーモント、CA)から市販されている。
【0101】
3)IL−18Rαの発現の阻害:
上記に論じられるように、本発明は、IL−18Rαにアンタゴナイズする作用物質を用いて動物を処置することにより、MSについて動物モデルにおける症状が低下するという発見に部分的に基づく。たとえば、下記の実施例2及び3に記載されるように、本本発明者は、IL−18Rα−/−マウスがEAEに対して抵抗性であること及びIL−18RαのブロックがIL−18−/−マウスにおいてEAEを予防することを実証した。したがって、転写又は翻訳のレベルでIL−18Rα遺伝子の特異的発現を妨害するヌクレオチド配列は、自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)を処置する又は予防するために使用することができる。このアプローチは、たとえば、siRNA及び/若しくはリボザイムを用いてmRNAの分解を誘発することによって又はアンチセンス核酸を用いてmRNAをマスクすることによって特異的mRNAの転写又は翻訳をブロックするために、siRNA及び/若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド並びに/又はリボザイムを利用してもよい。
【0102】
A.siRNA
本発明の一実施形態では、本発明の方法での使用のためのアンタゴニストはsiRNAである。RNA干渉(RNAi)は、興味のある遺伝子又はmRNAに対応する二本鎖RNA(dsRNA)が生物中に導入され、対応するmRNAの分解をもたらす転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)のメカニズムを指す。哺乳動物細胞の実験的操作のためにこの現象を利用するための最初の試みは、長いdsRNA分子に応じて活性化された頑強で非特異的な抗ウイルス性防御メカニズムにより妨害された(Gilら Apoptosis 2000,5:107−114)。
【0103】
IL−18Rα遺伝子に対応する二本鎖siRNAは、IL−18Rα mRNA転写物の分解を誘発することにより、IL−18Rαの転写及び/又は翻訳をサイレンシングするために使用することができ、したがって、IL−18Rαの発現を予防することにより自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)を処置する又は予防することができる。RNAi反応では、dsRNA分子のセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、典型的に長さが約10〜約30個のヌクレオチド、より典型的に長さが19〜25個のヌクレオチド(nt)、好ましくは長さが21〜23個のntの範囲の、2個のヌクレオチドの3’末を有する低分子のRNA断片又はRNAセグメントに処理される。これらのdsRNAは、「ガイドRNA」又は「低分子干渉RNA」(siRNA)として知られている。siRNAは、さらに、siRNA二重鎖の両方の鎖が単一のRNA分子内に含まれる、低分子U字型RNA(shRNA)を含むことができる。あるいは、長さが19〜25個のntであり、好ましくは長さが21〜23個のntであり、2個のヌクレオチドの3’末を有する合成dsRNAは、合成し、精製し、且つ反応において使用することができる。したがって、RNAiは、低分子干渉RNA(siRNA)によって典型的に媒介され、低分子干渉RNAは、長さが約19個のヌクレオチドで、各鎖上に1〜2個のヌクレオチドの3’オーバーハングを有し、全長が約21〜23個の間のヌクレオチドの二本鎖領域を典型的に含む。
【0104】
次いで、siRNA二重鎖は、siRNAに対して相同性を有する内在性mRNAを標的にし、且つ複合体内で破壊するタンパク質から構成されるヌクレアーゼ複合体に結合する。この様式で、特異的mRNAを標的にし、分解することができ、それによって、標的にされたmRNAからのタンパク質発現の損失がもたらされる。dsRNAの特定の条件及び修飾は、PCT国際公開第01/75164号に記載される(参照により本明細書に組み込まれる)。dsRNA分子は、長さが変動し得るが、長さが19〜25個のnt、最も好ましくは長さが21〜23個のヌクレオチドであり、特徴的な2〜3個のヌクレオチドの3’オーバーハング端、典型的に(2’−デオキシ)チミジン又はウラシルを有するsiRNA分子を使用することが好ましい。siRNAは、3’水酸基を典型的に含む。単鎖siRNA及びdsRNAの平滑末端形態もまた使用することができる。RNAの安定性をさらに増強するために、3’オーバーハングは、分解に対して安定化することができる。上記一実施形態では、RNAは、アデノシン又はグアノシン等のプリンヌクレオチドを含むことにより安定化される。あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、たとえば(2’−デオキシ)チミジンによるウリジン2−ヌクレオチドオーバーハングの置換は、許容され、RNAiの効率に影響を及ぼさない。2’水酸基がないと、組織培養培地における、オーバーハングのヌクレアーゼ抵抗性が著しく増強される。siRNAは、PCT国際公開第01/75164号に記載される方法を含む、当技術分野で知られている方法のいずれかを使用して又はRNAのin vitro転写のための標準の手順及びElbashirら(Genes&Dev.,15:188−200,2001)に記載されるdsRNAアニーリング手順を使用して調製することができる。
【0105】
本発明では、dsRNA又はsiRNAは、ヒトIL−18RαをコードするmRNAの配列の少なくとも一部に対応し、ヒトIL−18Rαの発現又は生物活性を低下させる又は阻害することができる。好ましくは、dsRNA又はsiRNAは、配列番号1に示されるcDNA配列の少なくとも一部に対応し(つまりsiRNAは、配列番号1に示されるcDNA配列の二本鎖領域である)、ヒトIL−18Rαの発現又は生物活性を低下させる又は阻害することができる。望ましくは、siRNAは、ヒトIL−18Rαの18〜25個の連続したヌクレオチドに100%相補的であり、ヒトIL−18Rαの発現又は生物活性を低下させる又は阻害することができる。さらに好ましくは、siRNAは、配列番号1に示される配列の18〜25個の連続したヌクレオチドに100%相補的であり、ヒトIL−18Rαの発現又は生物活性を低下させる又は阻害することができる。好ましい実施形態では、IL−18Rα生物活性の減少率は、コントロールのdsRNA、shRNA、又はsiRNAを用いて処置した細胞と比較して、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%、最も好ましくは少なくとも95%である。タンパク質発現のレベルをアッセイする方法は、当技術分野で知られており、ウエスタンブロット、免疫沈降、及びELISAを含む。IL−18Rαポリペプチド生物活性をアッセイする方法は、本明細書に記載されるアッセイを含む。
【0106】
本発明の状況において、siRNA等のRNAi誘発剤は、治療目的、たとえば、自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)を処置する又は予防するために有用である。いくつかの実施形態では、処置するための疾患は、再発寛解型(RR)MS、二次進行型(SP)MS、一次進行型(PP)MS、又は進行再発型(PR)MSである。特に、RNAiは、哺乳動物脳において有効であることが示されたこと及びshRNA分子の転写のための鋳型を提供するベクターは、脳中に導入されると局所的な遺伝子発現をダウンレギュレートすることが示されたことが注目されている(Hommel,JDら,Nature Medicine,9(12)1539−1544)。干渉RNAがない状態で検出された症状と比較した、MS症状の重症度における減少は、siRNAの効果を監視するために使用することができる。
【0107】
siRNAは、siRNAの注射、吸入、又は経口摂取を含む、当技術分野で知られている任意の手段を使用して、患者に送達することができる。他のsiRNAに適した送達系は、たとえば、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、並びに水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベース系等のコロイド分散系である。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、in vitro及びin vivoでの送達媒体として有用な人工膜小胞である。リポソーム内のRNA及びDNAを含む核酸は、生物学的活性形態で細胞に送達される(Fraleyら,Trends Biochem.Sci.,6:77,1981)。リポソームは、当技術分野で知られている任意の手段を使用して、特定の細胞型又は組織を標的にすることができる。
【0108】
多数の化学的修飾は、siRNA二重鎖又は一方若しくは両方の鎖の部分及び/又は3’オーバーハング(複数可)に対して成すことができるが、サイレンシング活性を消失させず、またサイレンシング活性を著しく減じないことが多い(Dorsett,Y及びTuschl,T.,Nat Rev Drug Discov.2004.3(4):318−29)。上記修飾は、一般に、安定性、細胞取り込み、及び/又はsiRNAの細胞内効果を増強する可能性がある。本発明は、任意の上記修飾、たとえばホスホロチオエート、2’−Oメチル、2’−O,4’−メチレンヌクレオチド等及び当技術分野、たとえばアンチセンス分野からの知られている他の修飾を有するsiRNA又はshRNAの使用を包含する。
【0109】
B.アンチセンス
本発明の一実施形態では、本発明の方法での使用のためのアンタゴニストは、完全な又は部分的な長さのアンチセンスRNA転写物である。アンチセンス核酸は、一般に、標的核酸(たとえばmRNA転写物)の一部分に相補的な単鎖核酸(DNA、RNA、修飾DNA、又は修飾RNA)であり、したがって、二重鎖を形成するよう標的に結合することができる。典型的に、アンチセンス核酸は、長さが15〜35個のヌクレオチド、好ましくは長さが15〜25個のヌクレオチドの範囲であるが、長さが10〜約50個までのヌクレオチドの範囲であってもよいオリゴヌクレオチドである。結合は、典型的に、標的核酸の機能を低下させる又は阻害する。たとえば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNAに結合すると転写をブロックし、mRNAに結合すると翻訳を阻害し、及び/又は核酸の分解をもたらす可能性がある。細胞中で、アンチセンス核酸は、対応するmRNAにハイブリダイズし、二本鎖分子を形成する。細胞は二本鎖であるmRNAを翻訳しないので、アンチセンス核酸はmRNAの翻訳を妨害する。それほど多くはないが、DNAに直接結合するアンチセンス分子が使用されてもよい。
【0110】
IL−18Rαの発現における低下は、ポリペプチドをコードするmRNAの配列に相補的な配列を含むアンチセンス核酸又はペプチド核酸の投与によって達成されてもよい。ヒトIL−18Rαポリペプチドをコードする核酸配列に特異的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドが好ましい。それらは、IL−18Rαの転写及び/又は翻訳をサイレンシングするために使用することができ、したがって自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)を処置する又は予防することができる。たとえば、配列番号1に記載される核酸配列に特異的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本発明の方法で使用することができる。典型的に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが15〜35個のヌクレオチド、好ましくは長さが15〜25個のヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチドであり、配列番号1に記載される核酸配列に相補的である。アンチセンス核酸がない状態で検出された症状と比較した、MS症状の重症度における減少は、アンチセンス核酸の効果を監視するために使用することができる。
【0111】
アンチセンス核酸は、自然発生ヌクレオチド又は(i)ホスホジエステル骨格の置換(たとえばペプチド核酸、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、及びホスホロアミダートオリゴヌクレオチド)、(ii)糖塩基の修飾(たとえば2’−O−プロピルリボース及び2’−メトキシエトキシリボース)、並びに(iii)ヌクレオシドの修飾(たとえばC−5プロピニルU、C−5チアゾールU、及びフェノキサジンC)を含む修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい(Wagner,Nat.Medicine,1:1116,1995;Vargaら,Immun.Lett.,69:217,1999;Neilsen,Curr.Opin.Biotech.,10:71,1999;Woolf,Nucleic Acids Res.,18:1763,1990)。
【0112】
ヒトIL−18Rα遺伝子に特異的なアンチセンスポリヌクレオチドの送達は、たとえば、ポリヌクレオチドの直接的な注射、吸入、又は摂取を含む、当技術分野で知られている任意の手段を使用して達成することができる。さらに、アンチセンスポリヌクレオチドは、組換え発現ベクター(たとえばアデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、又はレトロウイルスベースのウイルスベクター)又は本明細書に記載されるコロイド分散系(たとえばリポソーム)を使用して送達することができる。
