説明

自律移動装置

【課題】自律移動する際に、より少ない検出器で全方位の接触又は衝突を検知することが可能な自律移動装置を提供する。
【解決手段】自律移動装置3は、台車40と、カバー41と、第1近接スイッチ及び第2近接スイッチと、電子制御装置32と、を備える。カバー41は、台車40の側面の一部を覆い、かつ、台車40に対して相対変位可能に該台車40に取り付けられる。第1近接スイッチは、台車40に対してカバー41が所定値変位したときにオン/オフする検出信号を出力し、台車40の中心部に配置される。第2近接スイッチは、第1近接スイッチがオン状態からオフ状態に切り換わる変位量よりも大きくカバー41が変位した場合にオン状態からオフ状態に切り換わるように設定されている。電子制御装置32は、第1近接スイッチ及び第2近接スイッチから出力されるそれぞれの検出信号に応じて前記駆動手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動装置に関し、特に、障害物等との接触を検知しつつ移動する自律移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、障害物等を検知しつつ、自律して走行する自律走行車の研究・開発が進められており、例えば倉庫又は工場の搬送ロボット等として実用化されている。このような自律走行車を開示するものとして、特許文献1、特許文献2及び特許文献3がある。
【0003】
特許文献1には、車体の全方位について障害物等との接触を検知することのできる自律走行車が開示されている。この自律走行車は、矩形形状の車体台板とこれを覆う箱状の外装カバーとを備えて構成されており、車体台板と外装カバーとが複数の外装カバー連結部材によって連結されるとともに、車体台板の側部と外装カバーの内面との間に、外装カバーの変位を検知するためのマイクロスイッチが8個取り付けられている。外装カバーは障害物等に接触して外力を受けると水平方向に移動し、8個のマイクロスイッチのうち接触部位近傍に配設されているマイクロスイッチがオンされる。それによって、自律走行車と障害物との接触が検知される。
【特許文献1】特開平8−263137号公報
【0004】
また、特許文献2には、無人搬送車本体を取り囲んで設けた移動可能なバンパーと、このバンパーの移動を検知するセンサよりなる無人搬送車の障害物検知装置において、以下の構成が開示されている。即ち、無人搬送車の前記バンパーは、前記無人搬送車本体の側面に設けた本体フレームと、この本体フレームの四隅に設けた弾性支持部材と、この弾性支持部材に懸下若しくは跨座したバンパフレームで構成される。また、障害物検知装置が備える前記センサは、前記バンパフレームの外側に設けた接触センサと、前記バンパフレームの内側に設けた近接センサと、前記本体フレームの上面に設けた近接センサで構成される。
【特許文献2】特開平8−194538号公報
【0005】
更に、特許文献3には、自律型ロボットとして、以下の構成が開示されている。即ち、自律型ロボットは、駆動走行可能な本体と、前記本体に対して前記本体の全周囲に延び且つ力覚センサを介して取り付けられた外装部とを備え、前記力覚センサの出力に基づいて前記外装部の障害物との衝突を検知することから成る。
【特許文献3】特開2006−21267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される技術では、全方位(前後左右)の接触又は衝突を検知するために、車体側面の全周にわたって8個のマイクロスイッチを配設している。そのため、自律走行車の構成が複雑でコストが高くなる一方、生産性及び信頼性が低下するおそれがある。そのため、自律移動する際に、より少ない数の検出器で全方位の接触又は衝突を検知することのできる技術が望まれていた。
【0007】
また、特許文献2の構成においても、同様の課題があった。即ち、テープスイッチ(接触センサ)による接触の検知は、テープスイッチの検出面に障害物等が接触しなければ、当該障害物等との接触を検出することができない。そのため、テープスイッチによる接触検知は、テープ幅部分に障害物が接触したときだけの局所的なものとなってしまう。しかし、全方位にわたって均等に接触を検知するために多数のテープスイッチを配置すれば、製造コストが増大してしまう。また、障害物検知装置が備える近接センサでは水平方向の接触の検知しかできないため、例えばバンパーが斜め上方向に動いた場合、障害物の接触を検知できないことがあった。
【0008】
この点、特許文献3の構成は、外装部が障害物と衝突するときにその衝突によって外装部に生じたモーメントを力覚センサによって検知することで、障害物に衝突したことが判別できる。しかし、力覚センサは、オン/オフで切り換えるような2値のセンサに比べ高価であるため、製造コストの低減という観点において改善の余地があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、自律移動する際に、より少ない検出器で全方位の接触又は衝突を検知することが可能な自律移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明に係る自律移動装置において、以下の構成が提供される。即ち、自律移動装置は、駆動手段が設けられた台車と、台車の側面及び上下面の全て又は一部を覆い、かつ、台車に対して相対変位可能に該台車に取り付けられるカバーと、台車に対してカバーが所定値変位したときにオン/オフする検出信号を出力し、台車の中心部に配置される検出手段と、検出手段から出力される検出信号に応じて駆動手段を制御する制御手段と、を備える。
【0012】
これにより、例えば自律移動装置が障害物等と接触した場合に、自律移動装置に加えられる外力により、カバーは台車に対して相対変位する。この相対変位を台車の中心部に配置される検出手段によって検出することで、カバーの全方位にわたっての相対変位を均等に検出することができる。これによって、複数の方向から障害物等が接触することを想定して検出手段を方向ごとに配置する必要もないので、検出手段の数を抑制できる。また、安価でシンプルな構成のオン/オフを切り換える検出手段を用いて、全方位の接触又は衝突を検知することができる。更に、検出手段を中心部に配置するので、配線の取回し等をシンプルなものとすることができ、接触及び衝突を検知するための構成を簡素化できる。
【0013】
前記の自律移動装置においては、カバーは、検出手段が配置される場所を中心として前後左右に対称形状となるように構成されることが好ましい。
【0014】
これにより、カバーが対称形状となるように構成されているので、障害物等が接触したカバーの箇所によって相対変位量が偏ることを抑制できる。従って、自律移動装置への接触及び衝突を全方位にわたってより均等に検出することができ、検出精度が向上する。
【0015】
前記の自律移動装置においては、カバーが台車に対して上方向に移動することを規制するための規制手段を備えることが好ましい。
【0016】
これにより、斜め下側から障害物等がカバーに接触することにより、カバーが斜め上方向に移動しようとした場合でも、規制手段によって上側への逃げが規制されるので、カバーの水平方向の変位量を十分に確保できる。従って、検出手段は、カバーの水平方向の移動を検出することで、斜め下側から障害物等が当たった場合等でも衝突及び接触の検出を精度良く行うことができる。
