説明

色変換膜及びこれを用いたエレクトロルミネッセンス素子

【課題】発光体層(2)からの光の色変換効率を改善して、輝度を向上した色変換膜及びこれを用いたエレクトロルミネッセンス(EL)素子を提供する。
【解決手段】本発明の色変換膜は、蛍光色素が無機酸化物媒体に分散され、前記無機酸化物媒体の分散体がさらに樹脂に分散されている。本発明のEL素子(30)は、対向する2つの電極(2,11)間に少なくとも発光層(5)を備え、光取り出し側に色変換膜(13a,13b,13c)と表面基板(11)を含み、前記2つの電極のうち表面基板側の電極(7)を透明電極とし、色変換膜(13a,13b,13c)は、蛍光色素(15a,15c)が無機媒体に分散され、前記無機媒体分散体の粒子(14a,14c)がさらに樹脂に分散されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換膜及びこれを用いたエレクトロルミネッセンス(EL)素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイデバイスとして平面型のディスプレイが注目されており、一例としてプラズマディスプレイが実用化されている。プラズマディスプレイは大型化が容易であること、高い輝度が得られること、視野角が広いことなどから注目されている。しかし、ディスプレイの構造が複雑であり、その製造工程も複雑であるため、改良が進んではいるものの現時点ではまだ高価なものとなっている。
【0003】
また、エレクトロルミネッセンス(EL)現象を利用するディスプレイも提案されている。無機ELでは半導体の無機蛍光体に電極を配置し、電圧印加により無機蛍光体の電子とホールの再結合又は励起子により発光するか、又は半導体中の加速された電子が発光中心に衝突し、発光中心となる原子又はイオンが励起され、それが元の状態に戻る際に発光するものである。EL素子は、上下電極間に蛍光体層を挟み、前記蛍光体層に電界をかけることにより発光する原理を利用して、文字や画像(以下「画像等」という。)を表示する。単一光表示はもちろん可能であるが、単一光を色変換膜により色変換してフルカラー表示することもできる。ところが、色変換をするに際しては、光変換効率が低下し、輝度が低下する問題がある。
【0004】
この問題を解決するため、発光面側に透光性層と色変換膜とを設け、色変換膜の屈折率を透光性層の屈折率より大きくし、色変換膜と透光性層との界面を凹凸にする提案がある(下記特許文献1)。別の提案として、有機ELの光取り出し側の電極から基板までの屈折率を特定の順番に配列する例もある(下記特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−284705号公報
【特許文献2】国際公開WO 02/17689A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、色変換膜は、基本的に樹脂をベースとするものであり、色素を樹脂に微分散させるのは困難である。その結果、色素同士の凝集によって色変換効率が妨げられて輝度が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は前記従来の問題を解決するため、発光体層からの光の色変換効率を改善して、輝度を向上した色変換膜及びこれを用いたEL素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の色変換膜は、蛍光色素が無機酸化物媒体に分散され、前記無機酸化物媒体分散体粒子がさらに樹脂に分散されている。
【0008】
本発明のEL素子は、対向する2つの電極間に少なくとも発光層を備え、光取り出し側に色変換膜と表面基板を含み、前記2つの電極のうち表面基板側の電極を透明電極としたEL素子において、前記色変換膜は、蛍光色素が無機酸化物媒体に分散され、前記無機酸化物媒体の分散体がさらに樹脂に分散されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の色変換膜は、蛍光色素が無機媒体に分散され、前記無機媒体分散体粒子がさらに樹脂に分散されていることにより、蛍光色素は微分散した状態で存在し、各蛍光色素粒子の色変換効率を高め、色変換した光の衝突による消光作用を防ぎ、発光体層からの光の色変換効率を改善して、輝度を向上した色変換膜及びこれを用いたEL素子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
