説明

色素増感型太陽電池

【課題】色素増感型太陽電池の性能を確保しつつ、構成や製造工程を簡素化する。
【解決手段】色素増感型太陽電池は 透光性基板と、透光性導電層と、透光性導電層上の第1の電極と、第1の絶縁層と集電電極層とを備える対極基板と、第1の電極とは異なる対極基板上の第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置される電解質と、透光性導電層と集電電極層とを接続する第1の接続部と、第2の電極と集電電極層を接続する第2の接続部と、を備える。ここで、第1の絶縁層は、第1の集電孔と第2の集電孔とを有する。集電電極層は、第1の集電孔と重なる第1の集電電極部と、第2の集電孔と重なる第2の集電電極部と、の2つの部位に、互いに絶縁された状態で2分割される。第1の接続部は、第1の集電孔内を経由しつつ、透光性導電層と第1の集電電極部とを接続し、第2の接続部は、第2の集電孔内に配置され、第2の電極と第2の集電電極部とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する色素増感型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池として、様々な種類が知られている。例えば、単結晶、多結晶、アモルファス等のシリコン系太陽電池は、高い光電変換効率を実現しており、既に実用化されている。そのような状況下において、近年、Gratzel等により提案された色素増感型太陽電池が、充分な光電変換効率を実現できる可能性があり、材料や製法等の面でのコストダウンが可能な太陽電池として注目されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
色素増感型太陽電池においては、従来、種々の改良が行なわれてきた。例えば、太陽電池の大面積化や性能向上が可能になるように、電解質を間に介して配置される半導体電極および触媒電極の各々に対して集電電極を設け、内部抵抗の低減を図る構成が提案されている。さらに、透光性基板および透光性導電層上に半導体電極を形成すると共に、対極基板上に触媒電極を形成する場合において、触媒電極側の集電電極層に加えて半導体電極側の集電電極層を対極基板内に設け、集電電極層を設けることに起因する半導体電極の面積の減少を抑制する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−258028号公報
【特許文献2】特開2009−211967号公報
【特許文献3】特開2009−218179号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nature誌(第353巻、pp.730−740,1991年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、集電電極層を設けることによる種々の改良は、太陽電池の構成の複雑化や、製造のために用いる構成材料の増加を招き、また、製造工程の複雑化を引き起こしていた。そのため、太陽電池の構成や製造工程の、さらなる適正化・簡素化が望まれていた。
【0007】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、色素増感型太陽電池の性能を確保しつつ、構成や製造工程を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実施することが可能である。
【0009】
[適用例1]
透光性基板と、
該透光性基板の一方の面上に設けられた透光性導電層と、
該透光性導電層の面上に設けられると共に、増感色素を備える半導体電極と、触媒を備える触媒電極と、から選択される第1の電極と、
前記透光性基板の前記一方の面に対向して配置され、該一方の面に対向する層として絶縁性物質で形成される第1の絶縁層を備えると共に、導電性物質で形成される集電電極層をさらに備える対極基板と、
該対極基板における前記透光性基板に対向する面上に設けられると共に、前記半導体電極と前記触媒電極とから選択され、前記第1の電極とは異なる第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置される電解質と、
前記透光性導電層と前記集電電極層との間に配置されて該透光性導電層と該集電電極層とを電気的に接続する第1の接続部と、
前記第2の電極と前記集電電極層との間に配置されて該第2の電極と該集電電極層を電気的に接続する第2の接続部と、
を備える色素増感型太陽電池において、
前記第1の絶縁層は、前記第1の絶縁層を貫通する第1の集電孔と、前記第1の絶縁層を貫通し、且つ、前記第1の集電孔と異なる位置に形成された第2の集電孔と、を有し、
前記集電電極層は、前記第1の絶縁層における前記第2の電極が設けられる面とは異なる面上に設けられ、前記第1の集電孔と厚み方向に重なる第1の集電電極部と、前記第2の集電孔と厚み方向に重なる第2の集電電極部と、の2つの部位に、互いに絶縁された状態で2分割されており、
前記第1の接続部は、前記第1の集電孔内を経由して設けられ、前記透光性導電層と前記第1の集電電極部とを電気的に接続し、
前記第2の接続部は、前記第2の集電孔内に配置され、前記第2の電極と前記第2の集電電極部とを電気的に接続することを要旨とする。
【0010】
適用例1に記載の色素増感型太陽電池によれば、集電電極層を2分割して、半導体電極と電気的に接続する集電電極部と、触媒電極と電気的に接続する集電電極部とを、同一面内に設けるため、各々の電極に対して別個に集電電極層を設ける場合に比べて構成を簡素化することができる。このように、構成を簡素化することにより、製造工程を簡素化し、製造時に消費する材料を抑制することができ、製造コストを抑えることができる。また、第1の集電電極部と第2の集電電極部とが、面内で分断されているため、両極の配置が積層方向に互いに干渉することが無く、太陽電池に設ける出力端子の配置の自由度を、大きく確保することができる。
【0011】
[適用例2]
適用例1記載の色素増感型太陽電池であって、前記第1の集電孔及び前記第2の集電孔が複数個で設けられ、前記第1の絶縁層全体に分散配置されている色素増感型太陽電池。適用例2に記載の色素増感型太陽電池によれば、集電性を確保することにより、太陽電池の内部抵抗を抑制することができる。
【0012】
[適用例3]
適用例1または2記載の色素増感型太陽電池であって、前記対極基板は、前記集電電極層における前記第1の絶縁層と接する面とは異なる面上に設けられ、絶縁性物質により形成される第2の絶縁層をさらに備える色素増感型太陽電池。適用例3に記載の色素増感型太陽電池によれば、第2絶縁層上に集電電極層および第1の絶縁層を形成することができるため、対極基板を作製する際のハンドリング性を向上させることができる。また、集電電極層の表面を第2絶縁層によって覆うため、集電電極層の劣化を抑制することができる。
