説明

色素増感型太陽電池用電極、その製造方法、および色素増感型太陽電池用電極を備える色素増感型太陽電池

【課題】高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極、その製造方法、および色素増感型太陽電池用電極を備える色素増感型太陽電池を提供する。
【解決手段】色素増感型太陽電池用電極10は、板状の透明基材21と透明電極層2との間に、線状の金属電極3を備える。金属電極3の側面は側面保護部7に覆われ、保護されている。側面保護部7は、ネガ型フォトレジストを露光および現像して形成される。ネガ型フォトレジストは、露光されなかった部分が、現像液に溶解して除去され、露光された部分が残る。ここで、透明基材21は光を透過し、金属電極3は光を透過しない。よって、金属電極3を形成した後に、金属電極3を覆うようにネガ型フォトレジストを塗布し、透明基材21の下面側から露光および現像することによって、側面保護部7を形成することができる。よって、簡単に製造でき、且つ高い耐食性を有する色素増感型太陽電池用電極10を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池用電極、その製造方法、および色素増感型太陽電池用電極を備える色素増感型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、増感色素を吸着させた酸化物半導体を電極に用いた色素増感型太陽電池が知られている。色素増感型太陽電池は、透明電極層上に分光増感色素を吸着させた金属酸化物半導体層が形成された色素増感型太陽電池用電極を備える。そして、色素増感型太陽電池用電極と間隙をおいて対向電極が配置されており、色素増感型太陽電池用電極と対向電極との間に電解液が封入されている。
【0003】
ところで、色素増感型太陽電池用電極では、透明電極層を厚くすれば、導電率を向上させることができるが、透過率が低下して光電変換効率が低下してしまうとともに、生産性の低下や製造コストの増大を招いてしまう。そこで、透明電極層の上面に、透明電極層よりも電気抵抗率が低く、かつ不動態膜を形成しやすい金属またはその合金からなるメッシュ状の導電体を補助電極(本願における金属電極)として形成した色素増感型太陽電池用電極が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この色素増感型太陽電池用電極では、透明電極層の上面に補助電極を形成することにより、電極の低抵抗化を図ることができる。また、補助電極の表面に不動態膜を形成させることができるため、金属電極が電解液により腐食されることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−197176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の色素増感型太陽電池電極では、透明電極層の表面特性により、不動態膜を透明電極層の表面に密着させることができないため、不動態膜と透明電極層との間に、隙間が形成されてしまい、電解液がこの隙間に入り込んで、補助電極を腐食してしまうことになる。そのため、色素増感型太陽電池用電極の導電性が劣化してしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極、その製造方法、および色素増感型太陽電池用電極を備える色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第一の態様に係る色素増感型太陽電池用電極は、板状の透明基材と、前記透明基材の上面に線状に形成される金属電極と、前記透明基材の上面の前記金属電極が形成されていない部分に形成されて前記金属電極の側面を覆い、透明なネガ型フォトレジストを露光および現像してなる側面保護部と、前記金属電極の上面および前記側面保護部の上面を覆う透明電極層とを備えることを特徴とする。
【0008】
本態様に係る色素増感型太陽電池用電極では、金属電極の側面を側面保護部が覆い、金属電極の上面を透明電極層が覆っているので、金属電極が外部に露出しない。色素増感型太陽電池用電極は、使用時には、ハロゲンを含んだ電解質溶液に晒された状態となるが、この場合にも金属電極は、電解質に晒されることがないので、電解質によって腐食されることがない。よって、金属電極の腐食を防止して、金属電極の耐久性を高めることができる。よって、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極を提供できる。
【0009】
また、側面保護部は、ネガ型フォトレジストを露光および現像して形成される。ネガ型フォトレジストは露光および現像されると、露光されなかった部分のみが現像液に溶解して除去され、露光された部分は除去されない。ここで、透明基材は光を透過し、金属電極は光を透過しない。そのため、金属電極を形成した後に、金属電極を覆うようにネガ型フォトレジストを塗布し、透明基材の下面側から露光および現像することによって側面保護部を形成することができる。
【0010】
すなわち、金属電極を覆うようにネガ型フォトレジストを塗布し、透明基材の下面側から光照射すると、塗布されたネガ型フォトレジストのうち、金属電極の上方には、光が照射されず、それ以外の部分には光が照射される。よって、塗布されたネガ型フォトレジストのうち、透明基材の上面の金属電極の形成されていない部分を除去せず残して、側面保護部とすることができる。このように、金属電極をフォトマスクとして機能させることができるので、簡単に側面保護部を形成することができる。また、金属電極がネガ型フォトレジストを露光、および現像する際のフォトマスクとして機能するので、金属電極に対して、側面保護部を密着させることができる。また、金属電極の配置位置がずれた場合であっても、側面保護部を金属電極に密着させることができる。しかも、側面保護部は樹脂により形成されているため、電解液に対して高い耐食性を有する。このように、側面保護部は金属電極に対して高い密着性を有し、且つ電解液に対して高い耐食性を有するので、側面保護部によって、確実に金属電極の側面を保護することができる。
