説明

自律分散周波数割当方法

【課題】隠れ端末問題を回避するための周波数割当の拘束条件を規定し、使用可能周波数で割当可能なネットワークにおいても、割当不能なネットワークにおいても、周波数割当の拘束条件を満たさないリンク数を低減する自律分散周波数割当方法を提供する。
【解決手段】対象リンクの設定周波数として、使用可能周波数中に周波数割当の拘束条件を満たす周波数が存在するかどうかを判定し(ステップS205)、使用可能周波数中に拘束条件を満たす周波数が存在する場合に、拘束条件を満たす周波数を対象リンクに設定し(ステップS208)、使用可能周波数全てで拘束条件を満たす周波数が存在しない場合に、使用可能周波数毎に拘束条件を満たさないリンクの数を算出し(ステップS206)、NGリンク数を最小とする周波数を対象リンクに設定する(ステップS204)ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波数が使用可能な無線ネットワークシステムにおいて、通信可能な無線局間で形成されるリンクの周波数を自律分散で割り当てる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9、は無線ネットワークのシステム構成例を示す図である。本システムでは、複数の周波数が使用可能であり、2つの無線局間で形成するリンク毎に異なる周波数が設定可能であるとする。
本システムでは、各無線局の通信範囲(干渉範囲)が隣接する無線局となるように5つの無線局が配置されている。通信リンクは、無線局同士が通信可能であるときに形成されるため、図9おいては、無線局1と無線局2の間のリンクL1、無線局2と無線局3の間のリンクL2、無線局3と無線局4の間のリンクL3、無線局4と無線局5の間のリンクL5の合計4つのリンクが形成される。なお、通信範囲外の無線局との通信は、通信可能な無線局を中継局とすることで実現する。無線局1と無線局5の通信は、各リンクの周波数は、使用可能周波数が与えられた時、周波数割当を行うリンクの近隣リンクの設定周波数から自律分散で決定される。
【0003】
図10は、従来の自律分散周波数割当の処理を示すフローチャートである。各無線局では、使用可能周波数を設定周波数候補(ステップS101)とし、設定周波数候補の周波数全てを送信時を除いて常にモニタリングし(ステップS102)、周波数毎に受信信号レベルの総計値を記憶し、該総計値が閾値以上である場合にはその周波数はBusyであるため「No」と判定し、閾値未満である場合にはその周波数はIdleであるため「Yes」と判定する(ステップS103)。送信するデータを有する無線局は、Idleと判定された周波数が存在する場合、その周波数を設定周波数とし、その周波数を使用してデータ送信を行う(ステップS104)。一方、Idleである設定周波数がない、すなわち、設定周波数が選択できない場合は、Idleとなる周波数が存在するまで設定周波数候補の周波数のモニタリングを行う。
【非特許文献1】Nasipuri,A.、Zhuang,J.、Das,S.R.、“A multichannel CSMA MAC protocol for multihop wireless networks”、Wireless Communications and Networking Conference, 1999. WCNC. 1999 IEEE、21-24 Sept.1999、pp1402-1406
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9のシステム構成において、無線局5から無線局1へのデータ送信を行う場合を考える。このとき、各無線局の通信範囲及びキャリアスキャン範囲を隣の無線局までとする。
無線局5からのデータは無線局4、3、2の順で転送される。使用可能周波数をチャネル1とチャネル2の2チャネルとすると、リンクL4で最初に通信が生じるので、このリンクにチャネル1が割り当てられる。この時、無線局4では無線局5からのデータを受信するので、チャネル1がBusyであると判定し、無線局4から無線局3への送信(リンクL3)に関しては、Idleであるチャネル2が割り当てられる。同様に、無線局3では無線局4からのデータを受信するため、チャネル2がBusyとみなされ、無線局3から無線局2への送信(リンクL2)にチャネル1が割り当てられることになる。このとき、無線局3から無線局2ヘチャネル1を用いたデータ送信が行われている時に、無線局5から無線局4への送信がチャネル1により行われると、データ同士が無線局4において衝突することになる。これは、無線局3と無線局5においては、お互いに相手局のデータ送信をモニタリングできないため、リンクL2とリンクL4で同一チャネルを使用することになり、双方が隠れ端末となる。
隠れ端末が存在する場合、上記のように、データ同士の衝突が発生し、スループットが劣化するという問題(隠れ端末問題)がある。
【0005】
図9のシステム構成において、周波数割当の拘束条件を次隣接リンクと同じ周波数を用いないとすることで従来方法での隠れ端末問題を回避できる。本ネットワーク構成においては、周波数割当の拘束条件を満たすために必要な周波数の数は2である。使用可能周波数をチャネル1とチャネル2の2チャネルとすると、リンクL1とリンクL2にチャネル1(または、チャネル2)を、リンクL3とリンクL4にチャネル2(または、チャネル1)を割り当てる周波数配置で拘束条件は満たせる。このとき、上記従来方法で隠れ端末となっていた無線局3と無線局5が各々形成するリンクL2とリンクL4は異なる周波数に設定されるため、双方からのデータ送信が衝突することはなく、双方のリンクは同時に通信可能となるため、従来方法に比べて、スループットの改善が期待できる。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、隠れ端末問題を回避するための周波数割当の拘束条件を規定し、使用可能周波数で割当可能なネットワークにおいても、割当不能なネットワークにおいても、周波数割当の拘束条件を満たさないリンク数を低減する自律分散周波数割当方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、使用可能周波数と、周波数割当の拘束条件と、対象リンクの近隣リンクの設定周波数から対象リンクの周波数を決定する自律分散周波数割当方法であって、対象リンクの設定周波数として、使用可能周波数中に周波数割当の拘束条件を満たす周波数が存在するかどうかを判定し、使用可能周波数中に拘束条件を満たす周波数が存在する場合に、拘束条件を満たす周波数を対象リンクに設定し、使用可能周波数全てで拘束条件を満たす周波数が存在しない場合に、使用可能周波数毎に拘束条件を満たさないリンクであるNGリンクの数を算出し、NGリンク数を最小とする周波数を対象リンクに設定することを特徴とする自律分散周波数割当方法である。