説明

船舶推進システム及び該システムを装備する船舶

【課題】低コストでエネルギー効率が良く、環境にやさしい方法で圧縮ガスを生成する船舶推進システム及び、そのような船舶推進システムを装備した船舶を提供する。
【解決手段】船舶推進システム1、及び、該船舶推進システムを備える船舶であって、該船舶推進システムは内燃機関10、圧縮ガスを提供するための圧縮ガス提供手段30,40、ガス絨毯生成装置を備え、該ガス絨毯生成装置は前記圧縮ガス提供手段に接続されているために前記圧縮ガス提供手段により準備された圧縮ガスが前記ガス絨毯生成装置に供給可能であり、また、該ガス絨毯生成装置は、前記圧縮ガスを用いて船舶の底にガス絨毯を生成するように設定されており、このとき、前記圧縮ガス提供手段は前記内燃機関に接続されていて、前記圧縮ガス提供手段は、前記圧縮ガスを生成するために、前記内燃機関により生成された排気のエネルギーをガスの圧力上昇のために使用するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1のおいて書きに記載の船舶推進システム、及び、そのような船舶推進システムを装備する船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、前述の態様の船舶推進システムが記述されている。この船舶推進システムには、圧縮空気を作る圧縮ガス提供手段がコンプレッサの形で備わっており、該圧縮空気は、圧縮空気ダクトを介して船体の底に船の縦方向に配置されたチャンバ状の構造内に圧入される。該チャンバ状構造は、前記圧縮空気を用いて船体の底に又は船体の底の下に空気の絨毯を作り出すガス絨毯生成装置を構成する。同船舶は、非特許文献2にも記述されている。
【0003】
特許文献1、特許文献2、特許文献3には、船体の底に空気絨毯又はエアクッションを作り出すことができるさらなる船舶が記述されている。
【0004】
そのようなガス絨毯又はガスクッション生成装置を装備する船舶は、船体と水との間の摩擦がより小さいため、航行抵抗がより小さくなる。この原理は空気潤滑とも呼ばれる。しかしながら前記のいずれの文献にも、圧縮空気などの圧縮ガスを、低コストでエネルギー効率よく、環境にやさしい方法で生成できる解決法は示されていない。
【0005】
圧縮ガスの絨毯又は圧縮ガスクッションのための圧縮ガスを発生でき、たとえば電気モータ又は内燃機関を介して駆動できる従来のコンプレッサは、高価であり、保守集約的であり、不具合が発生しやすく、エネルギー集約的である。
【0006】
この問題を解決するための一つのアプローチが特許文献4に記載の船舶で示されており、該船舶においては該船舶のディーゼルエンジンからの排気が直接又はバラストタンクを介して、船体の底の空洞に導かれ、そこで空気絨毯又はエアクッションが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第60308502号明細書
【特許文献2】独国特許第60319518号明細書
【特許文献3】独国特許第19609574号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/136269号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】雑誌「Schiff & Hafen」2009年1月発行第1号、41ページ
【非特許文献2】雑誌「nonstop」03/2008号、19-22ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、圧縮ガスを低コストでエネルギー効率よく、環境にやさしい方法で生成する、請求項1のおいて書きに記載の船舶推進システムを提供することである。本発明の課題はさらに、そのような船舶推進システムを装備した船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、請求項1に記載の船舶推進システム又は請求項9に記載の船舶により解決される。本発明の発展形は従属請求項により定義される。
【0011】
本発明の第1の態様による船舶推進システムには、内燃機関、圧縮ガスを提供するための圧縮ガス提供手段、ガス絨毯生成装置が備わっており、該ガス絨毯生成装置は、該圧縮ガス提供手段により提供された圧縮ガスがガス絨毯生成装置に供給可能なように該圧縮ガス提供手段に接続されており、また、該ガス絨毯生成装置は、前記圧縮ガスを用いて、船舶の船体の底にガス絨毯又はガスクッションを生成するよう構成されている。
【0012】
本発明の船舶推進システムには、圧縮ガス提供手段が内燃機関に接続されているという特徴があり、該圧縮ガス提供手段は、前記内燃機関から発生した排気のエネルギーを、ガスの圧力上昇のために利用して圧縮ガスを生成するように構成されている。
