説明

苦甘草(SophoraAlopecuroidesL.)抽出物を含有する化粧品組成物

単独または他の皮膚のためになる物質との組合せにおいて化粧品担体と一緒になった、美容用皮膚美白剤としての苦甘草抽出物が開示されている。抽出物中の有効成分アロペクロンA、アロペクロンB、ソホラフラボンG、ソホラフラボンI、ソホラフラボンKおよびこれらの混合物も開示されている。本発明の抽出物、組成物および方法は、有効な皮膚美白性を有し、皮膚への送達がより容易であり、また自然界において入手が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの皮膚に対する局所的塗布のための苦甘草(Sophora Alopecuroides)抽出物を含有する組成物におよび皮膚を明るくするためにこの組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの人達は、自身の皮膚の色素沈着の程度を気にしている。たとえば、加齢シミまたはソバカスのある人達は、こうした色素斑がもっと目立たないことを望んでいる。他の人達は、日光を浴びることに起因する皮膚のくすみを軽減することや本来の皮膚の色を明るくすることを望んでいる。この必要性を満たすために、メラノサイトにおける色素の生成を低減させる製品を開発するための多くの試みがなされてきた。しかし、これまでに確認されている物質は、低い効果またはたとえば毒性もしくは皮膚への刺激などの望ましくない副作用を有する傾向がある。したがって、向上した全般的な有効性を有する新しい皮膚美白剤に対する必要性が引き続いてある。さらに、多くの消費者が、皮膚美白用途の天然成分を探し求めている。
【0003】
特許出願JP 07−188245 A号(Mukenazu)は、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococus aureus))抗菌剤、抗腫瘍活性剤および坑口腔細菌活性剤として有用な「苦甘草」に含有されている化合物に関する。この化合物は、アロペクロンIおよび/またはII、化学名4−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−7−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−9−(5−イソプロペニル−1−メチル−ヘキセ−2−エニル)−5H−2,3−ジヒドロ(3,2−g)[1]−6,7−ジヒドロベンゾピラン−5−オン、またはアロペクロンIIIである。この化合物は、苦甘草(粉末Sophora alopecuroides根)をアセトンなどの溶媒によって抽出すること、抽出液をろ過すること、抽出液を濃縮することおよびカラムクロマトグラフィーによって分離、精製することによって製造する。
【0004】
苦甘草(Ku Gan Cao(中国語発音))は、伝統的な漢方薬であり、苦甘草は植物苦甘草(Sophora alopecuroides L.)の根である。この植物は、川の土手沿いおよび草地に野生し、とりわけ内蒙古、新絳(シンチアン)自治区、および中国領チベットで広く手に入る灌木である。伝統的な漢方医学においては、根の切片が解熱剤として、鎮痛剤として、および抗菌剤として使用される。別名、苦豆根(Ku Dou Geng)も伝統的な漢方薬市場において広く使用されている。
【0005】
以前に、7つのアロペクロン(アロペクロンA〜G)が、苦甘草から、Iinumaら、“Six Flavonostilbenes and a Flavone in Roots of Sophora Alopecuroides,” Phytochemistry、38(2): 519−525 (1995)、によって単離され、同定されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、少なくとも部分的に、植物苦甘草の抽出物および/またはその有効成分(アロペクロンA、アロペクロンBなど)および新たに確認された成分などが、知られている皮膚美白剤と少なくとも同等および/または明らかによりよい皮膚美白作用を有するという発見に基づいている。苦甘草および/またはこの有効成分の、皮膚美白美容用途のための使用は、従来知られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、従来技術の欠陥を軽減するものであり、部分的には、化粧品として許容される担体および苦甘草の有機溶媒抽出物を含む皮膚美白用の新規な組成物ならびに本発明の組成物を適用することによる皮膚美白の方法を含む。本発明の組成物は、苦甘草の抽出物、好ましくはこれの有機溶媒抽出物を0.000001〜50%含有する。最小限のコストで最適の皮膚美化作用を得るためには、抽出物の量は、好ましくは、0.00001%〜10%、より好ましくは0.001〜7%、さらに好ましくは0.01%〜5%である。
【0008】
本発明は、少なくとも部分的には、植物苦甘草の抽出物が、皮膚美白作用を有することの発見に基づいている。濃縮された抽出物は、12μg/mLのチロシナーゼ阻害効力(IC50)を有する。
