説明

自走台車

【課題】低出力のアクチュエータであっても相対的に大きな段差を乗り越えることができるようにした、自走台車を提供する。
【解決手段】自走台車本体と、自走台車本体に設けられ回転動力を発生するアクチュエータと、アクチュエータと動力伝達可能に設けられるとともに自走台車本体を支持する主駆動輪と、主駆動輪と互いの軸方向が平行となるとともに、主駆動輪よりも接地部が上方に位置するように配設された補助駆動輪と、主駆動輪と補助駆動輪とを動力伝達可能に連結する伝達機構と、をそなえて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低出力のアクチュエータが駆動力源であっても大きな段差を乗り越えることが可能な自走台車に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪によって移動する移動ロボット等では、走行路に存在する段差等を乗り越える技術が求められている。
従来の段差乗り越え車輪装置は、車輪に動力を伝達せずに手押し車のように外部から押される力を利用して段差を乗り越える従動車輪装置として、平面な床面を移動するために用いられる移動用車輪とは別に車体の前進方向に床面から離隔するように回転案内輪と滑輪、可撓性履帯による傾斜環状履帯案内部を車輪支持ホルダー部の内外に分離近接状に配置し、車輪の前進時に仰角浮状とした回転履帯部を段差に接地させ、外部からの前進力によって段差を乗り越える従動車輪装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、動力を伝達して段差を乗り越える車輪駆動装置として、車体フレームと、車体フレームに回転自在に設けた駆動輪アームと、同アームの先端に回転自在に設けた車輪と、前記車輪の車輪軸に設けた車輪軸歯車と、この車輪軸歯車にかみ合い前記駆動アームに軸支されている遊星歯車と、前記遊星歯車にかみ合い、かつ、前記駆動アームとは独立して駆動輪アームと同心軸で回転可能とに配置した太陽歯車と、太陽歯車にかみ合う駆動車輪とを備え、前記駆動歯車を回転させ、太陽歯車、遊星歯車、車輪歯車を介して車輪を回転させて走行するとともに、段差によって車輪の回転が妨げられると自律的に駆動輪アームの回転に切り替えて段差を乗り越えることができるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−119628号公報(第4頁、図1)
【特許文献2】特開2002−264856号公報(第6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のものは何れの車輪にも駆動力を発生するアクチュエータを有していない。また、移動用車輪と回転案内輪または滑輪がそれぞれ伝達機構によって連結されておらず、それぞれが独立に回転自在になっているため特許文献1で示す車輪装置以外の外部動力源から進行方向へ加えられる外力の作用がなければ段差を乗り越えられない。さらに段差を乗り越えるための機構が進行方向前方に設けられているだけなので段差を降りる場合に搭載している機材や人に衝撃を与える等の課題があった。
【0006】
また、特許文献2の技術では、段差乗り越え時に車軸を中心に駆動アームが回転し、駆動アームに大きなモーメントが加わるため、進行するためにはこのモーメントよりも大きいトルクを車軸回りに発生させる必要がある。
このため、特許文献2の技術では段差を乗り越えるために十分な駆動力を発生するために主駆動モータにトルクを発生し得る高出力モータをしなければならず、小型・軽量化が難しいことや、段差以外の平面を移動する場合にも過度のエネルギを消費するといった課題もあった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、低出力のアクチュエータであっても相対的に大きな段差を乗り越えることができるようにした、自走台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、自走台車本体と、前記自走台車本体に設けられ回転動力を発生するアクチュエータと、前記アクチュエータと動力伝達可能に設けられるとともに前記自走台車本体を支持する主駆動輪と、前記主駆動輪と互いの軸方向が平行となるとともに、前記主駆動輪よりも接地部が上方に位置するように配設された補助駆動輪と、前記主駆動輪と前記補助駆動輪とを動力伝達可能に連結する伝達機構と、を有していることを特徴としている。