【0013】
本発明において圧縮ガスとは、大気圧より高い圧力を持つガスを指しており、ガスとしてはたとえば内燃機関の排気(排ガス循環を組み合わせる場合など)、外気、又は外気との組み合わせを用いることができる。
【0014】
空気絨毯に使用するガスの圧力を高めるために排気エネルギーを利用する場合、内燃機関の余剰エネルギーが分岐されるだけであるため、追加的なエネルギーは不必要となる。圧力上昇システムは、船舶が航行すると、又は船舶の内燃機関が運転されるとすぐに運転され、船舶の速度又はエンジン回転数の上昇、及びそれとともに排気排出量の上昇によって、より多くの排気エネルギーが利用でき、それによりより多くの圧縮ガスが生成可能となる。
【0015】
本発明の一つの実施形態によると圧縮ガス提供手段は一つの排気タービン、及び、圧縮ガスを生成するために該排気タービンに駆動接続しているコンプレッサを備えており、前記排気タービンの排気入口は内燃機関の排気出口と流体接続されているため、内燃機関から排出された排気を、排気タービンの回転駆動のために排気タービンに供給することが可能であり、また、前記コンプレッサの圧縮ガス出口がガス絨毯生成装置に接続されているため、前記コンプレッサにより生成された圧縮ガスを該ガス絨毯生成装置に供給することが可能である。
【0016】
近年は非常に効率の高い排気タービンが入手可能であるため、排気エネルギーを簡単かつ効率的に利用して回転駆動エネルギーに変換することが保証される。排気タービンは、長期の運転期間にわたって保守不要なように設計されており、非常に運転信頼性が高い、又は運転安定的であり、それにより保守費用及び運転費用が低減される。さらに、排気タービンはさまざまな寸法及び性能クラスにおいて標準コンポーネントとして導入可能であるため、購入費用は受容可能なものである。つまりコンプレッサは、低コストでエネルギー効率がよく、頻繁な保守が不要で、運転安定的な駆動装置を利用でき、しかも該駆動装置には追加的なエネルギー供給は不要である。
【0017】
本発明のさらなる実施形態によるとコンプレッサは一つの軸流圧縮機又は一つの遠心圧縮機で構成されている。
【0018】
軸流圧縮機及び遠心圧縮機も、今日やはり非常に効率の高いものが入手可能であるため、圧縮ガス生成又は圧力上昇のために回転駆動エネルギーを簡単かつ効率的に利用することが保証される。軸流圧縮機及び遠心圧縮機も長期の運転期間にわたって保守不要なように設計されていて非常に運転信頼性が高い、又は運転安定的であり、それにより保守費用及び運転費用が低減される。さらに、軸流圧縮機及び遠心圧縮機もさまざまな寸法及び性能クラスにおいて標準コンポーネントとして導入可能であるため、購入費用は受容可能なものである。
【0019】
本発明のさらなる実施形態によると、排気タービン及びコンプレッサはユニットに統合され、排気ターボチャージャとして構成されている。
【0020】
このことは非常に好適であるが、それは、排気タービンとコンプレッサとの間のトルク伝達距離が最小化できるため、それにより効率がさらに高められるからである。さらに、そのことにより非常にコンパクトな配置が達成され、それにより圧縮ガス提供手段に必要な取付空間が低減される。すでにある従来の船舶の基本構想では自由に利用可能な空間がわずかしかない場合があるため、このことは、そのような船舶の改造の際にも好適である。
【0021】
本発明のさらなる実施形態によると、コンプレッサの圧縮ガス出口がさらに内燃機関のガス入口に接続されているため、コンプレッサにより生成された圧縮ガスを燃焼用に内燃機関に供給することが可能である。
【0022】
換言すると、コンプレッサから排出された圧縮ガス流は、内燃機関の吸入側の給気にも、ガス絨毯生成装置の圧縮ガス供給にも使用されるということである。そのために該圧縮ガス流は望ましくは2つの圧縮ガス部分流に分割され、これら2つの圧縮ガス部分流の流量は望ましくは制御可能又は調整可能である。つまり、過剰な圧縮ガスは内燃機関の前又は後で分岐される。
【0023】
この実施形態は、本発明の特に簡潔かつ低コストな実施形態である。
【0024】
本発明のある一つの実施形態による船舶推進システムは、さらに追加的な一つの排気タービン及び追加的な一つのコンプレッサを有しており、該追加的なコンプレッサは該追加的な排気タービンに駆動接続されており、内燃機関は、該内燃機関で発生した排気を回収するための排気コレクタを備えており、また、該排気コレクタは、その中に回収された排気を2つの排気部分流に分割するように設定されており、第1の排気部分流は圧縮ガス供給手段の排気タービンに供給される、又は供給可能とされており、また、前記追加的なコンプレッサの圧縮ガス排気口が内燃機関のガス入口に接続されているため、前記追加的コンプレッサにより生成された圧縮ガスが、燃焼のために内燃機機関に供給可能である。
