説明

船舶のリモコン装置及び船舶

【課題】顧客がキャリブレーション作業を行わなくとも、出荷前に各推進機に対して同じ操作をすれば出力軸が同じ回転数になるように調整することができるリモコン装置とそのリモコン装置を備えた船舶を提供する。
【解決手段】複数の推進機(船外機)Eを有する船舶の推進機(船外機)Eの出力調整をするための遠隔制御装置に接続されているリモコン装置1であって、各推進機(船外機)とリモコン装置1とを結ぶ系統毎のばらつきを補正する補正値を書き込むことのできる記憶装置を備えたリモコン側電子制御装置14を、リモコン装置1の本体部2内に組み込んでいると共に、リモコン側電子制御装置14には、補正値を書き込むときに使用する接点部材19を有し、該接点部材19はリモコン装置1を船舶に組み付けた状態では操作することができない状態にしておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶用推進機の遠隔制御装置に接続されるリモコン装置に関するものであり、より詳しくは、複数の推進機を有する船舶において、スロットル操作を行う操作レバーの位置を検出する検出センサのばらつきや操作レバーの機構上のばらつきによって生じる各推進機の回転数の不一致をなくすためのキャリブレーションを出荷前に行うことができるようにしたリモコン装置とそのリモコン装置を備えた船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の推進機を有する船舶において、スロットル操作を行う操作レバーの位置を検出する検出センサのばらつきや操作レバーの機構上のばらつきによって、各推進機を操作する際の操作レバーの操作位置を同じにしたとしても、各推進機のスロットル開度が同じにならず、結果として各推進機の出力軸の回転数が一致しないことがあった。そのため、実際の航行に当たって操縦者の思い通りの運転を行うことができないといった問題があった(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような、検出センサのばらつきや操作レバーの機構上のばらつきが原因である各推進機の出力軸の回転数の不一致をなくすために、従来は、実際の操作レバーの操作位置と回転数との関係を確認して各推進機の系統に応じた補正値を決めるといった、いわゆるキャリブレーションを行って、そのキャリブレーションによって得た各推進機の系統に応じた補正値を、リモコン装置の外部に設けられた電子制御装置の記憶装置に書き込むことでその補正値に応じた制御を実行させ、各推進機に対して同じ操作をすれば出力軸が同じ回転数になるように調整していた。
【特許文献1】米国特許第6280269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多くの工程を実行する煩雑な作業を伴うキャリブレーションは、多くの場合、船舶が出荷された後、船舶を購入した顧客が実施することとなり、キャリブレーション作業に不慣れな顧客に余分な負担を掛けることになっていた。
【0005】
また、モニターに写し出される操作ガイド画面に従うことで、顧客でも比較的簡単にキャリブレーションが行えるようにしているリモコン装置にあっては、本体部の外部に設けられている検査モードスイッチを操作することで、通常モードから必要なときにいつでもキャリブレーションを行うことのできる検査モードに切り替えることができるようになっている。そのため、顧客が誤って検査モードに入ってしまい、正しい補正値を変更してしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、この発明は、以上のような従来の船舶のリモコン装置の問題点を解消すべく、顧客がキャリブレーション作業を行わなくとも、出荷前に各推進機に対して同じ操作をすれば同じスロットル開度、シフト位置になるように調整することができるリモコン装置とそのリモコン装置を備えた船舶を提供することを課題とする。また、顧客が誤って検査モードに入って正しい補正値を変更してしまうおそれがないリモコン装置とそのリモコン装置を備えた船舶を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の推進機を有する船舶の推進機の出力調整をするための遠隔制御装置に接続されているリモコン装置であって、スロットル操作を行う操作レバーの位置を検出する検出センサのばらつきや操作レバーの機構上のばらつきを補正する補正値を書き込むことのできる記憶装置を備えた電子制御装置を、前記リモコン装置の本体部内に組み込んでいると共に、前記電子制御装置には、前記補正値を書き込むときに使用する接点部材を有し、前記電子制御装置は、前記接点部材の状態を検出し、書き込みの可否を判断することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記接点部材は、前記リモコン装置内の電線に設けられた雄側コネクタ又は雌側コネクタの一方のコネクタと、該一方のコネクタと接続できる雌側コネクタ又は雄側コネクタの他方のコネクタとを接続させることで動作するものであることