説明

芳香族及び脂環式アミンの基づく多孔性ゲル

本発明は、以下の成分
(a1)少なくとも1種の多官能性のイソシアネート、
(a2)少なくとも1種の多官能性の芳香族アミン、及び
(a3)少なくとも1種の多官能性の脂環式アミン、
を反応した状態で含む多孔性ゲルに関する。
本発明は更に、多孔性ゲルを製造する方法、このようにして得られる多孔性ゲル、及び多孔性ゲルを絶縁材として、及び真空絶縁パネルに使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の成分
(a1)少なくとも1種の多官能性のイソシアネート、
(a2)少なくとも1種の多官能性の芳香族アミン、及び
(a3)少なくとも1種の多官能性の脂環式アミン、
を反応した状態で含む多孔性ゲルに関する。
【0002】
本発明は更に、多孔性ゲルを製造するための方法、このようにして得られる多孔性ゲル、及び多孔性ゲルを絶縁材料として、及び真空絶縁材料に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
寸法が数マイクロメートル、又はこれを大きく下回り、及び少なくとも70%の高多孔率の多孔性ゲルが理論上、特に良好な断熱材である。
【0004】
平均孔径が小さいこのような多孔性材料は、例えば有機キセロゲルの状態で存在しても良い。文献では、「キセロゲル」という用語は、完全に一様に使用されているものではない。通常、キセロゲルは、ゾル−ゲル法によって製造され、及び液相の臨界温度及び臨界圧力未満(「亜臨界条件」)で乾燥させることにより、ゲルから液相が除去されている多孔性材料を意味すると理解される。これとは対照的に、流体相が、ゲルから超臨界条件下に除去される場合には通常、アエロゲルと言及される。
【0005】
ゾル−ゲル法では、最初に、反応性有機ゲル前駆体に基づいてゾルが製造され、そして次に架橋反応によってゲルを形成することによってゾルがゲル化される。ゲルから多孔性材料、例えばキセロゲルを得るために、液体を除去する必要がある。以降、この工程を簡略化して、乾燥と称する。
【0006】
特許文献1(WO−95/02009)には、特に真空絶縁(真空断熱:vacuum insulation)に適用するために特に適切なイソシアネートベースのキセロゲルが開示されている。この公表文献は更に、芳香族ポリイソシアネート及び非反応性の溶媒を含む公知のポリイソシアネートを使用した、キセロゲルを製造するための、ゾル−ゲル−ベースの方法を開示している。活性水素原子を有する更なる化合物として、脂肪族又は芳香族ポリアミン、又はポリオールが使用されている。この公表文献に開示された例には、ポリイソシアネートがジアミノジエチルトルエンと反応する例が含まれている。開示されたキセロゲルは通常、平均孔径が50μmの範囲である。ある例では、10μmの平均孔径が記載されている。
【0007】
特許文献2(WO2008/138978)には、30〜90質量%の少なくとも1種の多官能性イソシアネート、及び10〜70質量%の少なくとも1種の多官能性の芳香族アミンを含み、体積についての荷重平均孔径(単位容積の重量平均孔径:volume-weighted mean pore diameter)が、最も大きくて5マイクロメーターであるキセロゲルを開示している。
【0008】
特許文献3(WO2009/027310)には、多官能性イソシアネート及び保護脂肪族アミンから由来するキセロゲルを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO−95/02009
【特許文献2】WO2008/138978
【特許文献3】WO2009/027310
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ポリウレアに基づく公知の多孔性ゲルの材料特性、特に機械的な安定性は、全ての用途について適切なものではない。更に、基礎となる処方物は、亜臨界条件(subcritical condition)で、多孔率が減少し、及び密度が増加する収縮を示す。
【0011】
従って、本発明の目的は、上述した不都合が、たとえ存在したとしても最小限の程度である多孔性ゲルを提供することにある。より特定的には、多孔性ゲルは、従来技術と比較して多孔率が増し、及び密度が低下しているべきである。更に多孔性ゲルは、真空範囲を超える圧力、特に約1ミリバール〜約100ミリバールの圧力範囲であっても低熱伝導率であるべきである。時間が経つと真空パネル内の圧力が増すので、このことが望ましい。より特定的には、多孔性ゲルは、高い多孔性、低い密度、及び十分に高い機械的安定性を有しているべきである。更に、多孔性ゲルは、燃焼性が低く、及び熱安定性が高いものであるべきである。
【0012】
更なる目的は、孔径が小さく、多孔率が高く、密度が低く、及び同時に機械的安定性が高い多孔性ゲルを得ることができる方法を提供することにある。更に、この方法は、熱伝導性が低く、(及び亜臨界条件下で溶媒を除去した場合に、収縮が小さい)多孔性のゲルを提供するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明の多孔性ゲル、及び多孔性ゲルを製造するための、本発明に従う方法が見出された。
【0014】
好ましい実施の形態は、請求項と明細書に見出すことができる。好ましい実施の形態の組合せは、本発明の範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
多孔性ゲル
本発明に従い、多孔性ゲルは、以下の成分
(a1)少なくとも1種の多官能性のイソシアネート、
(a2)少なくとも1種の多官能性の芳香族アミン、及び
(a3)少なくとも1種の多官能性の脂環式アミン、
を反応した状態で含む。
【0016】
本発明について、多孔性ゲルは、多孔性(porous)であり、及びゾル−ゲル法によって得ることができる材料である。本発明について、本発明の多孔性ゲルは、キセロゲルとして又はアエロゲルとして存在する。本発明について、本発明の多孔性ゲルは、キセロゲルとして存在することが好ましい。
【0017】
本発明について、キセロゲルは、ゾル−ゲル法によって製造され、液相の臨界温度未満及び臨界圧力未満(「亜臨界条件」)で乾燥させることによって、ゲルから液相が除去された、多孔率が少なくとも70体積%であり、及び体積についての荷重平均孔径が、最も大きくて50マイクロメーターである多孔性ゲルを意味すると理解される。
【0018】
これとは対照的に、アエロゲルは、ゲルからの流体相の除去が超臨界条件下に行われた場合の、対応する多孔性ゲルを意味すると理解される。
【0019】
ゲルからの流体相の除去の過程で、活性な毛管力が存在し、これが得られる多孔性ゲルの孔構造に影響を与える。超臨界条件下にゲルから流体相を除去する過程で、これらの毛管力は非常に小さい。亜臨界条件下で、ゲルから流体相を除去する過程で、毛管力は、安定性とゲルの性質、及び除去される溶媒の両極性に依存して、多孔性構造に変化を与えるゲルの収縮をもたらす。
【0020】
従って、上記に定義したタイプの1種以上のモノマー単位(a1)は、成分a1を形成する。同様のことが、モノマー単位(a2)及び(a3)に適用される。成分又はモノマー単位(a1)、(a2)及び(a3)は、多孔性ゲル中に、反応した状態で存在する。「反応した状態」は、ポリマーの、又はポリマー−結合した状態を意味すると理解される。
【0021】
好ましい実施の形態では、本発明の多孔性ゲルは、それぞれ成分(a1)、(a2)及び(a3)の合計質量に対して、20〜90質量%の(少なくとも1種の多官能性イソシアネートから成る)成分(a1)、及び9.99〜45質量%の(少なくとも1種の多官能性芳香族アミンから成る)成分(a2)、及び(a3)0.01〜35質量%の、少なくとも1種の多官能性脂環式アミンを含む。成分(a1)、(a2)及び(a3)の質量パーセントの合計は、成分(a1)、(a2)及び(a3)の合計質量に対して100質量%になる。
【0022】
多孔性ゲルは、好ましくは、それぞれ成分(a1)、(a2)及び(a3)の合計質量に対して、40〜80質量%の成分(a1)、及び19〜40質量%の成分(a2)、及び1〜20質量%の成分(a3)を含み、最も好ましくは45〜79質量%の成分(a1)、及び19〜40質量%の成分(a2)、及び2〜15質量%の成分(a3)を含む。パーセンテージは、常に、(多孔性ゲル中に反応した状態で存在する)使用した成分の量を反映する。
【0023】
本発明について、化合物の官能性(官能価:functionality)は、分子当たりの反応基の数を意味すると理解される。モノマー単位(a1)の場合、官能性(官能価)は、1分子当たりのイソシアネート基の数である。モノマー単位(a2)又は(a3)のアミノ基の場合、官能性は、1分子当たりの反応性アミノ基(活性アミノ基)の数である。多官能性化合物は、少なくとも2の官能性を有している。
【0024】
使用する成分(a1)、(a2)又は(a3)が、異なる官能性を有する化合物の混合物である場合、成分の官能性は各場合において、個々の化合物の官能性の数重み平均(number-weighted mean)から計算される。多官能性化合物は、1分子当たり少なくとも2個の上述した官能基を含んでいる。
【0025】
