色空間変換装置、画像処理装置、画像表示装置及び色空間変換方法
【課題】画像の色味等を高精度に調整できる色空間変換装置等を提供する。
【解決手段】HLS信号をYUV信号に変換する第2色空間変換回路140は、彩度調整回路80と、第1色差出力器75及び第2色差出力器76とを備える。彩度調整回路80は、HLS信号に含まれる色相信号に応じて、HLS信号に含まれる彩度信号を調整する。第1色差出力器75及び第2色差出力器76は、色相信号と、彩度調整回路80によって調整された彩度信号とに基づいて、YUV信号に含まれる色差信号を生成する。
【解決手段】HLS信号をYUV信号に変換する第2色空間変換回路140は、彩度調整回路80と、第1色差出力器75及び第2色差出力器76とを備える。彩度調整回路80は、HLS信号に含まれる色相信号に応じて、HLS信号に含まれる彩度信号を調整する。第1色差出力器75及び第2色差出力器76は、色相信号と、彩度調整回路80によって調整された彩度信号とに基づいて、YUV信号に含まれる色差信号を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色空間変換装置、画像処理装置、画像表示装置及び色空間変換方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
動画を含む各種画像を表示する画像表示装置では、画像信号を入力し、これをリアルタイムで処理し、表示している。表示や画像処理の簡略化を図るために、プロジェクターや、CRT(Cathode Ray Tube)や、LCD(Liquid Crystal Display)等の画像表示装置では、RGB形式の画像信号(RGB信号)やYUV形式の画像信号(YUV信号)が一般的に用いられる。RGB形式の画像信号は、R(赤)信号、G(緑)信号、B(青)信号により構成される。YUV形式の画像信号は、Y(輝度)信号、U(第1色差)信号、V(第2色差)信号により構成される。
【0003】
こうした画像表示装置に表示される画像の色相、明るさ、彩度等は、画像信号のソース(例えば、DVDプレーヤー等)で調整することができ、最近では、プロジェクター等の画像表示装置も、調整の仕組みを備えている。ところが、画像の色味や明るさ、鮮やかさ等を、ユーザーが調整しようとすると、これらの画像表示装置が標準で扱っているRGB信号やYUV信号等を直接調整することになる。このため、これらの信号では、1つの信号を強めたり弱めたりすると、その変化は他の色にまで影響が及び、所望の画像を得るための調整が困難であった。
【0004】
そこで、従来から、例えばカラースキャナー等では、標準画像のRGB信号を一旦HLS信号に変換して、標準色からのズレを計算し、これを用いて、読み込んだ画像の色調整を行っていた(例えば下記特許文献1参照)。HLS信号とは、物体色の標準として、H(色相)・L(明度)・S(彩度)で表されたマンセル表色系に即した信号である。HLS信号によりカラーコレクションを行う技術は、特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−18724号公報
【特許文献2】特開平11−69186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの技術は、いずれも画像処理系が本来持つズレやバランスのズレを補正するものである。このため、プロジェクターのような動画を扱うこともある画像表示装置において、リアルタイムで処理されている画像信号を、所望の状態に調整して表示することはできなかった。ユーザーからすれば、表示されている画像の色味、明るさ、鮮やかさ等を、好みに応じて調整したいのであって、RGB信号やYUV信号を調整したい訳ではない。従って、従来の画像表示装置では、こうしたユーザーの要望に応えることができないという問題があり、ユーザーによる画像の色味、明るさ、鮮やかさ等の調整は、できるだけ精度よく行うことができることが望ましい。
【0007】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様によれば、例えばユーザーの好みに応じて画像の色味等を高精度に調整できる色空間変換装置、画像処理装置、画像表示装置及び色空間変換方法等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様は、HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換装置が、前記HLS信号に含まれる彩度信号を、前記HLS信号に含まれる色相信号に応じて調整する彩度信号調整部と、前記色相信号と、前記彩度信号調整部によって調整された前記彩度信号とに基づいて、前記YUV信号に含まれる色差信号を生成する色差信号生成部とを含む。
【0009】
本態様においては、HLS信号は、色相、明度及び彩度の3つの要素で表される信号であり、YUV信号は、輝度、2つの色差の3つの要素で表される信号である。本態様によれば、HLS信号をYUV信号に変換する際に、変換前後で色相を変化させることなくYUV信号を構成する色差信号を生成することができる。そのため、調整後のHLS信号をYUV信号に正確にマッピングできない場合であっても、変換前後で色が変化して見えることなく、例えばユーザーの好みに応じて画像の色味等を高精度に調整できるようになる。
【0010】
(2)本発明の他の態様に係る色空間変換装置では、前記彩度信号調整部は、前記色相信号に対応した彩度最大値を生成する彩度最大値生成部と、前記彩度信号に対応した彩度値又は前記彩度最大値のうち小さい方を出力する比較部とを含み、前記色差信号生成部は、前記色相信号と前記比較部からの出力信号とに基づいて、前記色差信号を生成する。
本態様によれば、上記の効果に加えて、簡素な構成により、変換前後で色相を変化させることなくYUV信号を構成する色差信号を生成できるようになる。
【0011】
(3)本発明の他の態様に係る色空間変換装置では、前記彩度最大値生成部は、前記YUV信号に対応した色域の境界値における彩度成分を前記彩度最大値として出力する。
本態様によれば、HLS信号をYUV信号に変換する際にYUV信号に対応した色域全体を用いることができるので、上記の効果に加えて、より一層正確な色空間変換を行うことが可能となる。
【0012】
(4)本発明の一態様は、HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換装置が、前記HLS信号に含まれる色相信号及び彩度信号に基づいて、前記YUV信号に含まれる第1色差信号及び第2色差信号を生成する色差信号生成部と、前記第1色差信号の信号値と前記第2色差信号の信号値との比を維持しつつ、前記第1色差信号の信号値又は前記第2色差信号の信号値を前記YUV信号に対応した色域の境界値にクリッピングすることにより得られた前記第1色差信号及び前記第2色差信号を出力する色差信号調整部とを含む。
【0013】
本態様においては、HLS信号をYUV信号に変換する際に、変換前後で色相を変化させることなくYUV信号を構成する色差信号を生成することができる。そのため、調整後のHLS信号をYUV信号に正確にマッピングできない場合であっても、変換前後で色が変化して見えることなく、画像の色味等を高精度に調整できるようになる。
【0014】
(5)本発明の一態様は、画像処理装置が、YUV信号をHLS信号に変換する第1色空間変換部と、前記第1色空間変換部によって変換された前記HLS信号を構成する色相信号、明度信号及び彩度信号の少なくとも1つを調整し、調整後のHLS信号を出力する色調整部と、前記色調整部によって調整されたHLS信号をYUV信号に変換する上記のいずれか記載の色空間変換装置とを含む。
【0015】
本態様においては、YUV信号を一旦HLS信号に変換し、HLS信号の状態で色調整を行った後、色調整後のHLS信号をYUV信号に戻している。これにより、画像の色調整を、色相、明度、彩度の各要素において直感的に調整でき、且つ画像の色味等を高精度に調整できる画像処理装置を提供できるようになる。
【0016】
(6)本発明の一態様は、画像信号に基づいて画像を表示する画像表示装置が、前記画像信号に対応したHLS信号をYUV信号に変換する上記のいずれか記載の色空間変換装置を含み、前記色空間変換装置によって変換された前記YUV信号を用いて画像を表示する。
【0017】
本態様によれば、画像の色味等を高精度に調整できる画像表示装置を提供できるようになる。
【0018】
(7)本発明の一態様は、HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換方法が、前記HLS信号に含まれる色相信号に応じて、前記HLS信号に含まれる彩度信号を調整する彩度信号調整ステップと、前記色相信号と、前記彩度信号調整ステップにおいて調整された彩度信号とに基づいて、前記YUV信号に含まれる色差信号を生成する色差信号生成ステップとを含む。
【0019】
(8)本発明の一態様は、HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換方法が、前記HLS信号に含まれる色相信号及び彩度信号に基づいて、前記YUV信号に含まれる第1色差信号及び第2色差信号を生成する色差信号生成ステップと、前記第1色差信号の信号値と前記第2色差信号の信号値との比を維持しつつ、前記第1色差信号の信号値又は前記第2色差信号の信号値を前記YUV信号に対応した色域の境界値にクリッピングすることにより得られた前記第1色差信号及び前記第2色差信号を出力する色差信号調整ステップとを含む。
【0020】
上記のいずれかの態様においては、HLS信号をYUV信号に変換する際に、変換前後で色相を変化させることなくYUV信号を構成する色差信号を生成することができるようになる。従って、調整後のHLS信号をYUV信号に正確にマッピングできない場合であっても、変換前後で色が変化して見えることなく、例えばユーザーの好みに応じて画像の色味等を高精度に調整できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態における液晶プロジェクターの全体の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態における色空間変換回路の構成を示すブロック図である。
【図3】YUV信号とHLS信号との関係を示した説明図である。
【図4】YUV空間とHLS空間とを、輝度、明度の要素に対応するY軸及びL軸上から見た説明図である。
【図5】浮動小数点変換器における浮動小数点演算の一例を示した説明図である。
【図6】セレクター加算器が色相値を出力する算出方法を説明した説明図である。
【図7】セレクター加算器が行う色相値の算出方法を、概念的に説明する説明図である。
【図8】色調整回路の構成を示すブロック図である。
【図9】色相調整用画像を示した説明図である。
【図10】彩度調整用画像を示した説明図である。
【図11】彩度調整回路が行う処理の概念を示した説明図である。
【図12】YUV色空間及びHLS色空間をY軸及びL軸上から見た図である。
【図13】第1実施形態における第2色空間変換回路の構成を示すブロック図である。
【図14】Ph出力器が色相角と、象限値とを算出する算出方法を示した説明図である。
【図15】色相値に応じて彩度最大値生成回路が出力する彩度最大値の説明図である。
【図16】第1実施形態における第2色空間変換回路の動作説明図である。
【図17】第1色差出力器が行う演算の演算式を示した説明図である。
【図18】第2色差出力器が行う演算の演算式を示した説明図である。
【図19】第2実施形態における第2色空間変換回路の構成例のブロック図である。
【図20】第3実施形態における第2色空間変換回路の構成例のブロック図である。
【図21】第3実施形態における第2色空間変換回路の動作説明図である。
【図22】色差調整回路の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するために必須の構成要件であるとは限らない。
なお、以下では、本発明に係る色空間変換装置等が画像表示装置である液晶プロジェクターに適用される例を説明するが、本発明に係る画像表示装置は液晶プロジェクターに限定されるものではない。
【0023】
〔第1実施形態〕
図1に、本発明に係る第1実施形態における液晶プロジェクターの構成例のブロック図を示す。この液晶プロジェクター100は、光変調手段として液晶ライトバルブを採用したプロジェクターである。液晶プロジェクター100は、第1色空間変換回路110、色調整回路120、CPU130、第2色空間変換回路140を備えている。更に、液晶プロジェクター100は、液晶ライトバルブ駆動回路150、液晶ライトバルブ160、光源部170、投写レンズ180、操作制御部190、操作ボタン192を備えている。そして、液晶プロジェクター100は、第1色空間変換回路110に入力される画像信号に基づいて画像(動画)をスクリーン200に表示する。色調整回路120と、CPU130と、操作制御部190とは、内部バス102によって接続されている。画像信号は、図示しないビデオカメラやスキャナーやパーソナルコンピューター等の入力装置によってリアルタイムに第1色空間変換回路110に入力される。或いは、この画像信号は、図示しないコンピューターで読取可能な記憶媒体から第1色空間変換回路110に読み出されてもよい。ここで、コンピューターで読取可能な記憶媒体には、ROM、RAM、CD−ROM、DVD、FD、MD、メモリーカード等のいずれでもよい。
【0024】
第1色空間変換回路110は、YUV信号として入力されたデジタルの画像信号に対してYUV−HLS変換を行い、HLS信号として画像信号を出力する電気回路である。色調整回路120は、第1色空間変換回路110から入力されたHLS信号に対応する色相、明度、彩度の各信号(以下、これら各信号を、色相信号、明度信号、彩度信号とも呼ぶ)に対して色調整処理を行う回路である。具体的には、色調整回路120は、HLS信号に対応する色相を変更することが可能である。また、色調整回路120は、HLS信号に対応する明度及び彩度については、その各信号の出力ゲインの値を補正(以下、ゲイン補正とも呼ぶ)することが可能である。色調整回路120は、CPU130からのコマンドによって、色相の変更やゲイン補正を行う。
【0025】
CPU130は、図示しないROMに予め記憶した特定のプログラムを読み込んで、該プログラムに対応する処理を実行することで、各種の機能を実現することができる。例えば、CPU130は、このROMに記憶した特定のプログラムを読み込んで、該プログラムに対応する処理を実行することで、色調整指示部132の機能を実現することができる。この色調整指示部132は、上記の色調整回路120が行う処理内容を制御する。
【0026】
第2色空間変換回路140は、色調整回路120から入力されるHLS信号をYUV信号に変換(以下、HLS−YUV変換とも呼ぶ)して出力する回路である。第2色空間変換回路140に入力されるHLS信号は、上記のユーザーによる色調整によって、色相の変更及びゲイン補正がされた信号である。
【0027】
液晶ライトバルブ駆動回路150は、液晶ライトバルブ160を駆動する回路である。液晶ライトバルブ160は、液晶ライトバルブ駆動回路150で生成された信号を映像化する光変調素子である。具体的には、液晶ライトバルブ160は、光源部170から射出される光を、液晶ライトバルブ駆動回路150で生成された信号に基づいて変調して投写に必要な光をスクリーン200側へ向けて射出する。
【0028】
光源部170は、画像を投写するための光源であり、主に、光を発するランプ171と、このランプ171から発せられる光を平行光とするレンズ172とを有している。平行光は、液晶ライトバルブ160で変調された後、投写レンズ180に入射する。投写レンズ180は、光源部170から射出され、液晶ライトバルブ160で変調される光をスクリーンに拡大して表示させる。また、スクリーン200は、液晶プロジェクター100から投写される投写像を表示する投写面を有している。
