説明

舗装路面上への図柄形成方法および図柄表示構造

【課題】グルービングを利用してスリップを防止した舗装路面上への図柄形成方法および図柄表示構造の提供。
【解決手段】舗装路面1に所定間隔で一様に複数のグルービング2を形成し、この一様に形成された複数のグルービング2の内面であって舗装路面1上に表示する図柄3に対応する位置の内面のみに、部分的に着色を施して着色部4を形成する。これにより、舗装路面1に所定間隔で一様に形成された複数のグルービング2の内面のみに部分的に施された着色部4が、巨視的に対応する図柄3として認識される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通規制や交通指示などの道路標示その他の図柄を舗装路面上へ表示するための図柄形成方法および図柄表示構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルトやコンクリートなどにより舗装された車道の路面上に、交通規制や交通指示などの道路標示を表示する場合、路面上に塗料を用いて線、記号または文字を描いたり、図柄を形成したシートを路面上に定着させたりしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、例えば特許文献2には、歩道、駐車場、公園等の舗装面を装飾するため、舗装全体に着色シール材を充填した表層面において、図柄に沿ってカッターで浅い溝穴を形成し、この溝穴内に、着色シール材に用いた顔料と濃淡差のある色の着色充填材を充填することが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−63553号公報
【特許文献2】実開昭59−147705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、塗料やシートなどを用いて車道の路面上に道路標示を表示した場合、この塗料やシートなどにより形成された道路標示部分は、アスファルトやコンクリートなどの舗装部分よりも摩擦抵抗が少ないため、雨天時に車両がこの道路表示部分を走行するとスリップすることがある。
【0006】
ところで、従来、車道でスリップ事故を未然に防ぐために、路面にグルービング(安全溝)が施工されている。グルービング施工では、路面に溝を切り込むことで路面排水性の向上、ハイドロプレーニングの防止、路面の凍結防止や、制動距離の短縮化などの優れた効果を発揮することができるので、近年急速に普及が進んでいる。
【0007】
そこで、本発明においては、グルービングを利用してスリップを防止した舗装路面上への図柄形成方法および図柄表示構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の舗装路面上への図柄形成方法は、舗装路面に所定間隔で一様に形成された複数のグルービングの内面であって舗装路面上に表示する図柄に対応する位置の内面のみに、部分的に着色を施すことを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、舗装路面に所定間隔で一様に形成された複数のグルービングと、一様に形成された複数のグルービングの内面であって舗装路面上に表示する図柄に対応する位置の内面のみに、部分的に着色が施された着色部とを有する舗装路面上への図柄表示構造が得られる。
【0010】
この図柄表示構造では、舗装路面に所定間隔で一様に形成された複数のグルービングの内面のみに部分的に施された着色部が、巨視的に対応する図柄として認識される。また、この図柄表示構造では、巨視的に図柄を構成する着色部がグルービングの内面のみに施されていることから、グルービングの性能に影響を与えることがなく、グルービングの路面排水性の向上、ハイドロプレーニングの防止、路面の凍結防止や、制動距離の短縮化などの優れた効果を発揮することができる。さらに、この図柄表示構造では、着色部が舗装路面表面に露出していないので摩耗が少なく、長期間に亘って図柄表示機能を発揮することが可能である。また、従来のように着色部が舗装路面の表面に露出しないので、摩擦係数を低下させることもない。
【0011】
ここで、グルービングは、底部と上部開放面とが同じ幅となるように形成しても良いが、より好ましくは底部よりも上部開放面が広くなるように形成する。このような底部よりも上部開放面が広いグルービングによれば、視認される着色部の幅が広くなり、図柄をより明確に認識することが可能になる。また、底部よりも上部開放面が広いことによって、グルービングの上部開放面のエッジが走行する車両の荷重により内側へ傾倒するのを防止することができる。
【0012】
また、着色は、発光塗料、再帰反射塗料または蓄熱塗料を用いて行うことが望ましい。これにより、グルービングの内面の着色部が発光塗料により形成されたものである場合、舗装路面上に表示する図柄が発光するため、図柄の視認性を向上することができる。また、着色部が再帰反射塗料により形成されたものである場合、車両のヘッドライトなどの光が当たった部分が特に強調されて光反射するので、特に図柄が強調され、視認性が向上する。あるいは、着色部が蓄熱塗料により形成されたものである場合、舗装路面に所定間隔で一様に形成された複数のグルービングがそれぞれ発熱するので、舗装路面の凍結を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
