説明

色付きグラフィック・マーキングフィルムを製造する方法

本出願は、色付きフィルム、特にグラフィック・マーキングフィルムとして使用されるフィルム、例えば看板、車両用マーキング等のグラフィックデザインの作製に使用されるフィルム、およびその製造に関する。本出願は、色付きフィルムを製造する方法、および顧客にフィルムを提供する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、色付き(colored)非白色フィルム、特にグラフィック・マーキングフィルムとして使用されるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、色付きフィルム、特にグラフィック・マーキングフィルムとして使用されるフィルム、例えば看板、車両用マーキング等のグラフィックデザインの作製に使用されるフィルム、およびその製造に関する。一般に、これらのフィルムは、裏面に接着剤が付いており、ベースポリマーフィルム層と、接着剤層と、任意にポリマーフィルム層と対向する接着剤層と接触する剥離ライナー層と、を含む。
【0003】
かかるグラフィック・マーキングフィルムは一般に、2つの種類:所望のカラー画像を形成するために印刷されるフィルムと、かかるフィルムから所望の形を切断することによって色付き画像を作成するために使用される着色色付き(pigmented colored)フィルムに分類される。かかる着色(pigmented)フィルムは、所望の顔料粒子をポリマーフィルム成分中に混和することによって製造される。顔料粒子は、特定の波長の光を吸収し、そのため特定の色を付与する有機または無機分子を含有する。顔料の混合物を使用して、特定の所望の色を得ることができる。さらに、色付きフィルムを形成するために、白色フィルムが色付き透明フィルムにラミネートされている。これは、着色反射シートを形成するために、例えば白色反射シートに使用されている。
【0004】
印刷用白色フィルムによって、単純なデザインから写真による複製まで、グラフィックイメージにおける高度な柔軟性が得られる。スクリーン印刷および多種多様な四色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)デジタル印刷法が一般に使用されている。
【0005】
ソリッドカラー(solid color)を生成するための白色フィルムへのデジタル印刷は、いくつかの不利点を有する。例えば、かかる四色印刷プロセスから得られる色域は、かなり大きな開始セットの顔料を混合することによって得られる色域に比べて制限される。これは、6つ以上のプロセスカラーをベースとする向上したシステム(例えば、商品名ヘキサクローム(HEXACHROME)で販売されているシステム)にでさえ、当てはまる。この方法によって生成される色のソリッド領域は、これらの方法に特有の横縞およびストリエーション(striation)欠陥のために、着色またはスクリーン印刷フィルムほど均一ではない。さらに、バックライト用途に対して、これらの技術によって十分なインク濃度を達成するのは難しい。
【0006】
着色フィルムは一般に、より大きな範囲の色(色域)を有し、印刷フィルムよりも色が均一である。さらに、着色フィルムは、フィルムの厚み全体に色を有し、したがって、その色はフィルムの両側から見ることができ、色が層中にある場合よりも、傷および溝が表面上ではっきり分からない。さらに、切り口は、フィルム主要面と同じ色を有し、それは一部の用途において望ましい。着色色付きフィルムは切断することができ、印刷領域のエッジと比較して、形をナイフで切断することによってはっきりと定義されたエッジを得ることができる。さらに、色付きフィルムを切断するのに必要な装置は、安価であり、かつ大部分の看板屋で容易に利用可能である。
【0007】
色付きグラフィック・マーキングフィルムは、不透明および半透明の種類の両方で入手可能である。半透明タイプは、バックライト付き標識用途に使用され(ライトはフィルムを通して見る人に対して透過する)、不透明フィルムは、フィルムで反射された光でフィルムが見られる用途に使用される。フィルムが、それが適用される表面の色またはパターンを有効に隠すことができる場合には、フィルムは不透明であるとみなされる。半透明フィルムは、その厚みを通して光のかなりの部分を透過するが、一般にその光を散乱し、その結果、かかるフィルムを背面から照らすのに使用される光源の像が、見る人にはっきり分からない。不透明および半透明の着色フィルムを製造するプロセスは同様であり、主な違いは、顔料粒子のサイズおよび濃度である。光の波長と比較して大きな粒子は、光を強く散乱し、反射する傾向があり、不透明フィルムの製造において有用である。粒子が小さいほど、散乱する光が少なく、小さな粒子は、透明または半透明フィルムを製造するために使用することができる。透明色付きフィルムは、グラフィック・マーキング産業においてまれに使用されるが、本発明者らは、最小限の光の散乱で、選択された波長で光のかなりの部分を透過するフィルムとして透明フィルムを定義する。
【0008】