【0029】
操作制御部190は、液晶プロジェクター100が投写した画像に対する色調整の指示を、操作ボタン192を通じてユーザーから受信し、内部バス102を介してCPU130に伝える。操作ボタン192は十字キーボタンと、決定ボタンとを備え、後述する色調整を行う際に、ユーザーはこれらのボタンを用いて画像の色調整を行う。なお、第1実施形態では、液晶プロジェクター100はユーザーからの指示を、操作制御部190及び操作ボタン192を介して受信しているが、これに限定されるものではない。例えばユーザーからの指示を、液晶プロジェクター100に備えた操作パネルや、液晶プロジェクター100に接続されたコンピューターが備えるマウスやキーボード等の外部操作機器を介して受信するものとしてもよい。
【0030】
図2に、図1の第1の色空間変換回路110の構成例のブロック図を示す。第1色空間変換回路110は、明度算出部10、彩度算出部20、色相算出部30を備えている。第1色空間変換回路110は、入力された画像信号に含まれる輝度信号(Y)、第1色差信号(U)、第2色差信号(V)を、明度信号(L)、彩度信号(S)、色相信号(H)に変換して出力する。なお、図示しない同期クロックが、各演算器に入力されており、回路間の動作を同期させているが、同期クロック信号については図示を省略している。従って、第1色空間変換回路110に入力されたYUV信号は、この同期クロックを用いたその一組の信号に対応したHLS信号として変換され、同期して出力される。
【0031】
ここで、YUV信号とHLS信号との関係について説明する。
図3に、YUV信号とHLS信号との関係の説明図を示す。図3に示すように、YUV信号は、画像信号を、輝度と、第1色差と、第2色差との3つの要素から成る3次元直交座標空間(以下、YUV色空間とも呼ぶ)で表した信号である。一方、HLS信号は、画像信号を、色相と、明度と、彩度との3つの要素から成る3次元極座標空間(以下、HLS色空間とも呼ぶ)で表した信号である。図3に示すように、YUV色空間上の輝度と、HLS色空間上の明度とは、両座標空間において軸方向が同じであり1対1の対応をしている。従って、輝度信号と明度信号とを同一の信号として扱うことができる。結果として、YUV信号として入力された画像信号を、HLS信号に変換することは、実質、画像信号に含まれる第1色差信号と第2色差信号とを、色相信号と彩度信号とに変換することに相当する。
【0032】
図4に、図3に示した両座標空間を輝度、明度の要素に対応するY軸及びL軸上から見た図を示す。
彩度信号は、YUV信号をYUV空間上のUV平面に射影した信号に対応している。また、色相信号は、このYUV空間における彩度信号と第1色彩信号とのなす角に対応した信号である。図3及び図4に示した、YUV空間とHLS空間との関係に基づいて、図2に示した第1色空間変換回路110はYUV−HLS変換を行っている。
【0033】
図2において、明度算出部10は、色空間変換回路110に入力された輝度信号(Y)に対応する値(以下、輝度値とも呼ぶ)を、そのまま明度信号(L)に対応した値(以下、明度値とも呼ぶ)に適用して、明度信号(L)として出力する。これは図3で示したように、YUV色空間上の輝度と、HLS色空間上の明度とは、両座標空間において1対1の対応をしていることに拠っている。換言すれば、入力された輝度信号(Y)を、そのまま明度信号(L)として出力する。なお第1実施形態において、輝度信号(Y)及び明度信号(L)は、ともに10ビットの階調データである。
【0034】
彩度算出部20は、第1色空間変換回路110に入力された第1色差信号(U)、及び第2色差信号(V)に基づいて、彩度信号(S)を出力する。彩度算出部20は、第1乗算器21、第2乗算器22、加算器23、浮動小数点変換器24、ルックアップテーブル25、彩度指数算出器26、ビットシフト演算器27を備える。なお、以下、ルックアップテーブルをLUTとも呼び、例えば、ルックアップテーブル25はLUT25とも表記する。
【0035】
以下、彩度算出部20が第1色差信号(U)と第2色差信号(V)とを、彩度信号(S)に変換するまでを信号の流れる順に沿って説明する。第1色差信号(U)及び第2色差信号(V)は、それぞれ10ビットの階調データである。このため、両信号はそれぞれ、(0〜1023)の信号値をとることになるが、信号値が(512)のとき、無色であることを示すものとして扱うので、以下、こうした場合には信号値を(−512〜511)と表記する。
【0036】
第1乗算器21は、入力された第1色差信号を(−512〜511)の階調データに変換後、信号値を、0(零)を中心とした対称性をもった階調値で表すため、(−512〜511)の階調データを(−511〜511)の階調データに丸め処理を行う。丸め処理後、第1乗算器21は第1色差信号の値(以下、第1色差値Uvとも呼ぶ)をべき乗した第1乗算値Uv2を算出する。第2乗算器22は、第1乗算器21と同様の処理を、入力された第2色差信号に対して行い、第2色差信号の値(以下、第2色差値Vvとも呼ぶ)をべき乗した第2乗算値Vv2を算出する。加算器23は、第1乗算器21及び第2乗算器22から出力された第1乗算値Uv2及び第2乗算値Vv2を互い加算した加算値、つまりUv2+Vv2の値を算出する。
【0037】
加算器23が出力した加算値に対して、平方根の値を算出し、HLS信号のスケールに正規化した値が彩度値Svとなる。正規化は、加算値の平方根の値を開平結果値Rとすると、開平結果値Rに√2を乗ずることで行う。このとき、彩度値Svと開平結果値Rとは式(1)で表される。
【0038】
浮動小数点変換器24は、加算値Uv2+Vv2、つまりR2の値に対応した信号が入力されると、R2の値に対して浮動小数点演算を行い、式(2)を満たす第1実数値Ks及び第1指数値Lsの値を算出する。またこのとき、第1指数値Lsの値を偶数の値として算出する。浮動小数点変換器24における浮動小数点演算の一例を図5に示した。
【0039】
Sv=√2*R ・・・(1)
R2=Ks/2Ls ・・・(2)
【0040】
次に、彩度値Svを、式(3)を満たす第2実数値Srと第2指数値Siとで表すと、式(1)〜式(3)により、第2実数値Sr及び第2指数値Siは、式(4)及び式(5)として表すことができる。なお、式(4)及び式(5)のnは、正の整数である。このnは、後述する各演算器による演算の性質上、出力される信号の値が小さくなり、その後の演算の精度が低下するのを回避する。演算の精度を確保するため、適宜、nに正の整数を代入し、演算によって出力される信号の値に対してビットシフトを行う。
【0041】
Sv=Sr/2Si ・・・(3)
Sr=2n*√2*√Ks ・・・(4)
Si=Ls/2+n ・・・(5)
【0042】
図2に示すLUT25は、浮動小数点変換器24から出力された第1実数値Ksの値に対して、式(4)を満たす第2実数値Srを読み出すLUTである。第1実施形態においては、(0〜2047)の値をとる第1実数値Ksに対応した第2実数値Srの値が、LUT25に記憶されている。
【0043】
彩度指数算出器26は、浮動小数点変換器24から出力された第1指数値Lsの値に対して、式(5)に示す演算処理を行い、第2指数値Siを算出する算出器である。上記したように、浮動小数点変換器24は、第1指数値Lsを偶数の値で出力している。よって、彩度指数算出器26が式(5)に示す演算処理を行う際に、小数の概念を含んだ演算を行う必要がない。また、彩度指数算出器26は第2指数値Siを整数値で出力する。
【0044】
ビットシフト演算器27は、LUT25から出力された第2実数値Sr及び彩度指数算出器26から出力された第2指数値Siから、式(3)を満たす彩度値Svを算出する演算器である。第2指数値Siは、彩度指数算出器26から整数値として出力されている。よってビットシフト演算器27は、式(3)の演算処理を行う際に、第2実数値Srの値に対してSi桁分のビットシフトを行うことで、彩度値Svを出力する。ここで、浮動小数点変換器24と、LUT25と、彩度指数算出器26と、ビットシフト演算器27とは、開平器に相当する。
【0045】
次に、色相算出部30について説明する。図2に示すように、色相算出部30は第1色差信号(U)、第2色差信号(V)、彩度算出部20で算出した第1実数値Ks、及び第2指数値Siに基づいて、色相信号(H)を出力する。色相算出部30は、LUT31、Ur乗算器33、Vr乗算器34、セレクター35、LUT36、セレクター減算器37、セレクター加算器38を備えている。
【0046】
ここで、第1色差値Uv、第2色差値Vv、開平結果値Rを用いて、式(6)及び式(7)に示す余弦値Ur及び正弦値Vrを定義する。また彩度算出部20で算出した第2実数値Srを用いて、第2実数値Srの逆数を、式(8)に示すinvSrで定義する。また、式(4)及び式(8)より、invSrを式(8a)で表すことができる。その結果、式(1)〜式(8)、式(8a)より、余弦値Ur及び正弦値Vrは、式(9)及び式(10)で表すことができる。なお、式(8)、式(8a)、式(9)、式(10)のw、mは、正の整数である。上記したnと同様に、後述する各演算器による演算の性質上、演算の精度を確保するため、適宜、w、mに正の整数を代入し、演算によって出力される信号の値に対してビットシフトを行う。
【0047】
Ur=Uv/R ・・・(6)
Vr=Vv/R ・・・(7)
invSr=w/Sr ・・・(8)
invSr=w/2n*√2*√Ks ・・・(8a)
Ur=|Uv|*√2*invSr*2(Si−m) ・・・(9)
Vr=|Vv|*√2*invSr*2(Si−m) ・・・(10)
【0048】
図2に示すLUT31は、浮動小数点変換器24から出力された第1実数値Ksに対応して、式(8a)を満たすinvSrを読み出すLUTである。また、上記したLUT25と同様に、第1実施形態においては、(0〜2047)の値をとる第1実数値Ksに対応したinvSrの値がLUT31に記憶されている。
【0049】
Ur乗算器33は、第1色差値Uv、彩度指数算出器26から出力された第2指数値Si、及びLUT31から出力されたinvSrに対して式(9)に示す演算処理を行い、余弦値Urを算出する。また、Vr乗算器34は、第2色差値Vv、彩度指数算出器26から出力された第2指数値Si、及びLUT31から出力されたinvSrに対して式(10)に示す演算処理を行い、正弦値Vrを算出する。
【0050】
セレクター35は、Ur乗算器33及びVr乗算器34から出力された余弦値Ur及び正弦値Vrの大小を比較し、小さい方の値(以下、セレクター出力値Dとも表記する)を選択し出力する。また、セレクター35は、セレクター出力値Dとともに、余弦値Urと正弦値Vrとの比較の結果、どちらが小さかったのかを示すセレクター情報を出力する。
【0051】
LUT36は、セレクター35が出力したセレクター出力値Dに対応して、式(11)を満たすLUT算出値Eを読み出すLUTである。式(11)のwは、上記のように正の整数である。
【0052】
E=arcsin(D/w) ・・・(11)
なお、Eの単位は「度」である。
【0053】
セレクター減算器37はセレクター35から出力されたセレクター情報に基づいて、(12)又は式(13)で示す2つの減算処理を選択して、LUT出力値Eに対して、色相角Phを算出する。
【0054】
Ur≧Vrのとき Ph=E ・・・(12)
Ur<Vrのとき Ph=90−E ・・・(13)
【0055】
図6に、セレクター加算器38が第1色差値Uvと第2色差値Vvと色相角Phに基づいて色相信号Hの値である色相値Hvを出力する算出方法の説明図を示す。セレクター加算器38は、入力される第1色差値Uvの値と、第2色差値Vvの値との組み合わせによって色相値Hvの出力方法を選択する。
図7に、セレクター加算器38が行う色相値Hvの算出方法を概念的に説明する説明図を示す。図7は、横軸を第1色差値Uv、縦軸を第2色差値VvとしたU−Vグラフである。以下、図6及び図7を用いて、具体例を示してセレクター加算器38による色相値Hvの算出方法を説明する。
【0056】
例えば、セレクター加算器38に入力された第1色差値Uvが正の値、第2色差値Vvが正の値である場合、図7に示すように色相角PhはU−Vグラフ上の第1象限上の角度に相当する。この場合、色相値Hvと色相角Phが同じであることが図7から理解できる。図6において、第1色差値Uvの値が正の値、第2色差値Vvの値が正の値に対応したHの算出方法はHv=Phとなっており、図7を用いて説明した色相値Hvの算出方法に対応していることが分かる。
【0057】
次に、2つ目の具体例として、セレクター加算器38に入力された第1色差値Uvが負の値、第2色差値Vvが負の値である場合、図7に示すように色相角Ph、はU−Vグラフ上の第3象限上の角度に相当する。この場合、図7に示すように、色相値Hvは色相角Phに180度を加算することで求められることが理解できる。図6において、第1色差値Uvの値が負の値、第2色差値Vvの値が負の値に対応したHvの算出方法はHv=Ph+180となっており、図7を用いて説明した色相値Hvの算出方法に対応していることが分かる。上記2つの具体例で示したように、セレクター加算器38では図6に対応した算出方法で、第1色差値Uvと第2色差値Vvと色相角Phに基づいて色相値Hvを出力する。以上、第1色空間変換回路110は上記の方法により、画像信号として入力されたYUV信号に対してYUV−HLS変換を施して、HLS信号を出力する。
【0058】
次に、ユーザーが行う色調整や、色調整の際の液晶プロジェクター100で行う処理の詳細について説明する。第1色空間変換回路110が行ったYUV−HLS変換によって出力されたHLS信号は、色調整回路120に入力される。
図8に、色調整回路120の構成例のブロック図を示す。図8は、色調整回路120に加えて、色調整回路120に各種信号を出力する第1色空間変換回路110及びCPU130をあわせて図示している。この色調整回路120は図示するように、色相調整回路40、彩度調整回路50、明度調整回路60を備えている。
【0059】
色相調整回路40はLUT41を備えている。LUT41は入力される色相信号(H)の値に対して、出力する色相信号(H)の値を記憶したLUTであり、RAMで構成されている。なお、以下、LUTに入力される信号の値を入力信号値、LUTから出力される信号の値を出力信号値とも呼ぶ。
【0060】
彩度調整回路50は、LUT51、LUT52、彩度ゲイン補間回路53、彩度乗算回路54を備えている。彩度調整回路50には、色相信号(H)と彩度信号(S)とが入力される。LUT51は、彩度調整回路50に入力される色相信号と彩度信号のうち、彩度信号の信号値である彩度値がSv=0(彩度値の最小値)のときの、出力する彩度値に対応した出力ゲイン値を、各色相の値ごとに記憶したLUTである。LUT52は、彩度調整回路50に入力される彩度信号の信号値がSv=1023(彩度値の最大値)のときの、出力する彩度値に対応した出力ゲイン値を、各色相の値ごとに記憶したLUTである。彩度ゲイン補間回路53は、彩度信号の入力信号値が0〜1023の間のときの、各色相における彩度信号の出力ゲイン値である彩度ゲイン値を演算し出力する。彩度乗算回路54は、彩度信号(S)と、彩度ゲイン値とを乗算して、色調整後の彩度信号(S)として出力する。
【0061】
