説明

臭気センサを備える拡散デバイス

揮発性物質で空間を処理するための装置は、揮発性物質の特定の成分の存在を検出する手段と、揮発性物質が特定の成分を含む場合にのみ、揮発性物質を出すために、揮発性物質ディスペンサを制御する手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は一般的には拡散デバイス、より詳細には、臭気センサを含む拡散デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
拡散デバイスもしくはディスペンサは、揮発性物質、例えば、香料、脱臭剤、殺虫剤、防虫剤等を分散させるために使用される。多くのこのようなデバイスは受動的拡散デバイスであり、揮発性物質を分散させるために周囲の空気流しか必要としない。他のデバイスは能動的拡散デバイスであり、揮発性物質を加熱するための加熱エレメントを含み、揮発性物質の蒸発を促進させる。他の能動的拡散デバイスはファンを用いて空気流を生成し、揮発性物質を拡散デバイスから周囲の環境内へと向ける。さらに他の拡散デバイスは超音波振動子を利用して液体の揮発性物質を飛沫に分散し、これら飛沫がデバイスから放出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これら多様な拡散デバイスに鑑みて、環境内に出される揮発性物質の量を制御する必要性が高まっている。例えば、受動的デバイスは、揮発性物質の利益が無いときでさえも揮発性物質を単に無制御に分散させる。例えば、香料がだれもいない部屋に、あるいは既に十分なレベルの香料を有する部屋に分散され続ける。上述の拡散デバイスの幾つかは、この課題を、悪臭、例えば、硫黄もしくはダバコの煙を感知するセンサを使用して解決しようとし、ここでは拡散デバイスはこのような悪臭の検出に応答して揮発性物質を分散させるように制御される。しかし、臭気センサを備える典型的な拡散デバイスは、これらセンサが複数の悪臭、例えば、硫化水素、メタンチオール、硫化ジメチル、アンモニア、二酸化窒素、一酸化炭素等を含む広範な化学物質を感知するように設計されているため複雑である。このような臭気センサの複雑さが拡散デバイスの大きさ、コストおよび実現に影響を及ぼす。さらに、これら既知の拡散デバイスの多くは、拡散デバイス内に不注意に入れられた不適当な揮発性物質を出すのを防止するための機構は採用していない。不適当な揮発性物質が使用されると、物質を収容する容器との不適合性のために拡散デバイスが損傷したり、あるいは適当でない揮発性物質が空間内に出されることにより、ユーザの不満が生じたりたりするかもしれない。従って、臭気センサを採用する従来技術の拡散デバイスを改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一つの実施形態によると、空間を揮発性物質で処理するための装置は、揮発性物質内の特定の成分の存在を検出するための手段と、揮発性物質ディスペンサを制御し、揮発性物質が特定の成分を含む場合にのみ揮発性物質を出すための手段と、を含む。
【0005】
もう一つの実施形態によると、空間を揮発性物質で処理するための装置は、空間内の揮発性物質の特定の成分の量を検出するための手段と、揮発性物質ディスペンサを制御し、特定の成分の検出された量が指定されるレベルより落ちたことに応答して揮発性物質を出すための手段と、を含む。
【0006】
本発明のさらにもう一つの実施形態によると、空間を揮発性物質にて処理するための方法は、特定の成分を有する揮発性物質を収容する容器を提供するステップと、空間内の特定の成分の量を検出するステップと、を含む。さらにこの方法は、特定の成分の検出された量が指定されたレベルより低下することに応答して、容器から空間内に揮発性物質を出すステップを含む。
【0007】
本発明の他の特徴および長所が以下の詳細な説明を考察することで明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】拡散デバイスの第一の実施形態の等角図である。
【図2】図1の線2−2に概ね沿った拡散デバイスの断面図である。
【図3】図2の拡散デバイスの超音波アクチュエータの等角図である。
【図4】図2の拡散デバイスの臭気センサである。
【図5】図1の拡散デバイスによって実行される前動作シーケンスに対するプログラミングを示す流れ図である。
【図6】図1の拡散デバイスによって実行される通常動作シーケンスに対するプログラミングを示す流れ図である。
【図7】図1の拡散デバイスによって実行される異なる動作プログラムを示す流れ図である。