平均孔径は、DIN66133に従う水銀浸入測定の手段によって測定され、及び常に、本発明では、体積についての荷重平均値(volume-weighted mean value)である。DIN66133に従う水銀浸入測定は、ポロシメトリー法であり、そしてポロシメーター内で行われる。この方法では、水銀が多孔性材料のサンプル内にプレスされる。小さな孔は、大きな孔よりも、水銀を充填するのにより高い圧力を必要とし、そして孔径分布、及び孔径の体積についての荷重平均値を測定するために、対応する圧力/体積ダイアグラムを使用することができる。
【0026】
多孔性ゲルの荷重平均孔径は、最も大きくて5マイクロメーターであることが好ましい。多孔性ゲルの荷重平均孔径は、より好ましくは最も大きくて3.5マイクロメーターであり、最も好ましくは最も大きくて3マイクロメーターであり、及び特に最も大きくて2.5マイクロメーターである。
【0027】
多孔性で孔径が最小であることが、低熱伝導の観点からは望ましい。しかしながら、製造の理由で、及び機械的な安定性が十分な多孔性ゲルを得るために、孔径の体積についての荷重平均値に実際的な下限値が生じる。通常、孔径の体積についての荷重平均値は、少なくとも10nm、好ましくは少なくとも50nmである。多くの場合、孔径の体積についての荷重平均値は、少なくとも100nm、特に少なくとも200ナノメートルである。
【0028】
本発明の多孔性ゲルは、多孔率が、好ましくは少なくとも70体積%、特に70〜99体積%、より好ましくは少なくとも80体積%、最も好ましくは少なくとも85体積%、特に85〜95体積%である。体積%での多孔率は、多孔性ゲルの合計体積の記載された割合が、孔から成ることを意味する。熱伝導率を最小にするという観点からは、通常、最も大きい多孔率が望ましいが、多孔性ゲルの機械的特性と加工性によって、多孔率に上限が生じる。
【0029】
本発明に従えば、成分(a1)〜(a3)は、多孔性ゲル中に、反応した(重合した)状態で存在する。本発明の組成のために、モノマー単位(a1)〜(a3)は、専らウレア結合を介して結合して、多孔性ゲル内に存在する。多孔性ゲル内の更なる可能な結合は、イソシアヌレート結合のもので、これはモノマー単位(a1)のイソシアネート基の三量化によって生じる。キセロゲルが更なる成分を含む場合、更なる可能な結合は例えば、イソシアネート基とアルコール又はフェノールの反応によって形成されるウレタン基である。
【0030】
成分(a1)〜(a3)は、ウレア基−NH−CO−NH−によって結合した多孔性ゲル内に、少なくとも50モル%の範囲で存在することが好ましい。成分(a1)〜(a3)は、多孔性ゲル内に、好ましくは50〜100モル%がウレア基によって結合して存在し、これは特に60〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、特に80〜100モル%、例えば90〜100モル%である。
【0031】
100%に不足するモル%は、更なる結合の状態、特にイソシアヌレート結合の状態で存在する。しかしながら、更なる結合は、この技術分野の当業者にとって公知のイソシアネートポリマーの他の結合の状態で存在しても良い。例は、エステル、ウレア、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、イソシアヌレート、ウレトジオン、及び/又はウレタン基である。
【0032】
多孔性ゲル内のモノマー単位の結合のモル%は、固体又は膨張した状態で、NMRスペクトロスコピー(核スピン共振:nuclear spin resonance)を使用して測定される。適切な測定法は、この技術分野の当業者にとって公知である。
【0033】
成分(a1)のNO基の、成分(a2)及び(a3)のアミノ基に対する使用割合(等量比)は、好ましくは1.01:1〜1.5:1である。成分(a1)のNO基の、成分(a2)及び(a3)のアミノ基に対する等量比(equivalence ratio)は、より好ましくは1.1:1〜1.4:1、特に1.1:1〜1.3:1である。過剰のNCO基は、溶媒が除去された時の多孔性ゲルの収縮を少なくする。
【0034】
成分(a1)
本発明に従えば、多孔性ゲルは、少なくとも1種の多官能性イソシアネートを反応した状態で含む。多孔性ゲルは、成分(a1)、(a2)及び(a3)の合計質量に対して、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは40〜80質量%、特に45〜79質量%の少なくとも1種の多官能性イソシアネートを、反応した状態で含む。
【0035】
有用な多官能性イソシアネートは、芳香族、脂肪族、脂環式、及び/又はアラリファティックのイソシアネートを含む。このような多官能性イソシアネートはそれ自体公知であり、又はそれ自体公知の方法によって製造することができる。多官能性イソシアネートは、特に混合物の状態で使用することもでき、これによりこの場合の成分(a1)は異なる多官能性のイソシアネートを含む。モノマー単位(a1)として有用な多官能性イソシアネートは、成分の1モルにつき、2個または2個を超えるイソシアネート基を有する(2個の場合のものを、以降ジイソシアネートと称する)。
【0036】
特に適切なものは、ジフェニルメタン2,2‘−、2,4‘−及び/又は4,4‘−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ジメチルジフェニル3,3’−ジイソシアネート、ジフェニルエタン1,2−ジイソシアネート、及び/又はp−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナートメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート、及び/又はジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,4’−、及び2,2’−ジイソシアネートである。
【0037】
好ましい多官能性モノマー単位(a1)は、芳香族イソシアネートである。成分(a1)の特に好ましい多官能性イソシアネートは、以下の実施の形態を有している:
i)トリレンジイソシアネート(TDI)に基づく多官機性イソシアネート、特に2,4−TDI又は2,6−TDI又は2,4−及び2,6−TDIの混合物;
ii)ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)に基づく多官能性イソシアネート、特に2,2‘−MDI又は2,4‘−MDI又は4,4‘−MDI、又はポリフェニルポリメチレンイソシアネートとも称されるオリゴマー性MDI、又は上述したジフェニルメタンジイソシアネート、又はMDIの製造で得られる粗製MDI、又はMDIの少なくとも1種のオリゴマーと上述した低分子量MDIの少なくとも1種の誘導体の混合物;
iii)実施の形態i)に従う少なくとも1種の芳香族イソシアネート及び実施の形態ii)に従う少なくとも1種の芳香族イソシアネートの混合物。
【0038】
多官能性イソシアネートとして、特に好ましいものは、オリゴマー性ジフェニルメタンジイソシアネートである。オリゴマー性ジフェニルメタンジイソシアネート(以降、オリゴマー性MDIと称する)は、1種のオリゴマー性縮合生成物、又は複数種類のオリゴマー性縮合生成物の混合物、及び従ってジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の誘導体である。多官能性イソシアネートは、好ましくは、モノマー性芳香族ジイソシアネート及びオリゴマー性MDIの混合物から形成されても良い。
【0039】
オリゴマー性MDIは、官能価が2を超える、特に3又は4又は5を超えるMDIの1種以上の多環式の縮合生成物を含む。オリゴマー性MDIは公知であり、そしてしばしばポリフェニルポリメチレンイソシアネートと称され、又は他にポリマー性MDIと称される。オリゴマー性MDIは、典型的には、MDI−ベースの異なる官能性のイソシアネートの混合物から形成される。典型的には、オリゴマー性MDIは、モノマー性MDIとの混合物中に使用される。
【0040】
オリゴマー性MDIを含むイソシアネートの(平均)官能性は、約2.2〜約5の範囲、特に2.4〜3.5の範囲、特に2.5〜3の範囲で変化しても良い。MDI−ベースの、異なる官能性の多官能性イソシアネートのこのような混合物は、特に(MDIの製造で得られる)粗製MDIである。
【0041】
MDIに基づく多官能性イソシアネート、又は複数種類の多官能性ポリイソシアネートの混合物は、例えばBASF Polyurethanes GmbHから、Lupranat(登録商標)の名称で市販されている。
【0042】
成分(a1)の官能性は、好ましくは少なくとも2、特に少なくとも2.2であり、及びより好ましくは少なくとも2.5である。成分(a1)の官能性は、好ましくは2.2〜4、及びより好ましくは2.5〜3である。
【0043】
成分(a1)中のイソシアネート基の含有量は、好ましくは5〜10mmol/g、特に6〜9mmol/g、より好ましくは7〜8.5mmol/gである。イソシアネート基のmmol/gでの含有量と、g/当量のいわゆる等量質量(equivalence weight)は、逆比であることがこの技術分野の当業者にとって公知である。mmol/gでのイソシアネートの含有量は、ASTM D−5155−96Aに従う質量%での含有量から計算される。
【0044】