明度調整回路60は上記の彩度調整回路50とほぼ構成は同じである。彩度調整回路50と比較して、構成及び処理で異なる点は、処理対象となる信号が明度信号(L)となった点である。明度調整回路60は、LUT61、LUT62、明度ゲイン補間回路63、明度乗算回路64を備えている。明度調整回路60には、色相信号(H)と明度信号(L)とが入力される。LUT61は、明度調整回路60に入力される色相信号と明度信号のうち、明度信号の信号値である明度値がLv=0(明度信号値の最小値)のときの、出力する明度値に対応した出力ゲイン値を、各色相の値ごとに記憶したLUTである。LUT62は、明度調整回路60に入力される明度信号の信号値がLv=1023(明度値の最大値)のときの、出力する明度値に対応した出力ゲイン値を、各色相の値ごとに記憶したLUTである。明度ゲイン補間回路63は、明度信号の入力信号値が0〜1023の間のときの、各色相における明度信号の出力ゲイン値である明度ゲイン値を演算し出力する。明度乗算回路64は、明度信号(L)と、明度ゲイン値とを乗算して、色調整後の明度信号(L)として出力する。なお、色調整回路120内の各LUTは、いずれも、液晶プロジェクター100の電源投入時に初期値が書き込まれる。このLUTの値は、以下に説明するユーザーの操作による色調整の指示により書き換えられる。
【0062】
次にユーザーの指示によって液晶プロジェクター100が行う色調整の処理について説明する。色調整を行うユーザーは、液晶プロジェクター100がスクリーン200に投写する色調整用画像を見ながら色調整を行う。色調整用画像は、色相調整用画像、彩度調整用画像及び明度調整用画像を含んで構成される。
図9に、色調整用画像のうち、色相調整用画像の説明図を示す。色相調整用画像は、LUT41が記憶している、入力信号値と出力信号値との対応関係に基づいて、CPU130が作成する。具体的には、図9の色相調整用画像の横軸が入力信号値に相当し、縦軸が出力信号値に相当する。CPU130は作成した色相調整用画像をスクリーン200に投写する。これらの機能はCPU130が色調整指示部132の機能として行う。そして、スクリーン200に投写された色相調整用画像を見たユーザーは、操作ボタン192を用いて、色相に関する色調整を行う。
【0063】
操作ボタン192を介してユーザーが行う色調整の指示に従って、CPU130は、LUT41に記憶された色相信号(H)の出力信号値の書き換えを行う。出力信号値の書き換えを行ったLUT41は、色相調整回路40に入力された色相信号(H)の値を、書き換え後の出力信号値に従って変更し出力する。
【0064】
図9に示す色相調整用画像は、横軸が入力信号値に相当し、縦軸が出力信号値に相当する。縦軸、横軸ともに、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)に対応する色相値の箇所に基準軸を設けている。そして、色相調整用画像内の太線が、色相調整回路40が行っている色相信号の変更処理の内容を表現している。ユーザーは、操作ボタン192が備える十字キーボタン及び決定ボタンを用いて、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)のいずれかの色相軸を選択・決定する。そして、ユーザーは、選択した色相の太線を上下させることによって太線の形状を変形させ、液晶プロジェクター100が投写する画像の、色相に関する色調整を行う。一例として、図9の色相調整用画像が示す太線によると、色相調整回路40は、投写する画像の「赤(R)を黄(Y)に寄せ、シアン(C)を緑(G)に寄せる」処理を色相信号(H)に対して行う。
【0065】
次に、ユーザーの指示によって液晶プロジェクター100が行う彩度の補正処理について説明する。
図10に、色調整用画像のうち、彩度調整用画像の説明図を示す。実際には、彩度調整用画像には、彩度値がSv=0のときの画像(以下、最小彩度画像とも呼ぶ)と、彩度値がSv=1023のときの画像(以下、最大彩度画像とも呼ぶ)との2つの画像がある。最小彩度画像と最大彩度画像は、処理内容を示す太線の形状は各々異なるが、それ以外の部分は同じであるので、図10にはSv=0のときの彩度調整用画像、つまり最小彩度画像を示した。
【0066】
図10に示す最小彩度画像の横軸は、色調整回路120に入力される色相信号の値を示している。縦軸は、入力された彩度信号の入力信号値に対応して出力する彩度信号の出力ゲインの値を示している。横軸には、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)に対応する色相値の箇所に基準軸を設けている。そして、最小彩度画像内の太線が、入力色相信号の値ごとの、Sv=0の入力彩度信号に対して、出力する彩度信号の値に対応した出力ゲイン値を表現している。なお上記のように、最大彩度画像は、図10に示した最小彩度画像の太線の形状以外は同様の画像であるので、説明は省略する。
【0067】
ユーザーは、上記の色相調整の操作と同様に、操作ボタン192が備える十字キーボタン及び決定ボタンを用いて、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)のいずれかの色相軸を選択・決定する。そして、ユーザーは、最小彩度画像及び最大彩度画像の太線の形状を変形させて、液晶プロジェクター100が投写する画像の、彩度信号の出力ゲインを調整することによって、彩度に関する色調整を行う。
【0068】
上記の彩度調整回路50が行う処理内容について、図11を用いて具体例を示して説明する。
図11に、彩度調整回路50が行う処理の具体例の内容に沿った概念の説明図を示す。図11のLUT51、LUT52に示すように、事前にユーザーが最小彩度画像及び最大彩度画像の太線の形状を変形させることによって、Sv=0、Sv=1023のときの彩度信号の出力ゲイン値が設定されているものとする。ここで、色調整回路120に画像信号が入力され、その画像信号に含まれる色相信号(H)と彩度信号(S)とが彩度調整回路50に入力された場合を考える。このときの、例えば、色相値Hv、彩度値SvをそれぞれHv=p、Sv=qであるものとする。LUT51、LUT52にそれぞれ、Hv=pの色相信号が入力されると、LUT51はSv=0のときの出力ゲイン値を、LUT52はSv=1023のときの出力ゲイン値を出力する。本具体例においては、図11に示すように、LUT51におけるSv=0のときの出力ゲイン値は1.5である。またLUT52におけるSv=1023のときの出力ゲイン値は0.7である。この2つの出力ゲイン値が、彩度ゲイン補間回路53に入力される。
【0069】
彩度ゲイン補間回路53は、図11に示すように、Hv=pのときの補間直線を生成する。補間直線は、Sv=0のときの出力ゲイン値1.5に対応する点と、Sv=1023のときの出力ゲイン値0.7に対応する点とを直線で結んだ線である。彩度ゲイン補間回路53は、Hv=pに対応した補間直線を生成すると、入力された彩度信号の入力信号値(彩度値)Sv=qに対応する彩度ゲイン値を補間直線より算出し、彩度乗算回路54に向けて出力する。本具体例においては、図11に示すように、入力信号値(彩度値)Sv=qに対応する彩度ゲイン値は1.3となる。彩度乗算回路54は、彩度調整回路50に入力された彩度信号(S)の入力信号値に彩度ゲイン値1.3を乗じた値に対応した彩度信号を、色調整後の彩度信号として出力する。
【0070】
次に、ユーザーの指示によって液晶プロジェクター100が行う明度の補正処理について説明する。色調整を行うユーザーは、液晶プロジェクター100がスクリーン200に投写する色調整用画像のうち、明度調整用画像を見ながら明度に関する色調整を行う。ユーザーが画像の明度調整を行うための明度調整用画像については、上記で説明した彩度調整用画像と同様の画像であり、調整の対象となる要素が明度になったことが、上記の彩度調整用画像とは異なる。よって、明度調整用画像の説明及び図は省略する。
【0071】
以上のように、液晶プロジェクター100では、操作制御部190及び操作ボタン192を介してユーザーが行う色調整の指示に従って、CPU130が色調整指示部132の処理として、色調整回路120に備える各LUTの書き換えが行われる。その結果、液晶プロジェクター100が投写する画像の色調整が行われる。なお、液晶プロジェクター100は、図示しないOSD(オンスクリーンディスプレイ)処理部を備えている。そして、CPU130はOSD処理部の機能として、色相調整用画像、彩度調整用画像、明度調整用画像をそれぞれ、投写画像に重畳してスクリーン200に投写する。また、色調整用画像上に表現された変更・補正処理の内容を示す太線は、ユーザーが色調整の操作によって上下させると、滑らかな曲線形状となるような曲線補間処理を、色調整指示部132が行っている。
【0072】
上記のように、第1色空間変換回路110によってHLS信号に変換してから、色相、彩度及び明度を調整するようにしたので、ユーザーにとって直感的に調整しやすくなる。一方、液晶ライトバルブ160は、YUV信号やRGB信号により制御されるため、第1実施形態では、第1色空間変換回路140で変換したHLS信号を第2色空間変換回路140がYUV信号に変換する。第2色空間変換回路140は、ユーザーによって色調整が行われ、色調整回路120によって変更・補正が施された後のHLS信号に対して、HLS−YUV変換をし、変換したYUV信号を液晶ライトバルブ駆動回路150に向けて出力する回路である。ところが、単純にHLS信号をYUV信号に変換する場合、次のような不都合が生じる。
【0073】
図12に、YUV色空間及びHLS色空間をY軸及びL軸上から見た図を示す。ここで、YUV色空間は3次元直交座標空間であり、図12では色域C1内においてYUV信号が定義される。一方、HLS色空間は3次元極座標空間であり、図12では色域C2内においてHLS信号が定義される。即ち、第2色空間変換回路140が行う変換処理は、色域C2内の(S,H)を色域C1内の(U,V)に変換する処理である。しかしながら、ユーザーが上記の色調整の指示によって彩度を上げて位置Pに対応する色に調整した場合、位置Pにおける彩度信号(S)及び色相信号(H)に対応するHLS信号をYUV信号に変換すると、色域C1内の位置P1にマッピングされてしまう。この位置P1におけるHLS信号は、図12に示すように例えば彩度信号(S1)及び色相信号(H1)となり、変換前後で色相の違いが生じ、変換前後の色の変化がより目立つようになる。そこで、第2色空間変換回路140は、次のように変換前後で色相が変化しないようにHLS信号をYUV信号に変換する。
【0074】
図13に、第2色空間変換回路140の構成例のブロック図を示す。第2色空間変換回路140は、Ph出力器71、LUT73、LUT74、第1色差出力器75、第2色差出力器76、彩度調整回路(彩度信号調整部)80を備えている。ここで、Ph出力器71、LUT73、LUT74、第1色差出力器75、第2色差出力器76は、色差信号生成回路(色差信号生成部)として機能する。なお、第1色空間変換回路110の構成と同様に、図示しない同期クロックが、各演算器に入力されており、回路間の動作を同期させているが、同期クロック信号については図示を省略している。よって、第2色空間変換回路140に入力されたHLS信号は、この同期クロックを用いたその一組の信号に対応したYUV信号として変換され、同期して出力される。
【0075】
第2色空間変換回路140に入力された明度信号(L)は、上記のように、図3に示した座標空間において、輝度信号(Y)と1対1で対応しているので、明度信号(L)をそのまま輝度信号(Y)として出力する。
【0076】
Ph出力器71は入力された色相信号(H)から、色相角Phと、色相信号(H)に対応する色相値HvのU−Vグラフ(図7)上での象限値DIV_H(第1象限から第4象限に対応した値)とを算出する。
図14に、Ph出力器71に入力された色相値Hvに対応して、色相角Phと、象限値DIV_Hとを算出する算出方法を示した説明図を示す。色相値Hvの大きさによって、色相角Phの算出する方法が異なる。一例として、色相値Hv=100(度)のとき、色相値Hvは図14において、90〜180(度)の範囲に対応しているので、色相角Phの算出方法はPh=180−Hvとなり、Ph=80(度)となる。またこのとき、色相値Hv(=100(度))はU−Vグラフ(図7)では第2象限に存在し、DIV_H=1として出力される。このようにして、色相値Hvから色相角Phと象限値DIV_Hとを出力する。
【0077】
図13において、Ph出力器71から出力された色相角Phに対応する信号はLUT73及びLUT74に入力される。LUT73は、入力された色相角Phの信号に対応して、その余弦値であるcos(Ph)を出力するLUTである。またLUT74は、入力された色相角Phの信号に対応して、その正弦値であるsin(Ph)を出力するLUTである。Ph出力器から出力された色相角Phに対応する信号は、LUT73及びLUT74を介して、cos(Ph)及びsin(Ph)に対応する信号に変換され、第1色差出力器75及び第2色差出力器76に向けて出力される。
【0078】
彩度調整回路80は、比較器(比較部)81、彩度最大値生成回路(彩度最大値生成部)82を備えている。彩度最大値生成回路82は、色域C1内において色相値Hvに対応する彩度値Svの最大値である彩度最大値Smaxを出力する。色域C1が明確に定義できるため、この彩度最大値生成回路82は、色相値Hvに対応した彩度値Svのうち色域C1の境界値における彩度成分を彩度最大値Smaxとして出力すればよい。このような彩度最大値生成回路82は、LUTにより構成することができる。
【0079】
図15に、色相値Hvに応じて彩度最大値生成回路82が出力する彩度最大値Smaxの説明図を示す。彩度最大値生成回路82がLUTにより構成される場合、色相値Hvを入力信号値、彩度最大値Smaxを出力信号値として、各色相値に対応して予め演算して求めた彩度最大値Smaxを記憶させておけばよい。そして、色相値Hvが入力信号値として与えられたとき、該入力信号値に対応して記憶された出力信号値を彩度最大値Smaxとして出力すればよい。
【0080】
比較器81は、彩度値Svと、彩度最大値Smaxとを比較し、その比較結果に応じた値を出力する。具体的には、比較器81は、彩度値Sv及び彩度最大値Smaxのうち小さい方を選択出力する。即ち、色調整回路120からの彩度値Svが彩度最大値Smax以下であるとき、比較器81は、彩度値Svを選択出力する。色調整回路120からの彩度値Svが彩度最大値Smaxより大きいとき、比較器81は、彩度最大値Smax選択出力する。こうして比較器81により選択出力された値が、彩度値Svとして第1色差出力器75及び第2色差出力器76に入力される。
【0081】
図16に、第2色空間変換回路140の動作説明図を示す。図16は、YUV色空間及びHLS色空間をY軸及びL軸上から見た図であり、色域C1、C2については、図12と同様である。上記のように第2色空間変換回路140が色空間変換処理を行うため、色域C2内の位置Pの色は、色相値Hvを一定にしたまま色域C1内の位置P2にマッピングされる。この位置P2におけるHLS信号は、変換前後の彩度値は異なるものの、色相値は変換前後で変わらない。従って、変換前後で色の違いが見えにくくなり、その結果、色調整後にYUV信号に変換しても、元の色を維持することができる。
【0082】
図13に示すように、第1色差出力器75は、彩度値Svと、cos(Ph)と、象限値DIV_Hとに対応した信号に基づいて、第1色差値Uvに対応した信号を出力する。
図17に、第1色差出力器75が行う演算の演算式を、象限値DIV_Hの値に対応させて示した説明図を示す。第1色差出力器75は、象限値DIV_Hの値(0〜3)に基づいて、第1色差値Uvを出力する演算式を選択する。そして、象限値DIV_Hに対応して選択した演算式を用いて、入力された彩度値Svと、cos(Ph)とに基づいて第1色差値Uvに対応する信号を出力する。
【0083】
第2色差出力器76は、彩度値Svと、sin(Ph)と、象限値DIV_Hとに対応した信号に基づいて、第2色差値Vvに対応した信号を出力する。