【0013】
[適用例4]
適用例1ないし3いずれか記載の色素増感型太陽電池であって、前記第1の集電電極部と前記第2の集電電極部とは、間に空隙が形成されることによって、互いに絶縁された状態で分断されている色素増感型太陽電池。適用例4に記載の色素増感型太陽電池によれば、簡便な構成によって、同一面内に存在する第1の集電電極部と第2の集電電極部とを絶縁することができる。
【0014】
[適用例5]
適用例1ないし4いずれか記載の色素増感型太陽電池であって、前記第1の集電電極部および前記第2の集電電極部は、それぞれ、複数の突出部を備える櫛歯状に形成されており、前記複数の突出部同士がかみ合うように配置されている色素増感型太陽電池。適用例5に記載の色素増感型太陽電池によれば、第1の接続部および第2の接続部の配置位置を設定する際の自由度を確保しつつ、第1の集電電極部および第2の集電電極部の面積を確保することができる。
【0015】
[適用例6]
適用例1ないし5いずれか記載の色素増感型太陽電池であって、前記第2の接続部は、導電性カーボンおよび樹脂が混合された材料から成り、前記第2の電極は、触媒電極であって、前記対極基板における前記透光性基板に対向する面上に設けられて前記第2の接続部と同じ材料から成る導電性カーボン層と、該導電性カーボン層上に設けられて前記電解質に曝され、前記触媒を備える触媒層と、を備え、前記導電性カーボン層を介して、前記触媒電極と前記集電電極層が電気的に接続されている色素増感型太陽電池。適用例6に記載の色素増感型太陽電池によれば、導電性カーボン層を設けることにより、触媒電極における抵抗を抑えると共に、集電電極層を電解質から保護する効果を得ることができる。
【0016】
[適用例7]
適用例1ないし6いずれか記載の色素増感型太陽電池であって、前記第1の接続部を内部に収容する筒状の保護部を備え、前記保護部を介して前記第1の接続部が前記電解質から隔てられて保護される色素増感型太陽電池。適用例7に記載の色素増感型太陽電池によれば、電解質との接触に起因する第1の接続部の劣化を抑制し、太陽電池の耐久性を高めることができる。
【0017】
[適用例8]
適用例1ないし7いずれか記載の色素増感型太陽電池であって、前記対極基板において、前記絶縁性物質により形成される層は、いずれも、ポリイミドにより形成される層であり、前記導電性物質により形成される層は、いずれも、銅により形成される層である色素増感型太陽電池。適用例8に記載の色素増感型太陽電池によれば、太陽電池を簡便に作製することが可能になる。
【0018】
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、色素増感型太陽電池の製造方法などの形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】色素増感型太陽電池10の構成の概要を表わす断面模式図である。
【図2】半導体電極22の構成を模式的に表わす平面図である。
【図3】集電電極層34の形状を模式的に表わす平面図である。
【図4】第1絶縁層32の形状を模式的に表わす平面図である。
【図5】5−5断面の様子を表わす断面模式図である。
【図6】色素増感型太陽電池110の概略構成を表わす断面模式図である。
【図7】色素増感型太陽電池210の概略構成を表わす断面模式図である。
【図8】色素増感型太陽電池310の概略構成を表わす断面模式図である。
【図9】変形例の第1絶縁層32の形状を模式的に表わす平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施例:
A−1.太陽電池10の概略構成:
図1は、本発明の第1実施例である色素増感型太陽電池10の構成の概要を表わす断面模式図である。太陽電池10は、略平行に配置された第1基体12および第2基体14と、第1基体12と第2基体14との間に配置される電解質26と、を備えている。
【0021】
第1基体12は、透光性基板20と、透光性基板20の一方の面上に設けられた透光性導電層21と、透光性導電層21の面上に設けられると共に増感色素を備える半導体電極22(アノード)と、を備える。第2基体14は、対極基板30と、対極基板30の半導体電極22に対向する面上に設けられると共に触媒を備える触媒電極23(カソード)と、を備える。対極基板30は、触媒電極23が設けられた面を含んで設けられた第1絶縁層32と、集電電極層34と、を備える。集電電極層34は、第1の集電電極部35と第2の集電電極部36とに2分割されており、第1の集電電極部35と第2の集電電極部36との間には、空隙37が形成されている。本実施例の太陽電池10は、第1の集電電極部35および第2の集電電極部36から成る集電電極層34を設けた点に特徴があるが、集電電極層34の構成については、後に詳述する。触媒電極23は、第1絶縁層32上に配置される導電層24と、導電層24上に配置される触媒層25と、を備える。半導体電極22と触媒層25の表面は、電解質26に露出している。
【0022】
さらに、太陽電池10は、透光性導電層21と集電電極層34の間に、透光性導電層21と集電電極層34(第1の集電電極部35)とを電気的に接続するインターコネクタである第1の接続部28を備えている。また、対極基板30の内部において、触媒電極23と集電電極層34(第2の集電電極部36)とを電気的に接続する第2の接続部39を備えている。なお、第1の接続部28の周囲には、電解質26から第1の接続部28を保護するための絶縁体から成る保護部29が設けられている。以下に、太陽電池10を構成する各部について、さらに詳しく説明する。
【0023】
A−2.第1基体12の構成:
本実施例では、透光性基板20は、ガラス板により形成している。また、透光性導電層21は、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)により形成している。半導体電極22は、多孔質電極基体に増感色素を付着させることによって形成している。多孔質電極基体は、チタニアによって形成している。増感色素としては、ルテニウム錯体色素を用いている。
【0024】
第1基体12を作製する際には、まず、ガラス板上にFTOを塗布することによって、透光性基板20と透光性導電層21の積層体を作製している。その後、透光性導電層21の表面において、半導体電極22を形成すべき領域に、スクリーン印刷法によりチタニアペーストを塗布し、150℃、30分の予備乾燥の後、マッフル炉により500℃で30分焼成し、半導体電極22を構成する多孔質電極基体を形成している。また、ルテニウム錯体溶液を用意し、この溶液中に、上記多孔質電極基体を形成したガラス板を浸漬し、多孔質電極基体に増感色素を付着させて半導体電極22を形成し、第1基体12を作製する。
【0025】