【0011】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記金属電極の上方の前記透明電極層の上面に、ポジ型フォトレジストを露光および現像してなる上面保護部が形成されていてもよい。
【0012】
この場合には、上面保護部が金属電極の上部を保護することができる。よって、一層確実に金属電極を保護することができる。また、上面保護部は、金属電極と、側面保護部と、透明電極層とを形成した後に、透明電極層を覆うようにポジ型フォトレジストを塗布し、透明基材の下面側から露光および現像することによって形成することができる。ポジ型フォトレジストは露光された部分が、現像液に溶解して除去され、露光されなかった部分が残る。すなわち、金属電極と、側面保護部と、透明電極層とを形成した後に、透明電極層を覆うようにポジ型フォトレジストを塗布し、透明基材の下面側から露光および現像すると、塗布されたポジ型フォトレジストのうち、金属電極の上方に位置する部分は、露光されず、それ以外の部分は露光される。よって、塗布されたポジ型フォトレジストのうち、金属電極の上方に位置する部分を残して、上面保護部とすることができる。そのため、簡単に上面保護部を形成することができる。また、金属電極の配置位置がずれた場合であっても、上面保護部を金属電極の上方に形成することができる。しかも、上面保護部は樹脂により形成されているため、電解液に対して高い耐食性を有する。よって、上面保護部を形成することにより、一層確実に金属電極を保護することができる。
【0013】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記金属電極は、前記透明基材の上面に形成され、前記透明電極層よりも導電率の大きい金属からなる導電性金属部と、前記導電性金属部の少なくとも上面を覆い、前記導電性金属部よりもハロゲン電解質溶液に対する耐食性の高い金属からなる耐食性金属部とを備えていてもよい。
【0014】
金属電極が導電率の高い導電性金属部を備えているため、金属電極の導電率を高めることができる。よって、色素増感型太陽電池用電極の低抵抗化を図ることができる。また、導電性金属部の少なくとも上面に形成された耐食性金属部によって、導電性金属部の少なくとも上面を保護することができる。そのため、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極を提供できる。
【0015】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極において、前記耐食性金属部は、チタン、白金、ロジウム、ルテニウム、タングステンの金属群から選択される一種の金属により形成されるか、またはこれらの金属群から選択される二種以上の金属からなる合金により形成されていてもよい。この場合には、耐食性金属部の耐食性を確実に高めることができるので、導電性金属部を一層確実に保護することができる。
【0016】
また、本発明の第二の態様に係る色素増感型太陽電池用電極の製造方法は、板状の透明基材の上面に線状の金属電極を形成する第一の工程と、前記透明基材の上面と、前記金属電極の上面および側面とを覆うように、透明なネガ型フォトレジストを塗布してネガ型フォトレジスト層を形成する第二の工程と、前記透明基材の下面側から、前記透明基材に光を照射し、前記ネガ型フォトレジスト層を露光した後、現像して、前記透明基材の上面の前記金属電極が形成されていない部分に、前記金属電極の側面を覆い、前記ネガ型フォトレジストが露光および現像されてなる側面保護部を形成する第三の工程と、前記金属電極の上面および前記側面保護部の上面を覆う透明電極層を形成する第四の工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
本態様に係る色素増感型太陽電池用電極の製造方法によれば、第一の工程において、板状の透明基材の上面に線状の金属電極を形成する。第二の工程において、透明基材の上面と、金属電極の上面および側面とを覆うように、透明なネガ型フォトレジストを塗布してネガ型フォトレジスト層を形成する。第三の工程において、透明基材の下面側から、透明基材に光を照射し、ネガ型フォトレジスト層を露光した後、現像して、透明基材の上面の金属電極が形成されていない部分に、金属電極の側面を覆い、前記ネガ型フォトレジストが露光および現像されてなる側面保護部を形成する。第四の工程において、金属電極の上面および側面保護部の上面を覆う透明電極層を形成する。
【0018】
第二の工程において、金属電極を覆うようにネガ型フォトレジストを塗布し、第三の工程において、透明基材の下面側から光を照射すると、塗布されたネガ型フォトレジストのうち、金属電極の上方に形成された部分は露光されず、それ以外の部分は露光される。言いかえれば、透明基材の上面の金属電極の形成されていない部分のみ露光される。ネガ型フォトレジストは露光されなかった部分が、現像液に溶解して除去され、露光された部分が残る。よって、塗布されたネガ型フォトレジストのうち、透明基材の上面の金属電極の形成されていない部分が残り、側面保護部となる。このように、金属電極をフォトマスクとして機能させることができるので、簡単に側面保護部を形成することができる。また、金属電極に対して、側面保護部を密着させることができる。また、金属電極の配置位置がずれた場合であっても、側面保護部を金属電極に密着させることができる。しかも、側面保護部は樹脂により形成されているため、電解液に対して高い耐食性を有する。このように、側面保護部は金属電極に対して高い密着性を有し、且つ電解液に対して高い耐食性を有するので、側面保護部によって、確実に金属電極の側面を保護することができる。よって、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極の製造方法によれば、高い耐食性を有する色素増感型太陽電池用電極を簡単に得ることができる。