【0113】
アンチセンス技術及びその適用は当技術分野でよく知られており、Phillips,M.I.(編)Antisense Technology,Methods Enzymol.,Volumes 313及び314,Academic Press,San Diego,2000並びにそこに言及される参考文献に記載される。Crooke,S.(編)「Antisense Drug Technology:Principles,Strategies,and Applications」(第1版),Marcel Dekker;ISBN:0824705661;第1版(2001)及びそこに言及される参考文献もまた参照されたい。
【0114】
C.リボザイム
リボザイムは、RNAの特異的開裂を触媒することができる酵素RNA分子である。検討のために、Rossi,1994,Current Biology 4:469−471を参照されたい、たとえばCotten及びBimstiel,EMBO J.8:3861−3866,1989;Usmanら,Nucl.Acids Mol.Biol.,10:243,1996;Usmanら,Curr.Opin.Struct.Biol.,1:527,1996;Sunら,Pharmacol.Rev.,52:325,2000もまた参照されたい。リボザイム作用のメカニズムは、相補的な標的RNAに対するリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションを含み、その後エンドヌクレアーゼ開裂イベントが続く。リボザイム分子の組成は、標的mRNAに相補的な1つ又は複数の配列及びmRNAの開裂を担う、よく知られている触媒配列又は機能的に等価な配列を好ましくは含む(たとえばその全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5093246号を参照されたい)。標的mRNA転写物を触媒的に開裂させるよう設計したリボザイム分子はまた、対象となる標的mRNAの翻訳を予防するために使用することもできる。
【0115】
部位特異的認識配列でmRNAを開裂させるリボザイムは、標的mRNAを破壊するために使用することができるが、ハンマーヘッド型リボザイムの使用が好まれる。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的mRNAと相補的塩基対を形成するフランキング領域によって決定された位置でmRNAを開裂する。好ましくは、標的mRNAは、2つの塩基の以下の配列を有する:5’−UG−3’。ハンマーヘッド型リボザイムの構築及び産生は、当技術分野でよく知られており、Haseloff及びGerlach,1988,Nature 334:585−591;並びにPCT出願国際公開第89/05852号に、より十分に記載され、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。ハンマーヘッド型リボザイム配列は、in vivoでの開裂効率を増加させるために、転移RNA(tRNA)等の安定したRNAに埋め込むことができる(Perrimanら,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:6175−79;de Feyter及びGaudron,Methods in Molecular Biology,Vol.74,Chapter 43,「植物におけるリボザイムの発現(Expressing Ribozymes in Plants)」,Turner,P.C編,Humana Press Inc.,Totowa,N.J.)。特に、tRNA融合リボザイムのRNAポリメラーゼIII媒介性の発現は、当技術分野でよく知られている(Kawasakiら,1998,Nature 393:284−9;Kuwabaraら,1998,Nature Biotechnol.16:961−5;及びKuwabaraら,1998,Mol.Cell 2:617−27;Kosekiら,1999,J.Virol 73:1868−77;Kuwabaraら,1999,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96:1886−91;Tanabeら,2000,Nature 406:473−4を参照されたい)。所与の標的cDNA配列内に多くの潜在的なハンマーヘッド型リボザイム開裂部位が典型的にある。好ましくは、効率を増加させ、且つ機能しないmRNA転写物の細胞内蓄積を最小限にするために開裂認識部位が標的mRNAの5’端の近くに位置するように、リボザイムは操作される。さらに、標的mRNAの異なる部分をコードする標的配列に位置する任意の開裂認識部位の使用により、一方又は他方の標的遺伝子の選択的なターゲティングを可能にすると思われる。
【0116】
本発明の遺伝子ターゲティングリボザイムは、それぞれが長さが少なくとも5個、好ましくはそれぞれが6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の隣接したヌクレオチドである、標的mRNAの1又は2個の領域に対して相補的なハイブリダイズ領域を含有する(好ましくは、遺伝子ターゲティングリボザイムは、配列番号1に記載される核酸配列の1又は2個の領域に対して相補的である)。さらに、リボザイムは、標的センスmRNAを自己触媒的に開裂させる高度に特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を持つ。
【0117】
本発明のリボザイムはまた、テトラヒメナサーモフィラにおいて自然に生じ(IVS又はL−19 IVS RNAとして知られている)、且つZaugら,1984,Science,224:574−578;Zaugら,1986,Science 231:470−475;Zaugら,1986,Nature 324:429−433;公開国際特許出願国際公開第88/04300号;及びBeenら,1986,Cell 47:207−216に広範囲に記載されているRNAエンドリボヌクレアーゼ等のRNAエンドリボヌクレアーゼ(「Cech型リボザイム」)も含む。Cech型リボザイムは、標的RNA配列にハイブリダイズする8つの塩基対活性部位を有し、その後、標的RNAの開裂は起こる。本発明は、標的遺伝子又は標的核酸配列に存在する8つの塩基対活性部位配列を標的にするそれらのCech型リボザイムを包含する。
【0118】
リボザイムは、修飾オリゴヌクレオチド(たとえば安定性、ターゲティング等の改善ために)から構成することができ、in vivoで標的遺伝子を発現させる細胞に送達されるはずである。送達の好ましい方法は、形質移入された細胞が、内在性標的メッセージを破壊し、且つ翻訳を阻害するのに十分な量のリボザイムを産生するように、強力な構成プロモーターの制御下で、リボザイムを「コードする」DNA構築物を使用することを含む。
【0119】
IL−18Rαの発現の低下は、本明細書で上記に記載されるリボザイムのいずれかの投与によって達成されてもよい。ヒトIL−18Rαポリペプチドをコードする核酸配列に特異的にハイブリダイズするリボザイムが好ましい。それらは、IL−18Rαの翻訳をサイレンシングし、したがって、MSを処置する又は予防するために使用することができる。たとえば、配列番号1に記載される核酸配列に特異的にハイブリダイズするリボザイムは本発明の方法で使用することができる。リボザイムがない状態で検出された症状と比較した、MS症状の重症度における減少は、リボザイムの効果を監視するために使用することができる。
【0120】
4)本明細書で上記に開示されるIL−18Rαアンタゴニストの薬学的使用:
本発明は、医薬としての使用のための、上記又は下記に記載される、IL−18Rαのアンタゴニストのいずれかに関する。好ましくは、IL−18Rαの上記又は下記に記載されるアンタゴニストのいずれかは、自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の症状を低下させるための能力を有する。したがって、好ましくは、本明細書に記載されるIL−18Rαのアンタゴニストに対するすべての修飾が、MSの症状を低下させるそれらの能力に著しく影響を及ぼすわけではない。さらに好ましくは、本明細書に記載されるIL−18Rαのアンタゴニストに対する修飾は、MSの症状を低下させるそれらの能力を増強する(たとえばそれらの半減期を増強することによって等)。
【0121】
本発明は、さらに、患者に、IL−18Rαの有効量のアンタゴニストを投与することにより、ヒト患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法に関する。IL−18Rαの産生及び/又は作用が減衰する、低下する、又は部分的に、実質的に、若しくは完全にブロックされるように、IL−18Rαの産生及び/又は作用を阻害する任意のアンタゴニストは、本発明の方法に従って自己免疫疾患又は脱髄疾患(特に多発性硬化症)を処置するために使用することができる。本発明の方法は、IL−18Rαのアンタゴニストを、MSに罹患した個人に対して、患者の状態における持続性の改善を誘発するのに十分な期間投与することを含む。本発明は、さらに、部分的に、自己免疫疾患又は脱髄疾患(多発性硬化症等)の処置のための医薬の製造における、IL−18Rαのアンタゴニストの使用を提供する。いくつかの実施形態では、アンタゴニストは、本明細書で上記に開示されるアンタゴニストである。たとえば、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、IL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの生物活性を阻害する低分子は、MSを処置する又は予防するために使用することができる。さらに、IL−18Rαの発現を阻害する産物(たとえばsiRNA分子、アンチセンス分子、リボザイム等)は、MSを処置する又は予防するために使用することができる。いくつかの実施形態では、処置するための疾患は、再発寛解型(RR)MS、二次進行型(SP)MS、一次進行型(PP)MS、又は進行再発型(PR)MSである。
【0122】
IL−18Rαのインヒビターが疾患を処置するのにin vivoで有効であるという発見は、本発明にとって、部分的に基礎となる。具体的には、IL−18Rαの細胞外ドメインに結合する抗体は、この疾患のマウスモデルにおける実験的に誘発されたMSを予防するのに有用であることが分かった。さらに、IL−18Rαアンタゴニストはまた、同じ動物モデルにおいて既に確立された疾患の進行をも阻害した。したがって、これらのin vivoデータは、IL−18Rαの阻害がMSを処置するのに有効であることを示す。IL−18Rα活性を中和する又はIL−18Rα遺伝子の発現を阻害する(転写又は翻訳のいずれか)任意の方法は、MSの症状を低下させるために使用することができる。
【0123】
対象となる方法は、産生されるIL−18Rαの量を低下させることによる又はその生物活性を予防することによる等で、有効量の内在性生物学的活性IL−18Rαを低下させることができるIL−18Rαアンタゴニストを患者に対して投与することを含む。上記アンタゴニストは、本明細書で上記に開示されるアンタゴニストを含む。
【0124】
好ましい態様では、タンパク質ベースの治療剤は、IL−18Rαタンパク質の活性を阻害するために使用することができる。たとえば、本発明の好ましい方法は、本明細書で上記に定義される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体を利用する。
【0125】
本発明の好ましい一実施形態では、本明細書で上記に記載される、IL−18Rαのアンタゴニスト、特に本明細書で上記に記載される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、IL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体の徐放性形態が使用される。開示される方法での使用に適した徐放性形態は、上記ポリマーと混合された、徐々に溶解する生体適合性ポリマー中にカプセル化された及び/又は生体適合性半浸透性インプラント中に包まれたIL−18Rαアンタゴニストを含むが、これらに限定されない。分解性ポリマーマイクロスフェアは、治療用タンパク質の高度な全身性のレベルを維持するよう設計されてきた。マイクロスフェアは、ポリ(ラクチドコグリコリド)(PLG)、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、非生物分解性酢酸エチルビニルポリマー等の分解性ポリマーから調製され、タンパク質は、ポリマー中に閉じ込められる(Gombotz及びPettit,Bioconjugate Chem.6:332(1995);Drug Delivery Systems,Ranade及びHollinger(編),pages 51−93(CRC Press 1995)中のRanade,「薬物送達におけるポリマーの役割(Role of Polymers in Drug Delivery)」;Protein Delivery:Physical Systems,Sanders及びHendren(編),pages 45−92(Plenum Press 1997)中のRoskos及びMaskiewicz,「タンパク質送達に有用な分解性放出制御系(Degradable Controlled Release Systems Useful for Protein Delivery)」;Bartusら,Science 281:1161(1998);Putney及びBurke,Nature Biotechnology 16:153(1998);Putney,Curr.Opin.Chem.Biol.2:548(1998))。ポリエチレングリコール(PEG)にコーティングされたナノスフェアもまた、治療用タンパク質の静脈内投与のためのキャリアを提供することができる。(たとえばGrefら,Pharm.Biotechnol.10:167(1997)を参照されたい)。さらに、IL−18Rαアンタゴニストは、その血清半減期を延長する又はタンパク質送達を増強するために、ポリエチレングリコールと抱合することができる(ペグ化)。