【0009】
前記補助駆動輪は前記主駆動輪よりも直径が小さく設定されていることが好ましい(請求項2)。
また、前記補助駆動輪は、前記主駆動輪に隣接する第1の補助駆動輪と、前記第1の補助駆動輪に隣接する第2の補助駆動輪と、前記第2の補助駆動輪に隣接する第3の補助駆動輪と、を有していることが好ましい(請求項3)。
また、前記第2の補助駆動輪は前記第1の補助駆動輪よりも接地部が上方に位置するように配設され、前記第3の補助駆動輪は前記第2の補助駆動輪よりも接地部が上方に位置するように配設されていることが好ましい(請求項4)。
また、前記主駆動輪は、前記アクチュエータの出力軸の先端に取り付けられ前記補助駆動輪の軸部は前記自走台車本体に枢支され、前記伝達機構は、前記アクチュエータの出力軸と前記補助駆動輪の軸部とを動力伝達可能なベルト部材を有していることが好ましい(請求項5)。
【0010】
また、前記アクチュエータの出力軸に設けられたプーリーと、前記第1の補助駆動輪の軸部に設けられたプーリーと、前記第3の補助駆動輪の軸部に設けられたプーリーと、前記自走台車本体に枢支された第1歯車と、前記歯車の軸部に設けられたプーリーと、前記第2の補助駆動輪の軸部に設けられ、前記第1歯車と噛合う第2歯車と、前記第1の補助駆動輪と前記第3の補助駆動輪との軸部に設けられたプーリーと、を有し、前記伝達機構の前記ベルトは上記の各プーリーに巻回されていることが好ましい(請求項6)。
また、前記伝達機構の前記ベルトが両面歯付加工され、上記の各プーリーは前記ベルトの前記歯付加工部に噛合うように形成されていることが好ましい(請求項7)。
【0011】
また、前記第2の補助駆動輪は軸方向に対向する一対の車輪を有し、前記一対の車輪の間隙部に前記第1の補助駆動輪及び前記第3の補助駆動輪の辺部が位置するように配設されていることが好ましい(請求項8)。
また、前記補助駆動輪及び前記伝達機構は、前記主駆動輪の前方向側及び後方側にそれぞれ設けられていることが好ましい(請求項9)。
また、前記伝達機構は、前記主駆動輪の前方向側及び後方側それぞれの前記補助駆動輪に対して共通の前記ベルトを有していることが好ましい(請求項10)。
また、前記補助駆動輪は前記主駆動輪よりも表面が柔軟性の高い素材によって形成されていることが好ましい(請求項11)。
また、前記補助駆動輪は前記主駆動輪よりも重量密度が小さい素材によって形成されていることが好ましい(請求項12)。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる自走台車によれば、アクチュエータの回転動力を主駆動輪と複数の補助駆動輪に伝達機構を介して伝達することができるので、アクチュエータが回転すると駆動輪と補助駆動輪も回転することができる(請求項1)。
また、補助駆動輪の直径を駆動輪の直径よりも小さく設定しているので、アクチュエータの回転動力が駆動輪の円周接線方向に作用する力よりも補助駆動輪の円周接線方向に作用する力の方が大きくなり、補助駆動輪に段差が接触した場合、段差に対して大きな力を作用することができる。
【0013】
さらに、平坦面を通常走行する際にも接地しない補助駆動輪の回転慣性力が低減されるので補助駆動輪による余分なエネルギー消費を抑制することができる。(請求項2)。
また、補助駆動輪を駆動輪の中心から遠ざかるにつれて床面から離隔するように配置しているので、段差が補助駆動輪に差し掛かると、段差と補助駆動輪が常に接触状態を保ち、アクチュエータの駆動力を確実に段差との接触部に作用することができる(請求項3,4)。
また、両面歯付ベルトとプーリーと歯車を組合わせることで、各補助駆動輪の回転方向を駆動輪の回転方向と一致させることができ、段差乗り越え時も同方向へ連続的に移動することができる(請求項5〜8)。
【0014】
また、主駆動輪の前後にそれぞれ補助駆動輪を設けることにより段差の乗り上げ時のみならず段差を下る際の自走台車にかかる衝撃を著しく低減することができる(請求項9,10)。
