説明

自昇式型枠装置及びそれを用いた堰板の盛替え方法

【課題】コンクリートの品質や全体工期に影響を与えることなく堰板解体床から堰板設置床への堰板の移動を迅速に行う。
【解決手段】本発明に係る自昇式型枠装置1は、堰板解体床2、支保工設置床3、堰板設置床4及びPCストランド巻回作業床5の各層を下から順に積層してあり、全体を上昇させながらコンクリート躯体7を下方から順次構築できるようになっている。堰板解体床2は、堰板13を解体するための作業スペースとなっているが、該堰板解体床には、解体された堰板13を載置可能な荷揚げステージ21を延設してあり、その水平床面位置が堰板設置床4及び支保工設置床3の各最外縁より外側となるように構成してある。荷揚げステージ21は、その床面上に載置された堰板13を堰板設置床4及び支保工設置床3と干渉することなくスムーズに吊り上げることができるように、跳出し長さ及び幅並びに設置位置を適宜決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として鋼管・コンクリート複合構造の型枠工事に適用される自昇式型枠装置及びそれを用いた堰板の盛替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋脚等の塔状構造物を構築する際、通常の鉄筋コンクリート(以下、RC)構造では、その高さが高くなればなるほど、配筋作業や型枠の組立及び解体に時間や手間がかかるため、RC構造に代えて、鋼管・コンクリート複合構造が採用されることも少なくない。
【0003】
かかる鋼管・コンクリート複合構造を構築するにあたっては、まず、鋼管を先行して立設するとともに、該鋼管頂部に設置された反力架台から作業足場と型枠とが一体化された型枠装置を吊持ワイヤーで吊り降ろし、しかる後、吊持ワイヤーが挿通されたセンターホールジャッキを駆動することで該吊持ワイヤーから反力をとって型枠装置を上昇させつつ、配筋、PCストランドの巻付け、型枠設置及びコンクリート打設という一連の工程をリフトと呼ばれる所定の高さ単位ごと、例えば1.8m程度ごとに繰り返し行う。
【0004】
このようにすることで、先行立設された鋼管の周囲にコンクリート躯体を下方から効率よく構築していくことができるとともに、鋼管による耐震性の向上を図ることも可能となる。
【0005】
また、型枠設置に関しては、堰板を滑動させずに順次上方へ盛り替えながらコンクリートを打設していくジャンプアップ工法(ジャンピング工法)が知られており、堰板を上方に滑動させながらコンクリートを打設するスリップフォーム工法に比べ、良好なコンクリートを形成することが可能である。
【0006】
ここで、型枠設置、打設されたコンクリートの圧力支保、同じくその養生、型枠解体といった一連の工程は、上述したようにリフト単位で行われるため、各リフトで同時進行する工程は互いに異なる。
【0007】
そのため、鋼管・コンクリート複合構造を構築する際に用いられる型枠装置は、PCストランド巻付け機を走行自在に設置するためのPCストランド設置床と、型枠を構成する堰板を建て込むための作業スペースである堰板設置床と、堰板とともに型枠を構成する支保工を堰板の背面に設置する支保工設置床と、堰板を解体するための作業スペースである堰板解体床とを上から順に配したいわば重層構造あるいは多段構造になっている。
【0008】
このような型枠装置の重層化あるいは多段化により、異なる工程がリフトごとに同時進行していても、これらを互いに干渉させることなく効率よく処理することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2591422号公報
【特許文献2】特許第2536395号公報
【特許文献3】特開2001−32522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ジャンプアップ工法は上述したように堰板を順次上方へ盛り替えていくものであるところ、型枠装置が重層構造であるため、堰板解体床で解体された堰板を堰板設置床まで鉛直移動するには、時間と手間がかかるという問題を生じていた。
【0011】