好ましい実施の形態では、成分(a1)は、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’−ジイソシアネート、及びオリゴマー性ジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種の多官能性イソシアネートである
この好ましい実施の形態では、成分(a1)は、より好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネートを含み、及び官能性が少なくとも2.5である。
【0045】
成分(a2)
本発明に従い、多孔性ゲルは、少なくとも1種の多官能性芳香族アミンを含む。多孔性ゲルは、成分(a1)、(a2)及び(a3)の合計質量に対して、好ましくは9.99〜45質量%、より好ましくは19〜40質量%の少なくとも1種の多官能性芳香族アミンを含む。
【0046】
適切な芳香族アミン(a2)は、特に、ジアミノジフェニルメタンの異性体、及び誘導体である。ジアミノジフェニルメタンの(成分(a2)について好ましい)異性体及び誘導体は特に、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、及びオリゴマー性ジアミノジフェニルメタンである。
【0047】
適切な芳香族アミン(a2)は、特に、トルエンアミンの異性体及び誘導体でもある。トルエンアミンの(成分(a2)について好ましい)異性体及び誘導体は特に、トルエンジアミン、特にトルエン−2,4−ジアミン及び/又はトルエン−2,6−ジアミン、及びジエチルトルエンジアミン、特に3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、及び/又は3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミンである。
【0048】
成分(a2)は、好ましくは、少なくとも1種の多官能性芳香族アミンを含み、このものの少なくとも1種は、ジアミノジフェニルメタンの異性体及び誘導体、特に上述したものから選ばれる。
【0049】
成分(a2)は、より好ましくは、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン及びオリゴマー性ジアミノジフェニルメタンから選ばれる少なくとも1種の多官能性芳香族アミンから成る。
【0050】
オリゴマー性のジアミノジフェニルメタンは、アニリンとホルムアルデヒドの、1種以上の多環式のメチレンブリッジした縮合生成物を含む。オリゴマー性MDAは、MDAの少なくとも1種のオリゴマーを含むが、通常では、官能性が2を超える、特に3又は4又は5を超える、複数種類のMDAのオリゴマーを含む。オリゴマー性MDAは公知であり、又はそれ自体公知の方法で製造することができる。典型的には、オリゴマー性MDAは、モノマー性MDAとの混合物の状態で使用される。
【0051】
オリゴマー性MDAを含む多官能性アミンの(平均)官能性は、約2.3〜約5の範囲、特に2.5〜3.5の範囲、及び特に2.5〜3の範囲で変化することができる。このような、異なる官能性を有するMDA−ベースの多官能性アミンの混合物は、特に粗製MDAであり、該粗製MDAは、特に、アニリンのホルムアルデヒドとの縮合で、典型的には塩酸によって触媒作用を及ぼされて(粗製MDIの製造の中間体として)形成される。成分(a2)は、好ましくはオリゴマー性のジアミノジフェニルメタンを含み、及び官能性が少なくとも2.3である。
【0052】
成分(3)
本発明に従えば、多孔性ゲルは、少なくとも1種の多官能性の脂環式アミンを、反応した状態で、成分(a3)として含む。
【0053】
本発明の多孔性ゲルは、それぞれ成分(a1)、(a2)及び(a3)の合計質量に対して、好ましくは0.01〜35質量%の成分(a3)、より好ましくは1〜20質量%、特に2〜15質量%の成分(a3)を含む。
【0054】
反応した状態は、対応するモノマー単位内に使用されたアミノ成分が、成分(a1)に対して反応性であるという事実から得られるものである。従って、モノマー単位(a3)のアミノ基は、モノマー単位(a1)に対して反応性である必要があり、及び1級又は2級アミノ基はオプションである。
【0055】
脂環式アミンは、少なくとも2個の脂環式アミノ基を有する化合物を意味すると理解される。脂環式アミノ基は、脂環式環に結合したアミノ基を意味すると理解される。アミノ基は、好ましくは1級アミノ基である。脂環式環は、任意に置換されたシクロヘキシル環であることが有利である。
【0056】
成分(a3)の割合が比較的高いと、多孔性構造について、及び特に機械的特性及び断熱容量について有利な効果が得られる。
【0057】
しかしながら、成分(a3)の割合が相当に増加すると、その高い反応性のために、材料構造と特性の均一性が劣化する可能性が生じる。均一な混合が可能となる前に、硬化した領域が材料内に形成され、これが特性の劣化をもたらす。
【0058】
この背景に対して、成分(a3)を、それぞれ成分(a1)〜(a3)の合計質量に対して、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも1質量%、特に少なくとも2質量%の量で使用することが有利であることがわかった。成分(a3)を、それぞれ成分(a1)〜(a3)の合計質量に対して、最も多くて35質量%、特に最も多くて20質量%、より好ましくは、最も多くて15質量%の量で使用することが有利であることもわかった。
【0059】
脂環式アミンの1個の同一の脂環式環が、アミノ基を1個だけ有することが可能である。このような場合、成分(a3)は少なくとも2個の脂環式環を含む。
【0060】
しかしながら、同じ脂環式環が、少なくとも2個、特に正確に2個のアミノ基に結合することも可能である。1級アミノ基は、化学的結合によって脂環式環に結合される。2級アミノ基は、2級アミノ基として、化学的な結合によって脂環式環に結合されるか、又は−NH−基として、環に組込むことによって脂環式環に結合される。これらの好ましい例は、イソホロンジアミン、ピペラジン、及び完全に水素化したトルエンジアミン、特に完全に水素化したトルエン−2,4−ジアミンである。
【0061】
少なくとも2個の上述したアミノ基が、それぞれ異なる脂環式環に付着することが好ましい。
【0062】
成分(a3)が、以下の構造要素(I):
【0063】
【化1】

【0064】
(但し、R1〜R4が、同一であっても、異なっていても良く、及びそれぞれが独立して、水素、又は直鎖状、又は枝分かれした、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基から選ばれ、及び環が、更なる置換基を有しても良く、及び少なくとも1つの更なる脂環式環に直接的に又は間接的に結合していても良い脂環式環である)に従う、少なくとも2つのアミノ基を有する化合物を、反応した状態で含むことが好ましい。
【0065】
好ましくは、成分(3)は、それぞれがシクロヘキシル環に結合した少なくとも2個のアミノ基を有する、少なくとも1種の化合物を反応した状態で含み、ここで、シクロヘキシル環は更なる置換基を有していても良く、及び/又は少なくとも1個の更なる、任意に置換されたシクロヘキシル環に直接的に、又は間接的に結合していても良い。
【0066】
特に好ましい実施の形態では、構造要素(I)について、R1及びR3=Hであり、及びR2及びR4が、それぞれ独立して、直鎖状、又は枝分れした、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基から選ばれる。より特定的には、R2及びR4は、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、i−ブチル又はt−ブチルから選ばれる。
【0067】
上述した特に好ましい実施の形態によって、アミノ基が立体的に保護(遮蔽:shield)される。このことは、溶媒がゲルから除去された時に、収縮の減少を達成可能とする積極的な効果、及び多孔性ゲルの多孔率に対する積極的な効果を有している。
【0068】
特に好ましい実施の形態では、成分(a3)を形成するモノマー単位(a3)は、以下の構造(II):
【0069】
【化2】

【0070】
(但し、R1〜R10が、同一であっても良く、又は異なっていても良く、及びそれぞれが独立して、水素、又は1〜12個の炭素原子を有する、直鎖状の、又は枝分かれしたアルキル基から選ばれる)
の少なくとも1種の化合物を含む。
【0071】
好ましくは、R5=R6=Hであり、及びR1=R3=R7=R9=Hであり、及びR248及びR10が、それぞれ独立して、直鎖状の、又は枝分かれした、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、特にメチル、エチル、i−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、又はt−ブチルから選ばれる。
【0072】
更に好ましい実施の形態は、水素化されたオリゴマー性のMDA(オリゴマー性ジフェニルメタンジイソシアネート)である。オリゴマー性MDAについては上述した。水素化されたオリゴマー性MDAは、以下の構造(III)又はその構造的な異性体形態を有する:
【0073】
【化3】

【0074】
