説明

舗装体

【課題】車両が順行した際には運転手に与える振動を抑えるとともに、車両が逆行した際には運転者に大きな振動を与えて注意を喚起する舗装体を提供することを課題とする。
【解決手段】舗装表面1bにおいて道路の延長方向に複数並設された凸部2を有する舗装体1であって、凸部2は、舗装表面1bに連続し順行方向の上流側に形成された第一面12aと、舗装表面1bに連続し順行方向の下流側に形成された第二面12bと、を有し、舗装表面1bと第二面12bとの内角βは、舗装表面1bと第一面12aとの内角αよりも大きく形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者に対する注意喚起機能を備えた舗装体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転者に対して注意喚起を行う注意喚起機能を備えた舗装体が知られている。例えば、特許文献1には、道路のセンターラインや外側線に複数の凸部を設け、車両が当該凸部を通る際に車両に振動を与えて注意を喚起する技術が開示されている。他にも、舗装表面やセンターライン等にグルービングによる凹部を設けたものや、道路鋲等を設けて注意を喚起させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−161518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高速道路や一方通行路等においては、運転者の標識の見落とし等によって道路を逆行してしまい事故を起こすことが問題となっている。そこで、例えば、特許文献1に係る凸部を大きく形成し、運転者に大きな振動を与えて逆行していることを喚起することが考えられる。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の凸部は、副員方向から見た断面形状は等脚台形となっているため、車両が順行した場合も、逆行した場合も運転者に伝わる振動(衝撃)は略同等となる。したがって、本来注意喚起を必要としない順行方向に移動している運転者に対しても大きな振動を与えることになるため、運転者に無理な負担を強いることになる。
【0006】
このような観点から、本発明は、車両が順行した際には運転手に与える振動を抑えるとともに、車両が逆行した際には運転者に大きな振動を与えて注意を喚起する舗装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明に係る舗装体は、舗装表面において道路の延長方向に複数並設された凸部を有する舗装体であって、前記凸部は、前記舗装表面に連続し順行方向の上流側に形成された第一面と、前記舗装表面に連続し前記順行方向の下流側に形成された第二面と、を有し、前記舗装表面と前記第二面との内角は、前記舗装表面と前記第一面との内角よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、車両が順行した際には、車両のタイヤが緩勾配である第一面側から凸部を乗り上げるため、運転者はさほど振動を受けない。これにより、凸部を乗り上げる際の運転者に対する負担を小さくすることができる。
一方、車両が逆行した際には、車両のタイヤが急勾配である第二面側から凸部を乗り上げるため、運転者に比較的大きな振動を与えることができる。つまり、車両が逆行した際には、急勾配である第二面にタイヤが衝突し、タイヤが上方に突き上げられるため、運転者に大きな振動を与えることができる。これにより、運転者に対して注意を喚起することができる。
【0009】
また、本発明に係る舗装体は、舗装表面において道路の延長方向に複数並設された凹部を有する舗装体であって、前記凹部は、前記舗装表面に連続し順行方向の上流側に形成された第一面と、前記舗装表面に連続し前記順行方向の下流側に形成された第二面と、を有し、前記舗装表面と前記第一面との内角は、前記舗装表面と前記第二面との内角よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、車両が順行した際には、車両のタイヤが凹部に入った後、緩勾配である第二面側から凹部を抜け出すため、運転者はさほど振動を受けない。これにより、凹部を抜け出す際の運転者に対する負担を小さくすることができる。
