説明

航空機構造体の複合材料用のそれらの電磁特性を改善するためのエポキシ樹脂のナノファイバーの製造方法

【課題】電界紡糸によるエポキシ樹脂ナノファイバーの優れた製造方法を提供すること。
【解決手段】a)適切な溶剤中にエポキシ樹脂の配合物を溶解させる工程;および
b)前記エポキシ樹脂の配合物を含む溶液を、少なくとも1つの帯電キャピラリーダクト(6,12)に通させる工程であって、前記キャピラリーダクトの出口にメニスカスが形成され、当該メニスカスの頂点から、細い帯電したナノジェットが射出される工程;
を含む、エポキシ樹脂のナノファイバーの製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンファイバー(CF)複合材料積層体の構造要素のレイアップ中にエポキシナノファイバーを製造する方法に関し、より詳細には、カーボンナノチューブをドープしたエポキシナノファイバーを製造する方法、およびかかる方法により得られる複合材料の積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機構造体にカーボンファイバー(CF)複合材料が多く使用されることによって、飛行中に遭遇しうる電磁環境(落雷および高強度電場)に対する機体および搭載システムの両方の防護性が劇的に低下した。これは、主に、従来の金属製構造体と比較して、CF積層体の電気伝導度および熱伝導度が両方とも非常に低い値をとるためである。カーボンファイバーが組み込まれたエポキシマトリックスの絶縁特性に加えて、積層体の多層配置は、層間の電気的接触に対して厳しい制限を加える。
【0003】
単壁カーボンナノチューブ(SWCNT)および多壁カーボンナノチューブ(MWCNT)は両方とも、それらの特別な分子コンフィグレーションのために、電気伝導度および熱伝導度の両方について非常に高い値を示す。従って、カーボンファイバー複合材料中へのカーボンナノチューブ(CNT)の分散は、これらの材料の電気的および熱的特性を改善するための有望な代替法になり得る。明らかに、複合材料中へのCNTの均一かつよく制御された分配の達成は、その電気的特性の改善のために1つの重要なステップである。さらに、CNTの濃度レベルは、パーコレーション限界(percolation limit)に達するのに十分に高いことも必要である。通常のカーボンナノチューブとは異なる他のタイプの伝導性ナノ粒子の場合では、良好な分散度を確実に得ることも、複合材料の電気的特性を改善するのに不可欠な条件である。高度に均一な分布のCNTを含むポリマーマトリックスは、予めポリマー中にCNTを分散させたCNT含有ポリマーからナノファイバーを製造することによって得られた。[New nanocomposite materials made of an insulating matrix and conductive fillers, Polymer Composites, 21, 2, (2000). Electrical and thermal conductivity of polymers filled with metal powders. European Polymer Journal 38, 1887-1897 (2006). Electrical properties of epoxy/silver nanocomposites, Journal of Applied Physics 99, 024308, (2006). Hoping conductivity in polymer matrix-metal particle composite. Composites: Part A 37, 1545-1553, (2006).]
