説明

色域境界検出装置、色域境界検出方法及び色域マッピング方法

【課題】 正確な色域境界検出及びマッピングを行う。
【解決手段】 入力される色サンプルの色座標値を球座標系の値(γ、θ、α)に変換する色座標変換部100と、球座標系を所定個数に均等に分割したセグメントのうち、色座標値が存在しないセグメントが存在する場合、隣接した色座標値を利用して色座標値を追加する補間部200と、分割したセグメント毎にセグメントに位置する色座標値のうち半径γが最も大きい色座標値を検出する判断部300と、検出した半径γが最も大きい色座標値に基づいて、セグメント毎に各セグメントの中心に最も隣接した半径γが最も大きい色座標値を検出し、色域境界を検出する色域検出部400と、を備える色域境界検出装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球座標系及び補間法を用いて色域境界検出、検出された色域を利用して色域マッピングを行う色域境界検出装置及びマッピング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モニタ、スキャナ、カメラ、プリンタなどのように色を再現するカラー入出力装置は、それぞれの使用分野に応じて互いに異なる色空間(color space)、あるいはカラーモデルを使用している。例えば、カラー映像の場合、印刷装置ではCMY色空間を使用しており、カラーCRTモニタやコンピュータグラフィックデバイスではRGB色空間を使用しており、色相、彩度、明るさを各々取り扱うべきデバイスではHSI色空間を使用している。また、いずれのデバイスにおいても正確に再生可能な、いわゆる装置非依存カラーを定義するためにCIE色空間が使用されているが、代表的には、CIE−XYZ、CIE−Lab、CIE−Luv色空間などがある。
【0003】
カラー入出力装置は、このような色空間の他にも表現可能な色の範囲、つまり色域が互いに異なる場合がある。このような色域の差のため、同一の映像を互いに異なる入出力装置で観察すれば、その映像は同一でなくなる。よって、入力される色信号とこの入力色信号を再現する装置の色域が異なる場合には、相互の色域がマッチングするように、入力される色信号を適切に変換し、色再現力を向上させる色域マッピングが必要である。
【0004】
図1は、一般の色域マッピングを説明するための図である。ここで、S1とS2は、各々ソースデバイスの色域とターゲットデバイスの色域を示す。また、X1とX2は、各々ソースデバイスのオリジナル映像とマッピング後の映像を示す。
【0005】
図1に示すように、まず与えられたソースデバイス(入力系)及びターゲットデバイス(出力系)の色域境界記述子(GBD:Gamut Boundary Description)を作製する。図1は、ソースデバイスの色域がターゲットデバイスの色域より広い場合であって、色域境界記述子を利用して色域マッピングを行う際に、ソースデバイスのオリジナル映像がターゲットデバイスの色域内にマッピングされる必要がある。即ち、ソースデバイスのオリジナル映像をターゲットデバイスの色域内にマッピングするとき、ターゲットデバイスの色域外部にあるソースデバイスのX1映像をターゲットデバイスの色域境界のX2にマッピングする。これは、ターゲットデバイスの外部にあるソースデバイスのオリジナル映像をターゲットデバイスの色域内にマッピングして、ターゲットデバイスにおいて色再現を可能にするものである。
【0006】
一方、相違するカラー入出力装置間の色のマッピングは、一般に、入力色信号の色空間を変換した後、色相(Hue)を変化させない状態で、明るさと彩度に対する色域マッピングが行われる。具体的には、入力色信号をRGB、CMYKなどのような装置依存色空間(DDCS:Device Dependent Color Space)からCIE−XYZ、CIE−Labなどのような装置非依存色空間(DICS:Device Independent Color Space)に変換した後、装置非依存色空間を再び色相、明るさ、彩度を表すLCH座標系に変換した後、色相が一定な平面上で、つまりLC平面上で明るさLと彩度Cに対する色域マッピングを行う。ここで、かかる色域マッピングを行うためには、装置非依存色空間またはLCHにおける装置の色域を知っている必要がある。
【0007】
図2A及び図2Bは、従来の色域境界検出法を説明するための図である。図2Aは、補間法を用いた色域境界検出法を説明するための図である。図2Bは、球座標系を用いた色域境界検出法を説明するための図である。
【0008】
ここで、X3は補間される色座標値であり、X4乃至X6は、X3の補間に用いられる色座標値である。