(1)舗装路面に所定間隔で一様に形成された複数のグルービングの内面であって舗装路面上に表示する図柄に対応する位置の内面のみに、部分的に着色を施すことにより、グルービングを利用してスリップを防止することができるとともに、このグルービングの内面のみに部分的に施された着色部により、交通規制や交通指示などの道路標識その他の図柄を巨視的に認識させることが可能となる。さらに、この図柄表示構造では、着色部が舗装路面表面に露出していないので摩耗が少なく、長期間に亘って図柄表示機能を発揮することが可能である。また、従来のように着色部が舗装路面の表面に露出しないので、摩擦係数を低下させることもない。
【0014】
(2)底部よりも上部開放面が広いグルービングによって、視認される着色部の幅が広くなり、より明確に認識することが可能な図柄を舗装路面状に表示することができる。また、底部よりも上部開放面が広いことによって、グルービングの上部開放面のエッジが走行する車両の荷重により内側へ傾倒するのを防止することができるので、このグルービングの溝形状自体の耐久性が向上するとともに、このグルービングの内面のみに部分的に施された着色部により表示する図柄の耐久性が向上し、グルービング機能を長期間に亘って維持することができる。
【0015】
(3)グルービングの内面の着色部が発光塗料により形成されたものであることにより、舗装路面上に表示する図柄が発光するため、図柄の視認性を向上することができる。
【0016】
(4)着色部が再帰反射塗料により形成されたものである場合、車両のヘッドライトなどの光が当たった部分が特に強調されて光反射するので、特に図柄が強調され、視認性が向上する。
【0017】
(5)着色部が蓄熱塗料により形成されたものであることにより、舗装路面に所定間隔で一様に形成された複数のグルービングがそれぞれ発熱するので、舗装路面の凍結を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の実施の形態における舗装路面上への図柄形成方法により図柄を形成した舗装路面の平面図、図2は図1のA−A断面図、図3はグルービング形成中の様子を示すグルービング装置のソーブレード部分の拡大図である。
【0019】
図1において、本発明の実施の形態における舗装路面1は、アスファルトやコンクリートなどにより舗装された車道である。この舗装路面1には、所定間隔で一様に複数のグルービング2が形成されている。ここで、本実施形態における図柄形成方法により形成する図柄は、道路標示としての「R20」の文字である。図1に2点鎖線で示すように、この図柄3は、舗装路面1の表面には形成されておらず、グルービング2の内面のみに部分的に形成されている。
【0020】
図2に示すように、グルービング2は、底部2aよりも上部開放面2bの方が広く形成された略台形状断面を有する溝である。このグルービング2は、図3に示すように、先端部10aの幅が基端部10bの幅よりも狭い略台形状断面を有するセグメントチップ10が外周に設けられたソーブレード11を有するグルービング装置により形成する。ソーブレード11は、回転軸12上に所定間隔で複数配置されている。グルービング2は、このような複数のソーブレード11により所定間隔で一様に形成される。
【0021】
例えば、セグメントチップ10の先端部10aの幅が6mmの場合、ソーブレード11が40mm間隔で配置されたグルービング装置を用いる。また、セグメントチップ10の先端部10aの幅が9mmの場合、ソーブレード11が60mm間隔で配置されたグルービング装置を用いる。グルービング2の深さは、いずれも6mm程度である。なお、セグメントチップ10の先端部10aの幅および間隔、並びにグルービング2の深さは任意に設定することも可能である。
【0022】
また、図2に示すように、グルービング2の内面であって舗装路面1上に標示する図柄3に対応する位置の内面は、着色が施された着色部4となっている。着色部4は、グルービング2の内側の底部2aおよび両側面2c,2dの3面に塗料を塗布することによって形成される。この着色部4は、図1に示すように図柄3の2点鎖線で囲まれた範囲内について、グルービング2の内面にのみ形成される。また、着色部4の厚さは、グルービング2の排水性能に影響しないように1mm以下としている。
【0023】
このように形成された図柄表示構造では、舗装路面1に所定間隔で一様に形成された複数のグルービング2の内面のみに部分的に形成された着色部4が、巨視的に対応する図柄3の「R20」の文字として認識される。また、この図柄表示構造では、巨視的に図柄3を構成する着色部4がグルービング2の内面のみに施されていることから、舗装路面1上はグルービング2のみが形成された通常の路面と変わりなく、グルービング2の性能に影響を与えることがない。したがって、この図柄表示構造では、グルービング2の路面排水性の向上、ハイドロプレーニングの防止、路面の凍結防止や、制動距離の短縮化などの優れた効果を発揮する。
【0024】
また、この図柄表示構造では、先端部10aの幅が基端部10bの幅よりも狭い略台形状断面を有するセグメントチップ10が外周に設けられたソーブレード11によって、底部2aよりも上部開放面2bが広いグルービング2を形成しているので、このグルービング2の内側の底部2aおよび両側面2c,2dの3面に形成された着色部4の視認される幅が広い。したがって、図柄3をより明確に認識することできる。また、底部2aよりも上部開放面2bが広いことによって、グルービング2の上部開放面2bのエッジ2eが走行する車両の荷重により内側へ傾倒しにくい。