【0009】
アロペクロンおよびソホラフラボンは、皮膚の美白作用を有する苦甘草抽出物の有効成分として確認された。本発明は、組成物ならびにアロペクロンA、アロペクロンB、ソホラフラボン−G、ソホラフラボン−I、ソホラフラボン−K、およびこれらの混合物からなる群から選択される有効成分を含む組成物を皮膚に塗布することを含む皮膚美白の美容方法を含む。
【0010】
本発明の好ましい実施形態においては、組成物および方法には、皮膚のためになる他の物質、α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸、ポリヒドロキシ酸、ヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン;ビタミンBおよび/またはC誘導体;二酸;レチノイド;レゾルシノール誘導体、特に4−置換レゾルシノール誘導体;バニリン酸、ベツリン酸、ヒアルロン酸、ヒドロラクチン、およびこれらの混合物などが含まれていてもよい。有機および無機(たとえば、微粉末化された金属酸化物)の日焼け止め剤も含まれてよい。有機の日焼け止め剤には、パラアミノ安息香酸(PABA)、ベンゾフェノン−3、ベンゾフェノン−4、ベンゾフェノン−8、メトキシシンナメート、エチルジヒドロキシプロピルPABA、グリセリルPABA、ホモサレート、アントラニル酸メチル、オクトクリレン、オクチルジメチルPABA、メトキシ桂皮酸オクチル、(PARSOL(商標)MCX)、サリチル酸オクチル、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、サリチル酸トリエタノールアミン(TEA)、3−(4−メチルベンジリデン)カンファー、ベンゾフェノン−1、ベンゾフェノン−2、ベンゾフェノン−6、ベンゾフェノン−12、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(PARSOL(商標)1789)、エトクリレン、およびこれらの混合物が含まれてもよい。
【0011】
本発明の組成物および方法は、有効な皮膚美白性を有し、コスト効率がよく、および自然源から入手可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、組成物が植物苦甘草の抽出液を含有するヒトの皮膚美白のための化粧品組成物および本組成物を皮膚の美白のために使用する方法に関する。本発明は、少なくとも部分的には、植物苦甘草の抽出液が皮膚の美白作用を有するという発見に基づいている。濃縮された抽出液は、12μg/mLのIC50を有する。
【0013】
Sophora alopecuroides L(苦甘草)は、ハーブ、マメ科エンジュ属アロペクロイデス種植物のラテン名である。この灌木は高さが1〜1.5mである。これの淡い緑の葉は、大きくハート形であり、長さ1.5〜2.5cm、幅0.7〜1.0cmである。これの黄色い花は、長さ約8mmの釣鐘形である。種は一般に卵形であり、淡い黄色である。
【0014】
アロペクロンは、苦甘草の抽出物の有効成分の1つと確認された。アロペクロンAおよびBは、本明細書の下記においてより詳細に記載されている。同じく有効成分として確認されたのは、本明細書においてソホラフラボンIおよびソホラフラボンKと命名された新規の分子であり、本明細書の後段においてより詳細に記載する。同じく確認されたものにソホラフラボンGの皮膚美白作用があり、これも本明細書の後段においてより詳細に記載する。
【0015】
本発明の組成物における使用に適当な苦甘草の抽出物は、好ましくは有機溶媒抽出物、たとえば、アルコール系抽出物(メタノール−MeOH、エタノール、イソプロパノール)、酢酸エチルなどのエステルまたはクロロホルム抽出物である。エタノールは、広い範囲の極性成分の大部分を抽出する能力の故に、最も好ましい有機溶媒である。
【0016】
抽出物を調製するためには、好ましくはハーブの根を使用する。まず根を小片に砕くかまたは平均直径0.1〜10ミリメートルの寸法の粒子に粉砕し、次いで抽出溶媒、好ましくは95%エタノール中に室温で2〜3日間漬け、その間時々掻き混ぜる。抽出工程は、1〜2回繰り返す。2〜3回の抽出液を合わせ、濃縮し、60℃以下の温度で乾燥して溶媒を除去する。乾燥は真空下で約1時間行ってもよい。得られた濃縮された抽出物は、そのまま使用しても、さらに精製してから使用してもよい。
【0017】
本発明によれば苦甘草の抽出物は、組成物中に、組成物の0.000001重量%〜50重量%加える。最小限のコストで最適の皮膚の美白を達成するために、抽出物の量は好ましくは0.00001%〜10%、より好ましくは0.001%〜7%、さらに好ましくは0.01〜5%である。
【0018】
本明細書において使用する「化粧品組成物」という用語は、人の皮膚に対する局所的な塗布のための組成物を記載するものとする。
【0019】
本明細書において使用する「含んでいる、含む(comprising)」という用語は、〜で作られている、〜で構成されている、〜から成っている、および/または基本的に〜から成っている、を意味する。さらに、「含んでいる、含む」は普通の意味では、これが言及するステップ、構成要素、成分、または特徴に対して網羅的ではないと定義される。