図2は、透光性基板20および透光性導電層21上に形成した半導体電極22の構成を模式的に表わす平面図である。図1および図2に示すように、半導体電極22は、第1の接続部28が設けられる位置およびその周辺領域を除く領域に設けられる。なお、図2では、第1の接続部28が設けられる位置を模式的に4つ示しているが、第1の接続部28の数、大きさ、および間隔は、第1の接続部28を設けることにより半導体電極22の面積が減少する程度と、集電性が高まる効果とを考慮して、適宜設定すればよい。また、集電性を確保して太陽電池10の内部抵抗を抑制するためには、複数の第1の接続部28を、面内で充分に分散させて配置することが望ましい。なお、本実施例では、透光性基板20と透光性導電層21とは、同じ大きさの略矩形形状に形成されて、丁度重なり合っている。
【0026】
A−3.第2基体14の構成:
本実施例では、第1絶縁層32はポリイミドにより形成しており、集電電極層34は銅により形成している。また、導電層24および第2の接続部39は、グラファイト及び樹脂を含有する導電性ペーストによって形成されている。また、触媒層25は、触媒成分として活性炭を備えている。
【0027】
第2基体14を作製する際には、まず、ポリイミドから成る層と銅から成る層とが積層され、且つ所定のパターンが形成された対極基板30を用意する。ポリイミドから成る層と銅から成る層の積層体は、例えば、ポリイミドから成る層の上にめっき処理により銅から成る層を設けて作製すればよい。集電電極層34となる層をめっき処理により形成する場合には、集電電極層34となる層を極めて薄く形成することができて望ましい。また、金属粉末(銅粉末)を含有する導電ペーストをスクリーン印刷等によりポリイミド層上に塗布し、焼き付けることにより、上記積層体を形成することもできる。また、銅箔とポリイミドフィルムとを接着しても良い。
【0028】
ポリイミドから成る層と銅から成る層の積層体を用意した後は、例えば、エッチング等により銅の層をパターニングすると共に、レーザー光の照射等によりポリイミドの層をパターニングして、対極基板30を作製すればよい。レーザー光の照射は、例えば、YAGレーザー、炭酸ガスレーザー等の照射を行なえばよい。あるいは、ポリイミドから成る層と銅から成る層の積層体を加工する構成に代えて、予めパターニングした銅箔とポリイミドフィルムとを接着することによって、対極基板30を作製しても良い。
【0029】
図3は、パターニングされた銅から成る層によって構成される集電電極層34の形状を模式的に表わす平面図である。既述したように、銅から成る層をエッチングによりパターニングすることで、銅から成る層を厚み方向に貫通する空隙37が形成される。このように空隙37を形成することにより、第1の集電電極部35と第2の集電電極部36とに2分割された集電電極層34を形成している。すなわち、第1の集電電極部35と第2の集電電極部36とは、空隙37という空気が存在する空間が介在することによって、互いに絶縁されている。本実施例では、第1の集電電極部35と第2の集電電極部36とは、それぞれ、複数の突出部を備える櫛歯状に形成されており、これらの複数の突出部同士が互いにかみ合うように配置されている。
【0030】
図4は、パターニングされたポリイミドから成る層によって形成される第1絶縁層32の形状を模式的に表わす平面図である。第1絶縁層32には、第1絶縁層32を厚み方向に貫通する複数のアノード側集電孔31と、複数のカソード側集電孔33とが形成されている。図4では、第1絶縁層32と重なり合う集電電極層34に設けた空隙37の位置を、破線で示している。図4に示すように、アノード側集電孔31は、第1の集電電極部35と重なる位置に設けられている。また、カソード側集電孔33は、第2の集電電極部36と重なる位置に設けられている。なお、アノード側集電孔31は、第1基体12において第1の接続部28が設けられる位置として半導体電極22が形成されていない領域に対応する位置に設けられている。図4では、カソード側集電孔33が模式的に9つ示されているが、カソード側集電孔33の数、大きさ、および間隔は、カソード側集電孔33内に形成される第2の接続部39による集電効率を考慮して、適宜設定すればよい。集電性を確保するためには、第2の接続部39を、面内で充分に分散させて配置することが望ましい。なお、図4における5−5断面の様子を、図5に模式的に示す。また、図5において、図1に断面を示した領域に対応する領域を、破線で囲んだ領域Aとして示す。
【0031】
次に、対極基板30に対して、導電層24および第2の接続部39を形成する。導電層24および第2の接続部39は、第1絶縁層32上の所定の領域に、グラファイトおよび樹脂を含有する導電性ペーストを塗布することによって形成する。導電層24は、第1絶縁層32上において、アノード側集電孔31が形成された位置及びその周辺領域を除く領域に、形成される。このように、第1絶縁層32上に導電性ペーストを塗布する際には、第1絶縁層32に設けられたカソード側集電孔33内にも導電性ペーストが充填される。上記のように、カソード側集電孔33内に導電性ペーストを充填することによって、触媒電極23と第2の集電電極部36とを電気的に接続する第2の接続部39が形成される。
【0032】
その後、導電層24の形状と同じ形状の、活性炭を含有する触媒シートを、導電層24の表面を覆うように載置し、乾燥させることで、触媒層25が形成され、第2基体14が完成する。
【0033】
A−4.第1基体12と第2基体14の間に配置される構成:
本実施例では、インターコネクタである第1の接続部28は、ハンダボールにより形成している。ハンダボールは、透光性導電層21と第1の集電電極部35との距離に対応する高さを有している。保護部29は、本実施例ではアイオノマー樹脂により形成している。保護部29は、厚み方向(積層方向)に貫通する貫通孔を有する樹脂リングによって構成されており、透光性導電層21と第1の集電電極部35との間に配置されて、第1の接続部28を包囲する。電解質26は、第1基体12と第2基体14との間に電解液を注入することにより形成されている。
【0034】
保護部29を形成するためには、まず、アイオノマー樹脂から成る樹脂リングを、第1の集電電極部35上であって、第2基体14の第1絶縁層32に形成したアノード側集電孔31内に配置する。樹脂リングと第1の集電電極部35とは、加熱により接合すればよい。この樹脂リングの貫通孔の中に、第1の接続部28となるハンダボールを配置する。その後、保護部29およびハンダボールを配置した第2基体14と第1基体12とを積層し、ハンダボールを加熱溶融させることにより、透光性導電層21と第1の集電電極部35とを電気的に接合する第1の接続部28を形成する。
【0035】