【0004】
電界紡糸(electro-spinning)は、ドープポリマーナノファイバー(doped polymer nanofibers)を製造するための非常に適する技術である。この技術に関連する特徴は幾つかの特許文献(欧州特許第1 364 718号(B1)明細書:Device and method for producing stationary multi-component liquid capillary streams and micrometric and nanometric sized capsules;PCT国際公開第2005/089042号(A2):Method for the generation of composite nanotubes and nanofibres from coaxial jets)および論文(Micro/Nanoencapsulation via electrified coaxial jets Science 295, 1695-1698, 2002;Electrospinning process and applications of slectrospun fibres, J. Electrostat., 35, 151-160, 1995;Micro and nanoparticles via capillary flows, Ann. Rev. Fluid Mech. 39, 89-106, 2007)その他多くの他の刊行物に見られる。コア−シェルナノファイバーまたは中空ナノファイバーが、2種の不混和性液体の帯電同軸ジェットから得られた[Electrically forced coaxial nanojets for one-step hollow nanofiber design, J. American Chem. Soc. 126, 5376 (2004); 欧州−PCT出願第05742395.6号]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カーボンファイバー(CF)複合材料の製造に一般的に使用されているエポキシ樹脂に繊維を形成するポリマーが使用された場合には、積層体の繊維とその他の成分との間に非相容性はなくなり、航空機構造体の保守整備は大幅に改善されるであろう。さらに、その場合には、繊維の製造プロセスは、積層体の製造ライン内に統合できるであろう。
【0006】
電解紡糸により製造されたエポキシ樹脂のナノファイバー膜の製造が報告されているが[例えば、Materials Science and Engineering A 435-436, 309-317, (2006)参照]、得られたエポキシ樹脂のドープナノファイバーの電界紡糸による合成については言及されていない。これは、恐らく、室温でのエポキシ樹脂の硬化プロセスが、単純な産業用途にとっては非常に速すぎるためである。従って、電界紡糸によるエポキシ樹脂の繊維の合成は、反応時間がかなり長くなることを必要とする。
【0007】
本発明は、上記の欠点の解決法に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は、電界紡糸によるエポキシ樹脂のミクロ−ナノファイバーの製造、より具体的には、SWCNTまたはMWCNTを予めドープしたナノファイバーの製造に関する。カーボンナノチューブの濃度は、パーコレーション限界に達するのに十分に高くなくてはならない。本発明の範囲内で、カーボンナノチューブを他の導電性ナノ粒子で置き換えることも考えられる。
【0009】
ドープされたミクロ−ナノファイバーを製造したら、それらを、ファイバーエミッターが組み込まれている二軸電気的移動装置による自動的な方法により各CFプライ上に適用する。この移動装置の速度とファイバー適用プロセスの持続時間の両方によって、CFプライの表面全体にわたってドープナノファイバーの分配を制御することおよびナノファイバー層の厚さを制御することが可能である。これらの航空機構造体の電磁特性は大幅に向上し、特に、電磁遮蔽、静電荷の排出、および落雷衝撃に対する防護性が非常に改善される。
【0010】
本発明は、エポキシ樹脂のナノファイバーであって、単純なまたは中空のもので、カーボンナノチューブを含むナノファイバーの製造方法、および、制御された自動化プロセスによって、それらを、航空機構造体を構成する1または2層以上の表面に適用することに関する。
【0011】
ナノファイバーは、CNTを特定の濃度で含むエポキシ樹脂の溶液を帯電したニードルを通してゆっくり射出する電気流体力学的方法(電界紡糸)により得られる。次に、非常に細い帯電したジェットが、ニードル出口に形成されたメニスカスから出る。ジェットショットの下流展開中に起こる溶剤の蒸発によって、サブマイクロメートルまたは低マイクロメートル範囲の直径で、エポキシ樹脂およびドープナノファイバーの固化が生じる。パーコレーション限界に達するには、CNTの濃度は特定の閾値よりも高くなくてはならない。他の実施態様では、カーボンナノチューブを他の伝導性ナノ粒子フィラーに置き換えることができることを強調しておく。エポキシ樹脂溶液がそれと同軸的に流動する非反応性の液体の周りを取り囲むような方法で帯電同軸ジェットが形成される場合には、充填されたものの代わりに中空ドープナノファイバーが得られるであろう(例えば、Electrically forced coaxial nanojets for one-step hollow nanofiber design, JACS 126, 5376-5377, 2004;欧州−PCT出願第02711878.5号参照)。