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記接点部材は、前記リモコン装置内の電線に設けられた雄側コネクタ又は雌側コネクタの一方のコネクタと、該一方のコネクタと接続できる雌側コネクタ又は雄側コネクタの他方のコネクタとを接続させることで動作し、その後前記リモコン装置のメインスイッチをONにすることで検査モードになるようにしていることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の構成に加えて、前記リモコン装置には、前記検査モードで行う操作レバーの位置に対応させた学習モードの種類を示すための表示ランプを有し、前記学習モードの種類を前記表示ランプの点滅回数で表示するようにしていることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明に係る船舶は、請求項1乃至4のいずれか一つに記載のリモコン装置を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
以上のような構成により、請求項1に記載の発明は、スロットル操作を行う操作レバーの位置を検出する検出センサのばらつきや操作レバーの機構上のばらつきを補正する補正値を書き込むことのできる記憶装置を備えた電子制御装置を、リモコン装置の本体部内に組み込んでいると共に、電子制御装置には、補正値を書き込むときに使用する接点部材を有し、電子制御装置は、接点部材の状態を検出し、書き込みの可否を判断するので、スロットル操作を行う操作レバーの位置を検出する検出センサのばらつきや操作レバーの機構上のばらつきを補正するキャリブレーション作業を船舶と一体化する前の出荷前のリモコン装置において実施することができるから、出荷後に煩わしいキャリブレーションを顧客が行う必要がなくなる。また、接点部材はリモコン装置を船舶に組み付けた状態では操作することができない状態にあるので、運転中に誤って検査モードに入って正しい補正値を変更してしまうおそれがない。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1の効果に加えて、接点部材は、リモコン装置内の電線に設けられた雄側コネクタ又は雌側コネクタの一方のコネクタと、該一方のコネクタと接続できる雌側コネクタ又は雄側コネクタの他方のコネクタとを接続させることで動作するものであるので、リモコン装置を分解しなければ一方のコネクタと他方のコネクタとを接続することができないため、出荷前にキャリブレーションを行ったリモコン装置に対して、顧客が誤ってキャリブレーションを行うことにより正しい補正値を変更してしまうおそれがない。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1の効果に加えて、接点部材は、リモコン装置内の電線に設けられた雄側コネクタ又は雌側コネクタの一方のコネクタと、該一方のコネクタと接続できる雌側コネクタ又は雄側コネクタの他方のコネクタとを接続させることで動作し、その後リモコン装置のメインスイッチをONにすることで検査モードになるようにしているので、通常モードで使用する場合のように最初にリモコン装置のメインスイッチをONにした場合には、検査モードに切り替えることができないため、誤って検査モードに入ってしまい正しい補正値を変更してしまうといったおそれがない。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一つの効果に加えて、リモコン装置には、キャリブレーション作業時の学習モードの種類を示すための表示ランプを有し、学習モードの種類を表示ランプの点滅回数で表示するようにしているので、表示ランプの点滅回数で現在どの学習モードにあるかを判断することができるため、学習モード毎に異なる操作ガイド画面を表示させるような手段を設ける必要がなく、コストダウンが図れる。
【0016】
請求項5に記載の発明に係る船舶は、請求項1乃至4のいずれか一つに記載のリモコン装置を設けているので、スロットル操作を行う操作レバーの位置を検出する検出センサのばらつきや操作レバーの機構上のばらつきを補正するキャリブレーション作業を船舶と一体化する前の出荷前のリモコン装置において実施することができるから、出荷後に煩わしいキャリブレーションを顧客が行う必要がなくなる。また、接点部材はリモコン装置を船舶に組み付けた状態では操作することができない状態にあるので、顧客が誤って検査モードに入って正しい補正値を変更してしまうおそれがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
まず、この発明の実施の形態の構成について説明する。
【0019】
図1は、この発明の実施の形態に係るリモコン装置の斜視図であり、図2には、同実施の形態に係るリモコン装置の構成図を示し、図3には、同実施の形態に係るリモコン装置の回路の模式図を示している。
【0020】