すなわち、塔状構造物が矩形状断面である場合、従来の型枠装置においては、センターホールジャッキが設置される側方位置を避けて、コーナー位置に小運搬用の昇降機を設け、該昇降機を用いて堰板を堰板解体床から堰板設置床に鉛直移動させていたが、盛替え対象となる平板状の堰板は主として矩形状断面の直線部に数多く建て込まれるため、解体された堰板をコーナー位置まで水平移動させるだけでも多くの手間と時間がかかる。
【0012】
加えて、上述した小運搬用の昇降機は、自昇式型枠装置に設けられるものであるとともに設置場所がコーナー位置であるため、規模を小さくせざるを得ない。そのため、堰板を最小単位まで解体しなければならないという問題や、最小単位に解体された大量の堰板を鉛直移動するには、小運搬用の昇降機を何度も往復させねばならないという問題も生じていた。
【0013】
さらに、堰板の移動に時間がかかると、ケレンや清掃といった作業に時間を割くことが難しくなるため、実際に使用されている分とは別に、1リフト分の堰板を別途用意しなければならないという問題も生じていた。
【0014】
かかる問題を回避すべく、堰板解体床においてコンクリート面から剥離された堰板を直上に吊り上げることで堰板設置床まで最短距離で鉛直移動し、該堰板設置床でそのまま建て込む方法も採用されてはいるが(特許文献3)、かかる方法においては、吊上げ作業に支障が出ないよう、支保工設置床において堰板背面に配置された支保工を一時的に撤去しなければならないため、コンクリートの品質確保と工期短縮との両立が難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、コンクリートの品質や全体工期に影響を与えることなく、堰板解体床から堰板設置床への堰板の移動を迅速に行うことが可能な自昇式型枠装置及びそれを用いた堰板の盛替え方法を提供することを目的とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る自昇式型枠装置は請求項1に記載したように、堰板を建て込むための作業スペースである堰板設置床と該堰板設置床の下方に配置され前記堰板の背面に配置される支保工が設置された支保工設置床と該支保工設置床の下方に配置され前記堰板を解体するための作業スペースである堰板解体床とを備えるとともに、鋼管・コンクリート複合構造を構成する鋼管及びコンクリート躯体のうち、鋼管の頂部に設置された反力架台から吊り下げられた引張材に反力をとることで全体を上昇させながら前記コンクリート躯体を下方から順次構築可能になっている自昇式型枠装置において、
荷揚げステージを、少なくともその一部の水平床面位置が前記堰板設置床及び前記支保工設置床の各最外縁より外側となるように前記堰板解体床に延設したものである。
【0017】
また、本発明に係る堰板の盛替え方法は請求項2に記載したように、鋼管・コンクリート複合構造を構成する鋼管及びコンクリート躯体のうち、鋼管の頂部に設置された反力架台から吊り下げられた引張材に反力をとることで自昇式型枠装置を上昇させながら、前記コンクリート躯体を下方から順次構築するとともに、前記自昇式型枠装置に備えられた堰板設置床で堰板を建て込み、該堰板設置床の下方に配置された支保工設置床において前記堰板の背面に支保工を配置し、該支保工設置床の下方に配置された堰板解体床において前記堰板を解体し、該堰板解体床で解体された堰板を前記堰板設置床に移動した後、該移動された堰板を前記堰板設置床で再び建て込む堰板の盛替え方法において、
前記堰板解体床で解体された堰板を、少なくとも一部の水平床面位置が前記堰板設置床及び前記支保工設置床の各最外縁より外側となるように前記堰板解体床から延設されてなる荷揚げステージに水平移動し、該荷揚げステージ上に水平移動された堰板をクレーンで前記堰板設置床の高さ以上に吊り上げ、吊持された堰板を該吊持状態のまま堰板が設置される水平位置まで水平移動した後、堰板を吊り降ろして前記堰板設置床での堰板の建込みを行うものである。
【0018】
また、本発明に係る自昇式型枠装置を用いた堰板の盛替え方法は、前記堰板を解体する際、隣接する堰板同士を相互に連結したまま堰板群として解体し、該堰板群を搬送台車に載せて前記荷揚げステージまで水平移動するものである。