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、使用可能周波数と、周波数割当の拘束条件と、対象リンクの近隣リンクの設定周波数から対象リンクの周波数を決定する自律分散周波数割当方法であって、使用可能周波数を末設定周波数の初期値とし、対象リンクの設定周波数として、使用可能周波数中に周波数割当の拘束条件を満たす周波数が存在するかどうかを判定し、対象リンクの近隣リンクでの設定周波数を参照周波数配置として記憶し、近隣リンクの参照周波数配置と現周波数配置の比較を行い、参照周波数配置からの変更リンク数に対する閾値を有し、該変更リンク数と該閾値の比較を行い、対象リンクが周波数割当の拘束条件を満たすリンクであるOKリンクである場合に、拘束条件を満たす周波数を対象リンクに設定し、対象リンクがNGリンクであり、かつ、上記記載の周波数配置比較の結果、周波数配置が一致する場合に、局所解への収束状態とみなし、末設定周波数リスト中でNGリンク数を最小とする周波数を対象リンクに設定し、設定周波数を末設定周波数リストから除外し、対象リンクがNGリンクであり、かつ、上記記載の周波数配置比較の結果、周波数配置が一致せず、かつ、局所解への収束状態でない場合に、現周波数配置を参照周波数配置として記憶し、未設定周波数リスト中でNGリンク数を最小とする周波数を対象リンクに設定し、対象リンクがNGリンクであり、かつ、上記記載の周波数配置比較の結果、周波数配置が一致せず、かつ、局所解への収束状態であり、かつ、参照周波数配置からの変更リンク数が閾値より大である場合に、局所解への収束状態でないとみなし、現周波数配置を参照周波数配置として記憶し、未設定周波数リストを使用可能周波数で更新し、未設定周波数リスト中でNGリンク数を最小とする周波数を対象リンクに設定し、対象リンクがNGリンクであり、かつ、上記記載の周波数配置比較の結果、周波数配置が一致せず、かつ、局所解への収束状態であり、かつ、参照周波数配置からの変更リンク数が閾値以内である場合に、未設定周波数リスト中でNGリンク数を最小とする周波数を対象リンクに設定し、設定周波数を未設定周波数リストから除外することを特徴とする自律分散周波数割当方法である。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、使用可能周波数と周波数割当の拘束条件と対象リンクの近隣リンクの設定周波数から対象リンクの周波数を決定する自律分散周波数割当方法において、対象リンクの設定周波数として使用可能周波数中に周波数割当の拘束条件を満たす周波数が存在するかどうかを判定し、対象リンクがOKリンクである場合は、拘束条件を満たす周波数を対象リンクに設定し、対象リンクがNGリンクである場合は、対象リンクの周波数変更範囲から周波数変更リンクを選択し、対象リンクと変更リンクでは使用可能周波数内で取りうる全ての周波数配置パターンを導出し、対象リンクと変更リンクの各周波数配置パターンと近隣リンクで対象リンクにも変更リンクにも属さないリンクを現設定周波数で配置した周波数パターンとを結合することで近隣リンクの各周波数配置パターンを作成し、近隣リンクの各周波数配置パターン内でのNGリンク数を計算し、NGリンク数が最小となる近隣リンクの周波数配置パターンの対象リンクに相当する周波数を設定することを特徴とする自律分散周波数割当方法である。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、使用可能周波数と周波数割当の拘束条件と対象リンクの近隣リンクの設定周波数から対象リンクの周波数を決定する自律分散周波数割当方法において、対象リンクの設定周波数として対象リンクの周波数変更範囲から周波数変更リンクを選択し、対象リンクと変更リンクでは使用可能周波数内で取りうる全ての周波数配置パターンを導出し、対象リンクと変更リンクの各周波数配置パターンと近隣リンクで対象リンクにも変更リンクにも属さないリンクを現設定周波数で配置した周波数パターンとを結合することで近隣リンクの各周波数配置パターンを作成し、近隣リンクの各周波数配置パターン内でのNGリンク数を計算し、NGリンク数が最小となる近隣リンクの周波数配置パターンの対象リンクに相当する周波数を設定することを特徴とする自律分散周波数割当方法である。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、対象リンクの割当周波数は次隣接リンクの設定周波数と異なる周波数であることを周波数割当の拘束条件とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、対象リンクを形成する第1及び第2の無線局と、対象リンクの次隣接リンクを形成する第3及び第4の無線局について、第1及び第3の無線局、第2及び第4の無線局で形成するリンクが対象リンクの隣接リンクであるか、または、第1及び第4の無線局、第2及び第3の無線局で形成するリンクが対象リンクの隣接リンクであるときに、第3及び第4の無線局で形成するリンクを対象リンクの次隣接リンクとみなさず隣接リンクとみなし、対象リンクの割当周波数は次隣接リンクの設定周波数とは異なる周波数であることを周波数割当の拘束条件とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクが同一の周波数であり、かつ、対象リンクの隣接リンクと対象リンクの次々隣接リンクの周波数が異なる場合に、対象リンクの割当周波数は次々隣接リンクと同一の周波数であることを周波数割当の拘束条件とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、対象リンクの割当周波数は次々隣接リンクの設定周波数とは異なる周波数であることを周波数割当の拘束条件とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0015】
また、請求項9に記載の発明は、対象リンクの割当周波数は次々隣接リンクの設定周波数とは異なる周波数であること、または、対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクが同一の周波数であり、かつ、対象リンクの隣接リンクと対象リンクの次々隣接リンクの周波数が異なる場合に、対象リンクの割当周波数は次々隣接リンクと同一の周波数であることを周波数割当の拘束条件とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0016】
また、請求項10に記載の発明は、対象リンクの次隣接リンクを周波数変更範囲とすることを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0017】
また、請求項11に記載の発明は、対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクを周波数変更範囲とすることを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0018】
また、請求項12に記載の発明は、対象リンクの次々隣接リンクを周波数変更範囲とすることを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0019】