図18に、第2色差出力器76が行う演算の演算式を、象限値DIV_Hの値に対応させて示した説明図を示す。第2色差出力器76は、象限値DIV_Hの値に基づいて、第2色差値Vvを出力する演算式を選択する。そして、象限値DIV_Hに対応して選択した演算式を用いて、彩度値Svと、sin(Ph)とに基づいて第2色差値Vvに対応する信号を出力する。こうして、第2色空間変換回路140は、入力されたHLS信号に対して、HLS−YUV変換を行い、YUV信号を出力する。
【0084】
以上説明したように、液晶プロジェクター100は、入力されたYUV信号の画像信号を、第1色空間変換回路110でYUV−HLS変換し、HLS信号を出力する。そして、色調整回路120において、ユーザーからの色調整の指示により、HLS信号である画像信号を変更・補正する。その後、液晶プロジェクター100は、第2色空間変換回路140で色相を維持しながらHLS−YUV変換し、YUV信号を出力する。このとき、色調整回路120が、画像信号をHLS信号の状態で変更・補正処理を行うので、液晶プロジェクター100は、その処理内容を、色相、明度、彩度の3つの要素、つまりマンセル表色系で表現した色調整用画像として、ユーザーに示すことができる。また、ユーザーは、その色調整用画像を見ながら、画像の色調整を、色相、明度、彩度の各要素において変更・補正することができる。更に、第1実施形態では、色調整用画像における色相を、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)の6つの基準軸を用いて表現している。そのため、ユーザーは色の目安となる、上記6つの色相を基準にしながら容易に画像の色調整を行うことができる。加えて、液晶プロジェクター100は、ハードウェアとして第1色空間変換回路110及び色調整指示部132を備えるので、処理が高速であり、入力される画像信号のHLS信号への変換及び変更・補正処理をリアルタイムに行うことが可能となる。更にまた、色相が変化しないように変換を行っているので、変換前後で色の違いが見えにくくなり、元の色を維持することができるようになる。その結果、画像の色味等を高精度に調整できるようになる。
【0085】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では、第2色空間変換回路140において、彩度調整回路90が色調整回路120からの色相値Hvに基づいて彩度最大値を生成する例について説明したが、これに限定されるものではない。
【0086】
図19に、本発明に係る第2実施形態における第2色空間変換回路の構成例のブロック図を示す。第2実施形態における第2色空間変換回路140aは、第2色空間変換回路140に代えて図1の液晶プロジェクター100に適用できる。なお、図19において、図13と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
第2色空間変換回路140aが第2色空間変換回路140と異なる点は、彩度最大値生成回路92が色相角Phと象限値DIV_Hとに基づいて彩度最大値Smaxを出力し、比較器91が彩度値Svとこの彩度最大値Smaxとを比較する点である。色調整回路120からの色相値Hvは、色相角Ph及び象限値DIV_Hの組み合わせに対応している。そのため、彩度最大値生成回路92は、例えば図15のように色相角Ph及び象限値DIV_Hの組み合わせに対応した彩度最大値Smaxを出力するLUTにより構成でき、説明及び図示は省略する。
【0087】
〔第3実施形態〕
第1実施形態及び第2実施形態では、第2色空間変換回路が色相に応じた彩度を用いて第1色差信号及び第2色差信号を出力するものとして説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係る第3実施形態では、第2色空間変換回路が色相及び彩度に基づいて生成した第1色差信号及び第2色差信号の比を一定に維持しながら、第1色差信号及び第2色差信号を調整することで、変換前後の色相が変化しないようにしている。
【0088】
図20に、本発明に係る第3実施形態における第2色空間変換回路の構成例のブロック図を示す。第3実施形態における第2色空間変換回路140bは、第2色空間変換回路140に代えて図1の液晶プロジェクター100に適用できる。なお、図20において、図13と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
第2色空間変換回路140bが第2色空間変換回路140と異なる点は、彩度最大値生成回路82が省略され、色差調整回路(色差信号調整部)95が設けられている点である。色差調整回路95には、第1色差出力器75が出力する第1色差値Uvに対応した信号u1、第2色差出力器76が出力する第2色差値Vvに対応した信号v1が入力される。そして、色差調整回路95は、信号u1及び信号v1の比を維持しつつ、信号u1又は信号v1をYUV信号に対応した色域C1(図12参照)の境界値にクリッピングすることにより得られる第1色差信号U及び第2色差信号Vを出力する。
【0089】
図21に、第2色空間変換回路140bの動作説明図を示す。図21は、YUV色空間及びHLS色空間をY軸及びL軸上から見た図であり、色域C1、C2については、図12と同様である。また、図21では、信号u1、v1の色域C3をあわせて図示している。
図21では、色差調整回路95の処理によって、信号u1及び信号v1を有する色域C2内の位置Pの色は、信号u1及び信号v1の比を維持しつつ色域C1の境界位置である位置P3にマッピングされる。図22の場合、信号u1が色域C1の境界値にクリッピングされる。信号u1及び信号v1の比は、色相値Hvに対応しているため、この位置P3におけるHLS信号は、変換前後の彩度値は異なるものの、色相値は変換前後で変わらない。従って、変換前後で色の違いが見えにくくなり、その結果、色調整後にYUV信号に変換しても、元の色を維持することができる。
【0090】
このような色差調整回路95は、次のような動作を行うことで実現できる。
図22に、色差調整回路95の動作説明図を示す。色差調整回路95は、信号u1、v1の比較結果に応じて、図22に示す演算式で得られた第1色差信号U及び第2色差信号Vを出力する。色差調整回路95がLUTにより構成される場合、信号u1及び信号v1を入力信号値、第1色差信号U及び第2色差信号Vを出力信号値として、信号u1及び信号v1の組み合わせに対応した第1色差信号U及び第2色差信号Vを記憶させておけばよい。そして、信号u1及び信号v1が入力信号値として与えられたとき、該入力信号値に対応して記憶された出力信号値を第1色差信号U及び第2色差信号Vとして出力すればよい。
【0091】
なお、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0092】
(1)上記の実施形態では、色調整回路120が出力したHLS信号を、第2色空間変換回路140がYUV信号に変換しているが、本発明これに限定されるものではない。例えば第2色空間変換回路140が行う信号変換は、YUV信号への信号変換に限らず、画像表示に適した信号であれば、その他の信号形式への変換でもよい。また液晶プロジェクター100が、YUV信号形式で画像を表示可能な回路及び処理部を備えるようにすれば、液晶プロジェクター100は第2色空間変換回路140を備えないとしても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
(2)上記の実施形態では、色調整用画像を、液晶プロジェクター100がスクリーン200に投写することによってユーザーに示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば液晶プロジェクター100に接続されたコンピューターのディスプレイ画面上に、色調整用画像を表示することによって、ユーザーに示すようにしてもよい。
【0094】
(3)上記の実施形態では、色調整回路120が行っている処理内容を、色調整用画像として、ユーザーが視認可能な表示部に示し、ユーザーがその色調整用画像を見ながら投写画像の色調整を行うとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば液晶プロジェクター100が色調整用画像を表示せず、色相、明度、彩度、つまりマンセル表色系で表現された色調整用操作パネルや、色調整用の青(B)等の色相ごとの調整用ダイヤルを備えるようにしてもよい。この場合、別に備える切換ボタンによって、色相調整、明度調整、彩度調整を切り替えて色調整を行うことができる。或いは、色調整用の操作機能部を、液晶プロジェクター100が備えるようにし、ユーザーがスクリーン200上の投写画像を見ながら、その操作機能部を操作して投写画像の色調整をするとしてもよい。
【0095】
(4)上記の実施形態では、色調整用画像において、色調整用画像における色相を、青(B)マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)の6つの基準軸を用いて表現したが、基準軸の数は3つ、4つ、8つ等、任意の数としてもよい。また、色調整用画像における色相の基準軸の数を、ユーザーが任意に設定できるとしてもよい。その他、色調整用画像に色相の基準軸を設けず、色相を連続階調で表現するとしてもよい。また、色調整用画像を、マンセル色立体を3次元表現した画像としてユーザーに示し、液晶プロジェクター100に接続されたコンピューターが備えるマウス等で直接、ユーザーが、マンセル色立体上に表現された変更・補正処理の内容を操作するとしてもよい。
【0096】
(5)上記の実施形態では、画像表示装置として液晶プロジェクター100を例示したが、光変調素子を液晶ライトバルブに限定するものではなく、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)を用いることができる。また、本発明はプラズマディスプレイや有機ELディスプレイ等、直視型の画像表示装置として実装することもできる。
【0097】
(6)上記の実施形態において、入力される彩度値Sv及び色相値Hvに基づいて、直接、第1色差信号U及び第2色差信号Vを調整するようにしてもよい。
【0098】
(7)なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、色空間変換装置及び方法、画像処理装置及び方法、画像表示装置及び方法、それらの装置又は方法の機能を実現するための集積回路、コンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0099】
10…明度算出部、 20…彩度算出部、 21…第1乗算器、 22…第2乗算器、
23…加算器、 24…浮動小数点変換器、 25,31,36,41,51,52,61,62,73,74…LUT、 26…彩度指数算出器、
27…ビットシフト演算器、 30…色相算出部、 35…セレクター、
37…セレクター減算器、 38…セレクター加算器、 40…色相調整回路、
50…彩度調整回路、 53…彩度ゲイン補間回路、 54…彩度乗算回路、
60…明度調整回路、 63…明度ゲイン補間回路、 64…明度乗算回路、
75…第1色差出力器、 76…第2色差出力器、
80,90…彩度調整回路(彩度信号調整部)、 81,91…比較器(比較部)、
82,92…彩度最大値生成回路(彩度最大値生成部)、
95…色差調整回路(色差信号調整部)、 100…液晶プロジェクター、
102…内部バス、 110…第1色空間変換回路、
120…色調整回路(色調整部)、 130…CPU、 132…色調整指示部、
140,140a,140b…第2色空間変換回路、
150…液晶ライトバルブ駆動回路、 160…液晶ライトバルブ、
170…光源部、 171…ランプ、 172…レンズ、 180…投写レンズ、
190…操作制御部、 192…操作ボタン、 200…スクリーン、
C1〜C3…色域、 D…セレクター出力値、 DIV_H…象限値、
R…開平結果値、 H…色相信号、 Hv…色相値、 Ks…第1実数値、
L…明度信号、 Ls…第1指数値、 Lv…明度値、 S…彩度信号、
Sv…彩度値、 U…第1色差信号、 Uv…第1色差値、 Uv2…第1乗算値、
V…第2色差信号、 Vv…第2色差値、 Vv2…第2乗算値
【技術分野】
【0001】
本発明は、色空間変換装置、画像処理装置、画像表示装置及び色空間変換方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
動画を含む各種画像を表示する画像表示装置では、画像信号を入力し、これをリアルタイムで処理し、表示している。表示や画像処理の簡略化を図るために、プロジェクターや、CRT(Cathode Ray Tube)や、LCD(Liquid Crystal Display)等の画像表示装置では、RGB形式の画像信号(RGB信号)やYUV形式の画像信号(YUV信号)が一般的に用いられる。RGB形式の画像信号は、R(赤)信号、G(緑)信号、B(青)信号により構成される。YUV形式の画像信号は、Y(輝度)信号、U(第1色差)信号、V(第2色差)信号により構成される。
【0003】
こうした画像表示装置に表示される画像の色相、明るさ、彩度等は、画像信号のソース(例えば、DVDプレーヤー等)で調整することができ、最近では、プロジェクター等の画像表示装置も、調整の仕組みを備えている。ところが、画像の色味や明るさ、鮮やかさ等を、ユーザーが調整しようとすると、これらの画像表示装置が標準で扱っているRGB信号やYUV信号等を直接調整することになる。このため、これらの信号では、1つの信号を強めたり弱めたりすると、その変化は他の色にまで影響が及び、所望の画像を得るための調整が困難であった。
【0004】
そこで、従来から、例えばカラースキャナー等では、標準画像のRGB信号を一旦HLS信号に変換して、標準色からのズレを計算し、これを用いて、読み込んだ画像の色調整を行っていた(例えば下記特許文献1参照)。HLS信号とは、物体色の標準として、H(色相)・L(明度)・S(彩度)で表されたマンセル表色系に即した信号である。HLS信号によりカラーコレクションを行う技術は、特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−18724号公報
【特許文献2】特開平11−69186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの技術は、いずれも画像処理系が本来持つズレやバランスのズレを補正するものである。このため、プロジェクターのような動画を扱うこともある画像表示装置において、リアルタイムで処理されている画像信号を、所望の状態に調整して表示することはできなかった。ユーザーからすれば、表示されている画像の色味、明るさ、鮮やかさ等を、好みに応じて調整したいのであって、RGB信号やYUV信号を調整したい訳ではない。従って、従来の画像表示装置では、こうしたユーザーの要望に応えることができないという問題があり、ユーザーによる画像の色味、明るさ、鮮やかさ等の調整は、できるだけ精度よく行うことができることが望ましい。
【0007】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様によれば、例えばユーザーの好みに応じて画像の色味等を高精度に調整できる色空間変換装置、画像処理装置、画像表示装置及び色空間変換方法等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様は、HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換装置が、前記HLS信号に含まれる彩度信号を、前記HLS信号に含まれる色相信号に応じて調整する彩度信号調整部と、前記色相信号と、前記彩度信号調整部によって調整された前記彩度信号とに基づいて、前記YUV信号に含まれる色差信号を生成する色差信号生成部とを含む。
