説明

自己分散性金属酸化物コーティング粉末、その製造方法及び使用

金属酸化物粒子を含む材料が開示され、該材料はその上に有機分散剤を含むコーティングを有し、該コーティングの量は、前記材料を自己分散性のする量である。また化粧品組成物などの組成物が開示され、自己分散性コーティングを含む。さらに粒子性金属酸化物を有機分散剤でコーティングして該金属酸化物を自己分散性とするプロセスが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己分散性金属酸化物でコーティングされた粉末、その製造方法及び使用に関する。本出願は、2009年3月23日出願のアメリカ合衆国仮特許出願番号61/162387に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般的には自己分散性粒子又は粉末、及び該粒子又は粉末の形成方法、及び該粒子又は粉末を含む組成物に関する。特に自己分散性粒子又は粉末を含む有用な組成物は化粧品である。
【0003】
酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化鉄などの金属酸化物は、日焼け止め、塗料、コーティング剤及びプラスチックフィルム及び樹脂などの応用において紫外光線の減衰剤として適用されてきた。金属酸化物は、しばしば分散粒子として最終製品中に存在し、従ってよりよい分散性が常に求められてきた。
【0004】
大粒子サイズ又は小粒子サイズの金属酸化物は、メチコンやシランでコーティングされていても、エステル、植物油、鉱油及び炭化水素中では分散性に乏しいことが知られている。分散性が乏しいことは、日焼け止め剤中のUV減衰性及び透明性及び色素の色強度に対し悪影響を与え、また同様に皮膚感触性及び組成物安定性などにも悪い影響を与える。
【0005】
ミクロ金属酸化物の分散性は文献に開示されている。該文献で開示されたプロセスは金属酸化物のミリングを要し、該ミリングプロセスは多くのフォーミュレータにはそれほど頻繁に利用できるものではない。多くの場合、粒子を分散させるために機械的ミキサやホモジナイザが最終製品のフォーミュレータに利用可能である。ミリングプロセスが利用可能な場合であっても、様々なフォーミュレーション及び成分の複雑性により、適切な分散性をフォーミュレートすることを難しくしている。さらに、化粧品フォーミュレータは分散技術に十分習熟していない場合が多く、又最適の分散系及びその最適使用レベルなどを見いだす時間もない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、余分な機械御プロセスを要求するミリングを行わなくても、該色素が望ましい性能を与えることができるように、金属酸化物などの色素の分散性を改良するための要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ひとつの側面において、自己分散性金属酸化物は、金属酸化物上に分散剤がコーティングされており、これにより別に分散剤を添加して色素の分散性を改良するという必要性を除くものである。ここで開示される粒子性金属酸化物はコーティングされ、該コーティング剤はポリヒドロキシステアリン酸を含み、その量は該金属酸化物を自己分散性とする量である。粒子状金属酸化物には、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム及び酸化鉄などが含まれる。
【0008】
他の側面において、組成物が開示され、組成物は前記自己分散性粒子性金属酸化物を分散媒体に含み分散物を形成する。前記コーティングされた粒子性金属酸化物は、該粒子性金属酸化物の表面を変性するためにポリヒドロキシステアリン酸を含むコーティングを持つ粒子性金属酸化物材料を含む。ポリヒドロキシステアリン酸を含む変性表面は前記金属酸化物に自己分散性を与える。
【0009】
他の側面は、前記コーティングされた金属酸化物は、化粧品組成物などの組成物に取り込まれる。化粧品組成物は、日焼け止め、ファンデーション、プレスドパウダ、リップスティク、ブラッシュ、アイシャドウ又はマスカラなどの液体又はドライメイクアプなどが含まれる。さらに化粧品組成物は無水物又はエマルジョンが含まれる。
【0010】
又ここで、粒子性金属酸化物を自己分散性にするためのプロセスが開示される。該プロセスは、粒子性金属酸化物材料を準備し、ポリヒドロキシステアリン酸を含む粉末でコーティングすることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで開示される自己分散性粉末は有機分散剤でコーティングされた粒子性金属酸化物材料に関し、前記コーティングされた金属酸化物の製造方法及びそれを含む化粧品処方(フォーミュレーション)に関する。