【0012】
ナノファイバーは高度に帯電するため、エポキシ樹脂を射出するインジェクターとナノファイバーの射出対象である積層体との間に存在する電界を利用して、ナノファイバーを積層体上に直接射出することができる。この適用方法は、積層体に対するインジェクターの相対運動を制御することにより自動化することができる。
【0013】
第2の態様において、本発明は、かかる方法により得られた複合材料の積層体に関する。航空機構造体に好適なかかる積層体は複数の繊維プライを含み、当該プライのうちの少なくとも1つはナノファイバーの層により被覆されており、当該ナノファイバーは、高電気伝導度のナノ粒子をドープしたものであり、前記方法により製造されたものである。
【0014】
本発明の他の特性および利点は、以下の項からの詳細な説明および添付の図面から分かる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明に従う航空機構造体用の複合材料の多層積層体の一例である。
【図2a】図2aは、本発明に従う航空機構造体用の複合材料の積層体の製造方法の異なる工程を概略的に示す
【図2b】図2bは、本発明に従う航空機構造体用の複合材料の積層体の製造方法の異なる工程を概略的に示す
【図2c】図2cは、本発明に従う航空機構造体用の複合材料の積層体の製造方法の異なる工程を概略的に示す
【図2d】図2dは、本発明に従う航空機構造体用の複合材料の積層体の製造方法の異なる工程を概略的に示す
【図3a】図3aは、本発明に従う方法における、他方を取り囲むメニスカスを有する複合テイラー(Taylor)コーンを示す。
【図3b】3bは、本発明に従う方法における、同軸ジェットの下流ジェット展開を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前述のように、本発明は、電気流体力学的力を用いることによって、CNTを分散させたエポキシ樹脂の溶液のジェットの生成にある。次に、ジェットの固化から形成されたドープナノファイバーをカーボンファイバープライ上に吹き付ける。帯電したニードルを通して適切な流速でエポキシ樹脂溶液を射出する。ニードルは、数キロボルトの直流供給原の陽極に接続され、接地電極はカーボンファイバープライに接続される。そのため、電場により駆動された帯電ナノファイバーがプライの表面に集められる。電界紡糸方法の結果、CNTをドープしたエポキシ樹脂ナノファイバーの堆積物がカーボンファイバーの所定の表面を覆うことになる。スループットを増大させるために、N個(Nは自然数)のニードルを備えたインジェクターを使用することができ、適用装置は数個のインジェクターから成ることができる。
【0017】
プライに対するインジェクターの相対的変位によって、目標とする表面全体のコーティングが可能である。任意の必要とされる速度でのインジェクターの変位と運転時間の両方を調節することによって、ファイバーの分布およびコーティングの厚さを制御することが可能である。
【0018】
このプロセスを、異なるCF層間で要望に応じた回数繰り返すことができる。最後に、積層体を任意の適切な方法(例えばオートクレーブ硬化)により硬化させる。その結果、電気的特性および熱的特性が改善されたCF複合材料構造体が得られる。
【0019】
本発明に従う航空機構造体用の複合材料の積層体の構成を図1に示す。カーボンファイバーの幾つかのプライ2が、間に厚さ10mmのハニカム構造の材料プレート3を挟んでいる。CNTをドープしたエポキシ樹脂の電界紡糸ファイバーのコーティング4がカーボンファイバープライ2の各表面上に適用される。本発明の積層体を完成するために、CNTをドープした電界紡糸エポキシ樹脂の層4で適切に被覆された別のカーボンファイバープライ2に加えて、金属製プライ5が存在する。金属製プライ5は、金属ワイヤから構成された金属製メッシュから成るか、または織物状であってもよい。
【0020】
