説明

航行情報表示装置

【課題】目標地点への操船を容易にする航行情報表示装置を提供する。
【解決手段】表示画面10aを備えた主画像表示器9aと、前記主画像表示器9aよりも小さい表示画面10bを備えた副画像表示器9bとを配設し、前記主画像表示器1は、地図上に、自船の現在位置を表示してなる自船位置画像29を表示し、前記副画像表示器9bには、方位を標記した円環状の方位目盛を、船首方位に対応する部位が最上部に位置するように回転表示してなるコンパス画像50を表示するとともに、該コンパス画像50の方位目盛によって目標地点の方位を表示するようにする。かかる構成とすれば、副画像表示器9bを操船者の見易い位置に設置することで、操船者は目標地点へ容易に操船可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船の航行に有益な情報を提供する航行情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般の航行情報表示装置は、表示画面を備えた画像表示器と、自船の位置を検出する自船位置検出装置と、船首方位を検出する方位検出装置とを備え、地図上に自船位置を示してなる自船位置画像を表示画面に表示する。また、釣り船用の航行情報表示装置等では、魚群探知機等によって発見した漁礁等の位置情報を記憶し、必要に応じて自船位置画像の地図上に表示可能となっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図8(a)は、従来の航行情報表示装置の表示画面10に表示される自船位置画像29の一例である。かかる自船位置画像29では、等深線32や海岸線等が記載された地図28に、自船位置と船首方向が船形の自船マーク34で表示され、目標地点が四角形の目標マーク41で表示される。ここで、一般的な自船位置画像29では、自船マーク34が表示画面10に固定的に表示され、自船位置や船首方向が変化すると、図8(a)から図8(b)への変化のように、自船マーク34が固定されたまま、背景の地図28や方位マーク36、目標マーク41が変動表示される。かかる自船位置画像29によれば、操船者は、地図28上の自船マーク34と目標マーク41を対比することで、目標地点の相対方位を把握できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−198424号公報(段落0035 図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、画像表示器の低価格化に伴って、自船位置画像の視認性向上を目的として航行情報表示装置の画像表示器が大型化する傾向にある。しかしながら、図9に示すように、釣り船Aには操船部Bが狭く、操作パネルCや操舵輪Dの周囲に十分なスペースがないものが多い。こうした狭い操船部Bに大型の画像表示器Gを設置すると、操船者の視界が遮られて操船に支障を来してしまうため、画像表示器Gは、操船の邪魔にならないように、操船部Bの脇や下方など、操舵輪Dを握ったままでは見難い場所に設置されることが多い。このような場合は、操船者は、画像表示器Gの表示情報を頻繁にチェックできず、主に船舶用コンパスEを頼りに航行することとなる。このように、大型の画像表示器は、自船位置画像の視認性を向上できるものの、操船者の見易い位置に設置し難いという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来構成よりも目標地点への操船を容易にする航行情報表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表示画面を備えた主画像表示器と、該主画像表示器よりも表示画面が小さく、該主画像表示器から離して設置可能な副画像表示器と、自船の位置を検出し、自船位置情報として出力する自船位置検出装置と、地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、船首方位を検出し、船首方位情報として出力する方位検出装置と、目標地点の位置情報を記憶する位置情報記憶手段と、前記自船位置検出装置が出力する自船位置情報と、前記地図情報記憶手段に記憶された地図情報とに基づいて、地図上に、自船の現在位置を表示してなる自船位置画像を前記主画像表示器に表示するよう制御する第一の表示制御手段と、前記方位検出装置が出力する船首方位情報に基づいて、方位を標記した円環状の方位目盛を、船首方位に対応する部位が最上部に位置するように回転表示してなるコンパス画像を前記副画像表示器に表示するよう制御する第二の表示制御手段とを備え、前記第二の表示制御手段は、前記自船位置検出装置が出力する自船位置情報と、位置情報記憶手段が記憶する目標地点の位置情報とに基づいて、該目標地点の方位を、前記コンパス画像の方位目盛によって示すことを特徴とする航行情報表示装置である。
【0008】