【0126】
MSを処置するために、IL−18Rαアンタゴニスト、好ましくはIL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体は、疾患の重症度を反映する少なくとも1つの指標において持続性の改善を誘発するのに十分な量及び時間で、患者に対して投与される。改善度は、徴候又は症状に基づいて決定され、クオリティオブライフ質問表等の、患者に対して行われる質問表を用いてもよい。IL−18Rαアンタゴニストの治療的有効量は、上記持続性の改善を達成するのに十分な量である。
【0127】
改善は、患者が、選ばれた1つ又は複数の指標についてのベースラインに対する改善を顕在化させるまで、ある用量のIL−18Rαアンタゴニストを繰り返し投与することにより誘発されるかもしれない。処置の後の、患者の病気の程度は、1つ又は複数の指標に従って改善されたように思われる可能性があるが、処置は、同じレベルで又は用量若しくは頻度を低下させて、無期限に継続してもよい。一度処置が減らされ又は中止され、症状が再発すれば、処置は、後に、最初のレベルで再開されてもよい。
【0128】
本発明の方法で使用される医薬組成物は、活性成分としてのIL−18Rαアンタゴニストと組み合わせて、動物に対する投与に適した、適した薬学的に許容し得る希釈剤、キャリア、生物学的適合性媒体、及び添加剤(たとえば生理食塩水)を含有していてもよく、薬学的に使用することができる調製物中への活性化合物の処理を容易にする助剤(賦形剤、安定剤、又はアジュバントのような)を任意選択で含んでいてもよい。医薬組成物は、投与のモードの必要性を満たすために、任意の許容し得る方法で製剤されてもよい。たとえば、薬剤送達のための生体材料及び他のポリマーの使用、その上、投与の特定のモードを有効にするための異なる技術及びモデルが文献に開示されている(Luo B及びPrestwich GD,2001;Cleland JLら,Curr Opin Biotechnol.(2001),12(2):212−9)。「薬学的に許容し得る」は、活性成分の生物活性の有効性を妨害せず、且つ投与される宿主にとって有毒ではない任意のキャリアを包含することを意味する。たとえば非経口投与については、上記の活性成分は、食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン、及びリンゲル液等の媒体中での注射のために、単位剤形で製剤されてもよい。キャリアはまた、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、及び石油、動物、植物、又は合成起源の油を含む様々な油(落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油)から選択することができる。
【0129】
医薬組成物は、液体形態又は凍結乾燥形態であってもよく、様々なpH価及びイオン強度を有する希釈剤(Tris、クエン酸塩、酢酸塩、又はリン酸緩衝液)、Tween又はポリソルベート等の可溶化剤、ヒト血清アルブミン又はゼラチン等のキャリア、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコニウムクロリド、又はベンジルアルコール等の防腐剤、アスコルビン酸又はメタ重亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、及びリシン又はグリシン等の他の成分を含む。特定の組成物の選択は、処置されている状態、投与の経路、及び所望される薬物動態パラメータを含む多くの因子に依存するであろう。医薬組成物に適した成分に関するより大規模な調査は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版 A.R.Gennaro編 Mack,Easton,PA(1980)に見い出される。
【0130】
好ましい実施形態では、タンパク質ベースの治療剤は、IL−18Rαタンパク質の活性を阻害するために使用される。本発明の好ましい方法は、本明細書で上記に定義される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体を利用する。このようなタンパク質は、精製された組換えタンパク質を含む生理学的に許容し得る組成物の形態で、生理学的に許容し得るキャリア、賦形剤、又は希釈剤と共に投与される。上記キャリアは、用いられる投与量及び濃度で、レシピエントにとって有毒でない。通常、上記組成物の調製は、緩衝液、アスコルビン酸等の酸化防止剤、低分子量ポリペプチド(10個未満のアミノ酸を有するポリペプチド等)、タンパク質、アミノ酸、グルコース、スクロース、又はデキストリン等の炭水化物、EDTA、グルタチオン、及び他の安定剤等のキレート剤、並びに賦形剤とIL−18Rαアンタゴニストを組み合わせることを要する。中性緩衝食塩水又は同種の血清アルブミンと混合した食塩水は、例示的な適切な希釈剤である。IL−18Rαアンタゴニストは、希釈剤としての適切な賦形剤溶液(たとえばスクロース)を使用して、凍結乾燥物として好ましくは製剤される。適切な投与量は、標準の投薬試験で決定することができ、投与の選ばれた経路に従って変動してもよい。適切な業界基準に従って、ベンジルアルコール等の防腐剤もまた追加されてもよい。もちろん、投与の量及び頻度は、処置されている徴候の重症度、所望の応答、患者の年齢及び状態等のような因子に依存するであろう。
【0131】
投与の任意の承認されたモードは、活性成分の所望の血中濃度を確立するために当業者によって使用し、且つ決定することができる。たとえば、投与は、皮下経路、静脈内経路、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、鼻腔内経路、経皮的経路、直腸経路、口腔経路、又は頬側経路等の様々な非経口経路によるものであってもよい。好ましくは、本発明の医薬組成物は、皮下又は静脈内に注射によって投与される。最終的に選ばれた投与の経路は、多くの因子に依存するであろう、そして当業者によって確認されてもよい。
【0132】
本発明の方法で使用される医薬組成物はまた、蓄積注射、浸透圧ポンプ等を含む徐放性剤形態又は放出制御剤形態で、IL−18Rαアンタゴニストの長期投与について、所定の速度で、好ましくは正確な投与量の単一の投与に適した単位剤形で投与することができる。
【0133】
非経口投与は、大量注射又は長い間にわたっての緩やかな灌流によるものとすることができる。非経口投与のための調製物は、無菌の水性溶液又は非水性溶液、懸濁液、及び乳濁液を含み、これらは、当技術分野で知られている補助的作用物質又は賦形剤を含有していてもよく、ルーチン的な方法に従って調製することができる。さらに、適切な油性注射懸濁液としての活性化合物の懸濁液が投与されてもよい。適した親油性の溶媒又は媒体は、脂肪油、たとえばゴマ油又は合成脂肪酸エステル、たとえばゴマ油又は合成脂肪酸エステル、たとえばオレイン酸エチル又はトリグリセリドを含む。懸濁液の粘度を増加させる物質を含有していてもよい水性注射懸濁液は、たとえば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランを含む。任意選択で、懸濁液はまた、安定剤を含有していてもよい。医薬組成物は、注射による投与に適した溶液を含み、約0.01〜99.99パーセント、好ましくは約20〜75パーセントの活性化合物を賦形剤と共に含有する。
【0134】
投与される投与量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態、及び体重、併用処置の種類、それがもしあれば処置の頻度、並びに所望される効果の性質に依存性であろうということが理解される。投与量は、当業者によって理解され、決定できるように、個々の患者に適合されるであろう。各処置に必要な全用量は、複数回用量によって又は単一用量で投与されてもよい。
【0135】
本発明の一実施形態では、本明細書で上記に開示されるIL−18Rαアンタゴニストは、MSを処置するために1週間当たり1回投与され、他の実施形態では、1週間当たり少なくとも2回投与され、他の実施形態では、1日当たり少なくとも1回投与される。IL−18Rαアンタゴニストが抗体(つまり、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体又は好ましくは、IL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)である場合、用量は、0.1〜10mg/kgとすることができ、好ましくは15分〜3時間の注入として静脈内に与えられる。この用量は、二週間に1回、毎週、又は数週間(2〜8週間)間隔をあけて繰り返し投与される。
【0136】
注射以外のIL−18Rαアンタゴニストの投与の経路が使用される場合、用量は、標準の医療行為に合わせて適切に合わせられる。たとえば、投与の経路が吸入である場合、投薬は、10mg/用量〜1用量当たり50mgの用量範囲で、1週間当たり1〜7回であってもよい。
【0137】
多くの場合、より長い期間の処置が、所望の改善度を誘発するのに必要である可能性があるが、患者の状態における改善は、少なくとも3週間の期間にわたり1週間当たり1〜3回、本明細書で上記に開示されるIL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体の約100mgまでの用量を注射することにより得られるであろう。レジメンは無期限に継続されてもよい。
【0138】
5)併用治療:
いくつかの実施形態では、本明細書で上記に定義されるIL−18Rαのアンタゴニストは、MSを処置する又は予防するための第2の治療薬と共に投与される。たとえば、IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)は、たとえばコルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンを含む、MSに対する標準の処置薬のいずれかと共にも投与されてもよい。
【0139】
本発明の一実施形態では、IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)は、コルチコステロイドと共に投与される。「コルチコステロイド」は、コレステロールに由来し、水素化されたシクロペンタノペルヒドロフェナントレン環構造によって特徴づけられ得る任意の自然発生ステロイドホルモン又は合成ステロイドホルモンが意味される。自然発生コルチコステロイドは、副腎皮質によって一般に産生される。合成コルチコステロイドは、ハロゲン化されてもよい。コルチコステロイドは、グルココルチコイド活性及び/又は鉱質コルチコイド活性を有していてもよい。
【0140】
例示的なコルチコステロイドは、たとえばデキサメタゾン、ベータメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンヘキサアセトニド、ベクロメタゾン、ジプロピオナート、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水化物、フルメタゾンピバレート、酢酸ジフロラゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオロメトロン、酢酸フルオロメトロン、プロピオン酸クロベタゾール、デソキシメタゾン、フルオキシメステロン、フルプレドニソロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、ヒドロコルチゾンシピオネート、ヒドロコルチゾンプロブテート(hydrocortisone probutate)、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、酢酸パラメタゾン、メチルプレドニソロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロンテブテート、ピバル酸クロコルトロン、フルオシノロン、酢酸デキサメタゾン21、吉草酸ベータメタゾン17、イソフルプレドン、9−フロオロコルチゾン、6−ヒドロキシデキサメタゾン、ジクロリゾン、メクロリゾン(meclorisone)、フルプレジデン、ドキシベタソール、ハロプレドン、ハロメタゾン、クロベタゾン、ジフルコルトロン、イソフルプレドンアセテート、フルオロヒドロキシアンドロステンジオン、ベクロメタゾン、フルメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノロン、クロベタゾール、コルチゾン、パラメタゾン、クロコルトロン、プレドニゾロン21−ヘミスクシネート遊離酸、メタスルホ安息香酸プレドニゾロン、プレドニゾロンテルブテート(prednisolone terbutate)、及びトリアムシノロンアセトニド21−パルミテートを含む。
【0141】
IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)と共に投与されるコルチコステロイドの好ましい例は、プレドニゾン及び/又はIVメチルプレドニソロンである。
【0142】