【0020】
本明細書において使用する「皮膚」という用語は、顔、首、胸、背中、腕、脇の下、手、脚、および頭の皮膚を含む。
【0021】
実施例中、または別途に明白に表示する場合を除いて、本記載における材料の量または反応の条件、材料の物理的性質および/または使用の量を示すすべての数は、場合により「約」という語で修飾されているものと解釈することができる。すべての量は、別途に指定しない限りは、組成物に対する重量による。
【0022】
任意の濃度範囲の指定において、任意の特定の上の濃度は、任意の特定の下の濃度と結びつけられることに留意するべきである。
【0023】
苦甘草
本発明による抽出物は、苦甘草としても知られているエンジュ属アロペクロイデスL.種の植物材料からのものである。苦甘草は、マメ科の植物である。本発明によって使用される苦甘草は、中国陝西(シャンシー)省定辺(テインビエン)県において収穫された。苦甘草は、次いで抽出された。
【0024】
抽出手順:
乾燥させた根を小片に切断し、次いで室温で95%エタノールに2日または3日間浸漬し、続いてろ過してろ液を集める。同じ工程をもう一度繰り返す。2つのろ液を合わせて50℃で真空蒸発させ、粗製抽出物を得る。
【0025】
次に粗製抽出物を酢酸エチルの溶液として溶解させ、次いで5%硫酸(水溶液)液と分配させて粗製抽出物中のすべてのアルカロイドを除去する。溶液の上層を取り出して60℃で真空濃縮し、粉末を得る。
【0026】
粉末を、次にマクロ多孔質材料Diaion(商標)HP−20を充填したクロマトグラフィーカラムに装填する。カラムは、まず、40%エタノール−水溶液で溶出させ、次いで70%エタノール−水溶液で溶出させる。70%エタノール−水溶液による溶出液を集めて50℃で真空濃縮して最終の黄色がかった抽出物を得て、この抽出物を配合物において使用することにする(本明細書において以後、濃縮抽出物)。70%溶出液は、本発明が一態様において対象としているフラボノイドが大部分で濃縮されている。
【0027】
精製:
本発明は、部分的に、アロペクロンAおよびアロペクロンBが、チロシナーゼ阻害活性を示すことの発見に基づいている。本発明に導いた研究において、2つの新しい分子が単離された(それぞれソホラフラボンIおよびソホラフラボンKと名付けられた)。これらの新しい分子は、抽出工程からの最終抽出物をシリカゲルカラムに装填し、クロロホルム−メタノール系を用いて溶出することによって単離された。これらの構造は、質量分光分析およびNMR分光分析の併用によって明らかにされた。
【0028】
任意選択可能な皮膚のためになる物質
好ましい化粧品組成物は、本発明の方法によってヒトの皮膚に塗布するのに適当なものであり、これらの組成物が、任意選択ではあるが、好ましくは、本発明の抽出物に加えて、皮膚のためになる物質を含むものである。
【0029】
皮膚のためになる適当な追加の物質には、老化防止剤、しわ取り剤、皮膚ホワイトニング剤、にきび防止剤、皮脂除去剤が含まれる。これらの例には、α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸、ポリヒドロキシ酸、ヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、ビタミンBおよびC誘導体、二酸、レチノイド;ベツリン酸;バニリン酸、アラントイン、プラセンタ抽出物;ヒドロラクチン;およびレゾルシノール誘導体が含まれる。
【0030】
化粧品として許容される担体
化粧品として許容される担体は、組成物中の、皮膚のためになる成分の希釈剤、分散剤または担体として、組成物が皮膚に塗布されたときに、これらの分散を促進するように働くことがある。
【0031】
担体は、水性、無水またはエマルジョンでよい。好ましくは、組成物は水性またはエマルジョンであり、特に油中水または水中油エマルジョンであり、優先的には水中油エマルジョンである。水は、存在する場合は、5〜99重量%、好ましくは20〜70重量%、最適には40〜70重量%で変動し得る量である。
【0032】
水のほかに、比較的揮発性の溶媒も、本発明の組成物内で担体として役に立つことがある。最も好ましいのは、一価のC〜Cアルカノールである。これらには、エチルアルコール、メチルアルコール、およびイソプロピルアルコールが含まれる。一価アルカノールの量は1〜70重量%、好ましくは10〜50重量%、最適には15〜40重量%で変動し得る。
【0033】
軟化剤材料も、化粧品として許容される担体として役に立つことがある。これらは、シリコーンオイルおよび合成エステルの形態でよい。軟化剤の量は、0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%で任意に変動し得る。
【0034】