本発明に係るコンパス画像は、回転する円環状の方位目盛によって船首方位を示すから、操船者は、既存の船舶用コンパス同様に、かかるコンパス画像から船首方位を知ることができる。また、かかるコンパス画像によれば、操船者は、船首方位と同時に目標地点の方位も方位目盛から知得できる。ここで、方位目盛は、船首方位が最上部となるように回転表示されるものであるから、操船者は、方位目盛によって示される船首と目標地点の方位を比較することで、船首方位に対する目標地点の相対方位を瞬時に把握することができ、目標地点の周辺水域まで容易に航行可能となる。
【0009】
そして、本発明にあっては、かかるコンパス画像を表示する副画像表示器は、主画像表示器よりも小さいから、狭い操船部であっても操舵輪や操作パネル付近の僅かなスペースにも設置でき、操船者は、操舵輪を握ったままで、副画像表示器に表示されるコンパス画像を頻繁にチェックできる。なお、かかるコンパス画像は、自船位置画像に比べて単純であるため、小さい表示画面でも船首方位や目標地点の方位を明瞭に示すことができる。このように、本発明によれば、操船者は、目標地点への操船に必要な情報の多くを副画像表示器のコンパス画像から得ることができるから、自船位置画像を表示する主画像表示器が比較的見難い場所に設置されていても、操船者は目標地点へ容易に操船可能となる。
【0010】
本発明にあって、目標地点の方位を方位目盛で示す具体的な構成としては、前記第二の表示制御手段は、前記コンパス画像にあって、前記方位目盛の、目標地点の方位に対応する部位を指示するように、所定の目標方位指標を表示するよう制御することが提案される。また、前記第二の表示制御手段は、前記コンパス画像にあって、前記方位目盛の、目標地点の方位に対応する部位を、他の部位と識別可能な態様で表示するよう制御することも提案される。これらの構成によれば、操船者は、目標地点の相対方位のチェックを短時間で済ませることが可能となるから、操船者の操船時の負担を軽減できる。
【発明の効果】
【0011】
以上に述べたように、本発明によれば、操船者は、副画像表示器のコンパス画像から、船首方位と目標地点の相対方位を知ることができる。この副画像表示器は、自船位置画像を表示するための主画像表示器よりも小さく、また、コンパス画像は、単純であり小型の副画像表示器でも十分明瞭に表示できるため、操船部の狭い船であっても、かかる副画像表示器を見易い位置に設置することで、操船者は、操船しながら目標地点の方位を頻繁にチェック可能となる。このように、本発明にあっては、副画像表示器に表示するコンパス画像によって、大型の主画像表示器の欠点を補うことができるから、操船者は、従来構成に比べて、目標地点へ容易に操船可能となる。
【0012】
また、本発明に係るコンパス画像は、一般的な船舶用コンパス同様に船首方位を示すものであるから、副画像表示器を船舶用コンパスの代わりに用いることもできる。特に、船舶用コンパスは、操船者の真正面に設置する必要があるが、コンパス画像が示す船首方位や目標地点の方位は、操船者の見る角度に依存しないため、副画像表示器の設置場所を自由に決定できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例の航行情報表示装置1を示す説明図である。
【図2】副画像表示器9bの設置例を示す説明図である。
【図3】航行情報表示装置1の制御回路を示すブロック図である。
【図4】主画像表示器9aの表示画面10aの表示例である。
【図5】コンパス画像50の表示例である。
【図6】変形例のコンパス画像50a,50bを示す説明図である。
【図7】変形例のコンパス画像50c,50dを示す説明図である。
【図8】従来の航行情報表示装置に係る自船位置画像29の表示例である。
【図9】釣り船Aの操船部Bを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。
【0015】
図1は、実施例の航行情報表示装置1の構成を示す説明図である。本実施例の航行情報表示装置1は、正面に大型の表示画面10aが設けられた肉厚矩形板状の主画像表示器9aを備えている。この主画像表示器9aは、航行情報表示装置1を統括的に制御する主制御部を筐体内に内蔵しており、航行情報表示装置1の本体を構成している。そして、この主画像表示器9aには、正面に小型の表示画面10bが設けられた矩形板状の副画像表示器9bがケーブル8bを介して接続される。また、副画像表示器9b以外にも、主画像表示器9aには、航行情報表示装置1を操作するためのキー操作部26がケーブル8aを介して接続されており、さらには、図示省略しているが、方位検出装置や自船位置検出装置、魚探用送受波装置等もケーブルを介して接続される。
【0016】