本発明の一実施形態では、IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)は、免疫抑制剤と共に投与される。本発明の実施形態では、免疫抑制剤は、メトトレキセート、アザチオプリン、シクロホスファミド、及びクラドリビンからなる群から選ばれ、これらは、脱髄疾患の重篤な進行型形態に一般に使用される。
【0143】
本発明の他の実施形態では、IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)は、神経保護薬と共に投与される。本発明の一実施形態では、神経保護薬は、経口ミエリン、コパクソン(Teva社製の酢酸グラチラマー)、タイサブリ(Biogen社/Elan社)、ノバントロン(Serono社)、テリフルノミド(Aventis社)、クラドリビン(Serono社/IVAX社)、GSK社/田辺製薬の683699(T−0047)、ダクリズマブ(Roche社)、ラキニモド(Active Biotech社)、及びZK−117137(Schering AG社)からなる群から選ばれる。これらの化合物はすべて、販売されている又はMSを処置するための臨床試験の最中である。
【0144】
本発明の他の実施形態では、IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)は、免疫調節剤と共に投与される。この点で、本発明での使用のための特定の免疫調節剤は、FTY720(2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、フィンゴリモド)を含む。MSを処置するためのII期でのFTY720(Novartis社)は、以下の化学式を有する。
【化1】
【0145】
FTY720は、ミリオシンの化学的修飾によって得られた、経口的に活性の免疫抑制剤(たとえば国際公開第94/08943号;国際公開第99/36065号を参照されたい)として同定された。本発明での使用のための他の免疫調節剤は、FTY720の誘導体を含む。FTY720の誘導体は、国際公開第94/08943号に記載される、以下の化学式を有する2−アミノ−1,3−プロパンジオール化合物及びその任意の薬学的に許容し得る塩を含み、
【化2】
Rは、二重結合、三重結合、酸素、硫黄、スルフィニル基、スルホニル基、−N(R6)−からなる群から選択される結合、ヘテロ原子、又は基を鎖中で有していてもよく、R6は、水素、アルキル、アラルキル、アシル、又はアルコキシカルボニル、カルボニル、任意選択で置換されたアリーレン、任意選択で置換されたシクロアルキルエン、任意選択で置換されたヘテロアリーレン、及びその脂環式化合物(alicycle)であり、且つ二重結合、三重結合、任意選択で置換されたアリル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアリル、又はその脂環式化合物;任意選択で置換されたアリル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアリル、又はその脂環式化合物によってその鎖端で置換されていてもよい任意選択で置換された直鎖状炭素鎖又は分枝炭素鎖であり、
R2、R3、R4、及びR5は、同じ又は異なり、それぞれは、水素、アルキル、アラルキル、アシル、又はアルコキシカルボニルを表し、又はR4及びR5は、アルキル、アリル、又はアラルキルによって置換されていてもよいアルキレン鎖を形成するよう結合していてもよい。
【0146】
上記の任意選択で置換された直鎖状炭素鎖又は分枝炭素鎖は、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アラルキルオキシ、アルキルエンジオキシ、アシル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アシルアミノ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アシルオキシ、アルキルカルバモイル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシイミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、任意選択で置換されたアリル、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアリル、及びその脂環式化合物からなる群から選択される置換基を有してもよく、前述の任意選択で置換されたアリーレン、任意選択で置換されたシクロアルキレン、任意選択で置換されたヘテロアリーレン、及びその脂環式化合物は、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アラルキルオキシ、アルキルエンジオキシ、アシル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アシルアミノ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アシルオキシ、アルキルカルバモイル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、及びカルボキシからなる群から選択される置換基を有してもよく、任意選択で置換されたアリル、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロアリル、及びその脂環式化合物は、アルキル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アラルキルオキシ、アルキルエンジオキシ、アシル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アシルアミノ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アシルオキシ、アルキルカルバモイル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、及びカルボキシからなる群から選択される置換基を有していてもよい。
【0147】
上記2−アミノ−1,3−プロパンジオール化合物の特定の例は、2−アミノ−2−[2−(4−ヘプチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ノニルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール 2−アミノ−2−[2−(4−デシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ウンデシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ドデシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−トリデシルフェニル)−エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−テトラデシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ヘキシルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ヘプチルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ノニルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−デシルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ウンデシルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ドデシルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−トリデシルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−(8−フルオロオクチル)フェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−(12−フルオロドデシル)フェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−(7−フルオロヘプチルオキシ)フェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−(11−フルオロウンデシルオキシ)フェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−(7−オクテニルオキシ)フェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ヘプチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ノニルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−デシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ウンデシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ドデシルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ヘプチルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ノニルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−[2−(4−ウンデシルオキシフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、又は2−アミノ−2−[2−(4−(7−オクテニルオキシ)フェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール、及びその任意の薬学的に許容し得る塩を含む。
【0148】
本発明の他の実施形態では、IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)は、インターフェロンと共に投与される。この点で、本発明での使用のための特定のインターフェロンは、インターフェロン−ベータである。用語「インターフェロン(IFN)」及び「インターフェロン−ベータ(IFN−ベータ)」は、本明細書で使用されるように、体液からの単離によって得られた又は原核生物若しくは真核生物の宿主細胞からのDNA組換え技術によって得られた特にヒト起源の線維芽細胞インターフェロン並びにその塩、機能的誘導体、変異体、類似体、及び活性断片を含むことが意図される。特定の種類のインターフェロンベータは、インターフェロンベータ−1aである。
【0149】
ヒト起源のインターフェロンの使用は、本発明で使用するのに好ましい。本発明で使用する適したIFN−ベータは、たとえばRebif(登録商標)(Serono社)、Avonex(登録商標)(Biogen社)、又はBertaseron/Betaferon(登録商標)(Schering社)として市販で入手可能である。Rebif(登録商標)(組換えヒトインターフェロン)は、多発性硬化症(MS)のためのインターフェロン治療において最近開発されたものであり、これは処置における著しい進歩を表す。Rebif(登録商標)は、哺乳動物細胞系から産生されたインターフェロン(IFN)−ベータ1aである。皮下に1週間当たり3回与えられたインターフェロンベータ−1aは、再発寛解型多発性硬化症(RRAMS)の処置において効果的であることが確立された。インターフェロンベータ−1aは、再発の数及び重症度を低下させ、且つMRIによって測定される疾患の負担及び疾患活性を低下させることによって、MSの長期的経過にプラスの効果を有し得る。したがって本発明の方法での使用のためのIL−18Rαアンタゴニストと共に投与されるインターフェロンの特定の例は、Rebif(登録商標)(Serono社)、Avonex(登録商標)(Biogen社)、又はBertaseron/Betaferon(登録商標)(Schering社)である。
【0150】
本発明の特定の態様は、上記処置を必要とする患者におけるMS、特に再発寛解型(RR)MS、二次進行型(SP)MS、一次進行型(PP)MS、又は進行再発型(PR)MSを処置する方法に関し、患者に、本明細書で上記に開示されるIL−18Rαのアンタゴニスト及び本明細書で上記に開示されるコルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンの組み合わせの治療的有効量を投与することを含む。ある実施形態では、コルチコステロイドは、プレドニゾン又はIVメチルプレドニソロンである。ある実施形態では、免疫抑制剤は、メトトレキセート、アザチオプリン、シクロホスファミド、又はクラドリビンである。ある実施形態では、神経保護薬は、経口ミエリン、コパクソン、タイサブリ、ノバントロン、テリフルノミド、クラドリビン、683699(T−0047)、ダクリズマブ、ラキニモド、又はZK−117137である。ある実施形態では、免疫調節剤は、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール(FTY720)である。ある実施形態では、インターフェロンは、インターフェロンベータ−1a(特にRebif(登録商標)(Serono社))である。
【0151】