この発明の実施の形態に係るリモコン装置1は、箱形をした本体部2が、船舶の操縦席の前面にある操作盤の前のテーブル上や操縦席の近くのデッキ上に取り付けられる。図示した本体部2は、略截頭四角錐の形状をしており、その稜線部に当たる角部は、人の手等に外傷を加えることのないように十分な丸みが施されている。
【0021】
本体部2の左側面3と右側面4には、複数の推進機のシフト操作及びスロットル操作をするための前後に回動自在な操作レバー5,5がそれぞれ立設されている。略垂直位置の操作レバー5の中立位置Aから所定範囲の間の領域のいわゆるシフト領域Sでは、スロットル弁の全閉状態(アイドリング状態)を保持したままシフト操作のみを行い、操作レバー5の所定範囲を超えた領域のいわゆるスロットル領域Tでは、シフトした状態を保持したままスロットル弁のみを全閉から全開までの開閉操作するように構成されている。
【0022】
図示した実施の形態では、船舶に搭載された二機の推進機を左右一対の操作レバー5,5によってシフト操作及びスロットル操作を行ことができるものを示しており、本体部2の天面6に指先を前方に向けて手を載せた場合に、指先で操作できる位置に各推進機に対応したチルト・トリム角調整スイッチ7P,7Sを有すると共に、掌に接触する部分には他のスイッチを配置していない。
【0023】
操作レバー5,5の上部には水平ハンドル8,8が設けられており、そのいずれか一方の側面には、二機の推進機のチルト・トリム角を一緒に調整するための主チルト・トリム角調整スイッチ9が設けられている。
【0024】
なお、図示した実施の形態は、二機の推進機を備えた船舶に使用されるリモコン装置1について説明したが、三機又は四機以上の推進機を備えた船舶の場合には、本体部2の天面6に設けるチルト・トリム角調整スイッチの数をそれらの推進機の数に対応させて三つ又は四つ以上設けるようにすればよい。
【0025】
本体部2の天面6の掌が接触するの後方には、左舷側推進機、右舷側推進機のそれぞれに対応する正常作動状態を示す作動表示ランプ10P,10Sと異常作動状態を示す警告表示ランプ11P,11Sを設けている。
【0026】
本体部2の左側面3又は右側面4のいずれか一方には、空吹かし状態と通常状態とを切り替えることのできる空吹かしスイッチ12を設けている。この空吹かしスイッチ12は、電気的な回路の開閉によって空吹かし状態と通常状態とを切り替えるものであって、空吹かし状態に切り替えた場合には、通常状態に切り替えるためのレバー操作をしない限り、空吹かし状態が維持できるものであるから、機械式の空吹かしボタンのように常時押していなくとも空吹かし状態を保つことができる。
【0027】
本体部2の内部には、図2及び図3に示したように、操作レバー5の回動位置を検出することのできるレバー位置検出器13が設けられている。操作レバー5の位置は逐次、レバー位置検出器13で検出され、その検出値は本体部2の内部に設けられているリモコン側電子制御装置14を介して、船外機Eに設けられた制御装置Cの船外機側電子制御装置15に送られる。船外機側電子制御装置15には、船外機Eのシフト操作、スロットル操作及びチルト・トリム角の調整をするための制御機構16が接続されている。
【0028】
キャリブレーションを行うに当たって、実際の操作レバー5の予め定められた操作位置とその位置に対応するレバー位置検出器13の検出値との対応関係から基準値に合わせるための正しい補正値は、リモコン装置1の本体部2の内部に設けられたリモコン側電子制御装置14の記憶装置(図示せず)に書き込むことができるようになっている。
【0029】
リモコン側電子制御装置14には、雄側コネクタ又は雌側コネクタの一方のコネクタ17と、この一方のコネクタ17と接続できる雌側コネクタ又は雄側コネクタの他方のコネクタ18との組み合わせによる検査モード専用の接点部材19が設けられている。検査モード専用の接点部材19は、スロットル操作を行う操作レバー5の位置を検出するレバー位置検出器13のばらつきや操作レバー5の機構上のばらつきを補正する補正値をリモコン側電子制御装置14の記憶装置に書き込むときに使用するものである。
【0030】
出荷前には他方のコネクタ18にはジャンパー線が接続されており、接点部材19によって構成される回路は閉じられた状態にあるため、リモコン側電子制御装置14の記憶装置に補正値を書き込むことができる検査モードの状態にある。反対に、出荷前の補正値の書き込み作業(キャリブレーション)が済んだ場合には、一方のコネクタ17から他方のコネクタ18を取り外すことで、接点部材19によって構成される回路は開いた状態となるため、リモコン側電子制御装置14の記憶装置に補正値を書き込むことができない通常モードの状態にある。なお、一方のコネクタ17から他方のコネクタ18を取り外した場合には、一方のコネクタ17に封止栓(図示せず)を嵌めておくこともできる。
【0031】
そして、キャリブレーションを実行したリモコン装置1が船舶に取り付けられた状態では、封止栓が嵌め込まれた一方のコネクタ17は操作盤の前のテーブルの下や操縦席の近くのデッキの下に納められることになり、運転中には外部から接点部材19を操作することはできない状態にある。
【0032】