【0019】
また、本発明に係る自昇式型枠装置を用いた堰板の盛替え方法は、前記支保工設置床を構成する構造材に滑車を取り付けるとともに該滑車に前記堰板群を吊持することにより、該堰板群の解体及び前記搬送台車への載置を行うものである。
【0020】
本発明に係る自昇式型枠装置及びそれを用いた堰板の盛替え方法においては、自昇式型枠装置に備えられた堰板設置床で堰板を建て込み、該堰板設置床の下方に配置された支保工設置床において堰板の背面に支保工を配置し、該支保工設置床の下方に配置された堰板解体床において堰板を解体し、該堰板解体床で解体された堰板を堰板設置床に移動した後、該移動された堰板を堰板設置床で再び建て込むという手順で堰板の盛替えを行うが、かかる盛替えを行うにあたっては、堰板解体床で解体された堰板を、該堰板解体床から延設されてなる荷揚げステージに水平移動する。
【0021】
型枠装置は上述したように、下から順に堰板解体床、支保工設置床、堰板設置床が積層されてなり、従来であれば、支保工設置床や堰板設置床が邪魔になって、堰板解体床の床面に載置された堰板を直接吊り上げることはできない。
【0022】
そのため、従来においては、矩形平面形状をなす型枠装置のコーナー位置に設けられた小運搬用の昇降機を用いて堰板を鉛直移動していたが、昇降機の移動能力が十分ではなかったり堰板解体床での移動距離が長くなる等の理由により、堰板の盛替え効率が悪かった。
【0023】
本出願人はこの点に鑑みて検討を行ったが、昇降機の設置場所をコーナー部から直線部に変更した上、その規模を大きくしようとしても、型枠装置の直線部には通常、センターホールジャッキが据え付けられているため、その場所に重ねて昇降機を設けることは難しい。
【0024】
そこで、下層階であるがゆえに空頭制限があってクレーンでの吊上げが本来的に不可能な堰板解体床であっても、その床面上の堰板を吊り上げることができないかに着眼した結果、上述した発明をなしたものである。
【0025】
すなわち、本発明に係る荷揚げステージは、少なくともその一部の水平床面位置が堰板設置床及び支保工設置床の各最外縁より外側となるように、堰板解体床に延設してある。
【0026】
このようにすると、荷揚げステージは、鉛直断面で見れば、支保工設置床や堰板設置床の最外縁から水平に跳ね出す形となり、かくして床面上に載置された堰板をクレーンで自在に吊り上げることが可能となる。
【0027】
堰板解体床で解体された堰板を、該堰板解体床から延設されてなる荷揚げステージに水平移動したならば、次に、荷揚げステージ上に水平移動された堰板をクレーンで堰板設置床の高さ以上に吊り上げる。
【0028】
次に、吊持された堰板を該吊持状態のまま堰板が設置される水平位置まで水平移動し、次いで堰板を吊り降ろして堰板設置床での堰板の建込みを行う。
【0029】
このようにすれば、解体された堰板を堰板解体床から堰板設置床に効率よく鉛直移動することが可能となる。
【0030】
型枠装置は、堰板解体床、支保工設置床及び堰板設置床が下から順に積層されてなる重層構造であるが、かかる3つの作業床がこの順序で配置されている限り、別の作業床を含むかどうかは任意であるとともに、3つの作業床の間に別の作業床が介在する場合を排除するものでもない。
【0031】
例えば、PCストランド巻付け機が旋回自在に設置してなるPCストランド巻回作業床を堰板設置床の上方に配置してもよい。
【0032】
また、各作業床を複数段構成とすることも可能であり、例えば支保工設置床を二段構成としてもかまわない。
【0033】
堰板は、従来と同様に最小単位まで解体してもかまわないが、隣接する堰板同士を相互に連結したまま堰板群として解体し、該堰板群を搬送台車に載せて荷揚げステージまで水平移動するようにすれば、堰板の盛替え効率がさらに向上する。
【0034】
また、堰板群として解体する際、支保工設置床を構成する構造材に滑車を取り付けるとともに、該滑車に堰板群を吊持することで、該堰板群の解体及び搬送台車への載置を行うようにすれば、単独ではなく連結状態であっても、堰板の吊り降ろし及び水平移動を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係る自昇式型枠装置の鉛直断面図。