【0017】
前記の自律移動装置においては、カバーは、外部から付与される力に応じて該カバーを相対変位可能に支持する支持部材を介して台車に取り付けられることが好ましい。
【0018】
これにより、自律移動装置が障害物等と接触した場合に、自律移動装置のカバーに加わる外力の大きさに応じて、カバーが台車に対して相対変位する。従って、例えば、障害物が接触した衝撃が無視できるほど小さいにもかかわらず衝突を検出する、或いは、障害物が接触した衝撃が大きいにもかかわらず衝突を検出しないといった事態を防止でき、衝撃に応じた検出手段による正確な検出が可能となる。
【0019】
前記の自律移動装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、自律移動装置は、検出手段と検出特性が異なる第2の検出手段を更に備える。第2の検出手段は、台車に対してカバーが、検出手段の所定値と異なる所定値変位したときにオン/オフする検出信号を出力する。制御手段は、検出手段から出力されるオン/オフ信号、及び、第2の検出手段から出力されるオン/オフ信号に応じて、駆動手段を制御する。
【0020】
これにより、接触の強さを3段階(即ち、接触なし、弱い接触、強い接触)に分けて検知することができる。また、検知された接触の程度(強さ)に応じて駆動手段を制御することにより、検知された接触の程度(強さ)に対応した段階的な停止動作及び回避動作等の制御を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
まず、図1及び図2を併せて用いて、第1実施形態に係る自律移動装置1の構成について説明する。図1は、自律移動装置1の斜視図である。また、図2は、自律移動装置1の構成を示すブロック図である。
【0023】
自律移動装置1は、例えば障害物等との接触又は衝突を検知するとともに、障害物との接触等が検知された場合に、例えば一時停止等の回避動作をとりつつ、自律して移動する機能を有するものである。そのため、自律移動装置1は、その下部に電動モータ12及び該電動モータ12により駆動されるオムニホイール13が設けられた台車10と、台車10の前後左右の側面及び上面を覆い、かつ、台車10に対して相対変位可能に台車10に取り付けられたカバー11と、台車10の上面と該上面に対向するカバー11との相対変位に応じてオン/オフする第1近接スイッチ21と、第1近接スイッチ21から出力されるオン/オフ信号に応じて電動モータ12を制御する電子制御装置30とを備えている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0024】
台車10は、略直方体の形状をした筐体10Aを有している。なお、筐体10Aの形状は略直方体に限られない。筐体10Aの下部には、4つの電動モータ12が十字状に配置されて取り付けられている。4つの電動モータ12それぞれの駆動軸にはオムニホイール13が装着されている。即ち、4つのオムニホイール13は、同一円周上に周方向に沿って90°ずつ間隔をあけて取り付けられている。
【0025】
オムニホイール13は、電動モータ12の駆動軸を中心にして回転する2枚のホイール14と、各ホイール14の外周に電動モータ12の駆動軸と直交する軸を中心として回転可能に設けられた6個のフリーローラ15とを有する車輪であり、全方向に移動可能としたものである。なお、2枚のホイール14は位相を30°ズラして取り付けられている。このような構成を有するため、電動モータ12が駆動されてホイール14が回転すると、6個のフリーローラ15はホイール14と一体となって回転する。一方、接地しているフリーローラ15が回転することにより、オムニホイール13は、そのホイール14の回転軸に平行な方向にも移動することができる。そのため、4つの電動モータ12を独立して制御し、4つのオムニホイール13それぞれの回転方向及び回転速度を個別に調節することにより、自律移動装置1を任意の方向(全方向)に平面移動又は旋回動作させることができる。
【0026】
台車10(筐体10A)の上面の四隅には、カバー11を台車10に対して相対変位可能に支持する支持部材としての4つのインシュレータ20が設けられている。ここで、カバー11は、例えば金属や樹脂等により、台車10の前後左右の側面及び上面を覆うように形成された部材である。このカバー11は、平面視で長方形状に形成されている。前記インシュレータ20は、例えばゴムやバネ等の弾性部材から形成されており、カバー11を筐体10Aに対してフローティング状態に保持するとともに、障害物等との接触時には、障害物等から加えられる外力の大きさに比例してカバー11を変位させつつ、接触による振動を吸収する。即ち、インシュレータ20は、特許請求の範囲に記載の支持部材として機能する。なお、インシュレータ20は、台車10の上面に代えて又は加えて台車10の側面に取り付けてもよい。また、インシュレータ20は、その変位量が外力に比例するものに限られず、外力と変位量との相関が把握されているものであればよい。
【0027】
台車10(筐体10A)の上面と、該上面に対向するカバー11の内面には、台車10の上面と該上面に対向するカバー11との相対変位に応じてオン/オフする第1近接スイッチ21が取り付けられている。第1近接スイッチ21は、検出対象の有無を非接触で検出するセンサである。本実施形態では、第1近接スイッチ21として、検出体(ドグ)とセンサとの間に生じる静電容量の変化から検出対象(検出体)の有無を検出する静電容量形の近接スイッチを用いた。
【0028】
また、第1近接スイッチ21は、平面視において台車10のほぼ中心部に配置されている。ただし、厳密には、第1近接スイッチ21は、筐体10Aの上面の中心から若干オフセットした位置に取り付けられる。これによって、筐体10Aの中心を軸としてカバー11を回転させるように外力が加えられた場合であっても、カバー11の変位を確実に検出することが可能となっている。
【0029】
第1近接スイッチ21は、台車10の上面に取り付けられるセンサ21Aと、カバー11の内面のセンサ21Aに対向する位置に取り付けられる円形に形成された金属板からなる検出体21Bと、を有して構成される。第1近接スイッチ21は、検出体21Bとセンサ21Aとの間の静電容量に応じ、検出体21Bがセンサ21Aの検出領域内にある場合にオン信号を出力し、検出体21Bがセンサ21Aの検出領域内にないときにオフ信号を出力する。よって、第1近接スイッチ21は、自律移動装置1が障害物等に接触していない場合にはオン信号を出力する。一方、第1近接スイッチ21は、自律移動装置1が障害物等と接触し、カバー11が台車10に対して水平方向に変位することによって検出体21Bがセンサ21Aの検出領域から外れたときにオフ信号を出力する。このように、第1近接スイッチ21は、特許請求の範囲に記載の検出手段として機能する。なお、第1近接スイッチ21は電子制御装置30に接続されており、第1近接スイッチ21による検出結果(オン/オフ信号)は電子制御装置30に出力される。
【0030】
電子制御装置30は、自律移動装置1の制御を司るものである。電子制御装置30は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM、及びバッテリによりその記憶内容が保持されるバックアップRAM等から構成されている。また、電子制御装置30は、第1近接スイッチ21とマイクロプロセッサとを電気的に接続するインタフェース回路、及び電動モータ12を駆動するドライバ回路等も備えている。
