説明

自立駆動型テレメトリ観測装置とその動作方法

【課題】装置の遠隔メンテナンスの簡単化を図る。
【解決手段】給電制御ユニットにより、上記電力生成ユニットにより生成された電力と、上記電力蓄積ユニットにおける蓄積電力の残量をそれぞれ検出し、この生成された電力の検出値及び蓄積電力の残量検出値を上記データロガーに通知する。これに対しデータロガーでは、上記給電制御ユニットから通知された生成電力の検出値及び蓄積電力の残量検出値に基づいて、上記電力生成ユニット及び上記電力蓄積ユニットに異常があるか否か判定する。そして、上記電力生成ユニットと電力蓄積ユニットの少なくとも一方に異常があると判定された場合に、上記生成電力の検出値及び蓄積電力の残量検出値に基づいて異常の原因を推定し、この推定された異常の原因を表す情報をデータ収集装置へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、山間地域等の商用電源設備のない場所において、バッテリを電源として防災用監視データや各種環境データを観測し、その観測データを遠隔地のデータ収集装置へ転送する自立駆動型テレメトリ観測装置とその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、急流河川や土砂災害危険地域が多く、大小の地震や台風等により大規模な気象災害が発生しやすい。そこで、このような大規模気象災害による道路や建物等のインフラ設備の被害規模を把握したり、災害発生時の住民の迅速な避難誘導を可能にするために、各種防災情報の遠隔監視(テレメトリ又はテレモニタリングと呼ばれる)が行われている。一般にテレメトリは、任意に選択した観測対象場所にテレメトリ観測装置を設置し、このテレメトリ観測装置において各種センサから観測データを取得してこの観測データを通信ネットワークを介して監視センタへ転送することにより実現される。
【0003】
ところで、上記テレメトリ観測装置の電源手段は、平野部や中山間部においては商用電力設備を利用できるが、山間部等の非居住地域においては商用電力設備を利用できない。このため、非居住地域では太陽光や風力などの自然エネルギをもとに電力を生成し、この生成された電力によりバッテリを充電してその出力を動作電源として使用するようにしている。しかし、自然エネルギによる発電量は元来きわめて不安定であるため、常時十分な電力を給電できるとは限らない。例えば、太陽光発電は夜間では発電できず、また昼間であっても曇天時や日照条件等によっては発電量が大きく変動する。また風力発電は、風が弱い地域では十分な発電が行われず、また風が強い地域であっても風が吹かない時間帯には発電が行われない。したがって、上記のように自然エネルギをもとに電力を生成する、いわゆる自立駆動型テレメトリ観測装置では、安定な給電が望めない電源に対し何らかの対策が必要となる。
【0004】
例えば、河川の水位と雨量を観測する装置では、降雨が観測される前と実際に観測された後で監視センタへの通信頻度を変更する機能を設け、さらに通信ができなかった場合のバックアップとして観測データを観測装置内のメモリに一時蓄積する機能を設けている(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0005】
また、蓄電池として鉛蓄電池をはじめとする二次電池を使用する場合に、当該二次電池の蓄電残量を把握し、この蓄電残量値に基づいて装置の動作を制御する手法も提案されている。この場合の鉛蓄電池の蓄電残量を把握する手法としては、例えば蓄電池の内部抵抗と蓄電残量の相関から電気化学的な見地から理論式を導出し、測定した内部抵抗値をもとにこの理論式から蓄電残量を推定する手法が知られている(例えば、非特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】水位・雨量遠隔監視システム<http://www.ikeda-keiki.co.jp/seihin/uryou/WEBsuii-uryoukei-u.html>
【0007】
【非特許文献2】新神戸テクニカルレポートNo.14、2004-2号、“鉛蓄電池状態検知技術の開発”、大越、山田、平沢、宮崎、江守、p7-11<http://www.shinkobe-denki.co.jp/t_report/2004/24340%20No.14_2nd.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来の自立駆動型テレメトリ観測装置には以下のような解決すべき課題がある。
第1に、バッテリの蓄電残量とは無関係に一定頻度で観測動作及びデータ収集装置への観測データの転送動作が行われている。このため、蓄電残量が残り少なくなった場合に、観測動作の一時停止等の緊急措置や通信頻度の低減措置、蓄電残量に応じた動的な観測方法の変更を行うことができない。特に、バッテリとして鉛蓄電池等の化学二次電池を使用している場合には、蓄電残量を正確に検知することができないため、蓄電残量に応じて観測モード及び転送モードを変更することが困難である。
【0009】
第2に、蓄電池の蓄電残量が予め設定されたしきい値以下に減少した場合に警報を発生する機能を備えた装置も提案されている。しかし、蓄電残量が急激に減少してアラーム発生機能自体が動作不能になると、警報を発生することができない。また、テレメトリ観測装置では、装置自体の動作異常等のように、通常の観測データよりも重要なイベントが発生することがある、しかし、このような重要な情報を監視センタへ送信しようとした時点で既に蓄電残量が不足し、これにより送信機能等が動作不能状態に陥って重要な情報を送信できなくなることがある。
【0010】
第3に、予め設定された一定の観測スケジュールにより被観測データを観測して監視センタへ転送しているため、以下のような問題がある。すなわち、一般に観測されるイベントは時々刻々変化し、観測データもこれに応じて変動する。例えば、単位時間内の降雨量が5〜10mm程度の比較的少雨の状態は長時間継続するが、災害リスクが高まる30〜50mmの豪雨は数時間内に集中して発生する。したがって、少雨時にはデータ観測時間間隔もデータ収集装置への転送時間間隔も低頻度でよいが、豪雨時には高頻度でデータ収集および転送を行う必要がある。