積層体を製造するのに必要なエポキシ樹脂ナノファイバー8(図2参照)は、電気流体力学的力により樹脂エポキシの溶液の単一ジェットを生成させることにより得られ、この方法は文献では電界紡糸と呼ばれている。基本的には、この機構は、1または2つ以上の帯電ニードルを備えたインジェクターから構成される。ナノファイバーの液体前駆体をポンプシステム7によりニードルに通させる。帯電ジェットの形成は、前駆体の電気伝導度が特定の閾値(典型的には10-8〜10-7S/m)よりも高いことを必要とする。直流高圧電源により供給された電気力が、ニードル出口で形成されたメニスカスから出るミクロジェットを生じさせる。ファイバーコレクター(接地電極)の方へのジェットの展開中に、ミクロジェットは電気流体力学的に不安定になり、その結果、ミクロジェットの延伸が起こる。この効果は、溶剤の蒸発の効果と相まって、ナノメートルレベルへのファイバー直径の減少を可能にする。インジェクター6または12は、たった1つのニードルを有していても(図2aおよび2b)、あるいは幾つかのニードルを有していてもよい(図2cおよび2d)。コレクターに対するインジェクターの相対的変位によって、目標とする表面全体のコーティングが可能である。これは、コレクターの変位もしくは運動、またはインジェクターシステムの運動、あるいはコレクターの運動と射出システムの運動との組み合わせによって達成することができる。好ましい実施態様において、コレクターは、射出システムの直線的−交互的運動に対して垂直に、積層体の直線的運動を生じる回転システムによって駆動される。コレクターは、交互的(図2aおよび2c)または周期的(図2bおよび2d)のいずれかで運動することができる。代わりに、コレクターが静止し、インジェクターがコレクターに対して運動していてもよい。
【0021】
当該電界紡糸法は、対象とする表面へのナノファイバーの適用を可能にする。この目的に対し、1つのインジェクター6または複数のインジェクター12を、高電圧供給源9により供給された電位(典型的には100V〜1000kVの範囲内)に接続する。接地電極は、積層体およびプライを支持する手段に接続される。代わりに、接地電極はカーボンファイバープライのうちの1つに直接接続される。エポキシ樹脂ナノファイバーは帯電されるため、存在する電界がエポキシ樹脂ナノファイバーをコレクター表面(接地されたもの)10の方に駆動させる。インジェクター6または12と積層体の間の相対運動によって、目標とする表面をナノファイバーでコーティングすることが可能である。さらに、相対運動の速度および適用時間を調節することによってコーティングの特性(密度および厚さ)を制御することが可能である。この操作を、必要に応じて、複合材料の多くの層の間で繰り返すこともできる。この操作が完了した後、得られた材料をオートクレーブ内で硬化させる。複合材料の得られた構造体は、大幅に改善された電気的特性および熱的特性を有する。
【0022】
幾つかの他の用途では、中空ナノファイバーが好ましいことがある。コア−シェルナノファイバーまたは中空ナノファイバーが、2種の不混和性液体の帯電同軸ジェットから得られた[Electrically forced coaxial nanojets for one-step hollow nanofiber design, J. American Chem. Soc. 126, 5376 (2004); 欧州−PCT出願第05742395.6号]。両方の液体(外側および内側の液体)がジェットの分裂前に固化した場合には、同軸ナノファイバーが得られ、一方、内側の流体がこのプロセスの間に液体のまま残る場合には中空のナノファイバーが得られることに注目すべきである。
【0023】
本発明に従って帯電同軸ジェットから、CNTをドープしたエポキシ樹脂の中空ナノファイバーを製造するためには、樹脂エポキシとCNTの両方を含む溶液を、同軸的に位置する2つのニードルの間に存在するギャップに通させる。2つのニードルのうちの1つまたは両方のニードルを適切に帯電させる。次に、帯電したメニスカスをニードルの出口に形成する。その帯電したメニスカスの頂点から細いジェットが出る。第1の液体と不混和性または不混和性の程度が低い第2の液体を、先に形成されたメニスカスの内側に別のメニスカスが形成されるような方式で内側のニードルに通させる(図3a参照)。電気的応力により駆動された外側の液体の運動は内側のメニスカスを変形させ、第2の液体の第2のジェットを引っ張り出して第2の液体は外側の液体と同軸的に流動し、結局、2種の液体が同軸的に流れる帯電した複合体を形成する(図3b参照)。第2の液体により形成されたジェットの内側のコアは、カーボンナノチューブをドープした樹脂を含む溶液の外側の層により取り囲まれる。このプロセスは、外径が300ミクロン〜5ナノメートルである帯電した同軸ジェットを生じる。最終的には、ジェットの樹脂ポリマーが固化すると、第2の液体が抜け出ることによって、ナノチューブをドープしたエポキシ樹脂の中空ナノファイバーを得ることができる。
【0024】
エポキシ樹脂の配合
この場合のようにエポキシ樹脂の分子量が比較的小さい場合には、エポキシ樹脂の構造を適切に修飾しない限り、エポキシ樹脂を電界紡糸することはできず、特に、エポキシ樹脂の分子量は、このプロセスの温度(典型的には室温)で固化または半固化するまで増加させなくてはならない。1つの可能性は、樹脂をその本来の分子構造と、B段階と呼ばれているその固形ポリマー状態との間の中間状体にするというものである。これは、樹脂溶液に高温硬化剤を添加することを必要とする。明らかに、樹脂溶液の温度が硬化剤の活性化温度よりも高くなったときに、重合が開始する。樹脂の温度が活性化温度を超えるまでの時間が、当該樹脂で達成される重合の程度を制御する。温度が活性化温度未満に低下した場合には、半固体状態の部分的に硬化した樹脂が得られる。硬化時間は合計時間に依存し、樹脂溶液の温度は硬化剤の活性化温度よりも高い。