【0012】
コーティングされた金属酸化物の自己分散性特性は、該粉末を化粧品産業における処方専門家(フォーミュレータ)にとって魅力的なものである。というのはどの分散剤が及び/又はどのように分散剤を使うかについて過度の考慮を要することなく該新規なコーティングされた粉末を広い範囲の応用に具体化することができるからである。さらにここで開示されるコーティングされた粉末は日常の化粧製品中で用いられる広い範囲の化粧品組成物に適するものである。制限されるものではないが、例えば、液体又は粉末メイクアップ、リップスティック、ネイルエナメル、アイシャドウ及びマスカラなどが挙げられる。
【0013】
適切な金属酸化物には、限定されるものではないが、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロム、金属酸化物又は金属酸化物と無機塩との複合体及びこれらの金属酸化物の組合せが挙げられる。金属酸化物は、球状又はボール状粒子(規則的又は不規則的多孔性表面を持つ)、針状、棒状、フレーク状、長斜方形状、結節状、針状、顆粒状、楕円状、六角形状、角柱状、星状、Y字状などを含む、全て望ましい、規則的又は不規則的形状を有することができる。
【0014】
本発明の自己分散性粉末に適用される粒子性金属酸化物の粒子サイズについては特に制限はない。前記金属酸化物には、ミクロ化粒子(即ちナノ粒子)又は色素グレード粒子が含まれ得る。好ましくは、ざらつき感を与えることから過大サイズの粒子を含まないことであり、またここで説明される本発明のプロセスを実行する上で望ましくない過小サイズの粒子も含まないことである。
【0015】
ここで使用する「ナノ粒子」及び「ミクロ化粒子」は交換可能に使用され、5%以上のナノ粒子を含む。ここでナノ粒子は約100nm未満のサイズを持つ。
【0016】
ここで使用される用語、色素グレード粒子とは、100nmよりも大きいサイズを持つ粒子である。
【0017】
ミクロ化金属酸化物は、球状又は顆粒状とした場合、一次粒子サイズが約5nmから約150nmである。粒子が針状とすると一次粒子サイズは約5nmから約50nmと約50nmから150nmであり得る。一次粒子サイズはTEMを用いて分析することができる。
【0018】
適切な有機物分散剤には、制限されるものではないが、置換カルボン酸、石けん系及びポリヒドロキシ酸が挙げられる。典型的分散剤の例は、リシノレイン酸、ヒドロキシステアリン酸、水素化キャスターオイル脂肪酸(これはさらに、12−ヒドロキシステアリン酸及び少量のステアリン酸とパリミチン酸を含む:753特許及びUS特許No.7、220、305)などに基づくものである。
【0019】
ひとつの実施態様において、有機分散剤はポリヒドロキシステアリン酸である。ポリヒドロキシステアリン酸はポリエステルの一種であり、例えばヒドロキシステアリン酸(例えば市販の12−ヒドロキシステアリン酸、9−又は10−ヒドロキシステアリン酸)を不活性有機溶剤(例えばトルエンやキシレンなど)中で160℃から200℃で加熱し、反応混合物からエステル化で生じる水を除去することで、得ることができる。
【0020】
ポリヒドロキシステアリン酸などの有機分散剤は金属酸化物のコーティング剤中に含まれる。前記コーティング剤は、ひとつ又はそれ以上の適切な溶媒中に前記有機分散剤を含む溶液であってよい。即ち、該有機溶媒は前記有機分散剤を溶解でき、金属酸化物に適用でき、かつ乾燥できるものである。有機分散剤がポリヒドロキシステアリン酸である場合、限定されるものではないが、有機溶媒として、イソプロピルアルコール、ヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、イソオクタン及びイソノナンなどが挙げられる。該溶媒はまた、該有機分散剤を溶解し、ポリヒドロキシステアリン酸を前記材料粉末表面上に分布促進し、容易に(場合により加熱により)乾燥できる、全ての溶媒であってよい。
【0021】
ひとつの実施態様において、前記有機分散剤は、有機媒体中で金属酸化物を自己分散性にする量で前記金属酸化物上に存在する。他の実施態様では、有機分散剤がPHSAであり、改良された接着特性を与えるために金属酸化物上に存在する。これにより色素が容易に濡れ、形成されるすべての凝集物が粉末状で又は液状で容易に破砕する。凝集は化粧品中では望ましくないことである。というのはそれにより過剰の油分を取り込むキャビティを形成するからだと考えられている。PHSAは1%PHSA組成物として適用され得る。