また、段差昇降用の補助駆動輪を柔軟な材質で覆うことで段差との接触部が変形しやすくなるため、大きな摩擦力が得られ、滑りを防止することができるとともに、段差との接触時に衝撃を緩和する効果も得ることができる(請求項11)。
さらに、補助駆動輪の重量密度が主駆動輪よりも小さい(即ち、軽い)ので、補助駆動輪の回転慣性力が低減されるので補助駆動輪による余分なエネルギー消費を抑制することができる(請求項12)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例の駆動機構を示す車輪駆動装置の側面図
【図2】本発明の第1実施例の駆動機構を示す車輪駆動装置の上面図
【図3】本発明の第1実施例の自走台車の構成を示す模式的な図
【図4】(A)〜(H)のいずれも本発明の第1実施例の車輪駆動装置の段差乗り越え動作図
【図5】本発明の第2実施例の駆動機構を示す車輪駆動装置の側面図
【図6】本発明の第2実施例の駆動機構を示す車輪駆動装置の上面図
【図7】本発明の第2実施例の自走台車の構成を示す模式的な図
【図8】(A)〜(E)のいずれも本発明の第2実施例の車輪駆動装置の段差乗り上がり動作図
【図9】(A)〜(D)のいずれも本発明の第2実施例の車輪駆動装置の段差降り動作図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の第1の実施例による車輪駆動装置の側面図、図2は上面図である。
以下、図1および図2を用いて各部を説明する。
図において、101は回転動力を発生するアクチュエータであり、モータと減速機で構成され自走台車本体150(図3参照)に搭載されている。アクチュエータ101と駆動シャフト(アクチュエータの出力軸)102は、図示しないカップリングまたはフランジで動力伝達可能に固定されている。
【0018】
更に、駆動シャフト(出力軸)102の先端には駆動輪(主駆動輪)103が取り付けられており、また、プーリー104は、図示しないフランジまたはキーで固定されているので、アクチュエータ101で発生した回転動力は、駆動シャフト102を介して駆動輪103に伝達され、平面な床面Fを移動することができる。即ち、駆動輪103な平らな床面に接地して自走台車本体を支持している。
【0019】
104はアクチュエータ101と駆動輪103の間のシャフト102にキーで固定されたプーリーである。105,108,111は、駆動シャフト102と平行に配置された第2駆動シャフト(補助駆動輪の軸部)であり、それぞれの第2駆動シャフトの先端部にはそれぞれ補助駆動輪としての第1の補助駆動輪112,第2の補助駆動輪109,第3の補助駆動輪106が固定配置されている。
即ち、補助駆動輪112は主駆動輪103に対して自走台車の進退方向側(ここでは前方)に隣接しており、補助駆動輪112の接地部(床面と接触する箇所)が駆動輪103よりも上方に位置している。
補助駆動輪109は補助駆動輪112よりもさらに前方側に補助駆動輪112に隣接しており、補助駆動輪109の接地部(床面と接触する箇所)は補助駆動輪112の接地部よりも上方に位置している。
さらに補助駆動輪106は補助駆動輪109よりもさらに前方側に補助駆動輪109に隣接しており、補助駆動輪106の接地部(床面と接触する箇所)は補助駆動輪109の接地部よりも上方に位置している。
【0020】
114は駆動シャフト102と平行に配置された補助シャフトであり、プーリー115と歯車116がキーで固定配置されている。107,113,115はプーリーであり、第2駆動シャフト105,111、補助シャフト114にキーで固定され、プーリー104と同一平面となるように配置されている。
110は第2駆動シャフト108にキーで固定された歯車であり、歯車116とかみ合っているので、歯車116の回転運動は歯車110および第2駆動シャフト108を介して第2の補助駆動輪に伝達するようになっている。
【0021】
プーリー104,107,113,115には、両面歯付ベルト118が図1に図示(太線)したようにかけられているため、アクチュエータ101により発生された回転動力は、ベルト118を介してプーリー104,107,113,115に伝達することができる。