ソリッドカラーのグラフィック・マーキングフィルムを製造する現在の方法は、ポリマーフィルム成分および顔料のコンパウンドを配合し、オルガノゾルまたはプラスチゾルを押出し成形、圧延、または流延することによってフィルムを作製することを含む。このシステムには、それぞれの色を生成するために顔料の特別な調合が必要である。この製造方法は複雑であるため、かかるフィルムの製造は、大規模な装置を使用して大きなフィルム製造会社によって行われる。ある色から次の色へと切り替えるプロセスは時間がかかり、かなりの無駄が生じる。したがって、効率的な製造は、特定の色の比較的大きな運転でのみ行うことができる。
【0009】
結果として、経済的に特注色を製造するには、製造業者は、最低発注量を大量にする必要がある。まれに使用される色をストックするには費用がかかる。そのため、ユーザーにとって容易に入手可能な色の選択は制限される。
【0010】
グラフィック・マーキングフィルムに1つまたは複数の色付き熱転写フォイルを逐次適用することによって、ソリッドカラーのグラフィック・マーキングフィルムの特注製造を可能にする既存のシステムがある(例えば、米国特許第6,002,416号明細書および米国特許第6,014,221号明細書参照)。熱転写フォイルは、担体フィルム上の熱可溶性バインダー中の顔料の薄膜を含む。色付き顔料/バインダー層は、熱転写プロセスによって他のフィルムに転写することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
ソリッドカラーフィルムの利点を示すが、少量で効率的に製造することができる、グラフィック・マーキングフィルムの迅速なカスタマイズ可能な着色を可能にするシステムを有することが望ましいだろう。
【0012】
本発明の一態様において、ポリマーフィルム、およびベース層ポリマーフィルムの第1主要面上の接着剤層を含むベース層を提供する工程であって、そのベース層が色を有する工程と、ポリマーフィルム、および透明層ポリマーフィルムの第1主要面上の接着剤層を含む透明層を提供する工程であって、その透明層が色を有する工程と、ベース層の第2主要面に透明層をラミネートする工程と、を含む、色付きフィルムを製造する方法が開示されている。
【0013】
本発明の他の態様において、色を有する透明層と、透明層の第1主要面上の色を有する接着剤層と、を含む色付きフィルムが開示されている。
【0014】
本発明の他の態様において、ポリマーフィルム、およびベース層ポリマーフィルムの第1主要面上の接着剤層含むベース層を提供する工程であって、そのベース層が色を有する工程と、非接触デジタル印刷法でベース層の表面上にインクカラー層を印刷する工程と、を含む、色付きフィルムを製造する方法が開示されている。
【0015】
本発明の他の態様において、ポリマーフィルム、およびそのベース層ポリマーフィルムの第1主要面上の接着剤層を含むベース層であって、色を有するベース層と、ポリマーフィルム、および透明層ポリマーフィルムの第1主要面上の接着剤層を含む透明層であって、色を有する透明層と、を含む色付きフィルムであって、透明層が、可視光波長の範囲において10%を超える最小光透過率を有する、色付きフィルムが開示される。
【0016】
本発明の他の態様において、ポリマーフィルム、およびベース層ポリマーフィルムの第1主要面上の接着剤層を含むベース層であって、色を有するベース層と、非接触デジタル印刷で付着された、ベース層の表面上のインクカラー層と、を含む色付きフィルムであって、色付きフィルムとベース層との間のカラーシフトが、40DE*単位未満である、色付きフィルムが開示される。
【0017】
本発明の他の態様において、透明層と、透明層の主要面上のインク層と、透明層と対向するインク層上の接着剤層と、を含む色付きフィルムが開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、少量の開始在庫から多くの色を生成することを可能にする、色付きフィルムを製造する方法に関する。さらに、色付きフィルムを製造するために使用されるプロセスは、グラフィック・マーキング産業において容易に入手可能である装置で達成することができる。
【0019】
一般に、色付きフィルムはソリッドカラーフィルムである。ソリッドカラーは、本出願の目的のために、イメージを形成する部分に色を有する、規定のグラフィックイメージと対照をなす、フィルムの主要面全体にわたる単一色(single color)として定義される。
【0020】
一般に、本発明において使用されるベース層は、裏面に接着剤が付いており、かつポリマーフィルム層および接着剤層を含む。特定の実施形態において、ベース層は、ポリマーフィルム層と対向する接着剤層と接触している剥離ライナー層を含む。ベース層は色を有する。一般に、ベース層ポリマーフィルム層は、着色色付きフィルム、ポリマーフィルム層の主要面上の色を有する印刷フィルム(つまり、接着剤層と対向する主要面上に印刷された色を有する白色フィルム、または主要面上の印刷を有する透明ベースポリマーフィルムおよびベースポリマーフィルムに対向する印刷面上の接着剤層)、または色付き接着剤を有する透明フィルムであることができる。
