説明

航空機タービンエンジン用二重反転プロペラシステム

本発明は、第1のロータと前記第1のロータに対して反転する第2のロータとを含むフリーパワータービンと、プロペラシステムのステータに対してプロペラシステムの長手方向軸を中心として回転される第1の反転プロペラ(11)および第2の反転プロペラ(12)と、機械式動力伝達装置(20)とを含む航空機タービンエンジン用二重反転プロペラシステムであって、機械式動力伝達システム(20)は、第1のプロペラ(11)と第2のプロペラ(12)との間に配設されることを特徴とする二重反転プロペラシステムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機タービンエンジン用の二重反転プロペラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、航空機タービンエンジン、例えば、ターボジェットエンジンまたはターボプロップに適用される。より詳細には、本発明は、「オープンロータ」を有するタービンエンジンであって、フリーパワータービンが、直接的または間接的に、減速機のような特に遊星歯車機構を含む機械式動力伝達装置によって2つの二重反転プロペラを駆動するタービンエンジンに適用される。したがって、これらの二重反転プロペラシステムでは、プロペラは半径方向外側端部にフェアリングを持たない。
【0003】
通常は差動減速機である機械式動力伝達装置によってプロペラが駆動される二重反転プロペラシステムを有するタービンエンジンが周知である。この差動減速機は、特有の遊星歯車機構を含み、その太陽歯車はフリーパワータービンのロータによって回転駆動され、その遊星キャリアが第1のプロペラを駆動し、そのリング歯車が第2のプロペラを駆動する。この点に関して、二重反転プロペラを駆動するフリーパワータービンに対する二重反転プロペラの位置に応じて、第1のプロペラは下流側プロペラを成し、第2のプロペラが上流側プロペラを成し、逆の場合もありうることに留意されたい。いずれにせよ、単純な遊星歯車機構とは違い、リング歯車は固定されておらず、可動である。
【0004】
このような遊星歯車機構では、両方のプロペラが同じ空力トルクを受けることができない。遊星歯車の力学的平衡方程式は、減速機の幾何学的特性に応じて、これらの2つのトルクが必ず定数比を有することを示している。この比率は、必然的に単一比(unitary ratio)とは違う。実際に、第1のプロペラに加わるトルクC1と第2のプロペラに加わるトルクC2との比率は、以下の式で表わされる。
【0005】
C1/C2=(R+1)/(R−1)
ここで、Rは遊星歯車機構によって定義される減速比に相当する。
【0006】
したがって、1に近いトルク比を得るためには、減速比Rを大きくする必要があるが、減速比Rは、力学的実現可能性の観点から10より大きくすることができない。さらに、減速比Rの増加は、必然的に減速比の全質量の増加につながり、これはタービンエンジンにとって不利である。
【0007】
単一比が1でないために、両方のプロペラのうちの一方は他方のプロペラより多くバイパス流の旋回を発生させ、このことは出口流において旋回が残留することにつながり、実質的に推進効率を抑え、意に反してタービンエンジンの音響レベルを大きくしてしまう。実際に、トルクに関して常に最も負荷を受けるのは、遊星キャリアによって駆動される第1のプロペラである。
【0008】
さらに、両方の連結部のずれが、タービンエンジンを航空機に取り付けるのに使用される手段にかかる応力を増加させるので、結果的に、これらの手段は、加わる過負荷に耐えられるように寸法が大きくなってしまう。
【0009】
2008年12月19日にSNECMA社によって出願された仏国特許出願公開第0858822号明細書に記載されているように、遊星歯車機構のリング歯車を介してフリーパワータービンの第2のロータによって駆動される第2のプロペラが受けるトルク不足を補うことができるプロペラシステムが周知である。その結果、プロペラシステムを出る時に空気力学的流れが十分にまっすぐになる。また、タービンエンジンを航空機に取り付けるのに使用される手段は、力学的に応力をほとんど受けず、ひいては設置面積や質量の観点からより費用のかからない設計にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許出願公開第0858822号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