【0031】
電子制御装置30は、障害物等との接触を検知しつつ、例えば、記憶されている環境地図とレーザレンジファインダ等によって認識された自機位置とに基づいて、予め設定されている目標位置まで自律移動装置1が自律して移動するように制御を行う。電子制御装置30は、自律移動を行う際に、第1近接スイッチ21の検出結果に基づいて障害物等との接触の有無を判定し、その判定結果に基づいて電動モータ12を制御する。即ち、電子制御装置30は、障害物等との接触が無い場合には電動モータ12を駆動して自律移動を継続し、接触があったときには電動モータ12の駆動を停止して自律移動装置1を停止させる。このように、電子制御装置30は、特許請求の範囲に記載の制御手段として機能する。
【0032】
次に、図3を参照しつつ自律移動装置1の動作について説明する。図3は、自律移動装置1による接触検知処理の処理手順を示すフローチャートである。図3に示される接触検知処理は、主として電子制御装置30によって行われるものであり、自律移動装置1の電源がオンされてからオフされるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0033】
まず、ステップS100において、第1近接スイッチ21の状態(オン状態又はオフ状態)が読み込まれる。続いて、ステップS102において、ステップS100で読み込まれた第1近接スイッチ21の状態がオン状態であるか否かについての判断が行われる。ここで、第1近接スイッチ21の状態がオン状態である場合には、障害物等との接触がないと判断され、自律走行が継続して実行される(ステップS104)。一方、第1近接スイッチ21の状態がオフ状態であるときには、障害物等と接触したと判断され、電動モータ12の駆動を停止して、自律移動装置1を非常停止する(ステップS106)。
【0034】
以上に示したように、本実施形態の自律移動装置1は、台車10と、カバー11と、第1近接スイッチ21と、電子制御装置30と、を備える。台車10には、駆動手段が設けられる。カバー11は、台車10の側面及び上面を覆い、かつ、台車10に対して相対変位可能に該台車10に取り付けられる。第1近接スイッチ21は、台車10に対してカバー11が所定値変位したときにオン/オフする検出信号を出力し、台車10の中心部に配置される。電子制御装置30は、第1近接スイッチ21から出力される検出信号に応じて電動モータ12(駆動手段)を制御する。
【0035】
これにより、例えば自律移動装置1が障害物等と接触した場合に、自律移動装置1に加えられる外力により、カバー11は台車10に対して相対変位する。この相対変位を台車10の中心部に配置される第1近接スイッチ21によって検出することで、カバー11の全方位にわたっての相対変位を均等に検出することができる。これによって、複数の方向から障害物等が接触することを想定して検出手段を方向ごとに配置する必要もないので、検出手段の数を抑制できる。また、安価でシンプルな構成のオン/オフを切り換える2値の第1近接スイッチ21を用いて、全方位の接触又は衝突を検知することができる。更に、第1近接スイッチ21を中心部に配置するので、配線の取回し等をシンプルなものとすることができ、接触及び衝突を検知するための構成を簡素化できる。
【0036】
(第2実施形態)
続いて、図4及び図5を併せて用いて、第2実施形態に係る自律移動装置2の構成について説明する。図4は、自律移動装置2の斜視図である。また、図5は、自律移動装置2の構成を示すブロック図である。なお、図4、図5において第1実施形態と同一又は同等の構成及び機能を有する要素については同一の符号が付されている。
【0037】
自律移動装置2は、上述した第1近接スイッチ21に加え、該第1近接スイッチ21と検出特性が異なる第2近接スイッチ22を更に備えている点で、上述した第1実施形態の自律移動装置1と異なる。また、自律移動装置2は、上述した電子制御装置30に代えて、第1近接スイッチ21及び第2近接スイッチ22から出力されるオン/オフ信号に応じて電動モータ12を制御する電子制御装置31を備えている点で、上述した自律移動装置1と異なる。以下、これらの自律移動装置1と異なる構成要素について詳細に説明する。なお、その他の構成については自律移動装置1と同一又は同等であるので、ここでは説明を省略する。
【0038】
台車10(筐体10A)の上面と、該上面に対向するカバー11の内面には、上述した第1近接スイッチ21に加えて、台車10の上面と該上面に対向するカバー11との相対変位に応じてオン/オフする第2近接スイッチ22が取り付けられている。第1近接スイッチ21と同様に第2近接スイッチ22も、検出対象の有無を非接触で検出するセンサである。本実施形態では、第2近接スイッチ22として、検出体(ドグ)とセンサとの間に生じる静電容量の変化から検出対象(検出体)の有無を検出する静電容量形の近接スイッチを用いた。なお、第2近接スイッチ22は、カバー11が回転軸を中心として回転するように外力が加えられた場合であってもカバー11の変位を確実に検出するため、カバー11の回転軸からオフセットした位置に取り付けられる。本実施形態において、この第2近接スイッチ22は、台車10の中心部から、長方形のカバー11の長手方向外側に若干離れた位置に配置されている。
【0039】
第2近接スイッチ22は、台車10の上面に取り付けられるセンサ22Aと、カバー11の内面のセンサ22Aに対向する位置に取り付けられる円形に形成された金属板からなる検出体22Bと、を有して構成される。第2近接スイッチ22は、第1近接スイッチ21と同様に、検出体22Bとセンサ22Aとの間の静電容量に応じ、検出体22Bがセンサ22Aの検出領域内にある場合にオン信号を出力し、検出体22Bがセンサ22Aの検出領域内にないときにオフ信号を出力する。よって、第2近接スイッチ22は、自律移動装置2が障害物等に接触していない場合には、オン信号を出力する。一方、第2近接スイッチ22は、自律移動装置2が障害物等と接触し、カバー11が台車10に対して水平方向に変位することによって検出体22Bがセンサ22Aの検出領域から外れたときにオフ信号を出力する。
【0040】
ここで、第2近接スイッチ22は、検出体22Bの直径を検出体21Bの直径と異ならせることにより、カバー11の変位(即ち接触の強さ)に対する検出特性が第1近接スイッチ21と異なるように設定されている。より具体的には、検出体22Bの直径は、検出体21Bの直径(例えば8mm)よりも大きい値(例えば10mm)に設定されている。そのため、第2近接スイッチ22は、第1近接スイッチ21がオン状態からオフ状態に切り換わる変位量よりもより大きくカバー11が変位した場合、即ち、より大きな外力が加わったとき(より強く接触したとき)にオン状態からオフ状態に切り換わる。このように、第2近接スイッチ22は、特許請求の範囲に記載の第2の検出手段として機能する。
【0041】
本実施形態では、検出体21B,22Bの直径を異ならせることによって変位検出特性を異ならせた2つの近接スイッチを用いることにより、障害物等との接触の強さを3段階(接触なし、弱い接触、強い接触)に分けて検知する構成とした。なお、第1近接スイッチ21及び第2近接スイッチ22のそれぞれは電子制御装置31に接続されており、第1近接スイッチ21、第2近接スイッチ22による検出結果(オン/オフ信号)は電子制御装置31に出力される。