第1基体12と第2基体14とを積層する際には、上記のように樹脂リングとハンダボールを配置した第2基体14の周縁に、開口部を設けたスペーサとしての接着性樹脂シートを配設する(図示せず)。この接着性樹脂シートは、保護部29と同様の材料により形成することができる。その後、第1基体12を、第2基体14に形成された触媒電極23と半導体電極22とが対向するように載置する。そして、加圧および加熱の処理を行なうことにより、第1基体12と第2基体14とを接合する。
【0036】
第1基体12と第2基体14との接合後は、第1基体12と第2基体14との間に形成された空間内に、上記スペーサの開口部を介して、電解液を注入する。電解液の注入方法としては、減圧注入法が挙げられる。即ち、第1基体12と第2基体14とを接合して成るセルを真空デシケーター内に入れ、セル内を減圧し、減圧状態から大気圧に戻すことで開口部から電解液をセル空間内に注入することができる。電解液の注入後、開口部を紫外線硬化性樹脂等により封止することで、色素増感型太陽電池10を完成する。なお、第1の集電電極部35および第2の集電電極部36には、発電した電流を取り出すための出力端子が接続される。
【0037】
A−5.太陽電池10の動作:
太陽電池10の発電時には、太陽光などの照射光が、透光性基板20上から太陽電池10へと照射される(図1参照)。照射光を受けると、半導体電極22が備える色素が励起状態となり,電子を放出する。この電子は、透光性導電層21および第1の接続部28を経由して第1の集電電極部35に達し、外部へと流れる。また、このとき外部から太陽電池10へと供給される電子が、第2の集電電極部36および第2の接続部39を介して、触媒電極23から電解質26へと供給される。電解質26に供給された電子は、電解質26を介して半導体電極22の色素へと受け渡され、色素がもとの状態に戻る。
【0038】
以上のように構成された本実施例の太陽電池10によれば、集電電極層34を2分割して、アノード側の第1の集電電極部35とカソード側の第2の集電電極部36とを同一面内に設けるため、各々の極に対して別個に集電電極層を設ける場合に比べて構成を簡素化することができる。このように、集電電極層の構成を簡素化し、設ける集電電極層の数を削減できるため、製造工程における積層工程を簡素化し、集電電極層を設けるために消費する材料を抑制することができ、製造コストを抑えることができる。
【0039】
また、本実施例の太陽電池10によれば、第1の集電電極部35と第2の集電電極部36とが、面内で分断されているため、両極の配置が積層方向に互いに干渉することが無く、太陽電池10に設ける出力端子の配置の自由度を、大きく確保することができる。
【0040】
また、本実施例の太陽電池10によれば、第1の集電電極部35と第2の集電電極部36の各々を、複数の突出部を備える櫛歯状に形成して、複数の突出部同士がかみ合うように配置している。そのため、複数の第1の接続部28および第2の接続部39を、対極基板30上の面全体で分散配置させる際に、第1の接続部および第2の接続部の配置位置の設定の自由度および分散性を確保しつつ、第1の集電電極部および第2の集電電極部の面積を確保することができる。
【0041】
さらに、本実施例の太陽電池10によれば、集電電極層の数を削減できることにより、対極基板30の可撓性を向上させ、軽量化を図ることができる。そのため、後述するように、透光性基板20および第1絶縁層32を樹脂材料で形成し、太陽電池10をフレキシブルセルとする場合には、セル全体の可撓性を向上させて軽量化する効果を高めることができ、平板状とは異なる形状の太陽電池を作製することが、より容易になる。
【0042】
なお、本実施例の太陽電池10によれば、半導体電極と触媒電極の各々に対応して集電電極部を設けた太陽電池に共通する効果である、内部抵抗を抑えて大面積化が可能になるという効果を得ることができる。また、各々の電極に対応する集電電極部の双方を対極基板内に設けた太陽電池に共通する効果である、透光性導電層側の電極のための集電電極部に起因する電極面積の減少を抑制するという効果を得ることができる。
【0043】
A−6.各部の構成材料:
第1実施例では、「透光性基板20」をガラス板によって形成したが、異なる材料を用いても良い。例えば、板状あるいはフィルム状の樹脂シートを用いることができる。樹脂シートは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルフォン(PSF)、あるいはシクロオレフィン系ポリマー等を用いて作製された樹脂シートを用いることができる。
【0044】
また、「透光性導電層21」は、透光性および導電性を有していればよく、種々の材料により形成することができる。例えば、FTO以外の導電性酸化物である酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、酸化スズ等を用いることができる。あるいは、金属(例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)の透明薄膜、あるいは炭素薄膜によって、透光性導電層21を構成することもできる。
【0045】
なお、透光性基板20および透光性導電層21は、入射した光に対する透過した光の割合である透光率ができるだけ高い方が望ましい。具体的には、透光性基板20および透光性導電層21の可視光透光率(半導体電極22に到達する可視光の割合)は10%以上となっており、60%以上、特に85%以上であることが好ましい。
【0046】
「半導体電極22」を構成する多孔質電極基体を作製するためには、チタニア以外に、酸化スズ、酸化亜鉛、五酸化二ニオブ等の酸化ニオブ、酸化タンタル及びジルコニア等の金属酸化物を用いることができる。また、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム及びチタン酸バリウム等の複合酸化物を用いることもできる。あるいは、硫化亜鉛、硫化鉛及び硫化ビスマス等の金属硫化物を用いることもできる。
【0047】
多孔質電極基体を形成するためには、例えば、既述したように、透光性導電層の表面に、金属酸化物等の半導体微粒子を含有するペーストを塗布し、その後に焼成を行なえばよい。ペーストの塗布方法は特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法等を用いることができる。このようにして形成された半導体電極基体は、半導体微粒子が集合してなる集合体の形態を有したものとなる。
【0048】