【0011】
しかし、従来のテレメトリ観測装置では、少雨時も豪雨時も一定の観測スケジュールで観測してその観測データをデータ収集装置へ転送している。このため、観測されたデータの有用性の大小に拘わらず、全てのデータが監視センタに転送され、重要でないかもしくは取得価値の少ない観測データを転送する場合にも電力を消費してしまうという問題がある。すなわち、有効転送データ量に対する所要電力の比、つまり有効テレメトリ電力を多く必要とするという問題がある。
【0012】
第4に、テレメトリ観測装置自体の駆動状態の監視と異常検知に関して以下のような課題がある。すなわち、鉛蓄電池は経年劣化を生じる。したがって、この経年劣化を検出するために、例えば非特許文献2に示されるような手法を用いて電圧低下及び蓄電残量の監視が行われている。しかし、こうした従来の手法では、正確に蓄電残量を推定することは困難である。
【0013】
一方、テレメトリ観測装置から監視センタへ所定のタイミングで被観測データが転送されなくなった場合、その直接的原因としては、テレメトリ観測装置内のセンサ自体の異常と、センサへの給電状態の異常が考えられる。また、間接的な原因としては、バッテリの放電異常かもしくは蓄電残量の不足が考えられる。しかし、従来のテレメトリ観測装置では、これらの原因の切り分け、異常個所の特定ができないという問題があった。
【0014】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、装置の遠隔メンテナンスの簡単化を図った自立駆動型テレメトリ観測装置とその動作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、この発明の一観点に係わる自立駆動型テレメトリ観測装置は次のような各種手段を講じたものである。
すなわち、センサから観測データを取得してこの取得された観測データを通信ネットワークを介してデータ収集装置へ転送するデータロガーと、自然エネルギをもとに電力を生成する電力生成ユニットと、上記生成された電力を蓄積する電力蓄積ユニットと、上記電力蓄積ユニットに蓄積された電力を上記データロガーに給電する給電制御ユニットとを具備する自立駆動型テレメトリ観測装置にあって、上記給電制御ユニットにより、上記電力生成ユニットにより生成された電力と、上記電力蓄積ユニットにおける蓄積電力の残量をそれぞれ検出し、この生成された電力の検出値及び蓄積電力の残量検出値を上記データロガーに通知する。これに対しデータロガーでは、上記給電制御ユニットから通知された生成電力の検出値及び蓄積電力の残量検出値に基づいて、上記電力生成ユニット及び上記電力蓄積ユニットに異常があるか否か判定する。そして、上記電力生成ユニットと電力蓄積ユニットの少なくとも一方に異常があると判定された場合に、上記生成電力の検出値及び蓄積電力の残量検出値に基づいて異常の原因を推定し、この推定された異常の原因を表す情報をデータ収集装置へ送信する。
【発明の効果】
【0016】
この発明の一観点によれば、データロガーにおいて、電力生成ユニット及び電力蓄積ユニットの異常とその原因が自動的に検出及び推定され、この推定された異常原因がデータ収集装置に通知される。この結果、例えば太陽光発電における発電電流変動による日照低減と発電障害の切り分けが可能となる。
すなわち、この発明によれば装置の遠隔メンテナンスの簡単化を図った自立駆動型テレメトリ観測装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の関連技術の説明に用いる自立駆動型テレメトリ観測装置を含むテレメトリステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した自立駆動型テレメトリ観測装置の具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した装置のデータロガーに記憶される観測・転送制御テーブルの一例を示す図である。
【図4】図2に示した装置のデータロガーが、蓄電残量に応じた単位時間当たりの観測回数とデータ転送回数の制御を実行する際の制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
【図5】図2に示した装置のデータロガーに記憶される観測レベルテーブルの具体例を示すものである。
【図6】図2に示した装置のデータロガー及び充放電制御ユニットが、単位時間当たりの雨量が上限値を超えた場合に電気蓄積ユニットにリザーブされた予備電力をデータロガーに供給する制御を実行する際の制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
【図7】図2に示した装置のデータロガー及び充放電制御ユニットが、電源系の異常が発生した場合に電気蓄積ユニットにリザーブされた予備電力をデータロガーに供給する制御実行する際の制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
【図8】図2に示した装置のデータロガー及び充放電制御ユニットが、データ収集装置2からの要求に応じて電気蓄積ユニットにリザーブされた予備電力をデータロガーに供給する制御を実行する際の制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
【図9】図2に示した装置のデータロガーが、観測レベルに応じた観測時間間隔及びデータ転送時間間隔の制御を実行する際の制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
【図10】図2に示した装置のデータロガーが、観測レベルに応じて観測データを破棄する制御を実行する際の制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
【図11】この発明の一実施形態に係わる自立駆動型テレメトリ観測装置の具体的な構成を示すブロック図である。
【図12】図11に示した装置のデータロガー及び充放電制御ユニットが、電源系の自動診断制御を実行する際の制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
(関連技術)