【0042】
電子制御装置31は、第1近接スイッチ21及び第2近接スイッチ22とマイクロプロセッサとを電気的に接続するインタフェース回路を備えている。電子制御装置31は、自律移動を行う際に、第1近接スイッチ21及び第2近接スイッチ22の検出結果に基づいて、障害物等との接触の有無、及び接触の強さを判定し、それらの判定結果に基づいて、電動モータ12を制御する。より具体的には、電子制御装置31は、障害物等との接触が無い場合には自律移動を継続し、弱い接触があった場合には電動モータ12を一時的に停止し、より強い接触があったときには電動モータ12を非常停止させる。即ち、本実施形態の自律移動装置2における電子制御装置31も、特許請求の範囲に記載の制御手段として機能する。
【0043】
次に、図6を参照しつつ自律移動装置2の動作について説明する。図6は、自律移動装置2による接触検知処理の処理手順を示すフローチャートである。図6に示される接触検知処理は、主として電子制御装置31によって行われるものであり、自律移動装置2の電源がオンされてからオフされるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0044】
まず、ステップS200において、第1近接スイッチ21の状態(オン状態又はオフ状態)、及び第2近接スイッチ22の状態が読み込まれる。続いて、ステップS202において、ステップS200で読み込まれた第1近接スイッチ21の状態がオン状態であるか否かについての判断が行われる。ここで、第1近接スイッチ21の状態がオン状態である場合には、障害物等との接触がないと判断され、自律走行が継続して実行される(ステップS204)。一方、第1近接スイッチ21の状態がオフ状態であるときには、障害物等と接触したと判断され、ステップS206に処理が移行する。
【0045】
ステップS206では、ステップS200で読み込まれた第2近接スイッチ22の状態がオン状態であるか否かについての判断が行われる。ここで、第2近接スイッチ22の状態がオン状態である場合には、障害物等との接触レベルが比較的弱いと判断し、電動モータ12の駆動を一時的に停止して、自律移動装置2を一時停止する(ステップS208)。一方、第2近接スイッチ22の状態がオフ状態である場合には、障害物等との接触レベルが比較的強いと判断し、電動モータ12の駆動を非常停止して、自律移動装置2を非常停止する(ステップS210)。
【0046】
以上に示したように、本実施形態の自律移動装置2においては、以下のように構成される。即ち、自律移動装置2は、第1近接スイッチ21と検出特性が異なる第2近接スイッチ22を更に備える。第2近接スイッチ22は、台車10に対してカバー11が、第1近接スイッチ21の所定値よりも大きく変位したときにオフする検出信号を出力する。電子制御装置31は、第1近接スイッチ21から出力されるオン/オフ信号、及び、第2近接スイッチ22から出力されるオン/オフ信号に応じて、電動モータ12(駆動手段)を制御する。
【0047】
これにより、接触の強さを3段階(即ち、接触なし、弱い接触、強い接触)に分けて検知することができる。また、検知された接触の程度(強さ)に応じて駆動手段を制御することにより、検知された接触の程度(強さ)に対応した段階的な停止動作及び回避動作等の制御を行うことが可能となる。
【0048】
なお、本実施形態では、第2近接スイッチ22は平面視において台車10の中心部から離れて配置されているが、第2の検知手段についても台車の中心部に配置する構成とすることができる。
【0049】
(第3実施形態)
続いて、図7から図9を併せて用いて、第3実施形態に係る自律移動装置3の構成について説明する。図7は、自律移動装置3の斜視図である。図8は、自律移動装置3の平面図である。図9は、自律移動装置3の構成を示すブロック図である。なお、図7から図9までにおいて、第1実施形態又は第2実施形態と同一又は同等の構成及び機能を有する要素については同一の符号が付されている。
【0050】
第3実施形態の自律移動装置3は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、障害物等との接触又は衝突を検知するとともに、障害物との接触等が検知された場合に、例えば一時停止等の回避動作をとりつつ、自律して移動する機能を有するものである。この自律移動装置3は、台車40と、カバー41と、第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72と、電子制御装置32と、を備えている。台車40は、走行を可能とする駆動手段を有しており、自律移動装置3の走行を可能としている。カバー41は平面視でほぼ正方形状に形成されており、台車40の周囲を障害物等の接触から保護する。第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72は、台車40とカバー41との相対変位に応じてオン/オフする検出信号を出力し、自律移動装置3が障害物等に接触したことを検出する。電子制御装置32は、第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72によって出力されたオン/オフ信号に応じて駆動手段が有する電動モータ12を制御する。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0051】
台車40は、筐体40Aと、この筐体40Aを支持するための底板フレーム42と、駆動手段と、を有している。筐体40Aは、前記電子制御装置32を内部に保持している。底板フレーム42は、図8の平面視において、四隅が円弧状に丸められた略正方形状となる平板状に構成されており、上面側では前記筐体40Aを支持するとともに、下面側には駆動手段が配置されている。駆動手段は電動モータ12及びオムニホイール13等を主要な構成として有している。
【0052】
図8に示すように、駆動手段が有する4つの電動モータ12は、底板フレーム42の対角線と重なるように十字状に配置されている。この4つの電動モータ12それぞれの駆動軸にはオムニホイール13が装着されている。即ち、4つのオムニホイール13は、同一円周上に周方向に沿って90°ずつ間隔をあけるようにして、かつ、底板フレーム42の四隅に対応するようにして、台車40下部に取り付けられている。なお、電動モータ12及びオムニホイール13の構成は、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。この駆動手段によって、自律移動装置3を任意の方向(全方向)に移動させることが可能となっている。
【0053】
カバー41は、金属や樹脂等により、図8の平面視において、台車の中心部から見たときに前後左右が略対称形状となる枠組み状の外装カバーとして構成されており、台車40下部の前後左右の側面を覆っている。このカバー41は、台車40下部の駆動手段の前後左右を囲うように配置される4個のカバーフレーム51によって内側から支持されている。なお、図8に示すように、本実施形態では、カバー41は上面及び下面の中央部が開放された略直方体状に構成されているが、この形状を例えば円柱状、ドーム状等に変更することもできる。この場合においても、カバーの構成は、台車の中心部から見て前後左右が対称形状となることが好ましい。
【0054】