多孔質電極基体に付着させる増感色素としては、光電変換の作用を向上させる役割を果たすものであって、具体的には光電変換の作用を向上させる錯体色素及び有機色素を用いることができる。ルテニウム錯体色素の他、オスミウム錯体色素等の金属錯体色素を用いることができる。また、ポリメチン色素、メロシアニン色素等の有機色素を用いることもできる。さらに、光電変換がなされる波長域を拡大し、光電変換効率を向上させるため、増感作用が発現される波長域の異なる2種以上の増感色素を併用することもできる。光の波長域と強度分布とによって併用する増感色素の種類及びそれらの量比を設定することが好ましい。また、増感色素は半導体電極に結合するための官能基を有することが好ましい。この官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、シアノ基等を用いることができる。増感色素を多孔質電極基体に付着させるためには、増感色素の溶液に多孔質電極基体を浸漬させる他、増感色素の溶液を多孔質電極基体に塗布することによって、増感色素溶液を含浸させてもよい。
【0049】
「集電電極層34」は、銅以外の金属により形成しても良い。具体的には、例えば、アルミニウムや銀を用いることができる。
【0050】
「第1絶縁層32」は、ポリイミドの他、種々の樹脂材料によって形成することができる。防食性の高い樹脂材料を用いることが望ましく、プリント配線基板に通常使用されるような樹脂材料を選択することができる。具体的には、例えば、例えばEP樹脂(エポキシ樹脂)、PI樹脂(ポリイミド樹脂)、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、BT樹脂(ビスマレイミド−トリアジン樹脂)、PPE樹脂(ポリフェニレンエーテル樹脂)、PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)などが好適である。また、酸化物系セラミック、窒化物系セラミック、炭化物系セラミック等の各種のセラミックによって、第1絶縁層32を形成することも可能である。酸化物系セラミックとしては、アルミナ、ムライト、ジルコニア等が挙げられる。また、窒化物系セラミックとしては、窒化ケイ素、サイアロン、窒化チタン、窒化アルミニウム等が挙げられる。更に、炭化物系セラミックとしては、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化アルミニウム等が挙げられる。なお、第1絶縁層32を、透光性基板20と共に樹脂材料によって形成するならば、軽量であり、且つ可撓性のある色素増感型太陽電池とすることができる。
【0051】
「導電層24」および「第2の接続部39」を構成するための導電性ペーストでは、カーボンとして、第1実施例のように、安価且つ高い導電性を有するグラファイトを用いることが望ましい。ただし、グラファイト以外にも、種々の導電性カーボンを用いることができる。例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック等の各種のカーボンブラック、及びカーボンナノチューブなどを用いることができる。
【0052】
なお、導電層24および第2の接続部39では、導電性ペーストにおいて、導電性カーボンに加えて、あるいは、導電性カーボンに代えて、種々の導電性物質を含有させることができる。このような導電性物質としては、金属、導電性酸化物及び導電性高分子等を用いることができる。金属としては、銀、白金、ロジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム等が挙げられる。導電性酸化物としては、透光性導電層21の形成に用いられる導電性酸化物等が挙げられる。導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等が挙げられる。樹脂に含有される導電性物質は電解質26と接触しないため、必ずしも高い防食性を有していなくても、用いることができる。
【0053】
導電層24および第2の接続部39を構成するための導電性ペーストが備える樹脂としては、種々の樹脂を用いることができ、熱硬化性樹脂でもよく、熱可塑性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂及びポリウレタン樹脂等を用いることができる。また、熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種の合成樹脂を用いることができる。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン、フッ化エチレン−プロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を用いることができる。ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66,ポリアミド12等を用いることができる。
【0054】
あるいは、導電層24および第2の接続部39を、チタン、タングステン、銅、黄銅、真鍮、アルミニウム、銀、ニッケル等の金属やそれらの合金、あるいは、酸化スズ等の導電性酸化物によって形成しても良い。なお、導電層24および第2の接続部39は、異なる材料により形成することも可能であるが、同じ材料を用いることで、製造工程を簡素化し、両者間の接触抵抗を抑えることができる。
【0055】
「触媒層25」が備える触媒成分としては、活性炭の他、カーボンブラック等、表面積の大きい多孔質な炭素材料を用いることができる。あるいは、白金、金、ロジウム等の貴金属を用いることもできる。触媒活性と共に、電解質26に対する充分な耐食性を有していればよいが、炭素材料を用いる場合には、コスト削減が容易になり望ましい。
【0056】
触媒成分として活性炭を用いる場合には、例えば、ヤシガラ及びオガクズ等の木質材、並びに褐炭、泥炭、樹脂及び石油ピッチ等の多くの炭素を含有する有機物質に、塩化亜鉛及びリン酸等を用いた通常の賦活処理を施し、その後、乾留する等の方法によって製造されたものを用いることができる。特に、原料として樹脂を用いて製造された純度の高いものが好ましい。この原料樹脂は特に限定されないが、活性炭の製造が容易であるフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましい。
【0057】
触媒層25を形成する際には、例えば、多孔質樹脂シートと、この多孔質樹脂シートに保持された触媒成分から成る触媒シートを用いる事ができる。多孔質樹脂シートを形成する樹脂は特に限定されず、熱可塑性樹脂でもよく、熱硬化性樹脂でもよい。熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種の合成樹脂を用いることができる。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン、フッ化エチレン−プロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66,ポリアミド12等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂及びポリウレタン樹脂等を用いることができる。これらの樹脂のうちでは、耐久性が高いフッ素樹脂が好ましい。