IL−18Rαのアンタゴニスト(たとえば、本明細書で上記に開示される、IL−18Rαに選択的に結合する抗体、又はIL−18Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体)及び本明細書で上記に開示される第2の治療薬は、同時に、別々に、又は連続して投与されてもよい。たとえば、IL−18Rαのアンタゴニストが最初に投与され、その後に第2の治療薬が投与されてもよい。その代わりに、第2の治療薬が最初に投与され、その後にIL−18Rαのアンタゴニストが投与されてもよい。いくつかの場合では、IL−18Rαのアンタゴニスト及び第2の治療薬は、同じ製剤中で投与される。他の場合では、IL−18Rαのアンタゴニスト及び第2の治療薬は、異なる製剤中で投与される。IL−18Rαのアンタゴニスト及び第2の治療薬が異なる製剤中で投与される場合、それらの投与は、同時であってもよく又は順次であってもよい。
【0152】
本発明は、哺乳動物患者、好ましくはヒト患者におけるMSの治療での同時の、別個の、又は順次の使用のための、上記又は下記に記載されるIL−18Rαのアンタゴニストのいずれか及び併用調製物としての本明細書で上記に開示されるコルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンを含む産物にさらに関する。
【0153】
本明細書に引用されたすべての特許及び参考文献は、それらの全体が参照によって本明細書に含まれる。
【0154】
本発明の他の態様及び利点は、以下の実施例に開示されることとなり、説明的なものとしてのみ考えられるべきであり、本出願の範囲を限定しない。
【実施例】
【0155】
(実施例1)
p35−/−IL−18−/−二重ノックアウトマウスはEAEに対して感受性である
IL−12p35の欠失は、マウスにおいて、MOG(ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質)ペプチド誘発性実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)に対してマウスを感受性過度にすることが以前に示された(Becher,B.ら J.Clin.Invest 110,493−497(2002))。IL−18は、Th1細胞(1型ヘルパーT細胞)を極性化するようIL−12と相乗作用で作用し、またShiらは、IL−18が欠損したマウスはEAEに対して抵抗性であることを実証する証拠を提示した(Shi,F.D.ら,J.Immunol.165,3099−3104(2000))。
【0156】
IL−18がp35−/−マウスにおけるIL−12の損失を代償し、したがってそれらのEAE感受性につながり得るかどうかを評価するために、我々は、IL−12p35及びIL−18の両方が欠損したマウスを生成した(p35−/−×IL−18−/−)。
【0157】
マウス(n=5マウス/グループ)を、CFA(DIFCO社、デトロイト、MI)中で乳化した、GenScript社から得たMOG35−55ペプチド(アミノ酸配列:MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK(配列番号11))の200μgを用いて皮下に免疫した。マウスは、免疫時に及び48時間後に、200ng百日咳毒素(Sigma−Aldrich社)を腹腔内に受けた。
【0158】
マウスは、以下のように毎日スコア化した:0)検出可能なEAEの徴候なし;0.5)末端の尾部がぐったりしている;1)全尾部がぐったりしている;2)片側の部分的な後肢の麻痺;2.5)両側の部分的な肢の麻痺;3)両側の全後肢の麻痺;3.5)全後肢の麻痺及び片側の前肢の麻痺;4)前肢及び後肢の全麻痺(スコア>4は安楽死させる);5)死。各時点で、各グループの平均疾患スコアを示す。統計的有意差は、独立スチューデントt検定を使用して評価した。
【0159】
CFA中で乳化したMOG35−55を用いた免疫は、p35−/−×IL−18−/−マウスがEAEに対して完全に感受性であり、wtで産生されるものに類似する疾患スコア及び疾患発生を有することを示した(図1aを参照されたい)。したがって、p35−/−マウスにおけるIL−18欠失によって生成された、保護の欠如は、IL−18が、p35−/−マウスにおけるEAE感受性を誘発する原因ではないことを示すが、IL−18自体が、EAE病因にほとんど又はまったく効果を有していないサイトカインであることをも示唆する。
【0160】
(実施例2)
IL−18Rα−/−マウスではなくIL−18−/−マウスがEAEに対して感受性である
p35−/−×IL−18−/−マウスにおける我々の実験は、EAEにおけるIL−18の、以前に提唱された病原性の役割に矛盾するように思われたので、我々は、MOGペプチド(実施例1に記載される)を用いてwtマウス及びIL−18−/−マウスを能動免疫し、IL−18−/−マウスがEAEに対して完全に感受性であり、実際に、wtマウスに匹敵する臨床スコア及び疾患進行を有することを見い出した(図1b及び表1を参照されたい)。
【0161】
IL−18Rαが欠損したマウスは、IFNγ産生が低下するという点で、IL−18−/−マウスに類似する表現型を有するとして記載された。興味深いことには、wtマウス及びIL−18−/−マウスの両方と著しい対照をなして、IL−18Rα−/−マウスは、EAE誘発に対して完全に抵抗性であった(図1b及び表1を参照されたい)。
【0162】
EAE誘発後に得られたwtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスからの脊髄の組織学的分析は、CNS中への白血球浸潤が、疾患の臨床的な重症度と十分に相互に関連することを実証した。
【0163】
そうするために、マウスを、CO2を用いて安楽死させ、その後、PBSを用いて灌流し、続いてPBS中4%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて灌流した。脊柱を摘出し、PBS中4%PFA中で固定した。次いで、炎症細胞の浸潤を評価するためのヘマトキシリン&エオシン又はCD3抗体、B220抗体、及びMAC−3抗体(BD Pharmingen社)又は脱髄の程度を決定するためのルクソールファストブルーを用いて染色する前に、脊髄を解剖し、パラフィン包埋した。
【0164】
EAE感受性のwtマウス及びIL−18−/−マウスは、T細胞(図2c)、マクロファージ(図2e)、及びB細胞(図2d)等の炎症細胞の浸潤(図2a)及び脱髄(図2b)によって特徴づけられる著しい炎症を有したが、EAE抵抗性のIL−18Rα−/−マウスの脊髄中に炎症性浸潤物又は脱髄は存在しなかった(図2a〜e)。
【0165】
IL−18−/−マウスがIL−18を分泌することができないことを確認するために、我々は、ターゲティング戦略及びマウスの遺伝子型について広範囲に確認し、IL−18−/−マウスがIL−18mRNA又はIL−18タンパク質を含有しないことを明確に立証することができた。我々はまた、我々が、wtマウス及びIL−18−/−マウスに由来する活性化脾細胞から分泌されたIL−18を検出することができるかどうかを分析し、IL−18−/−マウスが、wtマウスとは対照的に、実際に、完全に、IL−18欠損であることを示した(図3を参照されたい)。
【0166】
IL−18の欠失がIFNγ応答の不足を一貫してもたらすことが多くの実験系で観察されたので(Wei,X.Q.ら J.Immunol.163,2821−2828(1999),Kinjo,Y.ら J.Immunol.169,323−329(2002))、我々は、16時間、レクチンコンカナバリンA(ConA)を用いて、in vitroで、未処置wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスに由来するリンパ球を刺激し、IFN−γ産生を、ELISAによって続いて測定した。
【0167】
そうするために、腋窩リンパ節及び鼠径リンパ節(LN)を未処置マウスから単離した。2×105細胞を三通り、96ウェルプレート中に配置した。5μg/ml ConAを16時間の刺激のために使用し、IFN−γ産生を、ELISA(Pharmingen社、ラホーヤ、CA)によって続いて測定した。
【0168】
IL−18がIFNγ産生に影響を有するという原理と一致して、IL−18−/−マウス及びIL−18Rα−/−マウスの両方からのLN細胞は、wt LN細胞とは対照的にIFNγを分泌しなかった(図4a)。
【0169】
(実施例3)
IL−18Rαのブロックは、IL−18−/−マウスにおけるEAEを予防する
EAEに関してのIL−18欠損マウス及びIL−18Rα欠損マウスの性質の不一致は、強力な脳炎誘発性特性を有するさらなるIL−18Rαリガンドを強く示すものである。IL−18Rα及びIL−18が、無関係の生物学的機能を有するかどうかを評価するために、我々は、EAE感受性のIL−18−/−マウスにおいてIL−18Rαをブロックした。
【0170】
マウス(n=5マウス/グループ)を、CFA(DIFCO社、デトロイト、MI)中で乳化した、GenScript社から得たMOG35−55ペプチド(アミノ酸配列:MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK(配列番号11))の200μgを用いて皮下に免疫した。マウスは、免疫時に及び48時間後に、200ng百日咳毒素(Sigma−Aldrich社)を腹腔内に受けた。モノクローナル抗IL−18Rα抗体(クローン112624)(R&D Systems社)を、免疫の1日前に(450μg/マウス)及びその後3日ごと(300μg/マウス)若しくは疾患発症から始めて3日ごと(300μg/マウス)投与した又はしなかった。
【0171】
マウスは、以下のように毎日スコア化した:0)検出可能なEAEの徴候なし;0.5)末端の尾部がぐったりしている;1)全尾部がぐったりしている;2)片側の部分的な後肢の麻痺;2.5)両側の部分的な肢の麻痺;3)両側の全後肢の麻痺;3.5)全後肢の麻痺及び片側の前肢の麻痺;4)前肢及び後肢の全麻痺(スコア>4は安楽死させる);5)死。
【0172】
各時点で、各グループの平均疾患スコアを示す。統計的有意差は、独立スチューデントt検定を使用して評価した。
【0173】
免疫の1日前及びその後、実験の終了まで3日ごとに与えた抗IL−18Rα mAbを用いたIL−18−/−マウスの処置は、疾患発生を著しく低下させた(図5a)。抗IL−18Rα mAbの投与は、IL−18Rα発現細胞の欠失につながりもせず、血液、LN、又は脾臓中の末梢白血球の組成を変えもしなかった(図11を参照されたい)。
【0174】
IL−18Rαアンタゴニストは、そのリガンドが遺伝子ターゲティングによって完全に除去されたマウスにおいてでさえEAEを予防するという事実及びIL−18は、報告によれば、IL−18Rαに対するほんの低い親和性しか有していないという事実を組み合わせて、我々は、他のリガンドが、IL−18Rαによって媒介される結合、シグナル伝達、及び免疫発生の原因にちがいないと提唱する。
【0175】
興味深いことには、免疫後(p.i.10日目)にアンタゴニストmAbを用いた、IL−18−/−マウスの処置もまた、EAE進行を抑止し(図5b)、これは、免疫前に投与されたAbと同じ程度まで起こり、IL−18Rα結合は、EAEのエフェクター期の間の重要なイベントであることを示唆する。
【0176】
(実施例4)
Ag駆動性ではなくマイトジェン駆動性の活性化は、Th1極性化のためにIL−18を必要とする
EAE感受性に関する、IL−18−/−マウス及びIL−18Rα−/−マウス間の対立的な分裂を考慮すれば、我々は、エフェクター表現型に向けて、未処置T細胞を正しくプライムし、且つ極性化する両マウスの能力を決定することを望んだ。wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスを、KLHを用いて皮下で免疫し、7日後、リンパ球を、単離し、続いて、KLHを用いてin vitroで再刺激した。
【0177】
そうするために、CFA中で乳化した100μg/側腹部のキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(Sigma社)を7日前に注射によってプライムしたマウスから腋窩リンパ節及び鼠径リンパ節を単離した。2×105細胞を三通り、96ウェルプレート中に配置した。KLHリコール細胞を、50μg/ml KLH、5μg/ml ConA、又は培地を用いて48時間刺激し、0.5μCi/ml 3[H]−チミジンを、増殖応答を観察するために24時間後に追加した。チミジン取り込みは、Filtermate Harvester及びシンチレーション発光カウンターを使用して評価した。サイトカイン分析については、姉妹培養物の培養上清を、48時間後に採取し、ELISA(Pharmingen社、ラホーヤ、CA)によってIFNγ産生を及びサイトカインアレイ(Raybiotech社)によって全体的なサイトカイン/ケモカイン分泌を分析した。
【0178】
驚いたことに、我々は、IL−18−/−マウス及びIL−18Rα−/−マウスのIFNγ産生能力においていかなる有意差をも観察しなかった、そして、IL−18−/−マウス又はIL−18Rα−/−マウスに由来するリンパ球によって産生されたIFNγのレベルは、wtマウスから得られた細胞と同一であった(図4b)。さらに、異なるマウス株間のAg駆動性リンパ球の増殖能は、同一であった(図4c)。IL−18は、多クローン性に活性化された直後のT細胞の早期IFNγ応答のための決定的な共同因子である(図4a)が、Ag駆動性Th1極性化は、IL−12に単独で、より依存性であり、したがってIL−18とは無関係であるという考えを我々のデータは支持する。
【0179】
TH1発生は、IL−18Rα−/−マウスにおいて影響されないように思われたが、我々は、次に、IL−18Rα欠損抗原提示細胞(APC)が未処置T細胞をプライムする性能を評価することを望んだ。
【0180】