シリコーンオイルは、揮発性の種類と不揮発性の種類に分けることができる。本明細書で使用する「揮発性」という用語は、これらの材料で、周囲温度において測定できる蒸気圧を有する材料に言及するものである。揮発性のシリコーンオイルは、3〜9個、好ましくは4〜5個のケイ素原子を含有している環状または直鎖のポリジメチルシロキサンから好ましく選択される。直鎖の揮発性シリコーン材料は、一般に25℃において5センチストークス未満の粘度を有し、一方、環状材料は、通常10センチストークス未満の粘度を有する。軟化剤材料として有用な不揮発性のシリコーンオイルには、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサンおよびポリエーテルシロキサンコポリマーが含まれる。本発明において有用な本質的に不揮発性のポリアルキルシロキサンには、たとえば、25℃における粘度が5〜25百万センチストークスであるポリジメチルシロキサンが含まれる。本発明の組成物において有用な好ましい不揮発性軟化剤の中には、25℃において10〜400センチストークスの粘度を有するポリジメチルシロキサンがある。
【0035】
エステルの軟化剤の中には以下のものがある。
【0036】
(1)10〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルケニルまたはアルキルエステル。
これらの例には、ネオペンタン酸イソアラキジル、イソナノン酸イソノニル、ミリスチン酸オレイル、ステアリン酸オレイル、およびオレイン酸オレイルが含まれる。
【0037】
(2)エトキシ化脂肪アルコールの脂肪酸エステルなどのエーテルエステル。
【0038】
(3)多価アルコールエステル。これらの例には、エチレングリコールのモノおよびジ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールのモノおよびジ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(200〜6000)モノおよびジ脂肪酸エステル、プロピレングリコールのモノおよびジ脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール2000のモノオレイン酸エステル、ポリプロピレングリコール2000のモノステアリン酸エステル、エトキシ化プロピレングリコールのモノステアリン酸エステル、グリセリンのモノおよびジ脂肪酸エステル、ポリグリセリンポリ脂肪酸エステル、エトキシ化グリセリンモノステアリン酸エステル、1,3−ブチレングリコールモノステアリン酸エステル、1,3−ブチレングリコールジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが含まれる。
【0039】
(4)蜜蝋、などのワックスのエステル、スペルマセティ、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリルおよびアラキルべヘン酸。
【0040】
(5)コレステロール脂肪酸エステルを例とするステロールエステル。
【0041】
10〜30個の炭素原子を有する脂肪酸も、本発明の組成物のための、化粧品として許容される担体として含めることができる。この種類を例示するものには、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、アラキン酸、ベヘン酸およびエルカ酸が含まれる。
【0042】
多価アルコール型の保湿剤も、本発明の組成物の、化粧品として許容される担体として使用することができる。保湿剤は、軟化剤の有効性を高め、落屑を軽減し、堆積した鱗屑の除去を促進して皮膚の感触を向上させる助けとなる。代表的な多価アルコールには、グリセリン、ポリアルキレングリコール、より好ましくはアルアルキレンポリオールおよびプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびこれらの誘導体などのアルキレンポリオール誘導体、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、エトキシ化グリセリン、プロポキシ化グリセリンおよびこれらの混合物が含まれる。最良の結果のためには、保湿剤は、好ましくはプロピレングリコールまたはヒアルロン酸ナトリウムである。保湿剤の量は、組成物の0.5〜30重量%、好ましくは1〜15重量%で変動する。
【0043】
増粘剤も、本発明による組成物の、化粧品として許容される担体の部分として利用することができる。代表的な増粘剤には、架橋アクリレート(たとえば、Carbopol(商標)982)、疎水性に改変されたアクリレート(たとえば、Caobopol(商標)1382)、タウレートポリマー、セルロース誘導体および天然ガムが含まれる。有用なセルロース誘導体の中には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロースおよびヒドロキシメチルセルロースが含まれる。本発明のために適当な天然ガムには、グアーガム、キサンタンガム、スクレロガム、カラギナン、ペクチンおよびこれらのガムの組合せが含まれる。増粘剤の量は、0.0001〜5重量%、通常は0.001〜1重量%、最適には0.01〜0.5重量%で変動し得る。
【0044】