【0019】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極の製造方法は、前記透明電極層を覆うように、ポジ型フォトレジストを塗布してポジ型フォトレジスト層を形成する第五の工程と、前記透明基材の下面側から、前記透明基材に光を照射し、前記ポジ型フォトレジスト層を露光した後、現像して、前記金属電極の上方の前記透明電極層の上面に前記ポジ型フォトレジスト層が露光および現像されてなる上面保護部を形成する第六の工程とをさらに備えていてもよい。
【0020】
この場合、第五の工程において、透明電極層を覆うように、ポジ型フォトレジストを塗布してポジ型フォトレジスト層を形成する。第六の工程において、透明基材の下面側から、透明基材に光を照射し、ポジ型フォトレジスト層を露光した後、現像して、金属電極の上方の透明電極層の上面にポジ型フォトレジスト層が露光および現像されてなる上面保護部を形成する。
【0021】
金属電極と、側面保護部と、透明電極層とを形成した後に、第五の工程において、透明電極層を覆うようにポジ型フォトレジストを塗布し、第六の工程において、透明基材の裏面から露光および現像することによって上面保護部を形成することができる。すなわち、金属電極と、側面保護部と、透明電極層とを形成した後に、第五の工程において、透明電極層を覆うようにポジ型フォトレジストを塗布し、第六の工程において、透明基材の裏面から光照射すると、塗布されたポジ型フォトレジストのうち金属電極の上方に位置する部分は、露光されず、それ以外の部分は露光される。ポジ型フォトレジストは露光された部分が、現像液に溶解して除去され、露光されなかった部分が残る。よって、塗布されたポジ型フォトレジストのうち、金属電極の上方に位置する部分を残して、上面保護部とすることができる。
【0022】
このように、金属電極をフォトマスクとして機能させることができるので、簡単に上面保護部を形成することができる。また、金属電極の配置位置がずれた場合であっても、上面保護部を金属電極の上方に形成することができる。しかも、上面保護部は樹脂により形成されているため、電解液に対して高い耐食性を有する。よって、上面保護部を形成することにより、一層確実に金属電極を保護することができる。よって、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極の製造方法によれば、高い耐食性を有する色素増感型太陽電池用電極を簡単に得ることができる。
【0023】
また、本態様に係る色素増感型太陽電池用電極の製造方法において、前記第一の工程は、前記透明基材の上面に形成され、前記透明電極層よりも導電率の大きい金属からなる導電性金属部を形成する導電性金属部形成工程と、前記導電性金属部の少なくとも上面を覆うように、前記導電性金属部よりもハロゲン電解質溶液に対する耐食性の高い金属からなる耐食性金属部を形成する耐食性金属部形成工程とを備えていてもよい。
【0024】
この場合、導電性金属部形成工程において、透明基材の上面に形成され、透明電極層よりも導電率の大きい金属からなる導電性金属部を形成する。金属電極が導電率の高い導電性金属部を備えているため、金属電極の導電率を高めることができる。よって、色素増感型太陽電池用電極の低抵抗化を図ることができる。耐食性金属部形成工程において、導電性金属部の少なくとも上面を覆うように、導電性金属部よりもハロゲン電解質溶液に対する耐食性の高い金属からなる耐食性金属部を形成する。また、導電性金属部の少なくとも上面に形成された耐食性金属部によって、導電性金属部の少なくとも上面を保護することができる。そのため、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極を提供できる。
【0025】
本発明の第三態様に係る色素増感型太陽電池は、第一電極と、前記第一電極と間隙をおいて対向する第二電極と、前記第一電極の前記第二電極と対向する面を覆い、且つ色素を吸着させた酸化物半導体からなる酸化物半導体層と、前記第一電極と前記第二電極との間隙に封入される電解液とを備えた色素増感型太陽電池であって、前記第一電極および前記第二電極のうちの少なくともいずれかは、請求項1から4のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極であることを特徴とする。本態様に係る色素増感型太陽電池は、低抵抗で耐食性に優れた、色素増感型太陽電池用電極を備えていることから、高い光電変換効率を長期にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】色素増感型太陽電池1の一部断面図である。
【図2】色素増感型太陽電池用電極10の一部断面図である。
【図3】色素増感型太陽電池用電極10の製造工程を示すフローチャートである。
【図4】色素増感型太陽電池用電極10の製造工程を示す説明図である。
【図5】色素増感型太陽電池用電極20の一部断面図である。
【図6】色素増感型太陽電池用電極20の製造工程を示すフローチャートである。
【図7】色素増感型太陽電池用電極20の製造工程を示す説明図である。
【図8】色素増感型太陽電池用電極35の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の第一実施形態である色素増感型太陽電池1および色素増感型太陽電池用電極10について、図面を参照して説明する。はじめに、色素増感型太陽電池1の概略構成について、図1を参照して説明する。以下の説明では、図1の下側(色素増感型太陽電池用電極10側)を色素増感型太陽電池1の下側、図1の上側を色素増感型太陽電池1の上側として説明する。
【0028】
図1に示すように、色素増感型太陽電池1は、色素増感型太陽電池用電極10と、色素増感型太陽電池用電極10と間隙をおいて対向する板状の対向電極50とを備える。色素増感型太陽電池用電極10と対向電極50との間には、電解液30が封入されている。色素増感型太陽電池用電極10の上面を覆うように、酸化物半導体層40が形成されている。
【0029】
対向電極50は、対向基材51と、対向基材51の下面に形成された対向導電層52とを備える。対向基材51の材質は、特に制限されないが、フレキシブル性を有する樹脂フィルムが好適に用いられる。対向基材51に使用される樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50〜300μmの単層フィルム又は前記透明樹脂からなる複数層の複合フィルムが挙げられる。