【0025】
硬化剤を用いない別の変形態様は、樹脂の分子量を結晶化まで増加させることにある。文献では発展または改善として知られているこのプロセスは、米国特許第4,440,914号および米国特許第4,105,634号明細書に記載されている。基本的には、このプロセスは、必要な量の塩基性モノマーを加えることにより樹脂の分子鎖のサイズを増加させることにある。われわれは、本明細書で説明する特定のエポキシ樹脂であるビスフェノールAのジ−グリシジルエーテル(DGEBA)について、モノマーのビスフェノールAを触媒と共にエポキシ樹脂(DGEBA)中に100〜180℃の温度で触媒と共に溶解させた。この方法では、使用した濃度比のビスフェノールA/DGEBAに依存する高い分子量を有する結晶化した樹脂を得た。次に、得られた結晶化樹脂および硬化剤を適切な溶剤中に溶解させて硬化性溶液を形成する。
【0026】
両方法は、ファイバーの形成を助けるバインダーの添加を必要とすることのある溶液をもたらす。通常、バインダーは、樹脂を溶解させるために使用される溶剤に可溶性の高分子量線状ポリマーである。バインダーの必要量は変性樹脂の分子量および溶剤中でのその濃度に依存し、バインダーの総質量は、典型的には、樹脂の総質量と比べて非常に小さい。
【0027】
上記の2つの方法は、電界紡糸プロセス中に化学反応が起こらないため、時間に依存しない。これは、これらの方法の工業的実施にとって重要な利点である。溶液中の硬化剤が電界紡糸プロセスの温度で活性である場合には、原樹脂のレオロジーは時間とともに変化するので、比較的短い時間間隔内でのみ電界紡糸が可能である[Material Science and Engineering A 435-436, 309-317, (2006)]。従って、この時間に依存する方法の工業的実施は、特に電界紡糸前にカーボンナノチューブまたは他のナノ粒子フィラーを溶液にドープしなくてはならない場合に困難であろう。
【0028】
カーボンナノチューブ(または他の伝導性ナノ粒子フィラー)は、電界紡糸前に、樹脂(樹脂が液体である場合)および溶剤の両方に予め分散させなくてはならない。いかなる場合でも、CNTの濃度は、パーコレーション限界に達するのに適切なものでなくてはならない。均一混合物を確実に得られるように、CNTのクラスターは避けなくてはならない。
【0029】
複合材料の積層体へのナノファイバー適用方法は、本発明の目的のうちの1つであり、ナノファイバーにCNTまたは他の伝導性ナノ粒子フィラーがドープされ;当該ナノファイバーは上記の方法により得られ、高圧電源の接地電極は積み重ね手段またはプライ(プライが伝導性、すなわちカーボンナノファイバーである場合)のうちの1つに接続され;マルチインジェクターが100V〜1000kVの間で変えることのできる電位に接続され;マルチインジェクターはドープエポキシナノファイバーを目的とする表面上に放ち;インジェクターと目標とする表面の間の相対運動はステッパーモーターにより駆動され;コーティングの厚さおよび濃度の両方がインジェクターの変位運動および適用時間により調節され;この方法により得られる複合材料航空機構造体の電気伝導度は従来のカーボンファイバー積層体の電気伝導度と比べて大幅に増加し;コーティングの厚さおよび均一さにより所定の電磁特性が決まる。
【0030】
ドープナノファイバーのコーティングを他の従来の金属化(metallization)方法、例えば複合材料の積層体の電磁防護を改善するための金属性メッシュと併用することも、本発明の1つの目的である。上記の組み合わせによって、落雷衝撃により曝される航空機のゾーン(最大500kAおよび3.5×1062・秒のエネルギーを散逸することができるものであるべきである)においてより薄い厚さでメッシュを使用することが可能になる。
【0031】
特許請求の範囲に記載した変更の全てを上記の実施態様で使用してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)適切な溶剤中にエポキシ樹脂の配合物を溶解させる工程;および
b)前記エポキシ樹脂の配合物を含む溶液を、少なくとも1つの帯電キャピラリーダクト(6,12)に通させる工程であって、前記キャピラリーダクトの出口にメニスカスが形成され、当該メニスカスの頂点から、細い帯電したナノジェットが射出される工程;
を含む、エポキシ樹脂のナノファイバーの製造方法。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂の配合物が、
a)液体エポキシ樹脂および硬化剤;
b)液体エポキシ樹脂、硬化剤およびバインダー;
c)固体エポキシ樹脂;
d)固体エポキシ樹脂および硬化剤;