前記色変換膜は、蛍光色素が無機媒体に分散され、前記無機媒体分散体粒子がさらに樹脂に分散されている。蛍光色素は、顔料や染料など一般的に使用されている蛍光色素を用いる。例えば発光層から発光する青色光を緑色光に変換するには、クマリン540(3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7ジエチルアミノクマリン)があり、青色光を赤色光に変換するには、DCM(4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン)がある。また青色はそのまま透過させればよいので、無色透明の樹脂層とする。
【0011】
前記無機媒体分散体粒子の平均粒子径は、2μm以上10μm以下の範囲が好ましい。この範囲であれば、樹脂と混合する際も凝集を起こすことがなく、色変換効率を高く保てる。
【0012】
前記無機媒体分散体粒子における蛍光色素の割合は、1重量%以上50重量%以下の範囲が好ましい。蛍光色素の微分散を良好に保つためである。
【0013】
前記色変換膜における無機媒体分散体粒子の割合は、5重量%以上80重量%以下の範囲が好ましい。この範囲であれば色変換効率を良好に保つことができる。
【0014】
前記色変換膜は例えば次のようにして製造する。まず蛍光色素を溶液に分散した溶液と、シリカ粒子を含む分散溶液を混合し、乾燥し、焼成し、焼結体とする。この焼結体を粉砕して平均粒子径2〜10μmの粒子を得る。これが無機媒体分散体粒子である。この無機媒体分散体粒子を、例えばメチルメタクリレート(PMMA)、スチレンなどの透明樹脂に分散し、ペーストを作成し、スクリーン印刷法等で各色変換膜にパターニングする。一例として乾燥後の厚みは5〜20μm程度である。
【0015】
色変換膜にはブラックマトリックスを配置させてもよい。
【0016】
本発明のEL素子は、対向する2つの電極間に少なくとも発光層を備える。前記発光層は、無機又は有機の蛍光体等の発光物体を層状にしたものである。前記発光層の両側又は片側には電気絶縁層(誘電体層)を配置してもよい。無機蛍光体の場合は、対向する2つの電極間に誘電体層を設け、キャパシターの原理を用いて電界により発光させる。
【0017】
色変換膜は、発光層よりも観察面側基板に形成される。また、色変換膜と前記発光層との間には透明電極を介在させる。
【0018】
透明電極には、厚みが200〜300μmのインジウム−スズ酸化物合金(ITO)からなる透明電極層を用いる。
【0019】
発光層に使用可能な発光物質としては、例えばZnS:Ag,ZnS:Cu,ZnS:Mn,SrS:Ce:Eu,ZnS:Sm:Cl,CaS:Eu,ZnS:Tb:F,CaS:Ce,ZnMgS:Mn,CaGa24:Ce,SrS:Cu,CaS:Pb,BaAl24:Eu,Y23:Eu,Ca2Ge27:Mn等の蛍光体として一般に知られているものを用いることができる。
【0020】
前記誘電体層としては、Y23,Li2O,MgO,CaO,BaO,SrO,Al23,SiO2,MgTiO3,CaTiO3,BaTiO3,SrTiO3,ZrO2,TiO2,B23,PbTiO3,PbZrO3,PbZrTiO3(PZT)の少なくとも1種類を使用できる。さらに、両電極間には強誘電体層を介在させ、さらに発光効率を上げる手段を講じてもよい。
【0021】
(実施形態1)
以下図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態におけるEL素子の透明基板と色変換膜からなる光取り出し部20の断面図である。この光取り出し部20は、前記のように、ガラス透明基板11の上に前記ブラックマトリックス12が形成され、その上にG,B(無色透明、発光層は青色発光のため色変換は不要),Rからなる色変換膜13a,13b,13cが形成されている。
(1)蛍光色素の無機媒体分散体の作成
A液
(a)ベンジルアルコール:50g
(b)緑色変換膜用色素、Exciton社製、クマリン540:0.3g
(c)赤色変換膜用色素、Exciton社製、DCM:0.3g
(d)青色、なし(無色透明の樹脂層)
B液
(a)60重量%硝酸:0.1g
(b)イソプロピルアルコール:30g
(c)ブタノール:30g
(d)純水:1g
(e)SiO2:2g
(f)ZrO2:1g
(g)メチルシリケート:0.5g
前記A液とB液をぞれぞれ60℃、1時間攪拌した後、混合し、170℃まで1時間かけて昇温し、溶媒を除去し、170℃で3時間焼成した。その後、室温まで冷却し、粉砕して平均粒子径2〜10μmの粒子(14a,14c)を得た。15a,15cは蛍光色素である。
(2)色変換膜の作成
以下の成分を90℃で1時間混合し、塗材ペーストを作成した。
(a)前記蛍光色素の無機媒体分散体粒子:4g