そうするために、我々は、成熟SMARTAペプチド(p11)パルスwt、IL−18−/−、及びIL−18Rα−/−BM(骨髄)由来樹状細胞(DC)をSMARTA−TcRトランスジェニックCD4+T細胞と同時培養し、チミジン取り込みによって増殖を測定した(図4d)。
【0181】
使用したプロトコールは以下のとおりであった。
BM由来DCの生成:BMドナーマウスを、CO2を使用して安楽死させ、大腿骨及び脛骨を摘出した。BM細胞は、PBSを用いて骨を洗い流すことにより単離し、100μm細胞濾過器を通して濾過した。細胞(10ml中2〜2.5x106)を、10%GM−CSFを追加した完全RPMI中で培養した。少なくとも6日後に、BM由来DCを、10μg/mlリポ多糖(LPS)を用いて一晩成熟させたが、未成熟BM由来DCは、GM−CSF含有培地中に維持した。少なくとも7日目に、BM由来DCを実験的に使用した。
トランスジェニック(Tg)T細胞増殖:トランスジェニックT細胞のin vitro増殖については、脾臓を、未処置TcR Tgマウスから単離し、CD4+T細胞を、BD Biomag磁気ビーズを使用して精製した。T細胞単離の純度をFACS分析によって確認した。1×105 Smarta T細胞を、300〜30,000の未成熟の又は成熟した骨髄由来の樹状細胞と共に96ウェルプレート中で培養した。同時培養前に、BM由来DCを、3時間、RPMI中で1μg/ml SMARTA p11ペプチド(GPDIYKGVYQFKSVEFD(配列番号12))(GenScript社)を用いてパルスし、その後洗浄し、2000ラドで照射した。非パルスDCは、単独で培養したT細胞と同様にコントロールとして使用した。細胞を4日間培養し、そして3[H]−チミジンを培養の最後の18時間追加した。
【0182】
未成熟DCがSMARTA T細胞を活性化するために使用された場合でさえ、T細胞プライミングにおける有意差は観察されなかった。
【0183】
たとえIL−18Rα−/−DC及びT細胞が活性化される能力に欠損がないということを上記のデータが示唆しても、我々は、活性化マーカー発現のレベルで、両細胞型の活性化ステータスを確認することに決めた。我々は、FACSによって、LPS成熟DC及びKLH再刺激T細胞上の発現マーカーを調べ、IL−18Rα−/−DC上のCD80、CD86、及びCD40のアップレギュレーションに差異がないこと、さらにIL−18Rα−/−T細胞によるCD5、CD62L、及びCD44の発現に、wt細胞及びIL−18−/−細胞と比較して差異がないことを示した(図6)。したがって、IL−18Rα破壊は、T細胞又はDCの活性化に、少なくとも、適切な刺激に必要な表面マーカーのアップレギュレーションのレベルでは、影響を及ぼさない。
【0184】
(実施例5)
IL−18Rα−/− CD4+T細胞は、EAEの間、CNSに侵入する
EAEは、疾患のピークでの、CNS中への炎症細胞の大量の流入によって特徴づけられるが、免疫細胞はまた、臨床症状の発症前にもCNSに侵入する(Hickey,W.F.Brain Pathol.1,97−105(1991),Wekerle,H.ら,J.Exp.Biol.132,43−57(1987))。たとえば、CNS中へのCD4+T細胞の動員は、EAEのエフェクター期の開始に決定的であるが、CNS中への多形核白血球の浸潤は、これらのイベントを組織化することにおける役割を有するように思われる(McColl,S.R.ら,J.Immunol.161,6421−6426(1998))。したがって、IL−18Rα−/−炎症細胞が、症状発現前の疾患の時点でのCNSに完全に不在であるかどうかを立証するために、我々は、マウスを免疫し、免疫後の5、7、及び9日目に炎症性浸潤物についてCNSを分析した。
【0185】
IL−18Rα−/−マウスにおける疾患の終点での免疫細胞の欠如とは対照的に(図2a〜e)、IL−18Rα−/− CD4+T細胞は、フローサイトメトリーによって分析されたように、免疫後の5、7、及び9日目に、wtマウス及びIL−18−/−マウスと同じ程度までCNS浸潤が可能であった(図7)。CNS中に存在する、匹敵する数の顆粒球、マクロファージ、及びB細胞もあった。しかしながら、図2に見られるように、臨床的な疾患の時点での、CNS中のIL−18Rα−/−炎症細胞の存在に有意差があり、したがって、それらが、EAEのエフェクター期中に存続することができないことを実証する。興味深いことには、これらの結果は、IL−23p19−/−マウスで得られたデータを反映し、このマウスは、MOG35−55誘発性EAEに対して抵抗性であり、このマウスにおいて、欠損は、免疫後7日目に観察されたように、CNS中への炎症細胞の浸潤を予防するものではない(Langrish,C.L.ら,J Exp.Med.201,233−240(2005))。
【0186】
(実施例6)
IL−18Rαの欠如がIL−17産生を予防する
CNS中への随伴性炎症細胞侵入を伴う、EAE抵抗性に関するIL−18Rα−/−マウス及びIL−23−/−マウス間の類似性は、我々のマウスにおける、IL−17産生へのIL−18Rαの影響を評価するよう我々を駆り立てた。IL−17産生TH細胞(THIL−17)は、自己免疫炎症の間の主な病原性集団であることが現在承認されている。サイトカイン分泌に関する、EAE感受性IL−18−/−マウス及びEAE抵抗性IL−18Rα−/−マウスの間の差異を定義するために、我々は、同系統のリコールAgに出会った際にリンパ球によって分泌された62種の異なるサイトカインの同時分析を可能にするサイトカインタンパク質アレイ(Raybiotech社)を使用した。
【0187】
wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスをKLHを用いて免疫し、7日後に、リンパ球を単離し、50μg/ml KLHを用いて再刺激した(図8を参照されたい)。
【0188】
IL−18−/−リンパ球と比較して、IL−18Rα−/−リンパ球は、IL−17の産生が非常に少なかった。この調査結果を確かめるために、我々は、RNAレベル及びタンパク質レベルの両方でこのサイトカインのレベルを分析した。KLHを用いた再刺激の際にリンパ球から得られたRNAのリアルタイムPCRは、両方のIL−17 mRNAの発現が、wt細胞及びIL−18−/−細胞と比較して、IL−18Rα−/−細胞中で著しく減少することを示した(図8a)。これらの調査結果は、同じKLH再刺激細胞の上清を使用したIL−17 ELISAによって確証を与えられた(図8b)。
【0189】
(実施例7)
IL−18Rα破壊は、アクセサリー細胞免疫区画中の細胞に影響を及ぼす
IL−18Rαの欠如は、THIL−17発生の予防を介してEAEの発生を完全に予防するが、その推定上のリガンドIL−18は無関係のように思われる。
【0190】
IL−18Rαがその主要な影響を及ぼす細胞型は知られていないままである。これは、主に、IL−18Rsが様々な細胞型及び組織によって発現されるという事実によるものである。しかしながら、CD4+T細胞上のIL−18Rαの存在が、THIL−17細胞の続く極性化に対して絶対的に決定的であると推定されそうである。EAEにおける、IL−18Rα破壊の、細胞及び組織の位置を同定するために、我々は、照射骨髄(BM)キメラを使用して、白血球区画の細胞上にIL−18Rαを選択的に発現させた。
【0191】
照射骨髄(BM)キメラマウス:
BMドナーマウスを、CO2を使用して安楽死させ、BM細胞を、リン酸塩緩衝液(PBS)を用いて、大腿骨、脛骨、とう骨、及び寛骨を洗い流すことにより単離した。次いで、BM細胞を100μm細胞濾過器に通過させ、細胞をPBSを用いて洗浄した。レシピエントマウスを、1100ラド(分割線量)で致死的に照射し、12〜25×106BM細胞をi.v.注射する。移植は、8週間の回復の間に起こる。
【0192】
照射及び再形成の後で、レシピエントマウスの第2のリンパ組織中のAPC区画は、ドナーマウスに由来するBM細胞で全体的に構成される(Becher,B.ら,J.Exp.Med.193,967−974(2001))。
【0193】
我々は、4:1の比のRAG−/−BM及びIL−18Rα−/−BMをwtレシピエント中に(RAG−/−+IL−18Rα−/−→wt)又はIL−18Rα−/−BMのみをwtレシピエント中に(IL−18Rα−/−→wt)移入することによりBMキメラを生成した。wt−BMは、コントロールとしてwtレシピエント中に移入した(wt→wt)(表2)。
【0194】
RAG−/−マウスは、リンパ球を有さず、したがって、結果として生じるキメラ(RAG−/−+IL−18Rα−/−→wt)は、IL−18Rα欠損リンパ球区画を有するが、大多数の他のすべての白血球は、非破壊IL−18Rα対立遺伝子を有する。
【0195】
予想どおり、IL−18Rα−/−→wtマウスは、MOGペプチドを用いた免疫の際にEAEに対して抵抗性であった。その代わりに、T細胞又はB細胞を有さず、したがってリンパ球上ではなくアクセサリー細胞上のみにIL−18Rαを発現させる、RAG−/−マウスからのBMの追加により、EAEに対するIL−18Rα−/−マウスの抵抗性を弱らせることができた(図9)。したがって、IL−18Rαは、アクセサリー細胞(単核食細胞及び多核食細胞、DC&NK細胞)区画中でその主要な影響を及ぼすにちがいない。さらに、IL−18がT細胞及びNK細胞にその影響を及ぼすと考えられていることを考慮すれば、この発見は、非常に予期せぬことであるが、これまでのところ我々の観察と完全に一致している。
【0196】
(実施例8)
宿主細胞上のIL−18Rαの欠如は、MOG反応性T細胞の養子移入によって誘発されたEAE発生を予防する
上記のデータは、アクセサリー細胞上のIL−18Rαの欠如が、TH細胞のプライミング及び増大に影響を及ぼさないことを示す。さらに、RAG−/−+IL−18Rα−/−→wt混合BMキメラは(図9)、IL−18Rαの欠損が、EAEの発生に不可欠なアクセサリー細胞機能に障害を生じさせることを明確に実証する。我々は、EAEの間のアクセサリー細胞のIL−18Rシグナル伝達の役割及び機能を明らかにするために養子移入実験を続いて行った。そうするために、我々は、wtレシピエントマウス及びIL−18Rα−/−レシピエントマウスの両方のグループ中にwtドナーマウスに由来する脳炎誘発性MOG反応性T細胞を養子移入した。予想どおり、wtマウスに由来する、十分にプライムされ、且つ活性化された脳炎誘発性T細胞は、wtレシピエントマウスにおいてEAEを誘発したが、それらは、IL−18Rα欠損宿主において臨床的なEAEを誘発することができなかった(図10)。この発見は、IL−18Rαの欠損が、EAEの発生に必須の、宿主の非リンパ球の白血球に、T細胞活性と無関係に障害を生じさせるということをさらに強調する。
【表1】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】IL−18Rシグナル伝達は、IL−18と無関係に、EAE誘発に必要である。マウスは、CFA中のMOG35−55を用いて能動免疫し、0日目及び2日目に百日咳毒素をi.p.注射した。(a)p35−/−×IL−18−/−二重ノックアウトマウス及びwtマウスにおけるEAE進行を示す図である。2回の実験のうちの一方の代表的実験を示す(n=5マウス/グループ)。(b)wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスにおけるEAE進行を示す図である。3回の実験のうちの1つの代表的実験を示す(n=5マウス/グループ)。
【図2】IL−18Rシグナル伝達は、IL−18と無関係に、EAE誘発に必要である。マウスは、CFA中のMOG35−55を用いて能動免疫し、0日目及び2日目に百日咳毒素をi.p.注射した。疾患に関する浸潤のスコアを示すwt(スコア2)EAEマウス、IL−18−/−(スコア2)EAEマウス、IL−18Rα−/−(スコア0)EAEマウス、及び未処置マウスからのPFA固定脊髄の(a)H&E染色、(b)LFB染色、(c)CD3染色、(d)MAC3染色、及び(e)B220染色を示す図である。
【図3】IL−18−/−LN細胞は、それらの提唱される遺伝子型に一致してIL−18を産生しない。1μg/ml LPS、100ユニット/ml IFNγ、5μg/mlコンカナバリンA(ConA)、及び2.5ng/ml IL−12の示す混合物を用いて16時間刺激した未処置wt LN細胞並びにIL−18−/−LN細胞によるIL−18分泌を評価するELISAを示す図である。
【図4】IL−18及びIL−18Rαは、マイトジェンに刺激されたT細胞活性化に必要であるが、Th1発生に必要でない。(a)5μg/mlコンカナバリンA(ConA)を用いて16時間刺激した未処置wt LN細胞、IL−18−/−LN細胞、及びIL−18Rα−/−LN細胞によるIFNγ分泌を評価するELISAを示す図である。(b、c)マウスを200μg KLHで免疫し、7日後、LNを単離して再刺激した。(b)48時間、50μg/ml KLH又は5μg/ml ConAを用いて二通り再刺激したKLH免疫マウスからの上清中のIFNγのELISAを示す図である。(c)48時間、50μg/ml KLH、5μg/ml ConA、又は培地を用いて三通り再刺激したKLH免疫マウスからのLN細胞の増殖アッセイを示す図である。3H−チミジンを、カウント毎分(CPM)で増殖を測定する24時間前に培養物に追加した。(d)BM由来DCを、wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL18R−/−マウスから生成し、LPSを用いて成熟させ、続いて1μg/ml SMARTAペプチド、p11を用いてパルスした。p11特異的CD4+T細胞を、未処置SMARTA−Tgマウスから得、増殖が、カウント毎分(CPM)でチミジン取り込みによって評価された場合に、ペプチドパルスし、且つ照射(2000ラド)したDCと共に72時間同時培養した。