タービンエンジンの騒音を抑えるために、エンジンは上流側プロペラと下流側プロペラとの間に十分な間隙を含まなければならず、このことでタービンエンジンの長さが増す。さらに、プロペラが可変設定式ブレードを備える場合、設定システムへのエネルギー(電気または油圧)の供給は遊星歯車機構を通って行われる。したがって、遊星歯車機構のどんな故障も設定システムに影響を及ぼし、飛行中の危険な状態を避けるための特定の設備が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の欠点の少なくともいくつかを克服するために、本発明は、航空機タービンエンジン用の二重反転プロペラシステムであって、
第1のロータと前記第1のロータに対して反転する第2のロータとを含むフリーパワータービンと、
プロペラシステムの長手方向軸を中心としてこのシステムのステータに対して回転される二重反転プロペラの第1のプロペラおよび第2のプロペラと、
前記長手方向軸と同心のフリーパワータービンの前記第1のロータによって駆動される太陽歯車と、前記太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、前記第1のプロペラを駆動する遊星キャリアと、それぞれの遊星歯車と噛み合うリング歯車であって、前記第2のロータによって駆動され前記第2のプロペラを駆動するリング歯車とを含む遊星歯車機構を含む機械式動力伝達装置と
を含む二重反転プロペラシステムに関する。
【0013】
本発明のシステムは、機械式動力伝達装置が第1のプロペラと第2のプロペラとの間に配設されることを特徴とする。したがって、タービンエンジンの寸法を大幅に小さくすることができる。さらに、プロペラとプロペラとの間に十分な間隙が必要であるので、機械式動力伝達装置の複雑さ、ひいてはコストを抑えるために、機械式動力伝達装置の寸法を大きくすることができる。小型で、あまり複雑でないタービンエンジンが得られる。
【0014】
本発明によれば、遊星歯車機構の存在によりタービン段の数を半分にすることができ、タービンの平均半径を小さくすることができるので、プロペラシステムの質量を大幅に低減することができる。
【0015】
第1のプロペラは機械式動力伝達装置に対して下流側に配設され、第2のプロペラは機械式動力伝達装置に対して上流側に配設されるのが好ましい。この配置の結果、遊星歯車機構の構造は最適化され、タービンエンジンは小型になる。
【0016】
さらに、フリーパワータービンの第1のロータは内側ロータであり、フリーパワータービンの第2のロータは外側ロータであるのが好ましい。
【0017】
好ましくは、フリーパワータービンは、2スプールタービンエンジンの低圧タービンに相当する。
【0018】
常に好ましくは、遊星キャリアは第1のプロペラと一体であり、リング歯車は第2のプロペラおよびフリーパワータービンの第2のロータと一体である。
【0019】
好ましくは、遊星キャリアは、遊星キャリア軸受を介してステータに回転可能に取り付けられ、リング歯車は、リング歯車軸受を介してステータに回転可能に取り付けられる。プロペラのそれぞれはステータによって直接支持されるので、アンバランスや振動の発生を抑えることができる。
【0020】
好ましくは、それぞれのプロペラは、プロペラブレードのピッチ可変機構を含み、それぞれの可変機構はステータに取り付けられ、機械式動力伝達装置に対して軸方向にシフトされる。ピッチ可変機構は、有利には、ステータに取り付けられて、振動を抑え、ひいては摩耗を抑える。さらに、ピッチ可変機構へのエネルギーの供給は、機械式動力伝達装置から分離されているので、機械式動力伝達装置が故障した場合に、ピッチ可変機構への動力供給に支障をきたすことがない。
【0021】
好ましくは、遊星歯車機構は、リング歯車と一体のリング歯車軸に取り付けられ、リング歯車軸は、遠心力の影響下で遊星歯車機構から潤滑油を戻すように配置された内側円形溝を含む。したがって、潤滑油はリング歯車軸に向かって遠心力が作用して円形溝で回収され、円形溝は、潤滑油が空気/油熱交換器を通過することを考慮して、潤滑油がエンジンへ戻りやすいようにする。