水、溶媒、シリコーン、エステル、脂肪酸、保湿剤および/または増粘剤を合わせると、化粧品として許容される担体を1〜99.9重量%、好ましくは80〜99重量%の量で構成する。
【0045】
油または油性材料は、乳化剤とともに存在して、使用する乳化剤の平均親水性−親油性バランス(HLB)に大きく依存して、油中水エマルジョンまたは水中油エマルジョンを形成することができる。
【0046】
界面活性剤も、本発明の化粧品組成物中に存在することができる。界面活性剤の合計濃度は、組成物の0.1〜40重量%、好ましくは1〜20重量%、最適には1〜5重量%で変動し得る。界面活性剤は、アニオン活性、非イオン活性、カチオン活性および両性活性からなる群から選択することができる。特に好ましい非イオン性界面活性剤は、C10〜C20脂肪アルコールまたは疎水性物質1モルあたりに2〜100モルのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドと縮合した酸性疎水性物質;アルキレンオキシド2〜20モルと縮合したC〜C10アルキルフェノール;エチレングリコールのモノおよびジ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル;ソルビタン、モノおよびジC〜C20脂肪酸エステル、ブロックコポリマー(エチレンオキシド/プロピレンオキシド);およびポリオキシエチレンソルビタンならびにこれらの組合せである。アルキルポリグリコシドおよびサッカリド脂肪アミド(たとえば、メチルグルコンアミド)も適当な非イオン性界面活性剤である。
【0047】
好ましいアニオン製界面活性剤には、石けん、アルキルエーテル硫酸塩およびスルホン酸塩、アルキル硫酸塩およびスルホン酸塩、あるきるベンゼンスルホン酸塩、アルキルおよびジアルキルスルホコハク酸塩、C〜C20アシルイセチオン酸塩、アシルグルタミン酸塩、C〜C20アルキルエーテルリン酸塩およびこれらの組合せが含まれる。
【0048】
任意選択可能な成分
本発明の化粧品組成物においては、任意選択で添加された可塑剤、カラミン、酸化防止剤、キレート化剤、ならびに日焼け止め剤が存在してもよい。
【0049】
他の補助的な重要性の低い成分が、化粧品組成物中に組み込まれていてもよい。これらの成分には、着色料、顔料、乳白化剤、および香料が含まれてよい。これらのその他の補助的で重要度の低い成分の量は、組成物の0.001重量%〜20重量%で変動し得る。
【0050】
日焼け止め剤:
日焼け止め剤としての使用のためには、金属酸化物を、単独または混合物および/もしくは有機日焼け止め剤との組合せで使用することができる。有機日焼け止め剤の例には、下記の表1に示したものが含まれるが、これらだけには限定されない。
【0051】
化粧品組成物中の有機日焼け止め剤の量は、好ましくは0.1重量%〜10重量%、より好ましくは1重量%〜5重量%で変動する。好ましい有機日焼け止め剤は、これらの有効性および市販されていることからPARSOL(商標)MCXおよびPARSOL(商標)1789である。
【0052】
【表1】

【0053】
組成物の使用
本発明によるハーブ抽出物、組成物および方法は、主に、皮膚を美白するため、皮膚中の色素沈着の程度を軽減するため、または皮膚の色合いを均等にするために、ヒトの皮膚への局所的な塗布をするための個人的な手入れ用品として意図されている。
【0054】
使用においては、組成物の少量、たとえば1〜5mlを、皮膚の露出している部分に適切な容器または塗布器から塗布し、必要であれば、次いで手か指または適当な道具で拡げおよび/または皮膚の中へすり込む。
【0055】
製品形態および包装
本発明の化粧品組成物は、4,000〜10,000mPaの粘度を有するローション、10,000〜20,000mPaの粘度を有する流動性のクリームまたは20,000〜100,000mPaまたはこれを超える粘度を有するクリームとして配合することができる。この組成物は、これの粘度および消費者によって意図される使用に適する適当な容器に詰めることができる。たとえば、ローションまたは流動性のクリームは、ボトルまたはロールボール塗布器または噴射剤によって噴出すエアロゾル器具または指で操作するのに適したポンプが取り付けられた容器に充填することができる。組成物がクリームである場合は、変形できないボトルまたはチューブやふた付きジャーのような押出し容器中に簡単に貯蔵することができる。組成物が固体または半固形スティックである場合は、組成物を手または機械によって押し出す(pushing out)かまたは突き出す(extruding)のに適当な容器に詰めることができる。
【0056】
したがって、本発明は、本明細書において規定された化粧品として許容される組成物を収容している密閉容器をも提供する。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
この実施例は、本発明の苦甘草の植物抽出物のin vitroチロシナーゼ阻害活性を例示する。
【0058】
伝統的な漢方薬の原材料を取り扱っている現地代理店Xin Zhengを介して入手した、中国陝西省定辺県において採集された新鮮な現物の根を使用した。