また、請求項13に記載の発明は、対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクと次々隣接リンクを周波数変更範囲とすることを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0020】
また、請求項14に記載の発明は、請求項10または11のいずれかに記載の周波数変更範囲を使用し、対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクを近隣リンクとすることを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0021】
また、請求項15に記載の発明は、請求項10〜13のいずれかの項に記載の周波数変更範囲を使用し、対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクと隣接リンクの次隣接リンクを近隣リンクとすることを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0022】
また、請求項16に記載の発明は、請求項5〜9のいずれかの項に記載の周波数配置の拘束条件を使用し、請求項14または15のいずれかに記載の周波数変更範囲と近隣リンクを使用し、周波数変更範囲内のNGリンクを周波数変更リンクとして選択することを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0023】
また、請求項17に記載の発明は、請求項5〜9のいずれかの項に記載の周波数配置の拘束条件を使用し、請求項14または15のいずれかに記載の周波数変更範囲と近隣リンクを使用し、周波数変更範囲内のNGリンクとその設定周波数を記憶し、前回処理時のNGリンクと現NGリンクをリンク位置と周波数で比較し、比較が一致する場合に、対象リンクのOKリンクを周波数変更リンクとして選択し、比較が―致しない場合に、周波数変更範囲内のNGリンクを周波数変更リンクとして選択することを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0024】
また、請求項18に記載の発明は、請求項5〜9のいずれかの項に記載の周波数配置の拘束条件を使用し、
請求項14または15のいずれかに記載の周波数変更範囲と近隣エリアを使用し、周波数変更範囲内のNGリンクとその設定周波数を記憶し、前回処理時のNGリンクと現NGリンクをリンク位置と周波数で比較し、比較が一致し、かつ、対象リンクがNGリンクである場合に、対象リンクのOKリンクを周波数変更リンクとして選択し、比較が一致しない、または、対象リンクがOKリンクである場合に、周波数変更範囲内のNGリンクを周波数変更リンクとして選択することを特徴とする請求項4に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0025】
また、請求項19に記載の発明は、請求項5〜9のいずれかの項に記載の周波数配置の拘束条件を使用し、請求項14または15のいずれかに記載の周波数変更範囲と近隣エリアを使用し、周波数変更範囲内のNGリンクとその設定周波数を記憶し、前回処理時のNGリンクと現NGリンクをリンク位置と周波数で比較し、比較が一致し、かつ、近隣エリアにNGリンクが存在する場合に、対象リンクのOKリンクを周波数変更リンクとして選択し、比較が一致しない、または、近隣エリアにNGリンクが存在しない場合に、周波数変更範囲内のNGリンクを周波数変更リンクとして選択することを特徴とする請求項4に記載の自律分散周波数割当方法である。
【0026】
また、請求項20に記載の発明は、請求項5〜9のいずれかの項に記載の周波数配置の拘束条件を使用し、請求項14または15のいずれかに記載の周波数変更範囲と近隣エリアを使用し、周波数変更範囲内の全リンクを周波数変更リンクとして選択することを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、対象リンクの設定周波数として、使用可能周波数中に周波数割当の拘束条件を満たす周波数が存在するかどうかを判定し、存在する場合には拘束条件を満たす周波数を対象リンクに設定し、存在しない場合にはNGリンク数を最小とする周波数を対象リンクに設定するようにした。
これにより、拘束条件を満たす周波数が存在する場合だけでなく、存在しない場合についても複数の無線局間の通信状態を良好に保つことが可能となる。
また、本発明では、近隣リンクの設定周波数が変動するという仮定で、対象リンクの周波数変更範囲から周波数変更リンクを選択し、対象リンクと変更リンクでは、使用可能周波数内で取りうる全ての周波数配置パターンを導出し、対象リンクと変更リンクの各周波数配置パターンと近隣リンクのうちで対象リンクにも変更リンクにも属さないリンクを現設定周波数で配置した周波数配置パターンを結合することで近隣リンクの各周波数配置パターンを作成し、近隣リンクの各周波数パターン内でのNGリンク数を計算し、NGリンク数が最小となる近隣リンクの周波数配置パターンの対象リンクに相当する周波数を割当周波数とするため、近隣リンクの変動を考慮した上で最適な周波数を設定するようにした。
これにより、ネットワーク全体として、周波数割当の拘束条件を満たさないリンク数を更に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1(a)、(b)は、無線局を直線状に配置した場合を示す図である。図1(a)は、無線局の通信範囲を隣の無線局までとした場合、図1(b)は、無線局の通信範囲を隣の隣の無線局までとした場合に、無線局が形成するリンクの種別を示している。
無線局を基地局または無線端末とする。2つの無線局間で通信が可能であるとき、周波数割当を行う対象リンクを形成する無線局を対象無線局、対象無線局のどちらか一方と通信可能な無線局を隣接無線局とする。このとき、隣接リンクは、対象無線局と隣接無線局間で形成する通信可能なリンクである。また、次隣接リンクは、隣接無線局が対象無線局でない無線局との間で形成する通信可能なリンクである。次々隣接リンクは、隣接リンクの次隣接リンクである。
【0029】
無線局では、隣接無線局からのリンク情報により周辺リンクのリンク種別を特定し、該リンクの設定周波数を取得する。図2は、無線局の通信範囲を隣の無線局までとした場合に、無線局1でリンク1に対する次隣接リンクの特定例を示す図である。
リンク情報の送信元である無線局(対象無線局の隣接無線局)の隣接無線局とその隣接無線局とで形成されるリンクの設定周波数のペアをリンク情報とする。周波数割当を行う対象リンクをリンク1とする。このとき、対象リンクを形成する対象無線局は無線局1と無線局2である。無線局1では、隣接無線局が無線局4であるため、無線局4からリンク情報を取得する。無線局4のリンク情報は、無線局4の隣接無線局(隣接リンク)である無線局1、5、7(リンク2、6、7)とその設定周波数である。無線局1では、このリンク情報から隣接リンクをリンク2、次隣接リンクをリンク6と7とする。同様に、もう一つの対象無線局2では、隣接無線局3、5からリンク情報を取得する。無線局3のリンク情報から、リンク3を隣接リンク、リンク5を次隣接リンクとみなす。また、無線局5のリンク情報から、リンク4を隣接リンク、リンク6、8、9を次隣接リンクとみなす。以上より、対象リンクの次隣接リンクは、対象無線局の少なくともどちらか一方で次隣接リンクとみなされたリンクであることから、リンク5、6、7、8、9が次隣接リンクと特定される。