【0022】
さらに好ましくは、円形溝は、遊星歯車機構に対して上流側に配置される。潤滑油循環システムは、有利には、遊星歯車機構を通らないので、遊星歯車機構の設計を簡略化することができる。
【0023】
常に好ましくは、排油口は、遊星歯車機構の下流側に位置する潤滑油を円形溝へ送るために、リング歯車に配置される。
【0024】
本発明は、上述したような二重反転プロペラシステムを含む航空機用タービンエンジンにも関する。好ましくは、タービンエンジンは、「オープンロータ」型である。
【0025】
本発明は、添付図面を用いてより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のプロペラシステムの概略図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態の航空機用プロペラシステムの長手方向断面図である。
【図3】図2のプロペラシステムの拡大図である。
【図4】図3のプロペラシステムの拡大図である。
【図5】本発明のプロペラシステムの遊星歯車機構の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一般に、タービンエンジンは、上流側から下流側に向かって、低圧圧縮機、高圧圧縮機、燃焼室、高圧タービン、そして低圧タービンを含む。以降、用語「上流側」および「下流側」は、ガスのタービンエンジン内での循環に対して定義され、ガスは上流側から下流側に循環する。同様に、本出願において、合意に基づいて、用語「内側」および「外側」は、図1〜図4に示されているエンジンのX軸に対して半径方向に定義される。したがって、エンジン軸に沿って延びるシリンダは、エンジン軸に向けられる内側面と、内側面の反対側の外側面とを備える。
【0028】
低圧圧縮機と低圧タービンとは低圧軸によって機械的に接続されて低圧スプールを形成し、高圧圧縮機と高圧タービンとは高圧軸によって機械的に接続されて高圧スプールを形成する。タービンエンジンは、2スプールエンジンと呼ばれる。
【0029】
図1を参照すると、本発明の航空機タービンエンジン用二重反転プロペラシステム1は、第1のロータ31および前記第1のロータ31に対して反転する第2のロータ32を含むフリーパワータービンン30と、タービンエンジンのX軸と合致するプロペラシステムの軸を中心としてタービンエンジンのケーシング33に対して回転する二重反転プロペラの第1のプロペラ11および第2のプロペラ12とを備える。
【0030】
図5を参照すると、システム1は減速機を成す遊星歯車機構20という形の機械式動力伝達装置を備え、遊星歯車機構20は、前記長手方向X軸と同心のフリーパワータービンの前記第1のロータ31によって駆動される太陽歯車40と、前記太陽歯車40と噛み合う遊星歯車50と、前記第1のプロペラ11を駆動する遊星キャリア51と、前記第2のロータ32によって駆動され、それぞれの遊星歯車50と噛み合って前記第2のプロペラ12を駆動するリング歯車60とを備え、機械式動力伝達装置は、第1のプロペラ11と第2のプロペラ12との間に配置される。
【0031】
図1を参照すると、第1のプロペラ11は遊星歯車機構20に対して下流側に取り付けられ、第2のプロペラ12は上流側に取り付けられる。上流側プロペラ12と下流側プロペラ11との間にあるプロペラ間の間隙は、タービンエンジンのフリーパワータービン30を収容するのに使用されるので、有利には、タービンエンジンの長さを短くすることができ、ひいてはタービンエンジンの設置面積を小さくすることができる。
【0032】
2008年12月19日にSNECMA社によって出願された仏国特許出願公開第0858822号明細書では二重反転プロペラシステムは低圧タービンに対して下流側に位置するが、それとは異なり、この場合、プロペラシステム1はタービンエンジンのさらに上流側に組み込まれる。
【0033】
図1を参照すると、フリーパワータービンに相当する低圧タービン30は、低圧タービンの内側ロータを構成する第1のロータ31と、このタービンの外側ロータを構成する第2のロータ32であって、当業者には「外側ドラム」としても周知である第2のロータ32とを含む。図1では、低圧タービン30は、「出口ケーシング」として当業者に周知のタービンエンジンのステータ33に取り付けられている。出口ケーシング33は、本発明のプロペラシステムのステータ部を形成し、タービンエンジンのX軸と同心である。出口ケーシング33は、軸方向に、また低圧タービン30に対して内側に延在する。