【0030】
対向導電層52の材質には、耐食性を備える導電性の材質が適用可能である。具体的には、白金(Pt)などの金属、酸化インジウムスズ(ITO)などの導電性金属酸化物、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等の導電性ポリマーが適用可能である。
【0031】
電解液30の材質には、色素増感型太陽電池の電解液として用いられる公知の電解液が用いられる。具体的には、電解液30として、I/I系や、Br/Br系、キノン/ハイドロキノン系等のレドックス電解質を含む電解液を採用することができる。このような電解液は、エタノールやアセトニトリルなどの溶媒にヨウ化リチウムやヨウ素などを溶解させるなど、従来公知の方法によって得ることができる。
【0032】
酸化物半導体層40は、分光増感色素を吸着させた金属酸化物からなる多孔質の膜である。金属酸化物としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化マグネシウム(MgO)等の公知の1種以上の金属酸化物半導体を用いることができる。これら金属酸化物半導体のなかでも、安定性や安全性の点から、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸等の各種の酸化チタン又は水酸化チタン、含水酸化チタンの微粒子からなるものが好ましい。
【0033】
分光増感色素は、酸化物半導体層40を構成する金属酸化物半導体の表面に、単分子膜として吸着されるものである。この分光増感色素は、可視光領域及び/又は赤外光領域に吸収を持つものであり、種々の金属錯体や有機色素を1種以上用いることができる。例えば、分光増感色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシアルキル基の官能基を有するものが、金属酸化物半導体への吸着が速いため、好ましい。また、分光増感の効果や耐久性に優れている観点から、金属錯体が好ましい。この金属錯体としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミンや、公知のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛等の錯体を用いることができる。また、有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン色素を用いることができる。
【0034】
次に、図2を参照して、本実施形態における色素増感型太陽電池用電極10について説明する。まず、色素増感型太陽電池用電極10の断面構造について説明する。色素増感型太陽電池用電極10は、板状の透明基材21を備える。透明基材21の上面には、金属電極3が設けられている。金属電極3は、メッシュ状の細線パターンに形成されている。細線パターンの寸法は、線幅20μm、間隔200μm、線厚0.8μmである。
【0035】
透明基材21の上面の金属電極3が形成されていない部分には、側面保護部7が形成されている。金属電極3の側面は、側面保護部7により覆われている。金属電極3の上面、および側面保護部7の上面には、金属電極3と側面保護部7とを覆うように、透明電極層2が形成されている。そして、金属電極3の上部に位置する透明電極層2の上面には、上面保護部6が形成されている。
【0036】
次に、色素増感型太陽電池用電極10を構成する各要素の材質について説明する。まず、透明基材21について説明する。透明基材21は、表面が平坦である板状部材である。透明基材21は、可視領域で透明性を有する透明基材であり、一般に全光線透過率が90%以上のものが好ましい。中でも、フレキシブル性を有する樹脂フィルムが好適に用いられる。透明基材21に使用される透明樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50〜300μmの単層フィルム又は前記透明樹脂からなる複数層の複合フィルムが挙げられる。なお、必要に応じて、透明基材21の下面に、耐候性を付与するための樹脂をコートしてもよい。また、ソーダガラス、耐熱ガラス、石英ガラス等のガラスを透明基材21として用いてもよい。本実施形態においては、透明基材21の材質として、ポリエチレンテレフタレート(PET)を採用した。
【0037】
金属電極3の材質には、導電性を有する金属が用いられる。本実施形態では、金属電極3の材質として、銀(Ag)を採用した。
【0038】
側面保護部7は、ネガ型フォトレジストを、露光および現像することにより形成されている。ネガ型フォトレジストは、露光されなかった部分が現像液で溶解するレジストであり、環化ゴムと、感光材のとしてのビスアジド化合物と、有機溶剤とを含有する。側面保護部7の前駆体となるネガ型フォトレジストとしては、各種ネガ型フォトレジストを用いることができ、その種類は限定されない。
【0039】
透明電極層2の材質には、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明な導電物質が用いられる。本実施形態においては、透明電極層2の材質として、酸化インジウムスズ(ITO)を採用した。
【0040】
上面保護部6は、ポジ型フォトレジストを、露光および現像することにより形成されている。ポジ型フォトレジストは、露光された部分が現像液で溶解するレジストであり、ノボラック樹脂と、ジアゾナフトキノン(DNQ)と、有機溶媒とを含有する。上面保護部6の前駆体となるポジ型フォトレジストとしては、各種ポジ型フォトレジストを用いることができ、その種類は限定されない。
【0041】
次に、上記構造の色素増感型太陽電池用電極10の製造工程について、図3および図4を参照して説明する。色素増感型太陽電池用電極10の製造工程は、図3に示すように、金属電極形成工程(S1)と、ネガ型フォトレジスト層形成工程(S2)と、側面保護部形成工程(S3)と、透明電極層形成工程(S4)と、ポジ型フォトレジスト層形成工程(S5)と、上面保護部形成工程(S6)とを備える。以下、各工程について詳細に説明する。
【0042】