【0025】
換言すると、前記一つのコンプレッサ(つまり、前記圧縮ガス供給手段のコンプレッサ)はガス絨毯生成装置に圧縮ガスを供給し、前記もう一つの(追加的な)コンプレッサは、内燃機関の吸引側に給気する。
【0026】
本発明の一つの実施形態によると、前記追加的な排気タービンの排気出口は排気排出管を介して、大気側の排気排出口に接続されており、前記第1の排気部分流は一つのバイパスを通じて選択的に前記排気排出管に供給可能である。
【0027】
それによる長所として、圧縮ガス供給手段が運転されていない時に過剰な排気を問題なく排出できるため、内燃機関の運転に悪影響を与えないことが挙げられる。
【0028】
望ましくは前記圧縮ガスは、圧力をかけた大気又は圧縮空気で構成される。
【0029】
本発明の第2の態様によると、先述の本発明の実施形態のいずれか一つ、又は複数の、又はすべてに基づく船舶推進システムを備える船舶が提供される。
【0030】
そのような船舶は、燃料タンクの航続距離、運転コスト、環境を損なわない、高速という点について特に長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一つの実施例による船舶推進システムを図式的に示した図である。
【図2】本発明のさらなる一つの実施例による船舶推進システムを図式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、望ましい実施形態及び付属の図を参照しながら本発明について詳細に説明する。
【0033】
図1には、本発明の一つの実施形態に基づく、船舶の船舶推進システム1が図示されている(全体が示されたものではない)。
【0034】
船舶推進システム1には、2ストローク・ディーゼルエンジンの形で一つの内燃機関10、該内燃機関10のクランクシャフト(図示略)に駆動接続しているプロペラシャフト20、該プロペラシャフト20に取り付けられたプロペラ(又は船舶スクリュー)21、内燃機関10の吸入側で給気を行うための一次排気ターボチャージャ装置30、二次排気ターボチャージャ40、ガス絨毯生成装置(図示略)、船舶ファンネルの形での排気排出口50が備わっている。
【0035】
前記内燃機関10には複数のシリンダ・ピストン・ユニット11、パイプ状の給気エアコレクタ12、排気コレクタ13が備わっている。
【0036】
本図の実施例において一次排気ターボチャージャ装置30は、並列接続された3つの排気ターボチャージャ31、34、37を備えており、各排気ターボチャージャ31、34、37は排気エネルギーを回転駆動エネルギーに変換するためのそれぞれ一つの排気タービン32、35、38及び、圧縮された大気という形で圧縮ガスを生成するために排気タービン32、35、38にそれぞれ駆動接続されたコンプレッサ33、36、39を備えている。コンプレッサ33、36、39はそれぞれ軸流圧縮機又は遠心圧縮機として実施することができる。各排気タービン32、35、38と、それぞれ付属するコンプレッサ33、36、39は、それぞれ一緒に一体のユニットを形成している。
【0037】
二次排気ターボチャージャ40は、圧縮された大気という形で圧縮ガスをガス絨毯生成装置のために提供する圧縮ガス提供手段を構成している。該二次排気ターボチャージャ40は、排気エネルギーを回転駆動エネルギーに変換するための排気タービン41、及び圧縮された大気という形で圧縮ガスを生成するために該排気タービン41に駆動接続しているコンプレッサ42を備えている。コンプレッサ42は軸流圧縮機又は遠心圧縮機として実施することができる。排気タービン41とコンプレッサ42は、一緒に一体のユニットを形成している。
【0038】
前記ガス絨毯生成装置は、該ガス絨毯生成装置が、二次排気ターボチャージャ40からの圧縮ガスを使用してガス絨毯又はガスクッション(記述された実施形態においては空気絨毯又はエアクッション)を船舶の底に生成できるように構成されている。ガス絨毯生成装置の構成の可能性については、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載されていて専門家は理解できるため、ガス絨毯生成装置について詳細に記述する必要はない。
【0039】
もっとも単純な構成においては、そのようなガス絨毯生成装置は、船体の底にチャンバ状の構造を有しており、該チャンバ状構造には、圧縮ガスを該チャンバ状構造内に導入することができる一つの又は複数の開口部が設けられている。
【0040】
排気排出口50には排気熱交換機60が前置されており、該排気熱交換機60を介して排気から熱エネルギーを取り出すことができ、該熱エネルギーはたとえば暖房の目的で使用することができる。
【0041】