【0030】
ここでは、使用可能周波数と周波数割当の拘束条件がシステムパラメータとして与えられるものとする。また、周辺リンク、或いは、近隣リンクの設定周波数は、隣接局からリンク情報を取得し、作成する。
図3は、本発明の第1の実施形態による自律分散周波数割当方法の処理を示すフローチャートである。無線局では、使用可能周波数を設定周波数候補とし(ステップS201)、該候補から設定周波数を選択し(ステップS202)、設定周波数が存在するかどうかを判定する(ステップS203)。設定周波数が存在する場合には、設定周波数が周波数割当の拘束条件を満たすかどうかを判定し(ステップS205)、該拘束条件を満たす場合に、割当周波数を該設定周波数とする(ステップS208)。該拘束条件を満たさない場合に、該設定周波数と該拘束条件を満たさないリンク数を記憶し(ステップS206)、該設定周波数を設定周波数候補から除外し(ステップS207)、再度、設定周波数の選択を実施する。設定周波数の選択ができない、すなわち、設定周波数候補がない場合には、該拘束条件を満たさないリンク数を最小とする周波数を割当周波数とする(ステップS204)。対象リンクを形成する無線局では、リンク情報の対象リンクに相当する設定周波数を割当周波数に変更し、リンク情報を更新する。
【0031】
図4は、本発明の第2の実施形態による自律分散周波数割当方法の処理を示すフローチャートである。本実施形態においては、始めに、参照周波数配置と現周波数配置の比較するとともに変更リンク数を導出する(ステップS301)。そして、対象リンク判定処理を行い(ステップS302)、対象リンクがOKリンクである場合に、周波数割当の拘束条件を満たす周波数を割当周波数とする(ステップS304)。対象リンクがNGリンクであり、周辺リンクに対して前回処理時の周波数配置と現周波数配置の比較を行い(ステップS305)、周波数配置が一致する場合、局所解への収束状態とみなし(ステップS306)、未設定周波数リスト中でNGリンク数を最小とする周波数を割当周波数とし(ステップS307)、該割当周波数を未設定リストから除外する(ステップS308)。ここで、未設定周波数リストの初期値(最初の周波数割当処理時の値)は使用可能周波数であり、以降は、周波数割当処理毎に更新される。なお、未設定周波数リストの周波数がない場合は、未設定リストを使用可能周波数で更新(リセット)する。対象リンクがNGリンクであり、かつ、周波数配置が一致しない場合、リンク状態に応じて処理は分岐する(ステップS309)。リンク状態が局所解への収束でない場合、現周波数配置を参照周波数配置として記憶し(ステップS310)、未設定周波数リスト中でNGリンク数を最小とする周波数を割当周波数とする(ステップS311)。一方、リンク状態が局所解への収束である場合、変更リンク数と閾値を比較し(ステップS312)、変更リンク数が閾値以内である場合に、未設定周波数リスト中でNGリンク数を最小とする周波数を割当周波数とし(ステップS317)、割当周波数を未設定周波数リストから除外する(ステップS318)。
一方、変更リンク数が閾値より大きい場合、リンク状態を局所解への収束でないとし(ステップS313)、現周波数配置を参照周波数配置として記憶し(ステップS314)、未設定周波数リストをリセットし(ステップS315)、未設定周波数リスト中でNGリンクを最小とする周波数を割当周波数とする(ステップS316)。
対象リンクを形成する無線局では、リンク情報の対象リンクに相当する設定周波数を割当周波数に変更し、リンク情報を更新する。
【0032】
図5は、本実施形態による対象リンク判定処理のフローチャートである。無線局では、使用可能周波数を設定周波数候補とし(ステップS401)、該候補から設定周波数を選択し(ステップS402)、設定周波数は存在するかどうか判定する(ステップS403)。設定周波数が存在する場合には、設定周波数で周波数割当の拘束条件を満たすかどうかを判定し(ステップS405)、該拘束条件を満たす場合に対象リンクをOKリンクと判定し、該設定周波数を記憶する(ステップS408)。該拘束条件を満たさない場合に、該設定周波数と該拘束条件を満たさないリンク数を記憶し(ステップS406)、該設定周波数を設定周波数候補から除外し(ステップS407)、再度、設定周波数の選択を実施する。設定周波数の選択ができない、すなわち、設定周波数候補がない場合に、対象リンクをNGリンクと判定する(ステップS404)。
【0033】
図6は、本発明の第3の実施形態による自律分散周波数割当方法の処理を示すフローチャートである。
本実施形態においては、対象リンク判定処理を行い(ステップS501)、対象リンクがOKリンクである場合に、周波数割当の拘束条件を満たす周波数を割当周波数とする(ステップS503)。対象リンクがNGリンクである場合に、対象リンクの周波数変更範囲から周波数変更リンクを選択し(ステップS504)、対象リンクと変更リンクでは、使用可能周波数内で取りうる全ての周波数配置パターンを導出し、対象リンクと変更リンクの各周波数配置パターンと近隣リンクのうちで対象リンクにも変更リンクにも属さないリンクを現設定周波数で配置した周波数配置パターンを結合することで近隣リンクの各周波数配置パターンを作成し、近隣リンクの各周波数配置パターン内でのNGリンク数を計算し(ステップS505)、NGリンク数が最小となる近隣リンクの周波数配置パターンの対象リンクに相当する周波数を割当周波数とする(ステップS506)。
対象リンクを形成する無線局では、リンク情報の対象リンクに相当する設定周波数を割当周波数に変更し、リンク情報を更新する。
【0034】
図7は、本発明の第4の実施形態による自律分散周波数割当方法の処理を示すフローチャートである。本実施形態においては、対象リンクの周波数変更範囲から周波数変更リンクを選択し(ステップS601)、対象リンクと変更リンクでは、使用可能周波数内で取りうる全ての周波数配置パターンを導出し、対象リンクと変更リンクの各周波数配置パターンと近隣リンクのうちで対象リンクにも変更リンクにも属さないリンクを現設定周波数で配置した周波数配置パターンを結合することで近隣リンクの各周波数配置パターンを作成し、近隣リンクの各周波数配置パターン内でのNGリンク数を計算し(ステップS602)、NGリンク数が最小となる近隣リンクの周波数配置パターンの対象リンクに相当する周波数を割当周波数とする(ステップS603)。
対象リンクを形成する無線局では、リンク情報の対象リンクに相当する設定周波数を割当周波数に変更し、リンク情報を更新する。