金属電極形成工程(S1)について説明する。金属電極形成工程(S1)では、図4に示すように、透明基材21の上面に金属電極3を形成する。金属電極3の形成方法は、周知の各種方法が適用可能である。例えば、金属層を形成した後、不要部を薬液により溶解して除去するエッチング法や、金属ペーストなどを印刷して構成する方法や、基板の必要部分に金属を蒸着させる方法や、あらかじめ形成した金属パターンを透明基材21に接着する方法などがある。本実施形態においては、スクリーン印刷法により、透明基材21の上面に銀ペーストをパターニングした。こうして、透明基材21の上面に金属電極3が形成された構造体11が形成される。
【0043】
図3に示すように、金属電極形成工程(S1)が終了すると、ネガ型フォトレジスト層形成工程(S2)が行われる。ネガ型フォトレジスト層形成工程(S2)では、図4に示すように、透明基材21の上面と、金属電極3の上面および側面とを覆うように、厚さ10μmのネガ型フォトレジスト層71を形成する。ネガ型フォトレジスト層71は、ネガ型フォトレジストを塗布することにより形成する。ネガ型フォトレジストを塗布する方法は、周知の各種方法が適用可能である。こうして、透明基材21の上面に金属電極3が形成され、透明基材21と金属電極3とを覆うようにネガ型フォトレジスト層71が形成された構造体12が形成される。
【0044】
図3に示すように、ネガ型フォトレジスト層形成工程(S2)が終了すると、側面保護部形成工程(S3)が行われる。側面保護部形成工程(S3)では、図4に示すように、側面保護部7を形成する。
【0045】
側面保護部形成工程(S3)では、まず、透明基材21の下面側からネガ型フォトレジスト層71を露光する露光処理が行われる。ネガ型フォトレジストは、露光されなかった部分が現像液に溶解して除去され、露光された部分が残る。ここで、透明基材21は光を透過し、金属電極3は光を透過しない。そのため、透明基材21の下面側から光を照射すると、ネガ型フォトレジスト層71のうちの金属電極3の上面部分には、光が照射されず、それ以外の部分には光が照射される。言いかえれば、透明基材21の下面側から光を照射すると、ネガ型フォトレジスト層71のうちの、透明基材21の上面の金属電極3の形成されていない部分のみ露光される。ネガ型フォトレジスト層71は、上述のように、環化ゴムと、感光材のとしてのビスアジド化合物と、有機溶剤とを含有する。ネガ型フォトレジスト層71に光照射すると、ビスアジド化合物が窒素を放出してナイトレンに変化し、環化ゴムと結びつく架橋反応が起こる。
【0046】
露光処理が終了すると、現像処理が行われる。現像処理では、現像液に露光処理が行われた構造体12を含浸させる。現像液としては、キシレン系有機溶剤が使用される。ネガ型フォトレジスト層71のうち、露光処理の過程で一定以上の架橋反応が起きた部分は、キシレン系の現像液に溶解しない。よって、ネガ型フォトレジスト層71のうち、金属電極3の上面に形成された部分が、選択的に現像液に溶解する。
【0047】
現像処理が行われたあと、現像液に溶解したネガ型フォトレジストを除去する洗浄処理が行われる。洗浄液としては、純水が使用される。洗浄処理により、ネガ型フォトレジスト層71のうち現像液に溶解した部分は、除去されて、溶解しなかった部分は残留する。よって、ネガ型フォトレジスト層71のうち、金属電極3の上面に形成された部分のみが除去される。このようにして、透明基材21の上面の金属電極3が形成されていない部分に側面保護部7が形成される。こうして、透明基材21と、金属電極3と、側面保護部7とを備える構造体13が形成される。
【0048】
図3に示すように、側面保護部形成工程(S3)が終了すると、透明電極層形成工程(S4)が行われる。透明電極層形成工程(S4)では、図4に示すように、金属電極3の上面、側面保護部7の上面を覆うように透明電極層2を形成する。透明電極層2の形成方法は、周知の各種方法が適用可能であるが、スパッタ法を適用することが好ましく、特に酸素雰囲気ガスを用いた反応性スパッタ法で形成することが好ましい。こうして、透明基材21と、金属電極3と、側面保護部7と、透明電極層2とを備える構造体14が形成される。
【0049】
図3に示すように、透明電極層形成工程(S4)が終了すると、ポジ型フォトレジスト層形成工程(S5)が行われる。ポジ型フォトレジスト層形成工程(S5)では、図4に示すように、透明電極層2を覆うように、厚さ3μmのポジ型フォトレジスト層61を形成する。ポジ型フォトレジスト層61は、ポジ型フォトレジストを塗布することにより形成する。ポジ型フォトレジストを塗布する方法は、周知の各種方法が適用可能である。こうして、透明基材21と、金属電極3と、側面保護部7と、透明電極層2と、ポジ型フォトレジスト層61とを備えた構造体15が形成される。
【0050】
図3に示すように、ポジ型フォトレジスト層形成工程(S5)が終了すると、上面保護部形成工程(S6)が行われる。上面保護部形成工程(S6)では、まず、透明基材21の下面側からポジ型フォトレジスト層61を露光する露光処理が行われる。ポジ型フォトレジストは、露光された部分は現像液に溶解して除去され、露光されなかった部分が残る。ここで、透明基材21は光を透過し、金属電極3は光を透過しない。そのため、透明基材21の下面側から光を照射すると、ポジ型フォトレジスト層61のうちの金属電極3の上面部分には、光が照射されず、それ以外の部分には光が照射される。ポジ型フォトレジスト層61は、上述のように、ノボラック樹脂と、ジアゾナフトキノン(DNQ)と、有機溶媒とを含有する。ポジ型フォトレジスト層61に光照射すると、ジアゾナフトキノン(DNQ)が窒素を放出してケテンが生成される。つまり、ポジ型フォトレジスト層61の、側面保護部7の上方に位置する部分にはケテンが生成され、金属電極3の上方に位置する部分には、ケテンが生成されない。
【0051】