以上のように、実施の形態に係るリモコン装置1は、スロットル操作を行う操作レバー5の位置を検出するレバー位置検出器13のばらつきや操作レバー5の機構上のばらつきを補正する補正値を書き込むことのできる記憶装置を備えたリモコン側電子制御装置14をリモコン装置1の本体部2内に組み込んでいるので、キャリブレーション作業を船舶に組み込む前の出荷前のリモコン装置1において実施することができるので、出荷前に製造元によりキャリブレーションを済ませておけば、出荷後に煩わしいキャリブレーションを顧客が行う必要がなくなる。
【0033】
また、リモコン装置1が船舶に取り付けられた後で、新たに補正値を変更しようとする場合には、意識的に操作盤の前のテーブルの下や操縦席の近くのデッキの下から接点部材19を構成している一方のコネクタ17を取り出して、一方のコネクタ17に嵌め込まれている封止栓20を取り外してから一方のコネクタ17にジャンパー線が接続されている他方のコネクタ18を接続しなければならない。そのため、顧客が誤って検査モードに入って正しい補正値を変更してしまうおそれがない。
【0034】
また、誤操作によって正しい補正値を変更してしまうことがないように、キャリブレーションを行うためには、一方のコネクタ17と他方のコネクタ18とを接続した状態で、リモコン装置1のメインスイッチ21をONにするといった特定の手順を踏んだ場合に限り検査モードになるようにするとよい。また、より信頼性を向上させる目的で、更に空吹かしスイッチ12をONにしなければ検査モードに入れないようにしてもよい。なお、メインスイッチ21は、左舷側推進機(船外機)と右舷側推進機(船外機)のそれぞれの系統に一つずつ設けられている。
【0035】
リモコン装置1には、検査モードで行う操作レバー5の位置に対応させた学習モードの種類を示すための表示ランプを有し、学習モードの種類を表示ランプの点滅回数で表示するようにしている。なお、学習モードの種類を示す表示ランプは新たに設けてもよいが、左舷側推進機(船外機)、右舷側推進機(船外機)のそれぞれに対応する正常作動状態を示す作動表示ランプ10P,10Sを表示ランプとして流用することもできる。
【0036】
なお、検査モードにおける操作レバー5の位置に対応させた各種学習モードの切替は、空吹かしスイッチ12を押すことで実行できるようにしている。
【0037】
次に、この発明の実施の形態に係るリモコン装置の使用方法を説明する。
【0038】
図4は、キャリブレーションを行う際の学習モードが作動するまでの手順を示した流れ図であり、図5は、操作レバーの位置に対応させた各種学習モードの切替操作の手順を示した流れ図である。
【0039】
キャリブレーションは左舷側推進機(船外機)と右舷側推進機(船外機)のそれぞれの系統について実施するため、実際には以下に述べる手順を二度行うことになるが、説明は一回限りとする。
【0040】
まず、図4に示したように、メインスイッチ21をONにすると、リモコン側電子制御装置14がメインスイッチ21がONになっていることを検出し(ステップS1)、リモコン側電子制御装置14の判定処理を行い(ステップS2)、この判定処理が終了したら、レバー学習用信号を検出すると共に空吹かしスイッチ12がONになっていることを検出する(ステップS3)。
【0041】
次に、レバー学習用信号があり空吹かしスイッチ12がONになっていることを検出したら、次に、レバー学習用信号がON、かつ、空吹かしスイッチ12がONになっているか、又はレバー学習用信号がOFF、若しくは空吹かしスイッチ12がOFFになっているか、のいずれかを判定し、その結果、レバー学習用信号がON、かつ、空吹かしスイッチ12がONになっている場合には、レバー学習モード(検査モード)に入ることができる(ステップS4)。レバー学習用信号がOFF、若しくは空吹かしスイッチ12がOFFになっている場合には、電子制御装置14の判定値を読み込み(ステップS5)、この読み込みが完了したら通常モードである通常の運転制御が実行される(ステップS6)。
【0042】
レバー学習モード(検査モード)に入ったら、図5に示したように、作動表示ランプ10P,10Sが点滅し続けること(ステップS7)で、レバー学習モード(検査モード)であることが表示される。
【0043】
レバー学習モード(検査モード)では、まず、操作レバー5を後退の最大位置C′まで回動して空吹かしスイッチ12を一回押すと(ステップS8)、レバー位置検出器13の入力電圧値を後退のスロットル全開学習値(補正値)として保存し、作動表示ランプ10P,10Sを一回点滅させる(ステップS9)。
【0044】
次に、操作レバー50を後退の最小位置B′まで回動して空吹かしスイッチ12を一回押すと(ステップS10)、レバー位置検出器13の入力電圧値を後退最小位置学習値(補正値)として保存し、作動表示ランプ10P,10Sを二回点滅させる(ステップS11)。
【0045】
次に、操作レバー50をニュートラル位置Aまで回動して空吹かしスイッチ12を一回押すと(ステップS12)、レバー位置検出器13の入力電圧値をニュートラル学習値(補正値)として保存し、作動表示ランプ10P,10Sを三回点滅させる(ステップS13)。
【0046】