【0022】
第1の補助駆動輪112及び第3の補助駆動輪106は、ベルト118およびプーリー107,113を介することで駆動輪103と同じ方向に回転することができる。第2の補助駆動輪は、ベルト118から伝達される回転動力をプーリー115で受け、歯車110および歯車116で回転方向を反転させることで、駆動輪103と同じ方向に回転するようにしている。それぞれのシャフト102,105,108,111,114は、ベアリング117の内輪側を通り、ベアリング117の外輪側をハウジング119,120に固定しているので、ベルト118を介して伝達される回転動力によって補助駆動輪106,109,112が自在に回転することができるようになっている。
【0023】
ハウジング119,120は、外部から塵や埃が伝達機構に進入しないように、ベルト118、プーリー104,107,113,115、歯車110、116を覆っており、ハウジング119およびアクチュエータ101は、自走台車本体150に固定されている。
【0024】
このように、アクチュエータの回転動力を両面歯付ベルトとプーリーと歯車を利用して3つの補助駆動輪が主駆動輪103と同一方向に回転できるようにし、段差の高さに応じて補助駆動輪を床面Fに対して傾斜配置している。
また、補助駆動輪106,109,112は、駆動輪103よりも小径にすることで、補助駆動輪が円周接線方向に発生する力を、駆動輪103が円周接線方向に発生する力よりも大きくすることができる。
【0025】
次に、図3を用いて本発明の車輪駆動装置を適用した自走台車の段差乗り越え動作を説明する。
本発明の車輪装置を適用した自走台車本体150は、自走台車本体150の進行方向や移動距離、移動速度・加速度など移動動作に必要な動作命令を生成する制御ユニット151と、前記制御ユニット151が生成した動作命令に従って前記アクチュエータを駆動制御するドライブユニット152と、自走台車本体150に対して移動地点の指定を行う上位装置の指示を受信し、自走台車本体150の状態を前記上位装置へ通知するための通信ユニット153、アクチュエータの動力を床面Fに伝えて、自走台車本体150を動作させる駆動輪および補助駆動輪112,109,106、自走台車本体150が転倒しないように床面Fに支持する従動輪154で構成されている。
【0026】
駆動輪103および補助駆動輪112,109,106は、進行方向に対して左右対称に配置されており、従動輪154は左右対称に配置された駆動輪間の中心後方部に1つ配置されている。この従動輪154は図の矢印のように自走台車本体150の移動により、旋回部155によって旋回可能となっており、旋回時に床面Fから自走台車本体150に発生する反力が小さくなるように従動輪154の旋回軸と車輪軸が1点で交わらず距離をつけたものとなっている。
【0027】
上位装置が発行した移動地点などの指示は、通信ユニット153を介して制御ユニット151に伝達される。制御ユニット151は、上位装置からの指示に基づいて自走台車の進行方向や移動距離、移動速度・加速度を求め、求めた結果から更に左右2対の駆動輪の回転速度・加速度、回転角度などに変換する。制御ユニット151で決定した左右2対の駆動輪の回転速度・加速度、回転角度などはドライブユニット152に指令され、アクチュエータをフィードバック制御によって駆動制御するため、上位装置から伝達された目的地へ移動できるようになっている。
【0028】
自走台車本体150は、駆動輪の回転によって進行方向(矢印の方向)に床面Fを移動する。床面Fを移動しているときにも、伝達機構によって補助駆動輪112,109,106も駆動輪と同じ方向に回転している。自走台車本体150が移動して、図4(A)に図示するように補助駆動輪106が段差に接触すると、補助駆動輪106の回転力によって、自走台車本体150には段差を乗り上げる上方への力が作用するため、図4(B)から図4(C)のように補助駆動輪106が段差に乗り上げるとともに駆動輪も床面Fから浮き上がる。
【0029】