【図5】代替IL−18Rα結合リガンドは、IL−18−/−マウスにおいてEAEを誘発する。(a)IL−18−/−は、MOG35−55を用いる免疫の1日前に、450μg抗IL−18Rα抗体(白色の正方形)又はコントロールIgG(黒色の菱形)を用いて処置し、その後の3日ごとに300μg抗体を用いて処置した。2回の実験のうちの一方の代表的実験を示す(n=5マウス/グループ)。(b)IL−18−/−マウス(n=6マウス/グループ)は、MOG35−55を用いて免疫し、疾患の第1の徴候の時点で、300μg抗IL−18Rα抗体(白色の正方形)又はコントロールIgG(黒色の菱形)を用いて処置した。
【図6】IL−18R−/−CD4+T細胞は、wt CD4+T細胞及びIL−18−/−CD4+T細胞に類似して活性化される。50μg/ml KLH又は培地を用いて2日間、in vitroで再刺激したKLH免疫wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18R−/−マウスに由来する脾細胞のFACSを示す図である。2日後に、脾臓細胞を、CD4−FITC及び(a)CD5−APC、(b)CD62L−bio−SA−PerCP−Cy5.5、又は(c)CD44−PEを用いて染色した。
【図7】IL−18Rα−/−CD4+T細胞は、疾患発症前に、wt CD4+T細胞及びIL−18−/−CD4+T細胞と同じ程度までCNSを浸潤する。wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスを、MOG35−55を用いて能動免疫し、免疫7日後に、マウスをPBSを用いて灌流し、CNSを単離した。勾配により小膠細胞を単離し、この部分における炎症細胞の浸潤をフローサイトメトリーによって評価した。細胞は、CD45−PerCP及びCD4−APCを用いて染色した。IL−18Rα−/−CD4+T細胞は、CNSに侵入し、免疫7日後に、wt CD4+T細胞及びIL−18−/−CD4+T細胞と同じように侵入する。
【図8】IL−18Rα破壊は、IL−17の産生及びTHIL−17細胞の発生に影響を及ぼす。wtマウス、IL−18−/−マウス、及びIL−18Rα−/−マウスを、KLHを用いて免疫し、7日後に、脾細胞を単離し、50μg/ml KLHを用いて再刺激した。(a)KLHを用いたin vitro再刺激の2日後の、wtリンパ球、IL−18−/−リンパ球、及びIL−18Rα−/−リンパ球によるIL−17 mRNA発現のリアルタイムPCR比較を示す図である。結果は、β−アクチン発現を基準に合わせ、二通り分析した。(b)二通りin vitroでKLHを用いて2日間再刺激したリンパ球によるIL−17タンパク質発現のELISAを示す図である。データは、1グループ当たり少なくとも2匹のマウスを組み合わせたものである。
【図9】IL−18Rαの不在はT細胞又はB細胞に障害を生じさせない。BMキメラマウスは、致死的に照射したwtマウス中に12〜25x106BM細胞を移入することにより生成した。6週間後に、再形成したIL−18Rα−/−→wt(灰色の三角形)、IL−18Rα−/−+RAG−/−→wt(白色の正方形)、及びwt→wt(黒色の菱形)骨髄キメラマウスは、MOG35−55ペプチドを用いて能動免疫し、臨床スコアを評価した。RAG−/−骨髄に由来する非T細胞及び非B細胞上のIL−18Rαの存在は、EAEに対する、IL−18Rα−/−→wtマウスの感受性をよみがえらせた。
【図10】IL−18Rα−/−マウスは、EAEの受身移入に対して抵抗性である。MOG反応性リンパ球は、wtマウスを能動免疫することにより生成し、11日後に脾臓及びLN細胞を単離し、それらを、4日間、in vitroで、20μg/ml MOG35−55及び2.5ng/ml IL−12を用いて再刺激した。EAEは、IL−18Rα−/−(灰色の三角形)マウス及びwt(黒色の菱形)マウス中への20〜30×106MOG反応性リンパ球の養子移入によってレシピエントマウスにおいて誘発された。2回の実験のうちの一方の代表的実験を示す(n=5マウス/グループ)。
【図11】抗IL−18RαAb処置は、周辺の免疫細胞の組成を変えない。IL−18−/−マウスは、MOG35−55を用いる免疫の1日前に、300μg抗IL−18Rα抗体又はコントロールIgGを用いて処置し、7日後に、脾臓を単離し、均質化して、免疫細胞組成をフローサイトメトリーによって評価した。細胞は、CD8−FITC、CD4−APC、NK1.1−bio−SA−PerCP、及びB220−PE又はCD11b−FITC、CD11c−APC、及びGR1−bio−SA−PerCPについて染色した。抗IL−18RαAb処置IL−18−/−マウスにおいて免疫細胞組成に差異はない。2匹のマウス/グループの一方の代表的なFACSを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法であって、前記患者に、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することを含む方法。
【請求項2】
前記脱髄疾患は多発性硬化症である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者はヒトである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
自己免疫疾患又は脱髄疾患の処置のための医薬の製造における、IL−18Rαのアンタゴニストの使用。
【請求項5】
前記脱髄疾患は多発性硬化症である請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記患者は、再発寛解型(RR)多発性硬化症、二次進行型(SP)多発性硬化症、一次進行型(PP)多発性硬化症、又は進行再発型(PR)多発性硬化症に冒されている請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項7】
前記アンタゴニストは、IL−18Rαの産生を低下させる又は予防する、又は前記アンタゴニストは、部分的に、実質的に、又は完全にIL−18Rαの活性をブロックする請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項8】
前記アンタゴニストは、低分子、抗体、siRNA、アンチセンス核酸、及びリボザイムからなる群から選択される請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項9】
前記アンタゴニストは、IL18−Rα、特にIL18−Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体である請求項8に記載の方法又は使用。
【請求項10】
前記抗体は、配列番号2のポリペプチドに選択的に結合する請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項11】
前記抗体は、配列番号2の残基1〜329又は配列番号2の残基19〜329又は配列番号2の残基330〜350又は配列番号2の残基351〜541に選択的に結合する請求項10に記載の方法又は使用。
【請求項12】
前記抗体は、配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329に選択的に結合する請求項10に記載の方法又は使用。
【請求項13】
前記抗体は、配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329に選択的に結合する請求項10に記載の方法又は使用。
【請求項14】
前記抗体は、ヒトIL−18Rαの細胞外ドメインに位置するエピトープに選択的に結合する請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項15】
前記エピトープは、配列番号2のアミノ酸19〜329に位置する請求項14に記載の方法又は使用。
【請求項16】
前記エピトープは、配列番号2のアミノ酸残基19〜219に又は配列番号2のアミノ酸残基122〜329に位置する請求項14に記載の方法又は使用。
【請求項17】
前記エピトープは、配列番号2のアミノ酸19〜132又は配列番号2の122〜219又は配列番号2の213〜329に位置する請求項14に記載の方法又は使用。
【請求項18】
前記抗体は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1、2、3、4、5、又は6個のCDRを含む抗原結合ドメインを有する請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項19】
前記抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号4のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項20】
前記抗体は、配列番号3のアミノ酸配列にあるVHドメイン及び配列番号4のアミノ酸配列にあるVLドメインを含む請求項19に記載の方法又は使用。
【請求項21】
前記抗体は、Ig定常重鎖領域、ヒトIgカッパ定常ドメイン及びヒトIgラムダ定常ドメインからなる群から選択されるIg定常軽鎖領域、配列番号3のアミノ酸配列を有するIg可変重鎖領域、並びに配列番号4のアミノ酸配列を有するIg可変軽鎖領域としてヒトIgG1を含む請求項20に記載の方法又は使用。
【請求項22】
前記抗体は、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70614、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70625、モノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンB−E43、及びモノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンH44からなる群から選択される請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項23】
前記抗体は、Ab1、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70614、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70625、モノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンB−E43、及び/又はモノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンH44と、ヒトIL−18Rαへの結合について競合する抗体である請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項24】
前記抗体は、
− 配列番号2の残基19〜329又は配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329又は配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329を含む免疫剤を用いて宿主動物を免疫するステップ、
− 前記宿主動物によって産生されたリンパ球を不死化細胞系と融合させてハイブリドーマ細胞を形成するステップ、
− 免疫ペプチドに対する抗体を産生するハイブリドーマ細胞のクローンを選択するステップ、
− EAE動物モデル中のハイブリドーマ細胞の異なるクローンによって産生された抗体の活性を試験し、前記動物モデルにおけるEAEの進行を阻害する抗体を選択するステップ、
− 分泌されたモノクローナル抗体を産生するステップ
を含むプロセスによって得ることができる請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項25】
前記免疫剤は、配列番号2の残基19〜329又は配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329又は配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329又はその融合タンパク質からなる請求項24に記載の方法又は使用。
【請求項26】
前記抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はその断片である請求項9から25までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項27】
前記アンタゴニストは、配列番号1の配列の18〜25個の連続したヌクレオチドに対して100%相補的なsiRNAであり、ヒトIL−18Rαの発現又は生物活性を低下させる又は阻害することができる請求項8に記載の方法又は使用。
【請求項28】
前記アンタゴニストは、長さが15〜35個のヌクレオチドの範囲のアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、配列番号1に記載される核酸配列に対して相補的である請求項8に記載の方法又は使用。
【請求項29】
前記アンタゴニストは、それぞれが配列番号1の長さが少なくとも5個の隣接したヌクレオチドである1又は2個の領域に対して相補的なハイブリダイズ領域を含有するリボザイムである請求項8に記載の方法又は使用。
【請求項30】
前記アンタゴニストは、抗原提示細胞中のIL18Rαの活性を阻害する請求項1から29までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項31】
