説明

荷重負荷装置

【課題】大型化する事なく、荷重の作用方向を変更する為の段取り作業を容易に行なえる構造を実現する。
【解決手段】固定台座10の上面に、部分円筒状凹面である支承面12を形成する。又、揺動台座14の下面に、部分円筒状凸面である被支承面15を形成する。試験条件に応じて、これら支承面12と被支承面15とをずらせ、上記揺動台座14の姿勢を変える。この姿勢変更により、この揺動台座14の上面に固定した軸受装置11に、油圧アクチュエータ5から加えられる荷重の方向を変更できる為、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、滑り軸受、転がり軸受等の各種軸受、或いは各種転がり軸受を収納するハウジング等の、軸受装置の構成部材の耐久性等に関する試験を行なう為に、この軸受装置の構成部材に荷重を付加する為の荷重負荷装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機械装置の回転支持部や揺動支持部を構成する軸受装置の信頼性、耐久性を確保する為には、この軸受装置の構成部材に関して、強度、剛性、疲れ寿命等を知る為の試験を行なう必要がある。この為従来から、例えば特許文献1に記載された様な試験装置が知られている。この特許文献1に記載される等により従来から知られている試験装置は、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)等の荷重付与手段により、被試験片である軸受や軸受ハウジングに、ラジアル方向或いはアキシアル方向の荷重を付与しつつ上記軸受装置を運転し、この軸受装置の強度、剛性、疲れ寿命等を求めるものである。
【0003】
上記特許文献1に記載された構造を含めて、従来から知られている試験装置の場合、軸受装置の姿勢を変える事はできない。これに対して、同種の軸受装置が常に同じ姿勢で使用されるとは限らない。例えば、各種産業機械等の回転支持部を構成する軸受装置のハウジングとして、図1〜9に示す様なプランマブロック(JIS B 0104)1を使用する場合が多い。このプランマブロック1は、ラジアル転がり軸受を収納する二分割型のケーシング部2の隅部に、フランジ状の取付座3を設けて成る。この様なプランマブロック1は、水平面上に設置された状態で使用される場合が多い。そして、水平面上に設置された状態で使用され、上記ケーシング部2内に収納された転がり軸受に鉛直方向のラジアル荷重が加わる場合には、上記ケーシング部2及び上記取付座3に、左右均等の力が作用する。この様な場合には、上記プランマブロック1の信頼性、耐久性確保の面からは、問題を生じにくい。
【0004】
一方、上記プランマブロック1を、傾斜面上に設置する場合もある。この様にプランマブロック1を傾斜面上に設置した場合、上記ケーシング部2内に収納された転がり軸受に鉛直方向のラジアル荷重が加わると、上記プランマブロック1のケーシング部2及び取付座3に、左右不均等の力が作用する。特に、これらケーシング部2と取付座3との連続部のうち、上記ラジアル荷重の作用方向に近い側の連続部に大きな曲げ応力が加わる。この結果、そのまま(上記プランマブロック1を水平面上に設置する事のみを考慮した設計)では、上記プランマブロック1の信頼性、耐久性の確保が難しくなる。
【0005】
従って、このプランマブロック1が傾斜面上に設置される可能性を考慮した場合には、このプランマブロック1の強度及び剛性を、水平面上にのみ設置する事を考慮した場合よりも大きくする必要がある。但し、この強度及び剛性を無闇に高くしても、上記プランマブロック1の製作コスト並びに重量が増大し、このプランマブロック1を含んで構成する軸受装置の価格が高くなるだけでなく、この軸受装置の取り扱い性も低下する為、好ましくない。そこで、上記プランマブロック1を傾斜面に設置した状態でこのプランマブロック1に荷重を付加し、このプランマブロック1の各部に加わる応力を測定する等、このプランマブロック1の信頼性、耐久性に影響を及ぼす各種値を測定する事が考えられる。
【0006】
図8〜9は、この様な事情に対応して、先に考えた、荷重負荷装置の2例を示している。このうちの図8に示した第1例の場合には、プランマブロック1を、上面の傾斜角度が互いに異なる支持ブロック4a〜4cの上面に設置する構造である。このうち、図8の(A)に示した支持ブロック4aは、上面が水平である。これに対して、図8の(B)に示した支持ブロック4bは、上面が少し傾斜している。更に、図8の(C)に示した支持ブロック4cは、上面がより急に傾斜している。何れの場合でも、上記プランマブロック1のケーシング部2に、ラジアル転がり軸受の外輪を保持固定し、取付座3を上記支持ブロック4a〜4cの上面にボルトにより固定する。又、上記ラジアル転がり軸受の内輪に内嵌した軸に、油圧アクチュエータ5の出力ロッド6を結合し、このラジアル軸受に、鉛直方向のラジアル荷重を付与する様にしている。
【0007】
又、図9に示した第2例の場合には、プランマブロック1を水平面上に設置した状態のまま、ラジアル転がり軸受の内輪に付与するラジアル荷重の方向を変更可能にすべく、複数個の油圧アクチュエータ5a〜5dを設けている。このラジアル荷重を、上記プランマブロック1の取付座3に対し直角方向に加える場合には、図9の(A)に示す様に、この取付座3と直角方向に設置した油圧アクチュエータ5aの出力ロッド6の動きを、上記内輪に伝達する。これに対して、上記ラジアル荷重を、上記プランマブロック1の取付座3に対し傾斜方向に加える場合には、図9の(B)に示す様に、この取付座3に対し傾斜した方向に設置した何れかの油圧アクチュエータ5b(5c、5d)の出力ロッド6の動きを、上記内輪に伝達する。
