説明

自己免疫障害の食事管理のための方法および組成物

【課題】自己免疫障害の食事管理のための方法および組成物の提供。
【解決手段】乳酸菌(特にバチルス属の乳酸産生菌)を含む組成物を経口投与し、サイトカインの下方制御によって、および胃腸管中の病原性または有害性の微生物を抑制することによって、消化器関連の免疫障害を治療する。乳酸菌は例えばバチルス・コアグランスハンマー株の芽胞および/または栄養細胞の形態で提供される。該組成物は微生物に由来しない抗真菌剤をさらに含有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、自己免疫障害の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
胃腸管内の微生物叢は、胃腸管機能および全身の生理学的健康の維持において多くの極めて重要な役割を果たす。胃腸機能の混乱は、自己免疫障害を含む免疫系障害の発症および進行に関連付けられている。自己免疫障害は、正常な体組織に対して免疫系が免疫応答を始める場合に発症する。普通は、免疫系は、「非自己」組織から「自己」を区別することができる。自己免疫障害は、正常な制御プロセスが乱されている場合に発生する。それらはまた、正常な体組織が改変され、その結果、もはやそれが「自己」として認識されない場合にも発生し得る。病原性の細菌、真菌、およびウイルスなどの微生物、ならびに他の原因(薬物、アルコール、喫煙、ストレス)が、特に、自己免疫障害に対する遺伝的素因を有する人々において、これらの変化のうちのいくつかを引き起こす。自己免疫障害は、1つまたは複数のタイプの体組織の破壊、ある器官の異常な成長、または器官機能の変化をもたらす。この障害は、1つの器官もしくは組織型のみを冒すことがあり、または、複数の器官および組織を冒すこともある。自己免疫障害によって一般に冒される器官および組織には、赤血球などの血液成分、血管、結合組織、甲状腺または膵臓などの内分泌腺、筋肉、関節、および皮膚が含まれる。
【0003】
乾癬は、20代、30代、および40代の人々において最も起こりやすい、慢性かつ遺伝学的に影響を受ける自己免疫障害である。乾癬は、3歳未満では稀である。米国では、100人当たり2名または3名が乾癬に罹患している。現在の乾癬の局所治療は、皮膚軟化剤、角質溶解剤、コールタール、アントラリン、コルチコステロイド、およびカルポトリエン(calpotriene)を使用する。これらのアプローチは、有効性が変わり易く、頻繁な再発を予防することができず、かつ、しばしば有害な副作用を伴う。現在の全身的治療は、通常、局所治療に反応しなかった、物理的に、社会的に、または経済的に対処不能な乾癬の患者のために確保されており、しばしば、光線療法および/または抗真菌薬が含まれ、このうち後者は、毒性および有害な副作用があるために、短期間の間しか使用することができない。したがって、現在の局所的および全身的治療に付随する不都合を回避する効果的な全身的乾癬治療が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
本発明は、乾癬に罹患している、または発症する危険性のある患者を特定すること、およびバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)細菌を含む組成物をその患者に投与することによって、乾癬の症状を軽減する方法を提供する。この組成物は、乾癬などの皮膚科学的障害の一つ以上の症状を有するヒト対象によって摂取される。細菌の種には、バチルス・コアグランス、例えば、バチルス・コアグランス・ハンマー(Bacillus coagulans hammer)、好ましくはバチルス・コアグランス・ハンマー株アクセッション番号ATCC31284、またはバチルス・コアグランス・ハンマー株アクセッション番号ATCC31284に由来する1種もしくは複数種の株(例えば、ATCC番号:GBI-20、ATCC指定番号PTA-6085;GBI-30、ATCC指定番号PTA-6086;およびGBI-40、ATCC指定番号PTA-6087;Farmerの米国特許第6,849,256号を参照されたい)が含まれる。乾癬の症状には、鱗屑、水疱形成、皮膚病変、そう痒、および疼痛(例えば、関節痛)が含まれる。本発明の態様において、この組成物はまた、微生物に由来しない抗真菌剤(例えば、クロトリマゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、テルビナフィン、テルコナゾール、もしくはチオコナゾールなどアゾールもしくはピロールクラスの抗真菌化合物のメンバー)、免疫抑制剤(例えば、メトトレキサート、タクロリムス、シクロスポリン、ヒドロキシ尿素、ミコフェノール酸モフェチル、スルファサラジン、もしくは6-チオグアニン)、レチノイド、または抗生剤(例えば、ゲンタマイシン、バンコマイシン、オキサシリン、テトラサイクリン、ニトロフルラントイン(nitroflurantoin)、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、トリメトプリムスルファメトキサゾール、セファクロル、セファドロキシル、セフィキシム、セフプロジル、セフトリアキソン、セフロキシム、セファレキシン、ロラカルベフ、アンピシリン、アモキシリン・クラブラン酸、バカンピシリン、クロキシシリン、ペニシリンVK、シプロフロキサシン、グレパフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン、アジスロマイシン、もしくはリスロマイシン)も含む。患者への投与には、胃腸管経由の組成物の送達が含まれる。胃腸管は、口(口腔)、咽頭、食道および噴門、胃、ならびに腸を含む、哺乳動物中の器官系である。細菌は、患者のTNF-αレベルを低下させる用量で投与される。
【0005】
経口投与後、胃腸管におけるバチルス・コアグランス細菌によるコロニー形成が、24〜48時間の間に起こる。持続的なコロニー形成は、連日投与などバチルス・コアグランスの反復投与によって増進される。例えば、バチルス・コアグランス細菌を含む組成物は、毎日約1回、約2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、30、45、60、75、90、100、125日またはそれ以上の期間、投与(例えば、経口的に服用)される。本発明の態様において、バチルス・コアグランス細菌は、約1×108〜約1×1010個の生菌濃度、例えば、約1×109〜約2×109個の生菌濃度で提供される。バチルス・コアグランス細菌は、芽胞および/または栄養細胞の形態で提供される。
【0006】
本発明はまた、バチルス・コアグランス細菌を含む第1の用量の組成物を第1の時点に投与すること、および、その後の第2の時点に第2の用量の組成物を投与することによって乾癬を治療するための方法も提供する。これらの細菌は、例えば、バチルス・コアグランス・ハンマー、またはバチルス・コアグランス・ハンマー株アクセッション番号ATCC31284に由来する細菌である。治療は、乾癬の症状(例えば、鱗屑、水疱形成、皮膚病変、そう痒、および関節痛)を治療することを含む。バチルス・コアグランス細菌は、約1×108〜約1×1010個の生菌濃度、例えば、約1×109〜約2×109個の生菌濃度で提供される。バチルス・コアグランス細菌は、芽胞または栄養細胞の形態で提供される。組成物は、アゾール、すなわち環中に1つまたは複数の原子を含む5員環有機化合物など微生物に由来しない抗真菌剤を含む。例示的なアゾールには、クロトリマゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、テルビナフィン、テルコナゾール、またはチオコナゾールが含まれる。本発明は、メトトレキサート、シクロスポリン、ヒドロキシ尿素、ミコフェノール酸モフェチル、スルファサラジン、もしくは6-チオグアニンなどの免疫抑制剤、または、ゲンタマイシン、バンコマイシン、オキサシリン、テトラサイクリン、ニトロフルラントイン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、トリメトプリムスルファメトキサゾール、セファクロル、セファドロキシル、セフィキシム、セフプロジル、セフトリアキソン、セフロキシム、セファレキシン、ロラカルベフ、アンピシリン、アモキシリン・クラブラン酸、バカンピシリン、クロキシシリン、ペニシリンVK、シプロフロキサシン、グレパフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン、アジスロマイシン、およびリスロマイシンなどの抗生剤の投与を任意で含む。これらの細菌、抗真菌化合物、および免疫抑制化合物は、同時にまたは逐次的に投与される。