【0059】
以下の実施例を通じて使用した苦甘草の抽出物すなわち、濃縮された抽出物は、本明細書において前記した手順に従って調製した。
【0060】
方法
MelanoDerm組織モデル法:
黒い皮膚の個人から得たメラノサイトを含有しているMelanoDerm組織等価モデル(MatTek(商標)MEL−300)を利用した。MelanoDermは供給者の指示のとおりに培養した。
【0061】
培地は、14日間にわたり2日ごとに交換し、天然の抽出物を含む処理剤を、培地相に50〜100マイクログラム/mlの最終濃度で加えた。ポジティブコントロール、すなわちコジック酸およびヒドロキノンが含まれ、これらのポジティブコントロールは、知られている皮膚美白剤である。毎回の培地交換の間に、廃棄培地の一部分を分析し、細胞毒性およびストレスの指標である乳酸デヒドロゲナーゼの濃度を求めた。乳酸デヒドロゲナーゼの濃度が培地対照溶媒(水またはエタノール)を超えていたことはなかった。
【0062】
それぞれのMelanoDerm中のメラニン含有量の決定は、475nmにおける吸光度測定によって行った。IC50は、チロシナーゼ阻害アッセイによって決定した。このアッセイは、基質としてのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.00)中の0.5mMチロシンおよびマッシュルームチロシナーゼ(Sigma)濃度60.5U/mLを使用する。最初の6.5分間における反応速度は、475nmにおける吸光度変化に基づいて計算する。
【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
(実施例2)
苦甘草の濃縮抽出物は、詳細には後記する以下の活性化合物を確認するために、質量分光分析およびNMR分光分析によって分析した。
1:ソホラフラボンI
2:アロペクロンB
3:アロペクロンA
4:ソホラフラボンG
5:ソホラフラボンK
【0066】
1:ソホラフラボンI(KGC−I)
【0067】
【化1】

【0068】
2:アロペクロンB
【0069】
【化2】

【0070】
3:アロペクロンA
【0071】
【化3】

【0072】
4:ソホラフラボンG
【0073】
【化4】

【0074】
5:ソホラフラボンK
【0075】
【化5】

【0076】
(実施例3)
本発明の範囲内にある化粧品組成物を調製した。
【0077】
表3に示した基本配合物を、段階Aの成分を撹拌しながら70〜85℃まで加熱することによって作成した。段階Bの成分は、別の容器中で撹拌しながら70〜85℃まで加熱した。次に、段階Aを段階B中に、両段階を70〜85℃に保ちつつ加えた。混合物を、70〜85℃で少なくとも15分間撹拌し、次いで冷却した。
【0078】
【表4】

【0079】
(実施例4)
本発明の範囲内にあり、表4において示した配合を有する追加の化粧品組成物を、以下の通り調製した。
1.段階Aを80℃まで加熱する。
2.段階Bを別の容器中で75℃まで加熱する。
3.BをAに加え、加熱を止めて30分間混合する。
4.50℃において段階Cを加え、10分間撹拌する。
【0080】
実施例1の濃縮苦甘草抽出物を使用した。
【0081】
【表5】

【0082】
(実施例5〜12)
1組の追加の組成物を、本発明の範囲内において調製し下記表5に列挙する。
【0083】
実施例1の濃縮苦甘草抽出物を使用した。
【0084】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.苦甘草抽出物0.000001重量%から50重量%、および
b.化粧品として許容される担体
を含む組成物を皮膚に塗布することを含む、皮膚美白の美容方法。
【請求項2】
前記組成物が日焼け止め剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記日焼け止め剤が金属酸化物微粉である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出物が0.00001%から10%の前記組成物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抽出物が0.001%から7%の前記組成物を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抽出物が0.01%から5%の前記組成物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抽出物が12μg/mlのIC50を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記苦甘草抽出物が有機溶媒抽出物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項9】