一方、車両が逆行した際には、車両のタイヤが凹部に入った後、急勾配である第一面側から凹部を抜け出すため、運転者に比較的大きな振動を与えることができる。つまり、車両が逆行した際には、急勾配である第一面にタイヤが衝突し、タイヤが上方に突き上げられるため、運転者に大きな振動を与えることができる。これにより、運転者に対して注意を喚起することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両が順行している際には運転手に与える振動を抑えるとともに、車両が逆行した際には運転者に大きな振動を与えて注意を喚起する舗装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一実施形態に係る舗装体を示した斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る凸部を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、側断面図である。
【図3】第一実施形態に係る凸部の第一変形例乃至第三変形例を示した側断面図である。
【図4】第二実施形態に係る凹部を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、側断面図である。
【図5】第二実施形態に係る舗装体の施工方法を段階的に示した側断面図である。
【図6】第二実施形態に係る凹部の第一変形例乃至第三変形例を示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態にかかる舗装体1は、図1に示すように、舗装本体1aと、舗装本体1aに突設された複数の凸部2とを有する。舗装体1は、本実施形態では、例えば高速道路の本線に進入するための進入路などの一方通行区間において、その進入路の入口付近に形成される。
【0014】
舗装本体1aは、車両等が走行する部分であって、路盤Rの上に所定の厚みで形成されている。舗装本体1aは、本実施形態ではアスファルト混合物によって形成されている。舗装本体1aの舗装表面1bの両側には、一対の外側線G,Gが形成されている。本実施形態では、図1に示す矢印Y1方向を順行、Y2方向を逆行とする。また、「上流側」とは、順行方向に対する上流側をいい、「下流側」とは、順行方向に対する下流側をいう。
【0015】
舗装本体1aは、本実施形態では、アスファルト混合物によって形成されているが、その材料は特に制限されるものではなく、アスファルトコンクリート、セメントコンクリート等であってもよい。
【0016】
凸部2は、車両に振動を与えることにより、車両の運転者に対して注意喚起を促す部分である。本実施形態では、舗装表面1bの外側線G,Gの間において、同形状からなる凸部2が道路の延長方向に4体並設されている。凸部2の幅は、本実施形態では、外側線G,G間の長さよりも若干短く形成されている。
【0017】
凸部2は、図2の(a)及び(b)に示すように、下面11と、舗装表面1bから上方に凸状に形成された上面12と、舗装表面1bから略垂直に立設する一対の側面13,14とを有する。凸部2は、本実施形態では、硬質骨材とバインダとの混合物等によって形成されている。
【0018】
下面11は、舗装表面1bと接触する部位であって、平面視長方形に形成されている。凸部2の上面12は、曲面で構成されており、丸みを帯びた外観を呈する。図2の(b)に示すように、上面12の最も高い位置となる頂点P3は、凸部2の中間位置よりも下流側に位置する。
【0019】
上面12は、順行方向の上流側に形成された第一上面12aと、順行方向の下流側に形成された第二上面12bとを有する。第一上面12aは、舗装表面1bに連続し、順行方向の上流側の基端点である上流側基端点P1から頂点P3まで形成されている。つまり、第一上面12aは、順行方向に走行するほど舗装表面1bから離間する方向に傾斜している。第一上面12aは、特許請求の範囲の請求項1に係る「第一面」に相当する。
【0020】
第二上面12bは、舗装表面1bに連続し、順行方向の下流側の基端点である下流側基端点P2から頂点P3まで形成されている。第二上面12bは、特許請求の範囲の請求項1に係る「第二面」に相当する。第二上面12bの曲率は、第一上面12aの曲率よりも大きくなっている。側面13,14は、それぞれ同等の形状からなり、道路の延長方向と平行に立設されている。
【0021】
ここで、図2の(b)に示すように、上流側基端点P1における第一上面12aの接線m1と下流側基端点P2における第二上面12bの接線m2とが交わる点を仮想点P4とする。本実施形態では、凸部2の上面12が曲面で構成されているため、特許請求の範囲の請求項1に係る「舗装表面と第一面との内角」とは、上流側基端点P1、下流側基端点P2及び仮想点P4とで形成される仮想三角形のうち上流側基端点P1を含む角度(内角α)をいう。また、特許請求の範囲の請求項1に係る「舗装表面と前記第二面との内角」とは、上流側基端点P1、下流側基端点P2及び仮想点P4とで形成される仮想三角形のうち下流側基端点P2を含む角度(内角β)をいう。本実施形態では、内角βは、内角αよりも大きくなっている。隣り合う凸部2,2は、間隔W1をあけて配設されている。