【0009】
図2Aに示すように、補間法を用いた色域境界検出法は、CIE−Lab座標系において色座標系を任意に均等に分割する。そして、分割した地点に与えられた一定個数の色サンプルのLab値、及び分割した地点にLab値が存在しない場合には、補間法を用いて生成した色座標値を使用して色域境界記述子を作製する。図2Aで、分割した地点に位置するX3値は、分割した地点の周囲に位置するX4値、X5値、X6値を用いて補間法によって生成した色座標値である。
【0010】
ところが、かかる補間法を用いた色域境界検出は、補間誤差によって色域境界検出に誤差が生ずる。また、CIE−Lab色座標系を均等に分割して作製された色域境界記述子にR(Red)、G(Green)、B(Blue)、C(Cyan)、M(Magenta)、Y(Yellow)のような特定の純色が記述されない可能性があるという問題点がある。
【0011】
図2Bに示すように、球座標系(Spherical Coordinates System)を利用した色域境界検出法は、Jan.Morovic著の「Color Imaging Vision and Technology」の255ページ乃至259ページに記載されている。球座標系を利用した色域境界検出法は、まず、側色機(spectrophotometer)で測定した一定個数の色サンプルのCIE−Lab値を球座標系の値に変換する。そして、球座標系の値を均等に分割した後、分割した領域毎に半径が最も大きい色座標値を保存する。このとき、球座標系に変換した値のうち半径が最も大きい色座標値は、色域において境界に該当する値である。よって、分割した領域毎に半径が最も大きいデータを検出することによって、色域境界を検出することができる。
【0012】
ところが、このような球座標系を利用した色域境界検出法は、分割した領域の中で一部の領域でデータが存在したため、データが保存されない可能性がある。データが保存されないということは、側色された一定個数の色サンプルで色が不足した場合、つまりデータが存在しない場合、あるいはターゲットデバイスで再現できない色であるときに発生する。ここで、側色とは、側色機で測定された色サンプルをいう。データが存在しない領域は、周囲領域のデータと補間法を用いて、その領域でのデータを計算することはできるが、データが存在しない領域が連続して存在する場合には、その領域でのデータを計算し難いという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記のような従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、球座標系及び補間法を用いて色域境界検出及び検出された色域境界を利用して色域マッピングを行うことで、正確な色域境界検出及びマッピングが可能な色域境界検出装置、色域境界検出方法及び色域マッピング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するための本発明に係る色域境界検出装置は、入力される色サンプルの色座標値を球座標系の値(γ、θ、α)に変換する色座標変換部と、前記球座標系を所定個数に均等に分割したセグメントのうち、色座標値が存在しないセグメントが存在する場合、隣接した色座標値を利用して色座標値を追加する補間部と、前記分割したセグメント毎にセグメントに位置する色座標値のうち前記半径γが最も大きい色座標値を検出する判断部と、前記検出した半径γが最も大きい色座標値に基づいて、前記セグメント毎に各セグメントの中心に最も隣接した半径が最も大きい色座標値を検出し、色域境界を検出する色域検出部と、を備える。
【0015】
前記分割されたセグメント毎に色座標値を保存し、前記判断部で検出した半径が最も大きい色座標値を保存する保存部をさらに備えることが好ましい。
【0016】
前記色域検出部は、特定角度であるαを有する平面のセグメントのうち、セグメント毎に前記θが中心である点を計算し、セグメント毎に特定角度であるα及び前記θが中心である点を基準に、左右の色座標値のうち誤差が最も小さい色座標値を選定する計算部と、前記選定した色座標値と前記特定角度を有する平面の交点を検出する交点検出部と、を備えることが好ましい。
【0017】
前記検出した色域境界を利用してソースデバイスの色域をターゲットデバイスの色域にマッピングするマッピング部を備えることが好ましい。
【0018】