図1は、この発明の関連技術を説明するために用いる、自立駆動型テレメトリ観測装置を含むテレメトリステムの構成を示すブロック図である。このテレメトリシステムは、山間地等の観測地点にテレメトリ観測装置1を設置すると共に、国や自治体の庁舎等にデータ収集装置2を設置し、これらのテレメトリ観測装置1とデータ収集装置2との間を通信ネットワーク3を介して接続したものである。
【0019】
テレメトリ観測装置1は自立駆動型であり、充放電制御ユニット11と、エネルギ変換部12と、電力蓄積ユニット13と、データロガー14とを備えている。エネルギ変換部12は、例えば太陽電池パネルからなり太陽光を電力に変換する。なお、エネルギ変換部12としては、風力発電機等の自然エネルギを利用した他の変換器を使用することも可能である。電力蓄積ユニット13は、例えば電気二重層キャパシタからなり、上記エネルギ変換部12により生成された電力を蓄積するために使用される。
【0020】
充放電制御ユニット11は、例えば図2に示すように情報処理部111と、情報記憶部112と、シリアル通信インタフェース113と、充放電制御回路114とを備える。このうち先ず充放電制御回路114は、上記エネルギ変換部12により生成された電力を上記電力蓄積ユニット13に供給し、当該電力蓄積ユニット13を所定の蓄電容量まで充電させる。その際、電力蓄積ユニット13が電気二重層キャパシタからなる場合には、充電された電力の逆流防止を行う。また、電力蓄積ユニット13が鉛蓄電池からなる場合には、定電圧充電を行う必要があるため、エネルギ変換部12により生成された不安定な電圧値を一定値に安定化したのち電力蓄積ユニット13に供給する。また、電力蓄積ユニット13の過充電を防止する動作も行う。また、それと共に充放電制御回路114は、上記電力蓄積ユニット13からデータロガー14への電力の供給を制御する。
【0021】
情報処理部111は、上記充放電制御回路114による電力充電ユニット13の充放電の状態を監視して、異常状態が検出された場合にその情報を情報記憶部112に記憶させると共に、シリアル通信インタフェース113からデータロガー14へ通知する。
【0022】
テータロガー14は、センサ群15と、情報処理部16と、通信インタフェース17とを備え、さらに図2に示すように電力供給部141、シリアル通信インタフェース142及び情報記憶部143を備える。このうち電力供給部141は、上記充放電制御回路114から供給される電力をデータロガー14内の各回路部に供給する。シリアル通信インタフェース142は、上記充放電制御ユニット11との間で充放電制御信号及び状態通知信号を授受するために使用される。
【0023】
センサ群15は、観測用センサと、テレメトリ観測装置1内の動作状態を監視する監視用センサとから構成される。観測用センサは、例えば図2に示すように雨量センサ153からなる。監視用センサは、電圧センサ151と電流センサ152とからなる。電圧センサ151は、上記電力蓄積ユニット13の端子間電圧を検出する。電流センサ152は、上記エネルギ変換部12から出力される電流値を検出する。
【0024】
雨量センサ153としては、例えば市販されている転倒マス型雨量計が使用される。この転倒マス型雨量計は、データロガー14から信号線に一定電圧を印加(プルアップ)しておき、一定容量のマスに降雨が貯まるとこれが転倒して接点が接触し、これにより上記信号線上に発生する接点パルスをデータロガー14でカウントすることにより、単位時間当たりの雨量を計測する構造となっている。なお、図2では雨量センサ153をデータロガー14内に収容し、充放電制御回路114からデータロガー14に供給される電力の一部を使用して動作させる場合を例示したが、駆動用バッテリを内蔵する雨量センサを使用する場合には、当該雨量センサをテレメトリ観測装置1の外部に設置することが可能である。
【0025】
情報処理部16は例えばマイクロコンピュータからなり、図示しないプログラムメモリに格納されたアプリケーション・プログラムに従い、この発明に係わる以下の各制御を実行する。
すなわち、蓄電残量に応じて単位時間当たりの観測回数とデータ転送回数を設定する制御と、電気蓄積ユニット13にリザーブされた予備電力を予め設定したイベントの発生に応じて充放電制御回路114がデータロガー14に供給する制御と、観測レベルに応じて観測時間間隔とデータ転送時間間隔を可変設定する制御と、観測レベルに応じて観測データを破棄する制御を実行する。上記予め設定されたイベントとしては、単位時間当たりの雨量が上限値を超えた場合と、電力蓄積ユニット13の端子電圧の一定時間内における変化量がしきい値を超えた場合と、エネルギ変換部12の出力電流の一定時間内における変化量がしきい値を超えた場合と、充放電制御回路114から供給される電力の一定時間内における変化量がしきい値を超えた場合と、データ収集装置から特別な要求が到来した場合がある。
【0026】
情報記憶部143には、上記センサ群15により検出された観測データや検出データを保存するエリアと、上記情報処理部16の制御に使用する観測・転送制御テーブル等を保存するエリアが設けてある。通信インタフェース17は、通信ネットワーク3を介してデータ収集装置2との間でデータ転送を行うためのもので、例えば図2に示すように無線パケット通信インタフェースを備える。
【0027】
なお、データ収集装置2は、通信インタフェース22及びデータ処理部23を備える。これらの通信インタフェース22及びデータ処理部23は具体的には汎用コンピュータ21により構成される。
また、通信ネットワーク3は、例えばインターネットに代表されるIP(Internet Protocol)網と、このIP網にアクセスするための複数のアクセス網とから構成される。アクセス網としては、例えばDSL(Digital Subscriber Line)や光伝送路を使用する有線加入者網、LAN、無線LAN(Local Area Network)、移動通信網、専用線網が用いられる。
【0028】
次に、以上のように構成された装置の動作を説明する。
(1)蓄電残量に応じた単位時間当たりの観測回数とデータ転送回数の制御