カバーフレーム51は、板状部材の一端を直角に折り曲げて構成されており、一部の平面が底板フレーム42の下面に対面するとともに残りの一部の平面が水平方向(側面方向)を向くように配置されている。4個のカバーフレーム51のうち、前側のカバーフレーム51と後側のカバーフレーム51とが、板状のフレーム連結部材52によって連結されており、フレーム連結部材52の上面が底板フレーム42の下面側と対向している。このフレーム連結部材52は、台車40の中心部を通るように配置されており、その中途部には、後述する第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72の構成の一部である第1検出体71B及び第2検出体72Bが配置されている。
【0055】
本実施形態のカバーフレーム51は、底板フレーム42の下面側でいわゆるゲルブッシュ61を介して支持されている。ゲルブッシュ61は、ゲル材料製のものであり、弾性変形が可能に構成された支持部材として機能している。より具体的には、図7及び図8に示すように、前側のカバーフレーム51の上面及び後側のカバーフレーム51上面には、左右に並んだ状態の2個のゲルブッシュ61がそれぞれ配置されている。一方、左側のカバーフレーム51の上面及び右側のカバーフレーム51の上面には、1個のゲルブッシュ61が底板フレーム42の中心より若干前側に位置するようにそれぞれ配置されている。図9に示すように、底板フレーム42の下面と、カバーフレーム51の上面との間にこれらのゲルブッシュ61を挟み込んだ状態で、当該底板フレーム42及びカバーフレーム51をボルト、ワッシャ等によってゲルブッシュ61に固定する。
【0056】
なお、ゲルブッシュ61の配置数は適宜変更することができる。例えば、前後のカバーフレーム51と同様に左右のカバーフレーム51の上面にゲルブッシュ61を2個ずつ配置して計8個のゲルブッシュ61によってカバーフレーム51を支持する構成等に変更することができる。
【0057】
このカバーフレーム51が底板フレーム42に取り付けられた状態で、カバー41は、前後左右に配置されるそれぞれのカバーフレーム51の側面に図略のネジ等の固定具によって固定される。これによって、カバー41は底板フレーム42に対して吊り下げられるような状態で支持部材(ゲルブッシュ61)を介して当該台車40に保持される。また、ゲルブッシュ61は弾性変形可能に構成されているので、底板フレーム42に対して、カバー41が上下左右で寡少の位置変化が可能な状態となっている。これによって、障害物等が自律移動装置3のカバー41に接触した場合は、その外力に応じてゲルブッシュ61が変形し、カバー41が台車40に対して相対変位することになる。
【0058】
なお、底板フレーム42とカバーフレーム51の間に配置される支持部材は、ゲルブッシュ61に限られるわけではない。例えば、本実施形態のゲルブッシュ61に代えて第1実施形態及び第2実施形態で用いたインシュレータやダンパ等に適宜変更することもできる。
【0059】
また、底板フレーム42には、カバー41の上方向の動きを規制するためのボールプランジャ62がブラケット63を介して設けられている。図8に示すように、ボールプランジャ62は前後左右に1つずつ(計4個)配置されており、それぞれのボールプランジャ62の先端部分がカバーフレーム51の上面に対向するように底板フレーム42の下面側に取り付けられている。より具体的には、図9に示すように、ボールプランジャ62は、S字に折り曲げられたブラケット63に軸部分が保持された状態で、底板フレーム42とカバーフレーム51の間に形成される上下方向の隙間を利用して配置されている。このボールプランジャ62は、ボールが配置される先端部分がカバーフレーム51の上面に接触するようにブラケット63に保持されており、カバーフレーム51の浮き上がりを防止している。
【0060】
これによって、カバー41が障害物等に接触して斜め上方向に浮き上がるような外力を受けたときでも、カバー41はボールプランジャ62によって上方向の移動を規制され、水平方向に移動することになる。従って、この構成であれば、上記近接スイッチの軸方向(上下方向)検出成分のうち近づく方向(上方向)が取り除かれるため、自律移動装置3の障害物等の接触における水平方向検出成分を精度良く検出することができる。なお、近接スイッチの軸方向検出成分のうち遠ざかる方向(下方向)は、近接スイッチがオフする方向であるから、自律移動装置3が停止する安全側になり、特にカバー41の下方向への変位は規制する必要がない。
【0061】
次に、第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72について説明する。第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72は、台車40とカバー41との相対変位に応じてオン/オフし、その検出信号を電子制御装置32に送信するためのものであり、検出対象の有無を非接触で検出することができるセンサである。本実施形態においても、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、静電容量形の近接スイッチを用いている。第1近接スイッチ71は、第1検出体71B(ドグ)と、該第1検出体71Bを検出するための第1センサ71A(センサ)と、有している。一方、第2近接スイッチ72についても同様に、第2検出体72B(ドグ)と、該第2検出体72Bを検出するための第2センサ72A(センサ)と、を有している。
【0062】
図7及び図8に示すように、第1センサ71A及び第2センサ72Aは、ともに、底板フレーム42の上面側の略中央に配置されている。底板フレーム42の第1センサ71Aが配置される場所には第1貫通孔71Cが形成されており、当該第1センサ71Aの一部(検出面)が、フレーム連結部材52に配置される第1検出体71Bと第1貫通孔71Cを通じて対面している。同様に、第2検出体72Bが配置される場所には第2貫通孔72Cが形成されており、当該第2センサ72Aの一部(検出面)が、フレーム連結部材52に配置される第2検出体72Bと第2貫通孔72Cを通じて対面している。
【0063】
第1検出体71Bは、適宜の金属により、円柱形状(例えば直径が4mm)に構成されている。第1センサ71Aは、第1検出体71Bが検出領域内にあるときはオン信号を出力し、第1検出体71Bとの距離が一定以上離れるとオフ信号を出力するように構成されている。本実施形態では、自律移動装置3が障害物等に接触しておらず、カバー41が台車40に対してニュートラルな位置にある場合は、第1検出体71Bが有する円形の端面の中心と第1センサ71Aの検出領域の中心とが対面するように、各構成の位置関係が設定されている。カバー41がニュートラルな位置にある状態では、第1センサ71Aはオン信号を電子制御装置32に出力する。一方、自律移動装置3が障害物等に接触することによって、カバー41が台車40に対して相対変位し、それに伴って第1検出体71Bが第1センサ71Aの検出領域外に移動したときは、第1センサ71Aによってオフ信号が電子制御装置32に出力される。
【0064】