【0009】
本態様においては、HLS信号は、色相、明度及び彩度の3つの要素で表される信号であり、YUV信号は、輝度、2つの色差の3つの要素で表される信号である。本態様によれば、HLS信号をYUV信号に変換する際に、変換前後で色相を変化させることなくYUV信号を構成する色差信号を生成することができる。そのため、調整後のHLS信号をYUV信号に正確にマッピングできない場合であっても、変換前後で色が変化して見えることなく、例えばユーザーの好みに応じて画像の色味等を高精度に調整できるようになる。
【0010】
(2)本発明の他の態様に係る色空間変換装置では、前記彩度信号調整部は、前記色相信号に対応した彩度最大値を生成する彩度最大値生成部と、前記彩度信号に対応した彩度値又は前記彩度最大値のうち小さい方を出力する比較部とを含み、前記色差信号生成部は、前記色相信号と前記比較部からの出力信号とに基づいて、前記色差信号を生成する。
本態様によれば、上記の効果に加えて、簡素な構成により、変換前後で色相を変化させることなくYUV信号を構成する色差信号を生成できるようになる。
【0011】
(3)本発明の他の態様に係る色空間変換装置では、前記彩度最大値生成部は、前記YUV信号に対応した色域の境界値における彩度成分を前記彩度最大値として出力する。
本態様によれば、HLS信号をYUV信号に変換する際にYUV信号に対応した色域全体を用いることができるので、上記の効果に加えて、より一層正確な色空間変換を行うことが可能となる。
【0012】
(4)本発明の一態様は、HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換装置が、前記HLS信号に含まれる色相信号及び彩度信号に基づいて、前記YUV信号に含まれる第1色差信号及び第2色差信号を生成する色差信号生成部と、前記第1色差信号の信号値と前記第2色差信号の信号値との比を維持しつつ、前記第1色差信号の信号値又は前記第2色差信号の信号値を前記YUV信号に対応した色域の境界値にクリッピングすることにより得られた前記第1色差信号及び前記第2色差信号を出力する色差信号調整部とを含む。
【0013】
本態様においては、HLS信号をYUV信号に変換する際に、変換前後で色相を変化させることなくYUV信号を構成する色差信号を生成することができる。そのため、調整後のHLS信号をYUV信号に正確にマッピングできない場合であっても、変換前後で色が変化して見えることなく、画像の色味等を高精度に調整できるようになる。
【0014】
(5)本発明の一態様は、画像処理装置が、YUV信号をHLS信号に変換する第1色空間変換部と、前記第1色空間変換部によって変換された前記HLS信号を構成する色相信号、明度信号及び彩度信号の少なくとも1つを調整し、調整後のHLS信号を出力する色調整部と、前記色調整部によって調整されたHLS信号をYUV信号に変換する上記のいずれか記載の色空間変換装置とを含む。
【0015】
本態様においては、YUV信号を一旦HLS信号に変換し、HLS信号の状態で色調整を行った後、色調整後のHLS信号をYUV信号に戻している。これにより、画像の色調整を、色相、明度、彩度の各要素において直感的に調整でき、且つ画像の色味等を高精度に調整できる画像処理装置を提供できるようになる。
【0016】
(6)本発明の一態様は、画像信号に基づいて画像を表示する画像表示装置が、前記画像信号に対応したHLS信号をYUV信号に変換する上記のいずれか記載の色空間変換装置を含み、前記色空間変換装置によって変換された前記YUV信号を用いて画像を表示する。
【0017】
本態様によれば、画像の色味等を高精度に調整できる画像表示装置を提供できるようになる。
【0018】
(7)本発明の一態様は、HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換方法が、前記HLS信号に含まれる色相信号に応じて、前記HLS信号に含まれる彩度信号を調整する彩度信号調整ステップと、前記色相信号と、前記彩度信号調整ステップにおいて調整された彩度信号とに基づいて、前記YUV信号に含まれる色差信号を生成する色差信号生成ステップとを含む。
【0019】
(8)本発明の一態様は、HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換方法が、前記HLS信号に含まれる色相信号及び彩度信号に基づいて、前記YUV信号に含まれる第1色差信号及び第2色差信号を生成する色差信号生成ステップと、前記第1色差信号の信号値と前記第2色差信号の信号値との比を維持しつつ、前記第1色差信号の信号値又は前記第2色差信号の信号値を前記YUV信号に対応した色域の境界値にクリッピングすることにより得られた前記第1色差信号及び前記第2色差信号を出力する色差信号調整ステップとを含む。
【0020】
上記のいずれかの態様においては、HLS信号をYUV信号に変換する際に、変換前後で色相を変化させることなくYUV信号を構成する色差信号を生成することができるようになる。従って、調整後のHLS信号をYUV信号に正確にマッピングできない場合であっても、変換前後で色が変化して見えることなく、例えばユーザーの好みに応じて画像の色味等を高精度に調整できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態における液晶プロジェクターの全体の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態における色空間変換回路の構成を示すブロック図である。
【図3】YUV信号とHLS信号との関係を示した説明図である。
【図4】YUV空間とHLS空間とを、輝度、明度の要素に対応するY軸及びL軸上から見た説明図である。
【図5】浮動小数点変換器における浮動小数点演算の一例を示した説明図である。
【図6】セレクター加算器が色相値を出力する算出方法を説明した説明図である。
【図7】セレクター加算器が行う色相値の算出方法を、概念的に説明する説明図である。
【図8】色調整回路の構成を示すブロック図である。
【図9】色相調整用画像を示した説明図である。
【図10】彩度調整用画像を示した説明図である。
【図11】彩度調整回路が行う処理の概念を示した説明図である。
【図12】YUV色空間及びHLS色空間をY軸及びL軸上から見た図である。
【図13】第1実施形態における第2色空間変換回路の構成を示すブロック図である。
【図14】Ph出力器が色相角と、象限値とを算出する算出方法を示した説明図である。
【図15】色相値に応じて彩度最大値生成回路が出力する彩度最大値の説明図である。
【図16】第1実施形態における第2色空間変換回路の動作説明図である。
【図17】第1色差出力器が行う演算の演算式を示した説明図である。
【図18】第2色差出力器が行う演算の演算式を示した説明図である。
【図19】第2実施形態における第2色空間変換回路の構成例のブロック図である。
【図20】第3実施形態における第2色空間変換回路の構成例のブロック図である。
【図21】第3実施形態における第2色空間変換回路の動作説明図である。
【図22】色差調整回路の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するために必須の構成要件であるとは限らない。
なお、以下では、本発明に係る色空間変換装置等が画像表示装置である液晶プロジェクターに適用される例を説明するが、本発明に係る画像表示装置は液晶プロジェクターに限定されるものではない。
【0023】
〔第1実施形態〕
図1に、本発明に係る第1実施形態における液晶プロジェクターの構成例のブロック図を示す。この液晶プロジェクター100は、光変調手段として液晶ライトバルブを採用したプロジェクターである。液晶プロジェクター100は、第1色空間変換回路110、色調整回路120、CPU130、第2色空間変換回路140を備えている。更に、液晶プロジェクター100は、液晶ライトバルブ駆動回路150、液晶ライトバルブ160、光源部170、投写レンズ180、操作制御部190、操作ボタン192を備えている。そして、液晶プロジェクター100は、第1色空間変換回路110に入力される画像信号に基づいて画像(動画)をスクリーン200に表示する。色調整回路120と、CPU130と、操作制御部190とは、内部バス102によって接続されている。画像信号は、図示しないビデオカメラやスキャナーやパーソナルコンピューター等の入力装置によってリアルタイムに第1色空間変換回路110に入力される。或いは、この画像信号は、図示しないコンピューターで読取可能な記憶媒体から第1色空間変換回路110に読み出されてもよい。ここで、コンピューターで読取可能な記憶媒体には、ROM、RAM、CD−ROM、DVD、FD、MD、メモリーカード等のいずれでもよい。
【0024】
第1色空間変換回路110は、YUV信号として入力されたデジタルの画像信号に対してYUV−HLS変換を行い、HLS信号として画像信号を出力する電気回路である。色調整回路120は、第1色空間変換回路110から入力されたHLS信号に対応する色相、明度、彩度の各信号(以下、これら各信号を、色相信号、明度信号、彩度信号とも呼ぶ)に対して色調整処理を行う回路である。具体的には、色調整回路120は、HLS信号に対応する色相を変更することが可能である。また、色調整回路120は、HLS信号に対応する明度及び彩度については、その各信号の出力ゲインの値を補正(以下、ゲイン補正とも呼ぶ)することが可能である。色調整回路120は、CPU130からのコマンドによって、色相の変更やゲイン補正を行う。
【0025】
CPU130は、図示しないROMに予め記憶した特定のプログラムを読み込んで、該プログラムに対応する処理を実行することで、各種の機能を実現することができる。例えば、CPU130は、このROMに記憶した特定のプログラムを読み込んで、該プログラムに対応する処理を実行することで、色調整指示部132の機能を実現することができる。この色調整指示部132は、上記の色調整回路120が行う処理内容を制御する。
【0026】
第2色空間変換回路140は、色調整回路120から入力されるHLS信号をYUV信号に変換(以下、HLS−YUV変換とも呼ぶ)して出力する回路である。第2色空間変換回路140に入力されるHLS信号は、上記のユーザーによる色調整によって、色相の変更及びゲイン補正がされた信号である。
【0027】
液晶ライトバルブ駆動回路150は、液晶ライトバルブ160を駆動する回路である。液晶ライトバルブ160は、液晶ライトバルブ駆動回路150で生成された信号を映像化する光変調素子である。具体的には、液晶ライトバルブ160は、光源部170から射出される光を、液晶ライトバルブ駆動回路150で生成された信号に基づいて変調して投写に必要な光をスクリーン200側へ向けて射出する。
【0028】
光源部170は、画像を投写するための光源であり、主に、光を発するランプ171と、このランプ171から発せられる光を平行光とするレンズ172とを有している。平行光は、液晶ライトバルブ160で変調された後、投写レンズ180に入射する。投写レンズ180は、光源部170から射出され、液晶ライトバルブ160で変調される光をスクリーンに拡大して表示させる。また、スクリーン200は、液晶プロジェクター100から投写される投写像を表示する投写面を有している。
【0029】
操作制御部190は、液晶プロジェクター100が投写した画像に対する色調整の指示を、操作ボタン192を通じてユーザーから受信し、内部バス102を介してCPU130に伝える。操作ボタン192は十字キーボタンと、決定ボタンとを備え、後述する色調整を行う際に、ユーザーはこれらのボタンを用いて画像の色調整を行う。なお、第1実施形態では、液晶プロジェクター100はユーザーからの指示を、操作制御部190及び操作ボタン192を介して受信しているが、これに限定されるものではない。例えばユーザーからの指示を、液晶プロジェクター100に備えた操作パネルや、液晶プロジェクター100に接続されたコンピューターが備えるマウスやキーボード等の外部操作機器を介して受信するものとしてもよい。
【0030】
図2に、図1の第1の色空間変換回路110の構成例のブロック図を示す。第1色空間変換回路110は、明度算出部10、彩度算出部20、色相算出部30を備えている。第1色空間変換回路110は、入力された画像信号に含まれる輝度信号(Y)、第1色差信号(U)、第2色差信号(V)を、明度信号(L)、彩度信号(S)、色相信号(H)に変換して出力する。なお、図示しない同期クロックが、各演算器に入力されており、回路間の動作を同期させているが、同期クロック信号については図示を省略している。従って、第1色空間変換回路110に入力されたYUV信号は、この同期クロックを用いたその一組の信号に対応したHLS信号として変換され、同期して出力される。
【0031】
ここで、YUV信号とHLS信号との関係について説明する。
図3に、YUV信号とHLS信号との関係の説明図を示す。図3に示すように、YUV信号は、画像信号を、輝度と、第1色差と、第2色差との3つの要素から成る3次元直交座標空間(以下、YUV色空間とも呼ぶ)で表した信号である。一方、HLS信号は、画像信号を、色相と、明度と、彩度との3つの要素から成る3次元極座標空間(以下、HLS色空間とも呼ぶ)で表した信号である。図3に示すように、YUV色空間上の輝度と、HLS色空間上の明度とは、両座標空間において軸方向が同じであり1対1の対応をしている。従って、輝度信号と明度信号とを同一の信号として扱うことができる。結果として、YUV信号として入力された画像信号を、HLS信号に変換することは、実質、画像信号に含まれる第1色差信号と第2色差信号とを、色相信号と彩度信号とに変換することに相当する。
【0032】
図4に、図3に示した両座標空間を輝度、明度の要素に対応するY軸及びL軸上から見た図を示す。
彩度信号は、YUV信号をYUV空間上のUV平面に射影した信号に対応している。また、色相信号は、このYUV空間における彩度信号と第1色彩信号とのなす角に対応した信号である。図3及び図4に示した、YUV空間とHLS空間との関係に基づいて、図2に示した第1色空間変換回路110はYUV−HLS変換を行っている。
【0033】
図2において、明度算出部10は、色空間変換回路110に入力された輝度信号(Y)に対応する値(以下、輝度値とも呼ぶ)を、そのまま明度信号(L)に対応した値(以下、明度値とも呼ぶ)に適用して、明度信号(L)として出力する。これは図3で示したように、YUV色空間上の輝度と、HLS色空間上の明度とは、両座標空間において1対1の対応をしていることに拠っている。換言すれば、入力された輝度信号(Y)を、そのまま明度信号(L)として出力する。なお第1実施形態において、輝度信号(Y)及び明度信号(L)は、ともに10ビットの階調データである。
【0034】
彩度算出部20は、第1色空間変換回路110に入力された第1色差信号(U)、及び第2色差信号(V)に基づいて、彩度信号(S)を出力する。彩度算出部20は、第1乗算器21、第2乗算器22、加算器23、浮動小数点変換器24、ルックアップテーブル25、彩度指数算出器26、ビットシフト演算器27を備える。なお、以下、ルックアップテーブルをLUTとも呼び、例えば、ルックアップテーブル25はLUT25とも表記する。
【0035】
以下、彩度算出部20が第1色差信号(U)と第2色差信号(V)とを、彩度信号(S)に変換するまでを信号の流れる順に沿って説明する。第1色差信号(U)及び第2色差信号(V)は、それぞれ10ビットの階調データである。このため、両信号はそれぞれ、(0〜1023)の信号値をとることになるが、信号値が(512)のとき、無色であることを示すものとして扱うので、以下、こうした場合には信号値を(−512〜511)と表記する。