本発明に係る色域境界検出方法は、(a)入力される色サンプルの色座標値を球座標系の値(γ、θ、α)に変換するステップと、(b)前記球座標系を所定個数に均等に分割したセグメントのうち、色座標値が存在しないセグメントが存在する場合、隣接した色座標値を利用して色座標値を追加して補間するステップと、(c)前記分割されたセグメント毎にセグメントに位置する色座標値のうち前記半径γが最も大きい色座標値を検出するステップと、(d)前記検出した半径が最も大きい色座標値に基づいて、前記セグメント毎に各セグメントの中心に最も隣接した前記半径が最も大きい色座標値を検出し、色域境界を検出するステップと、を含む
【0019】
前記入力色サンプルの色座標値がLab色座標値である場合、式(2)によって色座標変換することが好ましい。
【0020】
【数2】

【0021】
ここで、γ、θ、αは球座標系の値を示し、L、a、bはLab座標系の値を示し、LE、aE、bEはLab座標系の任意の基準値を示す。
【0022】
前記分割したセグメントの色座標値を保存し、前記検出した最も大きい半径を有する色座標値を保存するステップをさらに含むことが好ましい。
【0023】
前記(d)ステップは、特定角度であるαを有する平面のセグメントのうちセグメント毎にθが中心である値を計算し、セグメント毎に前記特定角度であるα及び前記θが中心である点を基準に、左右の色座標値のうち誤差が最も小さい色座標値を選定するステップと、前記選定した色座標値と特定角度を有する平面の交点を検出するステップと、を含むことが好ましい。
【0024】
本発明の色域マッピング方法は、本発明に係る色域境界検出方法で検出した色域境界を利用して、ソースデバイスの色域をターゲットデバイスの色域にマッピングさせる。
【0025】
前記ソースデバイスのオリジナル映像を、前記特定角度であるαを有する平面の中心と前記ソースデバイスのオリジナル映像を通る直線と前記検出された色域境界との交点にマッピングさせることが好ましい。
【0026】
本発明に係る色域境界検出方法は、色域を示すデータを受信するステップと、少なくとも一つの球座標系と補間を利用して前記色域の境界を検出するステップと、を含む。
【0027】
前記少なくとも一つの球座標系と補間を利用して前記色域の境界を検出するステップは、カラーデータを含まないセグメントに対し、カラーデータを保管するステップと、前記カラーデータを利用して色域の境界を検出するステップと、を含むことが好ましい。
【0028】
前記色域を示すデータが色座標値であることが好ましい。
【0029】
前記色域境界を利用してソースデバイスの色域を前記ターゲットデバイスの色域にマッピングするステップをさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
前記のように、本発明は、球座標系を利用する方法と異なって、データが存在しないセグメントが存在せず、補間法を用いる方法と異なって、補間法によって計算された仮想サンプルではなく、実際の色域境界サンプルを利用して正確な色域境界記述子(GBD)を作製することができる。
【0031】
そして、色サンプルに対するα平面製作の際に、色域境界記述子の誤差が最も小さいデータを利用することによって、正確な色域境界を検出することができる。正確な色域境界を検出することで、色域マッピングを正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。
なお、色を再現するカラーデバイスであるターゲットデバイスは、プリンタを例にして説明する。
【0033】
図3は、本実施形態に係る色域境界検出及び色域マッピング装置を示すブロック図である。
図3に示すように、色域境界検出及びマッピング装置は、色座標変換部100、補間部200、判断部300、色域検出部400、マッピング部500及び保存部600を備える。色域検出部400は、計算部401及び交点検出部403を備える。
【0034】
まず、色座標変換部100は、側色機で測定した入力色サンプルの色座標系値を球座標系の値に変換し、色座標系を所定個数のセグメントに分割してセグメントを初期化する。即ち、N×N×Nの入力色サンプルを用意し、この入力色サンプルをターゲットデバイスであるプリンタで出力した後、側色機で測定する。
【0035】
測定した色サンプルのCIE−Lab座標系の値を、球座標系変換式を利用して球座標系の値に変換する。そして、球座標系形式γ、θ、αに変換した色座標値を所定個数のセグメントに分割し、分割したセグメントの球座標系値のうち半径γを0にし、セグメントを初期化する。ここで、セグメントの分割は、θ、α値を基準に分割する。
【0036】