【0007】
本発明はまた、自己免疫障害に罹患している、または発症する危険性のある患者を特定すること、およびバチルス・コアグランス細菌を含む組成物をその患者に投与することによって、自己免疫障害の症状を軽減する方法も提供する。自己免疫障害は、乾癬、クローン病、大腸炎、狼瘡、関節炎、または病原体(細菌、真菌、もしくはウイルスなど)に関連する、免疫細胞(例えば、T細胞)の活性化の病理学的増大を特徴とする他の任意の障害である。
【0008】
本発明はさらに、バチルス・コアグランス細菌を含む組成物を哺乳動物に投与することによって、自己免疫障害に冒されている哺乳動物における自己免疫障害の症状を低減するための方法を提供する。自己免疫障害の症状(例えば、鱗屑、水疱形成、皮膚病変、そう痒、および/または疼痛)は、投与前の症状の重症度と比べて、投与後に低減される。
【0009】
本発明はまた、TNF-α、または一つ以上の他のサイトカインが高レベルであると診断された哺乳動物において血清TNF-αまたは他のサイトカインのレベルを低下させるための方法も提供する。正常なヒトのTNFα血清レベルは、検出不可能なレベルから血清1ml当たり約40pgであり、平均値は3〜10pg/mlの範囲である。TNF-αは、好ましくは、例えばELISAまたは他の定量的検出手段によって検出される。(ヒトTNF-αELISAキット、Abazyme, Needham, MAまたは Millenia Diagnostic Product, Los Angeles, CA)。
【0010】
血清サイトカインレベル(TNF-αレベルなど)は、投与前の哺乳動物における血清サイトカイン(TNF-αなど)レベルと比べて、バチルス・コアグランスの投与後に低下する。投与前の高いヒト血清レベル(例えば、約40、50、60、75、85、100、125、150、200、250、300pg/mlまたはそれ以上を超える)は、自己免疫障害に関連付けられており、かつ、バチルス・コアグランスを1クール投与した後に低下する。TNF-αレベルの低下は、処置された対象に臨床的利益、例えば、自己免疫障害の症状の軽減を与える。低下は、任意の測定可能な低下であって、例えば、約1%、5%、10%、15%、25%、50%、60%、75%、85%、90%、95%、99%、99.9%、99.99%を超えた低下、またはこれら以上の低下である。バチルス・コアグランス細菌は、5×108、8×108、1×109、または5×109個の生菌など、約1×108〜約1×1010個の生菌濃度で提供される。
【0011】
本発明はさらに、バチルス・コアグランス細菌および免疫抑制剤を含む組成物を提供する。この組成物は、カプセル剤、錠剤、散剤、または液体の形態である。バチルス・コアグランス細菌は、バチルス・コアグランス・ハンマーであってよく、または、バチルス・コアグランス・ハンマー、例えば、バチルス・コアグランス・ハンマー株アクセッション番号ATCC31284に由来してよい。
【0012】
本発明はまた、バチルス・コアグランス細菌を含む、乾癬または他の障害を管理するための医療用食品であって、1日最大約2回摂取される医療用食品の約1グラム〜約2グラムの1回摂食量を基準として、1日あたり少なくとも約1×106個のバチルス・コアグランス生菌を哺乳動物の胃腸管中に提供するように調製される医療用食品、およびそれを使用するための説明書を含む系も提供する。本発明の態様において、この医療用食品は、微生物に由来しない抗真菌剤、免疫抑制剤、または、微生物に由来しない抗真菌剤および免疫抑制剤を任意で含む。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
哺乳動物の胃腸管は、何百もの様々な微生物種から構成される多様かつ高度に進化した微生物群集に対する複雑な生態系宿主である。この複雑な微生物群集および哺乳動物の間で生じる相互作用の混乱は、微生物叢の不足または欠陥に関連付けられている不健康状態などの疾患(例えば、胃腸管感染症)、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎など)、過敏性腸症候群、抗生物質によって誘発された下痢、便秘、食物アレルギー、心血管の疾患、乾癬、およびある種の癌を招き得る。「機能性食品」、例えば、バチルス・コアグランスなどの有益な細菌を含むものは、自己免疫疾患および正常な対照レベルと比較した際のTNF-αの増加を特徴とする他の疾患を予防するための治療法として有用である。
【0015】
乳酸菌(LAB)は、一般的な消化力(digestive value)を提供するだけでなく、多数の健康上の利益を提示する。それらは、協同的に、胃腸管および免疫系の間の生理的平衡を維持する。この平衡が乱された場合、しばしば疾患および炎症が起こる。有害な細菌は、バチルス・コアグランスなどの有益な微生物叢の粘膜接着または一時的なコロニー形成によって競合的に抑制される。十分な粘液産生および適切な細菌のコロニー形成を伴う健康な胃腸管は、病原性または日和見性の微生物の増殖を防止または抑制し、疾患過程を変更し、かつ、広範囲に及ぶ炎症性障害を予防する。
【0016】
バチルス・コアグランスは、胃腸管の様々な粘膜表面のコロニー形成において極めて有効であることが示されている、L+乳酸産生細菌である。治療的用途で使用される厳密に栄養型の種の乳酸菌(例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ビフィズス菌(Bifidobacterium)、および他の細菌)とは異なって、バチルス・コアグランスは、胃および胆汁酸の極めて低いpHに曝露された後でも無傷で生き残る。これは、この生物の栄養型の好極限性細菌としての性質(熱耐性、好酸性、耐圧性、および耐塩性)、ならびにそれが内生胞子を形成することが寄与して達成される。さらに、バチルス・コアグランスは、競合性が高く、これは、小腸および大腸における生理的変化を促進するのに必要とされる高密度のコロニー形成のために重要な特徴である。さらに、バチルス・コアグランスは、最小発育阻止濃度(MIC)希釈(インビトロ)研究において、増殖するために中性より高いpHを必要とする多数の病原性腸内細菌(エシェリキア(Escherichia)、プロテウス(Proteus)、クロストリジウム(Clostridium)、カンピロバクター(Campylobacter)、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、腸球菌(Enterococcus)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)など)を抑制することが示されている。バチルス・コアグランスに攻撃された様々な病原性糸状菌に対する高い抑制効果を示唆するMIC研究も、実施された。
【0017】
本発明の方法および組成物は、自己免疫疾患の治療において有用である。自己免疫疾患は、身体のほぼすべての器官または組織を冒すことができ、したがって、罹患組織による分類が適用できる。自己免疫疾患または自己免疫障害は、1種または複数種の組織に影響を与え得ることが認識されている。血液または血管系を冒す自己免疫障害には、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、結節性多発動脈炎、全身性エリテマトーデス、およびウェゲナー肉芽腫症が含まれる。胃腸系の自己免疫障害には、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、クローン病、原発性胆汁性肝硬変、強皮症、潰瘍性大腸炎、および過敏性腸症候群(IBS)が含まれる。眼系を冒す自己免疫障害には、シェーグレン症候群、1型糖尿病、およびブドウ膜炎が含まれる。内分泌系を冒す自己免疫障害には、グレーブス病および甲状腺炎が含まれる。心血管系を冒す自己免疫障害には、心筋炎、リウマチ熱、強皮症、および全身性エリテマトーデスが含まれる。結合組織を冒す自己免疫障害には、強直性脊椎炎、関節リウマチおよび反応性関節炎、ならびに全身性エリテマトーデスが含まれる。腎臓を冒す自己免疫障害は、糸球体腎炎である。肺を冒す自己免疫障害は、サルコイドーシスである。筋骨格系を冒す自己免疫障害には、皮膚筋炎、重症筋無力症、多発性筋炎、および線維筋痛症が含まれる。神経系を冒す自己免疫障害には、ギラン・バレー症候群、および多発性硬化症が含まれる。皮膚を冒す自己免疫障害には、円形脱毛症、天疱瘡(類天疱瘡とも呼ばれる)、乾癬、および白斑が含まれる。
【0018】