【0021】
印刷色が、例えばスクリーン印刷によって製造されるように十分に均一である場合には、ベース層は印刷色を有し得る。
【0022】
ポリマーフィルムは任意のポリマーフィルムであることができる。一般に、ポリマーフィルムはポリ塩化ビニル(一般に「ビニル」と呼ばれる)フィルムである。具体的な例としては、オルガノゾルまたはプラスチゾル混合物から流延することによって、または圧延によって、または押出し成形によって製造されるビニルフィルムが挙げられる。かかるフィルムの例は、ミネソタ州セントポールの3M社(3M Company,St.Paul,MN)から商品名スコッチカル(SCOTCHCAL)7725グラフィック・マーキングフィルムとして市販されている。ポリマーフィルムは、不透明、半透明または透明であることができる。
【0023】
ポリマーフィルムの他に、ベース層はさらに、接着剤層を含む。接着剤層は、例えば加熱活性化接着剤または感圧接着剤である。一般には、接着剤層は感圧接着剤、つまり、活性化する必要がなく、対象の基材と接触させると粘着する接着剤である。かかる感圧接着剤層の改良が知られており、その改良によって、最初の接触時に軽い接着力が得られ、続いて、圧力をかけた後により強力な接着力が得られる。かかる接着剤は、圧力活性化接着剤とも呼ばれている。例としては、ミネソタ州セントポールの3M社(3M Company,St.Paul,MN)からグラフィック・マーキングフィルムで利用可能な、商品名コントロールタック(CONTROLTAC)接着剤として市販されている接着剤が挙げられる。閉じ込められた泡から空気を抜き、適用を容易にする微細構造気泡溝などの他の機能も接着剤に存在する。かかる接着剤の例は、ミネソタ州セントポールの3M社によって商品名コンプライパフォーマンス(COMPLY performance)接着剤として販売されている接着剤である。
【0024】
他の実施形態において、加熱活性化接着剤が、これらのグラフィック・マーキング用途において使用される。加熱活性化接着剤の場合には、剥離ライナー層は必要ない。
【0025】
色付きフィルムはさらに、剥離ライナーを含み得る。剥離ライナーは一般に、剥離ライナーベースと剥離層とを含む。剥離ライナーベースは、紙、ポリマーコート紙、またはポリエステルフィルムなどのポリマーフィルムを含み得る。剥離層は、接着剤が剥離ライナーから容易に取り除けるように選択される。剥離層の例は、感圧接着剤分野で広く知られているように、シリコーン成分を含む。
【0026】
本発明の一実施形態において、ラミネーションによって、1組の着色ベース層を1組の透明色付きフィルムと合わせて、多種多様な色が生成される。ラミネーションは、材料の2つの層を密着させて、結合層状構造を形成するプロセスとして定義される。例えば、1組のベースポリマーフィルム30種類および1組の着色透明フィルム20種類を合わせて、600種類の異なる色付きフィルムを得ることができる。2つ以上の透明色付きフィルムをベース層にラミネートすることによって、さらに多くの色を得ることができる。得られる色付きフィルムの実施形態を図1に示す。図1は、色付きベース層12と、色付き透明層14と、を含む色付きフィルム10を示す。ベース層12は、ポリマーフィルム16と、接着剤層18と、を含む。透明層14は、透明ポリマーフィルム20と、接着剤層22と、を含む。さらに、図1に示される実施形態において、色付きフィルム10は、剥離ライナー24を含む。剥離ライナー24は、剥離ライナーベース26と、剥離層28と、を含む。
【0027】
これの他の実施形態を図2に示す。図2は、色付き透明ポリマーフィルム220と、色付き接着剤層222と、を含む色付きフィルム200を示す。さらに、図2に示す実施形態において、色付きフィルム200は剥離ライナー224を含む。剥離ライナー224は、剥離ライナーベース226と、剥離層228と、を含む。
【0028】
一部の実施形態において、透明層14または透明フィルム220は、可視光波長の範囲において10%を超える、例えば20%を超える最小光透過率を有する。一部の実施形態において、透明層14または透明フィルム220は、可視光波長の範囲において30%を超える、例えば40%を超える、特定の実施形態では50%を超える最小光透過率を有する。
【0029】
かかるシステムの具体的な例において、ベースフィルムは、着色ポリマーフィルムの層と、接着剤(好ましくは、感圧接着剤または圧力活性化接着剤)層と、剥離ライナー層と、を含む、裏面に接着剤が付いた従来のグラフィック・マーキングフィルム構造である。ベースフィルムは、不透明または半透明のいずれかであることができる。透明フィルムは同様な構造であるが、フィルムの着色は、色付きではあるが、フィルムは透明なままであるような着色である。
【0030】
具体的な色の生成は、一方のフィルムのもう一方のフィルムへの接着性を提供するために、または一方のフィルムをもう一方のフィルムにラミネートするために、透明フィルムとベースフィルムの間に接着剤を使用して、ベースフィルム上に透明色付きフィルムをラミネートすることによって達成される。
