説明

荷物収容装置

【課題】撮像精度を高めることにより動作信頼性を高めることのできる荷物収容装置の提供を目的とする。
【解決手段】施錠可能な扉1を備えた適数の荷物収容室2と、
荷物収容室2の扉1への操作権限を認証する手指静脈認証部3とを有し、
前記手指静脈認証部3は、認証対象手指4の認証範囲を挟んで一方に指先を支承する指先支承部5を備えるとともに、反対部に認証対象手指4の中手指節関節部6を支承する中手指節関節支承部7を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷物収容装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
指認証装置を認証装置として使用した荷物収容装置は、特許文献1に記載のものが知られており、これらに使用可能な指静脈認証装置としては、特許文献2に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献2記載の指静脈認証装置は、認証対象の指を撮像箇所に固定するために指先、および指の根元を支持するためのガイドと、掌を支える掌支えガイドとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-38329号公報
【特許文献2】特許第4491442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来例においては、撮像時に認証対象指を根元ガイドに強く押し当てると、指が鬱血して静脈の状態が変化する虞がある。
【0006】
とりわけ、利用者が不特定多数である荷物収容装置の場合、静脈認証に対する利用者の高い習熟度を望めないために、登録、および登録したテンプレートに対する照合の信頼度が低くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、撮像精度を高めることにより動作信頼性を高めることのできる荷物収容装置の提供を目的とする。また、本発明の他の目的は、上記荷物収容装置に使用可能な手指静脈認証装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
手指静脈認証部3は、認証対象の手指4の静脈を撮影してテンプレートとして登録し、登録したテンプレートと後に撮影した画像との照合により認証の正否を判定するもので、画像取得時に認証対象手指4を所定位置に保持することが必要な反面、上述したように、手指4の位置保持を優先してガイド等に強く当てると静脈の状態が変化してしまうことがあるために、従来の手指静脈認証部3の正確な利用には一定の慣れが要求される。
【0009】
特に、初期のテンプレートの登録操作は以後の認証動作に悪影響を与えるために慎重さが求められるが、ロッカー、貴重品預かりボックス等の荷物収容装置にあっては、静脈認証に不慣れな不特定多数者による登録操作が行われるために、使用に当たっての注意を促す補助者が配置される銀行のATM操作のための初期テンプレート登録の場合に比して、より動作信頼性を高めた構成とする必要がある。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、
施錠可能な扉1を備えた適数の荷物収容室2と、
荷物収容室2の扉1への操作権限を認証する手指静脈認証部3とを有し、
前記手指静脈認証部3は、認証対象手指4の認証範囲を挟んで一方に指先を支承する指先支承部5を備えるとともに、反対部に認証対象手指4の中手指節関節部6を支承する中手指節関節支承部7を備えて構成される。
【0011】
本発明において、指先支承部5に加え、指の付け根にある中手指節関節部6を支承するための中手指節関節支承部7を設けることにより手指4は、指先支承部5と中手指節関節支承部7とに静脈撮影領域の両側が支えられた状態となって確実に所定位置に保持される。
【0012】
また、中手指節関節部6は、強く圧迫しても比較的指先の鬱血が生じにくい上に、掌に属しているために、当該箇所を支えにすると、利用者にも安定感を与えることができるために、この姿勢での撮像動作を安定させることができる。
【0013】
加えて、指中間部の適宜箇所を指元用の支承部で支える場合、指元支承部への手指4の置き位置を一定させることができないために、指先位置が突き当て状に固定されている場合には、指先の湾曲角度が、指先位置が拘束されていない場合には、撮像位置、あるいは指先の湾曲角度が一定しない虞があるが、中手指節関節部6を拘束すると、指の姿勢、位置は概ね決定されるために、再現性の高い保持姿勢を達成することが可能になる。
