説明

荷姿認識装置

【課題】自動車の組立部品の納入等の物流工程において、パレット上に積載された箱体の種類、形状、寸法及び位置等の荷姿情報を自動的に認識する荷姿認識装置を提供する。
【解決手段】走査装置7の可動ラインカメラ8及び固定ラインカメラ10により、パレット2上に積載された箱体3の第1面〜第4面W1、W2、L1、L2について走査する。走査データから、箱体3に貼り付けられた帳票4の2次元コードを抽出し、2次元コードの位置を表す座標データを生成し、また、抽出した2次元コードに基づきデータベースから箱体3の形状、寸法及び2次元コードの表示位置を含む箱体情報を取得し、2次元コードの位置を表す座標データ及び箱体情報に基づき、パレット2上に積載された箱体3の荷姿情報として、箱体3の各部の座標データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の組立部品の納入等の物流工程において、パレット上に積載された箱体を順次、移送、分別するために、箱体の種類、形状、寸法及び位置等の荷姿情報を自動的に認識するための荷姿認識装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、物流工程において、商品、部品等を梱包した段ボール箱等の箱体をパレット上に積載(パレタイズ)したり、積載された箱体を順次、移送、分別(デパレタイズ)する工程を産業用ロボットを用いて自動化することが行われている。この場合、パレット上に積載された多種類の箱体の形状、寸法及び位置等の荷姿情報を正確に認識する必要がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、ステレオテレビカメラ装置及び角度調整可能な照明装置を用いて、パレット上に積載された箱体を撮像し、撮像された画像の陰影に基づき、荷姿情報として簡易かつ迅速に最上部の箱体を特定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開7−299782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば自動車の組立工程においては、様々な部品等を梱包した多種多様の箱体がパレット上に積載されており、これを産業用ロボットを用いて円滑に移送、分別するためには、箱体の種類、形状、寸法及び位置等の荷姿情報を正確に認識し、その荷姿データに基づき産業用ロボットを作動させる必要がある。このため、このような物流工程においては、より正確で信頼性の高い荷姿データを生成することが望まれている。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、パレット上に積載された箱体に対して、正確で信頼性の高い荷姿データを生成するようにした荷姿認識装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、パレット上に積載された箱体の荷姿を認識するための荷姿認識装置であって、
各箱体の側面部には、該箱体を識別するための2次元コードが表示され、
前記パレット上に積載された前記箱体を側面から走査する走査装置と、
前記箱体の形状、寸法及び前記2次元コードの表示位置を含む箱体情報を記憶したデータベースとを備え、
前記走査装置による前記箱体の走査データから前記2次元コードを抽出し、該2次元コードの位置を表す座標データを生成し、抽出した前記2次元コードに基づき前記データベースから前記箱体情報を取得し、前記2次元コードの位置を表す座標データ及び前記箱体情報に基づき、前記パレット上に積載された前記箱体の荷姿情報として該箱体の座標データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る荷姿認識装置によれば、パレット上に積載された箱体に対して、正確で信頼性の高い荷姿データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る荷姿認識装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】パレット上に積載される箱体の一例を示す斜視図である。
【図3】図1に示す荷姿認識装置の荷姿データを生成する処理装置を示すブロック図である。
【図4】パレット上に積載された箱体の正面図である。
【図5】2次元コードの配置を示す箱体の正面図である。