【図8】第一と第二の拡散デバイスおよび第一と第二のセンサを組み込むシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1および2は拡散デバイス20を示し、これはハウジング22を含む。ハウジング22は上側部24を有し、そこに凹型のくぼみ26が配置される。この凹型のくぼみ26内には上側部24を貫通して開口28が延びる。開口28は流体、例えば、霧状にされた液体がそこを通じて放出できるような適当な大きさにされる。
【0010】
図2に示すように、拡散デバイス20はハウジング22内に配置された支持シャーシ30を含む。シャーシ30は拡散デバイス20のための印刷回路基板(PCB)32と制御回路を支持する。印刷回路基板(PCB)32は可動セレクタスイッチ34に応答し、このスイッチは動作モードおよび/あるいはデバイスが霧状にされた液体を分散させる速度を選択するために用いられる。PCB32には発光ダイオード(LED)36が結合され、これは拡散デバイス20の動作状態の指標を与えるために用いられる。PCB32には臭気センサ38も結合されるが、この動作については後に詳細に説明される。本実施形態においては、臭気センサ38は凸型のくぼみ26内に配置される。他の実施形態においては、臭気センサ38は拡散デバイス20上のどこにでも配置でき、さらには拡散デバイス20から離すこともできる。
【0011】
シャーシ30にはバッテリー42のためのバッテリー取付台40も取り付けられる。本実施形態においては、バッテリー取付台40は拡散デバイス20に電源を供給するために1つの1.5ボルトAAバッテリーを保持するように適合される。しかし、必要であれば、この1つのバッテリーは任意の数のバッテリーもしくは他の電源と交換することもできる。
【0012】
シャーシ30はさらに開口44を含み、これは交換式の流体容器46を受けるように適合される。流体容器46はその内部に揮発性物質48を液体の液体状態で含み、揮発性物質48は香料、殺菌剤、消毒剤、空気清浄剤、アロマセラピー用の香り、防腐剤、臭気除去剤、空気清涼剤、脱臭剤、殺虫剤、防虫剤、昆虫誘引剤、もしくは空間あるいは周囲の環境内に分散されることが有効な任意の他の揮発性物質であり得る。本実施形態においては、流体容器46は概ね円筒形のボディー50を有し、ネック52を備える。連結プラグ及び芯ホルダー54がネック52に取り付けられる。プラグ及び芯ホルダー54は芯56を保持し、流体容器46内に配置され、揮発性物質48と接触する。芯56の上端58はネック52を越えて延び、芯の下端60は流体容器46内に配置され、その底面62に向かって延びる。芯56は毛管作用により揮発性物質を流体容器46内から芯56の上端58へと運ぶ。流体容器46はシャーシ30内に挿入され、任意の周知の方法によって、例えば、当業者においては明らかなように、ねじ込み咬合、スナップ式咬合、締まりばめ、バイオネット接続等によって固定される。
【0013】
図2および3に示すように、拡散デバイス20は超音波アクチュエータ、例えば、圧電アクチュエータ70を含む。圧電アクチュエータ70は圧電素子72およびオリフィスプレート74を含み、本実施形態の圧電アクチュエータ70は、ここに参照のために全体が組み込まれるHelfらによる合衆国特許第6,896,193号において説明されている任意の圧電アクチュエータ、あるいはウィスコンシン州ラシーヌ所在のS.C.Johnson and Son, Inc.から販売されるWISP(登録商標)ブランドのFlameless Candleに見られる圧電アクチュエータを含んでも良い。代わりに、他の実施形態において、他の既知の超音波アクチュエータを同様に用いることもできる。圧電アクチュエータ70は拡散デバイス20のボディー22内に、開口44の上方に、開口44から伸びる流体容器46の芯56の一直線上に取付けられる。図3に示すように、オリフィスプレート74は概ね円筒の形状であり、オリフィスプレートの外側周辺部は圧電素子72と接触する。オリフィスプレート74は(図面のスケールでは見えないが)この内部を貫通して延びる名目上は等しい直径の穿孔あるいは穴を含む。
【0014】