露光処理が終了すると、現像処理が行われる。現像処理では、現像液に露光処理が行われた構造体15を含浸させる。現像液としては、アルカリ性水溶液が使用される。ポジ型フォトレジスト層61に含有するケテンは、アルカリ現像液中の水と反応して、インデルカルボン酸が生成される。つまり、ポジ型フォトレジスト層61の、側面保護部7の上方に位置する部分においてのみ、インデルカルボン酸が生成される。インデルカルボン酸は、アルカリ現像液に溶解する。このとき、インデルカルボン酸の周囲のノボラック樹脂も、一緒にアルカリ現像液に溶解する。そのため、ポジ型フォトレジスト層61の、側面保護部7の上方に位置する部分は、アルカリ現像液に溶解し除去される。ポジ型フォトレジスト層61の、金属電極3の上方に位置する部分は、アルカリ現像液に溶解しないので残留する。このようにして、透明基材21の上面の金属電極3の上方に上面保護部6が形成される。
【0052】
現像処理が終了すると、アニール処理が行われる。アニール温度は、150度とした。これにより、上面保護部6の透明電極層2に対する密着性を向上させる。以上の工程を経て、色素増感型太陽電池用電極10が製造される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の色素増感型太陽電池用電極10によれば、板状の透明基材21と、透明基材21の上面に線状に形成される金属電極3と、透明基材21の上面の金属電極3が形成されていない部分に形成されて金属電極3の側面を覆い、透明なネガ型フォトレジストを露光および現像して形成される側面保護部7と、金属電極3の上面および側面保護部7の上面を覆う透明電極層2とを備える。
【0054】
透明電極層2と透明基材21との間に線状の金属電極3が形成されているので、色素増感型太陽電池用電極10の低抵抗化を図ることができる。また、金属電極3の側面を側面保護部7が覆い、金属電極3の上面を透明電極層2が覆っているので、金属電極3が外部に露出しない。よって、金属電極3の腐食を防止して、色素増感型太陽電池用電極10の耐久性を高めることができる。
【0055】
また、側面保護部7は、ネガ型フォトレジストを露光および現像して形成される。ネガ型フォトレジストは、露光されなかった部分が、現像液に溶解して除去され、露光された部分が残る。ここで、透明基材21は光を透過し、金属電極3は光を透過しない。よって、金属電極3を形成した後に、金属電極3を覆うようにネガ型フォトレジストを塗布し、透明基材21の下面側から露光および現像することによって側面保護部7を形成することができる。よって、簡単に側面保護部7を形成することができる。また、金属電極3に対して、側面保護部7を密着させることができる。また、金属電極3の配置位置がずれた場合であっても、側面保護部7を金属電極3に密着させることができる。しかも、側面保護部7は樹脂により形成されているため、電解液に対して高い耐食性を有する。このように、側面保護部7は金属電極3に対して高い密着性を有し、且つ電解液に対して高い耐食性を有するので、側面保護部7によって、確実に金属電極3の側面を保護することができる。
【0056】
また、金属電極3の上方の透明電極層2の上面に、ポジ型フォトレジストを露光および現像してなる上面保護部6が形成されている。よって、上面保護部6によって金属電極3の上部を保護することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る色素増感型太陽電池用電極10の製造方法によれば、ネガ型フォトレジスト形成工程(S2)において、金属電極3を覆うようにネガ型フォトレジスト層71を形成し、側面保護部形成工程(S3)において、透明基材21の裏面から光を照射する。透明基材21は光を透過し、金属電極3は光を透過しないので、ネガ型フォトレジスト層71のうち、金属電極3の上方に形成された部分は露光されず、それ以外の部分は露光される。ネガ型フォトレジストは露光されなかった部分が、現像液に溶解して除去され、露光された部分が残る。よって、ネガ型フォトレジスト層71のうち、金属電極3の上面に形成された部分は、除去され、側面を覆う部分が残り側面保護部7となる。そのため、簡単に側面保護部7を形成することができる。また、金属電極3に対して、側面保護部7を密着させることができる。また、金属電極3の配置位置がずれた場合であっても、側面保護部7を金属電極3に密着させることができる。このように、側面保護部7は金属電極3に対して高い密着性を有し、且つ電解液に対して高い耐食性を有するので、側面保護部7によって、確実に金属電極3の側面を保護することができる。よって、高い耐食性を有する色素増感型太陽電池用電極10を簡単に得ることができる。
【0058】
また、金属電極3と、側面保護部7と、透明電極層2とを形成した後に、ポジ型フォトレジスト層形成工程(S5)において、透明電極層2を覆うようにポジ型フォトレジストを塗布し、上面保護部形成工程(S6)において、透明基材21の裏面から光照射すると、塗布されたポジ型フォトレジストのうち金属電極3の上方に位置する部分は、露光されず、それ以外の部分は露光される。ポジ型フォトレジストは露光された部分が、現像液に溶解して除去され、露光されなかった部分が残る。よって、塗布されたポジ型フォトレジストのうち、金属電極3の上方に位置する部分を残して、上面保護部6とすることができる。そのため、簡単に上面保護部6を形成することができる。また、金属電極3の配置位置がずれた場合であっても、上面保護部6を金属電極3の上方に形成することができる。しかも、上面保護部6は樹脂により形成されているため、電解液に対して高い耐食性を有する。上面保護部6を形成することにより、一層確実に金属電極3を保護することができる。よって、高い耐食性を有する色素増感型太陽電池用電極を簡単に得ることができる。
【0059】
また、上記構成の色素増感型太陽電池用電極10を備えた色素増感型太陽電池1は、色素増感型太陽電池用電極10が低抵抗で耐食性に優れていることから、高い光電変換効率を長期にわたって維持することができる。
【0060】
上記実施形態において、金属電極形成工程(S1)が、本発明の「第一の工程」に相当する。ネガ型フォトレジスト層形成工程(S2)が、本発明の「第二の工程」に相当する。側面保護部形成工程(S3)が、本発明の「第三の工程」に相当する。透明電極層形成工程(S4)が、本発明の「第四の工程」に相当する。ポジ型感光性樹脂層形成工程(S5)が、本発明の「第五の工程」に相当する。上面保護部形成工程(S6)が、本発明の「第六の工程」に相当する。
【0061】