【図6】パレット上に積載された箱体の配置の一例を示す正面図である。
【図7】図5に示す箱体の配置の一例の側面図である。
【図8】図3の処理装置のデータベースの内容の一例を示す図表である。
【図9】図7に示すデータベースの内容に箱体の座標データを付加した図表である。
【図10】図1に示す荷姿認識装置の荷姿データを生成するための処理フローを示すフローチャートである。
【図11】図1に示す荷姿認識装置の2次元コード情報を取得するための処理フローを示すフローチャートである。
【図12】図1に示す荷姿認識装置の荷姿情報を生成するための処理フローを示すフローチャートである。
【図13】図1に示す荷姿認識装置の下流に配置されたデパレットステーション及び自動倉庫の一例の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る荷姿認識装置1は、自動車の組立部品の納入等の物流工程において、パレット2上に積載された箱体3の種類、形状、寸法及び位置等の荷姿情報を認識して座標データとして生成するものである。
【0011】
箱体3は、図2に示すように、段ボール等からなり直方体に形成されて自動車の組立部品等を梱包したものである。箱体3は、梱包する部品に応じて様々な形状及び寸法のものがあり、水平方向に面した少なくとも1面に長方形の帳票4が貼り付けられている。帳票4は、その箱体3に梱包された部品についての物流管理情報、その箱体3の識別情報を表し、例えば「かんばん」といわれるものであり、これらの情報を表示する光学的に読取り可能な矩形の2次元コード5が印刷されている。帳票4は、これに印刷された2次元コード5の箱体3に対する位置が一定になるように貼り付けられている。2次元コード5としては、例えば公知のQRコード(登録標標)を使用することができる。
【0012】
荷姿認識装置1は、コンベア6上のパレット2に積載された箱体3の水平方向に面した第1面W1、第2面W2、第3面L1、第4面L2の4つの面について走査を行なって2次元画像データを生成する走査装置7が設けられている。走査装置7は、矢印Aで示すコンベア6の搬送方向に直交する第1面W1及び第2面W2に対向して配置された一対の可動ラインカメラ8及び距離センサ9と、搬送方向に平行な第3面L1及び第4面L2に対向して配置された一対の固定ラインカメラ10及び距離センサ11とを備えている。
【0013】
可動ラインカメラ8は、コンベア6を停止してパレット2上に積載された箱体3を固定した状態で、搬送方向に対して直交する方向に移動させることにより、パレット2上に積載された箱体3の第1面W1及び第2面W2について、それぞれ走査を行なって2次元画像データを生成する。このとき、距離センサ9によって箱体3との距離を検出し、ラインカメラ8に取付けられたパルスエンコーダ12によってラインカメラ8及び距離センサ8の移動量を検出する。
【0014】
固定ラインカメラ10は、コンベア6を作動させて、パレット2上に積載された箱体3を一定速度で搬送方向に移動させることにより、パレット2上の箱体3の第3面L1及び第4面L2について、それぞれ走査を行なって2次元画像データを生成する。このとき、距離センサ11によって箱体3との距離を検出し、コンベア6に取付けられたパルスエンコーダ(図示せず)によってパレット2上の箱体3の移動量を検出する。
【0015】
図3に示すように、荷姿認識装置1は、コンベア6及び走査装置7の作動を制御し、パレット2上の箱体3の第1、第2面W1、W2及び第3、4面L1、L2の2次元画像データを生成し、これらの2次元画像データを処理することにより、パレット2上に積載された箱体3の種類、形状、寸法及び位置等の荷姿データを生成する処理装置13を備えている。
【0016】
処理装置13は、マイクロプロセッサベースの情報処理ユニットを含み、次のようにコンベア6及び走査装置7を制御する。
処理装置13は、パレット2に積載される箱体3のデータベースDBを備えている。このデータベースDBは、例えば図8に示すように(一例としてNo.1〜13の13種を図示する)、梱包された部品の部品番号、箱体3の種類、形状、縦(L)、横(W)、高さ(H)の各寸法、帳票4の貼付位置すなわち2次元コード5の表示位置を含む箱体情報を記憶している。図8に示す例では、帳票4の貼付位置は、「0」又は「1」で示されている。ここで、「0」は、2次元コード5の図形の重心が箱体3の短辺側の中央下部にあり、図5において、箱体3の帳票4の貼付面に対して、2次元コード5の図形の重心がC=67(mm)、D=L/2の位置にあることを表している。また、「1」は、2次元コード5の図形の重心が箱体3の短辺側の中央下部にあり、図5において、箱体3の帳票4の貼付面に対して、2次元コード5の図形の重心がC=67(mm)、D=W/2の位置にあることを表している。