【0034】
下流側プロペラと呼ばれる第1のプロペラ11および上流側プロペラと呼ばれる第2のプロペラ12は、それぞれ外側に延在する半径方向ブレードを備えるホイールの形である。この例では、プロペラシステム1は、図に示されるように、プロペラを囲む半径方向のフェアリングが無い構造であり、タービンエンジンは「オープンロータ」型エンジンである。
【0035】
図2を参照すると、プロペラ11、12は互いに軸方向にシフトされ、遊星歯車機構20がその間に取り付けられている。すなわち、タービンエンジンは軸方向に、上流側から下流側に向かって、上流側プロペラ12、遊星歯車機構20、そして下流側プロペラ11を含む。プロペラ11、12は共に、同心のタービンエンジンのX軸を中心として反対方向に回転する構造であり、回転は固定状態のケーシング33に対して行われる。プロペラ11、12は共に、遊星歯車機構20によって駆動される。
【0036】
図5を参照すると、遊星歯車機構20の太陽歯車40は、外側面が歯付きでタービンエンジンのX軸と同心のホイールの形である。図3および図4を参照すると、太陽歯車40は、タービンエンジンのX軸に沿って延びる長手方向の遊星軸41と下流側で接続される。
【0037】
遊星軸41は、テーパフランジ42によって第1のロータ31と回転可能に一体となる。燃焼室からのガスがタービンエンジンの低圧タービンを通る時に、第1のロータ31が直接太陽歯車40を回転駆動する。
【0038】
図5を参照すると、遊星歯車機構20の遊星歯車50は、歯付き外側面が太陽歯車40の歯付き外側面と噛み合うホイールの形である。それぞれの遊星歯車50は、タービンエンジンのX軸に対してずれた軸を有する遊星軸51によって担持される。遊星歯車機構20は、タービンエンジンのX軸と同心の遊星軸51を介して遊星歯車50を回転可能に担持する遊星キャリア52を備える。遊星キャリア52は、遊星軸41と同軸である長手方向軸の形であり、遊星軸41は軸受75、76を介して遊星キャリア52の外側に回転可能に取り付けられる。この軸受75、76は、以降、遊星軸受75、76とする。
【0039】
遊星軸41は、遊星軸受75、76および遊星キャリア52を収容するために比較的大きな直径を有する。したがって、図5に示されるような太陽歯車40とリング歯車60との間に、より多くの小さいサイズの遊星歯車50(この場合、12個)を備えることが可能である。このようにして得られた遊星歯車機構20は、先行技術の遊星歯車機構に比べて、全体寸法が低減され、質量が小さくなるので減速比が小さくなる。
【0040】
先行技術のエンジンでは、低減速比(約4)は、上流側プロペラに対するトルクと下流側プロペラに対するトルクとのアンバランスを引き起こすことになる。本発明によれば、第2のロータは、有利には、以下で詳述するように、このトルク不足を補償する。
【0041】
図1および図2に示されるように、遊星キャリア52は、第1のプロペラ11を直接回転駆動するために、遊星歯車機構20に対して下流側の第1のプロペラ11と一体になる。図3を参照すると、遊星キャリア52は、タービンエンジンのケーシング33に対して遊星キャリア軸受73、74によって支持される。下流側プロペラ11がケーシング33に対して直接支持されるので、タービンエンジンが取り付けられている航空機の乗客が感じることができるアンバランスや振動の発生を抑えることができる。
【0042】
さらに図5を参照すると、遊星歯車機構20のリング歯車60は、タービンエンジンに向かって半径方向内側に突出歯を含む軸方向シリンダの形である。リング歯車60は、タービンエンジンのX軸と同心であり、同じ軸を有するリング歯車軸61によって担持され、リング歯車60は、図5に示されるように、遊星歯車50と内側で噛み合う。
【0043】