自己免疫疾患の症状には、疲労、めまい、倦怠感、発熱、ならびに血小板数および/または好酸球数の減少が含まれる。さらに、いくつかの自己免疫疾患は、あるタイプの組織の破壊(例えば、糖尿病における膵臓の島細胞の破壊)または器官サイズの増大(例えば、グレーブス病における甲状腺肥大)を特徴とする。このような疾患または病態の治療または予防、およびこれらの病態に関連した症状の軽減のために、バチルス・コアグランス細菌を含む組成物が、本明細書に記述する方法に従って投与される。
【0019】
TNF-αは、天然に存在するサイトカインであり、活性化された免疫細胞によって産生される。しかしながら、免疫エフェクター細胞の過剰な活性化およびTNF-αの過剰産生は、重度の炎症および組織損傷を引き起こし得る。TNF-αは、いくつかの疾患状態、例えば、乾癬、クローン病、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、および強直性脊椎炎において重要な役割を果たす。自己免疫疾患または炎症性疾患の状態に罹患している、または発症する危険性のある患者のTNF-αレベルを低下させると、疾患の症状が軽減され、かつ、疾患の進行が防がれまたは減速される。
【0020】
バチルス・コアグランスの投与によってTNF-αレベルを低下させると、臨床的利益(例えば、炎症の軽減)が与えられ、他の非微生物系TNF-α阻害剤(例えば、インフリキシマブ、エタナーセプト、およびアダリムマブ)には付随する副作用はほとんどまたは全く無い。バチルス・コアグランスの投与は、以下の例示的な自己免疫障害に罹患している、または発症する危険性があると特定された対象に臨床的利益を与える。
【0021】
乾癬
乾癬は、一部には、ケラチノサイトの異常な増殖および分化、T細胞および内皮細胞の活性化、局所的な血管変化、および好中球蓄積、ならびに他の免疫学的プロセス、例えば、サイトカインのレベル変化を特徴とする皮膚疾患である。シクロスポリンおよびフルコナゾール治療の結果は、細菌および糸状菌の作用物質が乾癬において重要な役割を果たしていることも実証している。
【0022】
乾癬は、一般に、疾患の特徴に影響を及ぼす外的誘発要因と組み合わせて、遺伝的欠陥に起因する。細胞性免疫系は、乾癬の増悪において主要な役割を果たしている。β-溶連菌(hemolytic streptococci)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)などの微生物は、スーパー抗原としての機能を果たす因子を放出する外的誘発要因であり、かつ、T細胞を刺激して、疾患の度重なる発病の「病原性サークル」をしばしば結果として生じる乾癬を引き起こす。微生物の供給源は、皮膚それ自体の中に、または咽頭中の連鎖球菌もしくは腸中のカンジダ・アルビカンスなど遠位の位置にあってよい。これらの位置から、微生物は、宿主の血管系を通って移動して皮膚に到達し、かつ、乾癬のプロセスを開始するスーパー抗原の放出を引き起こす。
【0023】
局面性乾癬(尋常性乾癬)、滴状乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、爪乾癬、頭皮乾癬、間擦疹型乾癬(inverse psoriasis)、および乾癬性関節炎を含む、多くの様々な形態の乾癬がある。乾癬の症状は、乾癬の形態の間で、および罹患した個体の間で異なる。本明細書において使用される場合、乾癬の「症状」には、任意の形態の乾癬または乾癬に関連した病態の観察可能な、測定可能な、または検出可能な任意の徴候または兆しが含まれる。乾癬に罹患している患者は、乾癬の一つ以上の症状を有する。乾癬の症状には、鱗屑、水疱形成、皮膚病変、そう痒、および関節痛が含まれる。乾癬のその他の症状は、当業者には公知である。乾癬は、乾癬の一つ以上の症状の観察または検出によって診断される。一般に、乾癬に罹患している、または発症する危険性のある患者は、乾癬の一つ以上の症状、または乾癬もしくは乾癬の症状を有する家族を有する。
【0024】
乾癬の治療の指標には、罹患した皮膚のサイズ、重症度、継続期間、または再発の有無によって測定されるように、乾癬の症状における検出可能な任意の変化(例えば、低減または消失)が含まれる。治療の有効性を判定する好ましい方法は、治療前の乾癬の総病変面積と比較した、バチルス・コアグランス治療後の乾癬の総病変面積の変化の測定である。同様に、乾癬治療を受けている患者の血清TNF-α量の測定可能な減少も、治療の有効性を示唆する。さらに、治療の有効性は、糞便検査の大便中またはその他の生体物質中のこれらの微生物の存在を測定することによってなど、治療を受けている患者の胃腸管中に存在する病原性微生物の減少によって判定することができる。
【0025】
炎症性腸疾患
ヒト炎症性腸疾患(IBD)は、典型的な臨床症状に基づき潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)にさらに分けることができる、腸の炎症性疾患のグループである。どちらの症状も、極めて不快であり、かつ、生活の質のすべての面に影響を与える。これらには、下痢、腹痛、直腸出血、発熱、悪心、体重減少、嗜眠、および食欲の低下が含まれる。未治療のまま放置された場合、栄養失調症、脱水症、および貧血が結果として起こり、これらは、極端な症例では死を招く。UCおよびCDは、病因学および疫学においてはかなりの程度の類似性を示すが、病理学においては全く異なる。UCは、大腸に限局される。しかしながら、CDは、口から直腸までの腸管全体にわたって観察されている。UCにおいては、炎症は粘膜に限られているが、CDにおいては、炎症は貫壁性、すなわち、腸壁を浸透するようになり得る。これは、しばしば肛門周囲瘻の発症を招く。T細胞のTヘルパー(Th)サブセット、いわゆるTh1およびTh2における不均衡は、免疫学的根拠に基づいてUCからCDを識別する。UCにおいては、Th2型サイトカイン(IL-4、IL-5)の過剰発現が実証されたが、CDにおいては、Th1型サイトカイン(IL-12、IFN-γ)が優勢である。
【0026】
CDおよびUCは、遺伝的因子と細菌物質などの環境因子との間の相互作用を伴う。腸内微生物叢によって発動される異常な免疫応答が、IBDにおいて生じる。IBD用の大半の実験モデルは、無菌動物において確立させることができない。当技術分野において認識されている1つの実験モデルにおいて、IL-10-/-マウスは、粘膜付着性の結腸細菌の出現が、炎症の発達および維持の原因であることを示す。
【0027】
したがって、正常な腸内微生物叢に対する寛容性の欠如(breach)は、IBDを後押しする推進力となり得る。常在微生物叢に対する寛容性の欠如は、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によって誘発される大腸炎でも現れる。IL-10、すなわち免疫応答の下方調節の中心的媒介物質の投与は、寛容性を回復させることによって、健康な状態を復活させる。しかしながら、この治療は、異種の細菌抗原に対する免疫反応性に影響を及ぼす。ブドウ球菌腸毒素Bは、腸上皮での自己寛容を抑止し得る。IL-10は、上皮細胞損傷の一因となるT細胞の活性化を防止することによってこれに対抗することができる。好気性の常在微生物叢およびビフィズス菌によって刺激されるT細胞クローンも、IBD患者中で確認された。
【0028】
IBD患者の粘液において、より多い細菌量が報告されている。いくつかの報告書では、対照と比較した場合に、UC患者の細菌叢組成物の有意な差異は測定されていないが、最近の2件の研究は、UCにおける乳酸桿菌の有意な減少を指摘している。CDにおける微生物叢の組成物に関しては矛盾した報告があるが、異なる施設で評価された場合、病期を比較することは困難である。ビフィズス菌種は、CDにおいて減少していることが判明している。大腸菌(Escherichia coli)およびバクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)の有意な増加が回腸において、かつ、大腸菌および乳酸桿菌の有意な増加が結腸において検出されたが、乳酸桿菌も、ビフィズス菌の数と同様に、CD患者において有意に減少していることが判明している。
【0029】
IBDの発症は、いくつかの症例において、ウイルスまたは細菌感染(マイコバクテリア(Mycobacteria)、赤痢菌、サルモネラ、エルシニア(Yersinia)、クロストリジウム・ジフィシル(Clostridium difficile)、バクテロイデス・ブルガータス(Bacteroides vulgatus))に関係があるとされているが、現在のところ、IBDに関しては、病原体は特定されていない。しかしながら、最近、その存在およびそれに従うペプチドに対する血清反応性がCDと高い相関を持つあるDNA配列が、粘膜固有層単核球において特定された。この現在は未知の配列は、ヒト由来ではなく、かつ、細菌のtetR/acrR転写制御因子との相同性を示す。