【0031】
フィルムが2つのニップローラーの間を通過するにしたがって、2つのフィルムが圧力下にて結合され、ローラーが、水、空気、ばねによる力またはラミネート圧力を発生させる他の手段によって互いに押し付けられる、貼合せ機の使用などの当業界で公知の方法のいずれかによって、ラミネーションを達成することができる。フィルムは、スキージーまたは同様な器具を使用して、手で圧力をかけることによってラミネートすることもできる。かかる手作業でのラミネーションは、水または洗剤と水の混合物を使用することによって補助することができる。スキージー処置をすることによって、水が押しのけられ、接着剤とフィルム表面が接触する。乾燥後、結合はその最高強度に達する。
【0032】
透明フィルムの色および濃度は、得られる色付きフィルムの所望の色が生成されるように選択される。
【0033】
得られた色付きフィルムは、ソリッド着色(solid pigmented)フィルムと同じ方法で切断し、グラフィックを製造することができる。不透明フィルムおよび半透明フィルムのどちらも、不透明ベースフィルムまたは半透明ベースフィルムをそれぞれ選択することによって、この方法で簡単に製造することができる。
【0034】
他の実施形態において、ベースフィルムは、剥離ライナー上に着色接着剤層を含み、ポリマーフィルム層を含まない。この場合には、透明フィルムは、透明色付きポリマーフィルムを含み、接着剤またはライナー層を含まない。透明フィルムは、色付き接着剤層およびそのライナーにラミネートされ、所望の色の完成フィルムが形成される。色付き接着剤は、コーティング前に接着剤中に顔料を混合して、着色フィルムと同様な方法で製造される。
【0035】
透明フィルムのポリマーフィルム層全体に着色することによって透明フィルムの透明色を提供する、既に記載の方法の他に、代替方法として、前記透明フィルムの色は、透明フィルムの上面に印刷層として、またはポリマーフィルム層と透明の接着剤層の間の層として、または透明フィルムの接着剤層を着色することによって、提供することができる。
【0036】
具体的な実施形態において、透明フィルムの接着剤層は感圧接着剤であり、そのため、グラフィック・マーキングフィルムにアプリケーションテープを適用するために当業界で使用される、またはカラー層を保護するために印刷グラフィックに明澄透明なフィルムを適用するのに使用される装置など単純なラミネーション装置によって、ラミネーションを行うことができる。他の実施形態において、透明フィルムの接着剤は加熱活性化接着剤であり、その場合には、加熱貼合せ機が必要であるだろう。
【0037】
必要とされる貼合せ装置は、特注色を要望に応じてユーザーによって作成することができるように、色付きグラフィック・マーキングフィルムが使用される、大部分のグラフィック製造設備において容易に利用可能である。
【0038】
本発明の他の実施形態において、ベース層に色を加えるインクジェット印刷などの種々の非接触デジタル印刷法が利用可能である。かかるシステムにおいて、1組のプロセス印刷色が使用される。これらの色は一般にシアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックである。これらの色の様々な濃度およびサイズのドットが表面に吐出される。意図される視距離で、個々のドットを認めることができず、その代わりに、表面で反射する光に対する、ひとまとめにされたすべてのドットの減法効果の結果である色を認めるのにドットは十分に小さい。得られる色付きフィルムの実施形態を図3に示す。図3は、ベース層312と、インク層314と、を含む色付きフィルム300を示す。ベース層312は、ポリマーフィルム316と、接着剤層318と、を含む。さらに、図3に示す実施形態において、色付きフィルム300は、剥離ライナー324を含む。剥離ライナー324は、剥離ライナーベース326と、剥離層328と、を含む。
【0039】
本発明のこの実施形態において、デジタル印刷プロセスを使用して、着色ベースフィルムの表面上に色のソリッド領域としてインクを適用し、色をシフトすることができる(5種類以上の色を用いた他の改良プロセスカラーシステムも使用することができる)。この方法によって、ソフトウェアにおいて所望の色を容易に選択することが可能となり、プリンターは、無駄なく所望の量の印刷フィルムを送り出すことができる。好ましくは、使用されるインクは透明インクであるが、インクドットがベースフィルムをカバーせず、インクおよびベースフィルムから得られる所望の色が目で感知されない場合には、一部不透明なインクでも所望の効果がかなり達成される。
【0040】
印刷インクの色および濃度は、同様であるが、色がベースフィルムからシフトする、混成の識別可能な色が生成されるように選択される。不透明フィルムと半透明フィルムのどちらも、不透明または半透明ベースフィルムをそれぞれ選択することによって簡単に、この方法によって製造することができる。
【0041】
インクジェット印刷(溶剤型、紫外線硬化性、または水性インクを使用する)を含む、この産業で一般に使用されている非接触デジタル印刷プラットフォームのいずれかを使用することができる。