データロガー14の情報記憶部143には、観測・転送制御テーブルが記憶されている。この観測・転送制御テーブルは、図3に示すように、電気二重層キャパシタ13の蓄電残量Xに対するn個(nは正の整数)の設定値αi(ただしi<j=2,…,nに対してαi<αj)に対応付けて、当該αiに対し予め設定された雨量センサ153の単位時間当たりの観測回数Ai(ただしi<j=2,…,nに対してAi<Aj)と、同じく各αiに対して予め設定された雨量観測データの単位時間当たりの転送回数Bi(ただしi<j=2,…,nに対してBi<Bj)をそれぞれ記憶したものである。ここで、Ai及びBiの意味するところは、蓄電残量Xがαi-1≦X<αiの範囲にあるとき、それぞれ一定時間観測を継続できるための雨量センサのデータ観測頻度及びデータ転送頻度の許容上限値である。
【0029】
さて、上記観測・転送制御テーブルを用いてデータロガー14は次のような制御を実行する。図4は、その制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
すなわち、データロガー14の情報処理部16は、先ずステップ4aにおいて電気二重層キャパシタ13の端子間電圧の検出値を電圧センサ151から取り込み、この取り込んだ端子間電圧の検出値をステップ4bにより蓄電残量Xに変換する。次に、ステップ4cにおいて、上記蓄電残量Xに対応する設定値αiをもとに、当該設定値αiに対応する単位時間当たりの観測回数Ai及び単位時間当たりの転送回数Biを上記観測・転送制御テーブルから読み出す。
【0030】
そして、ステップ4dにより、上記読み出されたAiにより指定される時間間隔で雨量センサ153を駆動し、当該雨量センサ153から雨量の観測データを取得する。またそれと共に、ステップ4eにより、上記読み出されたBiにより指定される時間間隔で通信インタフェース17を制御し、これにより上記取得された雨量の観測データをデータ収集装置2に向け送信させる。
【0031】
例えば、いま降雨時のある時刻T1において、蓄電残量X1がαi-1≦X1<αiの範囲にあって、単位時間当たりのデータ観測回数Ai、データ収集装置への単位時間当たりのデータ転送回数Biで雨量観測が行われており、その後一定時間経過後の時刻T2に蓄電残量X2がαi-2≦X2<αi-1に減少したとする。この時点で、情報処理部16は、単位時間当たりの観測回数をAi-1、観測データの単位時間当たりの転送回数をBi-1に減少させるように雨量センサ153の駆動並びに通信インタフェース17を制御する。その結果、観測頻度並びにデータ転送頻度が減少した分、データロガー14における電力消費が抑制され、これにより雨量計測時間をより長時間化することが可能となる。
【0032】
なお、もし仮に降雨量が多く、データ観測頻度を低減することが困難な場合には、観測データを情報記憶部143に一時格納し、データ収集装置2へのデータ転送回数のみを低減してデータ転送時に一括して転送するようにしてもよい。また、降雨時においては太陽電池パネルによる発電は行われないものと見なせる。そこで、降雨時には電流センサ152に給電しないようにする。このようにすると、データロガー14における電力消費をさらに抑制することが可能となる。
【0033】
(2)単位時間当たりの雨量が上限値を超えた場合に、電気蓄積ユニット13にリザーブされた予備電力をデータロガー14に供給する制御(イベントに応じた給電制御1)
データロガー14の情報記憶部143には、単位時間当たりの雨量観測値について、警報等の緊急情報をデータ収集装置2へ転送するためのトリガとするために設定されたしきい値β1が記憶されている。
【0034】
一方、充放電制御ユニット11の情報記憶部112には、トリガ信号S1を受信した場合のみ放電する電力の値E1、トリガ信号S2を受信した場合のみ放電する電力の値E2、…、トリガ信号Snを受信した場合のみ放電する電力の値Enのように、n個のトリガ信号に対応する放電電力値Enが記憶されている。ここで、E1+E2+……+En=ΣEの値は、電気二重層キャパシタ13の総蓄電容量Ecapよりも十分小さいものとする。或いは、予め電気二重層キャパシタ13の総蓄電容量EcapがΣEより十分大きくなるように蓄電容量を設計して装備しておく。したがって、各トリガ信号S1、S2、……、Snの受信に関わらない用途に必要な電力はEcap−ΣEの容量内で賄われる。すなわち、Ecap−ΣE=0になった場合には、各トリガ信号S1、S2、……、Snとは関係ない用途に対しては給電されない。すなわち、電気二重層キャパシタ13には、特定用途に使用するための予備電力がリザーブされる。
【0035】
データロガー14及び充放電制御ユニット11は、次のように給電制御を実行する。図6は、その制御手順及び制御内容を示すフローチャートである。
すなわち、雨量センサ153において雨量観測接点パルス信号が計測されると、この信号が情報処理部16に伝達される。情報処理部16は、ステップ6aにおいて単位時間当たりの接点パルス信号の発生回数をカウントし、このカウント値をステップ6bにより単位時間当たりの雨量値Y1に変換する。そして、上記変換された単位時間当たりの雨量値Y1を、情報記憶部143に予め記憶されたしきい値β1とステップ6cで比較する。この比較の結果、Y1>β1になると、情報処理部16は単位時間当たりの降雨量が上限値を超えたと判断し、ステップ6dによりシリアル通信インタフェース142を介して充放電制御ユニット11に対してトリガ信号S1を通知する。
【0036】
一方、充放電制御ユニット11の情報記憶部112には、先に述べたようにトリガ信号S1に対応付けて放電対象の予備電力値E1を表す情報が格納されている。この状態で、上記データロガー14からトリガ信号S1が到来すると、充放電ユニット11の情報処理部111はステップ6eからステップ6fに移行してここで情報記憶部112から上記トリガ信号S1に対応する放電電力値E1を表す情報を読み出す。そして、ステップ6gにより充放電制御回路114に対し指示を出し、これにより電気二重層キャパシタ13にリザーブされた予備電力E1をデータロガー14に供給させる。
【0037】
したがってデータロガー14は、上記供給された予備電力E1により情報処理部16及び無線パケット通信インタフェース17が動作状態になり、これにより単位時間当たりの降雨量が上限値を超えた旨の警報データが生成されて、この警報データがデータ収集装置2へ送信される。このため、例えば電気二重層キャパシタ13の蓄電残量が減少してデータロガー14の通常観測動作が停止している状態においても、上記警報データを確実にデータ収集装置2へ送信することが可能となる。