圧電素子72はPCB32にワイヤー76によって接続される。ワイヤー76はPCB32によって生成される交流電気電圧を圧電素子72の両サイドに供給する。圧電素子72の直径は素子72に交流電界が加えられると大きさが交互に増減し、これによってオリフィスプレート74が、素子72がオリフィスプレート74と接触するために上下に振動することとなる。オリフィスプレート74は、芯56によって供給される揮発性物質48と流体連通し、オリフィスプレート74の振動は揮発性物質48をオリフィスプレート74内のせん孔あるいは穴内から飛ばす。その後、揮発性物質48はエアロゾル化された粒子の状態で上方に放出され、これはハウジング22の開口28を通過し、周囲の環境あるいは空間内へと放出される。PCB32は、圧電素子72を、揮発性物質を任意の量だけ分散させるために、上述のように任意の期間だけ作動するように適合される。例えば、当業者においては明らかなように、PCB32は、短期間、例えば500ミリ秒の間だけ作動し、比較的少量の揮発性物質を分散させることもでき、あるいはより長い期間、例えば10秒間だけ作動し、より多量の揮発性物質を分散させるようすることもできる。
【0015】
幾つかの実施形態においては、PCB32はマイクロコントローラおよび/または特定用途向け集積回路を含む。一つの実施形態においては、PCB32は上述のWISP(登録商標)ブランドのFlameless Candle内のPCBと同様である。もう一つの実施形態においては、PCB32はBlandinoらの合衆国特許出願第11/464、419号あるいは第11/639、904号において説明されるPCBと同様であり、これらは両方ともここにその全体が参照のために組み込まれる。
【0016】
図4には、単純な臭気センサ38の一例が示されるが、これは化学センサであり、これはそれぞれ、第一と第二の電気リード80、82を含み、導電性ポリマー84によって分離される。臭気センサ38のインピーダンスは特定の化学成分への暴露の関数として変化する。本実施形態においては、特定の化学成分の存在は、第一と第二の電気リード80、82の間に一定の電圧差を加え、結果としての電流を解析することで検出される。さらにあるサンプル内の化学成分の濃度あるいは量が、インピーダンスの変化の大きさを解析することで検出される。一つの実施形態においては、臭気センサ38は、ここにその全内容が参照のために組み込まれるLewisによる合衆国特許第6,093,308号に開示されるセンサと同様あるいは同一である。
【0017】
本実施形態においては、臭気センサ38は、導電性ポリマー84の組成を変化させることで、特定の化学成分に対して調整される。すなわち特定の化学成分により敏感になるよう、あるいは応答するようにされる。このような調整を達成するために導電性ポリマー層の組成を改良するやり方は当業者に知られており、例えば、Lewisによる合衆国特許第6,093,308号はこの製造過程を説明する。調整された臭気センサ38を用いてデバイス20から放出される揮発性物質48内の特定の化学成分の存在および量が検出される。特定の化学成分は揮発性物質48の中性のもしくは活性な成分である。一つの好ましい実施形態においては、特定の化学成分は揮発性物質48の中性のキャリアあるいは溶剤である。さらに、この中性のキャリアあるいは溶剤を他の揮発性物質に同様に入れて、複数の異なる芳香剤がその同一の中性の成分を含むようにすることもできる。もう一つの実施形態においては、特定の化学成分の、揮発性物質48を構成する他の成分に対する比が知られている。これら成分の比は、当業者には明らかなように、異なる揮発性物質の間で変えられる。さらにもう一つの実施形態においては、特定の化学成分は、揮発性物質48の全体に渡って均一に分散され、揮発性物質48の濃度をそれが消耗される寿命全体に渡って正確に決定することができる。
【0018】
図5には、PCB32によって拡散デバイス20を制御するために実行される前動作プログラムもしくはシーケンスの一つの実施形態が示され、これはリセット/開始ブロック100にて開始する。ブロック100における開始シーケンスは、デバイス20をオンにする、すなわちデバイス20の開始によって、あるいはデバイスに電源を入れたとき、すなわちデバイス20を再起動したときに、流体容器46をハウジング22に挿入及び/または交換することによって生じる。一つの実施形態においては、デバイス20は、流体容器46の挿入及び/または取り外しを検出するもう一つのセンサ(図示なし)を含む。ブロック100の後に、ブロック102に移り、以下でより詳細に説明される化学センサである、第二の臭気センサ103(図2および3参照)が起動され、揮発性物質48のサンプルが分析される。次に、判定ブロック104において、第二のセンサ103によって特定の化学成分が検出されたか否か調べられる。特定の化学成分が検出されないときは、コントロールはブロック106に進み、PCB32はエラーの信号を送り、拡散デバイス20の通常動作は開始しない。ブロック106によって信号が送信されるエラーは、可視または可聴の信号、例えばLEDの点滅もしくはビープ音、あるいは当業者においては明らかな任意の他の信号もしくは合図が含まれる。判定ブロック104において特定の化学成分が検出されたときは、PCB32は、ブロック108に示される通常動作モードもしくはシーケンスに入るが、これには後に詳細に説明されるように、タイマーおよび/またはセンサに応答して揮発性物質48を定期的に分散することが含まれる。