【0017】
そして、処置装置13は、コンベア6及び走査装置7の作動を制御して、パレット2上に積載された箱体3の第1、第2面W1、W2及び第3及び第4面L1、L2について走査を行って各面について2次元画像データを生成し、これらの2次元画像データから各箱体3の2次元コード5を抽出し、それぞれの図形の重心位置を演算する。このとき、図4に示すように、第1〜4面W1、W2、L1、L2について、パレット2に対して座標を設定し、各箱体3の位置情報を座標データとして生成する。
【0018】
また、抽出した2次元コード5の箱体3の識別情報をデータベースDBと照合することにより、各箱体3の箱体情報を得る。そして、2次元コード5の図形の重心位置の座標データから(データベースDBの内容に座標データを付加したものを図9に示す)、図6及び図7に示すように、各部の位置を表す座標データを生成する。このようにして、第1面W1について、No.1〜13の箱体について、各部の位置を表す座標データを生成する。そして、同様に、第2面W2、第3年L1、第4面L2について、各箱体3の各部の位置を表す座標データを生成する。これにより、パレット2上に積載された箱体3の形状、寸法及び位置含む荷姿情報を座標データとして生成することができる。
【0019】
一例として、図6及び図7に示すパレット2上に積載された箱体3について、(4)の箱体3の荷姿情報として、対角上にある頂点E、Fの座標データを生成する場合について説明する。
抽出した2次元コード5に基づき、図8に示す箱体データベースから、(4)の箱体の寸法として縦(L)=670(mm)、横(W)=335(mm)、高さ(H)=241(mm)、2次元コード5の位置情報「1」、すなわち、「長辺中央下部」、したがって、C=67(mm)、D=L/2=335(mm)を得る。また、走査装置7によって得た2次元画像データから(4)の箱体3の2次元コード5の図形の重心のX座標=Xq及びZ座標=Zqを演算し、この2次元コード5の図形の重心の座標に基づき、頂点EのX座標Xeは、
Xe=Xq−L/2=Xq−335
となり、Z座標Zeは、
Ze=Zq+(H−C)=Zq+(241−67)=Zq+174
となる。
【0020】
また、頂点FのX座標Xfは、
Xf=Xq+L/2=Xq+335
となり、Z座標Zfは、
Zf=Zq−C=Zq−67
となる。
【0021】
さらに、頂点E及びFのY座標Ye、Yfは、パレット2の前端の位置を原点とし、距離センサ11によって検出したパレット2の前端位置までの距離Yo及び距離センサ11によって検出した(4)の箱体3の2次元コード5までの距離Yqに基づき、
Ye=Yf=Yq−Yo
として求めることができる。
同様に、(2)〜(13)の箱体3の荷姿情報となる頂点の座標データについて、それぞれの箱体3の2次元コード5の図形の重心位置及び識別情報に基づいて求めることができる。
【0022】
次に、処理装置13により、荷姿データを生成するための処理フローの一例について図10乃至図12を参照して説明する。図10を参照して、ステップS0で、荷姿情報の座標データの生成を開始し、ステップS1で、走査装置7によってパレット2上の箱体3の走査を行い、各箱体3の2次元コード5を読取ってステップS2に進む。ステップ2で、2次元コード5の位置を標定してステップS3に進む。ステップS3で、2次元コード5からその箱体3に梱包された部品の品番等の識別情報及び2次元コード5の図形の重心位置の座標データを生成してステップS4に進む。ステップS4で、品番等の識別情報からデータベースDBの検索を実行し、箱体3を特定してステップS5に進む。ステップS5で、データベースDBから箱体の種類、形状、寸法及び帳票の貼付位置(2次元コードの位置)等の箱体情報を照合してステップS6に進む。ステップS6で、箱体情報から、各箱体3の各部の位置の座標データを演算してステップS7に進む。ステップS7で、パレット2上の箱体3の第1面から第4面について、座標データの生成が完了したか否か判定し、完了していない場合には、ステップS1に戻り、第1面から第4面の各面について順次、座標データを生成する。第1面から第4面について、座標データの生成が完了した場合には、ステップS8に進み、パレット2上の箱体2の座標データを荷姿情報として出力して処理を終了する。