次に、補助駆動輪112,109,106は駆動輪とともに伝達機構を介して回転しているので、補助駆動輪106が段差に乗り上げた後、補助駆動輪109が段差に接触し、補助駆動輪109の回転力の作用によって、補助駆動輪106と同様に図4(D)から図4(E)のように補助駆動輪109が段差に乗り上げることができる。補助駆動輪112についても同様に、段差が補助駆動輪112に接触すると、駆動輪から伝達機構を介して伝達される回転力によって補助駆動輪112に段差を乗り上げる力が作用し、図4(F)から図4(G)のように補助駆動輪112が段差を乗り越える。補助駆動輪112が段差を乗り越えると、段差は駆動輪に接触し、今度は駆動輪自体の回転力によって駆動輪が段差を乗り越えることで、自走台車本体150も段差乗り越えができるのである。
【0030】
ここで、各補助駆動輪は段差と接触するときの衝撃を緩和するためと、段差との摩擦力を大きくするため、柔軟な材質(例えば、ウレタンゴムや空気圧の低いタイヤ)で覆われている。また、補助駆動輪を覆う材質の表面に溝を刻むことで摩擦力を更に大きくする効果を向上できる。
本発明の第1実施例にかかる自走台車によれば、ベルトとプーリーと歯車を利用して、アクチュエータが発生する回転動力を複数の補助駆動輪に伝達した点と、駆動輪よりも径の小さい補助駆動輪を用いて段差を乗り越えるため、小径車輪による減速(増力)効果によって、低出力のアクチュエータでも大きな段差を乗り越えることができる。
【実施例2】
【0031】
図5は本発明の第2の実施例による車輪駆動装置の側面図、図6は上面図である。
以下、図5および図6を用いて各部を説明する。
図において、図番に添え字aを付加した番号は、駆動輪203よりも進行方向前方に配置した補助駆動輪を駆動するための機構を示し、図番に添え字bを付加した番号は、駆動輪203よりも進行方向後方に配置した補助駆動輪を駆動するための機構を示している。
201は回転動力を発生するアクチュエータであり、モータと減速機で構成されている。アクチュエータ201と駆動シャフト(アクチュエータの出力軸)202は、図示しないカップリングまたはフランジで固定されている。更に、駆動シャフト202と、駆動輪203およびプーリー204は、図示しないフランジまたはキーで固定されているので、アクチュエータ201で発生した回転動力は、駆動シャフト202を介して駆動輪203に伝達され、平面な床面Fを移動することができる。204はアクチュエータ201と駆動輪203の間のシャフト202にキーで固定されたプーリーである。
【0032】
205a,208a,211aは、駆動シャフト202と平行に配置された第2駆動シャフト(補助駆動輪の軸部)205b,208b,211bは、駆動シャフト202と平行に配置された第3駆動シャフト(補助駆動輪の軸部)である。それぞれの第2駆動シャフトおよび第3駆動シャフトの先端部にはそれぞれ補助駆動輪206a,209a,212aおよび補助駆動輪206b,209b,212bが固定配置されている。
ここでは、補助駆動輪206a,209a,212aおよび補助駆動輪206b,209b,212bがそれぞれ一対の補助駆動輪をなし、補助駆動輪212a,212bが第1の補助駆動輪、補助駆動輪209a,209bが第2の補助駆動輪、補助駆動輪206a,206bが第3の補助駆動輪にそれぞれ相当する。
214aおよび214bは駆動シャフト202と平行に配置された補助シャフトであり、それぞれの補助シャフトにはプーリー215aと歯車216aおよびプーリー215bと歯車216bがキーで固定配置されている。
【0033】
207a,213a,215aおよび207b,213b,215bはプーリーであり、図のように第2駆動シャフト205a,211aおよび第3駆動シャフト205b,211b、補助シャフト214aおよび214bに、プーリー204と同一平面に配置されるようにキーで固定されている。210aは第2駆動シャフト208aにキーで固定された歯車であり、歯車216aとかみ合っているので、歯車216aの回転運動は歯車210aおよび第2駆動シャフト208aを介して補助駆動輪209aに伝達するようになっている。同様に210bは第3駆動シャフト208bにキーで固定された歯車であり、歯車216bとかみ合うことで、歯車216bの回転運動は歯車210bおよび第2駆動シャフト208bを介して補助駆動輪209bに伝達するようになっている。