【0030】
全身性エリテマトーデス(SLE)
結合組織の炎症、SLEは、対象の1種または複数種の器官または組織を冒す。これは、男性よりも女性において起こりやすく、最大9倍である。さらに、黒人女性のSLE罹患頻度は、白人女性の3倍である。病態は、太陽光線によって悪化する。症状には、発熱、体重減少、脱毛、口および鼻の潰瘍、倦怠感、疲労、発作、ならびに精神疾患の症状が含まれる。SLEに罹患している患者の確認は、これらの症状のうちの一つ以上を患者において確認することによって遂行される。90%の患者は、関節リウマチと同様の関節炎症を経験する。50%は、鼻および頬に典型的な「蝶型」紅斑を生じる。レイノー現象(寒冷に対する手および足の極端な感受性)は、SLE罹患者の約20%において現れる。現在の治療は、関節炎症状を抑制するための抗炎症薬、および皮膚病変を治療するための局所用ステロイドクリーム剤の使用に限定されているが、プレドニゾンなどの経口ステロイド薬が全身症状用に使用されている。SLEの一つ以上の症状が、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0031】
関節リウマチ
関節リウマチは、免疫細胞が関節周辺の膜を攻撃し、かつ炎症を起こさせる全身性障害である。これは、心臓、肺、および眼も冒し得る。関節リウマチを罹患した推定210万人のアメリカ人のうち、約150万人(71%)は女性である。疾患の症状には、炎症を起こした、かつ/または変形した関節、筋力の低下、腫脹、ならびに疼痛が含まれる。関節リウマチに罹患している患者の確認は、これらの症状のうちの一つ以上を患者において確認することによって遂行される。現在の治療様式には、休養および抗炎症薬が含まれる。関節リウマチの一つ以上の症状が、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0032】
強皮症(全身性硬化症)
強皮症は、皮膚、内臓、および小血管中に線維性かつ瘢痕様の組織を生じる、ある種の免疫細胞の機能亢進を伴う。全体として、女性の罹患頻度は男性の3倍であるが、妊娠可能年齢の女性の場合にはこの比率は15倍まで上昇し、かつ、白人女性より黒人女性の間で起こりやすいようである。強皮症の症状には、レイノー現象の出現、ならびに指および手の腫脹および腫れが含まれる。しばしば、皮膚肥厚が続いて起こり、かつ、他の症状には、指の皮膚潰瘍、手の関節硬直、疼痛、咽頭痛、および下痢が含まれる。強皮症に罹患している患者の確認は、これらの症状のうちの一つ以上を患者において確認することによって遂行される。強皮症の現在の治療には、皮膚肥厚を低減することが示されているD-ペニシラミンが含まれる。この障害はまた、腎臓、食道、腸、および血管など他の器官にも影響を与え、したがって、複数の系の治療を必要とする。強皮症の一つ以上の症状が、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0033】
シェーグレン症候群
シェーグレン症候群(シェーグレン病とも呼ばれる)は、慢性かつ緩徐に進行する、唾液または涙液の分泌不能である。これは、単独で、または関節リウマチ、強皮症、もしくは全身性エリテマトーデスともに発生し得る。10症例中9症例は、女性で、ほとんどの場合、中年もしくは中年に近い年齢で起こる。この障害の症状には、眼および口の乾燥、腫れた頸腺、嚥下もしくは会話の困難、異常な味覚もしくは嗅覚、口渇、舌潰瘍、または重度のう蝕が含まれる。シェーグレン症候群に罹患している患者の確認は、これらの症状のうちの一つ以上を患者において確認することによって遂行される。現在の治療には、口および眼を湿った状態に保つための処置(多量の液体を飲むことおよび点眼薬の使用、ならびに良好な口腔衛生および眼の管理を含む)が含まれる。シェーグレン症候群の1つ以上の症状が、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0034】
多発性硬化症(MS)
多発性硬化症は、通常、20〜40歳の間に最初に出現する中枢神経系の疾患であり、女性の罹患頻度は男性の2倍である。MSは、若年成人の能力障害の主要な原因である。MSは、中枢神経系の予測不可能な疾患であると認識されており、かつ、脳および身体の他の部分の間の伝達が乱されるため、比較的良性のものからいくらか障害のあるもの、破壊的なものまで多岐にわたり得る。MSの症状には、疲労、歩行困難、腸および/または膀胱の障害、視覚障害、記憶、注意力、および問題解決に関する問題を含む認知機能の変化、しびれ感または「チクチクする痛み」などの異常感覚、性的機能の変化、疼痛、うつおよび/または気分変動、振戦、会話および嚥下の困難、ならびに聴覚障害が含まれる。多発性硬化症に罹患している患者の確認は、1つ以上のこれらの症状を患者において確認することによって遂行される。極めて大多数の患者の罹患状態は軽度であるが、最悪の症例では、MSは、書くことも、話すことも、歩くこともできないような状態に人を変え得る。MSの1つ以上の症状は、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0035】
重症筋無力症
重症筋無力症は、対象の顔に最初にしばしば現れる徐々の筋衰弱を特徴とし、かつ、眼瞼下垂、ならびに複視、呼吸、会話、咀嚼、および嚥下の困難をしばしば特徴とする、慢性自己免疫障害である。重症筋無力症に罹患している患者の確認は、これらの症状のうちの1つ以上を患者において確認することによって遂行される。薬物エドロホニウムが、毎日の休養期間とともに、筋力を改善することができる治療法として現在使用されている。重症筋無力症の1つ以上の症状が、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0036】
ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群は、身体の免疫系が、末梢神経系の部分を攻撃する障害である。この障害の最初の症状には、様々な程度の脱力感、または下肢におけるチクチクした感覚が含まれる。ギラン・バレー症候群に罹患している患者の確認は、これらの症状のうちの一つ以上を患者において確認することによって遂行される。多くの場合、脱力感および異常感覚は、腕および上半身に広がる。これらの症状は、筋肉が全く使用できなくなり、かつ、患者がほぼ完全に麻痺するまで、激しさを増し得る。これらの症例では、この障害は生命を脅かし、かつ、緊急医療事態とみなされる。この患者は、しばしば、呼吸を補助するための人工呼吸器に載せられる。しかしながら、大半の患者は、一部の患者ではいくらかの程度の脱力感が継続するものの、ギラン・バレー症候群の最も重度な症例からさえ回復する。ギラン・バレー症候群は、珍しい。通常、ギラン・バレーは、患者が呼吸器または胃腸管のウイルス感染の症状を示した数日または数週間後に発生する。時折、外科手術またはワクチンの接種がこの症状を引き起こす。この障害は、数時間もしくは数日間をかけて発達することがあり、または、最大3〜4週間かかることもある。神経に沿って移動するシグナルがより遅いため、神経伝導速度(NCV)試験が、診断を助けるために使用される。脳脊髄液中のタンパク質増加もまた、ギラン・バレー症候群を診断するのに使用される。ギラン・バレー症候群の一つ以上の症状が、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0037】
橋本甲状腺炎
橋本甲状腺炎は、免疫系が、甲状腺、すなわち代謝速度の調節に役立つ腺を破壊する、ある種の自己免疫疾患である。女性の罹患頻度は男性の50倍である。この障害の症状には、精神的および身体的な緩慢化、寒冷に対する感受性の増大、体重増加、皮膚の粗造化、ならびに甲状腺腫(肥大した甲状腺に起因する頚部腫脹)をもたらす、低レベルの甲状腺ホルモンが含まれる。橋本甲状腺炎に罹患している患者の確認は、これらの症状のうちの一つ以上を患者において確認することによって遂行される。現在、甲状腺ホルモン補充療法が、この障害の治療のために使用されている。橋本甲状腺炎の一つ以上の症状が、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0038】
グレーブス病