e)固体エポキシ樹脂およびバインダー;
f)固体エポキシ樹脂、硬化剤およびバインダー;
g)潜伏性硬化剤により部分的に硬化された液体または固体エポキシ樹脂;
h)潜伏性硬化剤により部分的に硬化された液体または固体エポキシ樹脂、およびバインダー;
のうちの1つから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂の配合物を含む溶液に伝導性ナノ粒子が分散されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
伝導性ナノ粒子としてカーボンナノチューブが使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
溶剤が実質的に蒸発したら、溶剤中の伝導性ナノ粒子の濃度は、得られた溶液のパーコレーション限界に達するのに十分に高い、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの帯電したキャピラリーダクト(6,12)が射出システムの一部であり、ナノファイバーの液体前駆体がポンプ装置(7)による力を受け、帯電したキャピラリーダクトが高電圧電源(9)により帯電され、当該高電圧電源による電気力が前記帯電したナノジェットを接地されたコレクター(10)の方に駆動させ、それにより横方向の流体力学的不安定性を生じさせ、当該流体力学的不安定性と溶剤の蒸発とが相まって、ジェットの直径がナノメートル値に達するのに必要な、ジェットの大幅な細線化をもたらす、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ナノジェットが300ミクロン(300×10-6m)〜5ナノメートル(5×10-9m)の直径を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのキャピラリーダクトが、少なくとも2つの同心的なキャピラリーサブダクト、内側および外側サブダクトを含み、これら2つの実質的に同心的なサブダクトの間のギャップにエポキシ樹脂配合物を通させ、内側サブダクトに第2の液体を通させることによって、外側のエポキシ樹脂配合物と同軸的に流動する第2の流体の内側ジェットにより形成された同軸ジェットが2つのキャピラリーサブダクトの出口で生じて中空ナノファイバーを生成する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂のナノファイバーの製造方法。
【請求項9】
コレクターの運動により、もしくは射出システムの運動により、またはコレクターの運動と射出システムの運動との組み合わせによりもたらされる射出システムに対するコレクターの相対運動がある、請求項6〜8のいずれか1項に記載のナノファイバーの製造方法。
【請求項10】
射出システムの運動が直線的、かつ、交互的であり、コレクターの運動が射出システムの運動に対して実質的に垂直である、請求項6〜8のいずれか1項に記載のナノファイバーの製造方法。
【請求項11】
射出システムが1つ以上のマルチインジェクターにより構成されており、各マルチインジェクターは少なくとも1つの帯電したキャピラリーダクトを有する、請求項6〜10のいずれか1項に記載のナノファイバーの製造方法。
【請求項12】
複数の繊維プライ(2)を有する航空機構造体用の複合材料積層体であって、
前記プライ(2)のうちの少なくとも1つがナノファイバーの層(4)により被覆されており;
前記ナノファイバーに、高電気伝導性のナノ粒子がドープされており;
前記ナノファイバーは請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法により製造されたものである、
ことを特徴とする、複合材料積層体。
【請求項13】
コア材料(13)が繊維プライ(2)のうちのいずれかの間に配置されている、請求項12に記載の積層体。
【請求項14】
前記コア材料(3)が、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法により製造されたナノファイバーにより被覆されている、請求項12または13に記載の積層体。
【請求項15】
前記複合材料積層体の電磁特性を改善するために、前記複合材料積層体中の任意の場所に金属製プライ(5)が配置されている、請求項12〜14のいずれか1項に記載の積層体。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【公開番号】特開2010−156096(P2010−156096A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−282203(P2009−282203)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(509342326)エーアーデーエセ コンストルッシオネス アエロナウティカス ソシエダ アノニマ (1)
【出願人】(509342337)
【Fターム(参考)】