【0038】
(3)電源異常が発生した場合に、電力蓄積ユニット13にリザーブされた予備電力をデータロガー14に供給する制御(イベントに応じた給電制御2)
データロガー14の情報記憶部143には、電流センサ152で検出される一定時間内の電流変化量に対するしきい値β2、電圧センサ151で検出される一定時間内の電圧変化量に対するしきい値β3、及び電力供給部141で検出される一定時間内の電力消費量に対するしきい値β4がそれぞれ記憶されている。
【0039】
データロガー14の情報処理部16は、先ず図7に示すようにステップ7aにおいて電流センサ152により一定時間内の電流変化量ΔY2が検出されると、ステップ7bにより上記検出された電流変化量ΔY2をしきい値β2と比較する。そして、この比較の結果、電流変化量ΔY2がしきい値β2を下回った場合には、太陽電池パネルに遮蔽物が付着する等して発電効率が低下し、異常に至ったと判断する。
【0040】
次にデータロガー14の情報処理部16は、データロガー14を駆動するための電力が電力供給部141へ給電されていない時間帯において、ステップ7cにおいて電圧センサ151により一定時間内の電圧変化量ΔY3が検出する。そして、ステップ7dにより上記検出された電流変化量ΔY3をしきい値β3と比較する。この比較の結果、電圧変化量ΔY3がしきい値β3を下回った場合には、電気二重層キャパシタ13の自己放電量が許容値を超えた異常状態であると判断する。
【0041】
さらにデータロガー14の情報処理部16は、ステップ7eにおいて電力供給部141により一定時間内の電力消費量ΔY4を検出する。そして、ステップ7fにより上記検出された電力消費量ΔY4をしきい値β4と比較する。この比較の結果、電力消費量ΔY4がしきい値β4を下回った場合には、データロガー14の情報処理量の増大等の想定される原因により通常の駆動に要する電力消費を超える異常状態であると判断する。
【0042】
データロガー14の情報処理部16は、上記ステップ7b、ステップ7d又はステップ7fのいずれかにおいて異常状態が検出されると、ステップ7gによりトリガ信号S2を生成してこのトリガ信号S2をシリアル通信インタフェース142を介して充放電制御ユニット11へ通知する。
【0043】
一方、充放電制御ユニット11の情報記憶部112には、先に述べたようにトリガ信号S2に対応付けて放電対象の予備電力値E2を表す情報が格納されている。この状態で、上記データロガー14からトリガ信号S2が到来すると、充放電ユニット11の情報処理部111はステップ7hからステップ7iに移行してここで情報記憶部112から上記トリガ信号S2に対応する放電電力値E2を表す情報を読み出す。そして、ステップ7jにより充放電制御回路114に対し指示を出し、これにより電気二重層キャパシタ13にリザーブされた予備電力E2をデータロガー14に供給させる。
【0044】
したがってデータロガー14は、上記供給された予備電力E2により情報処理部16及び無線パケット通信インタフェース17が動作状態となり、これにより太陽電池パネルにおいて異常が発生した旨の警報データ、電気二重層キャパシタ13において異常が発生した旨の警報データ、又はデータロガー14において負荷が増大する異常が発生した旨の警報データが生成されて、この生成された警報データがデータ収集装置2へ送信される。
このため、例えば電気二重層キャパシタ13の蓄電残量が減少してデータロガー14の通常観測動作が停止している状態においても、上記警報データを確実にデータ収集装置2へ送信することが可能となる。
【0045】
(4)データ収集装置2からの要求に応じ、電力蓄積ユニット13にリザーブされた予備電力をデータロガー14に供給する制御(イベントに応じた給電制御3)
データロガー14は、通常の観測動作状態において、図8に示すようにステップ8aでデータ収集装置2からの特殊観測動作の実行要求の到来を監視している。この状態で、データ収集装置2から通信ネットワーク3を介して設定値を上回る頻度での観測データの取得要求、設定値を上回る頻度での観測データの転送要求、もしくは所要電力を上回る電力消費が生じる測定方法の要求が到来したとする。データロガー14の情報処理部16は、これらの実行要求を受信するとステップ8aからステップ8bに移行して、シリアル通信インタフェース142を介して充放電制御ユニット11に対してトリガ信号S3を与える。
【0046】
一方、充放電制御ユニット11の情報記憶部112には、先に述べたようにトリガ信号S3を受信した場合に、テレメトリ観測装置1に特殊観測の実行要求を実行することのみに給電する予備電力E3を表す情報が記憶されている。また、電気二重層キャパシタ13には、先に述べたように少なくとも予備電力E3を超える蓄電残量がリザーブされている。
【0047】
この状態で、シリアル通信インタフェース113を介してデータロガー14からトリガ信号S3が到来すると、充放電制御ユニット11の情報処理部111はステップ8cからステップ8dに移行して、情報記憶部112に記憶された上記予備電力E3を表す情報を読み出す。そして、ステップ8eにより充放電制御回路114に対して、データロガー14へ予備電力E3を供給させる指示を与える。充放電制御回路114は、情報処理部111からの給電指示を受けて、電気二重層キャパシタ13から予備電力E3をデータロガー13の電力供給部141へ供給する。
【0048】
したがってデータロガー14は、上記供給された予備電力E3により情報処理部16、各センサ、及び無線パケット通信インタフェース17が動作状態となる。そして、データ収集装置2から特殊観測動作の実行要求により指示された観測スケジュールに従い頻度の高い観測動作を実行し、この観測動作により得られた観測データを無線通信インタフェース17からデータ収集装置2へ高頻度で転送する。
【0049】
このため、例えば電気二重層キャパシタ13の蓄電残量が減少してデータロガー14の通常観測動作が停止している状態であっても、上記データ収集装置2から特殊観測動作の実行要求により指示された特殊観測動作及びデータ転送動作を確実に実行することができる。