一方、第2検出体72Bは、適宜の金属により、円柱状(例えば直径が8mm)に構成されている。第2センサ72Aは、第1センサ71Aと同様に、第2検出体72Bが検出領域内にあるときはオン信号を出力し、第2検出体72Bとの距離が一定以上離れるとオフ信号を出力するように構成されている。第2検出体72Bにおいても、カバー41が台車40に対してニュートラルな位置にある場合は、当該第2検出体72Bが有する円形の端面の中心と第2センサ72Aの検出領域の中心とが対面するように配置されている。
【0065】
ただし、第2近接スイッチは、第2検出体72Bの直径を第1検出体71Bの直径と異ならせることにより、カバー41の変位(即ち接触の強さ)に対する検出特性が第1近接スイッチ71と異なるように設定されている。具体的には、本実施形態では、第2検出体72Bの直径(8mm)が第1検出体71Bの直径(4mm)よりも大きく設定されている。従って、第2近接スイッチ72は、第1近接スイッチ71がオン状態からオフ状態に切り換わる変位量よりもより大きくカバー41が変位した場合、即ち、より大きな外力が加わったとき(より強く接触したとき)にオン状態からオフ状態に切り換わる。なお、第1検出体71B及び第2検出体72Bの直径又は形状は適宜変更することが可能であり、これによって、検出すべき衝撃の程度を調整することができる。
【0066】
以上の構成により、障害物等との接触の強さを3段階(接触なし、弱い接触、強い接触)に分けて検知することが可能となる。なお、第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72のそれぞれは電子制御装置32に接続されており、第1近接スイッチ71、第2近接スイッチ72による検出結果(オン/オフ信号)は電子制御装置32に出力される。
【0067】
この構成で、自律移動装置3の前後左右何れの方向から外力が加えられたとしても、台車40の下面(底板フレーム42)と、該下面に対向するフレーム連結部材52(カバー41)との間には水平方向の相対変位が生じる。上述したように、カバー41は、平面視において、台車40の中心部から見たときに前後左右に略対称形状で構成されている。従って、中心に配置される第1近接スイッチ71からカバー41の側面までの距離が、自律移動装置3の全周にわたって極端に異なることがないので、全方位に対する障害物等との接触を均等に検知することができる。
【0068】
また、本実施形態では、カバー41の上方向への動きを規制するための規制手段として、ボールプランジャ62が配置されている。これによって、自律移動装置3が障害物等に接触することによってカバー41を斜め上に押し上げるような力を受けた場合でも、ボールプランジャ62によってカバー41の上方向の相対変位が規制され、カバー41を押す押圧力は水平方向にガイドされることになる。従って、第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72によってカバー41の水平成分の動きを検出することで衝撃の程度を正確に検出することができる。
【0069】
電子制御装置32は、第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72とマイクロプロセッサとを電気的に接続するインタフェース回路を備えている。電子制御装置32は、自律移動を行う際に、第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72の検出結果に基づいて、障害物等との接触の有無、及び接触の強さを判定し、それらの判定結果に基づいて、電動モータ12を制御する。より具体的には、電子制御装置32は、障害物等との接触が無い場合には自律移動を継続し、弱い接触があった場合には電動モータ12を一時的に停止し、より強い接触があったときには電源供給を停止して電動モータ12を非常停止させるように制御する。
【0070】
本実施形態によれば、検出特性が異なる2つの近接スイッチ(第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72)を備えているため、障害物等との接触の強さを3段階(即ち、接触なし、弱い接触、強い接触)に分けて検知することができる。また、検知された接触の強さ(程度)に応じて電動モータ12を制御することにより、例えば、一時停止や非常停止等、検知された接触の強さに対応した段階的な回避動作をとることが可能となる。なお、自律移動装置3による接触検知処理の処理手順は、第2実施形態の自律移動装置2の処理手順(図6を参照)と同様であるので説明を省略する。
【0071】
次に、図10を参照して、本実施形態の自律移動装置3が、障害物に接触したときの第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72の検出結果の定量評価について説明する。図10の図面左側に示しているのが、自律移動装置3が非常停止又は一時停止したときの衝撃の強さを障害物が接触した方向ごとに示したグラフである。図10の図面右側に示しているのがグラフに対応する自律移動装置3に障害物が接触した位置を示したモデル図であり、このモデル図に示した矢印の方向がグラフに示した方向と対応している。
【0072】
図10のグラフに示すように、駆動手段が一時停止するように制御されたときの障害物の衝撃の大きさは全方位にわたって略一定である。即ち、第1近接スイッチ71が検出する衝撃の強さが、全方位にわたって略一定であり、障害物等がカバー41に接触した箇所によって衝撃を検出する精度の偏りが殆どないことがわかる。同様に、駆動手段が非常停止するように制御されたときの衝撃の大きさも全方位にわたって略一定である。更に、自律移動装置3は、一時停止するように制御されたときに検出した衝撃よりも大きい衝撃を検出した場合にのみ非常停止を行うように制御しており、検出した衝撃の大きさに応じて適切な制御が可能となっていることがわかる。このように、本実施形態の構成によって、障害物等がカバー41に接触した箇所によって衝撃を検出する精度の偏りを抑制するとともに、第1検出体71B及び第2検出体72Bの大きさ(径又は面積)を適宜に最適化することにより、所望する衝撃の大きさによって駆動手段を適切に制御できることが、図10に示す定量評価で示されている。
【0073】
以上に示したように、本実施形態の自律移動装置3は、台車40と、カバー41と、第1近接スイッチ71と、電子制御装置32と、を備える。台車40には、駆動手段が設けられる。カバー41は、台車40の側面の一部を覆い、かつ、台車40に対して相対変位可能に該台車40に取り付けられる。第1近接スイッチ71は、台車40に対してカバー41が所定値変位したときにオン/オフする検出信号を出力し、台車40の中心部に配置される。電子制御装置32は、第1近接スイッチ71から出力される検出信号に応じて前記駆動手段を制御する。
【0074】
これにより、例えば自律移動装置3が障害物等と接触した場合に、自律移動装置3に加えられる外力により、カバー41は台車40に対して相対変位する。この相対変位を台車40の中心部に配置される第1近接スイッチ71によって検出することで、カバー41の全方位にわたっての相対変位を均等に検出することができる。これによって、複数の方向から障害物等が接触することを想定して検出手段を方向ごとに配置する必要もないので、検出手段の数を抑制できる。また、安価でシンプルな構成のオン/オフを切り換える2値の第1近接スイッチ71を用いて、全方位の接触又は衝突を検知することができる。更に、第1近接スイッチ71を中心部に配置するので、配線の取回し等をシンプルなものとすることができ、接触及び衝突を検知するための構成を簡素化できる。