前記組成物が、α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸、ポリヒドロキシ酸、ヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、ビタミンBおよび/またはC誘導体、二酸、レチノイド、レゾルシノール誘導体、バニリン酸、ベツリン酸、ヒドロラクチン、およびこれらの混合物からなる群から選択される皮膚のためになる物質をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項10】
前記組成物が、ベンゾフェノン−1、ベンゾフェノン−2、ベンゾフェノン−3、ベンゾフェノン−4、ベンゾフェノン−8、メトキシシンナメート、エチルジヒドロキシプロピルPABA、グリセリルPABA、ホモサレート、アントラニル酸メチル、オクトクリレン、オクチルジメチルPABA、メトキシ桂皮酸オクチル、(PARSOL(商標)MCX)、サリチル酸オクチル、PABA、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、サリチル酸TEA、3−(4−メチルベンジリデン)−カンファー、ベンゾフェノン−6、ベンゾフェノン−12、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(PARSOL(商標)1789)、エトクリレン、およびこれらの混合物からなる群から選択される有機日焼け止め剤をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項11】
a.有機溶媒抽出物苦甘草0.000001%から50%、および
b.化粧品として許容される担体
を含む皮膚美白のための化粧品組成物。
【請求項12】
前記抽出物が0.00001%から10%の前記組成物を含む、請求項11に記載の化粧品組成物。
【請求項13】
前記抽出物が0.001%から7%の前記組成物を含む、請求項12に記載の化粧品組成物。
【請求項14】
前記抽出物が、アロペクロンA、アロペクロンB、ソホラフラボン−G、ソホラフラボン−I、ソホラフラボン−K、およびこれらの混合物からなる群から選択される有効成分を含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項15】
前記組成物が、α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸、ポリヒドロキシ酸、ヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、ビタミンBおよび/またはC誘導体、二酸、レチノイド、レゾルシノール誘導体、バニリン酸、ベツリン酸、ヒドロラクチン、およびこれらの混合物からなる群から選択される皮膚のためになる物質をさらに含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項16】
前記組成物が、ベンゾフェノン−1、ベンゾフェノン−2、ベンゾフェノン−3、ベンゾフェノン−4、ベンゾフェノン−6、ベンゾフェノン−8、メトキシシンナメート、エチルジヒドロキシプロピルPABA、グリセリルPABA、ホモサレート、アントラニル酸メチル、オクトクリレン、オクチルジメチルPABA、メトキシ桂皮酸オクチル、(PARSOL(商標)MCX)、サリチル酸オクチル、PABA、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、サリチル酸TEA、3−(4−メチルベンジリデン)−カンファー、ベンゾフェノン−12、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(PARSOL(商標)1789)、エトクリレン、およびこれらの混合物からなる群から選択される有機日焼け止め剤をさらに含む、請求項11から15のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項17】
アロペクロンA、アロペクロンB、ソホラフラボン−G、ソホラフラボン−I、ソホラフラボン−K、およびこれらの混合物からなる群から選択される有効成分を含む化粧品組成物。
【請求項18】
前記有効成分がアロペクロンAまたはBである、請求項17に記載の化粧品組成物。
【請求項19】
有効成分が、ソホラフラボン−G、ソホラフラボン−I、ソホラフラボン−K、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項17に記載の化粧品組成物。
【請求項20】
請求項17から19のいずれか一項に記載の組成物を皮膚に塗布することを含む、皮膚美白の美容方法。

【公表番号】特表2008−520601(P2008−520601A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541749(P2007−541749)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011975
【国際公開番号】WO2006/056317
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】