排気コレクタ13には複数の(本図では4つの)出口13a〜13dが設けられていて、該排気コレクタ13は、排気コレクタ13内に集められた排気をまず2つの排気部分流に分割するよう構成されており、そのために第1の排気部分流は排気コレクタ13の出口13aを介して、二次排気ターボチャージャ40の排気タービン41に供給可能であり、また、第2の排気部分流は排気コレクタ13の出口13b〜13dを介して、一次排気ターボチャージャ装置30の排気タービン32、35、38に供給可能である。
【0042】
この目的のために、二次排気ターボチャージャ40の排気タービン41の排気入口41aは、ガスダクト14(排気供給ダクト)を介して排気コレクタ13の出口13aに流体接続されており、また、一次排気ターボチャージャ装置30の排気タービン32、35、38のそれぞれの排気入口32a、35a、38aは、ガスダクト(排気供給ダクト。記号割当てなし)を介してそれぞれ排気コレクタ13の出口13b〜13dの一つに流体接続されている。二次排気ターボチャージャ40の排気タービン41に向かうガスダクト14内には、排気タービン41の前に、モータ駆動される制御弁又は調節弁14a及び急速閉鎖弁14bが直列に配置されている。
【0043】
一次排気ターボチャージャ装置30の排気タービン32、35、38のそれぞれの排気出口32b、35b、38bは、ガスダクト15(排気排出ダクト)を介して排気熱交換機60に流体接続されており、該排気熱交換機60からガスダクト16(排気排出ダクト)を介して排気排出口50に流体接続されている。排気排出口50を介して排気は場合によってはフィルタ及び/又は触媒を介して大気内に放出される。
【0044】
二次排気ターボチャージャ40の排気タービン41の排気出口41bは、ガスダクト17(排気排出ダクト)を介して、排気熱交換機60に通じるガスダクト15に流体接続されている。
【0045】
二次排気ターボチャージャ40の排気タービン41の排気入口41aに向かうガスダクト14からは2本のガスダクト18a、18bが分岐しており、そこに急速閉鎖弁19a又はモータ駆動の制御弁又は調節弁19bが接続されている。これら2本のガスダクト18a及び18bは前記急速閉鎖弁19a及び前記制御弁又は調節弁19bの後で一本のガスダクト18に合流し、該ガスダクト18は、二次排気ターボチャージャ40の排気タービン41の排気出口41bを、排気熱交換機60に向かうガスダクト15に接続しているガスダクト17内に、開口する。
【0046】
ガスダクト18a、18b、18は、二次排気ターボチャージャ40の排気タービン41の排気入口41aに向かうガスダクト14を、二次排気ターボチャージャ40の排気タービン41の排気出口41bを排気熱交換機60に向かうガスダクト15に接続しているガスダクト17に選択的に流体接続することができるため、それによりガスダクト18a、18b、18は、第1の排気部分流を選択的に排気排出管へ、そして排気排出口50へと供給できる一つのバイパスダクトを形成している。
【0047】
一次排気ターボチャージャ装置30のコンプレッサ33、36、39はそれぞれガス入口(図示されず)を備えており、これらガス入口を介してフィルタを通過した外気を大気から吸引することができる。
【0048】
一次排気ターボチャージャ装置30のコンプレッサ33、36、39はさらにそれぞれ圧縮ガス出口(記号割当てなし)を備えており、これらの圧縮ガス出口は一つの共通の圧縮ガス回収管12a内に開口しており、該圧縮ガス回収管12aは、給気エアコレクタ12内に開口している。給気エアコレクタ12は、該給気エアコレクタ12の一つの圧縮ガス出口(図示されず)を介して内燃機関10の一つのガス入口(図示されず)に流体接続されているため、一次排気ターボチャージャ装置30のコンプレッサ32、35、38により生成された圧縮ガスを、燃焼用に内燃機関10に供給することができる。
【0049】
二次排気ターボチャージャ40のコンプレッサ42にはガス入口(図示されず)が設けられており、該ガス入口を介して、フィルタを通した外気を大気から吸引することができる。
【0050】
二次排気ターボチャージャ40のコンプレッサ42にはさらに圧縮ガス出口42bが設けられており、該圧縮ガス出口42bはガス絨毯生成装置に流体接続されているため、二次排気ターボチャージャ40のコンプレッサ42により生成された圧縮ガスを該ガス絨毯生成装置に供給することができる。
【0051】
その結果、圧縮ガス提供手段を構成する二次排気ターボチャージャ40は、内燃機関10により生成された排気のエネルギーを、ガス(本書では外気)の圧力上昇又は圧縮に利用するように設定されているため、圧縮ガス(本書では圧縮空気)が生成され、該圧縮ガスを、船体下でガス絨毯を形成するためにガス絨毯生成装置に供給することができる。