補間部200は、補間法を用いて入力色サンプルを拡張する。即ち、分割したセグメントに色座標値が存在しない場合、そのセグメントに色座標値を追加する補間を行う。色域境界を検出するために、入力色サンプルから色域境界サンプルを検出するが、入力色サンプルから色域境界サンプルを検出できない領域では、周囲の色座標系値を利用して色域境界サンプルを検出する補間を行う。
【0037】
判断部300は、各セグメントに対し、保存しているγ値と、球座標系変換式によって計算したγ`値を比較し、γ`値がγ値より大きい場合には、γ`を保存部600に保存する。ここで、各セグメントに対し、保存している初期のγ値は、色座標変換部100でのセグメント初期化によって0になる。
【0038】
詳しくは、判断部300は、セグメント毎に存在するデータのうち、保存部600に保存している半径と球座標系形式に変換した値のうちの半径を相互比較する。即ち、色座標変換部100で変換した球座標系の値からθ、α値を基準に分割した各セグメントのうちの特定セグメントを選択し、選択したセグメントγと計算したγ`を比較して大きい値を保存する。これにより、判断部300は、各セグメントで最も大きい半径を有する球座標系の値を保存する。
【0039】
色域検出部400は、計算部401及び交点検出部403を備えており、補間部200で検出する色域境界の色座標値を利用して、ターゲットデバイスの色域をLCH色座標に変換する。
【0040】
計算部401は、検出した色域境界色座標値からα値を計算し、αを含むセグメントでセグメント毎にθの中心であるθcを計算する。
なお、計算部401は、セグメント毎にα、θcを中心に左右のデータのうち最小の誤差を有するデータを検出する。
【0041】
交点検出部403は、計算部401で計算した最初の誤差を有するデータと、計算したα平面との交点を検出する。この交点検出部403で検出した交点は、LCH色空間において色相が一定である色域境界値に該当する。即ち、検出した交点は、LC平面上における色域境界値に該当する。
【0042】
マッピング部500は、LCH色域空間において、交点検出部403で検出した交点などを連結した平面、つまりα平面を利用してソースデバイスのオリジナル映像などをマッピングする。ソースデバイスのオリジナル映像がターゲットデバイスの色域境界の外側にある場合、α平面の中心とソースデバイスのオリジナル映像を通る直線とターゲットデバイスの色域境界の交点にソースデバイスのオリジナル映像をマッピングする。
【0043】
保存部600は、判断部300でセグメント毎に検出した最も大きい半径γを有する球座標系の値を保存する。詳しくは、保存部600は、色座標変換部100で分割したセグメントを初期化した値を保存し、保存部600に保存された半径γの値と球座標系変換式を利用して計算した半径γの値を比較して大きい方を保存部600に保存する。
【0044】
図4は、本実施形態に係る色域境界検出及び色域マッピング装置によって検出された色域を示す図である。
【0045】
図4は、入力色サンプルの色座標値を球座標系形式に変換して所定個数のセグメントに分割した後、補間法を用いてデータが存在しないセグメントにデータを追加して、検出された色域境界を示す。
【0046】
図5A及び図5Bは、各々本発明の一実施形態に係る色域境界検出及び色域マッピングデバイスの色域検出部及びマッピング部の動作を説明するための図である。
【0047】
図5Aは、本実施形態に係る色域検出部の動作を説明するための図である。図5Bは、本実施形態に係るマッピング部の動作を説明するための図である。
【0048】
ここで、D1はターゲットデバイスの色域の外側に位置するソースデバイスのオリジナル映像であり、D2は、D1をターゲットデバイスの色域境界にマッピングした映像である。また、D3はLC平面上におけるαc平面の中心を示す。
【0049】
図5Aに示すように、色域検出部400は、色座標変換部100、補間部200及び判断部300で検出したターゲットデバイスの色域境界をLCH色空間のLC平面に表示する。
【0050】
まず、色域検出部400の計算部401は、検出したターゲットデバイスの色域境界でα値を計算する。このとき計算したα値をαcという。そして、αcを含む各々のセグメントでθが中心である点を検出する。ここで、θが中心である点をθcという。セグメント毎にαcとθcを基準に左右のデータのうちαc及びθcと誤差が最も小さいデータを検出する。これは、LC平面においてターゲットデバイスの色域境界記述子セグメントの中心と誤差が小さいデータを検出して色域境界を記述することによって、正確な色域境界を記述するためである。
【0051】