【0050】
(5)観測レベルに応じた観測時間間隔及びデータ転送時間間隔の制御
データロガー14の情報記憶部143には、雨量観測レベルと雨量観測時間間隔との対応関係を表す観測レベルテーブルが記憶されている。図5はこの観測レベルテーブルの具体例を示すものである。
【0051】
一般に、転倒マス型雨量センサを用いて雨量観測を行う場合、マス容量を満たす降雨があった時点でマスが1回転倒して排出される雨量が0.5ミリと計測される。図5においては、小牧市のホームページ
http://www.city.komaki.aichi.jp/fire/bt_jo/taifuh/gou_u.htmlに掲載された1時間当りの降雨量(以下、「1時間雨量」という)と雨の降り方との関係を参考に、雨量観測レベルを6段階に設定している。そして、各観測レベルに対応付けて、当該観測レベルにおける1時間雨量の範囲、雨の降り方、転倒マス型雨量センサによって観測される1時間当りの雨量計パルス数(以下、「1時間パルス数」という)、降雨持続時間、観測時間間隔△T(単位:分)を設定している。ここで、雨量計パルス数は、例えば観測レベル“1”では1時間当りの降雨量が5ミリ以下であるため、1時間パルス数は10以下となることを意味する。降雨持続時間は、平成16年7月の新潟・福島豪雨における栃尾市での雨量観測データを参考にして、各観測レベルの1時間雨量の持続時間を見積もった。観測時間間隔△Tは、各観測レベルの降雨持続時間内に転送される最大データ数が概ね上記図5に示した観測レベルテーブルに示した各観測レベルの値になるように設定した。また、ここでは仮に各観測レベルにおいてデータ収集装置2への観測データの転送時間間隔を観測時間間隔△Tに等しく設定した。
【0052】
この状態で、例えば観測レベル3に対応する降水があったとする。データロガー14の情報処理部16は、先ずステップ9aにおいて、ある時刻Tから観測時間間隔ΔT後の時刻T+△Tまでの期間に観測された雨量センサ153からのパルス数γを計測する。次にステップ9bにおいて、γ×(60/△T(分))の値Γ1を計算し、この計算されたΓ1に対応する観測レベルをステップ9cで特定する。
【0053】
そして、ステップ9dにおいて、情報記憶部143に記憶された観測レベルテーブルを参照して、特定された観測レベルに対応する観測時間間隔を読み出し、現在設定されている観測時間間隔を上記読み出された観測時間間隔に変更する。例えば、いま上記Γ1に対応する観測レベルがレベル“4”だったとすると、この時点から観測時間間隔を上記レベル“4”に対応する値に変更する。
【0054】
またそれと共に、ステップ9eにおいて、情報記憶部143に記憶された観測レベルテーブルを参照して、特定された観測レベルに対応するデータ転送時間間隔を読み出し、現在設定されているデータ転送時間間隔を上記読み出されたデータ転送時間間隔に変更する。例えば、いま上記Γ1に対応する観測レベルがレベル“4”だったとすると、この時点からデータ転送時間間隔を上記レベル“4”に対応する値に変更する。
【0055】
この結果、降雨量が災害発生リスクの比較的少ない観測レベル“3”から、がけ崩れの危険性がある観測レベル“4”に変化した時点で、観測時間間隔及び観測データの転送時間間隔がそれぞれ短縮される。以後同様に、任意の観測時間間隔△T内に観測されたパルス数から1時間パルス数を計算し、この計算値がどの観測レベルの1時間パルス数の範囲に属するかを判別し、この判別結果に応じて現行での観測時間間隔及びデータ転送時間間隔が雨の降り方に応じて変更される。
【0056】
かくして、災害リスクが高い、より重要なデータを詳細かつ高頻度に転送することが可能となる。これは、1時間雨量を観測データとし、A=0、a1=5ミリ、a2=10ミリ、a3=20ミリ、a4=30ミリ、a5=40ミリ、a6=50ミリとした場合に相当する。ただし、雨量センサの1時間雨量の上限値Bは観測レベルテーブル(図5)に併せてここでは定めない。
【0057】
(6)観測レベルに応じた観測データの破棄
ここでは、観測レベルテーブル(図5)を土砂災害監視に適用する場合を例にとって説明する。土砂災害発生が想定される観測レベル“4”の1時間雨量が観測された時点で、データロガー13からデータ収集装置2へ土砂災害警報が報知される。またそれと共に、観測レベル“4”未満の1時間雨量の観測データを廃棄するように設定し、この設定情報をデータロガー13の情報記憶部143に記憶しておく。
【0058】
データロガー14の情報処理部16は、先ずステップ10aにおいて、ある時刻Tから観測時間間隔ΔT後の時刻T+△Tまでの期間に観測された雨量センサ153からのパルス数δを計測する。そしてステップ10bにおいて、δ×(60/△T(分))の値Γ2を計算し、この計算されたΓ2に対応する観測レベルをステップ10cで特定する。
【0059】
次に、ステップ10dにおいて、上記特定されたΓ2に対応する観測レベルを上記情報記憶部143に記憶された設定情報、つまりレベル“4“と比較する。そして、この比較の結果、上記特定された現在の観測レベルが設定されたレベル“4“以上であれば、ステップ10eに移行して、ここで上記雨量の観測データを土砂災害警報と共に無線パケット通信インタフェース17からデータ収集装置2へ送信する。これに対し、上記特定された現在の観測レベルが設定されたレベル“4“未満であれば、ステップ10fに移行して、ここで上記雨量の観測データを情報記憶部143から破棄する。
【0060】
したがって、現在の雨量に対応する観測レベルが上記設定された観測レベル“4“のときには、上記雨量の観測データは破棄されてデータ収集装置2へ転送されない。このため、データ収集装置2への観測データの転送回数は抑えられ、その分データロガー14による消費電力は低減されて、これにより電気二重層キャパシタ13の寿命を延長することが可能となる。
【0061】
(一実施形態)
図11は、この発明の一実施形態に係わる自立駆動型テレメトリ観測装置の構成を示すブロック図である。なお、同図において前記図2と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