グレーブス病は、最も一般的な自己免疫疾患のうちの1つであり、女性の罹患頻度は男性の約7倍である。グレーブス病の対象は、過剰量の甲状腺ホルモンを産生する。グレーブス病の症状には、エネルギー消費の増加、増大した食欲、心拍数、および血圧に起因する体重減少、振戦、神経質および発汗、ならびに頻繁な排便が含まれる。グレーブス病に罹患している患者の確認は、これらの症状のうちの一つ以上を患者において確認することによって遂行される。治療オプションには、抗甲状腺薬療法、または例えば外科的な、もしくは放射性ヨウ素治療による、甲状腺の切除が含まれる。グレーブス病の一つ以上の症状が、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0039】
インスリン依存性(1型)糖尿病
1型糖尿病は、膵臓におけるインスリン産生が少なすぎることによって引き起こされ、かつ、通常、小児および若年成人で発生するが、任意の年齢でも発生し得る。症状には、口渇の増大、排尿増加、体重減少、疲労、悪心、嘔吐、および頻繁な感染が含まれる。糖尿病に罹患している患者の確認は、これらの症状のうちの一つ以上を患者において確認することによって遂行される。インスリン治療が、現在の治療様式である。糖尿病の一つ以上の症状が、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0040】
炎症性腸疾患
クローン病(回腸炎または腸炎とも呼ばれる)は、小腸の炎症を引き起こす。クローン病は、通常、回腸と呼ばれる小腸の下部において発生するが、口から肛門までの、消化管の任意の部分を冒し得る。炎症は、罹患器官の内層中まで深く広がる。炎症は、疼痛を引き起こすことがあり、かつ、しばしば腸を空にして、下痢をもたらすことがある。クローン病に罹患している患者の確認は、これらの症状のうちの一つ以上を患者において確認することによって遂行される。クローン病は、炎症性腸疾患の1形態である。クローン病は、過敏性腸症候群など他の腸障害、および潰瘍性大腸炎と呼ばれる別のタイプのIBDにその症状が類似しているため、診断が困難となり得る。潰瘍性大腸炎は、大腸の内層の最上層における炎症および潰瘍を引き起こす。クローン病は、男性および女性を等しく襲い、かつ、一部の家族においては遺伝する(run)ようである。クローン病の罹患者の約20%は、なんらかの形態のIBDに罹患した血族を有し、ほとんどの場合、兄弟または姉妹、および時には親または子供である。クローン病の一つ以上の症状が、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0041】
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸の内層において、潰瘍と呼ばれる炎症および爛れを引き起こす疾患である。通常、炎症は、直腸および結腸の下部において発生するが、結腸全体を冒すこともある。潰瘍性大腸炎は、末端回腸と呼ばれる末端部分を除いて、小腸はめったに冒さない。潰瘍性大腸炎は、結腸炎または直腸炎とも呼ばれ得る。UCの症状には、疲労、体重減少、損失、食欲低下、直腸出血、ならびに体液および栄養分の損失が含まれる。UCに罹患している患者の確認は、これらの症状のうちの一つ以上を患者において確認することによって遂行される。炎症は、しばしば結腸を空にして、下痢を引き起こす。潰瘍は、結腸の内層を構成している細胞が炎症によって殺された場所において形成する;潰瘍は出血し、かつ、膿汁を生じる。クローン病は、腸壁内部のより深くの炎症を引き起こすため、潰瘍性大腸炎とは異なる。また、クローン病は、通常小腸で発生するが、口、食道、胃、十二指腸、大腸、虫垂、および肛門でも発生し得る。潰瘍性大腸炎は、任意の年齢の人々において発生し得るが、ほとんどの場合、15〜30歳の間に、または頻度は落ちるが50〜70歳の間に始まる。小児および青年は、この疾患を時々発症する。潰瘍性大腸炎は、男性および女性を等しく襲い、かつ、一部の家族においては遺伝するようである。UCの一つ以上の症状は、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0042】
セリアック病
セリアック病は、小腸に損傷を与え、かつ、食品からの栄養素吸収を妨害する、消化器疾患である。セリアック病に罹患した対象は、コムギ、ライムギ、およびオオムギ中に存在する、グルテンと呼ばれるタンパク質に耐えることができない。セリアック病の罹患者がグルテンを含む食品を食べた場合、彼等の免疫系は、小腸を損傷することによって応答する。具体的には、腸絨毛が失われ、結果として栄養失調をもたらす。セリアック病の症状には、下痢、腹痛および鼓脹、ガス、短気、うつ、体重減少、成長の遅れ、幼児の成長不良、貧血、ならびに疲労が含まれる。セリアック病に罹患している患者の確認は、これらの症状のうちの一つ以上を患者において確認することによって遂行される。セリアック病は、セリアックスプルー、非熱帯性スプルー、およびグルテン過敏性腸疾患としても公知である。セリアック病は、外科手術、妊娠、出産、ウイルス感染、または重度の情動ストレスの後に誘発され得る。セリアック病の一つ以上の症状が、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0043】
血管炎症候群
これは、自己免疫性の応答によって引き起こされると考えられている、炎症および血管への損傷を含む症状を特徴とする広範かつ異種混交的な疾患群である。血管炎に罹患している患者の確認は、これらの症状のうちの一つ以上を患者において確認することによって遂行される。任意のタイプ、大きさ、および位置の血管が関与させられ得る。血管炎は、単独でまたは他の疾患と組み合わせて発生することがあり、かつ、1つの器官に限局され得、またはいくつかの器官系に影響を及ぼし得る。血管炎の一つ以上の症状が、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0044】
血液学的自己免疫疾患
血液もまた、自己免疫障害によって冒され得る。自己免疫性の溶血性貧血において、赤血球は、抗体によって早期に破壊される。血液の他の自己免疫疾患には、自己免疫性血小板減少性紫斑病および自己免疫性好中球減少が含まれる。これらの血液疾患の一つ以上の症状は、バチルス・コアグランス細菌を用いた治療の後に軽減される。
【0045】
本発明者らは、前述したいくつかの自己免疫障害に示したように、ある種の自己免疫障害は、主として女性に影響を及ぼすと言うことを認識している。本発明は、女性対象における自己免疫障害の予防または治療を開示する。本発明の態様において、女性患者において治療または予防しようとする自己免疫障害は、橋本病(甲状腺機能低下症としても公知である)、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、抗リン脂質症候群、原発性胆汁性肝硬変、混合性結合組織病、慢性活動性肝炎、グレーブス病(甲状腺機能亢進症とも呼ばれる)、関節リウマチ、強皮症、重症筋無力症、多発性硬化症、または慢性の特発性血小板減少性紫斑病である。
【0046】
バチルス・コアグランス療法は、自己免疫疾患に関連した病原性微生物による胃腸管感染を減少させる
多くの種の細菌、糸状菌、および酵母病原体は、自己免疫障害を含む様々な障害を引き起こす能力を有する。プロバイオティック微生物であるバチルス・コアグランスは、前述したこれらの病原体による感染に関連付けられている、乾癬などの自己免疫性病態の予防処置または治療処置において有用である。一般に、バチルス・コアグランス細菌は、(i)消化において有用な酵素(例えば、ラクターゼ、様々なプロテアーゼ、リパーゼ、およびアミラーゼ)を産生および分泌する能力を有し;(ii)胃腸管内部で有益な機能を示し;(iii)様々な粘膜細胞との細菌/真菌/または糸状菌の相互作用の結果として、サイトカイン反応を下方調節するのに役立ち;かつ、非病原性である。バチルス・コアグランス細菌は、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、ならびにトリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、トリコフィトン・インテルジキターレ(Trichophyton interdigitale)、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、およびトリコフィトン・ヤウンデイ(Trichophyton yaoundei)を含む、病原性の酵母および他の真菌を抑制することができる。バチルス・コアグランス細菌はまた、ブドウ球菌種、化膿連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、大腸菌種、クロストリジウム種、ガーデネリア・バギナリス(Gardnereia vaginailis)、プロポンバクテリウム・アクネス(Proponbacterium acnes)、アエロモナス(Aeromonas)種、アスペルギルス属(Aspergillus);プロテウス(Proteus)種;およびクレブシエラ(Klebsiella)種を含む、病原性細菌を抑制することもできる。