【0022】
自己分散性金属酸化物粉末を分散するための適切な有機液体媒体には、限定されるものではないが、エステル、オイル、炭化水素、アルキル変性シリコーン液体が挙げられる。限定されないが、例としてエステルにはジイソプロピルアジペート、イソプロピルミリステート及びブチルステアレートが挙げられ、オイルには、植物油及び鉱油が挙げられ、炭化水素にはイソドデカンが挙げられ、アルキル変性シリコーン流体にはカプリリルメチコン(例えばSilsolv034)が挙げられる。当業者は、他の多くのエステル、オイル、炭化水素及びアルキル変性シリコーン液体であって、ここで挙げたいくつかの例に加えて適切な分散媒体となるものが存在することは理解できるであろう。
【0023】
選択的追加コーティング
粒子状金属酸化物は、実質的に金属酸化物のみからであってよいが、ひとつの実施態様では、金属酸化物粒子は前記有機分散剤を含むコーティング剤に加えて無機コーティングを含むことができる。例えば、金属酸化物粒子は、アルミニウム、ジルコニウム又は珪素又はそれらの混合物などの他の元素の酸化物でコーティングされてもよい(例えば GB−2205088−Aで開示されるアルミナ又はシリカであり、ここで開示される内容は参照されて本明細書の一部となる)。無機コーティングの好ましい量は、粒子状金属酸化物の重量に対する重量%で、2%から25%、より好ましくは4%から20%、特に好ましくは6%から15%、特に8%から12%である。無機コーティングは当該技術分野で知られる方法で適用され得る。典型的プロセスには、前記無機コーティングを形成する酸化物の無機金属元素の可溶性塩の存在下で金属酸化物粒子の水溶性分散物を形成することを含む。この分散物は通常酸性又は塩基性であり、選択された塩の性質に依存する。さらに該無機酸化物の沈殿を、該水溶液中に酸又はアルカリを適宜添加してpHを調節することで達成できる。
【0024】
無機コーティイングがある場合には、金属酸化物の第一の層として適用されることが好ましい。組コーティングに加えて粒子性金属酸化物は前記無機コーティングへ適用される疎水性コーティングを含み得る。疎水性コーティング剤は、例えば、シリコーン、シラン、金属石けん、チタネート、有機ワックス及びこれらの混合物が挙げられる。疎水性コーティング剤にはまた、脂肪酸、例えば10から20の炭素数を含む脂肪酸(例えばラウリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸など)及びこれらの脂肪酸の塩が含まれる。脂肪酸はイソプロピルチタニウムトリイソステアレートであり得る。シリコーンについては疎水性コーティング剤にはメチコン、ジメチコン、それらのポリマー又はそれらの混合物が挙げられる。シリコーンにはまた、有機シリコーン化合物、例えばジメチルポリシロキサン(主鎖に−MeSiO−単位を持ち、Meはメチル基、CHを表す)、メチル水素ポリシロキサン(主鎖に−MeHSiO−単位を持つ)及び式ROSiH(4−n)で表されるアルコキシシラン(Rはアルキル基、nは整数1、2又は3を表す)が挙げられる。シランについては、疎水性コーティング剤には、アルコキシシラン、例えばアルコキシトリエトキシ又はアルキルトリメトキシシラン(OSI Specialities又はPCRから入手可能)が挙げられる。アルコキシシランには、トリエトキシカプリルイルシラン又はパーフルオロアルキルエチルトリエトキシシラン(直鎖又は分岐のC3からC12のアルキル基を持つ)が挙げられる。かかるアルコキシシランの一つはDegussaAGから入手可能なDynasylan(R)OCTEOが挙げられる。金属石けんについては、疎水性コーティングには、金属ミルステート、金属ステアレート、金属パルミテート、金属ラウリレート又は当業者に知られた他の脂肪酸誘導体が挙げられる。金属には例えば、マグネシウム又はアルミニウムが挙げられる。チタネートについては、疎水性コーティイング剤には、有機チタネート(Mitchell SchlossmanのUS特許No.4、877、604(以下、「Schlossman’604」とする)に開示され、この内容は参照されて本明細書の一部となる)が挙げられる。Schlossman’604にはひとつの好ましいコーティング剤としてイソプロピルチタニウムトリイソステアレートが開示されている。有機ワックスについては、疎水性コーティング剤には、ポリエチレンなどの合成ワックス又はカルナウバワックスなどの天然ワックスが挙げられる。
【0025】