次に、本発明の第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20について、図5から図7を参照して説明する。第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20では、金属電極23の構造が、第一実施形態とは異なる。以下では、第一実施形態とは異なる金属電極23の構造について重点的に説明し、第一実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、または簡略化するものとする。
【0062】
まず、色素増感型太陽電池用電極20の構造および材質について、図5を参照して説明する。色素増感型太陽電池用電極20は、板状の透明基材21を備える。透明基材21の上面には、金属電極23が設けられている。金属電極23は、メッシュ状の細線パターンに形成されている。
【0063】
金属電極23は、透明基材21の上面に形成される導電性金属部24と、導電性金属部24の側面及び上面を覆う耐食性金属部25とを備える。導電性金属部24は、透明基材21よりも導電率の大きい金属からなり、本実施形態においては銀(Ag)からなる。
【0064】
耐食性金属部25は、導電性金属部24よりもハロゲン電解質溶液に対する耐食性の高い金属からなる。耐食性金属部25の材質としては、チタン(Ti)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)の金属群から選択される一種の金属、もしくは、これらの金属群から選択される二種以上の金属からなる合金が最適であるが、これらに限定されない。本実施形態における耐食性金属部25は、ルテニウムからなる。
【0065】
透明基材21の上面の金属電極23が形成されていない部分には、側面保護部7が形成されている。金属電極23の側面は、側面保護部7により覆われている。金属電極23の上面、および側面保護部7の上面には、金属電極23と側面保護部7とを覆うように、透明電極層2が形成されている。そして、金属電極23の上方の透明電極層2の上面には、上面保護部6が形成されている。側面保護部7、透明電極層2、上面保護部6の材質は、第一実施形態と同様である。
【0066】
次に、色素増感型太陽電池用電極20の製造工程について、図6および図7を参照して説明する。色素増感型太陽電池用電極20の製造工程は、図6に示すように、金属電極形成工程(S21)と、ネガ型フォトレジスト層形成工程(S22)と、側面保護部形成工程(S23)と、透明電極層形成工程(S24)と、ポジ型フォトレジスト層形成工程(S25)と、上面保護部形成工程(S26)とを備える。
【0067】
金属電極形成工程(S21)について説明する。金属電極形成工程(S21)は、図6に示すように、導電性金属部形成工程(S211)と、耐食性金属部形成工程(S212)とを備えている。
【0068】
導電性金属部形成工程(S211)について説明する。導電性金属部形成工程(S211)では、図7に示すように、透明基材21の上面に導電性金属部24をメッシュ状の細線パターンに形成する。導電性金属部24の形成方法は、周知の各種方法が適用可能である。例えば、金属層を形成した後、不要部を薬液により溶解して除去するエッチング法や、金属ペーストなどを印刷して構成する方法や、基板の必要部分に金属を蒸着させる方法や、あらかじめ形成した金属パターンを透明基材21に接着する方法などがある。本実施形態においては、スクリーン印刷法により、透明基材21の上面に銀ペーストをパターニングした。こうして、透明基材21の上面に導電性金属部24が形成された構造体18が形成される。
【0069】
耐食性金属部形成工程(S212)について説明する。耐食性金属部形成工程(S212)では、図7に示すように、導電性金属部24の側面および上面を覆うように耐食性金属部25を形成する。耐食性金属部25の形成方法としては、メッキ法が用いられる。こうして、透明基材21の上面に、導電性金属部24と耐食性金属部25とからなる金属電極23が形成された構造体19が形成される。
【0070】
耐食性金属部形成工程(S212)が終了すると、ネガ型フォトレジスト層形成工程(S22)と、側面保護部形成工程(S23)と、透明電極層形成工程(S24)と、ポジ型フォトレジスト層形成工程(S25)と、上面保護部形成工程(S26)とが行われる。S22からS26の工程については、第一実施形態におけるS2からS6の工程と同一であるため、説明を省略する。
【0071】
第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20によれば、金属電極23は、透明基材21の上面に形成され、透明電極層2よりも導電率の大きい金属からなる導電性金属部24と、導電性金属部24の上面および側面を覆い、導電性金属部24よりもハロゲン電解質溶液に対する耐食性の高い金属からなる耐食性金属部25とを備えている。
【0072】
金属電極23が導電率の高い導電性金属部24を備えているため、金属電極23の導電率を高めることができる。よって、色素増感型太陽電池用電極20の低抵抗化を図ることができる。また、導電性金属部24の上面および側面に形成された耐食性金属部25によって、導電性金属部24の上面および側面を確実に保護することができる。そのため、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極20を提供できる。
【0073】
また、耐食性金属部25は、ルテニウムにより形成されている。よって、耐食性金属部25の耐食性を確実に高めることができるので、導電性金属部24を一層確実に保護することができる。
【0074】
なお、本発明の色素増感型太陽電池用電極、色素増感型太陽電池用電極の製造方法、および色素増感型太陽電池は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0075】