【0022】
凸部2の内角α及び内角βは、舗装体1の設置条件に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0度<α≦30度、15度<β≦120度の範囲で、内角βが内角αよりも大きくなるように設定することが好ましい。また、凸部2の高さや隣り合う凸部2,2間隔W1等においても、例えば、凸部2の高さは20cm以内、間隔W1は、200cm以内で適宜設定することが好ましい。
【0023】
次に、凸部2の構築方法について説明する。凸部2は、本実施形態では、舗装本体1aが形成された後に、ニート工法によって形成される。舗装表面1bに、接着剤としてのプライマー(アクリル系樹脂)を塗布した後、硬質骨材とバインダとを混合した硬質骨材混合物を前記した凸部2の形状に成形して構築する。
【0024】
なお、本実施形態ではニート工法で凸部2を構築したが、これに制限されるものではない。例えば、樹脂等の二次製品で凸部を形成し、締結具やプライマーを介してこの凸部を舗装表面1bに取り付けてもよい。また、凸部の材料については、特に制限されるものではなく、例えばアスファルト混合物やセメントコンクリートで形成してもよい。
【0025】
次に、本実施形態に係る舗装体1の作用効果について説明する。
<車両が順行する場合>
車両が順行方向に移動すると、車両のタイヤが舗装表面1bから第一列目の凸部2(図1参照)の第一上面12aに移行する。この際、第一上面12aは緩勾配で形成されているため、運転者はさほど振動を受けない。
【0026】
車両のタイヤが凸部2を乗り越えると、車両のタイヤは、再び舗装表面1bに接触する。凸部2の高さは、低く形成されているため、車両の上下動は比較的小さい。これにより、順行側から凸部2を乗り越える際の運転者に与える振動を小さくすることができる。
【0027】
<車両が逆行する場合>
車両が逆行方向に移動すると、車両のタイヤが舗装表面1bから第四列目の凸部2(図1参照)の第二上面12bに対向する。第二上面12bは、急勾配で形成されるとともに、第二上面12bは上方に凸状となる曲面で形成されている。これにより、車両が逆行すると、車両のタイヤが第二上面12bに衝突し、タイヤが上方に突き上げられるため、運転者に大きな振動(違和感)を与えることができる。言い換えると、本実施形態に係る凸部2を乗り越えるまでの水平方向の移動距離を、順行と逆行で比較すると、逆行の方が短くなる。このため、逆行では、短い水平方向の移動の間に凸部2を載り超えなければならないため、乗り越える際の衝撃も逆行の方が大きくなる。これにより、運転者に大きな振動を与えることができる。
【0028】
車両のタイヤが凸部2の頂点P3を過ぎると、第一上面12aから舗装表面1bに移行する。そして、車両のタイヤは、第四列目と同様に第三列目の凸部2の第二上面12bと衝突する。本実施形態では、凸部2を四列配設しているため、運転者に対して大きな振動を四回与えることができる。
【0029】
よって、舗装体1によれば、車両が順行した際には、運転者に与える振動を小さくすることができるため、運転者に与える負担を小さくすることができる。一方、逆行した際には、運転者に対して大きな振動を与えることができるため、注意を喚起することができる。
【0030】
また、凸部2を道路の延長方向に複数並設することで、運転者に繰り返し注意を喚起することができる。また、凸部2の幅を副員方向に長くすることで、車両がどちらか一方の外側線G寄りを走行したとしても、車両のタイヤが凸部2を乗り上げるため、確実に注意を喚起することができる。
【0031】
また、凸部2の第二上面12bは、上方に向けて凸状となる曲面で形成されているため、車両のタイヤが凸部2に当たってもタイヤを過度に損傷することを防ぐことができるとともに、凸部2自体が欠損するのを防ぐことができる。
【0032】
なお、本実施形態では、凸部2の高さ(舗装表面1bから頂点P3までの高さ)や幅、第一上面12a及び第二上面12bの曲率、隣り合う凸部2の間隔W1等は、車両の想定スピードや対象とする車両のタイヤの外径等に応じて適宜設定すればよい。また、凸部2の大きさ、設置数、配列等も、設置条件に応じて適宜設定すればよい。例えば、幅の短い凸部2を複数並設して、全体として千鳥状となるように配設してもよい。
【0033】
[第一変形例乃至第三変形例]