適用される疎水性コーティング剤に依存して適切な溶媒が必要となる。適切な非プロトン性溶媒は、官能性シラン又は他の珪素化合物に適用され得る。また望むならばシランは揮発性有機溶媒(例えばイソプロピルアルコール、ヘプタン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン及び石油蒸留物(例えばPhillips Chemicalの商品名Soltrol130、Soltrol150及びSoltrol170)などの溶媒に溶解させることができる。官能性シリコンの他の有用な溶媒は、イソパール溶媒である。イソパール溶媒は、イソパラフィン酸の高純度、分留部分的中和混合物を含む範囲の溶媒であり、種々のグレード(例えばC7−C8溶媒を含むイソパールC、イソパールE又はイソパールGなど)が利用可能である。水又はその他の溶媒もSchlossman’604に記載された有機チタネートに適用され得る。
【0026】
疎水性コーティングは、全ての従来技術により行うことができる。典型的には、金属酸化物粒子が水に分散され約50℃から約80℃に加熱される。例えば脂肪酸は、該脂肪酸の塩(例えばステアリン酸ナトリウムなど)を分散物に添加してその後酸を添加することで、金属酸化物粒子上に堆積させる。又は、金属酸化物コア粒子を、有機溶媒中で撥水材料の溶液と混合しその後溶媒を蒸発させることができる。一般的に、粒子は、金属酸化物コア粒子に対して重量%で計算された有機材料の25%まで、より好ましくは3%から20%の範囲、好ましくは6%から17%の範囲、特に好ましくは10%から25%の範囲で、処理されることができる。
【0027】
該無機コーティングがなく該疎水性コーティングが存在する場合、該疎水性コーティングは好ましくは第一層として該粒子性金属酸化物に適用される。無機及び有機コーティングは種々の量で存在することが可能であり、US特許No.7、220、305に開示されており、この内容は参照されて本明細書の一部となる。
【0028】
有機分散剤コーティングプロセス
有機分散剤コーティング剤は金属酸化物粒子又は粉末に、当業者に知られた種々の技術を用いて適用することができる。金属酸化物は適切なコーティング剤を液体媒体中で処理することができ、例えば、コーティング剤を粉末と混合する又はコーティング剤を粉末上にスプレーすることにより処理することができる。他の方法には、金属酸化物及び有機分剤のスラリを調製することが挙げられる。
【0029】
続いてコーティングされた粉末は加熱により溶媒を除去して乾燥される(場合により溶媒が揮発性である場合真空下で除去されてもよい)。混合物は約30℃から150℃へ加熱されて溶媒を除いて乾燥される。他の適切な時間及び温度については、当業者であれば、適用された材料を考慮して過度の実験を行うことなく決めることができるであろう。
【0030】
コーティングされた金属酸化物粉末が乾燥された後、該粉末は、例えばジェットミル、ハンマミル又は他の適切なミルなどを用いて粉砕されるか粉末化される。
処理された粉末はその後溶媒を除去するためにさらに約1から10時間、約30℃から約150℃で加熱され乾燥され得る。ここで開示された全ての実施態様について、本プロセスはまた、全ての凝集体又は過大サイズのコーティング粉末を処理ためにミリングすることを含む。
【0031】
好ましくは、金属酸化物を有機分散剤と処理するために適用される反応物及び反応条件は、金属酸化物と有機分散剤とを処理することで、金属酸化物、水酸化物、炭酸塩、シリケート又は他の該粒子表面上の反応性基との間で共有結合を形成させるように選択される。しかし、イオン結合、水素結合又はファンデルワールス結合が、共有結合に加えて又は代えて、該コーティング剤と材料粉末粒子間に十分満足できる結合を与えることもできる。コーティング剤は、例えば、コーティングされる化粧品粉末の表面に存在するヒドロキシ基、オキシド基、利用可能な酸素原子又は他の適切な反応性基と反応することができる。
【0032】
分散物
他の側面において、有機分散剤を持つ自己分散性金属酸化物粉末は、分散媒体に添加されて金属酸化物のスラリ又は好ましくは液体分散物を形成することができる。該分散媒体は上で説明された全ての適切な水性又は有機液体媒体であり得る。液体分散物とは真性の分散物を意味し、固体粒子が凝集に対し安定であることを意味する。該分散物中の粒子は比較的に均一に分散され、静置状態での沈殿生成に抵抗性がある。しかしいくらかの沈殿が生成したとしても、かき混ぜるだけで粒子が容易に再分散される。
【0033】
ひとつの実施態様において、C12〜C15アルコールベンゾエートが、実験用ミキサ、例えばHockeyer Lab mixerで、約800から1000rpmで混合しておき、そこに処理されたミクロTiOをゆっくりと添加した。全てのTiO粉末が添加されと、混合速度を例えば約1500rpmへ増加させた。