【0042】
目的の印刷法に適しているプリンターを使用して、フィルムは印刷される。一部の実施形態において、プリンターは、印刷される色付きフィルムの選択および所望の色を達成するための印刷濃度の調節を補助するソフトウェアを含み得る。例えば、ユーザーは、所望の最終色を入力することができ、ソフトウェアは、出発ベースフィルムをユーザーに勧め、次いで最終色を達成するのに適切な色および濃度の色を印刷する。特定の実施形態において、プリンターは、ベースフィルムの色を測定するセンサーを備える。次いで、ソフトウェアは自動的に、補正濃度の種々のインクカラーを印刷して、測定された特殊ベースフィルム上に所望の色を形成する。
【0043】
一部の実施形態において、印刷グラフィックフィルムで通常行われているように、オーバーラミネート保護クリアフィルムまたは保護クリアコーティングを印刷層上に適用して、印刷層を保護することができる。
【0044】
ベースフィルム色からシフトする色の程度は、印刷設定を制御することによって連続的に変えることができる。プリンターはインクまたはフィルム材料を無駄にすることなく、いずれの時点でも印刷を開始し、停止することができるため、このシステムでは材料を無駄にすることはほとんどない。いずれの着色ベースフィルムも使用することができることから、利用可能な色域は、着色フィルム技術で利用可能な色域とちょうど同じ程度の広さである。しかしながら、印刷での色をシフトする能力のために、比較的少ないセットのフィルムから、多種多様な色合いの変化(shade variation)を達成することができる。所望の色とあまり差がない、フィルム全体にわたる色が存在するために、フィルムにおけるかき傷および溝は、白色フィルムの表面上に印刷することによって、色が生成されている場合ほど、はっきりと分からない。色調節層の退色の場合には、グラフィックフィルムは、かなり目立つ白色ではなく、ベースフィルムの色に退色するだろう。横縞およびストリエーションなどのプリンター欠陥が、ベースフィルム色と複合色とのコントラストがないためにそれほど見えないことから、色外観の均一性は、白色フィルム上のソリッドカラーのデジタル印刷の場合よりも良いだろう。光透過は、印刷カラー層よりもベーフィルムによって大きく制御されることから、半透明用途の光透過の均一性は、従来の半透明の着色フィルムとほぼ同程度に良い。必要なデジタル印刷は、特注色をユーザーによる要望に応じて作成することができるように色付きグラフィック・マーキングフィルムが使用される、多くのグラフィック製造設備において容易に利用可能である。
【0045】
他の実施形態において、透明色付きフィルムを印刷し、次いでその印刷面をライナー上の接着剤にラミネートして、最終製品を形成する。接着剤は、半透明用途に関しては透明または光散乱性であり、不透明用途に関しては白色であるだろう。このスキームの利点は、印刷パターンにおける欠陥が、透明色下の層にあるために、それほど目に見えないことである。
【0046】
照射のための標準光源および反射光を捕えるための標準受光角を有する分光光度計を使用して、定量的に色を測定することができる。当業界で一般に使用されているかかる装置は、ニューヨーク州ニューウィンザーのグレタグマクベス社(GretagMacbeth LLC,New Windsor,NY)によって製造されており商品名グレタグ(GRETAG)モデルSPM50として販売されている。測定された色は、3つの独立したパラメーターによって表すことができる。それを行う一つのシステムは、CIELABシステムである。このシステムにおいて、L*軸は、系の全体的な明度または輝度を特徴付け、a*−b*面における位置は色相および彩度を表す。a*軸は、緑と赤のバランスを表し、負の方向は緑であり、正の方向は赤である。b*軸は、黄と青のバランスを表し、負の方向は青であり、正の方向は黄である。(The Reproduction of Color:in Photography,Printing,and Television,R.W.G.Hunt,4th edition,Fountain Press,Tolworth,England,1987)。2つの色(1および2)の差は、記号DE*
【数1】

によって表される、2つの色を表すこの3次元空間におけるポイント間の距離によって表すことができる。
【0047】
本発明において、初期ベースカラーと最終色付きフィルムとの間のDE*は、40を超えず、例えば20を超えない。一部の実施形態では、DE*は10を超えず、特定の実施形態では、DE*は5を超えない。
【0048】
様々な方法を用いて、得られた色付きフィルムを所望の形状に切断することができる。例示的な方法としては、電子的切断(electronic cutting)、打抜きまたは熱によるキスカット(kiss cutting)が挙げられる。電子的切断では、コンピューター制御下にてナイフが操作され、所望の形状が切断される。打抜きでは、所望の形状に形成されたダイをフィルムに押し付け、フィルムを切断する。熱によるキスカットでは、簡潔には、熱いダイをフィルムに対して押しつけ、溶融と圧力の組み合わせによって切断する。一般に、切断法では、ポリマーフィルムおよび接着剤を貫通するが、剥離ライナーを貫通せず切断する。