本実施例にあって、主画像表示器9aは17インチ程度の大きさの液晶表示器で構成され、副画像表示器9bは、3〜4インチ程度の小型の液晶表示器で構成される。ここで、主画像表示器9aと副画像表示器9bはケーブル8bを介して接続されるため、小型の副画像表示器9bは、主画像表示器9aから離して設置することができ、主画像表示器9aを設置できないような狭いスペースにも設置できる。なお、図1中の符号7a,7bは、主画像表示器9aと副画像表示器9bを個別に設置するためのスタンドである。
【0017】
図2は、釣り船Aの操船部Bに副画像表示器9bを設置した一設置例である。かかる設置例では、副画像表示器9bは、操船部Bの操作パネルCの上部に設置されており、操船者は、操舵輪Dを握った状態で副画像表示器9bを容易に視認できる。図2に示すような狭い操船部Bでは、大型の主画像表示器9aを設置すると操船の邪魔となってしまうが、副画像表示器9bは、主画像表示器9aよりもはるかに小型であるから、狭い操船部Bに配設しても操船の邪魔となることがない。
【0018】
図3は、実施例の航行情報表示装置1の制御回路を示すブロック図である。前記主制御部11は、マイクロコンピュータからなるものであり、航行情報表示装置1の統括的な制御を処理実行するための中央処理装置(CPU)12を備えている。この中央処理装置12には、測定情報等を読み書きするための測定情報用メモリ(RAM)13が、データのやり取りを行うデータバス(図示省略)を介して接続されている。また、この中央処理装置12には、地図情報が記憶された地図情報用メモリ(ROM)14が、データを読み書きするアドレスを指定するための情報を一方的に伝えるアドレスバス(図示省略)を介して接続されている。さらに、中央処理装置12には、種々の制御を処理実行するためのプログラムが格納されるプログラム用メモリ(ROM)15や、演算に必要なデータが記憶される演算用メモリ(RAM)16も接続されている。また、主制御部11には、計時装置17が設けられており、この計時装置17から中央処理装置12へ随時時刻情報が出力される。
【0019】
さらに、主制御部11には、入力ポート(図示省略)及び出力ポート(図示省略)が設けられ、これらのポートを介して方位検出装置2、自船位置検出装置3が接続される。また、本実施例の航行情報表示装置1は魚群探知機を兼ねるものであり、主制御部11には魚探用送受波装置4が接続される。
【0020】
前記方位検出装置2は、例えば地磁気によりマグネットが回転する様に構成し、該マグネットの回転角度を磁束変化としてホール素子により検知するタイプの方位検出装置や、フラックスゲートセンサーや、ジャイロセンサー等の方位検出装置が適用され得る。この方位検出装置2は、N極検出方向と船首方向とが平行となる様に船の適宜箇所に取り付けられる。
【0021】
かかる方位検出装置2は、現在の船首方位に対応して変化するsin出力又はcos出力を発生する。この出力は、A/D変換器25を介して船首方位情報として主制御部11に出力され、該中央処理装置12で解読される。
【0022】
自船位置検出装置3は、GPSアンテナ23と、該GPSアンテナ23と主制御部11とを接続するGPS演算回路24とにより構成されており、GPSアンテナ23が受信した信号に基づいて、経度及び緯度で特定される自船の二次元絶対位置を検出し、検出した二次元絶対位置を自船位置情報として主制御部11の入力ポートへ出力する。
【0023】
魚探用送受波装置4は、超音波を送受信する送受波部20と、該送受波部20と主制御部11とを接続する送受波制御回路21とから構成されており、主制御部11から送受波制御回路21へ所定のトリガー信号が出力されると、送受波部20が所定波長の超音波パルスを水中に送波するようになっている。そして、水底や魚群に反射した反響波が送受波部20で受波されると、送受波制御回路21が、送受波部20が受波した反響波の情報(受波タイミングや受波強度等)をデジタル信号に変換し、反響波情報として主制御部11へ出力する。
【0024】
送受波制御回路21から主制御部11に反響波情報が入力されると、中央処理装置12は、該反響波情報を、GPS演算回路24から出力された自船位置情報と、計時装置17から出力された時刻情報と関連付けて、1セットの測定情報として測定情報用メモリ13に記憶する。測定情報用メモリ13は、約5時間分の測定情報を記憶可能な容量を有しており、測定情報は測定順に蓄積記憶される。測定情報が記憶容量を超えた場合には、古い測定情報が順次削除される。
【0025】
地図情報用メモリ14は、本発明に係る地図情報記憶手段を構成するものであり、そこには、所要領域の海岸線及び等深線付きの二次元地図情報、又は三次元地図情報がベクトルデータとして記憶される。
【0026】
また、主制御部11の入力ポートには、オペレータが種々の設定を入力するためのキー操作部26が接続される。このキー操作部26はポインティングデバイスや複数のボタンを備えており、オペレータは、これらを操作することによって、各画像表示器9a,9bの表示モードや各種の表示設定等を変更できる。