【図2】A−A線に沿う水平断面図であり、堰板解体床2の平面図。
【図3】B−B線に沿う水平断面図であり、支保工設置床3の平面図。
【図4】本実施形態に係る堰板の盛替え方法を実施している様子を示した鉛直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る自昇式型枠装置及びそれを用いた堰板の盛替え方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る自昇式型枠装置を示した鉛直断面図、図2及び図3は、同じく水平断面図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係る自昇式型枠装置1は、従来同様、多層構造になっており、堰板解体床2、支保工設置床3、堰板設置床4及びPCストランド巻回作業床5の各層を下から順に積層して構成してあるとともに、鋼管・コンクリート複合構造8を構成する鋼管6の頂部に設置された反力架台(図示せず)から吊り下げられた引張材であるワイヤーロープ9に反力をとることで、全体を上昇させながら鋼管・コンクリート複合構造8を構成するコンクリート躯体7を下方から順次構築できるようになっている。
【0038】
最上層に配置されたPCストランド巻回作業床5には、PCストランド巻付け機10を旋回自在に設置してあり、該巻付け機から繰り出されたPCストランド11を鉄筋12の周囲に巻き付けることができるようになっている。
【0039】
堰板設置床4は、PCストランド巻回作業床5の下方に配置され、クレーンで吊り込まれた堰板13を所定位置に建て込んで保持する作業を行うことができるようになっている。
【0040】
支保工設置床3は、堰板設置床4の下方に配置され、堰板13の背面に配置される支保工14を設置してある。支保工設置床3は、上段に配置された支保工設置上段床3aと下段に配置された支保工設置下段床3bとからなり、支保工設置上段床3aには支保工14の主要部分が設置され、支保工設置床3bには、支保工14の下弦材に連結されたローラー15を配置してあり、装置全体を上昇させるときにコンクリート面との接触が防止されるようになっている。
【0041】
堰板解体床2は、支保工設置床3の下方に配置され、堰板13を解体するための作業スペースとなっている。
【0042】
堰板解体床2には、解体された堰板13を載置可能な荷揚げステージ21を延設してあるとともに、該荷揚げステージを、その水平床面位置が堰板設置床4及び支保工設置床3の各最外縁より外側となるように、換言すれば堰板設置床4及び支保工設置床3の最外縁から水平に跳ね出すように構成してある。
【0043】
荷揚げステージ21は、その床面上に載置された堰板13を堰板設置床4及び支保工設置床3と干渉することなくスムーズに吊り上げることができるように、その跳ね出し長さ(奥行き)及び幅、並びに設置位置を適宜決定する。
【0044】
特に、支保工設置床3には図3でよくわかるように、ワイヤーロープ9が挿通されるセンターホールジャッキ31を、該ジャッキが据え付けられる据付フレーム32とともに、矩形状をなす堰板解体床2の各直線部に2ヶ所、計8ヶ所に設置してあるので、これらセンターホールジャッキ31及びその据付フレーム32と干渉しないようにする。
【0045】
荷揚げステージ21は、堰板解体床2の直線部のうち、昇降階段が設置される側、図2では下側を除いた三ヶ所に延設してある。
【0046】
荷揚げステージ21は、堰板解体床2とできるだけ段差ができないように構成するのが望ましい。
【0047】
本実施形態に係る自昇式型枠装置1を用いて堰板13の盛替えを行うには、まず、堰板解体床2で堰板13を解体する。
【0048】
堰板13は、最小単位で解体するのではなく、隣接するもの同士が相互に連結された堰板群としてコンクリート面から剥離解体する。例えば、縦配置で横3列、縦2列に相互連結された計6枚の堰板13を堰板群として解体する。
【0049】