【0034】
プーリー204,207a,213a,215a,207b,213b,215bには、両面歯付ベルト218が図5に図示(太線)したようにかけられているため、アクチュエータ201が発生した回転動力は、ベルト218を介してプーリー204,207a,213a,215a,207b,213b,215bに伝達することができる。補助駆動輪206a、212a,206b、212bは、ベルト218およびプーリー207a,213a,207b,213bを介することで駆動輪3と同じ方向に回転することができる。
【0035】
補助駆動輪209aは、ベルト218から伝達される回転動力をプーリー215aで受け、歯車210aおよび歯車216aで回転方向を反転させることで、駆動輪3と同じ方向に回転するようにしている。同様に補助駆動輪209bは、ベルト218から伝達される回転動力をプーリー215bで受け、歯車210bおよび歯車216bで回転方向を反転させることで、駆動輪203と同じ方向に回転するようにしている。シャフト202,205a,208a,211a,214aおよび205b,208b,211b,214bは、それぞれ2つずつ配置したベアリング217の内輪側を通り、ベアリング217の外輪側をハウジング219または220aまたは220bに固定しているので、ベルト218を介して伝達される回転動力によって補助駆動輪206a,209a,212aおよび補助駆動輪206b,209b,212bが自在に回転することができるようになっている。
【0036】
ハウジング219,220は、外部から塵や埃が伝達機構に進入しないように、ベルト218、プーリー204,207a,213a,215a,27b,213b,215b、歯車210a,216a,210b,216bを覆っている。なお、ハウジング219およびアクチュエータ201は、図示しない自走台車本体250に固定されている。
このように、アクチュエータの回転動力を補助駆動輪を206a,209a,212a,206b,209b,212bに共有する両面歯付ベルト218とプーリーと歯車を利用して6つの補助駆動輪がそれぞれ駆動輪203と同一方向に回転できるようにし、段差の高さに応じて補助駆動輪を206a,209a,212a,206b,209b,212b床面Fに対して傾斜配置している。
【0037】
また、補助駆動輪206a,209a,212a,206b,209b,212bを駆動輪203よりも小径にすることで、補助駆動輪が円周接線方向に発生する力は、駆動輪3が円周接線方向に発生する力よりも大きくなる。
次に、図7,図8を用いて本発明の車輪駆動装置を適用した自走台車の段差乗り上がり時の動作を説明する。
【0038】
本発明の車輪装置を適用した自走台車本体250は、自走台車本体250の進行方向や移動距離、移動速度・加速度など移動動作に必要な動作命令を生成する制御ユニット251と、前記制御ユニット251が生成した動作命令に従って前記アクチュエータを駆動制御するドライブユニット252と、自走台車本体250に対して移動地点の指定を行う上位装置の指示を受信し、自走台車本体250の状態を前記上位装置へ通知するための通信ユニット253、アクチュエータの動力を床面Fに伝えて、自走台車本体250を動作させる駆動輪および補助駆動輪212a,209a,206a,212b,209b,206b、自走台車本体250が転倒しないように床面Fに支持する従動輪254で構成されている。
【0039】
駆動輪203および補助駆動輪212a,209a,206a,212b,209b,206bは、進行方向に対して左右対称に配置されており、従動輪254は左右対称に配置された駆動輪間の中心後方部に1つ配置されている。この従動輪254は図の矢印のように自走台車本体250の移動により、旋回と車輪軸周りの回転する旋回部255が設けられており、旋回時に床面Fから自走台車本体250に発生する反力が小さくなるように従動輪254の旋回軸と車輪軸が1点で交わらず距離をつけたものとなっている。
【0040】