交点検出部403は、計算部401で検出した誤差が最も小さいデータとαc平面の交点を検出し、LCH色空間のLC平面上でαc平面を記述する。このように、色域検出部400は、色座標変換部100、判断部300及び補間部200で検出した色域境界の色座標値を利用してターゲットデバイスの色域境界がLC平面で正確に記述されるようにする。
【0052】
図5Bに示すように、マッピング部500は、LCH色空間で記述される色域境界において、ソースデバイスのオリジナル映像D1とαc平面の中心D3を通る直線の方程式を計算する。そして、計算した直線の方程式を利用して直線上に存在するαc平面の境界の値にソースデバイスのオリジナル映像をマッピングさせる。つまり、ソースデバイスのオリジナル映像であるD1は、D1とαc平面の中心であるD3を連結する直線とαc平面の境界の交点であるD2にマッピングされる。
【0053】
図6は、本発明の一実施形態に係る色域境界検出方法を説明するフローである。
【0054】
図6に示すように、まず用意した任意の色域サンプルのLab値を球座標系の値に変換する(S601)。用意した任意の色サンプルをターゲットデバイスであるプリンタで出力し、出力した色サンプルを側色機によってLab値を測定する。なお、測定したLab値を球座標系形式(γ、θ、α)に変換する。ここで、入力色サンプルのLab値は、式(3)によって球座標系形式に変換される。
【0055】
【数3】

【0056】
式(3)において、γ、θ、αは球座標系の値を示し、L、a、bはLab座標系の値を示す。なお、LE、aE、bEはLab座標系の任意の基準値であって、ここでは、LE、aE、bEを50,0,0とする。
【0057】
次に、変換した球座標系を所定個数のセグメントに分割し、分割したセグメントを初期化する(S603)。所定個数に分割した色サンプルのセグメントのγ値である半径を0とし、セグメントを初期化する。このように初期化したセグメントの球座標系の値は保存部600に保存される。このような色サンプルの球座標系形式への変換、セグメントへの分割及びセグメントの初期化は色座標変換部100で行われる。
【0058】
次に、データが存在しないセグメントがあるか否かを判断する(S605)。
【0059】
次に、色座標値に対するデータが存在しないセグメントがあると判断した場合(ステップS605で「Y」)には、様々な補間法を用いてデータが存在しないセグメントのデータを生成する(S607)。セグメントにデータが存在しない場合、周りに位置するデータを使用して様々な補間法を用いてデータを生成する。このとき生成されるデータはLab色座標値である。
【0060】
補間法によって生成したデータを有するセグメントを含む色サンプルを再びターゲットデバイスであるプリンタで出力して側色機でLab値を測定し、測定したLab値を入力色サンプルで追加するデータとして使用する(S609)。
【0061】
次に、球座標系形式に変換した色サンプルのθ、α値を基準に分割した各セグメントのうちの特定セグメントを選択し、選択した特定セグメントで一定条件に従って保存部600に保存されたセグメントの色座標値を更新する(S611)。そして、選択した特定セグメントに存在する色座標値を球座標系形式に変換する際に、保存部600に保存された特定セグメントのγ値と、特定セグメントに存在する色座標値のうちの式(3)を用いて変換したγ`値を比較する。γ値とγ`値を比較した結果、γ`値がγ値より大きい場合には、大きい値であるγ`を保存部600に保存する。そして、特定セグメントに他の色座標値が存在する場合には、再び式(3)を用いて変換した色座標値のうちのγ``値を保存部600に既に保存されているγ`値と比較する。γ``値がγ`値より大きい場合、特定セグメントの半径をγ``値に更新して保存部600に保存する。即ち、特定セグメントに存在する色座標値のうち最も大きい半径を有する色座標値を保存部600に保存する。
【0062】
これは、各セグメントで最も大きい半径を保存し、色域境界に近接した色座標値を検出して、色域境界を検出するためである。
【0063】
一方、色座標値に対するデータが存在しないセグメントがないと判断した場合(ステップS605で「N」)には、補間を行い、データを追加する必要がない。従って、特定セグメントに存在する色座標値のうち最も大きい半径を有する色座標値を保存部600に保存する(ステップS611)。
【0064】
次に、色サンプルのα値を計算し、計算したα値を含むセグメント毎にθ値の中心点を選定する(S613)。このとき、計算したαをαcといい、セグメント毎にθが中心である点をθcという。
【0065】
次に、α値を含むセグメント毎にαc及びθcを中心に左右のデータのうちの誤差が最も小さいデータを検出する(S615)。これは、誤差が最も小さいデータを使用して、ターゲットデバイスの色域境界をLCH色空間に記述するためである。