ここで、構造(III)の異性体は、異性体の混合物も同様に扱われる。
【0075】
水素化されたオリゴマー性MDAは、n=0〜約4の異なる鎖長さのオリゴマーの混合物である。アミノ官能性は、好ましくは2〜3.5、特に2.2〜3である。
【0076】
成分(a3)は、好ましくは3,3’,5,5’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンで、ここで、3、3’、5及び5’位のアルキル基は同一であっても良く、又は異なっていても良く、及びそれぞれ独立して、直鎖状の、又は枝分れした、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基から選ばれる。
【0077】
特に好ましい実施の形態では、成分(a3)は、3,3’,5,5’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンで、ここで、3、3’、5及び5’位のアルキル基は、好ましくはメチル、i−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、i−ブチル又はt−ブチルから選ばれる。
【0078】
極めて好ましいモノマー単位(a3)は、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、及び3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンである。
【0079】
多官能性脂環式アミンは、好ましくは、対応する多官能性芳香族アミンの環水素化によって製造される。芳香族アミンを水素化するための対応する方法は、この技術分野の当業者にとって公知である。対応する多官能性芳香族アミンも同様に、この技術分野の当業者にとって公知であり、そして市販されており、又はこの技術分野の当業者にとって公知の合成方法で製造することができる。多官能性脂環式アミンの製造方法は、例えばEP0134499B1の第2頁54行目〜第7頁58行目に記載されている。
【0080】
多孔性ゲルを製造するための方法
本発明に従う方法は、以下の工程を含む:
(a)成分(a1)及び、これとは別に、成分(a2)及び(a3)を、それぞれ溶媒(C)中に供給する工程;
(b)成分(a1)〜(a3)を、溶媒(C)の存在下にゲルに変換する工程;
(c)前の工程で得られたゲルを乾燥させる工程(該工程は、好ましくは、ゲル中に存在する液体の臨界温度と臨界圧力未満の温度と圧力で、ゲル中に存在する液体を、ガス状状態に変換することによって行われる)。
【0081】
好ましい実施の形態では、成分(a1)が最初の容器内に、及び成分(a2)と(a3)が、第2の容器に、それぞれ溶媒(C)中に供給され、そして工程(b)の開始時に最終的に混合される。本発明に従う方法は、好ましくは以下の工程を含む:
(a−1)成分(a1)及び、これとは別に、成分(a2)及び(a3)を、それぞれ溶媒(C)中に供給し、好ましくは成分(a2)及び(a3)を予め混合する工程;
(a−2)工程(a−1)で供給された成分を混合することによって、成分(a1)〜(a3)を溶媒(C)中に含むゲル前駆体(A)を供給する工程;
(b)ゲル前駆体(A)を、溶媒(C)の存在下にゲルに変換する工程;
(c)前の工程で得られたゲルを乾燥させる工程(該工程は、好ましくは、ゲル中に存在する液体の臨界温度と臨界圧力未満の温度と圧力で、ゲル中に存在する液体を、ガス状状態に変換することによって行われる)。
【0082】
工程(a)〜(c)の好ましい実施の形態を以下に詳細に記載する。
【0083】
工程(a)
本発明に従えば、工程(a)で成分(a1)が、成分(a2)及び(a3)とは別に、それぞれ溶媒(C)中に供給される。ゲル前駆体(A)は、成分(a1)〜(a3)を混合することによって得られる。従ってゲル前駆体(A)は、「多孔性ゲル」について上述したモノマー単位(a1)〜(a3)を、同様に上述した割合で含む。
【0084】
モノマー単位(a1)〜(a3)は、ゲル前駆体(A)中に、モノマー性の状態で存在するか、又はイソシアネートとアミノ基の部分的反応又は非等モル反応によってプレポリマーに予め変換され、該プレポリマーは、場合により更なるモノマー単位(a1)〜(a3)と一緒にゲル前駆体(A)を形成する。ゲル前駆体(A)は従ってゲル化可能なものであり、すなわちゲル前駆体(A)は架橋結合によってゲルに変換することができる。成分(a1)〜(a3)が重合状態で存在する多孔性ゲル中の成分(a1)〜(a3)の割合は、これらがなお未反応の状態で存在するゲル前駆体(A)中の成分(a1)〜(a3)の割合に相当する。
【0085】
使用される成分(a1)の粘度は広い範囲で変化して良い。本発明に従う方法の工程(a)で使用される成分(a1)は、粘性が、好ましくは100〜3000mPa.sの範囲であり、より好ましくは200〜2500mPa.sの範囲である。
【0086】
「ゲル前駆体(A)」という用語は、成分(a1)〜(a3)のゲル化可能な混合物を示す。次にゲル前駆体(A)は、工程(b)で、溶媒(C)の存在下にゲル、架橋したポリマーに変換される。
【0087】
このように、本発明に従う方法の工程(a)で、液体希釈剤中にゲル前駆体(A)を含む混合物が得られる。本発明について、「溶媒(C)」という用語は、液体希釈剤、すなわち狭い意味での溶媒と分散物の両方の溶媒を含む。混合物は特に真溶液、コロイド状溶液、又は分散物、例えば乳液、又は懸濁液であっても良い。混合物は、真溶液であることが好ましい。溶媒(C)は、工程(a)の条件下に液体である化合物、好ましくは有機溶媒である。
【0088】
芳香族イソシアネート、特にジイソシアネートが水と反応すると、芳香族アミン、特にジアミンが形成されることが、この技術分野の当業者にとって公知である。従って、多官能性の芳香族アミンの替わりに、対応する芳香族多官能性イソシアネート、及び当量の水を成分(a2)として使用し、所望の量の多官能性芳香族アミンをその場で(in situ)、又は予備反応で形成することが可能である。過剰の成分(a1)を使用し、及び水の同時添加を行なう場合、成分(a1)は、その場で部分的に成分(a2)に変換され、これは直ちに残りの成分(a1)と反応してウレア結合を形成することができる。
【0089】
しかしながら、多官能性アミンは、溶媒(C)中で成分(a1)の存在下、成分(a2)から得られないことが好ましく、そしてむしろ成分(a2)として別個に加えられることが好ましい。従って、工程(a)で提供される混合物は、如何なる水も含まないことが好ましい。
【0090】
有用な溶媒(C)は、原則として、1種の化合物、又は複数種類の化合物を含み、そして工程(a)で混合物が得られる圧力と温度の条件(簡略して溶解条件)下では溶媒(C)は液体である。溶媒(C)の組成は、有機ゲル前駆体を溶解、又は分散可能なように、好ましくは溶解可能なように選ばれる。好ましい溶媒(C)は、有機ゲル前駆体(A)のための溶媒、すなわち、有機ゲル前駆体(A)を反応条件下に完全に溶解する溶媒である。
【0091】
工程(b)からの反応混合物は、ゲル、すなわち溶媒(C)によって膨張した粘弾性(viscoelastic)化学的ネットワークである。工程(b)で形成されたネットワークのための良好な膨張剤である溶媒(C)は通常、微細な孔を有し、及び平均孔径が小さいネットワークをもたらし、この一方で、工程(b)から得られたゲルに対して弱い膨張剤である溶媒(C)は通常、粗い孔を有し、及び平均孔径が大きいネットワークをもたらす。
【0092】
従って溶媒(C)の選択は、所望の孔径分布、及び所望の多孔率に影響を与える。通常、溶媒(C)は追加的に、本発明に従う方法の工程(b)の間、又はその後に、沈澱又は沈殿した反応生成物が形成される結果としての軟凝集が、(極めて実質的に)発生しないように選ばれる。
【0093】
適切な溶媒(C)を選択する場合、沈澱した反応生成物の割合は、混合物の合計質量に対して、代表例では1質量%未満である。特定の溶媒(C)中に形成された沈澱した生成物の量は、ゲルポイントの前に、適切なフィルターを通して反応混合物をろ過することによって、重量測定法的(gravimetrically)に測定することができる。
【0094】
有用な溶媒(C)は、イソシアネート−ベースのポリマーについての従来技術から公知の溶媒を含む。好ましい溶媒は、全ての成分、(a1)〜(a3)のための溶媒のもので、すなわち、成分(a1)〜(a3)を反応条件下に実質的に完全に溶解させ、そして溶媒(C)を含む工程(a)で提供された全混合物中の有機ゲル前駆体(A)の含有量が好ましくは少なくとも5質量%であるようなものである。溶媒(C)は、好ましくは不活性であり、すなわち、成分(a1)に対して非反応性である。
【0095】
有用な溶媒(C)は、例えばケトン、アルデヒド、アルキルアルカノエート、アミド、例えばホルムアミド、及びN−メチルピロリドン、スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド、脂肪族、及び脂環式ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化芳香族化合物、及びフッ素化エーテルを含む。同様に有用なものは、上述した化合物の2種以上の混合物である。
【0096】
追加的に、溶媒(C)として有用なものは、アセタール、特にジエトキシメタン、ジメトキシメタン、及び1,3−ジオキサレンである。