リング歯車軸61は、遊星歯車機構20から上流側に延び、第2のプロペラ12を直接回転駆動するために第2のプロペラ12と一体になる。図4を参照すると、リング歯車軸61は遊星歯車機構20に対して上流側に延び、遊星キャリア軸52は遊星歯車機構20に対して下流側に延びる。したがって、下流側プロペラ11および上流側プロペラ12は、遊星歯車機構20の両側に位置する。リング歯車軸61は、リング歯車軸受71、72を介して、タービンエンジンのケーシング33に対して外側に、回転可能に取り付けられる。
【0044】
リング歯車軸61は、フランジを使用して第2のロータ32と一体になる。したがって、動力の一部は、遊星歯車機構20を通過せずに、直接第2のロータ32から上流側プロペラ12に伝達される。
【0045】
したがって、第2のロータ32は、リング歯車31の駆動、ひいては上流側プロペラ12の駆動に直接寄与する。タービンエンジンのより良い効率を得るために、下流側プロペラ11に伝達されるトルクと上流側プロペラ12に伝達されるトルクとの単一比が得られる。
【0046】
図1を参照すると、それぞれのプロペラは、ブレードのピッチ可変機構を備える。好ましくは、それぞれのシステムは、それぞれのプロペラの下に配置された空洞に収容される。それぞれの機構(電気機構または油圧機構)への動力供給は、出口ケーシング33の下流側に向かって突出する突出部によって行われる。遊星歯車機構20は、プロペラ11、12のピッチ可変機構70に対して軸方向にシフトされる。したがって、遊星歯車機構20が故障した場合または遊星歯車機構20が過熱状態になった場合に、プロペラのピッチ可変機構に悪い影響を与えることはない。
【0047】
かなりの動力が減速機によって伝達されると、前記減速機から大量の熱を放熱する必要がある。そのために、潤滑油回路が減速機を冷却することができ、その潤滑油の流量は約5000L/hである。
【0048】
減速機をエンジンの上流側に移動するのに伴って、減速機の潤滑油回路を変更する必要がある。先行技術では、潤滑油回路は減速機の遊星キャリアを通過し、このことが欠点であった。
【0049】
図3および図4を参照すると、減速機は、潤滑油に浸漬された回転リング歯車軸61内に収容される。その後、減速機の潤滑油は、リング歯車軸61の内側面に対する遠心力の影響下で抜き取られる。つまり、潤滑油には「遠心力が作用」する。
【0050】
潤滑油の回収を容易にするために、円形回収溝62がリング歯車軸61に設けられ、溝62は、エンジンの軸に対して横方向に延び、リング歯車軸61の内側面にある遊星歯車機構20に対して上流側に配置される。溝62は内側に向けられた半径方向開口部を有する。
【0051】
減速機に対して下流側に位置する潤滑油を回収溝62に届けられるように、排油口64がリング歯車60に配置される。さらに図4を参照すると、排油口64は、リング歯車60内へと延びてリング歯車60から貫通して、減速機に対して下流側に位置するリング歯車軸61の容積を上流側に位置するリング歯車軸61の容積と連通するようになる。排油口64は、この場合、エンジンに対して内側に上流側から下流側に向かって斜めに延びて、遠心力の影響下で上流側容積の方へと潤滑油が循環するのを容易にする。
【0052】
潤滑油の回収を容易にするために、円形溝62はリング歯車軸61の環状カップに配置され、環状カップは上流側から下流側に向かって外側に延びる上流側傾斜スロープ62aと、上流側から下流側に向かって内側に延びる下流側傾斜スロープ26bとを画定する。したがって、潤滑油は傾斜スロープ62a、62bによって案内されて、円形溝62内に回収される。潤滑油は、上流側から下流側に向かって出口ケーシング33へと長手方向に延び、出口ケーシング33を半径方向に円形溝62までまっすぐに横断して前記円形溝62につながる複数の管63によって確実に戻される。管63の端部は、この場合は開口し、接線方向に向けられ、すなわち、半径方向に対して垂直に向けられて、リング歯車軸61の回転時に、円形溝62に回収された潤滑油が管63に抜き取られるようにする。この場合、3本の管63により円形溝62にある潤滑油を抜き取ることができる。
【0053】