【0035】
無線局のアドホック通信をサポートする通信規格としてIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.11がある。ワイヤレスアドホックネットワークに本規格を単―周波数で適用すると、RTS/CTS(Request to Send/Clear to Send)シーケンスの交換に成功しても、図8に示すように隠れ端末が存在し、フレーム衝突によるスループット劣化が問題となる。
図8では、無線局の通信範囲を隣接無線局までとする。無線局2から無線局1ヘデータ送信(図8の(1))では、データ送信前のRTS/CTSシーケンスの交換が正常に終了し、無線局3でNAVが設定される。このとき、無線局2から無線局1へのデータ送信中に無線局5から無線局4に対してデータ送信契機が発生(図8の(2))すると、無線局4と無線局5でRTS/CTSシーケンスの交換が正常に終了するため、データ送信が開始されるが、無線局3ではNAVが設定され、無線局2からのデータが受信されるため、無線局4が送信したCTSを無線局3は受信できない。そのため、無線局3では、無線局2から無線局1へのデータ送信終了後、無線局2に対する送信データを有する場合に、無線局5から無線局4ヘデータ送信が行われているにも関わらず、その送信を知らずに、RTS/CTSシーケンスの交換を開始するため、無線局4においてフレーム衝突が発生する。すなわち、無線局3と無線局5の双方で隠れ端末になっている。
【0036】
IEEE802.11では使用可能な周波数を複数有していることから、リンクに対して異なる周波数を割り当てることで隠れ端末問題を回避することが可能である。そこで、周波数割当の拘束条件を隠れ端末の発生を回避する条件とすると、本実施形態における自律分散周波数割当方法を用いることで、隠れ端末の発生によるスループット劣化を改善することができる。
【0037】
上述した本発明の実施形態による自律分散周波数割当方法は、従来技術における問題を、周波数割当の拘束条件に該当するリンクの設定周波数が変わらないという仮定で、使用可能周波数全てで周波数割当の拘束条件を満たさない場合に、周波数割当の拘束条件を満たさないリンク数を最小とする周波数を設定することにより解決することができる。
【0038】
また、本発明の実施形態による自律分散周波数割当方法は、従来技術における問題を、近隣リンクの設定周波数が変動するという仮定で、対象リンクの周波数変更範囲から周波数変更リンクを選択し、対象リンクと変更リンクでは、使用可能周波数内で取りうる全ての周波数配置パターンを導出し、対象リンクと変更リンクの各周波数配置パターンと近隣リンクで対象リンクにも変更リンクにも属さないリンクを現設定周波数で配置した周波数パターンとを結合することで近隣リンクの各周波数配置パターンを作成し、近隣リンクの各周波数配置パターン内でのNGリンク数を計算し、NGリンク数が最小となる近隣リンクの周波数配置パターンの対象リンクに相当する周波数を設定することにより解決することができる。
【0039】
また、本発明の実施形態による自律分散周波数割当方法によれば、周波数割当の拘束条件に該当するリンクの設定周波数が変わらないという仮定で、各リンクで周波数割当の拘束条件を満たさないリンク数を最小とする周波数を設定するため、ネットワーク全体で周波数割当の拘束条件を満たさないリンク数を低減することが可能であり、他リンクからの干渉を回避可能な周波数割当の拘束条件を用いることで、ネットワーク全体のスループットを改善する効果が得られる。
【0040】
また、本発明の実施形態による自律分散周波数割当方法によれば、近隣リンクの設定周波数が変動するという仮定で、対象リンクの周波数変更範囲から周波数変更リンクを選択し、対象リンクと変更リンクでは、使用可能周波数内で取りうる全ての周波数配置パターンを導出し、対象リンクと変更リンクの各周波数配置パターンと近隣リンクで対象リンクにも変更リンクにも属さないリンクを現設定周波数で配置した周波数パターンとを結合することで近隣リンクの各周波数配置パターンを作成し、近隣リンクの各周波数配置パターン内でのNGリンク数を計算し、NGリンク数が最小となる近隣リンクの周波数配置パターンの対象リンクに相当する周波数を設定するため、ネットワーク全体で周波数割当の拘束条件を満たさないリンク数を低減することが可能であり、他リンクからの干渉を回避可能な周波数割当の拘束条件を用いることで、ネットワーク全体のスループットを改善する効果が得られる。
【0041】
なお、上述した本発明の実施形態による自律分散周波数割当方法では、全ての無線局が自律的に実行するものであり、対象リンクを形成する無線局では同一のリンクを次隣接リンクとし、同一のエリアを近隣エリアとすることから、両方の無線局が周波数割当処理を実施したとしても同一の結果が得られる。なお、リンク情報の交換は双方で行い、割当処理はどちらか一方の無線局が実施し、相手局に結果を通知するようにしてもよい。
【0042】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0043】
次に、上述した実施形態と、本願請求項に記載の発明との関係について説明する。請求項5に記載の対象リンクの周波数が次隣接リンクの設定周波数とは異なる周波数であるという周波数割当の拘束条件は、隠れ端末の発生を回避できる。該拘束条件を図8に適用すると、無線局2と無線局3で形成するリンクを対象リンクとし、無線局4と無線局5で形成するリンクを次隣接リンクとすると、該リンクは異なる周波数で設定されるため、隠れ端末は発生しない。請求項3から請求項4の自律分散周波数割当方法において、該拘束条件を適用した場合、周波数変更範囲は請求項10から請求項11に記載の範囲となり、拘束条件を満たさないNGリンク数をカウントする近隣リンクは請求項14から請求項15に記載のリンクとなる。また、請求項1から請求項4に記載の自律分散周波数割当方法において、該拘束条件を適用する場合、周辺リンク、或いは、近隣リンクの設定周波数は、
隣接無線局から該隣接無線局の隣接リンクと設定周波数をリンク情報として取得することで生成できる。
【0044】
請求項6に記載の対象リンクを形成する無線局をA、Bとし、対象リンクの次隣接リンクを形成する無線局をC、Dとしたときに、無線局Aと無線局C、無線局Bと無線局Dで形成するリンクが対象リンクの隣接リンクであるか、または、無線局Aと無線局D、無線局Bと無線局Cで形成するリンクが対象リンクの隣接リンクであるときに、無線局Cと無線局Dで形成するリンクを対象リンクの次隣接リンクとみなさず、隣接リンクとみなし、対象リンクの周波数が次隣接リンクの設定周波数とは異なる周波数であるという周波数割当の拘束条件は、隠れ端末の発生を回避できる。該拘束条件では、無線局間のリンクにループが形成されるため、無線局でRTS/CTSシーケンスを正常に受信できることになり、対象リンクとループを形成する次隣接リンクで同一の周波数を使用しても隠れ端末は発生しない。請求項3から請求項4の自律分散周波数割当方法において、該拘束条件を適用した場合、周波数変更範囲は請求項10から請求項11に記載の範囲となり、拘束条件を満たさないNGリンク数をカウントする近隣リンクは請求項14から請求項15に記載のリンクとなる。また、請求項1から請求項4に記載の自律分散周波数割当方法において、該拘束条件を適用する場合、周辺リンク、或いは、近隣リンクの設定周波数は、隣接無線局から該隣接無線局の隣接リンクと設定周波数をリンク情報として取得することで生成できる。