【0097】
同様に、ジアルキルエーテル及び環状エーテルが、溶媒(C)として好ましい。好ましいジアルキルエーテルは特に、2〜6個の炭素原子を有するもの、特にメチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、プロピルエチルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、プロピルイソプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、エチルn−ブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、及びエチルt−ブチルエーテルである。好ましい環状エーテルは特に、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びテトラヒドロピランである。
【0098】
置換基当たり3個以下の炭素元素を有するアルキル基を有するアルデヒド及びケトンが溶媒(C)として同様に好ましい。
【0099】
多くの場合、相互に完全に混和性で、及び上述した溶媒から選ばれる2種以上の化合物を混合物の状態で使用することによって、特に適切な溶媒(C)が得られる。
【0100】
本発明に従えば、工程(a)で成分(a1)が、成分(a2)及び(a3)とは別に供給される。
【0101】
モノマー単位(a3)の1級アミノ基は、好ましくは、工程(b)の開始時点では保護された状態で存在する。より好ましくは、化合物(a3)の1級アミノ基は、工程(b)が行われる前に、保護された状態で存在する。最も好ましくは、成分(a3)が工程(a)で供給され、ここで、1級アミノ基は保護された状態で存在し、特に、1級アミノ基を保護するための媒体中(該溶媒は、同時に溶媒(C)である)に溶解することによって保護された状態で存在する。
【0102】
「保護された状態で存在するアミノ基」は、1級アミノ基が、基本的に−NH2としてフリーな状態で存在しないことを意味する。保護された状態で存在するモノマー単位(a3)の1級アミノ基は、イソシアネートに対する反応性が低減している。1級アミノ基は、好ましくは、少なくとも1個の更なる官能基、又は少なくとも1個の更なる分子への可逆的な結合によって、保護された状態で存在する(いわゆる保護基)。
【0103】
「可逆的な結合(reversible connection)」は、1級アミノ基とイソシアネート基が反応する前に、これらを制御された方法で分離することによって、又は(このことが好ましいものであるが)本発明に従う方法の工程(b)の過程で、反応性1級アミノ基を改質することによって(これらにより1級アミノ基とイソシアネート基の間の反応速度を低下させることになる)、対応する官能基、又は分子(保護基)が、1級アミノ基のイソシアネートに対する反応性を低減させるが、しかし反応を完全に抑制するものではないことを意味すると理解される。このような改質(reformation)は、例えば保護された状態と反応性の自由な状態の間の平衡の形態で行うことができる。
【0104】
より好ましくは、モノマー単位(a3)の1級アミノ基は、工程(b)で、ケチミン及び/又はアルジミンの状態で存在する。本発明に従う方法の工程(a)で、成分(a3)を、ケチミン及び/又はアルジミンの状態で供給することが極めて好ましい。
【0105】
このことは、モノマー単位(a3)の1級アミンの、少なくとも一部、好ましくは全てが、ケチミン及び/又はアルジミンの状態で存在することを意味するものと理解される。ケチミン及び/又はアルジミンは、特にケトン及び/又はアルデヒドを溶媒(C)として使用することによって得ることができる。
【0106】
適切なアルジミン又はケチミンは、ジアミン又は多官能性アミンと1級アミノ基及びアルデヒド又はケトンから誘導され、そしてこれらの物質からそれ自体公知の方法で、例えば不活性有機溶媒中で加熱し、任意に形成された水を除去し、及び任意に触媒を使用して、例えば酸を使用して(しかし、好ましくは溶媒としての過剰のケトン及び/又はアルデヒド中での反応によって)得ることができる。アルジミン又はケチミンは、追加的に、イソシアネートに対して反応性の更なる官能基、例えばヒドロキシル又はイミノ基を含んでも良い。
【0107】
追加的に有用なものは、保護された1級アミノ基とは別に、遊離2級アミノ基をも含むケチミン又はアルジミンである。
【0108】
工程(b)を行う前、又は間に、分離剤を加えることによって保護基が分離される場合、アルジミン及びケチミンの場合の保護基は、分離剤として特に水を加えることによって分離することができる。
【0109】
しかしながら、アルジミン及び/又はケチミンは、好ましくは予め分離剤を加えることなく、本発明に従う方法の工程(b)で、速度が低下した反応内で、イソシアネートと反応される。この場合、溶媒(C)中のフリーなアミノ基と保護された1級アミノ基の間の平衡を有効に利用することが好ましい。
【0110】
多価アルジミン及び/又はケチミン及びポリイソシアネートの間の反応生成物は、アミノ基とイソシアネート基の直接反応の反応生成物と、原則として化学的に同一であるか、又は実質的に同一である。しかしながら、1級脂肪族アミノ基及びイソシアネート基の反応速度の低減は、工程(b)で得られるゲルの多孔性構造に特に積極的な影響(好ましい影響)を与える。
【0111】
保護基は、好ましくは、1級アミノ基に対して反応性の溶媒(C)の状態で使用される。最も好ましくは、工程(a)で、成分(a3)が、溶媒(C)としてのケトン及び/又はアルデヒド中に溶解した成分(a2)と一緒に供給され、そして工程(b)の開始時に成分(a1)と混合される。
【0112】
アルジミン又はケチミンを製造するために使用しても良いアルデヒド又はケトンは、特に、一般式R2−(CO)−R1(但し、R1及びR2は、それぞれ、水素又は1、2、3又は4個の炭素原子を有するアルキル基である)に対応するものである。適切なアルデヒド又はケトンは、特に、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソペンタアルデヒド、2−メチル−ペンタアルデヒド、2−エチルヘキサアルデヒド、アクロライン、メタクロライン、クロトンアルデヒド、フルフラール、アクロラインジマール、メタクロラインジマール、1,2,3,6−テトラヒドロベンズアルデヒド、6−メチル−3−シクロヘキサンアルデヒド、シクロアセトアルデヒド、エチルグリオキシレート、ベンズアルデヒド、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−ブチルケトン、エチルイソプロピルケトン、2−アセチルフラン、2−メトキシ−4−メチルペンタン−2−ワン、シクロヘキサノン及びアセトフェノンである。上述したアルデヒド及びケトンは、混合物の状態で使用しても良い。
【0113】
原則として、アルジミン又はケチミンを予め純粋な状態で製造し、そして次にこれを溶媒(C)に供給することも可能である。しかしながら好ましくは、上述したアルデヒド及び/又はケトンは、本発明に従う方法で、溶媒(C)として使用され、この場合、アルジミンとケチミンは、成分(a2)が溶解した時に形成される。
【0114】
アルデヒド又はケトンの沸点が180℃未満であることが望ましく、これにより、工程(c)の過程で、これらはポリマーから容易に抜け出ることができる。
【0115】
一方では成分(a1)は、及び他方では成分(a2)及び(a3)は、相互に別々に溶媒(C)、特にアルデヒド及び/又はケトン中に溶解されることが好ましい。
【0116】
適切な溶媒(C)は、特に、成分(a1)〜(a3)について十分な溶解度を有し、及びモノマー単位(a2)の1級アミノ基との反応が、好ましくは室温で、アルジミン及び/又はケチミンを形成するアルデヒド及び/又はケトンである。
【0117】
原則として、成分(a1)、(a2)及び(a3)は、(溶媒が相互に混和性であり、及び成分(a1)〜(a3)がそれぞれ溶媒混合物に対して十分な溶解度を有するという条件で)異なる溶媒(c1)及び(c2)に溶解させることができる。
【0118】
工程(b)で、乾燥工程(c)の過程で大きく収縮しない、安定性が十分なゲルを得るために、本発明に従う方法の工程(a)で提供される全混合物中のゲル前駆体(A)の割合は、通常、5質量%未満であってはならない。本発明に従う方法の工程(a)で提供される、溶媒(C)を含む全混合物中のゲル前駆体(A)の割合は、好ましくは少なくとも6質量%、より好ましくは少なくとも8質量%、特に少なくとも10質量%である。
他方では、供給される混合物中のゲル前駆体(A)の濃度は、高すぎるレベルに選択されてはならない。この理由は、そうでなければ、好ましい特性を有する多孔性ゲルが得られないからである。通常、本発明に従う方法の工程(a)で供給される、溶媒(C)を含む全混合物中のゲル前駆体(A)の割合は、最も多くて40質量%である。本発明に従う方法の工程(a)で供給される、溶媒(C)を含む全混合物中のゲル前駆体(A)の割合は、好ましくは最も多くて35質量%、より好ましくは最も多くて25質量%、特に最も多くて20質量%である。
【0119】
任意に、工程(a)で供給される混合物は、更なる成分(B)として、少なくとも1種の触媒(b1)をも含む。しかしながら、ゲル前駆体(A)の変換は、触媒の不存在下に行なわれることが好ましい。