充放電制御ユニット110には、先に述べた情報処理部111、情報記憶部112、シリアル通信インタフェース113及び充放電制御回路114に加え、電流センサ115と、電圧センサ116がさらに設けられている。電流センサ115は、エネルギ変換部としての太陽電池パネル12の発電電流値Isを充放電制御回路114を介して検出する。電圧センサ116は、電力蓄積ユニットとしての電気二重層キャパシタ13の端子間電圧Vcを充放電制御回路114を介して検出する。
【0062】
情報処理部111は、後述するデータロガー140から計測指示が到来した場合に、上記電流センサ115及び電圧センサ116からそれぞれ発電電流値Is及び端子間電圧Vcを取得し、この取得された発電電流値Isと、取得された端子間電圧Vcから変換された電気二重層キャパシタ13の蓄電残量Ecをデータロガー140へ通知する制御機能を備える。
【0063】
一方、データロガー140には、前記電流センサ151及び電圧センサ152の代わりに紫外線センサ154が設けられている。紫外線センサ154は、太陽光の照射量を検知するために使用される。
データロガー140の情報処理部16は、電気二重層キャパシタ13から電力供給部141に供給される電力の低下が検出された場合に、計測要求を上記充放電制御ユニット110に与える。そして、上記計測要求に対し充放電制御ユニット110から発電電流値Is及び蓄電残量Ecが通知された場合に、これらの値をもとに電源系の異常の有無と異常の原因をそれぞれ判定し、その判定結果の報告データをデータ収集装置2へ送信する制御機能を備える。
【0064】
次に、以上のように構成されたテレメトリ観測装置の動作を説明する。図12は、データロガー140及び充放電制御ユニット110による制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
太陽電池パネル12に太陽光が照射されると直流電力が生じ、太陽光強度に依存した大きさの電力が充放電制御ユニット110内の充放電制御回路114に供給される。充放電制御回路114に供給された電力は、電気二重層キャパシタ13へ直流電力として出力され、所定の蓄電容量まで充電される。また、電気二重層キャパシタ13に蓄電された電力は、充放電制御回路114を介してデータロガー140に供給され、データロガー140に実装もしくは接続された各機能素子を駆動するために使われる。ここで、充放電制御回路114は、電気二重層キャパシタ13を充電する際に、充電された電力の逆流を防止するなど、電気二重層キャパシタ13の蓄電形態に応じた充電制御機能を有する。
【0065】
いま仮に、上記電気二重層キャパシタ13から充放電制御回路114を介してデータロガー140に供給される電力が低下し、所定の電力で駆動されていたデータロガー140の動作状態が不安定になったとする。ここで、供給電力の低下を生じる原因としては、電気二重層キャパシタ13の蓄電残量不足(原因1)と、太陽電池パネル12における発電異常(原因2)が考えられる。
【0066】
データロガー140の情報処理部16は、ステップ12aにおいて供給電力の値がしきい値未満に低下した状態が一定時間継続したことを検出すると、供給電力の異常と判断して、ステップ12bによりシリアル通信インタフェース142を介して充放電制御ユニット110に対して蓄電残量等の計測指示を与える。
【0067】
これに対し充放電制御ユニット110では、情報処理部111がステップ12cにおいて計測指示の到来を監視している。この状態で、上記データロガー140から蓄電残量等の計測指示が到来すると、先ずステップ12dに移行してここで電圧センサ116から電気二重層キャパシタ13の端子間電圧Vcを取得する。続いてステップ12eにより、電流センサ115から太陽電池パネル12の発電電流値Isを取得する。そして、ステップ12fにおいて上記端子間電圧Vcを蓄電残量Ecに変換し、この変換された蓄電残量Ecと上記取得された発電電流値Isの報告データを、ステップ12gによりシリアル通信インタフェース113からデータロガー140へ送信する。
【0068】
データロガー140は、ステップ12hにより充放電制御ユニット110からの報告データの到来を監視している。この状態で、充放電制御ユニット110から報告データが到来すると、ステップ12hから先ずステップ12iに移行して、当該報告データに含まれる蓄電残量Ec及び発電電流値Isを許容値と比較し、その比較結果をもとに蓄電残量Ec及び発電電流値Isが異常値に該当するか否かを判定する。そして、この判定の結果、異常値であればステップ12jに移行し、ここで異常の原因を以下のように判定する。なお、ここではIs及びEcが予め設定された許容値を上回った場合をG、下回った場合をNGと表記する。
【0069】
判定1. Is:G、Ec:NGの場合 → 原因“1”と判断。
判定2. Is:NG、Ec:Gの場合 → 原因“2”と判断。
このとき、データロガー140の情報処理部16は、紫外線センサ154を駆動し、太陽光の照射量Lを一定時間計測する。そして、晴天時の平均的な太陽光の照射量をL0として、一定時間内LがL0を上回った場合には、太陽電池パネル12の故障と判断する。これに対し、一定時間内LがL0を下回った場合には曇天時と判断する。また、一定時間内にLがL0近傍まで回復した場合には、遮蔽物による一時遮光と判断する。
【0070】
判定3 Is:NG、Ec:NGの場合
データロガー140の情報処理部16は紫外線センサ154を駆動し、太陽光の照射量Lを一定時間計測する。このとき、一定時間内にLがL0を下回った場合には、原因“1“と判断する。これに対し、一定時間内にLがL0を上回った場合には、太陽電池パネル12の故障と判断する。
【0071】
最後に、データロガー140の情報処理部16は、ステップ12kにおいて上記ステップ12jによる判定結果を含む報告データを生成し、この生成した報告データを無線パケット通信インタフェース17からデータ収集装置2へ送信する。
なお、上記紫外線センサ154の代用として、太陽電池パネル12の単一セルに相当する素子によって観測される太陽光強度を用いてもよい。また、データロガー140の情報処理部16で異常個所を特定して原因事象を判定したが、情報処理部16は給電電力の低下を検知した後これをデータ収集装置2へ通知し、データ収集装置2が異常個所を特定し、原因事象を判定するようにしてもよい。