【0047】
以下のアクセッション番号:バチルス・コアグランス・ハンマーNRS 727(ATCC番号11014);バチルス・コアグランス・ハンマー株C (ATCC番号11369);バチルス・コアグランス・ハンマー(ATCC番号31284);バチルス・コアグランス・ハンマーNCA 4259(ATCC番号15949);ならびにATCCアクセッション番号8038、35670、23498、51232、12245、10545、および7050として寄託されている株を含む、バチルス・コアグランス細菌の株は、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能である。精製されたバチルス・コアグランス細菌もまた、以下のアクセッション番号:バチルス・コアグランス・ハンマー1915(DSM番号2356);バチルス・コアグランス・ハンマー1915(DSM番号2383。ATCC番号11014に対応);バチルス・コアグランス・ハンマー(DSM番号2384。ATCC番号11369に対応);およびバチルス・コアグランス・ハンマー(DSM番号2385。ATCC番号15949に対応)を用いて、Deutsche Sarumlung von Mikroorganismen und Zellkuturen GmbH (Braunschweig、ドイツ)から入手可能である。バチルス・コアグランス細菌はまた、K. K. Fermentation(京都、日本)およびNebraska Cultures(Walnut Creek, CA)のような商業的供給業者から得ることもできる。
【0048】
微生物病原体による感染を減少させるのに使用されるバチルス・コアグランス細菌株は、バチルス・コアグランス・ハンマー、またはそれに由来する株である。例えば、バチルス・コアグランス細菌株は、ATCC31284、またはそれに由来する株である。これらの株には、例えば、ATCC番号GBI-20、ATCC指定番号PTA-6085;GBI-30、ATCC指定番号PTA-6086;およびGBI-40、ATCC指定番号PTA-6087が含まれる。その内容全体が、参照により本明細書に組み入れられるFarmerの米国特許第6,849,256号を参照されたい。
【0049】
哺乳動物(例えば、ヒト)の胃腸管に経口投与するのに適した薬学的に許容される担体中にバチルス・コアグランス細菌を含む組成物が開示される。バチルス・コアグランス細菌は、哺乳動物の胃腸管にコロニーを形成するのに十分な量で提供される。本発明は、約1×104〜約1×1012個、具体的には、約1×106〜約1×1011個、より具体的には、約1×108〜約1×1010個、および最も具体的には、8×108個の生菌濃度でバチルス・コアグランス細菌を提供する。バチルス・コアグランス細菌は、栄養細胞、芽胞、またはそれらの組合せとして提供される。
【0050】
栄養細胞は、細胞が胃の酸性環境によって殺されないように保護する組成物中に配合される。このようにして配合された細胞は、首尾よく胃を通り抜けて、小腸および/または大腸にコロニーを形成する。したがって、本発明は、薬学的に許容される酸耐性の(「腸溶性の」)担体中にバチルス・コアグランス細菌を含む組成物を含む。酸耐性とは、その担体またはコーティングが、酸性環境において溶解しないことを意味する。酸性環境は、7より低いpHを特徴とする。酸耐性担体は、約4.0より低いpHの酸に耐性である。好ましくは、担体は、pH2〜3において溶解しない。最も好ましくは、これは、2より低いpHにおいて溶解しない。栄養型の細菌細胞を胃酸から保護するために、細胞は、酸耐性担体でコーティングまたはカプセル化される。組成物は、グルコースおよびリン酸など他の成分、または担体もしくはコーティングの除去後の細菌増殖を増加させるための他の栄養性化合物を任意で含む。本発明はまた、コール酸、デオキシコール酸、およびタウロデオキシコール酸などの胆汁酸の存在下で成長を始める能力に基づいて選択される、芽胞の形態のバチルス・コアグランス細菌を含む。腸溶コーティングされ、かつ胆汁酸耐性のバチルス・コアグランス細菌は、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる、2002年11月5日に出願された米国特許出願第10/287,904号において記載されている。
【0051】
これらの組成物は、バチルス・コアグランス細菌、および乾癬の症状を低減または軽減させる天然または合成の化合物など一つ以上の生物学的に活性な化合物を含む。例示的な化合物には、メトトレキサート、シクロスポリン、ヒドロキシ尿素、ミコフェノール酸モフェチル、スルファサラジン、6-チオグアニンを含む免疫抑制薬、およびレチノイドなど他の化合物が含まれる。
【実施例】
【0052】
実施例1 バチルス・コアグランス細菌の調製
I.栄養型バチルス・コアグランスの調製
バチルス・コアグランスは、好気性かつ通性であり、典型的には、最大2(重量)%のNaClを含む栄養ブロス中で、pH5.7〜6.8で培養されるが、NaClもKClも増殖には必要とされない。約4.0〜約7.5のpHが、芽胞形成(すなわち、芽胞の形成)の開始のために最適である。この細菌は、20℃〜45℃で最適に増殖し、かつ、芽胞は、低温殺菌に耐えることができる。さらに、この細菌は、硝酸または硫酸の供給源を利用することによって、通性かつ従属栄養的な増殖を示す。バチルス・コアグランス株およびそれらの増殖条件は、以前に説明されている(例えば、Baker, D. et al, 1960. Can. J Microbiol. 6: 557-563; Nakamura, H. et al, 1988. Int. J. Syst. Bacteriol. 38: 63-73を参照されたい)。さらに、バチルス・コアグランスの様々な株は、周知の手順を用いて、天然供給源(例えば、熱処理された土壌試料)から単離することもできる(例えば、Bergey's Manual of Systemic Bacteriology, Vol. 2, p. 1117, Sneath, P. H.A. et al. , eds. Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 1986を参照されたい)。
【0053】
バチルス・コアグランス細菌は、様々な培地中で培養されるが、特定の増殖条件が、高レベルの芽胞形成を生じる培養物を作製する際により有効であることが実証されている。例えば、芽胞形成は、10mg/lのMgSO4硫酸塩を培養培地に添加することによって促進され、芽胞と栄養細胞の比は、約80:20となる。さらに、特定の培養条件は、本発明に特に適したスペクトルの代謝酵素を含む細菌芽胞を生成する(すなわち、プロバイオティック活性および生物分解の増強のための乳酸および酵素の産生)。前述したこれらの培養条件によって生成される芽胞が好ましいが、生存能力を有するバチルス・コアグランス芽胞を生成する、適合性のある他の様々な培養条件が、本発明の実施に際して利用される。
【0054】
バチルス・コアグランスの培養用の適切な培地には、TSB(Tryptic Soy Broth)、GYE(Glucose Yeast Extract Broth)、およびNB(栄養ブロス)が含まれ、これらは全て、当技術分野内で周知であり、かつ、様々な供給業者から入手可能である。家禽および/または魚類の組織の酵素消化物を含み、かつ食物酵母を含む培地補充物が、特に好ましい。好ましい補充物は、少なくとも60%のタンパク質、ならびに約20%の複合糖質および6%の脂質を含む培地を生じる。培地は、様々な商業的供給業者、特に、DIFCO(Newark, NJ);BBL(Cockeyesville, MD);およびTroy Biologicals(Troy, MD)から得ることができる。
【0055】
II.バチルス・コアグランス芽胞の調製