C12〜C15アルコールベンゾエート中のTiO分散物が得られる。ひとつの実施態様において、0.5kgの処理されたTiO(一次粒子が約15x80nm)を1kgのフィンゾルブ(Finsolv)TN(C12〜C15アルコールベンゾエートであり、Finetex、Incから入手可能)中で該実験用ミキサを用いて分散させた(ミクロTiOの40%分散物が得られることに対応する)。この方法は金属酸化物の分散物を得るための適切な方法の例であり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0034】
自己分散性粉末を含む組成物
他の側面において、ここで説明されたコーティング粉末及び/又は分散物の全ては、化粧品組成物に含まれ得る。化粧品組成物は無水であってもエマルジョンであってもよい。本粉末が適用され得る化粧品組成物の例としては、ファンデーション又はプレスドパウダ、リップスティック、ブラッシュ、アイシャドウ及びマスカラなどの液体又はドライメイクアップが挙げられる。コーティング金属酸化物は、化粧品組成物において次の利点を持つ。即ち該粉末は有機液体媒体(例えば、エステル、オイル及び炭化水素など)及び変性シリコーン液体中で自己分散性であり、強化された分散性を有する点である。さらに該金属酸化物を、UV減衰剤などの組成物中で用いる場合において、可視光に対して透明であり皮膚の白化を抑制する、という点で利点を持つ。
【0035】
又は、粒子性金属酸化物は、固体及び/又は準固体分散物のローション又はクリームの形で含むことができる。適切な固体又は準固体分散物は、ここで開示されたひとつ又はそれ以上の有機液体媒体と共に、本発明の粒子性金属酸化物の重量で例えば50%から90%、好ましくは60%から85%を含むことができる。
【0036】
本発明の粒子性金属酸化物及び分散物は、日焼け止め組成物、特にエマルジョンの形で調製するための成分として有用である。該エマルジョンは油中水、水中油又は水中シリコーンエマルジョンであり得る。分散物はさらに意図する応用に使用される従来の添加物をさらに含むことができる。例えば日焼け止めにこれまで使用されてきた化粧品成分が挙げられる。本金属酸化物はUV光を減衰させることから、日焼け止め組成物は、有機材料などの他の日焼け止め剤を含むことができる。適切な有機日焼け止め剤には、限定されるものではないが、p−メトキシシナミン酸エステル、サリチル酸エステル、p−アミノ安息香酸エステル、非−スルホン化ベンゾフェノン誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体及び2−シアノアルキル酸エステルが挙げられる。具体的な有機日やけ止剤には、ベンゾフェノン−1、ベンゾフェノン−2、ベンゾフェノン−3、ネンゾフェノン−6、ベンゾフェノン−8、ベンゾフェノン−12、イソプロピルベンゾイルメタン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルジヒドロキシプロピルPABA、グリセリルPABA、オクチルジメチルPABA、オクチルメトキシシンナメート、ホモサレート、オクチルサリチレート、オクチルトリアゾン、オクトクリレン、エトクリレン、メンチルアンスラニレート及び4−メチルベンジリデンカンファが挙げられる。このような有用なコーティング粉末から利点を受ける多くの他の製品は当業者に知られている。例えばコーティング粉末は、該粒子性材料が慣例的に使用され、疎水性又は疎油性性質が利点である例えば塗料、コーティング及びプラスチックなどの他の工業製品に使用され得る。
【0037】
実施例1
自己分散性粒子性金属酸化物を、表1に列記した順でコーティングを調製した。
【0038】
【表1】

表1に開示されたコーティング金属酸化物は次のように調製した。
【0039】
一工程方法
1gのポリヒドロキシステアリン及び2gのトリエトキシシランをイソプロピルアルコールに溶解した。得られた溶液を100gの二酸化チタン(TipaquePF−671、Kobo Productsから入手可能)と混合した。混合物を加熱して溶媒を除き、さらに100℃で3時間加熱して粉末を乾燥させた。乾燥粉末はその後ミリングして大きな固まりを除いた。
【0040】
また、表1のコーティング金属酸化物は次のように調製した:
二工程方法:
2gのトリエトキシシランをイソプロピルアルコールに溶解した。得られた溶液に100gの二酸化チタン(TipaquePF−671、Kobo Productsから入手可能)を混合した。混合物を加熱して溶媒を除去し、さらに100℃で3時間加熱して粉末を乾燥した。乾燥粉末をミリングして大きな固まりを除去した。3gのイソプロピルアルコール中の1gのポリヒドロキシステアリン酸溶液を前記乾燥粉末にスプレーした。粉末を100℃で加熱した。乾燥粉末をその後粉砕処理して大きな固まりを除去した。
【0041】
実施例2
実施例1のコーティング金属酸化物を用いて分散物を調製した。
【0042】
1kgのFinsolv TN、C12〜C15アルコール安息香酸エステルを1ガロン容器に入れHockeyerLabミキサで混合した。混合速度は約800〜1000ppmであった。混合しつつ、2.33kgの実施例1の処理TiOをゆっくりと加えた。全ての粉末を添加した後、混合速度を1500rpmに上げ15分間続行した。70%分散物液が得られた。
【0043】
ここで開示された金属酸化物の自己分散性コーティング材料分散物を含む全ての組成物は、少なくともひとつの助剤を含むことができる。例えば限定されるものではないが、緩衝液(中和剤又はpH調節剤)、乳化剤、界面活性剤、希釈剤、アジュバント、保存剤及び/又は電解質などが挙げられる。
実施例3
本発明によれば、本発明によるコーティング金属酸化物はコンパクトパウダの製造有用であることが見いだされた。特に、コンパクトパウダは表2の成分である処方Aを用いて調製した。
【0044】
【表2】

パート1の成分を粉末化装置を用いて色が十分広がるまでブレンドした。粉末化装置を使用してブレンドしつつパート2の鉱油をその後添加し、得られる混合鬱を十分にブレンドした。混合物をその後、通常のコンパクトパウダ製造装置を用いて250psiで圧縮した。処方Aの金属酸化物は疎水性コーティングのみがされたものである。
実施例4
処方B成分を用いて第二のコンパクトパウダを表3に示される処方により調製した。
【0045】
【表3】

パート1の成分を色が十分広がるまで粉末化装置を用いてブレンドした。パート2の鉱油を添加し、粉末装置を使用しつつ得られる混合物を十分ブレンドする。その後混合物を通常のコンパクトパウダ製造装置を用いて250psiで圧縮した。処方Aの金属酸化物は疎水性コーティングのみがなされている。
【0046】
処方Aのコンパクト色素の金属酸化物と対照的に、処方Bのコンパクトの金属酸化物色素は、前記疎水性処理の上に堆積させたポリヒドロキシステアリン酸を含む。
【0047】
実施例3及び4による処方A及びBを用いて製造された製品のそれぞれにつき、硬表面上12インチで落下させて落下試験を行った。結果を表4にまとめる。
【0048】
【表4】

表4から、本発明のコーティング方法を用いることで、顕著に機械的安定性が付与されることが分かる。より具体的には、3回の試験で、処方Aではある場合には破壊するために2度落とさなければならなかったが、他の2回の試験では1回の落下で破壊された。対照的に処方Bは破壊するためには、ある場合には4回落下させなければならなかった。残りの2回の試験では2回落とさなければならなかった。このことは、本発明の方法は、破壊に対する抵抗性を顕著に増すことが示される。
【0049】
落下試験結果はまた、PHSAコーティングが、該粉末の圧縮性を非常に改良することを示す。このことは、液体バインダの必要量がより少なくてすみ、従って該粉末を皮膚に広げた際の感覚が、よりなめらかでかつよりべとつかない、ということを意味する。
【0050】
実施例5
他のコンパクト又はプレスドパウダ処方物が表5に示される。
【0051】
【表5】

手順
パート1の成分を色が十分広がるまで粉末化措置でブレンドした。パート2のジメチコンをその後添加し、混合物が十分混合されるまでブレンドした。混合物を従来のコンパクトパウダ製造装置を用いて250psiで圧縮した。
【0052】
表5の、処理セリサイト、処理タルクN、及びTiOの「処理」は次の処理を含む:
処理A:イソプロピルチタニウムトリイソステアレート処理、
処理B:トリエトキシカプリルイルシラン処理、
又は処理C:ポリヒドロキシステアリン酸及びトリエトキシカプリルイルシラン処理。
【0053】
処理は実施例1の手順を用いて適用される。
【0054】
3種類の異なるコンパクトパウダを実施例5の手順で形成した。第一のコンパkトパウダは処理Aを、第二のコンパクトパウダは処理Bおよび第三のコンパクトパウダは処理Cを、セライト、タルクN及びTiOに処理する。落下試験をこれらのパウダにつき実施した。落下試験の結果を表6にまとめた。
【0055】
【表6】