【0036】
第1乗算器21は、入力された第1色差信号を(−512〜511)の階調データに変換後、信号値を、0(零)を中心とした対称性をもった階調値で表すため、(−512〜511)の階調データを(−511〜511)の階調データに丸め処理を行う。丸め処理後、第1乗算器21は第1色差信号の値(以下、第1色差値Uvとも呼ぶ)をべき乗した第1乗算値Uv2を算出する。第2乗算器22は、第1乗算器21と同様の処理を、入力された第2色差信号に対して行い、第2色差信号の値(以下、第2色差値Vvとも呼ぶ)をべき乗した第2乗算値Vv2を算出する。加算器23は、第1乗算器21及び第2乗算器22から出力された第1乗算値Uv2及び第2乗算値Vv2を互い加算した加算値、つまりUv2+Vv2の値を算出する。
【0037】
加算器23が出力した加算値に対して、平方根の値を算出し、HLS信号のスケールに正規化した値が彩度値Svとなる。正規化は、加算値の平方根の値を開平結果値Rとすると、開平結果値Rに√2を乗ずることで行う。このとき、彩度値Svと開平結果値Rとは式(1)で表される。
【0038】
浮動小数点変換器24は、加算値Uv2+Vv2、つまりR2の値に対応した信号が入力されると、R2の値に対して浮動小数点演算を行い、式(2)を満たす第1実数値Ks及び第1指数値Lsの値を算出する。またこのとき、第1指数値Lsの値を偶数の値として算出する。浮動小数点変換器24における浮動小数点演算の一例を図5に示した。
【0039】
Sv=√2*R ・・・(1)
R2=Ks/2Ls ・・・(2)
【0040】
次に、彩度値Svを、式(3)を満たす第2実数値Srと第2指数値Siとで表すと、式(1)〜式(3)により、第2実数値Sr及び第2指数値Siは、式(4)及び式(5)として表すことができる。なお、式(4)及び式(5)のnは、正の整数である。このnは、後述する各演算器による演算の性質上、出力される信号の値が小さくなり、その後の演算の精度が低下するのを回避する。演算の精度を確保するため、適宜、nに正の整数を代入し、演算によって出力される信号の値に対してビットシフトを行う。
【0041】
Sv=Sr/2Si ・・・(3)
Sr=2n*√2*√Ks ・・・(4)
Si=Ls/2+n ・・・(5)
【0042】
図2に示すLUT25は、浮動小数点変換器24から出力された第1実数値Ksの値に対して、式(4)を満たす第2実数値Srを読み出すLUTである。第1実施形態においては、(0〜2047)の値をとる第1実数値Ksに対応した第2実数値Srの値が、LUT25に記憶されている。
【0043】
彩度指数算出器26は、浮動小数点変換器24から出力された第1指数値Lsの値に対して、式(5)に示す演算処理を行い、第2指数値Siを算出する算出器である。上記したように、浮動小数点変換器24は、第1指数値Lsを偶数の値で出力している。よって、彩度指数算出器26が式(5)に示す演算処理を行う際に、小数の概念を含んだ演算を行う必要がない。また、彩度指数算出器26は第2指数値Siを整数値で出力する。
【0044】
ビットシフト演算器27は、LUT25から出力された第2実数値Sr及び彩度指数算出器26から出力された第2指数値Siから、式(3)を満たす彩度値Svを算出する演算器である。第2指数値Siは、彩度指数算出器26から整数値として出力されている。よってビットシフト演算器27は、式(3)の演算処理を行う際に、第2実数値Srの値に対してSi桁分のビットシフトを行うことで、彩度値Svを出力する。ここで、浮動小数点変換器24と、LUT25と、彩度指数算出器26と、ビットシフト演算器27とは、開平器に相当する。
【0045】
次に、色相算出部30について説明する。図2に示すように、色相算出部30は第1色差信号(U)、第2色差信号(V)、彩度算出部20で算出した第1実数値Ks、及び第2指数値Siに基づいて、色相信号(H)を出力する。色相算出部30は、LUT31、Ur乗算器33、Vr乗算器34、セレクター35、LUT36、セレクター減算器37、セレクター加算器38を備えている。
【0046】
ここで、第1色差値Uv、第2色差値Vv、開平結果値Rを用いて、式(6)及び式(7)に示す余弦値Ur及び正弦値Vrを定義する。また彩度算出部20で算出した第2実数値Srを用いて、第2実数値Srの逆数を、式(8)に示すinvSrで定義する。また、式(4)及び式(8)より、invSrを式(8a)で表すことができる。その結果、式(1)〜式(8)、式(8a)より、余弦値Ur及び正弦値Vrは、式(9)及び式(10)で表すことができる。なお、式(8)、式(8a)、式(9)、式(10)のw、mは、正の整数である。上記したnと同様に、後述する各演算器による演算の性質上、演算の精度を確保するため、適宜、w、mに正の整数を代入し、演算によって出力される信号の値に対してビットシフトを行う。
【0047】
Ur=Uv/R ・・・(6)
Vr=Vv/R ・・・(7)
invSr=w/Sr ・・・(8)
invSr=w/2n*√2*√Ks ・・・(8a)
Ur=|Uv|*√2*invSr*2(Si−m) ・・・(9)
Vr=|Vv|*√2*invSr*2(Si−m) ・・・(10)
【0048】
図2に示すLUT31は、浮動小数点変換器24から出力された第1実数値Ksに対応して、式(8a)を満たすinvSrを読み出すLUTである。また、上記したLUT25と同様に、第1実施形態においては、(0〜2047)の値をとる第1実数値Ksに対応したinvSrの値がLUT31に記憶されている。
【0049】
Ur乗算器33は、第1色差値Uv、彩度指数算出器26から出力された第2指数値Si、及びLUT31から出力されたinvSrに対して式(9)に示す演算処理を行い、余弦値Urを算出する。また、Vr乗算器34は、第2色差値Vv、彩度指数算出器26から出力された第2指数値Si、及びLUT31から出力されたinvSrに対して式(10)に示す演算処理を行い、正弦値Vrを算出する。
【0050】
セレクター35は、Ur乗算器33及びVr乗算器34から出力された余弦値Ur及び正弦値Vrの大小を比較し、小さい方の値(以下、セレクター出力値Dとも表記する)を選択し出力する。また、セレクター35は、セレクター出力値Dとともに、余弦値Urと正弦値Vrとの比較の結果、どちらが小さかったのかを示すセレクター情報を出力する。
【0051】
LUT36は、セレクター35が出力したセレクター出力値Dに対応して、式(11)を満たすLUT算出値Eを読み出すLUTである。式(11)のwは、上記のように正の整数である。
【0052】
E=arcsin(D/w) ・・・(11)
なお、Eの単位は「度」である。
【0053】
セレクター減算器37はセレクター35から出力されたセレクター情報に基づいて、(12)又は式(13)で示す2つの減算処理を選択して、LUT出力値Eに対して、色相角Phを算出する。
【0054】
Ur≧Vrのとき Ph=E ・・・(12)
Ur<Vrのとき Ph=90−E ・・・(13)
【0055】
図6に、セレクター加算器38が第1色差値Uvと第2色差値Vvと色相角Phに基づいて色相信号Hの値である色相値Hvを出力する算出方法の説明図を示す。セレクター加算器38は、入力される第1色差値Uvの値と、第2色差値Vvの値との組み合わせによって色相値Hvの出力方法を選択する。
図7に、セレクター加算器38が行う色相値Hvの算出方法を概念的に説明する説明図を示す。図7は、横軸を第1色差値Uv、縦軸を第2色差値VvとしたU−Vグラフである。以下、図6及び図7を用いて、具体例を示してセレクター加算器38による色相値Hvの算出方法を説明する。
【0056】
例えば、セレクター加算器38に入力された第1色差値Uvが正の値、第2色差値Vvが正の値である場合、図7に示すように色相角PhはU−Vグラフ上の第1象限上の角度に相当する。この場合、色相値Hvと色相角Phが同じであることが図7から理解できる。図6において、第1色差値Uvの値が正の値、第2色差値Vvの値が正の値に対応したHの算出方法はHv=Phとなっており、図7を用いて説明した色相値Hvの算出方法に対応していることが分かる。
【0057】
次に、2つ目の具体例として、セレクター加算器38に入力された第1色差値Uvが負の値、第2色差値Vvが負の値である場合、図7に示すように色相角Ph、はU−Vグラフ上の第3象限上の角度に相当する。この場合、図7に示すように、色相値Hvは色相角Phに180度を加算することで求められることが理解できる。図6において、第1色差値Uvの値が負の値、第2色差値Vvの値が負の値に対応したHvの算出方法はHv=Ph+180となっており、図7を用いて説明した色相値Hvの算出方法に対応していることが分かる。上記2つの具体例で示したように、セレクター加算器38では図6に対応した算出方法で、第1色差値Uvと第2色差値Vvと色相角Phに基づいて色相値Hvを出力する。以上、第1色空間変換回路110は上記の方法により、画像信号として入力されたYUV信号に対してYUV−HLS変換を施して、HLS信号を出力する。
【0058】
次に、ユーザーが行う色調整や、色調整の際の液晶プロジェクター100で行う処理の詳細について説明する。第1色空間変換回路110が行ったYUV−HLS変換によって出力されたHLS信号は、色調整回路120に入力される。
図8に、色調整回路120の構成例のブロック図を示す。図8は、色調整回路120に加えて、色調整回路120に各種信号を出力する第1色空間変換回路110及びCPU130をあわせて図示している。この色調整回路120は図示するように、色相調整回路40、彩度調整回路50、明度調整回路60を備えている。
【0059】
色相調整回路40はLUT41を備えている。LUT41は入力される色相信号(H)の値に対して、出力する色相信号(H)の値を記憶したLUTであり、RAMで構成されている。なお、以下、LUTに入力される信号の値を入力信号値、LUTから出力される信号の値を出力信号値とも呼ぶ。
【0060】
彩度調整回路50は、LUT51、LUT52、彩度ゲイン補間回路53、彩度乗算回路54を備えている。彩度調整回路50には、色相信号(H)と彩度信号(S)とが入力される。LUT51は、彩度調整回路50に入力される色相信号と彩度信号のうち、彩度信号の信号値である彩度値がSv=0(彩度値の最小値)のときの、出力する彩度値に対応した出力ゲイン値を、各色相の値ごとに記憶したLUTである。LUT52は、彩度調整回路50に入力される彩度信号の信号値がSv=1023(彩度値の最大値)のときの、出力する彩度値に対応した出力ゲイン値を、各色相の値ごとに記憶したLUTである。彩度ゲイン補間回路53は、彩度信号の入力信号値が0〜1023の間のときの、各色相における彩度信号の出力ゲイン値である彩度ゲイン値を演算し出力する。彩度乗算回路54は、彩度信号(S)と、彩度ゲイン値とを乗算して、色調整後の彩度信号(S)として出力する。
【0061】
明度調整回路60は上記の彩度調整回路50とほぼ構成は同じである。彩度調整回路50と比較して、構成及び処理で異なる点は、処理対象となる信号が明度信号(L)となった点である。明度調整回路60は、LUT61、LUT62、明度ゲイン補間回路63、明度乗算回路64を備えている。明度調整回路60には、色相信号(H)と明度信号(L)とが入力される。LUT61は、明度調整回路60に入力される色相信号と明度信号のうち、明度信号の信号値である明度値がLv=0(明度信号値の最小値)のときの、出力する明度値に対応した出力ゲイン値を、各色相の値ごとに記憶したLUTである。LUT62は、明度調整回路60に入力される明度信号の信号値がLv=1023(明度値の最大値)のときの、出力する明度値に対応した出力ゲイン値を、各色相の値ごとに記憶したLUTである。明度ゲイン補間回路63は、明度信号の入力信号値が0〜1023の間のときの、各色相における明度信号の出力ゲイン値である明度ゲイン値を演算し出力する。明度乗算回路64は、明度信号(L)と、明度ゲイン値とを乗算して、色調整後の明度信号(L)として出力する。なお、色調整回路120内の各LUTは、いずれも、液晶プロジェクター100の電源投入時に初期値が書き込まれる。このLUTの値は、以下に説明するユーザーの操作による色調整の指示により書き換えられる。
【0062】
次にユーザーの指示によって液晶プロジェクター100が行う色調整の処理について説明する。色調整を行うユーザーは、液晶プロジェクター100がスクリーン200に投写する色調整用画像を見ながら色調整を行う。色調整用画像は、色相調整用画像、彩度調整用画像及び明度調整用画像を含んで構成される。
図9に、色調整用画像のうち、色相調整用画像の説明図を示す。色相調整用画像は、LUT41が記憶している、入力信号値と出力信号値との対応関係に基づいて、CPU130が作成する。具体的には、図9の色相調整用画像の横軸が入力信号値に相当し、縦軸が出力信号値に相当する。CPU130は作成した色相調整用画像をスクリーン200に投写する。これらの機能はCPU130が色調整指示部132の機能として行う。そして、スクリーン200に投写された色相調整用画像を見たユーザーは、操作ボタン192を用いて、色相に関する色調整を行う。
【0063】
操作ボタン192を介してユーザーが行う色調整の指示に従って、CPU130は、LUT41に記憶された色相信号(H)の出力信号値の書き換えを行う。出力信号値の書き換えを行ったLUT41は、色相調整回路40に入力された色相信号(H)の値を、書き換え後の出力信号値に従って変更し出力する。
【0064】
図9に示す色相調整用画像は、横軸が入力信号値に相当し、縦軸が出力信号値に相当する。縦軸、横軸ともに、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)に対応する色相値の箇所に基準軸を設けている。そして、色相調整用画像内の太線が、色相調整回路40が行っている色相信号の変更処理の内容を表現している。ユーザーは、操作ボタン192が備える十字キーボタン及び決定ボタンを用いて、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)のいずれかの色相軸を選択・決定する。そして、ユーザーは、選択した色相の太線を上下させることによって太線の形状を変形させ、液晶プロジェクター100が投写する画像の、色相に関する色調整を行う。一例として、図9の色相調整用画像が示す太線によると、色相調整回路40は、投写する画像の「赤(R)を黄(Y)に寄せ、シアン(C)を緑(G)に寄せる」処理を色相信号(H)に対して行う。
【0065】
次に、ユーザーの指示によって液晶プロジェクター100が行う彩度の補正処理について説明する。
図10に、色調整用画像のうち、彩度調整用画像の説明図を示す。実際には、彩度調整用画像には、彩度値がSv=0のときの画像(以下、最小彩度画像とも呼ぶ)と、彩度値がSv=1023のときの画像(以下、最大彩度画像とも呼ぶ)との2つの画像がある。最小彩度画像と最大彩度画像は、処理内容を示す太線の形状は各々異なるが、それ以外の部分は同じであるので、図10にはSv=0のときの彩度調整用画像、つまり最小彩度画像を示した。
【0066】
図10に示す最小彩度画像の横軸は、色調整回路120に入力される色相信号の値を示している。縦軸は、入力された彩度信号の入力信号値に対応して出力する彩度信号の出力ゲインの値を示している。横軸には、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)に対応する色相値の箇所に基準軸を設けている。そして、最小彩度画像内の太線が、入力色相信号の値ごとの、Sv=0の入力彩度信号に対して、出力する彩度信号の値に対応した出力ゲイン値を表現している。なお上記のように、最大彩度画像は、図10に示した最小彩度画像の太線の形状以外は同様の画像であるので、説明は省略する。