【0045】
請求項7に記載の対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクが同一の周波数であり、かつ、対象リンクの隣接リンクと対象リンクの次々隣接リンクの周波数が異なる場合に、対象リンクの周波数は次々隣接リンクと同一の周波数であるという周波数割当の拘束条件は、隠れ端末の発生を回避できる。該拘束条件を図8に適用すると、無線局1と無線局2で形成するリンクを対象リンクとし、無線局2と無線局3で形成するリンクを隣接リンク、無線局3と無線局4で形成するリンクを次隣接リンク、無線局4と無線局5で形成するリンクを次々隣接リンクとすると、対象リンクと次々隣接リンクが同一周波数で、隣接リンクと次隣接リンクはそれとは異なる同一周波数であるため、無線局でRTS/CTSシーケンスを正常に受信できるため、隠れ端末は発生しない。請求項3から請求項4の自律分散周波数割当方法において、該拘束条件を適用した場合、周波数変更範囲は請求項13に記載の範囲となり、拘束条件を満たさないNGリンク数をカウントする近隣リンクは請求項15に記載のリンクとなる。また、請求項1から請求項4に記載の自律分散周波数割当方法において、該拘束条件を適用する場合、周辺リンク、或いは、近隣リンクの設定周波数は、隣接無線局と次隣接無線局から隣接無線局から該隣接無線局の隣接リンクと次隣接リンクと設定周波数をリンク情報として取得することで生成できる。
【0046】
請求項8に記載の対象リンクの周波数は次々隣接リンクの設定周波数とは異なる周波数であるという周波数割当の拘束条件は、隠れ端末の発生を回避できる。該拘束条件を図8に適用すると、無線局1と無線局2で形成するリンクを対象リンクとし、無線局4と無線局5で形成するリンクを次々隣接リンクとすると、対象リンクと次々隣接リンクが異なる周波数をとることになるため、無線局でRTS/CTSシーケンスを正常に受信できるため、隠れ端末は発生しない。請求項3から請求項4の自律分散周波数割当方法において、該拘束条件を適用した場合、周波数変更範囲は請求項12と請求項13に記載の範囲となり、拘束条件を満たさないNGリンク数をカウントする近隣リンクは請求項15に記載のリンクとなる。また、請求項1から請求項4に記載の自律分散周波数割当方法において、該拘束条件を適用する場合、周辺リンク、或いは、近隣リンクの設定周波数は、隣接無線局から該隣接無線局の隣接リンクと次隣接リンクと設定周波数をリンク情報として取得することで生成できる。
【0047】
請求項9に記載の対象リンクの周波数は次々隣接リンクの設定周波数とは異なる周波数であること、または、対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクが同一の周波数であり、かつ、対象リンクの隣接リンクと対象リンクの次々隣接リンクの周波数が異なる場合に、対象リンクの周波数は次々隣接リンクと同一の周波数であるという周波数割当の拘束条件は、隠れ端末の発生を回避できる。該拘束条件は、請求項7と請求項8に記載の周波数割当の
拘束条件のOR条件であるため、隠れ端末は発生しない。請求項3から請求項4の自律分散周波数割当方法において、該拘束条件を適用した場合、周波数変更範囲は請求項13に記載の範囲となり、拘束条件を満たさないNGリンク数をカウントする近隣リンクは請求項15に記載のリンクとなる。また、請求項1から請求項4に記載の自律分散周波数割当方法において、該拘束条件を適用する場合、周辺リンク、或いは、近隣リンクの設定周波数は、隣接無線局から該隣接無線局の隣接リンクと次隣接リンクと設定周波数をリンク情報として取得することで生成できる。
【0048】
請求項3から請求項4の自律分散周波数割当方法において、請求項10から請求項13に記載の周波数変更範囲から、請求項16に記載の周波数変更範囲内のNGリンクを周波数変更リンクとする、または、請求項17に記載の周波数変更範囲内のNGリンクとその設定周波数を記憶し、前回処理時のNGリンクと現NGリンクをリンク位置と周波数で比較し、比較結果が一致する場合に、対象リンクのOKリンクを周波数変更リンクとし、比較結果が一致しない場合NGに、周波数変更範囲内のNGリンクを周波数変更リンクとする、または、請求項18に記載の周波数変更範囲内のNGリンクとその設定周波数を記憶し、前回処理時のNGリンクと現NGリンクをリンク位置と周波数で比較し、比較結果が一致し、かつ、対象リンクがNGリンクである場合に、対象リンクのOKリンクを周波数変更リンクとして選択し、比較結果が一致せず、または、対象リンクがOKリンクである場合に、周波数変更範囲内のNGリンクを周波数変更リンクとする、または、請求項19に記載の周波数変更範囲内のNGリンクとその設定周波数を記憶し、前回処理時のNGリンクと現NGリンクをリンク位置と周波数で比較し、比較結果が一致し、かつ、近隣エリアにNGリンクが存在する場合に、対象リンクのOKリンクを周波数変更リンクとして選択し、比較結果が一致せず、または、近隣エリアにNGリンクが存在しない場合に、周波数変更範囲内のNGリンクを周波数変更リンクとする、または、請求項20に記載の周波数変更範囲内の全リンクを周波数変更リンクとする。
【0049】
以上説明したように、本発明においては、請求項1から請求項2に記載の自律分散周波数割当方法では、周波数配置の拘束条件の対象となるリンクの設定周波数が変わらないという仮定で該リンクの設定周波数から、周波数割当の拘束条件を満たさないリンク数を最小とする周波数を常に設定するため、ネットワーク全体として、周波数配置の拘束条件を満たさないリンク数を低減する効果がある。また、請求項2に記載の自律分散周波数割当方法では、前回処理時の周辺リンクの周波数配置と現周波数配置を比較することで局所解への収束状態を判定し、局所解への収束時に周波数を変更することで局所解から離脱することが可能であるため、請求項1に記載の自律分散周波数割当方法に比べ、ネットワーク全体として、周波数割当の拘束条件を満たさないリンク数を更に低減する効果がある。
【0050】
また、本発明においては、請求項3から請求項4に記載の自律分散周波数割当方法では、近隣リンクの設定周波数が変動するという仮定で、対象リンクの周波数変更範囲から周波数変更リンクを選択し、対象リンクと変更リンクでは、使用可能周波数内で取りうる全ての周波数配置パターンを導出し、対象リンクと変更リンクの各周波数配置パターンと近隣リンクのうちで対象リンクにも変更リンクにも属さないリンクを現設定周波数で配置した周波数配置パターンを結合することで近隣リンクの各周波数配置パターンを作成し、近隣リンクの各周波数配置パターン内でのNGリンク数を計算し、NGリンク数が最小となる近隣リンクの周波数配置パターンの対象リンクに相当する周波数を割当周波数とするため、近隣リンクの変動を考慮した上で最適な周波数を設定することから、請求項1から請求項2に記載の自律分散周波数割当方法に比べ、ネットワーク全体として、周波数割当の拘束条件を満たさないリンク数を更に低減する効果がある。