【0019】
本実施形態の前動作プログラムは、一部において、不適当な流体容器46がハウジング22に挿入されてないことを保証するためのロック・アンド・キー開始シーケンスを特徴とする。第二の臭気センサ103は圧電アクチュエータ70近傍の特定の化学成分の濃度を検出するように適合される。本実施形態においては、第二の臭気センサ103は、圧電アクチュエータ70上のオリフィスプレート74近傍に配置され、センサ103は芯56を通じてオリフィスプレート74に供給される揮発性物質48と流体連通する。第二のセンサ103は揮発性物質48を解析することで、特定の化学成分の存在を検出し、信号をPCB32に送り、PCB32は圧電アクチュエータ70を特定の化学成分が検出されたときにのみ作動する。上述のように、第二の臭気センサ103が、揮発性物質48が不適合であることを検出したときには、ブロック106においてエラー状態が引き起こされる。揮発性物質48が不適合であることは、その揮発性物質48に特定の化学成分が見つからなかったとき、および/あるいは特定の化学成分の濃度が低すぎるときに発見され、流体容器46が空であることを示してもよい。
【0020】
ロック・アンド・キー機構の異なる形態においては、第一の臭気センサ38が前動作状態の際に揮発性物質48の特定の化学組成を検出するために用いられる。本実施形態においては、PCB32は、開始動作(図示なし)の際に圧電アクチュエータ70を作動することで揮発性物質48を分散させ、第一の臭気センサ38が分散された揮発性物質48を特定の化学成分について分析する。成分が検出されたときは、PCB32は拡散デバイス20のコントロールをブロック108に渡し、通常動作モードを開始する。一方、特定の化学成分が検出されないときは、PCB32はコントロールをブロック106に渡し、エラーの信号を送り、拡散デバイス20の通常動作は開始されない。本実施形態においては、第一のセンサ38は第二の臭気センサ103と同様の機能を実行し、第二のセンサ103は拡散デバイス20から省くことも、あるいはそのままに残して第一の臭気センサ38と連動して用いることもできる。
【0021】
図6には拡散デバイス20の通常動作モードのプログラミングの一つの実施形態が示される。この通常動作モードは、一部、揮発性物質48を、空間もしくは環境内のそのレベルもしくは濃度が所定のレベルより低くなったときに放出することを特徴とする。具体的には、通常動作モードの際に臭気センサ38がブロック110において定期的に起動され、空間もしくは環境、例えば、家の部屋の少量のサンプルの特定の化学成分の量が検出される。その後、PCB32は、その部屋の揮発性物質48の対応するレベルもしくは濃度を推定する。特定の化学成分の量と揮発性物質48の濃度との間の対応は既知の方法、例えば、試験施設において実施される定量および/または定性分析を用いて決定される。一例においては、既知の量の揮発性物質48を部屋に分散し、部屋全体から採取されたサンプルの特定の化学成分と揮発性物質の検出量を分析するために、一つもしくは複数の臭気センサ38を用いて定量分析が実施される。もう一つの例においては、既知の量の揮発性物質48を部屋に分散し、部屋にいる人が部屋の揮発性物質48をユーザに示しながら、部屋の特定の化学成分の検出量を分析するために、一つもしくは複数の臭気センサ38を用いることによって、定性分析が実施される。さらに、他のデータを集めることおよび/または他のテストを実施することで、特定の化学成分と揮発性物質48の濃度との間のより厳密な対応を得ることもでき、当業者においては明らかなように、これには、例えば、温度および湿度を測定すること、異なる大きさの部屋を使用すること、部屋に空気流を作り出すこと等が含まれる。
【0022】
PCB32によって部屋の揮発性物質48の対応するレベルもしくは濃度が決定されると、判定ブロック112において、検出されたレベルもしくは濃度が指定のレベルより低いかどうか判断される。上述のように、特定の化学成分の量を用いて、環境、例えば、部屋の揮発性物質48のレベルもしくは濃度が決定される。もし検出された量が指定されるレベルより高ければ、コントロールはブロック110にループバックし、臭気センサ38はその空間の特定の化学成分の量の監視を続ける。もし検出された量およびその空間の揮発性物質48の対応するレベルが指定のレベルより低いときは、コントロールはブロック114に進み、揮発性物質48を出す。揮発性物質48が出された後に、コントロールはブロック110にループバックし、臭気センサ38はその空間を揮発性物質48のレベルもしくは濃度ついて分析を継続する。