【0058】
また、触媒層25は、触媒成分を有する微粒子を含有するペーストを塗布することにより形成することもできる。触媒成分として貴金属を用いる場合には、貴金属から成る薄膜により、触媒層25を構成しても良い。
【0059】
なお、触媒層25を、活性炭を用いて形成する場合には、活性炭の抵抗値が比較的高いため、抵抗値が低い導電性物質を備える導電層24を設けることにより、触媒電極23全体の抵抗値を抑えることができる。また、触媒層25を、活性炭以外の例えば貴金属の薄膜により形成する場合であっても、導電層24を設けることにより、触媒層25の下側に配置される層である集電電極層34を、電解質26から保護する効果が得られる。
【0060】
「第1の接続部28」は、ハンダボールにより形成するのではなく、IC作成時等に使用するリードピンを打ち込むことにより形成することも可能である。この場合には、対極基板30の第1の集電電極部35において、第1絶縁層32のアノード側集電孔31と重なる位置に、アノード側集電孔31と同様のアノード側集電孔を設け、これらのアノード側集電孔内にリードピンを圧入し、第1の接続部28を形成すればよい。リードピンの材質としては、銅、黄銅、真鍮、タングステン、アルミニウム、銀、ニッケル、チタン等の金属やそれらの合金を用いることができる。また、リードピン以外のものとしては、前記の材質の柱状の導体や、導電性カーボンの柱状体を用いることができる。
【0061】
また、「保護部29」を構成するために、アイオノマー樹脂以外の樹脂であっても、耐食性を有する種々の絶縁性樹脂を用いることができる。例えば、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸により変性したポリエチレン等の熱融着性樹脂、及び、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂等を用いることができる。また、保護部29を形成する際に用いる樹脂材料は、リング状以外の形状で用意しても良い。第1の接続部28となる部材と共に第1基体12と第2基体14との間に配置され、第1基体12と第2基体14とを積層した後に、第1の接続部28の周囲を囲む形状の保護部29を形成可能であれば、異なる形状であっても良い。
【0062】
「電解質26」を構成する電解質としては、Iとヨウ化物、Brと臭化物、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン、などを含有する電解質が挙げられる。ヨウ化物としては、LiI、NaI、KI、CsI、CaI2等の金属ヨウ化物、及びテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物のヨウ素塩などが挙げられる。また、臭化物としては、LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2等の金属臭化物、及びテトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物の臭素塩などが挙げられる。これらの電解質のうちでは、Iと、LiI及びピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物のヨウ素塩と、を組み合わせてなる電解質が特に好ましい。これらの電解質は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0063】
電解質を溶解して電解液を構成する溶媒としては、粘度が低く、イオン易動度が高く、十分なイオン伝導性を有するものであることが好ましい。このような溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のモノアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルスルフォキシド、スルフォラン等の非プロトン極性物質などが挙げられる。これらの溶媒は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0064】
さらに、電解質として常温溶融塩を用いることができる。この場合には、溶媒を用いて電解液とすることができ、また、電解質を単独で用いることもできる。この常温溶融塩としては、ヨウ化物の常温溶融塩を用いることができる。このヨウ化物の常温溶融塩としては、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ピラゾリジウム塩、イソチアゾリジニウム塩、イソオキサゾリジニウム塩等の各種の常温溶融塩が挙げられる。ヨウ化物の常温溶融塩のうちではイミダゾリウム塩が好ましい。これらの常温溶融塩としては種類の異なる2種以上を併用することもできる。
【0065】
また、電解質26は、電解質を溶媒に溶解した電解液によって構成する他、電解質を含有するゲルによって構成することもできる。電解質26を、電解質ゲルによって構成する場合には、第1基体12と第2基体14との間に電解質ゲルを配置した後に、第1基体12と第2基体14との接合を行なえばよい。
【0066】
B.第2実施例:
図6は、第2実施例の色素増感型太陽電池110の概略構成を表わす断面模式図である。太陽電池110は、第1実施例の太陽電池10と類似する構成を有するため、共通する部分には同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。
【0067】
太陽電池110は、太陽電池10と同様の構成に加えて、更に、集電電極層34を覆う第2絶縁層40を備えている。そのため、太陽電池110は、第1絶縁層32と集電電極層34と第2絶縁層40とによって構成される対極基板130を備え、対極基板130は、触媒電極23と共に第2基体114を構成している。第2絶縁層40は、第1絶縁層32と同様に種々の材料を用いて形成することができるが、本実施例ではポリイミドにより形成している。
【0068】
このような太陽電池110を作製する際には、第1実施例の対極基板30と同様に、種々の方法により対極基板130を作製することができる。特に本実施例では、貫通孔や空隙を形成するパターニングを行なわない第2絶縁層40を備えるため、この第2絶縁層40上に、集電電極層34および第1絶縁層32となる層を形成して、対極基板130を作製することができる。例えば、第2絶縁層40となるポリイミドから成る層の上に、めっき処理や銅箔の貼り付けや、導電ペーストの塗布により、集電電極層34となる銅の層を形成し、その後、エッチング等によって集電電極層34のパターニングを行なえばよい。
【0069】