上位装置が発行した移動地点などの指示は、通信ユニット253を介して制御ユニット251に伝達される。制御ユニット251は、上位装置からの指示に基づいて自走台車の進行方向や移動距離、移動速度・加速度を求め、求めた結果から更に左右2対の駆動輪の回転速度・加速度、回転角度などに変換する。制御ユニット251で決定した左右2対の駆動輪の回転速度・加速度、回転角度などはドライブユニット252に指令され、アクチュエータをフィードバック制御によって駆動制御するため、上位装置から伝達された目的地へ移動できるようになっている。
【0041】
本発明の車輪装置を適用した自走台車本体250は、駆動輪の回転によって進行方向(矢印の方向)に床面Fを移動する。床面Fを移動しているときにも、伝達機構によって補助駆動輪212a,209a,206aは駆動輪と同じ方向に回転している。
自走台車本体250が移動して、図8(A)に図示するように補助駆動輪206aが段差に接触すると、補助駆動輪206aの回転力によって、自走台車本体250には段差を乗り上げる上方への力が作用するため、図8(A)から図8(B)のように補助駆動輪206aが段差に乗り上げるとともに駆動輪も床面Fから浮き上がる。
【0042】
次に、補助駆動輪212a,209a,206aは駆動輪とともに伝達機構を介して回転しているので、補助駆動輪206aが段差に乗り上げた後、補助駆動輪209aが段差に接触し、補助駆動輪209aの回転力の作用によって、補助駆動輪206aと同様に図8(B)から図8(C)のように補助駆動輪209aが段差に乗り上げることができる。補助駆動輪212aについても同様に、段差が補助駆動輪212aに接触すると、駆動輪から伝達機構を介して伝達される回転力によって補助駆動輪212aに段差を乗り上げる力が作用し、図8(C)から図8(D)のように補助駆動輪212aが段差を乗り上がる。補助駆動輪212aが段差を乗り上がると、段差は駆動輪203に接触し、今度は駆動輪自体の回転力によって駆動輪203が段差に乗り上げることで、図8(D)から図8(E)のように自走台車本体250も段差乗り上がりができるのである。
【0043】
ここで、各補助駆動輪は段差と接触するときの衝撃を緩和するためと、段差との摩擦力を大きくするため、柔軟な材質(例えば、ウレタンゴムや空気圧の低いタイヤ)で覆われている。また、補助駆動輪を覆う材質の表面に溝を刻むことで摩擦力を更に大きくする効果を向上できる。
【0044】
また、図9を用いて本発明の車輪駆動装置を用いた場合に段差を降りる時の動作を説明する。
本発明の車輪装置を適用した自走台車本体250は、駆動輪の回転によって矢印の方向に段差上を移動する。段差上を移動しているときにも、伝達機構によって補助駆動輪212b,209b,206bは駆動輪と同じ方向に回転している。自走台車本体250の移動にともない、図9(A)から図9(C)のように段差の上端部が「駆動輪」との接地→「補助駆動輪212b」との接地→「補助駆動輪209b」との接地と順に接地する車輪が隣り合う車輪に移り、最後は図9(D)のように駆動輪が床面Fに接地して、段差降り動作が完了する。このように駆動輪の進行方向後方に駆動輪の回転中心から遠ざかるにつれて複数の各補助駆動輪を床面Fから離隔するように配置しているため、駆動輪だけで段差を降りる場合と比べて衝撃を著しく低減することができる。更に、各補助駆動輪212b,209b,206bを柔軟な材質(例えば、ウレタンゴムや空気圧の低いタイヤ)で覆えば、段差を降りる際に自走台車本体250に伝わる衝撃は更に小さくなるという効果が得られる。
【0045】
本発明が従来技術と異なる部分は、ベルトとプーリーと歯車を利用して、アクチュエータが発生する回転動力を駆動輪の前後に配置した複数の補助駆動輪に伝達した点と、駆動輪よりも径の小さい補助駆動輪を用いて段差を乗り越えるため、小径車輪による減速(増力)効果によって、低出力のアクチュエータでも大きな段差を乗り越えることができ、更に段差を降りる際の衝撃を著しく低減した点である。
【符号の説明】
【0046】
101 アクチュエータ
102 駆動シャフト
103 駆動輪(主駆動輪)
104、107、113、115、 プーリー
105、108、111 第2駆動シャフト(軸部)
106、109、112 補助駆動輪(第1〜第3の補助駆動輪)
110、116 歯車
114 補助シャフト
117 ベアリング