【0066】
次に、検出した誤差が最も小さいデータとαc平面の交点を検出する(S617)。検出した誤差が最も小さいデータとαc平面の交点を検出することによってLCH色空間のLC平面でαc平面を記述する。
【0067】
図7は、本発明の一実施形態に係る色域マッピング方法を説明するためのフローである。
【0068】
図7に示すように、検出したターゲットデバイスの色域境界を利用してソースデバイスの色域をターゲットデバイスの色域にマッピングすることができる。まず、検出した色域の中心、つまりαc平面の中心とαc平面上にないソースデバイスのオリジナル映像とを通る直線の方程式を計算する(S701)。
【0069】
次に、αc平面の境界と計算した直線の交点を検出する(S703)。
【0070】
次に、αc平面上にないソースデバイスのオリジナル映像を検出した交点にマッピングさせる(S705)。ソースデバイスのオリジナル映像がαc平面上にない場合には、ソースデバイスのオリジナル映像がターゲットデバイスで再現できるようにオリジナル映像をターゲットデバイスの色域にマッピングする必要がある。αc平面上にないソースデバイスのオリジナル映像を、αc平面の中心方向にターゲットデバイスの色域境界にマッピングさせる。
【0071】
図8は、本実施形態に係る色域境界検出方法が適用された結果を示す図である。
【0072】
図8は、球座標系の値に変換された色サンプルを16×16個数のセグメントに分割した場合、セグメントに存在する色サンプルを示している。入力色サンプルを球座標系の値に変換した後、色サンプルを有しない色域境界に該当するセグメントに補間法を用いてデータを追加し、入力色サンプルが拡張された場合である。その結果、色域境界に該当するセグメントに複数のデータが存在するようになり、正確な色域境界を検出することができる。
【0073】
なお、上記実施形態は、本願発明を限定するものではなく、本願発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載により定めなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、色域境界検出装置、色域境界検出方法及び色域マッピング方法を利用して、色域境界検出を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】一般の色域マッピングを説明するための図である。
【図2A】補間法を用いた色域境界検出法を説明するための図である。
【図2B】球座標系を用いた色域境界検出法を説明するための図である。 従来の色域境界検出法を説明するための図である。
【図3】本実施形態に係る色域境界検出及び色域マッピング装置を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る色域境界検出及び色域マッピング装置によって検出された色域を示す図である。
【図5A】本実施形態に係る色域検出部の動作を説明するための図である。
【図5B】本実施形態に係るマッピング部の動作を説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る色域境界検出方法を説明するフローである。
【図7】本発明の一実施形態に係る色域マッピング方法を説明するためのフローである。
【図8】本実施形態に係る色域境界検出方法が適用された結果を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
100 色座標変換部
200 補間部
300 判断部
400 色域検出部
401 計算部
403 交点検出部
500 マッピング部
600 保存部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される色サンプルの色座標値を球座標系の値(γ、θ、α)に変換する色座標変換部と、
前記球座標系を所定個数に均等に分割したセグメントのうち、色座標値が存在しないセグメントが存在する場合、隣接した色座標値を利用して色座標値を追加する補間部と、
前記分割したセグメント毎にセグメントに位置する色座標値のうち前記半径γが最も大きい色座標値を検出する判断部と、
前記検出した半径γが最も大きい色座標値に基づいて、前記セグメント毎に各セグメントの中心に最も隣接した半径γが最も大きい色座標値を検出し、色域境界を検出する色域検出部と、
を備えることを特徴とする色域境界検出装置。
【請求項2】