表6から、本発明の方法を用いることで顕著な機械的安定性が付与されることが分かる。より具体的には、トリエトキシカプリルイルシラン及びポリヒドロキシステアリン酸で処理された組成物の成分を持つパウダは、より高い平均落下数を持ち、試験されたパウダの中では最も高い耐衝撃性であることが示された。試験結果は、本発明は破壊に対する抵抗を強化することを示す。
【0056】
例示的実施態様がこれまで記載されたが、種々の変更例については当業者には明らかであることはもちろん理解されるべきである。多くのそのような変更例は、以下の特許請求の範囲内のものとして含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であり、前記組成物は:金属酸化物を含む材料、前記材料にコーティングする材料であって有機分散剤を含む材料を含み、前記有機分散剤が前記コーティングされた材料が自己分散性となる量で存在する、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であり、前記有機分散剤が、置換カルボン酸、石けん基剤、ポリヒドロキシ酸及びこれらの組合せを含む群から選択される、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物であり、前記有機分散剤が、リシノレイン酸、ヒドロキシステアリン酸又は水素化キャスターオイル脂肪酸である、組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物であって、前記有機分散剤がポリヒドロキシステアリン酸である、組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であり、前記金属酸化物粒子が、ミクロ化又は色素化レード粒子である、組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物であり、前記金属酸化物粒子が、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化セリウム、金属酸化物複合体及び金属酸化物及び無機塩との複合体を含む群から選択される、組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物であり、前記コーティングされた材料が有機媒体中で自己分散性である、組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物であり、さらに無機コーティングを含む、組成物。
【請求項9】
請求項8の組成物であり、前記無機コーティングが、前記材料及び前記有機分散剤を含む前記コーティングとの間にある、組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物であり、前記コーティング剤が、アルミニウム、ジルコニウム、シリコンの酸化物及びこれらの混合物を含む群から選択される酸化物を含む、組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物であり、さらに疎水性コーティングを含む、組成物。
【請求項12】
請求項11の組成物であり、前記疎水性コーティングが、前記材料と前記有機分散剤を含む前記コーティングの間にある、組成物。
【請求項13】
請求項11に記載の組成物であり、前記疎水性コーティングが、シリコーン、シラン、金属石けん、チタネート、有機ワックス、脂肪酸及びこれらの組合せを含む群から選択される疎水性コーティングを含む、組成物。
【請求項14】
請求項12の組成物であり、前記疎水性コーティングがトリエトキシカプリルイルシランを含み、及び前記有機分散剤がポリヒドロキシステアリン酸を含む、組成物。
【請求項15】
請求項12の組成物であり、さらに、前記材料及び前記疎水性コーティングの間に請求項9に記載の前記無機コーティングを含む、組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物であり、さらに、前記コーティングされた材料を分散する分散媒体を含む、組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の組成物であり、前記分散媒体が、エステル、オイル、炭化水素、アルキル変性シリコンーン液及びこれらの組合せから選択される、組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物であり、前記コーティングされた材料が、化粧品組成物に含まれる、組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の組成物であり、前記化粧品組成物が日焼け止めである、組成物。
【請求項20】