【0023】
図10に示す処理フローのステップS1における2次元コード5の読み取りの処理フローについて、図11を参照して更に詳細に説明する。図11を参照して、ステップS10で走査装置7の作動を開始し、ステップS11で距離センサ9、11によってラインカメラ8、10と箱体3に貼り付けられた帳票4(2次元コード5)との距離を検出してステップS12に進む。ステップS12で、距離センサ9、11の検出に基づきラインカメラ8、10の焦点を調整してステップS13に進む。ステップS13で、ラインカメラ8、11による走査を開始し、ステップS14で走査データを取得し、ステップS15で走査を終了してステップS16に進む。ステップS16で、走査データに基づき、2次元画像を生成してステップS17に進む。ステップS17で、2次元画像から2次元コード5を抽出してステップS18に進む。ステップS18で2次元コード5の基準位置となる図形の重心位置を演算してステップS19に進む。ステップS19で、座標データの生成処理を実行する。
【0024】
次に、二次元コード5から荷姿データを生成する処理の一例について図12を参照して説明する。図12を参照して、ステップS21で、走査装置7によって読込んだ2次元コード5から部品番号等の識別情報を抽出してステップS22に進む。ステップS22で、部品番号に基づき、データベースDBから、その箱体情報を検索してステップS23に進む。ステップS23で、検索した箱体情報から箱体3の種類、形状、寸法及び帳票4の貼付位置(2次元コード5の位置)を抽出してステップS24に進む。ステップS24で、これらの情報に基づき、2次元コード5の図形の重心の座標データを生成してステップS25に進む。ステップS25で、箱体情報及び2次元コード5の図形の重心の座標データからパレット2上に積載された各箱体3の座標データを生成する。
【0025】
このようにして、パレット2上に積載された各箱体3の種類、形状、寸法及び位置を含む荷姿情報を座標データとして生成することができる。そして、例えば図12に示すように、次工程のデパレタイズステーション14において、産業用ロボット15を利用して、各箱体3を自動倉庫16の所定の保管場所に分別、移送する場合、荷姿情報の座標データに基づき、産業用ロボット15の作動を制御することにより、各箱体3を順次、確実に把持することができ、円滑なハンドリングが可能になる。このとき、ステレオカメラ等の3次元カメラ、3次元センサ等を用いて、ロボットアーム15Aの座標と、パレット2上の箱体3の座標とのズレを補正し、また、荷崩れ等を検知することができる。この際、3次元処理としては、ステレオビジョン、光切断法、タイムフライト法等の公知の処理技術を利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1…荷姿認識装置、2…パレット、3…箱体、5…2次元コード、7…走査装置、DB…データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレット上に積載された箱体の荷姿を認識するための荷姿認識装置であって、
各箱体の側面部には、該箱体を識別するための2次元コードが表示され、
前記パレット上に積載された前記箱体を側面から走査する走査装置と、
前記箱体の形状、寸法及び前記2次元コードの表示位置を含む箱体情報を記憶したデータベースとを備え、
前記走査装置による前記箱体の走査データから前記2次元コードを抽出し、該2次元コードの位置を表す座標データを生成し、抽出した前記2次元コードに基づき前記データベースから前記箱体情報を取得し、前記2次元コードの位置を表す座標データ及び前記箱体情報に基づき、前記パレット上に積載された前記箱体の荷姿情報として該箱体の座標データを生成することを特徴とする荷姿認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−192490(P2012−192490A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58173(P2011−58173)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】