【0052】
図1の実施形態の一般的なコンセプトによると、二次排気ターボチャージャ40は圧縮空気を生成するために、内燃機関10の一次排気ターボチャージャ31、34、37と並行して運転される。
【0053】
図2には、本発明のさらなる一つの実施形態による、船舶(全体が図示されているわけではない)の船舶推進システム1’が図示されている。船舶推進システム1’は、以下に述べるいくつかの相違点を除いては、図1の船舶推進システム1に対応している。図2の船舶推進システム1’に関する以下の説明においては、図1の船舶推進システム1の場合と同じ部材には同じ記号が付与されている。
【0054】
図2の船舶推進システム1’には本発明の特に単純かつ低コストの構成、又は、図1の船舶推進システム1の簡略版が示されている。
【0055】
詳しくは、図2の船舶推進システム1’には、図1の船舶推進システム1と比較して、付属するガスダクト14、17を有する二次排気ターボチャージャ40、及び、バイパスダクトを構成するガスダクト18a、18b、18が備わっていない。排気コレクタ13は図2によると13b〜13dまでの3つの出口のみを備え、これらの出口はガスダクト(排気供給ダクト。記号なし)を介して、一次排気ターボチャージャ装置30の排気タービン32、35、38の排気入口32a、35a、38aに流体接続されている。
【0056】
給気エアコレクタ12には一つの追加的な圧縮ガス出口12bが設けられており、該追加的な圧縮ガス出口12bはガス絨毯生成装置に流体接続されているため、排気ターボチャージャ装置30により生成された圧縮ガスをガス絨毯生成装置に供給することができる。圧縮ガス出口12bには、図2には図示されていないが、体積流量を調節するための制御装置を配置することができる。
【0057】
その結果、本発明の図2の実施形態においては(一次)排気ターボチャージャ装置30は、それぞれの排気ターボチャージャ31、35、37とともに圧縮ガス提供手段を構成しており、該圧縮ガス提供手段は、内燃機関10により生成された排気のエネルギーを、ガス(本書では外気)の圧力上昇又は圧縮のために使用するように設定されているため、圧縮ガス(本書では圧縮空気)が生成され、該圧縮ガスを、船体の下でガス絨毯を形成するためにガス絨毯生成装置に供給することができる。
【0058】
図2の実施形態の一般的なコンセプトによると、内燃機関(該船舶の主推進機関)10の排気ターボチャージャ31、34、37の圧縮空気は直接、空気潤滑のために用いられ、過剰な圧縮空気は内燃機関10の前又は後で分岐される。
【符号の説明】
【0059】
1 船舶推進システム
1’ 船舶推進システム
10 内燃機関
11 シリンダ・ピストン・ユニット
12 給気エアコレクタ
12a 圧縮ガス回収管
12b 圧縮ガス排出口
13 排気コレクタ
13a 排出口
13b 排出口
13c 排出口
13d 排出口
14 ガスダクト
14a 制御弁
14b 急速閉鎖弁
15 ガスダクト
16 ガスダクト
17 ガスダクト
18 ガスダクト
18a ガスダクト
18b ガスダクト
19a 急速開放弁
19b 制御弁
20 プロペラシャフト
21 プロペラ
30 排気ターボチャージャ装置
31 排気ターボチャージャ
32 排気タービン
32a 排気入口
32b 排気出口
33 コンプレッサ
34 排気ターボチャージャ
35 排気タービン
35a 排気入口
35b 排気出口
36 コンプレッサ
37 排気ターボチャージャ
38 排気タービン
38a 排気入口
38b 排気出口
39 コンプレッサ
40 排気ターボチャージャ
41 排気タービン
41a 排気入口
41b 排気出口
42 コンプレッサ
42b 圧縮ガス排出口
50 排気排出口
60 排気熱交換機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶推進システム(1、1’)であって、
内燃機関(10)と、
圧縮ガスを提供するための圧縮ガス提供手段(30、40)と、
ガス絨毯生成装置と、を備え、該ガス絨毯生成装置は前記圧縮ガス提供手段(30、40)に接続されているために前記圧縮ガス提供手段(30、40)により準備された圧縮ガスが前記ガス絨毯生成装置に供給可能であり、また、該ガス絨毯生成装置は、前記圧縮ガスを用いて船舶の底にガス絨毯を生成するように設定されている、船舶推進システム(1、1’)において、
前記圧縮ガス提供手段(30、40)が前記内燃機関(10)に接続されており、また、前記圧縮ガス提供手段(30、40)が、前記圧縮ガスを生成するために、前記内燃機関(10)により生成された排気のエネルギーをガスの圧力上昇のために使用するように設定されていることを特徴とする、船舶推進システム(1、1’)。
【請求項2】