前記抗原提示細胞は、単核食細胞、多核食細胞、樹状細胞、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される請求項30に記載の方法又は使用。
【請求項32】
IL−18Rαの阻害は、IL−17産生ヘルパーT細胞の減少をもたらす請求項1から31までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項33】
前記IL−18Rαのアンタゴニストは、MSを処置する又は予防するための第2の治療薬と共に投与される請求項1から32までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項34】
前記IL−18Rαのアンタゴニストは、コルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンと共に投与される請求項33に記載の方法又は使用。
【請求項35】
前記IL−18Rαのアンタゴニストは、インターフェロン−ベータと、好ましくはインターフェロンベータ−1aと、より好ましくはRebif(登録商標)(Serono社)と共に投与される請求項34に記載の方法又は使用。
【請求項36】
哺乳動物患者、好ましくはヒト患者の多発性硬化症の治療における同時の、別個の、又は順次の使用のための、IL−18Rαのアンタゴニスト及び併用調製物としてコルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンを含む製品。
【請求項37】
前記インターフェロンは、インターフェロン−ベータ、好ましくはインターフェロンベータ−1a、より好ましくはRebif(登録商標)(Serono社)である請求項36に記載の製品。
【請求項38】
医薬としての使用のための、IL18−Rα、特に、IL18−Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体。
【請求項1】
患者における自己免疫疾患又は脱髄疾患の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法であって、前記患者に、治療的有効量のIL−18Rαのアンタゴニストを投与することを含む方法。
【請求項2】
前記脱髄疾患は多発性硬化症である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者はヒトである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
自己免疫疾患又は脱髄疾患の処置のための医薬の製造における、IL−18Rαのアンタゴニストの使用。
【請求項5】
前記脱髄疾患は多発性硬化症である請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記患者は、再発寛解型(RR)多発性硬化症、二次進行型(SP)多発性硬化症、一次進行型(PP)多発性硬化症、又は進行再発型(PR)多発性硬化症に冒されている請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項7】
前記アンタゴニストは、IL−18Rαの産生を低下させる又は予防する、又は前記アンタゴニストは、部分的に、実質的に、又は完全にIL−18Rαの活性をブロックする請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項8】
前記アンタゴニストは、低分子、抗体、siRNA、アンチセンス核酸、及びリボザイムからなる群から選択される請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項9】
前記アンタゴニストは、IL18−Rα、特にIL18−Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体である請求項8に記載の方法又は使用。
【請求項10】
前記抗体は、配列番号2のポリペプチドに選択的に結合する請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項11】
前記抗体は、配列番号2の残基1〜329又は配列番号2の残基19〜329又は配列番号2の残基330〜350又は配列番号2の残基351〜541に選択的に結合する請求項10に記載の方法又は使用。
【請求項12】
前記抗体は、配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329に選択的に結合する請求項10に記載の方法又は使用。
【請求項13】
前記抗体は、配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329に選択的に結合する請求項10に記載の方法又は使用。
【請求項14】
前記抗体は、ヒトIL−18Rαの細胞外ドメインに位置するエピトープに選択的に結合する請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項15】
前記エピトープは、配列番号2のアミノ酸19〜329に位置する請求項14に記載の方法又は使用。
【請求項16】
前記エピトープは、配列番号2のアミノ酸残基19〜219に又は配列番号2のアミノ酸残基122〜329に位置する請求項14に記載の方法又は使用。
【請求項17】
前記エピトープは、配列番号2のアミノ酸19〜132又は配列番号2の122〜219又は配列番号2の213〜329に位置する請求項14に記載の方法又は使用。
【請求項18】
前記抗体は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1、2、3、4、5、又は6個のCDRを含む抗原結合ドメインを有する請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項19】
前記抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号4のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項20】
前記抗体は、配列番号3のアミノ酸配列にあるVHドメイン及び配列番号4のアミノ酸配列にあるVLドメインを含む請求項19に記載の方法又は使用。
【請求項21】
前記抗体は、Ig定常重鎖領域、ヒトIgカッパ定常ドメイン及びヒトIgラムダ定常ドメインからなる群から選択されるIg定常軽鎖領域、配列番号3のアミノ酸配列を有するIg可変重鎖領域、並びに配列番号4のアミノ酸配列を有するIg可変軽鎖領域としてヒトIgG1を含む請求項20に記載の方法又は使用。
【請求項22】
前記抗体は、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70614、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70625、モノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンB−E43、及びモノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンH44からなる群から選択される請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項23】
前記抗体は、Ab1、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70614、モノクローナル抗ヒトIL−18Rαクローン70625、モノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンB−E43、及び/又はモノクローナル抗ヒトIL−18RαクローンH44と、ヒトIL−18Rαへの結合について競合する抗体である請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項24】
前記抗体は、
− 配列番号2の残基19〜329又は配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329又は配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329を含む免疫剤を用いて宿主動物を免疫するステップ、
− 前記宿主動物によって産生されたリンパ球を不死化細胞系と融合させてハイブリドーマ細胞を形成するステップ、
− 免疫ペプチドに対する抗体を産生するハイブリドーマ細胞のクローンを選択するステップ、
− EAE動物モデル中のハイブリドーマ細胞の異なるクローンによって産生された抗体の活性を試験し、前記動物モデルにおけるEAEの進行を阻害する抗体を選択するステップ、
− 分泌されたモノクローナル抗体を産生するステップ
を含むプロセスによって得ることができる請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項25】
前記免疫剤は、配列番号2の残基19〜329又は配列番号2の残基19〜219又は配列番号2の残基122〜329又は配列番号2の残基19〜132又は配列番号2の残基122〜219又は配列番号2の残基213〜329又はその融合タンパク質からなる請求項24に記載の方法又は使用。
【請求項26】
前記抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はその断片である請求項9から25までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項27】
前記アンタゴニストは、配列番号1の配列の18〜25個の連続したヌクレオチドに対して100%相補的なsiRNAであり、ヒトIL−18Rαの発現又は生物活性を低下させる又は阻害することができる請求項8に記載の方法又は使用。
【請求項28】
前記アンタゴニストは、長さが15〜35個のヌクレオチドの範囲のアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、配列番号1に記載される核酸配列に対して相補的である請求項8に記載の方法又は使用。
【請求項29】
前記アンタゴニストは、それぞれが配列番号1の長さが少なくとも5個の隣接したヌクレオチドである1又は2個の領域に対して相補的なハイブリダイズ領域を含有するリボザイムである請求項8に記載の方法又は使用。
【請求項30】
前記アンタゴニストは、抗原提示細胞中のIL18Rαの活性を阻害する請求項1から29までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項31】
前記抗原提示細胞は、単核食細胞、多核食細胞、樹状細胞、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される請求項30に記載の方法又は使用。
【請求項32】
IL−18Rαの阻害は、IL−17産生ヘルパーT細胞の減少をもたらす請求項1から31までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項33】
前記IL−18Rαのアンタゴニストは、MSを処置する又は予防するための第2の治療薬と共に投与される請求項1から32までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項34】
前記IL−18Rαのアンタゴニストは、コルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンと共に投与される請求項33に記載の方法又は使用。
【請求項35】
前記IL−18Rαのアンタゴニストは、インターフェロン−ベータと、好ましくはインターフェロンベータ−1aと、より好ましくはRebif(登録商標)(Serono社)と共に投与される請求項34に記載の方法又は使用。
【請求項36】
哺乳動物患者、好ましくはヒト患者の多発性硬化症の治療における同時の、別個の、又は順次の使用のための、IL−18Rαのアンタゴニスト及び併用調製物としてコルチコステロイド、免疫抑制剤、神経保護薬、免疫調節剤、又はインターフェロンを含む製品。
【請求項37】
前記インターフェロンは、インターフェロン−ベータ、好ましくはインターフェロンベータ−1a、より好ましくはRebif(登録商標)(Serono社)である請求項36に記載の製品。
【請求項38】
医薬としての使用のための、IL18−Rα、特に、IL18−Rαの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−531295(P2009−531295A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555791(P2008−555791)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051692
【国際公開番号】WO2007/096396
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508249387)ユニバーシティ オブ チューリッヒ (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051692
【国際公開番号】WO2007/096396
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508249387)ユニバーシティ オブ チューリッヒ (2)
【Fターム(参考)】
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