【0023】
さらにもう一つの実施形態においては、ブロック114の後に、コントロールは図5のブロック104に戻り、特定の化学成分の閾値量を検出し、その後、コントロールはブロック108の通常動作モードに戻る。本実施形態においては、もし特定の化学成分の濃度が低すぎる場合は、流体容器46が空であり、新たな流体容器と交換すべきであることを表示するために、上述のように、エラーもしくは警告の信号を送る。このように、流体容器46が空になったときに、ブロック110、112、および114のループの実行が繰り返されることを回避するために、図6のプログラミングが変更される。
【0024】
図7はPCB32によって拡散デバイス20の動作を制御するために実行されるさらにもう一つのプログラムを示し、リセット/開始ブロック120で開始する。リセット/開始ブロック120は、図5のブロック100と同様である。その後、コントロールは判定ブロック122に進み、テストモードが実行されるべきか判断する。テストモードが実行されるべきであるときは、ブロック124においてテストモードが実行される。一つの実施形態においては、消費者が拡散デバイス20を使用する前に、拡散デバイス20の正常な動作が保証するために、テストモードは製造施設において実行される。例えば、空間のある容積の揮発性物質48の特定の化学成分のある検出された量が揮発性物質48の実際のレベルもしくは濃度と一致することを保証するために、テストモードは臭気センサ38、103のテストを含むことができる。当業者には明らかなように、他のテストを実行することもできる。テストモードは実行されないときは、コントロールはブロック126に進み、揮発性物質48が空間に出される。その後、コントロールは、臭気センサ38が起動されるブロック128に進む。
【0025】
本実施形態において、ブロック128は、ブロック126において揮発性物質48が出された空間を分析するために、臭気センサ38を作動する。判定ブロック130において、その空間に特定の化学成分が検出されたか、従って、揮発性物質48が特定の化学成分を含むかを判断する。特定の化学成分が検出されないときは、コントロールはブロック132、134、および136を含むエラーループに進む。エラーループは、コントロールはその揮発性物質48は特定の化学成分を含まないことを判断する前に、その空間の一つもしくは複数のサンプルを分析する。より具体的には、ブロック132においてエラーカウントを増加させ、このカウントは分析されたサンプルの数に対応する。コントロールは次にブロック134に進み、ここでエラーカウント(分析されたサンプルの数)が最大サンプル数、例えば、4に達したか判断する。もしエラーカウントが最大に達した場合は、コントロールはエラーブロック136へと進む。一つの実施形態においては、エラーブロック136はPCBがリセットされるまで(ブロック120)、揮発性物質48が更に出されることを防止し、ユーザにユーザへの眼に見えるエラーの合図を提供するために、さらにLEDを点滅させる。もしエラーカウントが最大に達してないときは、コントロールはブロック126に戻り、揮発性物質48のもう一つのサンプルが出される。
【0026】
再びブロック130に戻り、もし特定の化学成分が空間内で検出されたときは、コントロールはブロック138に進み、その空間内の特定の成分の量が検出される。量を検出した後に、コントロールは判定ブロック140に進み、空間内の特定の成分の量が指定のレベルもしくは範囲と比較される。本実施形態においては、指定のレベルまたは範囲はユーザによって、例えば、セレクタスイッチ34を使用して調節できる。もしその量が指定のレベルまたは範囲より高いときは、コントロールはブロック138に戻り、臭気センサ38はその空間の分析を継続する。もし量が指定のレベルまたは範囲より低いときは、コントロールはブロック142に進み、揮発性物質48が出される。ブロック142に続いて、コントロールはブロック138に戻る。
【0027】