次に、第一実施形態に係る変形例について説明する。第一実施形態に係る凸部2は、前記したように形成したが、この形状に制限されるものではない。ここでは、凸部の変形例である第一変形例2A乃至第三変形例2Cについて説明する。なお、凸部以外の構成は、第一実施形態と同等であるため、凸部以外の説明は省略する。
【0034】
図3の(a)に示す凸部の第一変形例2Aは、側面視三角形状に形成されている点で、第一実施形態と相違する。つまり、第一変形例2Aは、下面11と、第一上面12aと、第二上面12bとを有する。各面は、それぞれ平面で形成されている。第一変形例2Aのように、上面12が平面で形成されている場合は、特許請求の範囲の請求項1に係る「舗装表面と第一面との内角」とは、上面12を構成する各面と舗装表面1bとで構成された多角形のうち上流側基端点P1を含む角度(内角α)をいう。また、特許請求の範囲の請求項1に係る「舗装表面と前記第二面との内角」とは、上面12を構成する各面と舗装表面1bとで構成された多角形のうち下流側基端点P2を含む角度(内角β)をいう。第一変形例2Aにおいて、舗装表面1bと第二上面12bで形成される内角βは、舗装表面1bと第一上面12aとで形成される内角αよりも大きく形成されている。
【0035】
図3の(b)に示す凸部の第二変形例2Bは、側面視台形状に形成されている点で、第一実施形態と相違する。つまり、第二変形例2Bは、下面11と、第一上面12aと、第二上面12bと、水平面12cとを有する。第二上面12bは、舗装表面1bに対して垂直に形成されている。第二変形例2Bにおいて、舗装表面1bと第二上面12bとで形成される内角βは、舗装表面1bと第一上面12aとで形成される内角αよりも大きく形成されている。
【0036】
第一変形例2A及び第二変形例2Bによれば、第二上面12bが第一上面12aに比べて急勾配に形成されている。これにより、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0037】
図3の(c)に示す凸部の第三変形例2Cは、側面視三角形状に形成されている点で、第一実施形態と相違する。また、内角βが鈍角となっている点で第一変形例2Aと相違する。
第一変形例2Cは、下面11と、第一上面12aと、第二上面12bとを有する。第一変形例2Cを構成する各面は平面で形成されている。第三変形例2Cにおいて、舗装表面1bと第二上面12bとで形成される内角βは、舗装表面1bと第一上面12aとで形成される内角αよりも大きく形成されている。また、第三変形例2Cでは、頂点P3を含んだ平面同士が鋭角で形成されている。
【0038】
このように、第三変形例2Cでは、頂点P3を含んだ平面同士が鋭角で形成されているため、逆行方向に車両が走行すると、車両のタイヤに頂点P3が食い込むようにして衝突する。これにより、車両が逆行した際に、より大きな振動(衝撃)を与えることができる。一方、第二上面12bが緩勾配に形成されているため、車両が順行した際には、運転者に与える振動を抑制することができる。
【0039】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。図4の(a)及び(b)に示すように、第二実施形態に係る舗装体1Aは、第一実施形態に係る凸部2に替えて、凹部32を設ける。第二実施形態では、凹部32の構成を除いては第一実施形態と同等であるため、重複する説明は省略する。
【0040】
凹部32は、図4の(a)及び(b)に示すように、舗装表面1bに凹設されている。凹部32は、車両の運転者に対して注意喚起を促す部分である。凹部32は、順行方向の上流側に形成された第一底面42aと、下流側に形成された第二底面42bと、幅方向に形成された一対の側面43,44とで形成されている。凹部32の内部は中空に形成されている。
【0041】
第一底面42a及び第二底面42bは、平面で形成されており、舗装表面1bからそれぞれ下方に傾斜している。第一底面42aは、上流側の基端点である上流側基端点Q1から凹部32の最低点Q3まで形成されている。つまり、第一底面42aは、順行方向に走行するほど舗装表面1bから離間する方向に傾斜している。第一底面42aは、特許請求の範囲の請求項2に係る「第一面」に相当する。
【0042】
第二底面42bは、下流側の基端点である下流側基端点Q2から凹部32の最低点Q3まで形成されている。つまり、第二底面42bは、順行方向に走行するほど舗装表面1bに近づく方向に傾斜している。第二底面42bは、特許請求の範囲の請求項2に係る「第二面」に相当する。
【0043】