【0014】
また、上述したように、中手指節関節部6を支承すると、安定的な指保持が可能となるが、
前記中手指節関節支承部7は、指先側に行くに従って漸次高くなる傾斜面により形成されるとともに、
前記指先支承部5は、前記中手指節関節支承部7の延長面から下方に配置されて撮像対象手指4を撮像時に上に凸な湾曲形状に導くように導く荷物収容装置を構成すると、撮像対象手指4は上に凸なほぼ一定の曲率を有する湾曲形状に導かれて指から力が抜けた状態で保持することができるために、安定した画像取得が可能になる。
【0015】
さらに、荷物収容装置は、
前記手指静脈認証部3は、前記指先支承部5を備えるケース内に静脈読み取り部を組み込んだ手指静脈認証ユニット8と、中手指節関節支承部7を形成する支承ブロック9とを前記認証対象手指4以外の4指を支承する支承基台10に固定して形成するように構成できる。
【0016】
中手指節関節支承部7は、撮像部を備えた手指静脈認証ユニット8のケースに一体形成することも可能であるが、静脈認証装置と別体に形成すると、指先に比して比較的接触面積が大きな中手指節関節支承部7を確実に支承可能な大きさに形成することが可能になる。
【0017】
また、
前記支承基台10は、前記中手指節関節支承部7の設置位置近傍から手前に行くに従って漸次低くなる傾斜面により形成され、
撮像時に手首が最下位置となり、掌が手指4側に行くに従って漸次高くなる緩慢な傾斜姿勢に導く荷物収容装置を構成すると、より操作性が向上する。
【0018】
さらに、上記荷物収容装置には、
認証対象手指4の指先を突き当てて支承する指先支承部5を一端に備えるケース内に静脈読み取り部を組み込んだ手指静脈認証ユニット8と、
前記指先支承部5に指先が支承される認証対象手指4の中手指節関節部6を支承する中手指節関節支承部7を備えた支承ブロック9とを有する手指静脈認証装置が使用できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、認証対象手指を安定して所定位置に保持することが可能になるために、撮像精度が高まり、動作信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を示す図で、(a)は正面図、(b)は操作部の拡大図である。
【図2】操作部の断面図である。
【図3】手指静脈認証部を示す図で、(a)は(b)の3A方向矢視図、(b)は斜視図である。
【図4】手指静脈認証部の変形例を示す図である。
【図5】認証状態を示す図で、(a)は認証対象指の状態を示す図、(b)は(a)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に貴重品を預け入れるためのロッカ装置として構成された本発明の実施の形態を示す。ロッカ装置は、筐体12内に複数の荷物収容室2を配置して形成される。各荷物収容室2には不使用時には施錠状態となる扉1が装着されており、筐体12の中央部には、これら扉1を解錠操作するための操作部13が配置される。
【0022】
図1(b)、図2に示すように、操作部13は、操作の指示等を表示するためのディスプレイ部14と、扉1への操作権限を認証するための手指静脈認証部3とからなる。操作部13は、筐体12の表面からの突出を防いで、後述する撮像部への外乱光の侵入、あるいは外観への悪影響を防ぐために筐体12の外周壁から奥まった位置に配置される。
【0023】
図2、3に示すように、手指静脈認証部3は、筐体12に形成される支承基台10に、手指静脈認証ユニット8と支承ブロック9とからなる手指静脈認証装置15を固定して形成される。手指静脈認証ユニット8は、ケース内に図外の撮影手段、登録部、照合部(いずれも図示せず)を格納した周知のものが使用される。撮影手段は、認証対象の手指4に近赤外線等を照射する光源、光源からの照射光のヘモグロビンによる吸光画像を撮影するCCDカメラ等の撮像部、取得画像の鮮明度等を判定し、所定の撮影品質の場合に切り出し等を行った後、パターンデータ化する画像管理部を有して構成され、撮影方式は、撮影部位以外の面から認証対象手指4を照射するいわゆる透過型撮影方式であっても、認証部位を照射する反射型撮影方式であってもよい。
【0024】
また、登録部は、上記パターンデータを所定のデータベースに検索可能に格納し、照合部は、新たに取得したパターンデータをデータベースから検索し、一致するパターンデータが検索された場合に認証成立状態となり、検索されなかった場合には認証不成立状態となる。