乾燥させたバチルス・コアグランス・ハンマー細菌(ATCC番号31284)芽胞の培養物を、以下のようにして調製した。約1×107個の芽胞を、30g(重量/体積)のTryptic Soy Broth;10gの家禽および魚類の組織の酵素消化物;ならびに10gのMgSO4を含む1リットルの培養培地中に播種した。この培養物を、37℃で72時間、高酸素環境下で維持し、培養物1g当たり約6×109個の細胞を有する培養物を作製した。次いで、この培養物を遠心分離して液体培養培地を除去し、得られた細菌のペーストを滅菌水および20%マルトデキストリン100ml中に再懸濁させ、かつ、凍結乾燥させた。この凍結乾燥した細菌を、標準の医薬品の製造及び品質管理に関する基準(GMP)の方法を用いて粉砕して細粉にした。
【0056】
実施例2 処方および投与
栄養型の細菌細胞および芽胞は、投与1回当たり10,000〜1011個の細胞の用量で投与される。本発明の典型的な治療用組成物は、1グラムの投与製剤中に、約1×103〜1×1012、および好ましくは約2×105〜2×1010コロニー形成単位(CFU)の、生存能力を有するバチルス細菌(すなわち栄養型細菌)または細菌芽胞を含む。典型的には、バチルス・コアグランス細菌は、投与後3〜5日間、結腸中に留まり、かつ、コロニーを形成する。

【0057】
本発明は、他の有用な成分の添加を提供する。この性質の免疫障害に罹患している多くの個体は、ビタミンおよび無機質の欠乏症を有していることも示されている。したがって、ビタミンおよび無機質補充物の添加は、これらの障害の食事管理のために有用である。
【0058】
実施例3 慢性乾癬の治療および臨床的寛解におけるバチルス・コアグランス細菌の使用法
プロバイオティック細菌は、ヒトおよび動物の腸中の病原体の数を減少させる。さらに、バチルス・コアグランス細菌は、毒素および病原生物に対する身体のサイトカイン反応を下方調節する。
【0059】
いくつかの有害な微生物は、免疫系の過剰刺激を促進する。乾癬の場合、これは、皮膚のプレート(plate)の形成を引き起こすサイトカイン(TNF-α)の産生を招く。カンジダ・アルビカンスは、これらの状況における潜在的な感染体である。現在、乾癬病変を減少させるために医師が全身性抗真菌化合物を処方することは一般的である。残念ながら、これらの状況において最も頻繁に使用される抗真菌薬はフルコナゾールであり、これは、30日間しか使用することができない(FDAのガイドラインによる)。これらの問題点を念頭に置いて、バチルス・コアグランス乳酸菌を使用して大便中のカンジダ種の数を減少させ、同時に、カンジダ感染の結果としてのTNF-α産生を下方調節することができるかどうかを判定するために、調査を実施した。
【0060】
慢性乾癬のヒト患者12名をCleveland, Ohioの一般診療所で3ヶ月間にわたって調査した。バチルス・コアグランス細菌(7.5×108コロニー形成単位(CFU))および担体としての微結晶性セルロースを含むカプセル剤を患者に与え、かつ、1日2カプセルを服用するように指示した。服用する時刻についても、2つのカプセルを同時に、または1日の間の異なる時刻に服用するかどうかについても、制限は無かった。この治療を3ヶ月間継続し、治療の開始時および終了時に患者を観察した。
【0061】
2ヶ月後の結果は、バチルス・コアグランス療法が、尋常性乾癬に罹患している患者において乾癬プレートの表面積を減少させるのにほぼ100%有効であることを示唆した。この調査を実施した医師は、プレートが各自の体の60%を超える数名の若年患者(年齢16〜25歳)が、より年齢が高く(年齢50歳またはそれ以上)、かつ、はるかに長い期間(20年より長く)、疾患に罹患していた患者より、はるかに速く結果を示すことを示さなかった。治療後に良好な結果を示した5名の患者は、(様々な理由で)製剤の使用を中断し、乾癬プレートは、極めて速く元に戻った。治療を再度開始した後、これらのプレートは、再び減少し始めた。これは、潜在的なカンジダ感染が完全には排除され得ないこと、および、より長期間の療法が、結果を維持するために必要とされ得ることを示唆する。さらに、一部の個体は糸状菌感染に対する感受性がより高く、結果として、これらの個体は、製剤の継続使用によってこの状態を管理する必要がある。使用条件は、最初の結果の後の食事管理に応じて異なり得るが、最初の結果が維持されることを保証するためには、最低1日1カプセルの継続が十分な量となり得る。
【0062】
実施例4 血清TNF-αレベルを低下させるためのバチルス・コアグランス細菌の使用
病原性微生物による哺乳動物の胃腸管でのコロニー形成は、皮膚のプレートなど乾癬の症状を引き起こす、サイトカイン(例えば、TNF-α)の異常産生を招く。バチルス・コアグランス細菌の経口投与を、乾癬に罹患している、または発症する危険性のあるヒト対象におけるサイトカイン産生を低減させる能力について検査する。
【0063】
材料および方法
乾癬の一つ以上の症状の存在もしくは過去の発病によって、またはこの疾患の家族暦(乾癬の一つ以上の症状を有する1人もしくは複数の両親、祖父母、もしくは兄弟姉妹)によって、対象を特定する。罹患していない個体は、対照として使用される。バチルス・コアグランス細菌治療の前、治療期間を通じて一定の間隔で、および治療の完了時に、血清サイトカインレベルを測定する。測定されるサイトカインには、TNF-αおよびインターロイキン-6(IL-6)が含まれる。血清サイトカインレベルの測定は、ELISAなど当技術分野において公知の方法によって実施される。 1日あたり少なくとも約1×106個のバチルス・コアグランス生菌が各対象の胃腸管に送達されるように、罹患した対象および罹患していない対象にバチルス・コアグランス細菌を投与する。治療を少なくとも約10日、例えば、約10、15、20、30、45、60、75、90、または120日間継続する。
【0064】
結果
乾癬に罹患している、または発症する危険性のあるヒト患者は、罹患していない対照より高レベルのTNF-αを有する。バチルス・コアグランス細菌を用いた治療は、罹患対象における血清TNF-αレベルの低下をもたらす。
【0065】
実施例5 バチルス・コアグランス細菌を含む医療用食品
「医療用食品」とは、医師の監督のもとで経腸的に摂取または投与されるように調製され、かつ、認められた科学原則に基づいて、それに対する特有の栄養必要量が医学的評価によって確立されている疾患または病態の特定の食事管理用に意図されている食品を意味する。(21 USC 360ee(b)(3)を参照されたい)。自己免疫疾患に罹患している、または発症する危険性のある対象にとって、バチルス・コアグランス細菌を含む組成物は、栄養的に完全な配合の医療用食品である。または、バチルス・コアグランス細菌を含む組成物は、栄養的に不完全な配合の医療用食品である。
【0066】
バチルス・コアグランス細菌を含んでいる医療用食品は、主要な治療様式としてその医療用物質を必要とする対象など、自己免疫疾患に罹患している、または発症する危険性のある対象のために特別に調製され、かつ加工される。典型的には、バチルス・コアグランス細菌を含んでいる医療用食品は、腸溶性の栄養製品として調製される。すなわち、これは、口から摂取され、胃腸管を通って提供され、または、口腔を通過してもしくは胃に直接、栄養物を送達するチューブもしくはカテーテルによって提供される。この医療用食品は、1日最大約2回摂取される医療用食品の約1グラム〜約2グラムの1回摂食量を基準として、1日あたり少なくとも約1×106個のバチルス・コアグランス生菌を哺乳動物対象の胃腸管中に提供するように調製される。この医療用食品はまた、微生物に由来しない抗真菌剤、免疫抑制剤、または、微生物に由来しない抗真菌剤および免疫抑制剤も任意で含む。
【0067】
バチルス・コアグランス細菌を含んでいる医療用食品が適する対象は、乾癬などの自己免疫疾患の一つ以上の症状の存在もしくは過去の発病によって、またはこの疾患の家族暦(自己免疫疾患の一つ以上の症状を有する1人もしくは複数の両親、祖父母、もしくは兄弟姉妹)によって、特定される。
【0068】
実施例6 他の自己免疫障害の治療におけるバチルス・コアグランス細菌の使用
クローン病のヒト患者12名を、Cleveland, Ohioの一般診療所で1ヶ月間にわたって調査した。バチルス・コアグランス細菌(1.5×109コロニー形成単位(CFU))および担体としての微結晶性セルロースを含むカプセル剤を患者に与え、かつ、1日1カプセルを服用するように指示した。服用する時刻についての制限は無かった。この治療を1ヶ月間継続し、治療の開始時および終了時に患者を観察した。
【0069】
1ヵ月後の結果により、12名の患者のうち11名は皆、この製剤に良く反応することが示された。1名の患者は、説明もせずに脱退した。下痢の発病の減少率は75%を超え、かつ、腹痛および攣縮は顕著に減少した。クローン病は、症状によって診断される。すなわち、毎日経験される症状の数および重症度の有意な低減は、この疾患に罹患している個体において注目すべき改善である。