請求項1に記載の船舶推進システム(1、1’)であって、
前記圧縮ガス提供手段(30、40)には一つの排気タービン(32、35、38、41)及び、圧縮ガスを生成するために該排気タービン(32、35、38、41)に駆動接続されている一つのコンプレッサ(33、36、39、42)が備わっており、また、前記排気タービン(32、35、38、41)の一つの排気入口(32a、35a、38a、41a)が前記内燃機関(10)の一つの排気出口に流体接続されているために、前記内燃機関(10)から排出された排気は、前記排気タービン(32、35、38、41)の回転駆動のために前記排気タービン(32、35、38、41)に供給可能であり、また、前記コンプレッサ(33、36、39、42)の一つの圧縮ガス出口(42b)が前記ガス絨毯生成装置に接続されているために、前記コンプレッサ(33、36、39、42)により生成された圧縮ガスを前記ガス絨毯生成装置に供給可能であることを特徴とする、請求項1に記載の船舶推進システム(1、1’)。
【請求項3】
前記コンプレッサ(33、36、39、42)が、一つの軸流圧縮機又は一つの遠心圧縮機から構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の船舶推進システム(1、1’)。
【請求項4】
排気タービン(32、35、38、41)とコンプレッサ(33、36、39、42)とが一体に統合されて排気ターボチャージャ(31、34、37、40)として構成されていることを特徴とする、請求項2又は3のいずれか一項に記載の船舶推進システム(1、1’)。
【請求項5】
前記コンプレッサ(33、36、39)の前記圧縮ガス出口がさらに、前記内燃機関(10)の一つのガス入口に接続されているために、前記コンプレッサ(33、36、39)により生成された圧縮ガスが、燃焼用に前記内燃機関(10)に供給可能であることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の船舶推進システム(1’)。
【請求項6】
請求項2から4のいずれか一項に記載の船舶推進システム(1)であって、追加的な一つの排気タービン(32、35、38)、及び、該追加的な一つの排気タービン(32、35、38)に駆動接続されている追加的な一つのコンプレッサ(33、36、39)を備えた船舶推進システム(1)において、
前記内燃機関(10)には該内燃機関(10)により生成された排気を回収するための排気コレクタ(13)が備わっており、また、前記排気コレクタ(13)は該排気コレクタ(13)内に回収された排気を2つの排気部分流に分岐させるよう構成されているため、第1排気部分流が前記圧縮ガス提供手段(40)の排気タービン(41)に供給可能であり、また、第2排気部分流が前記追加的な排気タービン(32、35、38)に供給可能であり、このとき前記追加的なコンプレッサ(33、36、39)の一つの圧縮ガス出口が前記内燃機関(10)の一つのガス入口に接続されているために、前記追加的なコンプレッサ(33、36、39)により生成された圧縮ガスが、燃焼用に前記内燃機関(10)に供給可能であることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の船舶推進システム(1)。
【請求項7】
請求項6に記載の船舶推進システム(1)であって、前記追加的排気タービン(32、36、38)の一つの排気出口(32b、35b、38b)が一つの排気排出ダクト(15、16、17)を介して一つの大気側排気排出口(50)に接続されていること、また、一つのバイパスダクト(18a、18b、18)が設けられていて、該バイパスダクト(18a、18b、18)を介して、第一排気部分流が前記の排気排出ダクト(15、16、17)に選択的に供給可能であることを特徴とする、請求項6に記載の船舶推進システム(1)。
【請求項8】
前記圧縮ガスが、圧縮された大気で構成されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の船舶推進システム(1、1’)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の船舶推進システム(1、1’)を備えた船舶。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−274905(P2010−274905A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12077(P2010−12077)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(500334036)エムアーエヌ・ディーゼル・エスエー (78)
【Fターム(参考)】