【0120】
触媒(b1)が使用される場合、典型的には、イソシアヌレートの形成に触媒作用を及ぼす三量化触媒が使用される。使用されるこのような三量化触媒は、この技術分野の当業者にとって広く知られている触媒、例えば以下に列挙したものであって良い。
【0121】
成分(b1)として三量化触媒が使用された場合、公知の触媒、例えば第4級アンモニウムヒドロキシド、アルカリ金属及びアルカリ土類金属ヒドロキシド、アルカリ金属及びアルカリ土類金属アルコキシド、及びアルカリ金属及びアルカリ土類金属カルボキシレート、例えばカリウムアセテート、及びカリウム2−エチルヘキサノエート、特に第3級アミン及び非卑金属(nonbasic metal)カルボキシレート、例えば、鉛オクトエート、及びトリアジン誘導体、特に対称トリアジン誘導体適切である。三量化触媒として、トリアジン誘導体が特に適切である。
【0122】
成分(a1)〜(a3)は、ゲル前駆体(A)が、20〜90質量%の成分(a1)、9.99〜45質量%の成分(a2)及び0.01〜35質量%の成分(a3)を含むように使用することが好ましい。ゲル前駆体(A)は、好ましくは40〜80質量%の成分(a1)、19〜40質量%の成分(a2)及び1〜20質量%の成分(a3)を含む。ゲル前駆体(A)は、より好ましくは45〜76質量%の成分(a1)、19〜40質量%の成分(a2)及び5〜15質量%の成分(a3)を含む。
【0123】
工程(a)で供給される混合物は、更なる成分(B)として、この技術分野の当業者にとって公知の、代表的な助剤を含んでも良い。例は、表面−活性物質、難燃剤、核形成剤、酸化安定剤、滑剤、及び離型剤、染料及び顔料、安定剤、例えば加水分解、光、熱又は変色に対するもの、無機及び/又は有機充填剤、補強剤及び殺生物剤を含む。
【0124】
上述した助剤及び添加剤の更なる詳細は、技術文献、例えばPlastics Additive Handbook,5th edition,H.Zweifel,ed,Hanser Publishers,Munich,2001に記載されている。
【0125】
混合物は、本発明に従う工程(a)で、標準的な態様で供給することができる。この目的のために、(良好な混合を達成するために)攪拌機又は他の混合装置を使用することが好ましい。他の混合条件は通常、重要(臨界的)ではなく;例えば、0〜100℃、及び0.1〜10バール(絶対圧)で、特に室温及び大気圧で混合することができる。
【0126】
工程(a)で供給される混合物は、ゾルと称することもできる。ゾルは、有機ゲル前駆体(A)が分散媒体としての溶媒中に超微細に分散しているコロイド状溶液、又は有機ゲル前駆動(A)の溶媒中の真溶液の何れをも意味すると理解される。
【0127】
工程(b)
本発明に従い、工程(b)で、成分(a1)〜(a3)が溶媒(C)の存在下にゲルに変換される。従って本発明に従う工程(b)では、有機ゲル前駆体(A)は、ゲル化反応でゲルに変換される。ゲル化反応は、重付加反応、特にイソシアネート基とアミノ基の重付加である。
【0128】
ゲルは、液体と接触して存在するポリマーに基づく架橋した系を意味すると理解される(いわゆるソルボゲル又はライオゲル、又は液体としての水と一緒に:アクアゲル又はヒドロゲル)。この場合、ポリマー相は、連続的な3次元ネットワークを形成する。
【0129】
本発明に従う方法の工程(b)では、典型的には、ゲルはそのままに放置しておくことにより、例えば内部に混合物が存在する容器、反応容器又は反応器(以降、ゲル化装置と称する)を単にそのままにしておくことにより発生する。ゲル化(ゲル形成)の間、混合物は攪拌、又は混ぜ合わせないことが好ましい。この理由は、攪拌や混ぜ合わせはゲルの形成を妨げるからである。ゲル化の間、混合物を覆うか、又はゲル化装置を閉じることが有利であることがわかった。
【0130】
ゲル化の継続時間は、使用する成分の種類と量、及び温度に依存して変化し、そして数日間であっても良い。ゲル化の継続時間は、典型的には、1分間〜10日間、好ましくは1日未満、特に5分間〜12時間、より好ましくは最も長くて1時間、特の5分間〜1時間である。
【0131】
ゲル化は、熱を供給することなく、室温の範囲の温度で、特に15〜25℃で、又は20℃以上、特に25℃〜80℃の、室温に対して上昇させた温度で行うことができる。典型的には、ゲル化温度を高くするとゲル化の継続時間が短くなる。しかしながら、全てのケースにおいて、ゲル化の温度を高くすることは有利なことではない。この理由は、温度を高くすると、ゲルの機械的特性が不適切になり得るからである。室温の範囲の温度でゲル化を行うことが好ましく、特に15℃〜25℃の範囲の温度でゲル化を行うことが好ましい。
【0132】
ゲル化の過程での圧力は、広い範囲で変化可能であり、そして通常は重要(臨界的:critical)でない。この圧力は、例えば、0.1バール〜10バール、好ましくは0.5バール〜8バール、及び特に0.9〜5バール(それぞれ絶対圧)である。特に、水性混合物を、室温及び大気圧に置くことが可能である。
【0133】
ゲル化の間、混合物は、多かれ少なかれ寸法的に安定したゲルに固まる。従って、ゲル形成は、試料が採られたゲル化装置又は容器をゆっくりと傾けた場合に、ゲル化装置の内容物がもはや動かないという単純な方法で識別することができる。更に、混合物の音響特性がゲル化の過程で変化する:ゲル化装置の外壁をたたいた場合、未だゲル化していないものとは異なる、響き渡る音が生じる(いわゆるリンギングゲル)。
【0134】
好ましい実施の形態では、工程(b)で得られたゲルは、工程(c)が行われる前に、いわゆるエイジング(熟成)が行われ、エイジングでゲルの形成が完了される。エイジングは、特に、ゲルを、先行するゲル化の温度よりも高い温度に所定時間曝すことによって行われる。この目的のために、例えば加熱浴槽又は加熱キャビネットを使用することができ、又は内部にゲルが存在する装置又は周囲を適切な方法で加熱することができる。
【0135】
エイジングの過程で、温度は、広い範囲で変化することができる。通常、エイジングは、30℃〜150℃の温度、好ましくは40℃〜100℃の温度で行われる。エイジングの温度は、ゲル化の温度を超えて、10℃〜100℃の範囲にあるべきであり、特に20℃〜80℃の範囲にあるべきである。ゲル化を室温で行った場合、エイジングは、特に40℃〜80℃の温度、好ましくは60℃の温度で行うことができる。エイジングの過程の圧力は、重要(臨界的)ではなく、して代表例では、0.9〜5バール(絶対圧)である。
【0136】
エイジングの継続時間は、ゲルの種類に依存し、そして数分間であっても良く、しかし長時間を費やしても良い。エイジングの継続時間は、例えば30日間以内であっても良い。典型的には、エイジングの継続時間は、10分間〜12時間、好ましくは20分間〜6時間、及びより好ましくは30分間〜5時間である。
【0137】
種類と組成に従い、ゲルはエイジングの間に僅かに収縮し、そしてゲル化装置の壁から離れても良い。エイジングの間、ゲルを覆うか、又は内部にゲルが存在するゲル化装置を閉じることが有利である。
【0138】
工程(c)
本発明に従えば、工程(c)で、前の工程で得られたゲルが乾燥され、好ましくは、ゲル中に存在する液体の臨界温度と臨界圧力未満の温度と圧力で、ゲル中に存在する液体をガス状状態に変換してキセロゲルが得られる。乾燥は、ゲルの液相の除去を意味すると理解される。
【0139】
この替わりに、ゲルを超臨界条件下に乾燥させて、アエロゲルを得ることも同様に可能であり、特に、適切な液相、特に二酸化炭素で溶媒を変換し、次にこれを超臨界条件下で除去することによってアエロゲルを得ることも可能である。
【0140】
溶媒(C)を、溶媒(C)の臨界温度と臨界圧力未満の温度と圧力で、ガス状状態に変換することによって、得られたゲルを乾燥することが好ましい。従って、反応中に存在した溶媒(C)を、更なる溶媒に変換することなく除去することによって乾燥を行うことが好ましい。
【0141】
この結果、工程(b)の後、ゲルは、ゲル中、特にゲルの孔中に存在する溶媒(C)を有機溶媒と変換するために有機溶媒と接触しないことが好ましい。このことはゲルがエイジングされるか否かに関らず当てはまる。溶媒の交換が省略された場合、本方法は、特に単純で、安価な方法で行うことができる。しかしながら、溶媒の交換が行われる場合、溶媒(C)を非極性溶媒、特に炭化水素、例えばペンタンと変換することが好ましい。
【0142】
ゲル内に存在する液体、好ましくは溶媒(C)の、ガス状状態への変換による乾燥について、有用な方法は原則として、気化(vaporization)と蒸発(evaporation)の両方であるが、昇華ではない。気化又は蒸発による乾燥は特に、大気圧下での乾燥、減圧下での乾燥、室温での乾燥、及び温度上昇させての乾燥を含むが、しかしフリーズドライではない。本発明に従えば、乾燥は、ゲル中に存在する液体の臨界圧力と臨界温度未満の圧力と温度で行われる。従って本発明に従う方法の工程(d)で、溶媒を含んだゲルが乾燥され、そして生成物として有機キセロゲルを形成する。
【0143】