もう一つの実施形態においては、量が指定のレベルよりも低いかを判定するために、ブロック138は、コントロールがブロック140に進む前に、最初に特定の化学成分の閾値量を検出する。もしその化学成分の量が閾値量より低いときは、コントロールはブロック136に進み、エラーの信号が送られる。低くないときは、コントロールは判定ブロック140に進む。こうして、図7のプログラムは、流体容器46が空になった時を判断し、ブロック138、140、および142のループを繰り返し実行する代わりにエラーの信号を送る。
【0028】
図8は、図1の拡散デバイス20と類似するが、それぞれ、拡散デバイス162とは遠隔もしくは分離しているセンサ164a、164bと通信している拡散デバイス162a、162bを含むシステム160を示す。拡散デバイス162a、162bはセンサ164a、164bと通信ライン166を通じて通信し、通信ライン166は有線もしくは無線接続であってもよい。コントローラ168は拡散デバイス162a、162bと類似の有線もしくは無線通信ライン170を介して通信する。本実施形態においては、拡散デバイス162a、162bは、建物172全体に分布され、建物172は、それぞれ、第一と第二の部屋174、176およびHVACシステム178を含む。具体的には、拡散デバイス162aは第一の部屋174内にセンサ164aから離れて配置され、例えば、拡散デバイス162aとセンサ164aは部屋174の両端に配置される。さらに、拡散デバイス162bがHVACシステム178内に配置され、拡散デバイス162bから離れてセンサ164bが第二の部屋176内に配置される。拡散デバイス162a、162bによって出された揮発性物質の特定の化学成分もしくは臭気のために、それぞれ、第一と第二の部屋174、176の空間分析するために、センサ164a、164bは動作する。上述のように、特定の化学成分を検出することで、その空間内の揮発性物質のレベルが推定される。本実施形態においては、それぞれ、第一と第二の部屋174、176の揮発性物質のレベルが低い遠隔センサ164a、164bから信号に応答して、揮発性物質を出すために、コントローラ168は拡散デバイス162a、162bを制御する。図8に示される実施形態に対して、当業者においては明らかなように、様々な変更ができる。例えば、追加の拡散デバイスおよび/またはセンサを備える追加の部屋を設け、複数のセンサと一つもしくは複数の拡散デバイスとを通信してもよく、複数の拡散デバイスと一つもしくは複数のセンサとを通信してもよい。
【0029】
他の実施形態においては、揮発性物質48を放出するための手段は拡散デバイス20内で一部変更もしくは完全に変更してもよい。例えば、圧電アクチュエータ70は他の既知の圧電アクチュエータを用いて変更され、あるいはヒータ、ファン、バルブ機構、およびタイマー、センサ、および手動アクチュエータの一つもしくは複数によって生成される信号に応答して揮発性物質48を出す機械式駆動機構の一つもしくは複数によって置換および/または追加してもよい。さらに、揮発性物質48は、流体、ゲル、もしくは固体であるキャリアによって保持され、任意のタイプの流体容器、例えば、ボトル内に、浸透性膜によって覆われた区画内に、あるいはエアロゾル容器内に収容してもよい。一つの代わりの実施形態においては、ここにその全体が参照のために組み込まれるPedrottiらの合衆国特許第6,862,403号において開示されるような芳香オイルを出するための拡散デバイスが、ここに説明される任意の臭気センサおよび/あるいは方法を含むように修正される。同様にして、他の実施形態においては、ここにその全体が参照のために組み込まれるAdamsらの合衆国特許第6,938,883号、Carpenterらの合衆国広報第2007/0199952号、Helfらの合衆国広報第2007/0237498号、Belandらの合衆国特許出願第11/801,554号、およびHelfらの合衆国特許出願第11/893,532号にて開示される一つのような揮発性物質を放出するための拡散デバイスがここに説明される任意の臭気センサおよび/あるいは方法を含むように修正される。
【0030】
さらに別の実施形態においては、拡散デバイス20は揮発性物質48へのユーザの順応あるいは慣れを補償するように適合される。一つの実施形態においては、PCB32は出される揮発性物質48の量を変化させるために圧電素子72を異なる時間だけ作動するプログラミングを含む。例えば、PCB32は比較的高いレベルの揮発性物質は1時間、その後、より低いが、それでも気づくレベルの揮発性物質を20分間だけ出すプログラミングを含む。もう一つの実施形態においては、ファンもしくはヒータの動作を期間および/または強度において変化させ、これによって出される揮発性物質48の量を、あるいは出される揮発性物質48の拡散速度を変化させる。もう一つの実施形態においては、異なる揮発性物質48が異なる順番によって出され、これによってユーザの慣れが補償される。さらにもう一つの実施形態においては、拡散デバイス20は、もしユーザによって要求される場合は、揮発性物質48を出すために手動で作動させる。当業者においては明らかなユーザの慣れを補償するための他の方法および技術を本開示と合致して提供することもできる。