ここで、堰板13を単体ではなく堰板群として解体する場合、堰板単体の大きさを900mm×600mmとすると、堰板群の大きさは、1,800mm×1,800mmになるとともに、それに応じて自重も単体の25kgから150kgと増加する。
【0050】
そのため、図4に示すように、支保工14の下弦材に定滑車41を取り付け、該定滑車とそれに組み合わされる動滑車42とで、堰板解体床2に対応するリフト位置のコンクリート面に配置されている堰板13を堰板群として吊り上げつつ、該コンクリート面から剥離解体する。定滑車41に掛けたロープを引く作業は、支保工設置下段床3bで適宜行えばよい。
【0051】
堰板13は、堰板解体床2の床面に直接吊り降ろすのではなく、同図に示すように搬送台車43の上に載置し、次いで、搬送台車43に載せた堰板13をその状態で荷揚げステージ21まで水平移動する。
【0052】
搬送台車43は、台車本体に走行車輪を取り付けてなり、該台車本体に形成された溝に堰板13の縁部を落とし込むことで、堰板13の荷重を支持しながら水平移動することができるようになっている。
【0053】
堰板13を搬送台車43で水平移動する際は、堰板13が堰板群として例えば、1,800mm×1,800mmの大きさになっているため、これを立てた状態、つまりコンクリート面から剥離解体されたままの状態で台車本体の溝に落とし込み、次いで、横方向に倒れないように例えば2人の作業員で支えながら水平移動するようにすればよい。
【0054】
堰板13を荷揚げステージ21まで水平移動したならば、次に、堰板13を荷揚げステージ21からクレーンで吊り上げ、PCストランド巻回作業床5の上を越えて水平移動させた後、これを吊り降ろし、堰板設置床4を作業スペースとして堰板13を建て込む。
【0055】
堰板13を建て込むにあたっては、クレーンで吊り降ろされた状態、すなわち単体ではなく、互いに連結された堰板群として建て込めばよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る自昇式型枠装置1及びそれを用いた堰板の盛替え方法によれば、荷揚げステージ21を、その水平床面位置が堰板設置床4及び支保工設置床3の各最外縁より外側となるように、堰板解体床2に延設したので、荷揚げステージ21は、鉛直断面で見れば、支保工設置床3や堰板設置床4の最外縁から水平に跳ね出す形となる。
【0057】
そのため、荷揚げステージ21の床面に載置された堰板13をクレーンで自在に吊り上げることが可能となり、解体された堰板13を堰板解体床2から堰板設置床4に効率よく鉛直移動することができるとともに、その結果、堰板13の盛替え効率が格段に向上する。
【0058】
また、支保工設置床3に設置されたセンターホールジャッキ31と干渉しないように荷揚げステージ21の跳ね出し長さや幅を設定することにより、矩形平面状をなす堰板解体床2の直線部に荷揚げステージ21を配置することが可能となり、コンクリート躯体7の直線部に配置された堰板13の水平移動距離が大幅に短縮され、堰板13の盛替え効率はさらに向上する。
【0059】
また、本実施形態に係る自昇式型枠装置1を用いた堰板の盛替え方法によれば、隣接する堰板13同士を相互に連結したまま堰板群として解体し、該堰板群を搬送台車43に載せて荷揚げステージ21まで水平移動するようにしたので、堰板13を最小単位で解体搬送する場合に比べ、堰板13の移動効率ひいては盛替え効率がさらに向上する。
【0060】
また、本実施形態に係る自昇式型枠装置1を用いた堰板の盛替え方法によれば、堰板13を堰板群として解体する際、支保工14の下弦材に定滑車41を取り付け、該定滑車とそれに組み合わされる動滑車42とで、堰板13を堰板群として吊り上げつつ、該コンクリート面から剥離解体するようにしたので、単独ではなく連結状態であっても、堰板13の吊り降ろし及び水平移動を容易に行うことが可能となる。
【0061】
また、本実施形態に係る自昇式型枠装置1を用いた堰板の盛替え方法によれば、堰板13を単体ではなく互いに連結された状態で複数枚で解体するとともに、これを荷揚げステージ21に移動した後、同様に一括吊上げするようにしたので、他の工程との関係では十分な余裕時間が生じ、その間、ケレンや清掃あるいは剥離剤塗布といった作業に時間を割くことが可能となる。