ゲルを乾燥させるために、典型的にはゲル化装置は開放され、そしてゲルが、ガス状状態に変換されることによって液相が除去されるまで、すなわち液相が気化又は蒸発するまで上述した圧力と温度条件下に保持される。気化を促進するために、容器からゲルを除去することがしばしば有利である。このようにして、気化及び/又は蒸発が行われるゲル/周囲の空気相界面が拡大される。例えば、ゲルは、乾燥のために平坦な下部の上に置くことができ、又はふるいにかけることができる。有用な乾燥方法は、この技術分野の当業者にとってなじみのある乾燥方法、例えば対流乾燥、マイクロ波乾燥、真空乾燥キャビネット、又はこれらの方法の組合せである。ゲルは空気下に乾燥することができ、又はゲルが酸素に対して敏感な場合には、窒素、又は希ガス等のガス下に乾燥することができ、そして適切であれば、周囲の圧力、温度及び溶媒含有量を制御可能な乾燥キャビネット又は他の適切な装置を、この目的のために使用することができる。
【0144】
乾燥の過程で選ばれる温度と圧力条件は、ゲル中に存在する液体の性質を含むファクターに依存する。好ましくは、乾燥は、ゲル中に存在する液体(該液体は、溶媒(C)であることが好ましい)の臨界圧pcrit未満の圧力、及び臨界温度Tcrit未満の温度で行われる。従って、乾燥は亜臨界条件(subcritical condition)下で行なわれる。このことについて、臨界は次のことを意味する:臨界圧力及び臨界温度では、液相の密度は気相の密度と等しく(いわゆる臨界密度)、及びTcritを超える温度では、たとえ超高圧を施した場合であっても液相はもはや液化しない。
【0145】
アセトンを溶媒として使用した場合、乾燥は、0℃〜150℃の範囲の温度、好ましくは10℃〜100℃の範囲、及びより好ましくは15℃〜80℃の範囲の温度、及び高度に真空の圧力、例えば10-3ミリバール〜5バール、好ましくは1ミリバール〜3バール及び特に10ミルバール〜約1バール(絶対圧)の圧力で行われる。例えば、乾燥は大気圧で、及び0℃〜80℃、特に室温で行うことができる。特に好ましくは、工程(d)でのゲルの乾燥は、0.5〜2バール(絶対圧)、及び0〜100℃の温度で行われる。
【0146】
ゲル中に存在する他の液体、特にアセトン以外の溶媒(C)は、乾燥条件(圧力、温度、時間)を調整する必要が有り、この調整は、この技術分野の当業者が簡単な試験をすることによって決定することができる。
【0147】
乾燥は、真空を施すことによって促進又は完了することができる。乾燥作業を更に改良するために、この真空乾燥は、通常の圧力での乾燥よりも高い温度で行うことができる。例えば、大半の溶媒(C)を、最初に室温及び大気圧で、30分間〜3時間内に除去し、そして次にゲルを、40〜80℃で、1〜100ミルバール、特に5〜30ミリバールの減圧下に、10分間〜6時間以内に乾燥させることができる。より長い乾燥時間、例えば1〜5日間も可能である。しかしながら、12時間未満の乾燥時間がしばしば好ましい。
【0148】
このような段階的な乾燥の替わりに、乾燥の間、圧力を連続的に低減することができ、例えば圧力を直線的、又は指数関数的に低減することができ、又は圧力又は温度プログラムに従って温度を上昇させることができる。その特性により、空気中の湿分含有量が低い程、ゲルは迅速に乾燥する。同様のことが、必要な変更を加えて、水以外の液相、及び空気以外のガスに適用される。
【0149】
好ましい乾燥条件は、溶媒にのみならず、ゲルの特性、特に(乾燥の過程で作用する毛管力に関して)ネットワークの安定性にも依存する。
【0150】
工程(c)の乾燥の過程で、通常、液相は完全に除去されるか、又は得られるキセロゲルに対して、0.001〜1質量%の残留含有量にまで低減される。
【0151】
多孔性ゲルの特性と使用
本発明に従う方法によって得られる多孔性ゲルは、体積平均(volume-averaged)の平均孔径が最も大きくて5マイクロメーターである。本発明に従う方法によって得られる多孔性ゲルの体積平均の平均孔径は、好ましくは10nm〜5マイクロメーターである。
【0152】
本発明に従う方法によって得ることができる多孔性ゲルの、特に好ましい体積についての荷重平均孔径は、最も大きくて5マイクロメーター、特に最も大きくて3.5マイクロメーター、最も好ましくは最も大きくて2.5マイクロメーターである。
【0153】
通常、体積についての荷重平均孔径は、少なくとも20nm、好ましくは少なくとも50nmである。多くの場合、体積についての荷重平均孔径は、少なくとも100nm、特に少なくとも200nmである。本発明に従い得ることができる多孔性ゲルは、多孔率が、好ましくは少なくとも70体積%、特に70〜99体積%、より好ましくは少なくとも80体積%、最も好ましくは少なくとも85体積%、特に85〜95体積%である。
【0154】
本発明に従う方法によって得ることができる有機多孔性ゲルの密度は、代表例では、20〜600g/l、好ましくは50〜500g/l、及びより好ましくは100〜300g/lである。
【0155】
本発明に従う方法は、互いに密着する(coherent)多孔性材料を与え、及びポリマー粉又はポリマー粒子を与えるものではない。得られる多孔性ゲルの3次元形状は、ゲルの形状によって決定され、該ゲルの形状は、ゲル化装置の形状によって決定される。例えば、シリンダー状のゲル化装置は、典型的にはおおよそシリンダー状のゲルを与え、該ゲルは次に乾燥されてシリンダー状のキセロゲルを形成することができる。
【0156】
本発明の多孔性ゲル、及び本発明に従う方法によって得ることができる多孔性ゲルは、熱伝導性が低く、多孔率が高く、密度が小さく、及びこれと同時に機械的安定性が高い。更に、多孔性ゲルは、平均孔径が小さい。上述した特性の組合せは、断熱の分野の絶縁材料としての使用を可能とし、特に、例えば冷却単位又は建造物内で、真空パネルの最小厚さが好ましい真空部門での適用を可能にする。例えば、真空絶縁パネル、特に真空パネルのコア材料に使用することが好ましい。本発明の多孔性ゲルを、絶縁材料として使用することも好ましい。
【0157】
更に、本発明の多孔性ゲルの低熱伝導率は、1〜100ミリバール、及び特に10ミリバール〜100ミリバールの圧力での適用を可能にする。本発明の多孔性ゲルの特性は、真空パネルに長い耐用年数が望まれ、及び年に約2ミリバール圧力が上昇し、例えば長い年月が経過した後に100ミリバールの圧力になっても熱伝導率が低いものへの用途を特に開く。本発明の多孔性ゲル及び本発明に従う方法によって得ることができる多孔性ゲルは、一方では望ましい熱特性を有し、及び他方では望ましい材料特性、例えば単純な処理性、及び高い機械的安定性、例えば低い脆性を有する。
【実施例】
【0158】
単位をg/mlとして、多孔性ゲルの密度ρを、式ρ=m/(π*2*h(但し、mが多孔性ゲルの質量であり、rが多孔性ゲルの半径(直径の半分)であり、及びhが多孔性ゲルの高さである)によって計算した。単位を体積%として、多孔率を式P=(Vi/(Vi+Vs))*100(但し、Pが多孔率を表し、Viが多孔性ゲルのml/gでの比体積を表し、及びVi=1/ρ.Vsに従って計算される)によって決定した。Vsは試料のml/gでの比体積を表す。使用した比体積は、1/Vs=1.38g/mlの値であった。この値は、He比重びん法(He pycnometry)によって測定した。
【0159】
本発明に従う方法の工程(c)の間の収縮を、シリンダー状ゲルの高さと直径cmを、溶媒の除去の前と後で比較することによって測定した。報告された値は、溶媒を除去する前のゲル体と比較した、収縮したシリンダーの相対体積に関し、すなわち収縮は%での体積損失として報告されている。収縮の前に、シリンダーは、高さが4.7cmであり、及び直径が2.6cmであった。
【0160】
以下の化合物を使用した:
a−1:ASTMD−5155−96Aに従い、NCO含有量が100gにつき31.5g、官能性が2.8〜2.9の範囲、及び粘度がDIN53018に従い、25℃で550mPa.sのオリゴマー性MDI(Luprana(登録商標)M50)。
a−2:粘度がDIN53018に従い、50℃で2710mPa.s、官能性(官能価)が2.4の範囲、及び電位差測定法で測定したアミン価が約560mgKOH/gのオリゴマー性ジアミノジフェニルメタン。
a−3:3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン。
【0161】
実施例1
2.4gの化合物a−1を、ビーカー中の10.5gのアセトンに、20℃で攪拌させながら溶解させた。1.3gの化合物a−2及び0.1gの化合物a−3を、第2のビーカー内で、11gのアセトン中に溶解させた。工程(a)からの2種の溶液を混合した。澄んだ、低粘性の混合物が得られた。混合物を、硬化させるために24時間、室温で保持した。次に、ゲルをビーカーから除去し、そして20℃で7時間、乾燥させることによって、液体(アセトン)を除去した。
【0162】
得られた材料は、多孔率が88体積%、及び密度が160g/lであった。収縮は6%であった。
【0163】
実施例2C
2.4gの化合物a−1を、ビーカー中の10.5gのアセトンに、20℃で攪拌させながら溶解させた。1.3gの化合物a−2を、第2のビーカー内で、11gのアセトン中に溶解させた。工程(a)からの2種の溶液を混合した。澄んだ、低粘性の混合物が得られた。混合物を、硬化させるために24時間、室温で保持した。次に、ゲルをビーカーから除去し、そして20℃で7時間、乾燥させることによって、液体(アセトン)を除去した。
【0164】