【0027】
また、本実施例にあっては、主画像表示器9aに表示された地図上の地点を、キー操作部26を介して指定することにより、当該地点の位置情報(二次元絶対座標)を測定情報用メモリ13に記憶可能となっている。このため、オペレータは、魚探用送受波装置4の反響波情報から好適な漁礁等を発見した場合には、当該地点の位置情報を記憶させておくことができる。そして、本実施例では、このように位置情報を記憶した地点は、目標地点に設定することで地図上に表示可能となる。すなわち、本実施例においては、測定情報用メモリ13が本発明に係る位置情報記憶手段を構成する。
【0028】
また、主制御部11の入出力ポートには、表示制御回路18が接続されており、この表示制御回路18に、主画像表示器9a及び副画像表示器9bが接続される。この表示制御回路18は、主画像表示器9aの筐体に収容されている。
【0029】
以上の構成によれば、中央処理装置12が、測定情報用メモリ13に記憶された各情報や、地図情報用メモリ14の地図情報等を随時読み出して、キー操作部26の操作によって選択された表示モードや表示設定に基づいて種々の所要画像データを生成し、さらに生成した各画像データから表示画面情報を生成し、表示制御回路18へと出力する。中央処理装置12から表示制御回路18には、主画像表示器9a用の表示画面情報と、副画像表示器9b用の表示画面情報とが出力される。表示制御回路18は、これらの表示画面情報を受け取ると、その表示画面情報を適正なビデオ信号に変換し、対応する画像表示器9a,9bへと出力する。すなわち、これらの中央処理装置12や表示制御回路18は、本発明に係る第一の表示制御手段及び第二の表示制御手段を構成するものである。
【0030】
図4は、主画像表示器9aの表示画面10aの一表示例である。図4に示すように、主画像表示器9aには、地図28上に自船位置等を示してなる自船位置画像29や、反響波情報を可視化して時系列表示してなる反響波画像30等が表示される。本実施例の航行情報表示装置1では、前記キー操作部26の操作によって、図4に示すように、これらの画像29,30を並列表示したり、重ねて表示したりすることができる。また、任意の画像29,30を表示画面10a全体に表示することもできる。
【0031】
前記自船位置画像29は、図4に示すように、等深線32や海岸線33が付された自船位置周辺地図28の上に、自船の現在位置と、現在の船首方向と、航跡とを示してなるものである。詳述すると、自船の現在位置は、地図28に付される船形の自船マーク34の位置によって示され、船首方向は、該自船マーク34の尖った先端の向きにより示される。そして、航跡は地図28上の航跡ライン35によって示される。また、自船位置画像29の左上部には地図28のN極方向を示す方位マーク36が付されている。かかる自船位置画像29では、自船位置と船首方向が固定的に表示される。すなわち、自船位置や船首方向が変化すると、自船マーク34の位置や向きを変動させず、背景地図28が移動・回転するように自船位置画像29が更新される。
【0032】
前記反響波画像30は、図4に示すように、可視化した反響波情報を幅方向に沿って測定した順番に並べてなるものである。反響波画像30では、より新しい反響波情報が右側に、より古い反響波情報が左側に来るように表示される。縦軸は送波した超音波が反射した水深を示し、受波した反響波の強さが色や濃淡によって表される。反響波画像30において、幅方向に連続的に表示されている反響波は水底で反射した水底エコー38であり、水底エコー38の上方に塊状に表示されている反響波は魚群で反射した魚群エコー37である。
【0033】
図5は、副画像表示器9bの表示画面10bの表示例である。図5に示すように、副画像表示器9bには、船首方位を示すコンパス画像50が表示画面10b全体に表示される。このコンパス画像50では、所定の基準点51を中心として円環状の方位目盛52が回転表示される。この方位目盛52には、東西南北を示すアルファベットと、方位角を示す数字が標記される。また、基準点51には、船形マーク53が先端(船首部分)を上向きにして表示され、この船形マーク53の先端から上方に直線状のガイドライン54が表示される。この船形マーク53とガイドライン54は、コンパス画像50に固定表示されて、ガイドライン54の先端で、回転する方位目盛52の最上部を指示するようになっている。
【0034】
そして、コンパス画像50では、前記方位目盛52は、ガイドライン54の先端が現在の船首方位を指示するように、現在の船首方位に対応する目盛が方位目盛52の最上部となるように回転表示される。具体的には、現在の船首方位(方位角)が35°である場合には、図5(a)に示すように、方位目盛52は、「35°」の目盛が最上部となるように回転表示され、ガイドライン54の先端が方位目盛52の「35°」を指示することとなる。また、かかる状態から自船が転回して船首方位が80°になった場合には、図5(b)に示すように、船形マーク53及びガイドライン54が固定表示されたまま、方位目盛52が「80°」の目盛が最上部となるように回転表示され、ガイドライン54の先端が方位目盛52の「80°」を指示することとなる。すなわち、かかるコンパス画像50によれば、操船者は、既存の船舶用コンパスを見るのと同様にして、自船の船首方位を知得できる。