【0049】
切断後、不要なフィルム材を引き剥がし(ウィーディング(weeding)として知られる)、廃棄する。紙もしくはフィルム基材および感圧接着剤を含むアプリケーションテープのシートは、切断パート(cut parts)に適用され、アプリケーションテープ上の適切な位置に切断パートが接着される。目的の基材にグラフィックを適用するために、ライナーは除去され、切断パートはアプリケーションテープの接着剤面上に残り、アプリケーションテープおよび付けられたその切断パートは目的の基材に適用される。圧力をかけて、基材に対して切断パートを確実に接着した後、アプリケーションテープを取り外し、廃棄する。このプロセスは、米国特許第4,467,525号明細書に詳細に記載されている。
【0050】
さらに、事業を営む方法が呈示されている。この方法において、顧客、例えば看板屋に、ソリッドカラーフィルムの利点を示すが、少量で効率的かつ経済的に製造することができる、グラフィック・マーキングフィルムのカスタマイズ可能な迅速な配色を可能にするシステムが提供される。
【0051】
かかるシステムにおいて、いずれの着色ベースフィルムも使用することができることから、利用可能な色域は、着色フィルム技術で利用可能な色域とちょうど同じ程度の広さである。さらに、ベースフィルムの色は、色を有する透明シートまたはインク層のいずれかで、多数の色合いにシフトすることができる。したがって、比較的少ないセットのベースフィルムから、多種多様な色を達成することができる。
【0052】
さらに、着色フィルムを使用する場合には、所望の色と実質的に差がない、フィルム全体にわたる色が存在し、したがって、フィルムにおけるかき傷および溝は、白色フィルムの表面上に印刷することによって色が生成されている場合ほど、はっきりと分からない。顧客は、従来の着色フィルムとほぼ同じ程度良い、または同程度良い色の均一性、および従来の半透明の着色フィルムとほぼ同じ程度良い、または同程度良い、半透明用途に対する光透過の均一性も得るだろう。
【0053】
このシステムは、得られるフィルムの色を顧客が選択することを可能にする方法を含む。顧客は、現場での選択から色を選ぶことができる。例えば、顧客は、ベースフィルムの冊子および透明フィルムの冊子を閲覧することができ、所望の色に達するまで、ベースフィルムを重ねることができる。他の実施形態において、顧客は、印刷カラーサンプルの冊子を閲覧することができる。他の実施形態では、顧客は、色の選択肢を見る前に、予め選択される色を選択しておく。
【0054】
次いで、色付きフィルムが、短時間で顧客のために特注製造される、または顧客が、顧客自身で色付きフィルムを特注製造することができる。顧客は、領域源(regional source)から特注色付きフィルムを注文することもできる。領域源は、例えば定義される地理的領域内での位置である。例えば、アメリカ合衆国は、多くの地理的クラスターに分類することができ(例えば、北東部、中西部、南西部)、1つの領域源が、各クラスターに対して特定される。次いで、特注色は、本発明の方法を用いて製造される。いずれかの実施形態において、フィルムは、例えば48時間以内に、特定の実施形態では24時間以内に顧客のために迅速に製造される。
【0055】
この方法によって、多くの種類の所望の色付きフィルムを製造するために所持する在庫を少なくすることが可能となる。顧客の仲介サイトまたは地域配送センターは、一定数のベースフィルムを保持し、次いで一定数の着色接着剤、一定数の透明フィルムまたは一定数のインク、ならびに色付きフィルムを製造する機械(例えば、貼合せ機または非接触デジタルプリンター)を有する必要があるだけである。
【実施例】
【0056】
これらの実施例は、例示的な目的でのみ示すものであり、添付の特許請求の範囲に制限することを意味するものではない。
【0057】
特定の試料を上記で詳述されるようにDE*について測定した。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者には、本発明に様々な修正および変更を加えることができることは明らかであるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態を用いて製造された色付きフィルムの断面図である。
【図2】本発明の実施形態を用いて製造された色付きフィルムの断面図である。
【図3】本発明の色付きフィルム実施形態の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーフィルム、およびベース層ポリマーフィルムの第1主要面上の接着剤層を含むベース層を提供する工程であって、前記ベース層が色を有する工程と、
ポリマーフィルム、および透明層ポリマーフィルムの第1主要面上の接着剤層を含む透明層を提供する工程であって、前記透明層が色を有する工程と、
前記ベース層の第2主要面に前記透明層をラミネートする工程と、