請求項18に記載の組成物であり、さらに生体適合性賦形剤を含む、組成物。
【請求項21】
請求項16に記載の組成物であり、前記分散性コーティングされた材料が化粧組成物に含まれる、組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の組成物であり、前記化粧品組成物が日焼け止めである、組成物。
【請求項23】
請求項21の組成物であり、さらに生体適合性賦形剤を含む、組成物。
【請求項24】
プロセスであり、前記プロセスが:粒子性金属酸化物を準備し;及び前記粒子性酸化物を有機分散剤を含む組成物でコーティングし;前記プロセスが、前記コーティングされた粒子性金属酸化物を自己分散性にする、プロセス。
【請求項25】
請求項24に記載のプロセスであり、さらに前記コーティングされた粒子性金属酸化物を乾燥し、及び場合により前記乾燥したコーティングされた粒子性金属酸化物を粉砕する、プロセス。
【請求項26】
請求項24に記載のプロセスであり、前記粒子性金属酸化物材料が、ミクロ化粒子又は色素グレード粒子である、プロセス。
【請求項27】
請求項26のプロセスであり、前記粒子性金属酸化物が、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化セリウム、金属酸化物複合体及び金属酸化物と無機塩との複合体を含む群から選択される、プロセス。
【請求項28】
請求項24に記載のプロセスであり、前記有機分散剤が、置換カルボン酸、石けん基剤、ポリヒドロキシ酸及びこれらの組合せを含む群から選択される、プロセス。
【請求項29】
請求項28に記載のプロセスであり、前記有機分散剤が、リシリノレイン酸、ヒドロキシステアリン酸又は水素化キャスターオイル脂肪酸である、プロセス。
【請求項30】
請求項29のプロセスであり、前記有機分散剤がポリヒドロキシステアリン酸である、プロセス。
【請求項31】
請求項24に記載の組成物であり、さらに無機コーティングを含む、組成物。
【請求項32】
請求項31に記載の組成物であり、前記無機コーティングが、前記材料及び前記有機分散剤を含む前記コーティング剤の間にある、組成物。
【請求項33】
請求項32の組成物であり、前記無機コーティングが、アルミニウム、ジルコニウムシリコンの酸化物及びこれらの混合物を含む群から選択された酸化物を含む、組成物。
【請求項34】
請求項24に記載のプロセスであり、さらに前記粒子性金属酸化物を疎水性コーティングすることを含む、プロセス。
【請求項35】
請求項34に記載のプロセスであり、前記疎水性コーティングが、前記粒子性金属酸化物に、前記有機分散剤を含むコーティングの前にコーティングされる、プロセス。
【請求項36】
請求項34のプロセスであり、前記疎水性コーティングが、シリコーン、シラン、金属せっけん、チタネート、有機ワックス、脂肪酸及びこれらの組合せを含む群から選択される疎水性コーティングを含む、プロセス。
【請求項37】
請求項35に記載のプロセスであり、前記疎水性コーティングがトリエトキシカプリルイルシラン及び前記有機分散剤がポリヒドロキシステアリン酸を含む、プロセス。
【請求項38】
請求項35に記載のプロセスであり、さらに前記粒子性金属酸化物を請求項35に記載の前記無機コーティングを、前記疎水性コーティング剤を含む前記コーティングを行う前にコーティングする、プロセス。
【請求項39】
請求項34に記載のプロセスであり、さらに、前記コーティングされた粒子性金属酸化物を分散媒体と混合することを含む、プロセス。
【請求項40】
請求項39のプロセスであり、前記分散媒体が、エステル、オイル、炭化水素、アルキル変性シリコーン液及びこれらの組合せから選択される、プロセス。
【請求項41】
請求項24のプロセスにより調製されたコーティングされた粒子性金属酸化物。
【請求項42】
請求項24に記載のプロセスにより調製されたコーティングされた粒子性金属酸化物を含む、化粧品組成物。

【公表番号】特表2012−521442(P2012−521442A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502165(P2012−502165)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/028333
【国際公開番号】WO2010/111279
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(510270764)コボ プロダクツ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】