【0031】
さらに、他の考えられる実施形態として、追加のセンサ、例えば、光センサもしくは熱センサを含めることもできる。さらに他の実施形態においては、拡散デバイスはずらりと並んだ多数の臭気もしくは化学センサを含み、複数の特定の成分が検出され、および/またはある特定の成分がより正確に検出される。さらに他のセンサを使用することもでき、これらには、Lewisの合衆国特許第6,093,308号において開示されるような交互に導電と非導電材料によって分離された電気リードが含まれる。さらに当業者において知られている他のセンサ、例えば、金属酸化物センサ、微小ロエレクトロメカニカルセンサ、弾性表面波センサ、水晶マイクロバランスセンサ、光センサ、化学的に活性な色素センサ、インクジェット印刷薄膜センサ、バイオメトリックセンサ等をここに説明される拡散デバイスと共に用いることもできる。より詳細には、本発明の開示に従って適合できるセンサのリストには、網羅的でも、排他的でもないが、メリーランド州ハノーバー所在のAlpha M.O.Sから市販されるPrometheus臭気およびVOCアナライザ、英国、ウェストヨークシャ所在のScensive Technologies Limited of Normantonから市販されるBloodhound(登録商標)ST214、日本、東京所在の凸版印刷株式会社によって開発されたBall SAWセンサ、イタリア、ナポリ所在のTechnobiochip of Pozzuiliによって市販されるLibraNOSE、およびアンゾナ州ツーソン所在のBioVigilant Systems,Inc.によって市販されるIPD-1000粒子検出器が含まれる。
【0032】
上述の実施形態の各々の個々の特徴の様々な組合せから構成される他の実施形態もここに明確に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
ここに説明される拡散デバイスは、臭気センサを巧みに利用して、出される揮発性物質の特定の化学成分を検出する。特定の化学成分を検出することで、揮発性物質が適合するか識別され、それに基づいて拡散デバイスが制御される。さらに環境内の特定の化学成分の量を分析することで、その空間内の揮発性物質のレベルが推定され、それに基づいて拡散デバイスが制御される。さらに、臭気センサは広範な成分ではなく特定の化学成分を検出するように構成されるために臭気センサと拡散デバイス全体の設計が簡素化される。
【0034】
本発明に対する多数の変更が当業者においては上述の説明の観点から明らかである。従って、この記述は単に解説的なものであり、当業者が本発明を製造および利用することを助けるために、および本発明を実施する最良の形態を教示するために示されたものであると解釈されるべきである。添付のクレームの範囲内に入る全ての変更に対する排他的権利が保持される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性物質の特定の成分の存在を検出する手段と、
前記揮発性物質が前記特定の成分を含む場合にのみ、前記揮発性物質を出すために、揮発性物質ディスペンサを制御する手段と、を含むことを特徴とする揮発性物質で空間を処理するための装置。
【請求項2】
容器内の揮発性物質を出すように適合した揮発性物質ディスペンサをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記検出する手段は、前記揮発性物質内前記特定の成分を検出するために、容器内の前記揮発性物質と流体連通するように構成されることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記揮発性物質用の容器をさらに含み、前記容器は芯を含み、前記検出する手段は前記芯と流体連通する化学センサであることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記揮発性物質用の容器をさらに含み、前記揮発性物質ディスペンサは前記揮発性物質を出すように構成された圧電素子およびオリフィスプレートを含み、前記揮発性物質用の容器は前記揮発性物質を前記オリフィスプレートに供給するように適合された芯を含むことを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項6】