このように作製した集電電極層34上に更に第1絶縁層32を形成するには、例えば、マイコンパンチでパターニングしたポリイミドの層を用意して、上記のように作製した集電電極層34上に接着させればよい。あるいは、集電電極層34上にポリイミド層を接着させ、その後、このポリイミド層に対して、第1絶縁層32に対応する所望形状になるように、レーザー光の照射等によりパターニングを行なっても良い。
【0070】
以上のように構成された第2実施例の太陽電池110によれば、第1実施例と同様の効果に加えて、パターニングを行なわない第2絶縁層40上に集電電極層34および第1絶縁層32を形成することができるため、対極基板130を作製する際のハンドリング性を向上させることができる。また、集電電極層34の表面を第2絶縁層40によって覆うため、集電電極層34の劣化(例えば、集電電極層34を銅で形成する場合には錆の発生など)を抑制することができる。
【0071】
図7は、第2実施例の変形例である太陽電池210の概略構成を表わす断面模式図である。太陽電池210において、太陽電池10および110と共通する部分には、同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。太陽電池210では、第1の接続部228および第2の接続部239は、集電電極層34および第2絶縁層40を貫通して設けられている。
【0072】
太陽電池210では、第1の接続部228および第2の接続部239は、既述したリードピン等の柱状の導電性部材によって形成されている。集電電極層34と第2絶縁層40の各々には、第1絶縁層32に設けたアノード側集電孔31およびカソード側集電孔33と重なる位置に、これらの集電孔と同じ大きさの集電孔が形成されており、これらの集電孔を貫通するように、第1の接続部228あるいは第2の接続部239となる柱状導電性部材が打ち込まれている。あるいは、保護部29となる樹脂リングを所定の位置に配置して、第1基体312と第2基体314とを積層し、第2絶縁層40側から、既述した集電孔および樹脂リングが形成する空間内に導電性材料(例えば銀ペースト)を注入して、柱状の第1の接続部228および第2の接続部239を形成しても良い。
【0073】
第1の接続部228および第2の接続部239は、第2絶縁層40の表面から対極基板230内へと延出する軸体部と、軸体部よりも径が大きく形成されて第2絶縁層40表面に配置される大径部とを備える。第1の接続部228あるいは第2の接続部239の大径部は、それぞれ、太陽電池210の出力端子に接続されるアノード側端子接続部あるいはカソード側端子接続部となる。
【0074】
以上のように形成された太陽電池210によれば、アノード側端子接続部およびカソード側端子接続部が、それぞれ、集電電極層34を2分割した第1の集電電極部35あるいは第2の集電電極部36と重なる位置に配置されるため、アノード側端子接続部とカソード側端子接続部の配置が、互いに干渉することがない。また、太陽電池210によれば、第2の集電電極部36と重なる領域内において、第2の接続部239の数を増やすことにより、カソード側端子接続部の数を容易に増やすことができる。このように、カソード側端子接続部の数を増やすことにより、集電性を向上させて太陽電池210内部の抵抗を低減し、太陽電池210の性能を向上させることが可能になる。
【0075】
なお、図7の太陽電池210では、第1の接続部228および第2の接続部239は、第2絶縁層40の表面に配置されるアノード側端子接続部あるいはカソード側端子接続部と一体で設けたが、異なる構成としても良い。第1の接続部および第2の接続部は、アノード側端子接続部あるいはカソード側端子接続部と別体とすることができ、さらに、第1の接続部および第2の接続部とは異なる位置(積層方向に重ならない位置)に、アノード側端子接続部およびカソード側端子接続部を設けても良い。第1の接続部あるいは第2の接続部とは異なる位置に、アノード側端子接続部あるいはカソード側端子接続部を設ける場合には、第1の接続部あるいは第2の接続部の位置に関わりなく、端子接続部を設けて、太陽電池の内部抵抗の低減を図ることができる。
【0076】
C.第3実施例:
図8は、第3実施例の色素増感型太陽電池310の概略構成を表わす断面模式図である。太陽電池310は、第1実施例の太陽電池10と類似する構成を有するため、共通する部分には同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。
【0077】
太陽電池310は、アノードとカソードの配置が、第1および第2実施例とは逆になっている。すなわち、第1基体312の透光性導電層21上には、太陽電池10における半導体電極22に代えて、触媒電極323が設けられている。また、第2基体314の導電層24上には、太陽電池10における触媒層25に代えて、色素担持層325が設けられている。
【0078】
触媒電極323は、触媒電極23と同様の反応を促進する触媒成分を備えると共に、充分な透光率(半導体電極322に到達する可視光の割合)を示す層である。本実施例では、触媒電極323は、白金(Pt)の薄膜により形成している。触媒電極323は、例えば、透光性導電層21上にめっき処理を施すことにより形成することができる。色素担持層325は、太陽電池10における半導体電極22と同様の構成を有しており、多孔質電極基体に増感色素を付着させることによって形成している。
【0079】
さらに、太陽電池310は、インターコネクタとして、第1の接続部28と同様の第1の接続部328を有しているが、この第1の接続部328は、カソードである触媒電極323と第1の集電電極部35とを接続している。また、太陽電池310では、第2の接続部39と同様に設けられた第2の接続部339は、アノードである色素担持層325と第2の集電電極部36とを接続している。
【0080】
このように、アノードとカソードを逆に配置した色素増感型太陽電池であっても、アノードとカソードのそれぞれに対応して設ける集電電極部を、集電電極層34を2分割して同一面内に形成することにより、第1実施例と同様の効果を得ることができる。このような太陽電池310では、触媒電極323が充分な透光性を有していれば、太陽電池310を構成する各部は、第1実施例と同様に種々の材料を用いて構成することができ、第2実施例と同様に種々の変形を行なうことができる。
【0081】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0082】
D1.変形例1:
第1ないし第3実施例では、アノード側集電孔31およびカソード側集電孔33の配置、および、集電電極層34を2分割した第1の集電電極部35および第2の集電電極部36の形状は、図4に示す通りであるが、異なる構成としても良い。アノード側集電孔31およびカソード側集電孔33の配置、および、集電電極層34を2分割した第1の集電電極部35および第2の集電電極部36の形状に係る他の構成の一例を、変形例として図9に示す。この変形例では、第1実施例と共通する部分には同じ参照番号を付して、詳しい説明を省略する。図9は、図4と同様に、第1絶縁層32の形状を模式的に表わす平面図であり、アノード側集電孔31とカソード側集電孔33の平面的な配置を示すと共に、第1絶縁層32と重なり合う集電電極層34に設けた空隙37の位置を、破線で示している。図9に示すように、アノード側集電孔31は、第1の集電電極部35と重なる位置に設けられており、カソード側集電孔33は、第2の集電電極部36と重なる位置に設けられている。このような構成としても、第1ないし第3実施例と同様の効果が得られる。