を含む、色付きフィルムを製造する方法。
【請求項2】
前記ベース層がさらに、前記ポリマーフィルムに対向する前記接着剤層上に剥離ライナーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベース層の接着剤が、前記透明フィルムに対向する面上の感圧接着剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記透明層が、感圧接着剤で前記ベース層にラミネートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記透明層が、加熱活性化接着剤で前記ベース層にラミネートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記色付きフィルムを切断する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記色付きフィルムが、打抜きされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記色付きフィルムが、電子的に切断される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記色付きフィルムが、熱的にキスカットされる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ベース層ポリマーフィルムが、印刷されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ベース層ポリマーフィルムが、着色フィルムである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記透明層ポリマーフィルムが、印刷されている、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記透明層ポリマーフィルムが、着色フィルムである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ベース層ポリマーフィルムが、色付きではなく、かつ透明であり、かつ前記ベースフィルム色が、前記ベース層接着剤中にある、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記透明層色が、前記透明層接着剤中にある、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ベース層ポリマーフィルムが、透明である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ベース層ポリマーフィルムが、半透明である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ベース層ポリマーフィルムが、不透明である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記色付きフィルムが、均一な色である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
色を有する透明層と、
前記透明層の第1主要面上の色を有する接着剤層と、
を含む色付きフィルム。
【請求項21】
前記透明層が、可視光波長の範囲で50%を超える最小光透過率を有する、請求項20に記載の色付きフィルム。
【請求項22】
前記透明層が、可視光波長の範囲で40%を超える最小光透過率を有する、請求項20に記載の色付きフィルム。
【請求項23】
前記透明層が、可視光波長の範囲で30%を超える最小光透過率を有する、請求項20に記載の色付きフィルム。
【請求項24】
前記透明層が、可視光波長の範囲で20%を超える最小光透過率を有する、請求項20に記載の色付きフィルム。
【請求項25】
前記透明層が、可視光波長の範囲で10%を超える最小光透過率を有する、請求項20に記載の色付きフィルム。
【請求項26】
色を有する透明フィルムを提供する工程と、
接着剤層に前記透明フィルムをラミネートする工程であって、前記接着剤層が色を有する工程と、
を含む、色付きフィルムを製造する方法。
【請求項27】
ポリマーフィルム、およびベース層ポリマーフィルムの第1主要面上の接着剤層を含むベース層を提供する工程であって、前記ベース層が色を有する工程と、
非接触デジタル印刷法によって、前記ベース層の表面上にインクカラー層を印刷する工程と、
を含む、色付きフィルムを製造する方法。
【請求項28】