潤滑油は、回収された後、管63によってエンジンに対して上流側に送られ、空気/油熱交換器の方に向けられる。空気/油熱交換器は、エンジンの補助機器がある場合に取り付けられるのが好ましい。有利には、動力の一部(約20%)は、遊星歯車機構20を通過せずに、直接第2のロータ32から上流側プロペラ12に伝達されるので、この場合、減速機内で発生する熱は先行技術のエンジンに比べて少ない。このことにより、有利には、遊星歯車機構20を冷却するための潤滑油の流量を低減することができ、その結果、空気/油熱交換器の寸法ひいてはその抵抗を抑えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のロータ(31)と前記第1のロータ(31)に対して反転する第2のロータ(32)とを含むフリーパワータービン(30)と、
プロペラシステム(1)の長手方向軸(X)を中心としてこのシステムのステータ(33)に対して回転される二重反転プロペラの第1のプロペラ(11)および第2のプロペラ(12)と、
機械式動力伝達装置であって、
i.前記長手方向軸(X)と同心であり、フリーパワータービン(30)の前記第1のロータ(31)によって駆動される太陽歯車(40)、
ii.前記太陽歯車(40)と噛み合う遊星歯車(50)、
iii.前記第1のプロペラ(11)を駆動する遊星キャリア(51)、および
iv.それぞれの遊星歯車(50)と噛み合うリング歯車(60)であって、前記第2のロータ(32)によって駆動され前記第2のプロペラ(12)を駆動するリング歯車(60)を含む遊星歯車機構(20)を含む機械式動力伝達装置と
を含む、航空機タービンエンジン用二重反転プロペラシステム(1)であって、
機械式動力伝達装置は、第1のプロペラ(11)と第2のプロペラ(12)との間に配置されることを特徴とする、システム。
【請求項2】
第1のプロペラ(11)が、機械式動力伝達装置に対して下流側に配設され、第2のプロペラ(12)は、機械式動力伝達装置に対して上流側に配設される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
フリーパワータービン(30)の第1のロータ(31)が内側ロータであり、フリーパワータービン(30)の第2のロータ(32)は外側ロータである、請求項1および請求項2の一項に記載のシステム。
【請求項4】
遊星キャリア(52)が、前記第1のプロペラ(11)と一体であり、前記リング歯車(60)は、前記第2のプロペラ(12)およびフリーパワータービンの前記第2のロータ(32)と一体である、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
遊星キャリア(52)が、遊星キャリア軸受(73、74)を介してステータ(33)に回転可能に取り付けられ、リング歯車(60)は、リング歯車軸受(71、72)を介してステータ(33)に回転可能に取り付けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
遊星歯車機構(20)が、リング歯車(60)と一体のリング歯車軸(61)に取り付けられ、リング歯車軸(61)は、遠心力の影響下で遊星歯車機構(20)から潤滑油を戻すように配置された内側円形溝(62)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
円形溝(62)が、遊星歯車機構(20)に対して上流側に配置される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
排油口(64)が、遊星歯車機構(20)の下流側に位置する潤滑油を円形溝(62)へ送るためにリング歯車(60)に配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1から8に記載の二重反転プロペラシステム(1)を含む航空機用タービンエンジン。
【請求項10】
「オープンロータ」型であることを特徴とする、請求項9に記載のタービンエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−516572(P2013−516572A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547510(P2012−547510)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050147
【国際公開番号】WO2011/083137
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】