【0067】
ユーザーは、上記の色相調整の操作と同様に、操作ボタン192が備える十字キーボタン及び決定ボタンを用いて、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)のいずれかの色相軸を選択・決定する。そして、ユーザーは、最小彩度画像及び最大彩度画像の太線の形状を変形させて、液晶プロジェクター100が投写する画像の、彩度信号の出力ゲインを調整することによって、彩度に関する色調整を行う。
【0068】
上記の彩度調整回路50が行う処理内容について、図11を用いて具体例を示して説明する。
図11に、彩度調整回路50が行う処理の具体例の内容に沿った概念の説明図を示す。図11のLUT51、LUT52に示すように、事前にユーザーが最小彩度画像及び最大彩度画像の太線の形状を変形させることによって、Sv=0、Sv=1023のときの彩度信号の出力ゲイン値が設定されているものとする。ここで、色調整回路120に画像信号が入力され、その画像信号に含まれる色相信号(H)と彩度信号(S)とが彩度調整回路50に入力された場合を考える。このときの、例えば、色相値Hv、彩度値SvをそれぞれHv=p、Sv=qであるものとする。LUT51、LUT52にそれぞれ、Hv=pの色相信号が入力されると、LUT51はSv=0のときの出力ゲイン値を、LUT52はSv=1023のときの出力ゲイン値を出力する。本具体例においては、図11に示すように、LUT51におけるSv=0のときの出力ゲイン値は1.5である。またLUT52におけるSv=1023のときの出力ゲイン値は0.7である。この2つの出力ゲイン値が、彩度ゲイン補間回路53に入力される。
【0069】
彩度ゲイン補間回路53は、図11に示すように、Hv=pのときの補間直線を生成する。補間直線は、Sv=0のときの出力ゲイン値1.5に対応する点と、Sv=1023のときの出力ゲイン値0.7に対応する点とを直線で結んだ線である。彩度ゲイン補間回路53は、Hv=pに対応した補間直線を生成すると、入力された彩度信号の入力信号値(彩度値)Sv=qに対応する彩度ゲイン値を補間直線より算出し、彩度乗算回路54に向けて出力する。本具体例においては、図11に示すように、入力信号値(彩度値)Sv=qに対応する彩度ゲイン値は1.3となる。彩度乗算回路54は、彩度調整回路50に入力された彩度信号(S)の入力信号値に彩度ゲイン値1.3を乗じた値に対応した彩度信号を、色調整後の彩度信号として出力する。
【0070】
次に、ユーザーの指示によって液晶プロジェクター100が行う明度の補正処理について説明する。色調整を行うユーザーは、液晶プロジェクター100がスクリーン200に投写する色調整用画像のうち、明度調整用画像を見ながら明度に関する色調整を行う。ユーザーが画像の明度調整を行うための明度調整用画像については、上記で説明した彩度調整用画像と同様の画像であり、調整の対象となる要素が明度になったことが、上記の彩度調整用画像とは異なる。よって、明度調整用画像の説明及び図は省略する。
【0071】
以上のように、液晶プロジェクター100では、操作制御部190及び操作ボタン192を介してユーザーが行う色調整の指示に従って、CPU130が色調整指示部132の処理として、色調整回路120に備える各LUTの書き換えが行われる。その結果、液晶プロジェクター100が投写する画像の色調整が行われる。なお、液晶プロジェクター100は、図示しないOSD(オンスクリーンディスプレイ)処理部を備えている。そして、CPU130はOSD処理部の機能として、色相調整用画像、彩度調整用画像、明度調整用画像をそれぞれ、投写画像に重畳してスクリーン200に投写する。また、色調整用画像上に表現された変更・補正処理の内容を示す太線は、ユーザーが色調整の操作によって上下させると、滑らかな曲線形状となるような曲線補間処理を、色調整指示部132が行っている。
【0072】
上記のように、第1色空間変換回路110によってHLS信号に変換してから、色相、彩度及び明度を調整するようにしたので、ユーザーにとって直感的に調整しやすくなる。一方、液晶ライトバルブ160は、YUV信号やRGB信号により制御されるため、第1実施形態では、第1色空間変換回路140で変換したHLS信号を第2色空間変換回路140がYUV信号に変換する。第2色空間変換回路140は、ユーザーによって色調整が行われ、色調整回路120によって変更・補正が施された後のHLS信号に対して、HLS−YUV変換をし、変換したYUV信号を液晶ライトバルブ駆動回路150に向けて出力する回路である。ところが、単純にHLS信号をYUV信号に変換する場合、次のような不都合が生じる。
【0073】
図12に、YUV色空間及びHLS色空間をY軸及びL軸上から見た図を示す。ここで、YUV色空間は3次元直交座標空間であり、図12では色域C1内においてYUV信号が定義される。一方、HLS色空間は3次元極座標空間であり、図12では色域C2内においてHLS信号が定義される。即ち、第2色空間変換回路140が行う変換処理は、色域C2内の(S,H)を色域C1内の(U,V)に変換する処理である。しかしながら、ユーザーが上記の色調整の指示によって彩度を上げて位置Pに対応する色に調整した場合、位置Pにおける彩度信号(S)及び色相信号(H)に対応するHLS信号をYUV信号に変換すると、色域C1内の位置P1にマッピングされてしまう。この位置P1におけるHLS信号は、図12に示すように例えば彩度信号(S1)及び色相信号(H1)となり、変換前後で色相の違いが生じ、変換前後の色の変化がより目立つようになる。そこで、第2色空間変換回路140は、次のように変換前後で色相が変化しないようにHLS信号をYUV信号に変換する。
【0074】
図13に、第2色空間変換回路140の構成例のブロック図を示す。第2色空間変換回路140は、Ph出力器71、LUT73、LUT74、第1色差出力器75、第2色差出力器76、彩度調整回路(彩度信号調整部)80を備えている。ここで、Ph出力器71、LUT73、LUT74、第1色差出力器75、第2色差出力器76は、色差信号生成回路(色差信号生成部)として機能する。なお、第1色空間変換回路110の構成と同様に、図示しない同期クロックが、各演算器に入力されており、回路間の動作を同期させているが、同期クロック信号については図示を省略している。よって、第2色空間変換回路140に入力されたHLS信号は、この同期クロックを用いたその一組の信号に対応したYUV信号として変換され、同期して出力される。
【0075】
第2色空間変換回路140に入力された明度信号(L)は、上記のように、図3に示した座標空間において、輝度信号(Y)と1対1で対応しているので、明度信号(L)をそのまま輝度信号(Y)として出力する。
【0076】
Ph出力器71は入力された色相信号(H)から、色相角Phと、色相信号(H)に対応する色相値HvのU−Vグラフ(図7)上での象限値DIV_H(第1象限から第4象限に対応した値)とを算出する。
図14に、Ph出力器71に入力された色相値Hvに対応して、色相角Phと、象限値DIV_Hとを算出する算出方法を示した説明図を示す。色相値Hvの大きさによって、色相角Phの算出する方法が異なる。一例として、色相値Hv=100(度)のとき、色相値Hvは図14において、90〜180(度)の範囲に対応しているので、色相角Phの算出方法はPh=180−Hvとなり、Ph=80(度)となる。またこのとき、色相値Hv(=100(度))はU−Vグラフ(図7)では第2象限に存在し、DIV_H=1として出力される。このようにして、色相値Hvから色相角Phと象限値DIV_Hとを出力する。
【0077】
図13において、Ph出力器71から出力された色相角Phに対応する信号はLUT73及びLUT74に入力される。LUT73は、入力された色相角Phの信号に対応して、その余弦値であるcos(Ph)を出力するLUTである。またLUT74は、入力された色相角Phの信号に対応して、その正弦値であるsin(Ph)を出力するLUTである。Ph出力器から出力された色相角Phに対応する信号は、LUT73及びLUT74を介して、cos(Ph)及びsin(Ph)に対応する信号に変換され、第1色差出力器75及び第2色差出力器76に向けて出力される。
【0078】
彩度調整回路80は、比較器(比較部)81、彩度最大値生成回路(彩度最大値生成部)82を備えている。彩度最大値生成回路82は、色域C1内において色相値Hvに対応する彩度値Svの最大値である彩度最大値Smaxを出力する。色域C1が明確に定義できるため、この彩度最大値生成回路82は、色相値Hvに対応した彩度値Svのうち色域C1の境界値における彩度成分を彩度最大値Smaxとして出力すればよい。このような彩度最大値生成回路82は、LUTにより構成することができる。
【0079】
図15に、色相値Hvに応じて彩度最大値生成回路82が出力する彩度最大値Smaxの説明図を示す。彩度最大値生成回路82がLUTにより構成される場合、色相値Hvを入力信号値、彩度最大値Smaxを出力信号値として、各色相値に対応して予め演算して求めた彩度最大値Smaxを記憶させておけばよい。そして、色相値Hvが入力信号値として与えられたとき、該入力信号値に対応して記憶された出力信号値を彩度最大値Smaxとして出力すればよい。
【0080】
比較器81は、彩度値Svと、彩度最大値Smaxとを比較し、その比較結果に応じた値を出力する。具体的には、比較器81は、彩度値Sv及び彩度最大値Smaxのうち小さい方を選択出力する。即ち、色調整回路120からの彩度値Svが彩度最大値Smax以下であるとき、比較器81は、彩度値Svを選択出力する。色調整回路120からの彩度値Svが彩度最大値Smaxより大きいとき、比較器81は、彩度最大値Smax選択出力する。こうして比較器81により選択出力された値が、彩度値Svとして第1色差出力器75及び第2色差出力器76に入力される。
【0081】
図16に、第2色空間変換回路140の動作説明図を示す。図16は、YUV色空間及びHLS色空間をY軸及びL軸上から見た図であり、色域C1、C2については、図12と同様である。上記のように第2色空間変換回路140が色空間変換処理を行うため、色域C2内の位置Pの色は、色相値Hvを一定にしたまま色域C1内の位置P2にマッピングされる。この位置P2におけるHLS信号は、変換前後の彩度値は異なるものの、色相値は変換前後で変わらない。従って、変換前後で色の違いが見えにくくなり、その結果、色調整後にYUV信号に変換しても、元の色を維持することができる。
【0082】
図13に示すように、第1色差出力器75は、彩度値Svと、cos(Ph)と、象限値DIV_Hとに対応した信号に基づいて、第1色差値Uvに対応した信号を出力する。
図17に、第1色差出力器75が行う演算の演算式を、象限値DIV_Hの値に対応させて示した説明図を示す。第1色差出力器75は、象限値DIV_Hの値(0〜3)に基づいて、第1色差値Uvを出力する演算式を選択する。そして、象限値DIV_Hに対応して選択した演算式を用いて、入力された彩度値Svと、cos(Ph)とに基づいて第1色差値Uvに対応する信号を出力する。
【0083】
第2色差出力器76は、彩度値Svと、sin(Ph)と、象限値DIV_Hとに対応した信号に基づいて、第2色差値Vvに対応した信号を出力する。
図18に、第2色差出力器76が行う演算の演算式を、象限値DIV_Hの値に対応させて示した説明図を示す。第2色差出力器76は、象限値DIV_Hの値に基づいて、第2色差値Vvを出力する演算式を選択する。そして、象限値DIV_Hに対応して選択した演算式を用いて、彩度値Svと、sin(Ph)とに基づいて第2色差値Vvに対応する信号を出力する。こうして、第2色空間変換回路140は、入力されたHLS信号に対して、HLS−YUV変換を行い、YUV信号を出力する。
【0084】
以上説明したように、液晶プロジェクター100は、入力されたYUV信号の画像信号を、第1色空間変換回路110でYUV−HLS変換し、HLS信号を出力する。そして、色調整回路120において、ユーザーからの色調整の指示により、HLS信号である画像信号を変更・補正する。その後、液晶プロジェクター100は、第2色空間変換回路140で色相を維持しながらHLS−YUV変換し、YUV信号を出力する。このとき、色調整回路120が、画像信号をHLS信号の状態で変更・補正処理を行うので、液晶プロジェクター100は、その処理内容を、色相、明度、彩度の3つの要素、つまりマンセル表色系で表現した色調整用画像として、ユーザーに示すことができる。また、ユーザーは、その色調整用画像を見ながら、画像の色調整を、色相、明度、彩度の各要素において変更・補正することができる。更に、第1実施形態では、色調整用画像における色相を、青(B)、マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)の6つの基準軸を用いて表現している。そのため、ユーザーは色の目安となる、上記6つの色相を基準にしながら容易に画像の色調整を行うことができる。加えて、液晶プロジェクター100は、ハードウェアとして第1色空間変換回路110及び色調整指示部132を備えるので、処理が高速であり、入力される画像信号のHLS信号への変換及び変更・補正処理をリアルタイムに行うことが可能となる。更にまた、色相が変化しないように変換を行っているので、変換前後で色の違いが見えにくくなり、元の色を維持することができるようになる。その結果、画像の色味等を高精度に調整できるようになる。
【0085】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では、第2色空間変換回路140において、彩度調整回路90が色調整回路120からの色相値Hvに基づいて彩度最大値を生成する例について説明したが、これに限定されるものではない。
【0086】
図19に、本発明に係る第2実施形態における第2色空間変換回路の構成例のブロック図を示す。第2実施形態における第2色空間変換回路140aは、第2色空間変換回路140に代えて図1の液晶プロジェクター100に適用できる。なお、図19において、図13と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
第2色空間変換回路140aが第2色空間変換回路140と異なる点は、彩度最大値生成回路92が色相角Phと象限値DIV_Hとに基づいて彩度最大値Smaxを出力し、比較器91が彩度値Svとこの彩度最大値Smaxとを比較する点である。色調整回路120からの色相値Hvは、色相角Ph及び象限値DIV_Hの組み合わせに対応している。そのため、彩度最大値生成回路92は、例えば図15のように色相角Ph及び象限値DIV_Hの組み合わせに対応した彩度最大値Smaxを出力するLUTにより構成でき、説明及び図示は省略する。
【0087】
〔第3実施形態〕
第1実施形態及び第2実施形態では、第2色空間変換回路が色相に応じた彩度を用いて第1色差信号及び第2色差信号を出力するものとして説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係る第3実施形態では、第2色空間変換回路が色相及び彩度に基づいて生成した第1色差信号及び第2色差信号の比を一定に維持しながら、第1色差信号及び第2色差信号を調整することで、変換前後の色相が変化しないようにしている。
【0088】
図20に、本発明に係る第3実施形態における第2色空間変換回路の構成例のブロック図を示す。第3実施形態における第2色空間変換回路140bは、第2色空間変換回路140に代えて図1の液晶プロジェクター100に適用できる。なお、図20において、図13と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