【0035】
また、コンパス画像50では、方位目盛52によって目標地点の現在方位が示される。具体的には、方位目盛52には、現在設定されている目標地点の方位に対応する部位を指示するように、三角形の目標方位指標55が表示される。例えば、自船に対する目標地点の現在方位(絶対方位)が80°である場合には、図5(a)に示すように、方位目盛52の「80°」の目盛を指示するように目標方位指標55が表示される。そして、かかる状態から自船が航行して目標地点の現在方位が60°になると、図5(b)に示すように、方位目盛52の「60°」の目盛を指示するように目標方位指標55が表示されることとなる。このように、かかるコンパス画像50によれば、方位目盛52によって操船者は目標地点の現在方位を知得できる。特に、かかるコンパス画像50にあっては、船首方位が方位目盛52の最上部となるように表示されるから、図5に示すように、操船者は、目標方位指標55の指示する位置から、船首方位に対する目標地点の相対方位を一目で把握して、操船に反映させることができる。例えば、図5(a)に示すコンパス画像50では、目標方位指標55が最上部から右に45°傾いた部位に表示される。かかるコンパス画像50を見れば、操船者は、船首方位と目標地点の方位に45°のズレがあること一目で把握することができ、操船者は、自船を右に45°転回させれば、船首を目標地点に向けて航行できることがわかる。
【0036】
以下に、航行情報表示装置1の主制御部11における、コンパス画像50の画像データの作成処理について説明する。まず、中央処理装置12は、測定情報用メモリに記憶された最新の自船位置情報及び船首方位情報、また、目標地点の位置情報を読み出して、自船位置と目標地点の絶対座標の差分から、目標地点の絶対方位と距離を算出する。続いて、かかるベクトルデータと最新の船首方位情報とに基づいて、船首方向に対する目標地点の相対方位を算出する。
【0037】
そして、中央処理装置12は、船首方位の分だけ回転した方位目盛52と、目標地点の相対方位の分だけ回転した目標方位指標55と、船形マーク53及びガイドライン54を示した画像データを作成する。なお、目標地点が設定されていない場合には、目標方位指標55はコンパス画像50には表示しない。コンパス画像50の表示中は、コンパス画像50に示される船首の方位と目標地点の方位が最新情報に基づいたものとなるように、中央処理装置12が、かかる画像データ作成処理を高頻度で繰り返して表示制御回路に出力し、コンパス画像50を頻繁に更新する。かかるコンパス画像50の画像データは簡単に作成でき、また、これらの方位情報は、最新の自船位置情報及び船首方位情報から簡単に算出できる。このため、画像更新のたびに地図を移動・回転させる演算処理が必要な自船位置画像29に比べて、コンパス画像50は、画像データの作成するための演算処理が極めて簡単であり、最新の自船位置や方位情報を検出してから画像更新までの表示遅れが極めて小さく、船首や目標地点の方位を略リアルタイムで操船者に示すことができる。
【0038】
このように、本実施例に係るコンパス画像50によれば、操船者は、既存の船舶用コンパス同様に、船首方位を略リアルタイムで知得できる。また、かかるコンパス画像50によれば、操船者は目標地点への相対方位を瞬時に把握することができる。特に、本実施例に係る副画像表示器9bは、主画像表示器9aに比べて小型であり、図2に示したように、既存の船舶用コンパス同様に操船部Bの操作パネルCの脇に問題なく設置できる。このため、操船者は、操舵輪Dを握りながら、船舶用コンパスの代わりに副画像表示器9bのコンパス画像50を見ながら目標地点の周辺水域へと航行できる。なお、船舶用コンパスは、船首方向を正確に示すために操船者の真正面に設置する必要があるが、コンパス画像50では、このような制約は存在せず、副画像表示器9bを比較的自由に設置できるという利点がある。
【0039】
なお、本発明における航行情報表示装置は、上記実施例の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。
【0040】
例えば、図6(a)は、上記実施例に係るコンパス画像の変形例である。かかるコンパス画像50aでは、方位目盛52に目標方位指標を表示するのに替えて、方位目盛52の、目標地点の方位に対応する目盛(図6(a)のF部分)を点滅させる。このように、方位目盛52の対応部位を点滅させたり、表示色を変えたり、明るく表示したりして、他の部位と識別可能にすることで目標地点の方位を示すようにしてもよい。