【0072】
したがってこの発明の一実施形態であれば、データロガー140において、太陽電池パネル12及び電気二重層キャパシタ13の異常とその原因が自動的に検出及び判定され、この推定された異常原因がデータ収集装置2に報告される。この結果、データ収集装置2では、例えば太陽光発電における発電電流Isの変動による日照低減と発電障害の切り分けが可能となる。
【0073】
すなわち、太陽電池パネル12では、複数枚のセルを直列接続して構成することから、十分な日照がある場合でも部分遮光があるとパネル全体での発電量が急激に低下する。そのため、遮光原因が木の葉等の遮蔽物の付着など一時的な現象であれば発電電流値は急速に回復する。しかし、セルの破損や表面の汚濁など永続的な現象の場合には発電電流値が低下した状態が永続する。したがって、低発電電流の継続時間により両者の状態が識別可能である。
【0074】
一方、曇天が長時間続く場合でも、低発電電流の状態が永続するが、紫外線センサ又は温度センサによって日照を検知すれば、原因事象から曇天状態が排除され、日照低減と発電障害の切り分けが可能となる。また、自立駆動型テレメトリ観測装置10の動作状態をデータ収集装置2側から遠隔にかつ詳細に診断することが可能となる。このため、万一自立駆動型テレメトリ観測装置10に故障などが発生して保守員が観測現場へ出向く必要がある場合でも、事前に復旧の方策を容易に講じることが可能となる。
【0075】
(その他の実施形態)
前記実施形態では、太陽発電を利用する場合を例にとって説明したが、風力発電や地熱発電等のその他の自然エネルギを利用して発電し、その電力を電力蓄電ユニットに蓄積して使用する場合にもこの発明を適用可能である。
その他、データロガー及び充放電制御ユニットの構成、電力蓄積ユニットの構成、データロガーによる制御手順制御内容などについても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0076】
要するにこの発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1,10…自立駆動型テレメトリ観測装置、2…データ収集装置、3…通信ネットワーク、11,110…充放電制御ユニット、111…充放電制御ユニットの情報処理部、112…充放電制御ユニットの情報記憶部、113…シリアル通信インタフェース、114…充放電制御回路、12…エネルギ変換部(太陽電池パネル)、13…電力蓄積ユニット(電気二重層キャパシタ)、14,140…データロガー、141…電力供給部、142…データロガーのシリアル通信インタフェース、143…データロガーの情報記憶部、15…センサ群、151…電圧センサ、152…電流センサ、153…雨量センサ、16…データロガーの情報処理部、17…通信インタフェース(無線パケット通信インタフェース)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサから観測データを取得し、この取得された観測データを通信ネットワークを介してデータ収集装置へ転送するデータロガーと、
自然エネルギをもとに電力を生成する電力生成ユニットと、
前記生成された電力を蓄積する電力蓄積ユニットと、
前記電力蓄積ユニットに蓄積された電力を前記データロガーに給電する給電制御ユニットと
を具備し、
前記給電制御ユニットは、
前記電力生成ユニットにより生成された電力を検出する手段と、
前記電力蓄積ユニットにおける蓄積電力の残量を検出する手段と、
前記生成された電力の検出値及び前記蓄積電力の残量検出値を前記データロガーに通知する手段と
を備え、
前記データロガーは、
前記給電制御ユニットから通知された生成電力の検出値及び蓄積電力の残量検出値に基づいて、前記電力生成ユニット及び前記電力蓄積ユニットに異常があるか否か判定する異常判定手段と、
前記電力生成ユニットと前記電力蓄積ユニットの少なくとも一方に異常があると判定された場合に、前記生成電力の検出値及び蓄積電力の残量検出値に基づいて異常の原因を推定する異常原因推定手段と、
前記推定された異常の原因を表す情報を前記データ収集装置へ送信する手段と
を備えることを特徴とする自立駆動型テレメトリ観測装置。
【請求項2】
センサから観測データを取得し、この取得された観測データを通信ネットワークを介してデータ収集装置へ転送するデータロガーと、
自然エネルギをもとに電力を生成する電力生成ユニットと、
前記生成された電力を蓄積する電力蓄積ユニットと、
前記電力蓄積ユニットに蓄積された電力を前記データロガーに給電する給電制御ユニットと
を具備して構成される自立駆動型テレメトリ観測装置の動作方法であって、
前記給電制御ユニットにおいて、
前記電力生成ユニットにより生成された電力を検出するステップと、
前記電力蓄積ユニットにおける蓄積電力の残量を検出するステップと、
前記生成された電力の検出値及び前記蓄積電力の残量検出値を前記データロガーに通知するステップと
を実行し、
前記データロガーにおいて、
前記給電制御ユニットから通知された生成電力の検出値及び蓄積電力の残量検出値に基づいて、前記電力生成ユニット及び前記電力蓄積ユニットに異常があるか否か判定するステップと、
前記電力生成ユニットと前記電力蓄積ユニットの少なくとも一方に異常があると判定された場合に、前記生成電力の検出値及び蓄積電力の残量検出値に基づいて異常の原因を推定するステップと、
前記推定された異常の原因を表す情報を前記データ収集装置へ送信するステップと
を実行することを特徴とする自立駆動型テレメトリ観測装置の動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−191992(P2010−191992A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103818(P2010−103818)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【分割の表示】特願2006−57946(P2006−57946)の分割
【原出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】