【0070】
他の態様は、添付の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾癬に罹患している、または発症する危険性のある患者を特定する段階、およびバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)細菌を含む組成物を該患者に投与する段階を含む、乾癬の症状を軽減する方法。
【請求項2】
細菌が、バチルス・コアグランス・ハンマー(Bacillus coagulans hammer)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
細菌が、バチルス・コアグランス・ハンマー株アクセッション番号ATCC 31284に由来する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
組成物が、微生物に由来しない抗真菌剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
抗真菌剤が、クロトリマゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、テルビナフィン、テルコナゾール、およびチオコナゾールからなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
症状が、鱗屑、水疱形成、皮膚病変、そう痒、および関節痛からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
組成物が、免疫抑制剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
免疫抑制剤が、メトトレキサート、シクロスポリン、ヒドロキシ尿素、ミコフェノール酸モフェチル、スルファサラジン、および6-チオグアニンからなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
組成物が、レチノイドをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
バチルス・コアグランス細菌が、約1×108〜約1×1010個の生菌濃度で提供される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
バチルス・コアグランス細菌が、約1×109〜約2×109個の生菌濃度で提供される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
バチルス・コアグランス細菌が、芽胞の形態である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
バチルス・コアグランス細菌が、栄養細胞の形態である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
組成物が、ゲンタマイシン、バンコマイシン、オキサシリン、テトラサイクリン、ニトロフルラントイン(nitroflurantoin)、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、トリメトプリムスルファメトキサゾール、セファクロル、セファドロキシル、セフィキシム、セフプロジル、セフトリアキソン、セフロキシム、セファレキシン、ロラカルベフ、アンピシリン、アモキシリン・クラブラン酸、バカンピシリン、クロキシシリン、ペニシリンVK、シプロフロキサシン、グレパフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン、アジスロマイシン、およびリスロマイシンからなる群より選択される抗生剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
組成物が、微生物に由来しない抗真菌剤をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
組成物が、約3日間、毎日約1回摂取される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
組成物が、約7日間、毎日約1回摂取される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
組成物が、ビタミン、無機質、または抗酸化薬をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
自己免疫障害に罹患している、または発症する危険性のある患者を特定する段階、およびバチルス・コアグランス細菌を含む組成物を該患者に投与する段階を含む、自己免疫障害の症状を軽減する方法。
【請求項20】
自己免疫障害が、乾癬、クローン病、大腸炎、狼瘡、および関節炎からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
症状が、鱗屑、水疱形成、皮膚病変、そう痒、および関節痛からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
組成物が、約3日間、毎日約1回投与される、請求項19記載の方法。
【請求項23】
組成物が、約7日間、毎日約1回投与される、請求項19記載の方法。
【請求項24】
組成物が、ビタミン、無機質、または抗酸化薬をさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項25】
高レベルのTNF-αを含む哺乳動物を特定する段階、およびバチルス・コアグランス細菌を含む組成物を該哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物における血清TNF-αレベルを低下させるための方法であって、血清TNF-αレベルが、該投与前の該哺乳動物における血清TNF-αレベルと比べて、該投与後の該哺乳動物において低下する、方法。
【請求項26】
バチルス・コアグランス細菌が、約1×108〜約1×1010個の生菌濃度で提供される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
低下率が、約10%より大きい、請求項25記載の方法。
【請求項28】
バチルス・コアグランス細菌および免疫抑制剤を含む組成物。
【請求項29】
免疫抑制剤が、メトトレキサート、シクロスポリン、ヒドロキシ尿素、ミコフェノール酸モフェチル、スルファサラジン、および6-チオグアニンからなる群より選択される、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
抗真菌薬をさらに含み、該抗真菌薬がアゾール化合物である、請求項28記載の組成物。
【請求項31】
レチノールをさらに含む、請求項28記載の組成物。
【請求項32】
バチルス・コアグランス細菌が、約1×108〜約1×1010個の生菌濃度で提供される、請求項28記載の組成物。
【請求項33】
組成物が、カプセル剤、錠剤、散剤、または液体の形態である、請求項28記載の組成物。
【請求項34】
バチルス・コアグランス細菌が、バチルス・コアグランス・ハンマー株、アクセッション番号ATCC31284に由来する、請求項28記載の方法。
【請求項35】
バチルス・コアグランス細菌を含む乾癬の管理用の医療用食品およびそれを使用するための説明書を含むキットであって、該医療用食品は、1日最大2回摂取される該医療用食品の約1グラム〜約2グラムの1回摂食量を基準として、1日あたり少なくとも約1×106個のバチルス・コアグランス生菌を哺乳動物の胃腸管中に提供するように調製される、キット。
【請求項36】
微生物に由来しない抗真菌剤をさらに含む、請求項35記載のキット。
【請求項37】
免疫抑制剤をさらに含む、請求項35記載のキット。

【公開番号】特開2012−211176(P2012−211176A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150041(P2012−150041)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【分割の表示】特願2007−513310(P2007−513310)の分割
【原出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(504174755)ガネデン バイオテック インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】