例えば、第一実施形態および第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極10、20においては、上面保護部6を備えていたが、上面保護部6を備えたものに限定されない。たとえば、図8に示すように、上面保護部6を備えない色素増感型太陽電池用電極35であっても、金属電極3の側面は側面保護部7で覆われ、金属電極3の上面は透明電極層2で覆われるので、金属電極3を保護することができる。色素増感型太陽電池用電極35を製造する場合には、第一実施形態における色素増感型太陽電池用電極10を製造する製造工程において、ポジ型フォトレジスト層形成工程(S25)と、上面保護部形成工程(S26)が行われない。この色素増感型太陽電池用電極35においても、金属電極3の腐食を防止することができるので、高い導電性を維持できる色素増感型太陽電池用電極35を提供できる。
【0076】
また、第二実施形態の色素増感型太陽電池用電極20では、耐食性金属部25は、導電性金属部24の上面及び側面を覆っていたが、耐食性金属部25は上面のみを覆っていてもよい。
【0077】
また、本実施形態の色素増感型太陽電池1では、酸化物半導体層40は、色素増感型太陽電池用電極10を覆うように形成されていたが、対向電極50の対向導電層52を覆うように形成されていても良い。また、電解液30の代わりに、液体電解質又はこれを高分子物質中に含有させた固体高分子電解質を色素増感型太陽電池用電極10と対向電極50との間に封入してもよい。
【0078】
また、本実施形態の色素増感型太陽電池1は、色素増感型太陽電池用電極10と、色素増感型太陽電池用電極10に間隙をおいて対向する対向電極50を備えていたが、互いに間隙をおいて対向する二つの色素増感型太陽電池用電極10を備える色素増感型太陽電池1であっても、本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 色素増感型太陽電池
2 透明電極層
3 金属電極
6 上面保護部
7 側面保護部
10、20、35 色素増感型太陽電池用電極
21 透明基材
23 金属電極
24 導電性金属部
25 耐食性金属部
40 酸化物半導体層
61 ポジ型フォトレジスト層
71 ネガ型フォトレジスト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の透明基材と、
前記透明基材の上面に線状に形成される金属電極と、
前記透明基材の上面の前記金属電極が形成されていない部分に形成されて前記金属電極の側面を覆い、透明なネガ型フォトレジストを露光および現像してなる側面保護部と、
前記金属電極の上面および前記側面保護部の上面を覆う透明電極層と
を備えることを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項2】
前記金属電極の上方の前記透明電極層の上面に、ポジ型フォトレジストを露光および現像してなる上面保護部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項3】
前記金属電極は、
前記透明基材の上面に形成され、前記透明電極層よりも導電率の大きい金属からなる導電性金属部と、
前記導電性金属部の少なくとも上面を覆い、前記導電性金属部よりもハロゲン電解質溶液に対する耐食性の高い金属からなる耐食性金属部と
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項4】
前記耐食性金属部は、チタン、白金、ロジウム、ルテニウム、タングステンの金属群から選択される一種の金属により形成されるか、またはこれらの金属群から選択される二種以上の金属からなる合金により形成されていることを特徴とする請求項3に記載の色素増感型太陽電池用電極。
【請求項5】
板状の透明基材の上面に線状の金属電極を形成する第一の工程と、
前記透明基材の上面と、前記金属電極の上面および側面とを覆うように、透明なネガ型フォトレジストを塗布してネガ型フォトレジスト層を形成する第二の工程と、
前記透明基材の下面側から、前記透明基材に光を照射し、前記ネガ型フォトレジスト層を露光した後、現像して、前記透明基材の上面の前記金属電極が形成されていない部分に、前記金属電極の側面を覆い、前記ネガ型フォトレジストが露光および現像されてなる側面保護部を形成する第三の工程と、
前記金属電極の上面および前記側面保護部の上面を覆う透明電極層を形成する第四の工程と、
を備えることを特徴とする色素増感型太陽電池用電極の製造方法。
【請求項6】
前記透明電極層を覆うように、ポジ型フォトレジストを塗布してポジ型フォトレジスト層を形成する第五の工程と、
前記透明基材の下面側から、前記透明基材に光を照射し、前記ポジ型フォトレジスト層を露光した後、現像して、前記金属電極の上方の前記透明電極層の上面に前記ポジ型フォトレジスト層が露光および現像されてなる上面保護部を形成する第六の工程と
をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の色素増感型太陽電池用電極の製造方法。
【請求項7】
前記第一の工程は、
前記透明基材の上面に形成され、前記透明電極層よりも導電率の大きい金属からなる導電性金属部を形成する導電性金属部形成工程と、
前記導電性金属部の少なくとも上面を覆うように、前記導電性金属部よりもハロゲン電解質溶液に対する耐食性の高い金属からなる耐食性金属部を形成する耐食性金属部形成工程と
を備えることを特徴とする請求項5または6に記載の色素増感型太陽電池用電極の製造方法。
【請求項8】
第一電極と、
前記第一電極と間隙をおいて対向する第二電極と、
前記第一電極の前記第二電極と対向する面を覆い、且つ色素を吸着させた酸化物半導体からなる酸化物半導体層と、
前記第一電極と前記第二電極との間隙に封入される電解液と
を備えた色素増感型太陽電池であって、
前記第一電極および前記第二電極のうちの少なくともいずれかは、請求項1から4のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−70903(P2011−70903A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220669(P2009−220669)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】