次に、操作レバー50を前進の最小位置Bまで回動して空吹かしスイッチ12を一回押すと(ステップS14)、レバー位置検出器13の入力電圧値を前進最小位置学習値(補正値)として保存し、作動表示ランプ10P,10Sを四回点滅させる(ステップS15)。
【0047】
次に、操作レバー5を前進の最大位置Cまで回動して空吹かしスイッチ12を一回押すと(ステップS16)、レバー位置検出器13の入力電圧値を前進全開学習値(補正値)として保存し、作動表示ランプ10P,10Sを点灯させたままとする(ステップS17)。これにより、検査モードが終了し通常モードに復帰したことがわかる。
【0048】
以上にように、レバー学習モードの種類を表示ランプ(作動表示ランプ10P,10S)の点滅回数で表示するようにしているので、表示ランプ(作動表示ランプ10P,10S)の点滅回数で現在どのレバー学習モードにあるかを判断することができるため、レバー学習モード毎に異なる操作ガイド画面を表示させるような手段を設ける必要がなく、コストダウンが図れる。
【0049】
この発明の実施の形態に係るリモコン装置1は以上のような構成と作用を有しているため、実施の形態に係るリモコン装置1を備えた船舶にあっては、スロットル操作を行う操作レバー5の位置を検出する検出センサのばらつきや操作レバー5の機構上のばらつきを補正するキャリブレーション作業を船舶と一体化する前の出荷前のリモコン装置1において実施することができるから、出荷後に煩わしいキャリブレーションを顧客が行う必要がなくなる。また、接点部材19はリモコン装置1を船舶に組み付けた状態では操作することができない状態にあるので、顧客が誤って検査モードに入って正しい補正値を変更してしまうおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の実施の形態に係るリモコン装置の斜視図である。
【図2】同実施の形態に係るリモコン装置の構成図である。
【図3】同実施の形態に係るリモコン装置の回路の模式図である。
【図4】同実施の形態に係るリモコン装置のキャリブレーションを行う際の学習モード(検査モード)が作動するまでの手順を示した流れ図である。
【図5】同実施の形態に係るリモコン装置の操作レバーの位置に対応させた各種学習モードの切替操作の手順を示した流れ図である。
【符号の説明】
【0051】
1 遠隔制御装置
2 本体部
3 左側面
4 右側面
5 操作レバー
6 天面
10P,10S 作動表示ランプ(表示ランプ)
12 空吹かしスイッチ
13 レバー位置検出器
14 リモコン側電子制御装置(電子制御装置)
16 一方のコネクタ
17 他方のコネクタ
18 接点部材
C 制御装置
E 船外機(推進機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の推進機を有する船舶の推進機の出力調整をするための遠隔制御装置に接続されているリモコン装置であって、スロットル操作を行う操作レバーの位置を検出する検出センサのばらつきや操作レバーの機構上のばらつきを補正する補正値を書き込むことのできる記憶装置を備えた電子制御装置を、前記リモコン装置の本体部内に組み込んでいると共に、前記電子制御装置には、前記補正値を書き込むときに使用する接点部材を有し、前記電子制御装置は、前記接点部材の状態を検出し、書き込みの可否を判断することを特徴とする船舶のリモコン装置。
【請求項2】
前記接点部材は、前記リモコン装置内の電線に設けられた雄側コネクタ又は雌側コネクタの一方のコネクタと、該一方のコネクタと接続できる雌側コネクタ又は雄側コネクタの他方のコネクタとを接続させることで動作するものであることを特徴とする請求項1に記載の船舶のリモコン装置。
【請求項3】
前記接点部材は、前記リモコン装置内の電線に設けられた雄側コネクタ又は雌側コネクタの一方のコネクタと、該一方のコネクタと接続できる雌側コネクタ又は雄側コネクタの他方のコネクタとを接続させることで動作し、その後前記リモコン装置のメインスイッチをONにすることで検査モードになるようにしていることを特徴とする請求項1に記載の船舶のリモコン装置。
【請求項4】
前記リモコン装置には、前記検査モードで行う操作レバーの位置に対応させた学習モードの種類を示すための表示ランプを有し、前記学習モードの種類を前記表示ランプの点滅回数で表示するようにしていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の船舶のリモコン装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載のリモコン装置を備えていることを特徴とする船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−290439(P2007−290439A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118039(P2006−118039)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】