前記揮発性物質ディスペンサはヒータ、ファン、バルブ機構、および機械的駆動機構の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項7】
前記揮発性物質が前記特定の成分を含まないとき、または前記揮発性物質用の容器が空で交換すべきであるときは、エラーの信号を送る手段をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記検出する手段は、前記特定の成分にのみ反応する化学センサであることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項9】
空間内の揮発性物質の特定の成分の量を検出する手段を含み、前記検出する手段は前記特定の成分の存在と量を検出するために調整された臭気センサであり、前記特定の成分は前記揮発性物質の中性のキャリアであり、 前記特定の成分の前記検出された量が指定されたレベルより落ちたことに応答して前記揮発性物質を出すために、揮発性物質ディスペンサを制御する手段を含むことを特徴とする揮発性物質で空間を処理するための装置。
【請求項10】
前記制御する手段は、前記特定の成分の前記検出された量と前記空間内の揮発性物質のレベルと相互に関連することを特徴とする請求項9記載の装置。
【請求項11】
容器内の揮発性物質を出すように適合した揮発性物質ディスペンサをさらに含むことを特徴とする請求項9記載の装置。
【請求項12】
前記制御する手段は、慣れを補償するために、出される揮発性物質の量または拡散速度を変化させることを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項13】
容器をさらに含み、前記容器はエアロゾル容器であり、前記揮発性物質ディスペンサは流体を前記エアロゾル容器から出すように適合することを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項14】
前記揮発性物質ディスペンサはヒータ、ファン、バルブ機構、および機械的駆動機構の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項15】
前記検出する手段は、前記揮発性物質ディスペンサから離れていることを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項16】
特定の成分を有する揮発性物質を収容する流体容器を供給し、
前記特定の成分の存在および量を検出するために調整された臭気センサを用いて空間内の前記特定の成分の量を検出し、前記特定の成分は前記揮発性物質の中性のキャリアであり、
前記特定の成分の前記検出された量が指定されたレベルより落ちたことに応答して、前記流体容器から前記空間内に前記揮発性物質を出すこと、を含むことを特徴とする揮発性物質で空間を処理するための方法。
【請求項17】
前記特性の成分について前記流体容器内の前記揮発性物質を分析することさらにを含むことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記揮発性物質が前記特定の成分を含まないときは、前記揮発性物質を前記流体容器から出すことを防止することをさらに含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記分析することは、前記揮発性物質を前記空間内に出すこと、および前記特定の成分について前記出された揮発性物質を分析すること、をさらに含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記流体容器が空になったかを検出することをさらに含むことを特徴とする請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−500085(P2012−500085A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523817(P2011−523817)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/004742
【国際公開番号】WO2010/021716
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(500106743)エス.シー. ジョンソン アンド サン、インコーポレイテッド (168)
【Fターム(参考)】