また、本発明においては、請求項1から請求項4に記載の自律分散周波数割当方法において、隠れ端末の発生を回避する請求項5から請求項9に記載の周波数割当の拘束条件を適用することで、拘束条件を満たさないリンク、すなわち、隠れ端末が存在することで干渉となるリンクを低減することができ、ネットワーク全体のスループットを改善する効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明による自律分散周波数割当方法は、移動端末間、あるいは、基地局間でアドホック通信を行う無線アドホックシステムに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】無線局を直線状に配置した場合を示す図である。
【図2】無線局の通信範囲を隣の無線局までとした場合に、無線局1でリンク1に対する次隣接リンクの特定例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による自律分散周波数割当方法の処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態による自律分散周波数割当方法の処理を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態による対象リンク判定処理のフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施形態による自律分散周波数割当方法の処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第4の実施形態による自律分散周波数割当方法の処理を示すフローチャートである。
【図8】IEEE 802.11における隠れ端末問題を示す図である。
【図9】無線ネットワークのシステム構成例を示す図である。
【図10】従来の自律分散周波数割当の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1、2、3、4、5、6、7、8、9・・・無線局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用可能周波数と、周波数割当の拘束条件と、対象リンクの近隣リンクの設定周波数から対象リンクの周波数を決定する自律分散周波数割当方法であって、
対象リンクの設定周波数として、使用可能周波数中に周波数割当の拘束条件を満たす周波数が存在するかどうかを判定し、
使用可能周波数中に拘束条件を満たす周波数が存在する場合に、拘束条件を満たす周波数を対象リンクに設定し、
使用可能周波数全てで拘束条件を満たす周波数が存在しない場合に、使用可能周波数毎に拘束条件を満たさないリンクの数を算出し、NGリンク数を最小とする周波数を対象リンクに設定することを特徴とする自律分散周波数割当方法。
【請求項2】
使用可能周波数と、周波数割当の拘束条件と、対象リンクの近隣リンクの設定周波数から対象リンクの周波数を決定する自律分散周波数割当方法であって、
使用可能周波数を末設定周波数の初期値とし、
対象リンクの設定周波数として、使用可能周波数中に周波数割当の拘束条件を満たす周波数が存在するかどうかを判定し、
対象リンクの近隣リンクでの設定周波数を参照周波数配置として記憶し、
近隣リンクの参照周波数配置と現周波数配置の比較を行い、
参照周波数配置からの変更リンク数に対する閾値を有し、該変更リンク数と該閾値の比較を行い、
対象リンクがOKリンクである場合に、拘束条件を満たす周波数を対象リンクに設定し、
対象リンクがNGリンクであり、かつ、上記記載の周波数配置比較の結果、周波数配置が一致する場合に、局所解への収束状態とみなし、末設定周波数リスト中でNGリンク数を最小とする周波数を対象リンクに設定し、設定周波数を末設定周波数リストから除外し、
対象リンクがNGリンクであり、かつ、上記記載の周波数配置比較の結果、周波数配置が一致せず、かつ、局所解への収束状態でない場合に、現周波数配置を参照周波数配置として記憶し、未設定周波数リスト中でNGリンク数を最小とする周波数を対象リンクに設定し、
対象リンクがNGリンクであり、かつ、上記記載の周波数配置比較の結果、周波数配置が一致せず、かつ、局所解への収束状態であり、かつ、参照周波数配置からの変更リンク数が閾値より大である場合に、局所解への収束状態でないとみなし、現周波数配置を参照周波数配置として記憶し、
未設定周波数リストを使用可能周波数で更新し、
未設定周波数リスト中でNGリンク数を最小とする周波数を対象リンクに設定し、
対象リンクがNGリンクであり、かつ、上記記載の周波数配置比較の結果、周波数配置が一致せず、かつ、局所解への収束状態であり、かつ、参照周波数配置からの変更リンク数が閾値以内である場合に、未設定周波数リスト中でNGリンク数を最小とする周波数を対象リンクに設定し、設定周波数を未設定周波数リストから除外することを特徴とする自律分散周波数割当方法。
【請求項3】
使用可能周波数と周波数割当の拘束条件と対象リンクの近隣リンクの設定周波数から対象リンクの周波数を決定する自律分散周波数割当方法において、
対象リンクの設定周波数として使用可能周波数中に周波数割当の拘束条件を満たす周波数が存在するかどうかを判定し、
対象リンクがOKリンクである場合は、拘束条件を満たす周波数を対象リンクに設定し、
対象リンクがNGリンクである場合は、対象リンクの周波数変更範囲から周波数変更リンクを選択し、
対象リンクと変更リンクでは使用可能周波数内で取りうる全ての周波数配置パターンを導出し、
対象リンクと変更リンクの各周波数配置パターンと近隣リンクで対象リンクにも変更リンクにも属さないリンクを現設定周波数で配置した周波数パターンとを結合することで近隣リンクの各周波数配置パターンを作成し、
近隣リンクの各周波数配置パターン内でのNGリンク数を計算し、
NGリンク数が最小となる近隣リンクの周波数配置パターンの対象リンクに相当する周波数を設定することを特徴とする自律分散周波数割当方法。
【請求項4】
使用可能周波数と周波数割当の拘束条件と対象リンクの近隣リンクの設定周波数から対象リンクの周波数を決定する自律分散周波数割当方法において、
対象リンクの設定周波数として対象リンクの周波数変更範囲から周波数変更リンクを選択し、
対象リンクと変更リンクでは使用可能周波数内で取りうる全ての周波数配置パターンを導出し、
対象リンクと変更リンクの各周波数配置パターンと近隣リンクで対象リンクにも変更リンクにも属さないリンクを現設定周波数で配置した周波数パターンとを結合することで近隣リンクの各周波数配置パターンを作成し、
近隣リンクの各周波数配置パターン内でのNGリンク数を計算し、
NGリンク数が最小となる近隣リンクの周波数配置パターンの対象リンクに相当する周波数を設定することを特徴とする自律分散周波数割当方法。