【0025】
撮影手段に対する認証対象手指4の位置、状態を一定に保ち、撮影条件の再現性を高めるために、手指静脈認証ユニット8のケースには、認証対象手指4(本例においては中指)の側縁、および先端を囲むような平面U次形状のガイド壁16が設けられる。
【0026】
ガイド壁16の内壁間の間隔は、指4の太さの個人差を吸収して認証対象手指4を入れることが可能な程度の適度の余裕があり、かつ、認証対象手指4を入れた状態で指4とガイド壁16との間に過大な隙間が発生して撮像部での撮影に悪影響を及ぼさない程度に幅狭に設定される。
【0027】
また、ガイド壁16の外壁間の間隔は、認証対象手指4である中指をガイド壁16間に入れた状態で隣接する人差し指、および薬指が無理なくガイド壁16に沿わせることができる程度の寸法に設定される。
【0028】
以上のように形成されるガイド壁16の先端は指突き当て部16aとして使用され、さらに、指突き当て部16aに先端を突き当てた状態の指先を下から支える支持台(指先支承部5)を兼ねて指先検出センサ17が配置される。本例において指先検出センサ17には静電センサが使用される。
【0029】
また、指先検出センサ17上に指先を載せてガイド壁16の開放端側に指4を伸ばした状態で指4が直接触れないように、撮影手段を覆う透明カバー18は指先検出センサ17の表面とガイド壁16の開放端に形成される支持面16bとが属する平面より低い位置に配置される。
【0030】
図2に示すように、上記手指静脈認証ユニット8は、支承基台10に連結される取付ブラケット10aを介して支承基台10に固定される。図5に示すように、支承基台10への固定状態において、上記手指静脈認証ユニット8の指先検出センサ17は、支承基台10の表面に対してやや高い位置に配置され、中指4の先端を指先検出センサ17上に載せて、残余の指を支承基台10に載せると、中指4だけが持ち上げられた中高姿勢に導かれる。
【0031】
一方、上記支承ブロック9は、手指静脈認証ユニット8の後方に配置される。この支承ブロック9は、図5(a)に示すように、指先を指突き当て部16aに突き当てた状態で指の付け根の関節(中手指節関節6)が当たる位置に配置される。
【0032】
中指の先端が指先検出センサ17の上に載せられ、かつ、支承ブロック9上に中手指節関節部6が正しく載せられるように、支承基台10には、図3(a)に示すように、ガイドイラストがほどこされる。
【0033】
図3(b)、図5に示すように、支承基台10の手前側先端部は、手前側、すなわち、指元に近付くにつれて漸次高さが低くなる傾斜面により形成されており、上記支承ブロック9の表面は、この支承基台10の傾斜面にほぼ一致する傾斜角の傾斜面により形成される。
【0034】
また、支承ブロック9は、その表面の属する面が上記手指静脈認証ユニット8の指先検出センサ17に比して高い位置となるように設定されており、支承ブロック9上に中手指節関節部6を載せ、指先を指先検出センサ17上に載せると、図5(a)に示すように、中指は上に凸にわずかに湾曲した状態に導かれ、上述した中高状態とあいまって力の抜けた読み取り姿勢に導かれる。
【0035】
さらに、支承ブロック9の中心部には静電容量センサ(指元検出センサ11)が配置されており、該支承ブロック9上に指があることを検出することができる。
【0036】
したがってこの実施の形態において、指先を指突き当て部16aに突き当てた状態で指先検出センサ17上に載せ、さらに中手指節関節部6を支承ブロック9に載せると、認証対象の指4は力が抜けた状態で撮像手段上に保持されるために、自然な状態の静脈を撮影することができる。また、手前に向けて傾斜している支承ブロック9上に中手指節関節部6を載せるように指示すると、水平な支承ブロック9上に中手指節関節部6を載せる場合に比して、押出方向への動作に対する抵抗感が発生するために、支承ブロック9上での載置位置の自由度を小さくする精神的な効果から、指位置のばらつきを小さくすることを期待できる。
【0037】
さらに、利用者が不安定感を嫌って支承ブロック9上に中手指節関節部6を押し付けた場合であっても、指先の中間部を押し付ける場合に比して鬱血等が発生しにくいために、撮影時の静脈の状態変化を防止することができ、再現性の高い画像を取得することができる。
【0038】
なお、以上においては、手指静脈認証部3を手指静脈認証ユニット8と、支承ブロック9とから形成する場合を示したが、図5に示すように、中手指節関節支承部7を手指静脈認証ユニット8のケースに一体に形成することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 扉