【0062】
そのため、堰板13は、実際に建て込まれている分だけで足りることとなり、従前のように、1リフト分の堰板を別途用意する必要がなくなる。
【0063】
本実施形態では、搬送台車43を用いて堰板13をそれらが相互に連結された状態で水平移動するようにしたが、場合によっては搬送台車43を使用せずに手作業で荷揚げステージ21まで運ぶようにしてもかまわない。
【0064】
また、本実施形態では、堰板13を最小単位ではなく互いに連結された堰板群の状態で解体するようにしたが、場合によっては定滑車41及び動滑車42を省略し、従前通り、最小単位で解体するようにしてもかまわない。
【0065】
これらの構成においては、実施形態記載の構成ほど迅速な堰板移動はできないが、荷揚げステージ21を設けたことによる作用効果は、上述した実施形態と何ら変わるものではない。
【符号の説明】
【0066】
1 自昇式型枠装置
2 堰板解体床
3 支保工設置床
4 堰板設置床
6 鋼管
7 コンクリート躯体
8 鋼管・コンクリート複合構造
9 ワイヤーロープ(引張材)
13 堰板
14 支保工
21 荷揚げステージ
41 定滑車(滑車)
42 動滑車(滑車)
43 搬送台車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堰板を建て込むための作業スペースである堰板設置床と該堰板設置床の下方に配置され前記堰板の背面に配置される支保工が設置された支保工設置床と該支保工設置床の下方に配置され前記堰板を解体するための作業スペースである堰板解体床とを備えるとともに、鋼管・コンクリート複合構造を構成する鋼管及びコンクリート躯体のうち、鋼管の頂部に設置された反力架台から吊り下げられた引張材に反力をとることで全体を上昇させながら前記コンクリート躯体を下方から順次構築可能になっている自昇式型枠装置において、
荷揚げステージを、少なくともその一部の水平床面位置が前記堰板設置床及び前記支保工設置床の各最外縁より外側となるように前記堰板解体床に延設したことを特徴とする自昇式型枠装置。
【請求項2】
鋼管・コンクリート複合構造を構成する鋼管及びコンクリート躯体のうち、鋼管の頂部に設置された反力架台から吊り下げられた引張材に反力をとることで自昇式型枠装置を上昇させながら、前記コンクリート躯体を下方から順次構築するとともに、前記自昇式型枠装置に備えられた堰板設置床で堰板を建て込み、該堰板設置床の下方に配置された支保工設置床において前記堰板の背面に支保工を配置し、該支保工設置床の下方に配置された堰板解体床において前記堰板を解体し、該堰板解体床で解体された堰板を前記堰板設置床に移動した後、該移動された堰板を前記堰板設置床で再び建て込む堰板の盛替え方法において、
前記堰板解体床で解体された堰板を、少なくとも一部の水平床面位置が前記堰板設置床及び前記支保工設置床の各最外縁より外側となるように前記堰板解体床から延設されてなる荷揚げステージに水平移動し、該荷揚げステージ上に水平移動された堰板をクレーンで前記堰板設置床の高さ以上に吊り上げ、吊持された堰板を該吊持状態のまま堰板が設置される水平位置まで水平移動した後、堰板を吊り降ろして前記堰板設置床での堰板の建込みを行うことを特徴とする堰板の盛替え方法。
【請求項3】
前記堰板を解体する際、隣接する堰板同士を相互に連結したまま堰板群として解体し、該堰板群を搬送台車に載せて前記荷揚げステージまで水平移動する請求項2記載の堰板の盛替え方法。
【請求項4】
前記支保工設置床を構成する構造材に滑車を取り付けるとともに該滑車に前記堰板群を吊持することにより、該堰板群の解体及び前記搬送台車への載置を行う請求項3記載の堰板の盛替え方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−32814(P2011−32814A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182385(P2009−182385)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】