前記分割したセグメント毎に色座標値を保存し、前記判断部で検出した半径が最も大きい色座標値を保存する保存部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の色域境界検出装置。
【請求項3】
前記色域検出部は、特定角度であるαを有する平面のセグメントのうち、セグメント毎に前記θが中心である点を計算し、セグメント毎に特定角度であるα及び前記θが中心である点を基準に、左右の色座標値のうち誤差が最も小さい色座標値を選定する計算部と、
前記選定した色座標値と前記特定角度を有する平面の交点を検出する交点検出部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の色域境界検出装置。
【請求項4】
前記検出した色域境界を利用してソースデバイスの色域をターゲットデバイスの色域にマッピングするマッピング部を備えることを特徴とする請求項1に記載の色域境界検出装置。
【請求項5】
(a)入力される色サンプルの色座標値を球座標系の値(γ、θ、α)に変換するステップと、
(b)前記球座標系を所定個数に均等に分割したセグメントのうち、色座標値が存在しないセグメントが存在する場合、隣接した色座標値を利用して色座標値を追加して補間するステップと、
(c)前記分割したセグメント毎にセグメントに位置する色座標値のうち前記半径γが最も大きい色座標値を検出するステップと、
(d)前記検出した半径が最も大きい色座標値に基づいて、前記セグメント毎に各セグメントの中心に最も隣接した前記半径が最も大きい色座標値を検出し、色域境界を検出するステップと、
を含むことを特徴とする色域境界検出方法。
【請求項6】
前記入力色サンプルの色座標値がLab色座標値である場合、式(1)によって色座標変換することを特徴とする請求項5に記載の色域境界検出方法。
【数1】

ここで、γ、θ、αは球座標系の値を示し、L、a、bはLab座標系の値を示し、LE、aE、bEはLab座標系の任意の基準値を示す。
【請求項7】
前記分割したセグメントの色座標値を保存し、前記検出した最も大きい半径γを有する色座標値を保存するステップをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の色域検出方法。
【請求項8】
前記(d)ステップは、
特定角度であるαを有する平面のセグメントのうちセグメント毎にθが中心である値を計算し、セグメント毎に前記特定角度であるα及び前記θが中心である点を基準に、左右の色座標値のうち誤差が最も小さい色座標値を選定するステップと、
前記選定した色座標値と特定角度を有する平面の交点を検出するステップと、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の色域境界検出方法。
【請求項9】
請求項5の色域境界検出方法で検出した色域境界を利用して、ソースデバイスの色域をターゲットデバイスの色域にマッピングさせる色域マッピング方法。
【請求項10】
前記ソースデバイスのオリジナル映像を、前記特定角度であるαを有する平面の中心と前記ソースデバイスのオリジナル映像を通る直線と前記検出された色域境界との交点にマッピングさせることを特徴とする請求項9に記載の色域マッピング方法。
【請求項11】
色域を示すデータを受信するステップと、
少なくとも一つの球座標系と補間を利用して前記色域の境界を検出するステップと、
を含むことを特徴とする色域境界検出方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つの球座標系と補間を利用して前記色域の境界を検出するステップは、
カラーデータを含まないセグメントに対し、カラーデータを保管するステップと、
前記カラーデータを利用して色域の境界を検出するステップと、
を含むことを特徴とする請求項11に記載の色域境界検出方法。
【請求項13】
前記色域を示すデータが色座標値であることを特徴とする請求項11に記載の色域境界検出方法。
【請求項14】
前記色域境界を利用してソースデバイスの色域を前記ターゲットデバイスの色域にマッピングするステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の色域境界検出方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−94512(P2006−94512A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273996(P2005−273996)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】