【請求項5】
対象リンクの割当周波数は次隣接リンクの設定周波数と異なる周波数であることを周波数割当の拘束条件とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項6】
対象リンクを形成する第1及び第2の無線局と、対象リンクの次隣接リンクを形成する第3及び第4の無線局について、
第1及び第3の無線局、第2及び第4の無線局で形成するリンクが対象リンクの隣接リンクであるか、または、第1及び第4の無線局、第2及び第3の無線局で形成するリンクが対象リンクの隣接リンクであるときに、第3及び第4の無線局で形成するリンクを対象リンクの次隣接リンクとみなさず隣接リンクとみなし、対象リンクの割当周波数は次隣接リンクの設定周波数とは異なる周波数であることを周波数割当の拘束条件とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項7】
対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクが同一の周波数であり、かつ、対象リンクの隣接リンクと対象リンクの次々隣接リンクの周波数が異なる場合に、対象リンクの割当周波数は次々隣接リンクと同一の周波数であることを周波数割当の拘束条件とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項8】
対象リンクの割当周波数は次々隣接リンクの設定周波数とは異なる周波数であることを周波数割当の拘束条件とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項9】
対象リンクの割当周波数は次々隣接リンクの設定周波数とは異なる周波数であること、または、対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクが同一の周波数であり、かつ、対象リンクの隣接リンクと対象リンクの次々隣接リンクの周波数が異なる場合に、対象リンクの割当周波数は次々隣接リンクと同一の周波数であることを周波数割当の拘束条件とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項10】
対象リンクの次隣接リンクを周波数変更範囲とすることを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項11】
対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクを周波数変更範囲とすることを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項12】
対象リンクの次々隣接リンクを周波数変更範囲とすることを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項13】
対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクと次々隣接リンクを周波数変更範囲とすることを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項14】
請求項10または11のいずれかに記載の周波数変更範囲を使用し、
対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクを近隣リンクとすることを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項15】
請求項10〜13のいずれかの項に記載の周波数変更範囲を使用し、
対象リンクの隣接リンクと次隣接リンクと隣接リンクの次隣接リンクを近隣リンクとすることを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項16】
請求項5〜9のいずれかの項に記載の周波数配置の拘束条件を使用し、
請求項14または15のいずれかに記載の周波数変更範囲と近隣リンクを使用し、
周波数変更範囲内のNGリンクを周波数変更リンクとして選択することを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項17】
請求項5〜9のいずれかの項に記載の周波数配置の拘束条件を使用し、
請求項14または15のいずれかに記載の周波数変更範囲と近隣リンクを使用し、
周波数変更範囲内のNGリンクとその設定周波数を記憶し、前回処理時のNGリンクと現NGリンクをリンク位置と周波数で比較し、比較が一致する場合に、対象リンクのOKリンクを周波数変更リンクとして選択し、
比較が―致しない場合に、周波数変更範囲内のNGリンクを周波数変更リンクとして選択することを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項18】
請求項5〜9のいずれかの項に記載の周波数配置の拘束条件を使用し、
請求項14または15のいずれかに記載の周波数変更範囲と近隣エリアを使用し、
周波数変更範囲内のNGリンクとその設定周波数を記憶し、
前回処理時のNGリンクと現NGリンクをリンク位置と周波数で比較し、
比較が一致し、かつ、対象リンクがNGリンクである場合に、対象リンクのOKリンクを周波数変更リンクとして選択し、
比較が一致しない、または、対象リンクがOKリンクである場合に、周波数変更範囲内のNGリンクを周波数変更リンクとして選択することを特徴とする請求項4に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項19】
請求項5〜9のいずれかの項に記載の周波数配置の拘束条件を使用し、
請求項14または15のいずれかに記載の周波数変更範囲と近隣エリアを使用し、
周波数変更範囲内のNGリンクとその設定周波数を記憶し、
前回処理時のNGリンクと現NGリンクをリンク位置と周波数で比較し、
比較が一致し、かつ、近隣エリアにNGリンクが存在する場合に、対象リンクのOKリンクを周波数変更リンクとして選択し、
比較が一致しない、または、近隣エリアにNGリンクが存在しない場合に、周波数変更範囲内のNGリンクを周波数変更リンクとして選択することを特徴とする請求項4に記載の自律分散周波数割当方法。
【請求項20】
請求項5〜9のいずれかの項に記載の周波数配置の拘束条件を使用し、
請求項14または15のいずれかに記載の周波数変更範囲と近隣エリアを使用し、
周波数変更範囲内の全リンクを周波数変更リンクとして選択することを特徴とする請求項3または4に記載の自律分散周波数割当方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−246226(P2006−246226A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61245(P2005−61245)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】