ここで、凹部32が平面で形成されている場合は、特許請求の範囲の請求項2に係る「舗装表面と第一面との内角」とは、凹部32を構成する各面と舗装表面1bとで構成された多角形のうち上流側基端点Q1を含む角度(内角γ)をいう。また、特許請求の範囲の請求項2に係る「舗装表面と第二面との内角」とは、底面42を構成する各面と舗装表面1bとで構成された多角形のうち下流側基端点Q2を含む角度(内角δ)をいう。図4の(b)に示すように、舗装表面1bと第一底面42aとで形成される内角γは、舗装表面1bと第二底面42bとで形成される内角δよりも大きくなっている。
【0044】
側面43,44は、舗装表面1bに対して垂直に形成されている。側面43,44は、それぞれ同等の形状からなり、道路の延長方向に対して平行に設けられている。隣り合う凹部32,32は、間隔W2をあけて配設されている。
【0045】
凹部32の内角γ及び内角δは、舗装体1の設置条件に応じて適宜設定すればよいが、例えば、20度≦γ≦90度、0度<δ≦45度の範囲で、内角γが内角δよりも大きくなるように設定することが好ましい。また、隣り合う凹部32,32の間隔W2は、200cm以内で適宜設定することが好ましい。
【0046】
次に、凹部32の構築方法について説明する。凹部32は、本実施形態では、舗装本体1aを新設した後に型部材を用いて形成する。
【0047】
凹部32は、図5の(a)及び(b)に示すように、舗装本体1aを構築した後に、凹部32と同等の外形を備えた型部材51を舗装表面1bに押し込む。そして、必要に応じて、型部材51にウエイトを載置するなどして所定の時間放置する。型部材51を押し込む際には、舗装本体1aが硬化する前に行うことが好ましい。
【0048】
次に、図5の(c)に示すように、所定の時間が経過したら、舗装本体1aから型部材51を取り除くことで凹部32が形成される。
【0049】
なお、凹部32の構築方法については、前記した工法に制限されない。例えば、新設した舗装本体1a又は既存の舗装体の舗装表面をカッター等で切削して凹部32を構築してもよい。
【0050】
次に、本実施形態に係る舗装体1Aの作用効果について説明する。
<車両が順行する場合>
車両が順行方向に移動すると、車両のタイヤが舗装表面1bから第一列目の凹部32の第一底面42a、さらには第二底面42bへと移行する。凹部32の深さは、浅くなっているため、車両のタイヤが凹部32に入った際の上下動は比較的小さい。また、第二底面42bは、緩勾配となっているため、車両のタイヤが第二底面42bから舗装表面1bに移る際には比較的滑らかに移行する。これにより、車両が順行する際には、車両の運転者に与える振動を小さくすることができる。
【0051】
<車両が逆行する場合>
車両が逆行方向に移動すると、車両のタイヤが舗装表面1bから第四列目の凹部32の第二底面42bに移行した後、第一底面42aに対向する。そして、第一底面42aは急勾配で形成されているため、車両のタイヤが第一底面42aに衝突し、タイヤが上方に突き上げられる。言い換えると、本実施形態に係る凹部32の最も深い位置に入った車両のタイヤが、凹部32を乗り越えるまでの水平方向の移動距離を、順行と逆行とで比較すると、逆行の方が短くなる。このため、逆行では、短い水平方向の移動の間に凹部32を乗り越えなければならないため、乗り越える際の衝撃も逆行の方が大きくなる。これにより、運転者に大きな振動(違和感)を与えることができる。本実施形態では、凹部42を四列配設しているため、運転者に対して大きな振動を四回与えることができる。
【0052】
よって、舗装体1Aによれば、車両が凹部32を順行した際には、運転者に与える振動を小さくすることができるため、運転者に与える負担を小さくすることができる。一方、逆行した際には、運転者に対して大きな振動を与えることができるため、注意を喚起することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、凹部の深さ(舗装表面1bから最低点Q3までの距離)や幅、隣り合う凹部32の間隔W2等は、車両の想定スピードや対象とする車両のタイヤの外径等に応じて適宜設定すればよい。なお、凹部32の大きさ、設置数、配列等も、設置条件に応じて適宜設定すればよい。
【0054】
次に、第二実施形態に係る変形例について説明する。第二実施形態に係る凹部32は、前記したように形成したが、この形状に制限されるものではない。ここでは、凹部の変形例である第一変形例32A乃至第三変形例32Cについて説明する。なお、凹部以外の構成は、第二実施形態と同等であるため、凹部以外の説明は省略する。
【0055】