第2色空間変換回路140bが第2色空間変換回路140と異なる点は、彩度最大値生成回路82が省略され、色差調整回路(色差信号調整部)95が設けられている点である。色差調整回路95には、第1色差出力器75が出力する第1色差値Uvに対応した信号u1、第2色差出力器76が出力する第2色差値Vvに対応した信号v1が入力される。そして、色差調整回路95は、信号u1及び信号v1の比を維持しつつ、信号u1又は信号v1をYUV信号に対応した色域C1(図12参照)の境界値にクリッピングすることにより得られる第1色差信号U及び第2色差信号Vを出力する。
【0089】
図21に、第2色空間変換回路140bの動作説明図を示す。図21は、YUV色空間及びHLS色空間をY軸及びL軸上から見た図であり、色域C1、C2については、図12と同様である。また、図21では、信号u1、v1の色域C3をあわせて図示している。
図21では、色差調整回路95の処理によって、信号u1及び信号v1を有する色域C2内の位置Pの色は、信号u1及び信号v1の比を維持しつつ色域C1の境界位置である位置P3にマッピングされる。図22の場合、信号u1が色域C1の境界値にクリッピングされる。信号u1及び信号v1の比は、色相値Hvに対応しているため、この位置P3におけるHLS信号は、変換前後の彩度値は異なるものの、色相値は変換前後で変わらない。従って、変換前後で色の違いが見えにくくなり、その結果、色調整後にYUV信号に変換しても、元の色を維持することができる。
【0090】
このような色差調整回路95は、次のような動作を行うことで実現できる。
図22に、色差調整回路95の動作説明図を示す。色差調整回路95は、信号u1、v1の比較結果に応じて、図22に示す演算式で得られた第1色差信号U及び第2色差信号Vを出力する。色差調整回路95がLUTにより構成される場合、信号u1及び信号v1を入力信号値、第1色差信号U及び第2色差信号Vを出力信号値として、信号u1及び信号v1の組み合わせに対応した第1色差信号U及び第2色差信号Vを記憶させておけばよい。そして、信号u1及び信号v1が入力信号値として与えられたとき、該入力信号値に対応して記憶された出力信号値を第1色差信号U及び第2色差信号Vとして出力すればよい。
【0091】
なお、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0092】
(1)上記の実施形態では、色調整回路120が出力したHLS信号を、第2色空間変換回路140がYUV信号に変換しているが、本発明これに限定されるものではない。例えば第2色空間変換回路140が行う信号変換は、YUV信号への信号変換に限らず、画像表示に適した信号であれば、その他の信号形式への変換でもよい。また液晶プロジェクター100が、YUV信号形式で画像を表示可能な回路及び処理部を備えるようにすれば、液晶プロジェクター100は第2色空間変換回路140を備えないとしても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
(2)上記の実施形態では、色調整用画像を、液晶プロジェクター100がスクリーン200に投写することによってユーザーに示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば液晶プロジェクター100に接続されたコンピューターのディスプレイ画面上に、色調整用画像を表示することによって、ユーザーに示すようにしてもよい。
【0094】
(3)上記の実施形態では、色調整回路120が行っている処理内容を、色調整用画像として、ユーザーが視認可能な表示部に示し、ユーザーがその色調整用画像を見ながら投写画像の色調整を行うとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば液晶プロジェクター100が色調整用画像を表示せず、色相、明度、彩度、つまりマンセル表色系で表現された色調整用操作パネルや、色調整用の青(B)等の色相ごとの調整用ダイヤルを備えるようにしてもよい。この場合、別に備える切換ボタンによって、色相調整、明度調整、彩度調整を切り替えて色調整を行うことができる。或いは、色調整用の操作機能部を、液晶プロジェクター100が備えるようにし、ユーザーがスクリーン200上の投写画像を見ながら、その操作機能部を操作して投写画像の色調整をするとしてもよい。
【0095】
(4)上記の実施形態では、色調整用画像において、色調整用画像における色相を、青(B)マゼンダ(M)、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、シアン(C)の6つの基準軸を用いて表現したが、基準軸の数は3つ、4つ、8つ等、任意の数としてもよい。また、色調整用画像における色相の基準軸の数を、ユーザーが任意に設定できるとしてもよい。その他、色調整用画像に色相の基準軸を設けず、色相を連続階調で表現するとしてもよい。また、色調整用画像を、マンセル色立体を3次元表現した画像としてユーザーに示し、液晶プロジェクター100に接続されたコンピューターが備えるマウス等で直接、ユーザーが、マンセル色立体上に表現された変更・補正処理の内容を操作するとしてもよい。
【0096】
(5)上記の実施形態では、画像表示装置として液晶プロジェクター100を例示したが、光変調素子を液晶ライトバルブに限定するものではなく、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)を用いることができる。また、本発明はプラズマディスプレイや有機ELディスプレイ等、直視型の画像表示装置として実装することもできる。
【0097】
(6)上記の実施形態において、入力される彩度値Sv及び色相値Hvに基づいて、直接、第1色差信号U及び第2色差信号Vを調整するようにしてもよい。
【0098】
(7)なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、色空間変換装置及び方法、画像処理装置及び方法、画像表示装置及び方法、それらの装置又は方法の機能を実現するための集積回路、コンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0099】
10…明度算出部、 20…彩度算出部、 21…第1乗算器、 22…第2乗算器、
23…加算器、 24…浮動小数点変換器、 25,31,36,41,51,52,61,62,73,74…LUT、 26…彩度指数算出器、
27…ビットシフト演算器、 30…色相算出部、 35…セレクター、
37…セレクター減算器、 38…セレクター加算器、 40…色相調整回路、
50…彩度調整回路、 53…彩度ゲイン補間回路、 54…彩度乗算回路、
60…明度調整回路、 63…明度ゲイン補間回路、 64…明度乗算回路、
75…第1色差出力器、 76…第2色差出力器、
80,90…彩度調整回路(彩度信号調整部)、 81,91…比較器(比較部)、
82,92…彩度最大値生成回路(彩度最大値生成部)、
95…色差調整回路(色差信号調整部)、 100…液晶プロジェクター、
102…内部バス、 110…第1色空間変換回路、
120…色調整回路(色調整部)、 130…CPU、 132…色調整指示部、
140,140a,140b…第2色空間変換回路、
150…液晶ライトバルブ駆動回路、 160…液晶ライトバルブ、
170…光源部、 171…ランプ、 172…レンズ、 180…投写レンズ、
190…操作制御部、 192…操作ボタン、 200…スクリーン、
C1〜C3…色域、 D…セレクター出力値、 DIV_H…象限値、
R…開平結果値、 H…色相信号、 Hv…色相値、 Ks…第1実数値、
L…明度信号、 Ls…第1指数値、 Lv…明度値、 S…彩度信号、
Sv…彩度値、 U…第1色差信号、 Uv…第1色差値、 Uv2…第1乗算値、
V…第2色差信号、 Vv…第2色差値、 Vv2…第2乗算値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換装置であって、
前記HLS信号に含まれる彩度信号を、前記HLS信号に含まれる色相信号に応じて調整する彩度信号調整部と、
前記色相信号と、前記彩度信号調整部によって調整された前記彩度信号とに基づいて、前記YUV信号に含まれる色差信号を生成する色差信号生成部とを含むことを特徴とする色空間変換装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記彩度信号調整部は、
前記色相信号に対応した彩度最大値を生成する彩度最大値生成部と、
前記彩度信号に対応した彩度値又は前記彩度最大値のうち小さい方を出力する比較部とを含み、
前記色差信号生成部は、
前記色相信号と前記比較部からの出力信号とに基づいて、前記色差信号を生成することを特徴とする色空間変換装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記彩度最大値生成部は、
前記YUV信号に対応した色域の境界値における彩度成分を前記彩度最大値として出力することを特徴とする色空間変換装置。
【請求項4】
HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換装置であって、
前記HLS信号に含まれる色相信号及び彩度信号に基づいて、前記YUV信号に含まれる第1色差信号及び第2色差信号を生成する色差信号生成部と、
前記第1色差信号の信号値と前記第2色差信号の信号値との比を維持しつつ、前記第1色差信号の信号値又は前記第2色差信号の信号値を前記YUV信号に対応した色域の境界値にクリッピングすることにより得られた前記第1色差信号及び前記第2色差信号を出力する色差信号調整部とを含むことを特徴とする色空間変換装置。
【請求項5】
YUV信号をHLS信号に変換する第1色空間変換部と、
前記第1色空間変換部によって変換された前記HLS信号を構成する色相信号、明度信号及び彩度信号の少なくとも1つを調整し、調整後のHLS信号を出力する色調整部と、
前記色調整部によって調整されたHLS信号をYUV信号に変換する請求項1乃至4のいずれか記載の色空間変換装置とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
画像信号に基づいて画像を表示する画像表示装置であって、
前記画像信号に対応したHLS信号をYUV信号に変換する請求項1乃至4のいずれか記載の色空間変換装置を含み、
前記色空間変換装置によって変換された前記YUV信号を用いて画像を表示することを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換方法であって、
前記HLS信号に含まれる色相信号に応じて、前記HLS信号に含まれる彩度信号を調整する彩度信号調整ステップと、
前記色相信号と、前記彩度信号調整ステップにおいて調整された彩度信号とに基づいて、前記YUV信号に含まれる色差信号を生成する色差信号生成ステップとを含むことを特徴とする色空間変換方法。
【請求項8】
HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換方法であって、
前記HLS信号に含まれる色相信号及び彩度信号に基づいて、前記YUV信号に含まれる第1色差信号及び第2色差信号を生成する色差信号生成ステップと、
前記第1色差信号の信号値と前記第2色差信号の信号値との比を維持しつつ、前記第1色差信号の信号値又は前記第2色差信号の信号値を前記YUV信号に対応した色域の境界値にクリッピングすることにより得られた前記第1色差信号及び前記第2色差信号を出力する色差信号調整ステップとを含むことを特徴とする色空間変換方法。
【請求項1】
HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換装置であって、
前記HLS信号に含まれる彩度信号を、前記HLS信号に含まれる色相信号に応じて調整する彩度信号調整部と、
前記色相信号と、前記彩度信号調整部によって調整された前記彩度信号とに基づいて、前記YUV信号に含まれる色差信号を生成する色差信号生成部とを含むことを特徴とする色空間変換装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記彩度信号調整部は、
前記色相信号に対応した彩度最大値を生成する彩度最大値生成部と、
前記彩度信号に対応した彩度値又は前記彩度最大値のうち小さい方を出力する比較部とを含み、
前記色差信号生成部は、
前記色相信号と前記比較部からの出力信号とに基づいて、前記色差信号を生成することを特徴とする色空間変換装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記彩度最大値生成部は、
前記YUV信号に対応した色域の境界値における彩度成分を前記彩度最大値として出力することを特徴とする色空間変換装置。
【請求項4】
HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換装置であって、
前記HLS信号に含まれる色相信号及び彩度信号に基づいて、前記YUV信号に含まれる第1色差信号及び第2色差信号を生成する色差信号生成部と、
前記第1色差信号の信号値と前記第2色差信号の信号値との比を維持しつつ、前記第1色差信号の信号値又は前記第2色差信号の信号値を前記YUV信号に対応した色域の境界値にクリッピングすることにより得られた前記第1色差信号及び前記第2色差信号を出力する色差信号調整部とを含むことを特徴とする色空間変換装置。
【請求項5】
YUV信号をHLS信号に変換する第1色空間変換部と、
前記第1色空間変換部によって変換された前記HLS信号を構成する色相信号、明度信号及び彩度信号の少なくとも1つを調整し、調整後のHLS信号を出力する色調整部と、
前記色調整部によって調整されたHLS信号をYUV信号に変換する請求項1乃至4のいずれか記載の色空間変換装置とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
画像信号に基づいて画像を表示する画像表示装置であって、
前記画像信号に対応したHLS信号をYUV信号に変換する請求項1乃至4のいずれか記載の色空間変換装置を含み、
前記色空間変換装置によって変換された前記YUV信号を用いて画像を表示することを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換方法であって、
前記HLS信号に含まれる色相信号に応じて、前記HLS信号に含まれる彩度信号を調整する彩度信号調整ステップと、
前記色相信号と、前記彩度信号調整ステップにおいて調整された彩度信号とに基づいて、前記YUV信号に含まれる色差信号を生成する色差信号生成ステップとを含むことを特徴とする色空間変換方法。
【請求項8】
HLS信号をYUV信号に変換する色空間変換方法であって、
前記HLS信号に含まれる色相信号及び彩度信号に基づいて、前記YUV信号に含まれる第1色差信号及び第2色差信号を生成する色差信号生成ステップと、
前記第1色差信号の信号値と前記第2色差信号の信号値との比を維持しつつ、前記第1色差信号の信号値又は前記第2色差信号の信号値を前記YUV信号に対応した色域の境界値にクリッピングすることにより得られた前記第1色差信号及び前記第2色差信号を出力する色差信号調整ステップとを含むことを特徴とする色空間変換方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−39274(P2012−39274A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176007(P2010−176007)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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