2 荷物収容室
3 手指静脈認証部
4 認証対象手指
5 指先支承部
6 中手指節関節部
7 中手指節関節支承部
8 手指静脈認証ユニット
9 支承ブロック
10 支承基台
11 指元検出センサ
(付記)
(付記1)
施錠可能な扉を備えた適数の荷物収容室と、
荷物収容室の扉への操作権限を認証する手指静脈認証部とを有し、
前記手指静脈認証部は、認証対象手指の認証範囲を挟んで一方に指先を支承する指先支承部を備えるとともに、反対部に認証対象手指の中手指節関節部を支承する中手指節関節支承部を備える荷物収容装置。
(付記2)
前記中手指節関節支承部は、指先側に行くに従って漸次高くなる傾斜面により形成されるとともに、
前記指先支承部は、前記中手指節関節支承部の延長面から下方に配置されて撮像対象手指を撮像時に上に凸な湾曲形状に導く付記1記載の荷物収容装置。
(付記3)
前記手指静脈認証部は、前記指先支承部を備えるケース内に静脈読み取り部を組み込んだ手指静脈認証ユニットと、中手指節関節支承部を形成する支承ブロックとを前記認証対象手指以外の4指を支承する支承基台に固定して形成される付記1または2記載の荷物収容装置。
(請求項4)
前記支承基台は、前記中手指節関節支承部の設置位置近傍から手前に行くに従って漸次低くなる傾斜面により形成され、
撮像時に手首が最下位置となり、掌が手指側に行くに従って漸次高くなる緩慢な傾斜姿勢に導く付記3記載の荷物収容装置。
(付記5)
前記支承ブロックに指元を検出する指元検出センサが組み込まれる付記3または4記載の荷物収容装置。
(付記6)
認証対象手指の指先を突き当てて支承する指先支承部を一端に備えるケース内に静脈読み取り部を組み込んだ手指静脈認証ユニットと、
前記指先支承部に指先が支承される認証対象手指の中手指節関節部を支承する中手指節関節支承部を備えた支承ブロックとを有する手指静脈認証装置。
(付記7)
認証対象手指の認証範囲を挟んで一方に指先を支承する指先支承部を備えるとともに、反対部に認証対象手指の中手指節関節部を支承する中手指節関節支承部を備えるケース内に静脈読み取り部を組み込んだ手指静脈認証ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施錠可能な扉を備えた適数の荷物収容室と、
荷物収容室の扉への操作権限を認証する手指静脈認証部とを有し、
前記手指静脈認証部は、認証対象手指の認証範囲を挟んで一方に指先を支承する指先支承部を備えるとともに、反対部に認証対象手指の中手指節関節部を支承する中手指節関節支承部を備える荷物収容装置。
【請求項2】
前記中手指節関節支承部は、指先側に行くに従って漸次高くなる傾斜面により形成されるとともに、
前記指先支承部は、前記中手指節関節支承部の延長面から下方に配置されて撮像対象手指を撮像時に上に凸な湾曲形状に導く請求項1記載の荷物収容装置。
【請求項3】
前記手指静脈認証部は、前記指先支承部を備えるケース内に静脈読み取り部を組み込んだ手指静脈認証ユニットと、中手指節関節支承部を形成する支承ブロックとを前記認証対象手指以外の4指を支承する支承基台に固定して形成される請求項1または2記載の荷物収容装置。
【請求項4】
前記支承基台は、前記中手指節関節支承部の設置位置近傍から手前に行くに従って漸次低くなる傾斜面により形成され、
撮像時に手首が最下位置となり、掌が手指側に行くに従って漸次高くなる緩慢な傾斜姿勢に導く請求項3記載の荷物収容装置。
【請求項5】
前記支承ブロックに指元を検出する指元検出センサが組み込まれる請求項3または4記載の荷物収容装置。
【請求項6】
認証対象手指の指先を突き当てて支承する指先支承部を一端に備えるケース内に静脈読み取り部を組み込んだ手指静脈認証ユニットと、
前記指先支承部に指先が支承される認証対象手指の中手指節関節部を支承する中手指節関節支承部を備えた支承ブロックとを有する手指静脈認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−100698(P2013−100698A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245797(P2011−245797)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000170598)株式会社アルファ (433)
【出願人】(506226658)株式会社アルファロッカーシステム (39)
【Fターム(参考)】