【0083】
なお、第1の集電電極部35および第2の集電電極部36の構成は、さらに異なる構成としても良いが、各々を、複数の突出部を備える櫛歯状に形成して、複数の突出部同士がかみ合うように配置する構成とすることが望ましい。このような構成とすることで、複数のアノード側集電孔31およびカソード側集電孔33を、対極基板30上の面において分散配置する際に、第1の接続部および第2の接続部の配置位置の設定の自由度を確保しつつ、第1の集電電極部および第2の集電電極部の面積を確保することができる。
【0084】
D2.変形例2:
色素増感型太陽電池以外に本願発明を適用しても良く、例えば、本願発明に係る構成を、光センサとして用いることができる。このような光センサでは、例えば、受光により生じた電流量を測定することにより、受光量を検出することができる。
【符号の説明】
【0085】
10,110,210,310…太陽電池
12,312…第1基体
14,114,314…第2基体
20…透光性基板
21…透光性導電層
22,322…半導体電極
23,323…触媒電極
24…導電層
25…触媒層
26…電解質
28,228,328…第1の接続部
29…保護部
30,130,230…対極基板
31…アノード側集電孔
33…カソード側集電孔
34…集電電極層
35…第1の集電電極部
36…第2の集電電極部
37…空隙
39,239,339…第2の接続部
40…第2絶縁層
325…色素担持層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板と、
該透光性基板の一方の面上に設けられた透光性導電層と、
該透光性導電層の面上に設けられると共に、増感色素を備える半導体電極と、触媒を備える触媒電極と、から選択される第1の電極と、
前記透光性基板の前記一方の面に対向して配置され、該一方の面に対向する層として絶縁性物質で形成される第1の絶縁層を備えると共に、導電性物質で形成される集電電極層をさらに備える対極基板と、
該対極基板における前記透光性基板に対向する面上に設けられると共に、前記半導体電極と前記触媒電極とから選択され、前記第1の電極とは異なる第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置される電解質と、
前記透光性導電層と前記集電電極層との間に配置されて該透光性導電層と該集電電極層とを電気的に接続する第1の接続部と、
前記第2の電極と前記集電電極層との間に配置されて該第2の電極と該集電電極層を電気的に接続する第2の接続部と、
を備える色素増感型太陽電池において、
前記第1の絶縁層は、前記第1の絶縁層を貫通する第1の集電孔と、前記第1の絶縁層を貫通し、且つ、前記第1の集電孔と異なる位置に形成された第2の集電孔と、を有し、
前記集電電極層は、前記第1の絶縁層における前記第2の電極が設けられる面とは異なる面上に設けられ、前記第1の集電孔と厚み方向に重なる第1の集電電極部と、前記第2の集電孔と厚み方向に重なる第2の集電電極部と、の2つの部位に、互いに絶縁された状態で2分割されており、
前記第1の接続部は、前記第1の集電孔内を経由して設けられ、前記透光性導電層と前記第1の集電電極部とを電気的に接続し、
前記第2の接続部は、前記第2の集電孔内に配置され、前記第2の電極と前記第2の集電電極部とを電気的に接続することを特徴とする
色素増感型太陽電池。
【請求項2】
請求項1記載の色素増感型太陽電池であって、
前記第1の集電孔及び前記第2の集電孔が複数個で設けられ、前記第1の絶縁層全体に分散配置されている
色素増感型太陽電池。
【請求項3】
請求項1または2記載の色素増感型太陽電池であって、
前記対極基板は、前記集電電極層における前記第1の絶縁層と接する面とは異なる面上に設けられ、絶縁性物質により形成される第2の絶縁層をさらに備える
色素増感型太陽電池。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか記載の色素増感型太陽電池であって、
前記第1の集電電極部と前記第2の集電電極部とは、間に空隙が形成されることによって、互いに絶縁された状態で分断されている
色素増感型太陽電池。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか記載の色素増感型太陽電池であって、
前記第1の集電電極部および前記第2の集電電極部は、それぞれ、複数の突出部を備える櫛歯状に形成されており、前記複数の突出部同士がかみ合うように配置されている
色素増感型太陽電池。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか記載の色素増感型太陽電池であって、
前記第2の接続部は、導電性カーボンおよび樹脂が混合された材料から成り、
前記第2の電極は、触媒電極であって、前記対極基板における前記透光性基板に対向する面上に設けられて前記第2の接続部と同じ材料から成る導電性カーボン層と、該導電性カーボン層上に設けられて前記電解質に曝され、前記触媒を備える触媒層と、を備え、
前記導電性カーボン層を介して、前記触媒電極と前記集電電極層が電気的に接続されている
色素増感型太陽電池。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか記載の色素増感型太陽電池であって、
前記第1の接続部を内部に収容する筒状の保護部を備え、
前記保護部を介して前記第1の接続部が前記電解質から隔てられて保護される
色素増感型太陽電池。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか記載の色素増感型太陽電池であって、
前記対極基板において、前記絶縁性物質により形成される層は、いずれも、ポリイミドにより形成される層であり、前記導電性物質により形成される層は、いずれも、銅により形成される層である
色素増感型太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−146539(P2012−146539A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4527(P2011−4527)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】