【0025】
なお、グルービング2の断面形状は略台形形状に限らず、略V字状とすることも可能である。要するに、底部2aよりも上部開放面2bが広いグルービング2を形成することで、着色部4の視認される幅が広くなるようにすれば良い。あるいは、グルービング2の断面形状を、底部2aと上部開放面2bとが同じ幅となるように形成することも可能である。要するに、着色部4が舗装路面1表面に露出しない状態とすれば、車両の通過による摩耗が少なくなり、長期間に亘って図柄表示機能を発揮することができる。また、従来のように着色部4が舗装路面1表面に露出しないので、摩擦係数を低下させることもなく、スリップを防止することができる。
【0026】
また、着色は、通常の有色塗料を用いて行うことが可能であるが、発光塗料、再帰反射塗料または蓄熱塗料を用いて行うことも可能である。発光塗料を用いた場合、この発光塗料により形成される着色部4によって舗装路面1上に巨視的に表示する図柄3が発光するため、図柄3の視認性が向上する。また、再帰反射塗料を用いた場合、図柄3の車両のヘッドライトなどの光が当たった部分が特に強調されて光反射するので、特に図柄3が強調され、視認性が向上する。あるいは、蓄熱塗料を用いた場合、舗装路面1に所定間隔で一様に形成された複数のグルービング2がそれぞれ発熱するようになるので、舗装路面1の凍結を防止することができる。
【0027】
なお、本実施形態における図柄形成方法により形成する図柄は、上述のような文字の他に、図4に示すようなデザイン画5とすることも可能である。この場合も前述と同様に、グルービング2の内面であってデザイン画5に対応する位置の内面のみに着色を施して着色部4を形成することで、舗装路面1に所定間隔で一様に形成された複数のグルービング2の内面のみに部分的に形成された着色部4が、巨視的に対応するデザイン画5として認識される。
【0028】
また、舗装路面1に形成するグルービング2の方向は、車両の横滑り防止や直進安定性の向上などを目的とする場合には車両の進行方向に対して平行方向とし、制動距離の短縮や警告音の発生などを目的とする場合には車両の進行方向に対して直交方向や傾斜方向とすることができる。また、図柄3等の形成は、新たに形成したグルービング2の内面に着色を施す以外に、既設のグルービング2の内面に着色を施すことでも行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の舗装路面上への図柄形成方法および図柄表示構造は、交通規制や交通指示などの道路標示その他の図柄を舗装路面上へ表示するための方法および構造として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態における舗装路面上への図柄形成方法により図柄を形成した舗装路面の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】グルービング形成中の様子を示すグルービング装置のソーブレード部分の拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態における舗装路面上への図柄形成方法により別の図柄を形成した舗装路面の平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 舗装路面
2 グルービング
2a 底部
2b 上部開放面
2c,2d 側面
2e エッジ
3 図柄
4 着色部
10 セグメントチップ
10a 先端部
10b 基端部
11 ソーブレード
12 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装路面に所定間隔で一様に形成された複数のグルービングの内面であって前記舗装路面上に表示する図柄に対応する位置の内面のみに、部分的に着色を施すこと
を含む舗装路面上への図柄形成方法。
【請求項2】
前記グルービングは、底部よりも上部開放面が広くなるように形成することを特徴とする請求項1記載の舗装路面上への図柄形成方法。
【請求項3】
前記着色は、発光塗料、再帰反射塗料または蓄熱塗料を用いて行うことを特徴とする請求項1または2に記載の舗装路面上への図柄形成方法。
【請求項4】
舗装路面に所定間隔で一様に形成された複数のグルービングと、
前記一様に形成された複数のグルービングの内面であって前記舗装路面上に表示する図柄に対応する位置の内面のみに、部分的に着色が施された着色部と
を有する舗装路面上への図柄表示構造。
【請求項5】
前記グルービングは、底部よりも上部開放面が広いものである請求項4記載の舗装路面上への図柄表示構造。
【請求項6】
前記着色部は、発光塗料、再帰反射塗料または蓄熱塗料により形成されたものである請求項4または5に記載の舗装路面上への図柄表示構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−299425(P2009−299425A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158410(P2008−158410)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(306046368)株式会社三和工業 (2)
【Fターム(参考)】