実施例1と比較して、得られた材料は相当に収縮した状態であった。収縮は48%であった。多孔率は71体積%で、対応する密度が390g/lであった。
【0165】
実施例3
2.4gの化合物a−1をビーカー中の10.5gのアセトンに20℃で攪拌させながら溶解させた。1.1gの化合物a−2及び0.2gの化合物a−3を第2のビーカー内の11gのアセトンに溶解させた。工程(a)からの2つの溶液を混合した。即座に反応が生じた。この混合物を室温で24時間、硬化させるために保持した。次に、ゲルをビーカーから除去し、そして液体(アセトン)を20℃で7日間、乾燥させることによって除去した。
【0166】
得られた材料は、多孔率が87体積%であり、及び密度が175g/lであった。収縮は5%であった。
【0167】
実施例4C
2.4gの化合物a−1をビーカー中の10.5gのアセトンに20℃で攪拌させながら溶解させた。1.3gの化合物a−2及び0.1gのトリエチレンジアミンを第2のビーカー内の11gのアセトンに溶解させた。工程(a)からの2つの溶液を混合した。即座に反応が生じた。この混合物を室温で24時間、硬化させるために保持した。次に、ゲルをビーカーから除去し、そして液体(アセトン)を20℃で7日間、乾燥させることによって除去した。
【0168】
実施例1と比較して、得られた材料は、相当に収縮した状態であった。収縮は45%であった。多孔率は74体積%で、対応する密度が350g/lであった。
【0169】
実施例5
2.4gの化合物a−1をビーカー中の10.5gのアセトンに20℃で攪拌させながら溶解させた。0.4gの化合物a−2及び0.9gの化合物a−3を第2のビーカー内の11gのアセトンに溶解させた。工程(a)からの2つの溶液を混合した。即座に反応が生じた。この混合物を室温で24時間、硬化させるために保持した。次に、ゲルをビーカーから除去し、そして液体(アセトン)を20℃で7日間、乾燥させることによって除去した。
【0170】
得られた材料は、多孔率が86体積%であり、及び密度が190g/lであった。収縮は15%であった。
【0171】
本発明の脂環式多官能性アミンの、多官能性芳香族アミンと組合せた使用は、収縮が相当に低減され、及び多孔率が増し、及び密度が低減した、多孔性ゲルをもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分
(a1)少なくとも1種の多官能性のイソシアネート、
(a2)少なくとも1種の多官能性の芳香族アミン、及び
(a3)少なくとも1種の多官能性の脂環式アミン、
を反応した状態で含む多孔性ゲル。
【請求項2】
多孔性材料がキセロゲルであることを特徴とする請求項1に記載の多孔性ゲル。
【請求項3】
以下の成分
(a1)20〜90質量%の、少なくとも1種の多官能性のイソシアネート、
(a2)9.99〜45質量%の、少なくとも1種の多官能性の芳香族アミン、及び
(a3)0.01〜35質量%の、少なくとも1種の多官能性の脂環式アミン、
を反応した状態で含み、成分(a1)、(a2)及び(a3)の百分率の合計が、成分(a1)、(a2)及び(a3)の合計質量に対して100質量%になることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の多孔性ゲル。
【請求項4】
成分(a3)が、以下の構造要素:
【化1】

(但し、R1〜R4が、同一であっても、同一でなくても良く、及びそれぞれが独立して、水素、又は直鎖状、又は枝分かれした、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基から選ばれ、及び環が、更なる置換基を有しても良く、及び/又は少なくとも1つの更なる脂環式環に結合していても良い脂環式環である)に従う、少なくとも2つのアミノ基を有する化合物を、反応した状態で含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の多孔性ゲル。
【請求項5】
成分(a3)が、シクロヘキシル環に結合した少なくとも2つのアミノ基を有する、少なくとも1種の化合物を反応した状態で含み、
前記シクロヘキシル環は、更なる置換基を有していても良く、及び直接的、又は間接的に、少なくとも1つの更なる、任意に置換されたシクロヘキシル環に結合していても良いことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の多孔性ゲル。
【請求項6】
成分(a3)が、以下の構造:
【化2】

(但し、R1〜R10が、同一であっても、異なっていても良く、及びそれぞれが独立して、水素、又は直鎖状、又は枝分かれした、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基から選ばれる)
の少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の多孔性ゲル。
【請求項7】
成分(a3)が、3,3’,5,5’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンであり、ここで3、3’、5及び5’位のアルキル基が、同一であっても、又は異なっていても良く、及びそれぞれが独立して直鎖状の、又は枝分かれした、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基から選ばれることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の多孔性ゲル。
【請求項8】
成分(a3)が、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンであることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の多孔性ゲル。
【請求項9】
成分(a2)が、少なくとも1種の多官能性芳香族アミンから成り、該少なくとも1種の多官能性芳香族アミンは、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、及びオリゴマー性ジアミノジフェニルメタンから選ばれることを特徴とする請求項1〜8何れか1項に記載の多孔性ゲル。
【請求項10】
成分(a2)が、オリゴマー性ジアミノジフェニルメタンを含み、及び官能価が少なくとも2.3であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の多孔性ゲル。
【請求項11】
成分(a1)が、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’−ジイソシアネート、及びオリゴマー性ジフェニルメタンから選ばれる、少なくとも1種の多官能性イソシアネートから成ることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の多孔性ゲル。
【請求項12】
成分(a1)が、オリゴマー性ジフェニルメタンジイソシアネートを含み、及び官能価が2.5であることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の多孔性ゲル。
【請求項13】
成分(a1)が、オリゴマー性ジフェニルメタンジイソシアネートを含み、及び成分(a2)が、オリゴマー性ジアミノジフェニルメタンを含み、及び成分(a1)の官能価と成分(a2)の官能価の合計が少なくとも5.5であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の多孔性ゲル。
【請求項14】
多孔性ゲルの体積についての荷重平均孔径が、最も大きくて3ミクロンメーターであることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の多孔性ゲル。
【請求項15】
(a)請求項1〜14の何れか1項以上に定義した成分(a1)及び、これとは別に、成分(a2)及び(a3)を、それぞれ溶媒(C)中に供給する工程;
(b)成分(a1)〜(a3)を、溶媒(C)の存在下にゲルに変換する工程;
(c)前の工程で得られたゲルを乾燥させる工程、
を含む、請求項1〜14の何れか1項以上に記載の多孔性ゲルを製造するための方法。
【請求項16】
溶媒(C)の臨界温度及び臨界圧力未満の温度と圧力で、溶媒(C)をガス状の状態に変換することによって、得られたゲルを乾燥させることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項15又は16に従い得ることができる多孔性ゲル。
【請求項18】
請求項1〜14の何れか1項以上に記載の多孔性ゲル、又は請求項17に記載の多孔性ゲルを、絶縁材として使用する方法。
【請求項19】
請求項1〜14の何れか1項以上に記載の多孔性ゲル、又は請求項17に記載の多孔性ゲルを、真空絶縁パネルとして使用する方法。

【公表番号】特表2013−501834(P2013−501834A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524189(P2012−524189)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061171
【国際公開番号】WO2011/018371
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】