【0041】
また、図6(b)は、上記実施例に係るコンパス画像の別の変形例である。かかるコンパス画像50bでは、方位目盛52aを横長円環状に表示して、俯瞰的な表示態様としたものである。このように、本発明に係る方位目盛は、真円の円環形状以外を採用することもできる。
【0042】
また、図7(a)は、上記実施例に係るコンパス画像の別の変形例である。かかるコンパス画像50cは、船首及び目標地点の方位に加えて、基準点51から延びる矢印状の潮流指標56によって潮流の方向を示し、さらに潮流指標56の近傍に潮流の流速表記57を示したものである。このように、コンパス画像50cに潮流情報を表示すれば、操船者は、潮流の影響を考慮して、目標地点へ一層正確に操船可能となる。このように、本発明に係るコンパス画像には、潮流の方向や流速を併せて表示することができ、また、同様にして風向きや風速なども表示できる。なお、流速や風速は数字表記に限らず、ベクトル表示するようにしてもよい。
【0043】
また、図7(b)は、上記実施例に係るコンパス画像の別の変形例である。かかるコンパス画像50dは、目標方位指標55に、目標地点までの距離表記58を示したものである。このように、本発明に係るコンパス画像には、目標地点までの距離を表示することができる。また、同様にして、ガイドライン54の先端等に、現在の進行速度を示すこともできる。
【0044】
また、本発明に係るコンパス画像は、副画像表示器に常時表示する必要はなく、コンパス画像が不要な場合には、コンパス画像に替えて別種類の画像を副画像表示器に表示したり、コンパス画像を縮小表示したりするようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施例の航行情報表示装置1は、魚群探知機を兼ねるものであるが、本発明の航行情報表示装置は、魚群探知機を兼ねるものに限定されず、主画像表示器9aに反響波画像を表示する必要もない。また、本発明の航行情報表示装置には、主画像表示器9aと副画像表示器9b以外に、第三の画像表示器を配設してもかまわない。
【符号の説明】
【0046】
1 航行情報表示装置
2 方位検出装置
3 自船位置検出装置
9a 主画像表示器
9b 副画像表示器
10a,10b 表示画面
11 主制御部
26 キー操作部
29 自船位置画像
50 コンパス画像
51 基準点
52 方位目盛
53 船形マーク
54 ガイドライン
55 目標方位指標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面を備えた主画像表示器と、
該主画像表示器よりも表示画面が小さく、該主画像表示器から離して設置可能な副画像表示器と、
自船の位置を検出し、自船位置情報として出力する自船位置検出装置と、
地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
船首方位を検出し、船首方位情報として出力する方位検出装置と、
目標地点の位置情報を記憶する位置情報記憶手段と、
前記自船位置検出装置が出力する自船位置情報と、前記地図情報記憶手段に記憶された地図情報とに基づいて、地図上に、自船の現在位置を表示してなる自船位置画像を前記主画像表示器に表示するよう制御する第一の表示制御手段と、
前記方位検出装置が出力する船首方位情報に基づいて、方位を標記した円環状の方位目盛を、船首方位に対応する部位が最上部に位置するように回転表示してなるコンパス画像を前記副画像表示器に表示するよう制御する第二の表示制御手段とを備え、
前記第二の表示制御手段は、前記自船位置検出装置が出力する自船位置情報と、位置情報記憶手段が記憶する目標地点の位置情報とに基づいて、該目標地点の方位を、前記コンパス画像の方位目盛によって示すことを特徴とする航行情報表示装置。
【請求項2】
前記第二の表示制御手段は、前記コンパス画像にあって、前記方位目盛の、目標地点の方位に対応する部位を指示するように、所定の目標方位指標を表示するよう制御することを特徴とする請求項1記載の航行情報表示装置。
【請求項3】
前記第二の表示制御手段は、前記コンパス画像にあって、前記方位目盛の、目標地点の方位に対応する部位を、他の部位と識別可能な態様で表示するよう制御することを特徴とする請求項1記載の航行情報表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−18538(P2012−18538A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155151(P2010−155151)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000116091)ロイヤル工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】