前記ベース層が、前記ポリマーフィルムに対向する前記接着剤層上の剥離ライナーをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ベース層接着剤が、前記透明フィルムに対向する面上の感圧接着剤である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記インクカラー層が連続層である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記インクカラー層が非連続層である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記インクカラー層が透明である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記色付きフィルムを切断する工程をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記色付きフィルムが、打抜きされる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記色付きフィルムが、電子的に切断される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記色付きフィルムが、熱的にキスカットされる、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記ベース層ポリマーフィルムが、印刷されている、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
前記ベース層ポリマーフィルムが、着色フィルムである、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
前記色付きフィルムと前記ベース層の間のカラーシフトが、40DE*単位未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
前記色付きフィルムと前記ベース層の間のカラーシフトが、20DE*単位未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項41】
前記色付きフィルムと前記ベース層の間のカラーシフトが、10DE*単位未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項42】
前記色付きフィルムと前記ベース層の間のカラーシフトが、5DE*単位未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項43】
前記デジタル印刷法が、インクジェット印刷である、請求項27に記載の方法。
【請求項44】
前記インクジェット印刷において、紫外線硬化性インクが使用される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記インクジェット印刷において、溶剤型インクが使用される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記インクジェット印刷において、水性インクが使用される、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記デジタル印刷法が、サーマルインクジェット方式である、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記デジタル印刷法が、ピエゾインクジェット方式である、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記色付きフィルムが、ソリッドカラーである、請求項27に記載の方法。
【請求項50】
前記インクカラー層が、コンピューター・ソフトウェアによって選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項51】
ポリマーフィルム、およびベース層ポリマーフィルムの第1主要面上の接着剤層を含むベース層であって、色を有するベース層と、
ポリマーフィルム、および透明層ポリマーフィルムの第1主要面上の接着剤層を含む透明層であって、色を有する透明層と、
を含む色付きフィルムであって、前記透明層が、可視光波長で50%を超える最小光透過率を有する、色付きフィルム。
【請求項52】
ポリマーフィルム、およびベース層ポリマーフィルムの第1主要面上の接着剤層を含むベース層であって、色を有するベース層と、
非接触デジタル印刷法で付着された、前記ベース層の表面上のインクカラー層と、
を含む色付きフィルムであって、前記色付きフィルムと前記ベース層との間のカラーシフトが、20DE*単位未満である、色付きフィルム。
【請求項53】
透明層と、
前記透明層の主要面上のインク層と、
前記透明層に対向する前記インク層上の接着剤層と、
を含む色付きフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−527803(P2007−527803A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551598(P2006−551598)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/003191
【国際公開番号】WO2005/075591
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】