図6の(a)に示す凹部の第一変形例32Aは、第一底面42a及び第二底面42bが共に上方に向けて凸状となる曲面で形成されている点で第二実施形態と相違する。ここで、上流側基端点Q1における第一底面42aの接線n1と下流側基端点Q2における第二底面42bの接線n2とが交わる点を仮想点Q4とする。第一変形例のように凹部の各面が曲面で構成されている場合は、特許請求の範囲の請求項2に係る「舗装表面と第一面との内角」とは、上流側基端点Q1、下流側基端点Q2及び仮想点Q4とで形成される仮想三角形のうち上流側基端点Q1を含む角度(内角γ)をいう。また、特許請求の範囲の請求項2に係る「舗装表面と第二面との内角」とは、上流側基端点Q1、下流側基端点Q2及び仮想点Q4とで形成される仮想三角形のうち下流側基端点Q2を含む角度(内角δ)をいう。第一変形例32Aでは、内角γは内角δよりも大きくなっている。
【0056】
図6の(b)に示す凹部の第二変形例32Bは、側面視台形状に形成されている点で、第二実施形態と相違する。つまり、第一変形例32Bは、第一底面42aと、第二底面42bと、水平面42cとを有する。第一底面42aは、舗装表面1bに対して垂直に形成されている。第二底面42bは、緩やかな傾斜面で形成されている。舗装表面1bと第一底面42aとで形成される内角γは、舗装表面1bと第二底面42bとで形成される内角δよりも大きく形成されている。
【0057】
第一変形例32A及び第二変形例32Bによれば、第一底面42aが第二底面42bに比べて急勾配に形成されている。これにより、第二実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
図6の(c)に示す凹部の第三変形例32Cは、内角γが鈍角となっている点で第二実施形態と相違する。第三変形例32Cは、第一底面42aと、第二底面42bとを有する。舗装表面1bと第一底面42aとの内角γは、舗装表面1bと第二底面42bとの内角δよりも大きく形成されている。これにより、第三変形例32Cは、第二実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、舗装表面1bと第一底面42aとの内角γは鈍角に形成されている。これにより、上流側基端点Q1を含んだ角部は斜め上方に向けて尖った形状になる。したがって、逆行した車両が凹部32Cを乗り越える際には、車両のタイヤがこの角部に衝突し、上方に突き上げられるため大きな振動(違和感)を与えることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、前記した凸部及び凹部は、新設の舗装本体に設けてもいいし、既設の舗装本体に設けてもよい。また、前記した凸部及び凹部は、舗装表面に形成される中央線、外側線上に設けてもよい。また、前記した凸部及び凹部は、例えば、一方通行路の延長方向の全体亘って設けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 舗装体
1A 舗装体
1a 舗装本体
1b 舗装表面
2 凸部
11 底面
12 上面
12a 第一上面(第一面)
12b 第二上面(第二面)
13 側面
14 側面
32 凹部
42a 第一底面(第一面)
42b 第二底面(第二面)
43 側面
44 側面
Y1 順行方向
Y2 逆行方向
α 内角
β 内角
γ 内角
δ 内角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装表面において道路の延長方向に複数並設された凸部を有する舗装体であって、
前記凸部は、
前記舗装表面に連続し順行方向の上流側に形成された第一面と、前記舗装表面に連続し前記順行方向の下流側に形成された第二面と、を有し、
前記舗装表面と前記第二面との内角は、前記舗装表面と前記第一面との内角よりも大きく形成されていることを特徴とする舗装体。
【請求項2】
舗装表面において道路の延長方向に複数並設された凹部を有する舗装体であって、
前記凹部は、
前記舗装表面に連続し順行方向の上流側に形成された第一面と、前記舗装表面に連続し前記順行方向の下流側に形成された第二面と、を有し、
前記舗装表面と前記第一面との内角は、前記舗装表面と前記第二面との内角よりも大きく形成されていることを特徴とする舗装体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−106150(P2011−106150A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261508(P2009−261508)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(390002185)大成ロテック株式会社 (90)
【Fターム(参考)】