118 両面歯付ベルト
119、120 ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走台車本体と、
前記自走台車本体に設けられ回転動力を発生するアクチュエータと、
前記アクチュエータと動力伝達可能に設けられるとともに前記自走台車本体を支持する主駆動輪と、
前記主駆動輪と互いの軸方向が平行となるとともに、前記主駆動輪よりも接地部が上方に位置するように配設された補助駆動輪と、
前記主駆動輪と前記補助駆動輪とを動力伝達可能に連結する伝達機構と、を有している
ことを特徴とする、自走台車。
【請求項2】
前記補助駆動輪は前記主駆動輪よりも直径が小さく設定されている
ことを特徴とする、請求項1記載の自走台車。
【請求項3】
前記補助駆動輪は、
前記主駆動輪に隣接する第1の補助駆動輪と、
前記第1の補助駆動輪に隣接する第2の補助駆動輪と、
前記第2の補助駆動輪に隣接する第3の補助駆動輪と、を有している
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の自走台車。
【請求項4】
前記第2の補助駆動輪は前記第1の補助駆動輪よりも接地部が上方に位置するように配設され、
前記第3の補助駆動輪は前記第2の補助駆動輪よりも接地部が上方に位置するように配設されている
ことを特徴とする、請求項3記載の自走台車。
【請求項5】
前記主駆動輪は、前記アクチュエータの出力軸の先端に取り付けられ
前記補助駆動輪の軸部は前記自走台車本体に枢支され、
前記伝達機構は、
前記アクチュエータの出力軸と前記補助駆動輪の軸部とを動力伝達可能なベルト部材を有している
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の自走台車。
【請求項6】
前記アクチュエータの出力軸に設けられたプーリーと、
前記第1の補助駆動輪の軸部に設けられたプーリーと、
前記第3の補助駆動輪の軸部に設けられたプーリーと、
前記自走台車本体に枢支された第1歯車と、
前記歯車の軸部に設けられたプーリーと、
前記第2の補助駆動輪の軸部に設けられ、前記第1歯車と噛合う第2歯車と、
前記第1の補助駆動輪と前記第3の補助駆動輪との軸部に設けられたプーリーと、を有し、
前記伝達機構の前記ベルトは上記の各プーリーに巻回されている
ことを特徴とする、請求項5記載の自走台車。
【請求項7】
前記伝達機構の前記ベルトが両面歯付加工され、上記の各プーリーは前記ベルトの前記歯付加工部に噛合うように形成されている
ことを特徴とする、請求項6記載の自走台車。
【請求項8】
前記第2の補助駆動輪は軸方向に対向する一対の車輪を有し、
前記一対の車輪の間隙部に前記第1の補助駆動輪及び前記第3の補助駆動輪の辺部が位置するように配設されている
ことを特徴とする、請求項3〜7のいずれか1項に記載の自走台車。
【請求項9】
前記補助駆動輪及び前記伝達機構は、前記主駆動輪の前方向側及び後方側にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の自走台車。
【請求項10】
前記伝達機構は、前記主駆動輪の前方向側及び後方側それぞれの前記補助駆動輪に対して共通の前記ベルトを有している
ことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の自走台車。
【請求項11】
前記補助駆動輪は前記主駆動輪よりも表面が柔軟性の高い素材によって形成されている
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の自走台車。
【請求項12】
前記補助駆動輪は前記主駆動輪よりも重量密度が小さい素材によって形成されている

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−195160(P2010−195160A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41351(P2009−41351)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】