【0075】
また、本実施形態の自律移動装置3においては、カバー41は、第1近接スイッチ71が配置される場所を中心として前後左右に対称形状となるように構成される。
【0076】
これにより、カバー41が対称形状となるように構成されているので、障害物等が接触したカバー41の箇所によって相対変位量が偏ることを抑制できる。従って、自律移動装置3への接触及び衝突を全方位にわたってより均等に検出することができ、検出精度が向上する。
【0077】
また、本実施形態の自律移動装置3においては、カバー41が台車40に対して上方向に移動することを規制するためのボールプランジャ62を備える。
【0078】
これにより、斜め下側から障害物等がカバー41に接触することにより、カバー41が斜め上方向に移動しようとした場合でも、ボールプランジャ62によって上側への逃げが規制されるので、カバー41の水平方向の変位量を十分に確保できる。従って、第1近接スイッチ71は、カバー41の水平方向の移動を検出することで、斜め下側から障害物等が当たった場合等でも衝突及び接触の検出を精度良く行うことができる。
【0079】
また、本実施形態の自律移動装置3においては、カバー41は、外部から付与される力に応じて該カバー41を相対変位可能に支持するゲルブッシュ61を介して台車40に取り付けられる。
【0080】
これにより、自律移動装置3が障害物等と接触した場合に、自律移動装置3のカバー41に加わる外力の大きさに応じて、カバー41が台車40に対して相対変位する。従って、例えば、障害物が接触した衝撃が無視できるほど小さいにもかかわらず衝突を検出する、或いは、障害物が接触した衝撃が大きいにもかかわらず衝突を検出しないといった事態を防止でき、衝撃に応じた検出手段による正確な検出が可能となる。
【0081】
また、本実施形態の自律移動装置3においては、以下のように構成される。即ち、自律移動装置3は、第1近接スイッチ71と検出特性が異なる第2近接スイッチ72を更に備える。第2近接スイッチ72は、台車40に対してカバー41が、第1近接スイッチ71の所定値よりも大きく変位したときにオフする検出信号を出力する。電子制御装置32は、第1近接スイッチ71から出力されるオン/オフ信号、及び、第2近接スイッチ72から出力されるオン/オフ信号に応じて、電動モータ12(駆動手段)を制御する。
【0082】
これにより、接触の強さを3段階(即ち、接触なし、弱い接触、強い接触)に分けて検知することができる。また、検知された接触の程度(強さ)に応じて駆動手段を制御することにより、検知された接触の程度(強さ)に対応した段階的な停止動作及び回避動作等の制御を行うことが可能となる。
【0083】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように種々の変形が可能である。
【0084】
上記実施形態では、検出手段(第1近接スイッチ21、第2近接スイッチ22、第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72)として静電容量形のものを用いたが、静電容量形以外のものに変更することができる。例えば、前記検出手段として誘導形、超音波形、光電形、磁気形の近接スイッチを用いてもよい。なお、台車10(台車40)とカバー11(カバー41)との相対変位を検出する検出器としては非接触式のものが好ましいが、接触式の検出器を用いることを排除するものではない。
【0085】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、第1近接スイッチ21及び第2近接スイッチ22を台車10(筐体10A)の上面側に取り付ける構成である。この構成に代えて、オムニホイール13と干渉しない範囲で筐体10Aの下面側を覆うようにカバーを取り付けるとともに、第1近接スイッチ21及び第2近接スイッチ22を筐体10Aの下面側に取り付ける構成としてもよい。
【0086】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、検出体21B,22Bとして円形に形成されたものを用いたが、例えば楕円形や長方形等のものを用いることもできる。このようにすれば、変位の検出方向に指向性を持たせることができる。
【0087】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、カバー11を台車10に対して相対変位可能に支持するためにインシュレータ20を用いたが、インシュレータに代えてダンパ等を用いてもよい。
【0088】
また、第3実施形態では、第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72の両方が台車40の中心部に配置される構成であるが、一方を台車の中心部に配置し、他方を台車の中心部から離して配置する構成に変更してもよい。また、第3実施形態の構成から第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72の何れか1つを省略し、単一の近接スイッチによって、自律移動装置3の障害物等の接触及び衝突を検出する構成とすることもできる。
【0089】
上記実施形態では、1つ又は2つの近接スイッチを用いたが、3つ以上の近接スイッチを用いる構成としてもよい。この場合、各近接スイッチの検出特性を異ならせることにより、障害物等との接触の強さ(程度)を更に多段階に分けて検出することができる。
【0090】
また、上記実施形態では、検出手段(第1近接スイッチ21、第2近接スイッチ22、第1近接スイッチ71及び第2近接スイッチ72)として、検出領域内に検出体があるときに出力がオンになるNO(ノーマルオープン)タイプのものが用いられている。この構成は適宜変更することが可能であり、例えば、検出領域内に検出体が無いときに出力がオンになるNC(ノーマルクローズ)タイプのものを用いることもできる。
【0091】
上記実施形態では、障害物等との接触が検知されたときに、停止(一時停止又は非常停止)したが、このような停止動作に代えて、例えば接触した障害物等から離れるような回避動作を行うようにしてもよい。
【0092】
上記実施形態では、車輪として全方位に移動可能なオムニホイール13を採用したが、通常の車輪(操舵輪及び駆動輪)を用いてもよい。
【0093】
なお、以上に説明した実施形態及びその変形例から、少なくとも以下の技術思想を把握することができる。
【0094】
(1)駆動手段が設けられた台車と、
前記台車の側面及び上下面の全て又は一部を覆い、かつ、前記台車に対して相対変位可能に該台車に取り付けられるカバーと、
前記台車の上下面の少なくとも一方面と該上下面の少なくとも一方面に対向する前記カバーとの相対変位に応じた検出信号を出力する検出手段と、
前記検出手段から出力される検出信号に応じて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする自律移動装置。
【0095】
これにより、例えば自律移動装置が障害物等と接触した場合に、自律移動装置に加えられる外力により、カバーが台車に対して相対変位する。ここで、自律移動装置の前後左右何れの方向から外力が加えられたとしても、台車の上下面の少なくとも一方面と該上下面の少なくとも一方面に対向するカバーとの間には水平方向の相対変位が生じる。従って、台車の上下面と該上下面に対向するカバーとの相対変位を検出する最低限1つの検出手段によって全方位に対する障害物等との接触を検知することができる。そのため、駆動手段を制御して自律移動する際に、より少ない検出器(検出手段)で全方位の接触又は衝突を検知することが可能となる。