(b)透明バインダー樹脂
ポリメチルメタクリレート粉末(PMMA:住友化学工業製、屈折率1.49):2g(c)溶媒
ブチルカルビトールアセテート:10g
(1−2)コーティング方法
ガラス基板の表面に、グラファイトとPMMAを含む厚さ2μm、幅50μm、ピッチ間隔150μmのブラックマトリックスを形成した。このブラックマトリックスの上に前記ピッチ間隔をまたいで、前記緑と赤と無色のペーストをスクリーン印刷法によりG,B(無色),Rの順番に各々印刷し、溶媒を徐々に蒸発させ、170℃、60分で乾燥した。乾燥後の膜厚は15μmであった。
【0022】
図2は本発明の一実施形態におけるEL素子の背面側基板から透明電極の上の透光性樹脂保護層までの発光部10を示す断面図である。まず、背面ガラス1の上に10μmの厚みの銅配線からなる背面電極2をストライプ状に平行に形成した。その上に、厚み30μmのBaTiO3からなる誘電体層3と、厚み0.6μmのBaTiO3有機酸からなる平滑層4と、その上に厚み0.6μmのBaAl24:Euからなる蛍光体発光層5と、厚
み0.5μmのAl23からなる拡散防止層6を形成した。その上に厚み0.5μm、幅150μmのインジウム−スズ酸化物合金(ITO)層(屈折率n1=2.1)からなる透明電極7を背面電極2と直交する方向にストライプ状に平行に形成した。背面電極2から透明電極7まではスパッタリングにより形成した。
【0023】
次に図3に示すように、発光部10の上に光取り出し部20を位置合わせして置き、周囲をエポキシ樹脂で封止して表示素子30を組み立てた。
【0024】
このEL素子30に対して、1kHz、10μA、180Vの交流電圧を印加したところ、蛍光色素の無機媒体分散体を使用せず、蛍光色素を直接樹脂に混合した色変換膜に比べて、約20%の輝度向上が認められた。
【0025】
前記実施形態においては、色変換膜を無機EL素子に応用する例を示したが、本発明の色変換膜は、無機EL素子以外にも、有機EL素子、液晶表示素子、プラズマディスプレイ表示素子(PDP)、フィールドエミッション表示素子(FED)、陰極線管表示素子(CRT)等のカラーディスプレイに応用できる。また、照明装置にも応用でき、例えば青色発光をオレンジ色に変換して目にやさしい光とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態1における光取り出し部の断面図である。
【図2】本発明の実施形態1におけるEL素子の発光部を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態1におけるEL素子の断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 背面ガラス
2 背面電極
3 誘電体層
4 平滑層
5 蛍光体発光層
6 拡散防止層
7 透明電極
10 光取り出し部
11 透明基板
12 ブラックマトリックス
13a,13b,13c 色変換膜
14a,14c 無機酸化物分散体粒子
15a,15c 蛍光色素
20 発光部
30 EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光色素が無機酸化物媒体に分散され、前記無機酸化物媒体分散体の粒子がさらに樹脂に分散されている層を含む色変換膜。
【請求項2】
前記無機酸化物媒体分散体粒子の平均粒子径は、2μm以上10μm以下の範囲である請求項1に記載の色変換膜。
【請求項3】
前記無機酸化物媒体分散体における蛍光色素の割合は、1重量%以上50重量%以下の範囲である請求項1に記載の色変換膜。
【請求項4】
前記色変換膜における無機酸化物媒体分散体粒子の割合は、5重量%以上80重量%以下の範囲である請求項1に記載の色変換膜。
【請求項5】
対向する2つの電極間に少なくとも発光層を備え、光取り出し側に色変換膜と表面基板を含み、前記2つの電極のうち表面基板側の電極を透明電極としたEL素子において、
前記色変換膜は、請求項1〜4のいずれかに記載の色変換膜である特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−40642(P2006−40642A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216373(P2004−216373)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(503217783)松下東芝映像ディスプレイ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】