【0096】
(2)前記自律移動装置であって、
前記カバーは、外部から付与される力に応じて該カバーを相対変位可能に支持する支持部材を介して前記台車に取り付けられることを特徴とする自律移動装置。
【0097】
このようにすれば、例えば自律移動装置が障害物等と接触したときに、自律移動装置のカバーに加わる外力の大きさに応じて、カバーが台車に対して相対変位する。そのため、自律移動装置(カバー)に作用する力の大きさ、即ち障害物等との接触の強さに応じた検出結果を得ることが可能となる。
【0098】
(3)前記自律移動装置であって、
前記支持部材は、外部から付与される力に比例して該カバーを相対変位可能に支持することを特徴とする自律移動装置。
【0099】
このようにすれば、例えば自律移動装置が障害物等と接触したときに、自律移動装置のカバーに加わる外力の大きさに比例して、カバーが台車に対して相対変位する。そのため、自律移動装置(カバー)に作用する力の大きさ、即ち障害物等との接触の強さに比例した検出結果を得ることが可能となる。
【0100】
(4)前記自律移動装置であって、
前記検出手段は、前記カバーの回転軸からオフセットした位置に配設されることを特徴とする自律移動装置。
【0101】
このように配設すれば、例えば自律移動装置が障害物等と接触したときに、カバーを回転させる方向に外力が加えられたとしても、カバーの変位即ち障害物等との接触を検知することが可能となる。
【0102】
(5)前記自律移動装置であって、
前記駆動手段は、電動モータと、該電動モータにより駆動され、前後左右の全方向に移動可能な車輪とを有することを特徴とする自律移動装置。
【0103】
このようにすれば、電動モータを駆動することにより、台車(自律移動装置)を前後左右の全方向に移動させることが可能となる。
【0104】
(6)前記自律移動装置であって、
前記検出手段は、前記台車の上下面の少なくとも一方面と対向する前記カバーの内面に取り付けられる検出体と、前記台車の上下面の少なくとも一方面の前記検出体と対向する位置に取り付けられ、前記検出体の有無を非接触で検出するセンサと、を有することを特徴とする自律移動装置。
【0105】
このように非接触式の検出手段を用いる場合には、検出手段の抵抗によってカバーの変位が抑制されることがない。また、例えば、支持部材の減衰特性を変更し、外力に対するカバーの変位量を調節する際に、検出手段の抵抗を考慮する必要がないため、検出手段の検出特性と支持部材の減衰特性とを独立して設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】第1実施形態に係る自律移動装置の斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る自律移動装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る自律移動装置による接触検知処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態に係る自律移動装置の斜視図である。
【図5】第2実施形態に係る自律移動装置の構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態に係る自律移動装置による接触検知処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第3実施形態に係る自律移動装置の斜視図である。
【図8】第3実施形態に係る自律移動装置の平面図である。
【図9】第3実施形態に係る自律移動装置の構成を示すブロック図である。
【図10】自律移動装置が衝撃を検出したときの制御の様子を衝撃の強さと方向ごとに示したグラフである。
【符号の説明】
【0107】
1,2,3 自律移動装置
10 台車
10A 筐体
11 カバー
12 電動モータ
13 オムニホイール
20 インシュレータ(支持部材)
21 第1近接スイッチ
22 第2近接スイッチ
21A センサ
22A センサ
21B 検出体
22B 検出体
30,31,32 電子制御装置(制御手段)
40 台車
40A 筐体
41 カバー
61 ゲルブッシュ(支持部材)
62 ボールプランジャ(規制手段)
71 第1近接スイッチ
72 第2近接スイッチ
71A 第1センサ
72A 第2センサ
71B 第1検出体
72B 第2検出体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段が設けられた台車と、
前記台車の側面及び上下面の全て又は一部を覆い、かつ、前記台車に対して相対変位可能に該台車に取り付けられるカバーと、
前記台車に対して前記カバーが所定値変位したときにオン/オフする検出信号を出力し、前記台車の中心部に配置される検出手段と、
前記検出手段から出力される検出信号に応じて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする自律移動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自律移動装置であって、
前記カバーは、前記検出手段が配置される場所を中心として前後左右に対称形状となるように構成されることを特徴とする自律移動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自律移動装置であって、
前記カバーが前記台車に対して上方向に移動することを規制するための規制手段を備えることを特徴とする自律移動装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の自律移動装置であって、
前記カバーは、外部から付与される力に応じて該カバーを相対変位可能に支持する支持部材を介して前記台車に取り付けられることを特徴とする自律移動装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の自律移動装置であって、
前記検出手段と検出特性が異なる第2の検出手段を更に備え、
前記第2の検出手段は、前記台車に対して前記カバーが、前記検出手段の所定値と異なる所定値変位したときにオン/オフする検出信号を出力し、
前記制御手段は、前記検出手段から出力されるオン/オフ信号、及び、前記第2の検出手段から出力されるオン/オフ信号に応じて、前記駆動手段を制御することを特徴とする自律移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−122930(P2010−122930A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296286(P2008−296286)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト、ロボット搬送システム(サービスロボット分野)、全方向移動自律搬送ロボット開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】