【0008】
上述の様な図8〜9に示した荷重負荷装置によれば、上記プランマブロック1の信頼性、耐久性を確保しつつこのプランマブロック1の軽量化を図る設計を行なう為のデータを得る面からは、特に問題を生じる事はない。但し、上記図8〜9に示した何れの構造でも、荷重の作用方向を変更する為の段取り作業が面倒で、各方向に就いて多くのデータを得る場合の作業が面倒で時間を要する事が避けられない。又、図9に示す様に複数個の油圧アクチュエータ5a〜5dを設ける構造の場合には、荷重負荷装置が大型化し、この装置の製作コストが嵩む事が避けられない。
【0009】
【特許文献1】特開平9−264816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、特に大型化する事なく、荷重の作用方向を変更する為の段取り作業を容易に行なえる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の荷重負荷装置は、前述した様な荷重負荷装置と同様に、相対変位する少なくとも1対の部材を備えた軸受装置のうちの一方の部材を支持する支持手段と、他方の部材に荷重を加える荷重付与手段とを備える。
特に、本発明の荷重負荷装置に於いては、上記支持手段を構成する揺動台座が、上記一方の部材を支持すると共にこの荷重付与手段から上記他方の部材を介してこの一方の部材に加えられる荷重を支承可能な状態で、姿勢を変更自在である。
【発明の効果】
【0012】
上述の様に構成する本発明の荷重負荷装置によれば、小型に構成できて、しかも、荷重の作用方向を変更する為の段取り作業を容易に行なえる。
先ず、支持手段が一方の部材を支持する姿勢を変更するので、荷重付与手段を複数設ける必要はない。この為、前述の図9に示した構造の様に、複数の荷重付与手段を設ける事に伴って装置が大型化する事がない。
又、単一の揺動台座の姿勢を変更するのみで、この揺動台座に支持した上記一方の部材に対する荷重の作用方向を変更できる為、この荷重の作用方向を変更する為の段取り作業を容易に行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した様に、支持手段に、一方の部材を支持する揺動台座を、軸受装置の回転中心を中心とする揺動方向に変位させる揺動支持構造を持たせる。
この様な揺動支持機構を持たせれば、上記一方の部材に対する荷重の作用方向を、効率良く変更できる。即ち、上記揺動台座の姿勢を変更可能にする事に伴って、前述の図8に示した様に、複数種類の支持ブロック4a〜4cを使い分ける場合に比べて、上記荷重の作用方向の変更作業を容易に行なえる。但し、上記揺動台座の姿勢変更に関して(例えば球面受で360度方向の揺動変位可能に支持する等により)過度の自由度を設定すると、ラジアル軸受装置の試験に関する限り、却って上記荷重の作用方向の変更作業が面倒になる。そこで、ラジアル軸受装置の試験を行なう事を考慮した場合には、上記請求項2に記載した様な揺動支持構造を備える事が好ましい。
これに対して、例えばスラスト軸受装置の試験を行なう場合には、球面受で360度方向の揺動変位可能に支持する事が好ましい事も考えられる。
【0014】
又、上述の請求項2に記載した様な発明を実施する場合に、好ましくは、請求項3に記載した様に、上記揺動支持構造を、固定台座と、揺動台座と、駆動機構とを備えたものとする。
このうちの固定台座は、軸受装置の回転中心を曲率中心とする部分円筒状凹面である、支承面を有する。
又、上記揺動台座は、上記軸受装置の回転中心を曲率中心とする部分円筒状凸面で、上記支承面と、この軸受装置の回転中心を中心とする揺動変位自在に係合した被支承面を有し、この軸受装置の一方の部材を支持する。
更に、上記駆動機構は、上記軸受装置の回転中心を中心としてこの揺動台座を揺動変位させる為のものである。
【0015】
そして、上述の請求項3に記載した発明を実施する場合に、更に好ましくは、請求項4に記載した様に、支承面と被支承面とを、直接又は滑り軸受若しくは複数本のニードルを介して揺動変位可能に係合させる。又、上記揺動台座の一部で軸受装置の回転中心を中心とする位置に、部分円弧状のラックを固設する。更に、このラックと噛合したピニオンの回転駆動に基づき、上記揺動台座の姿勢を変更自在とする。
この様な構成を採用すれば、上記揺動台座の姿勢を、容易に、且つ、変更量を任意且つ正確に規制した状態で変更できる。
【0016】
又、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した様に、他方の部材の軸方向両端に対向する部分に、それぞれが伸縮自在な1対のラジアル荷重付与用アクチュエータを配置する。そして、これら両ラジアル荷重付与用アクチュエータの出力部を、上記他方の部材の軸方向両端部に係合させる。この構成によりこの他方の部材に、これら両ラジアル荷重付与用アクチュエータの伸縮方向に応じたラジアル荷重又はモーメントを付与自在とする。
この様な請求項5に記載した発明によれば、各種方向の荷重又はモーメントを、プランマブロック等の軸受装置の構成部材に付加する事ができて、この構成部材の耐久性に関する試験の信頼性をより一層向上させる事ができる。
【0017】
又、上述の様な請求項5に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項6に記載した様に、揺動台座を固定台座の上方に、揺動に基づく姿勢の変更を自在に載置する。そして、この揺動台座の姿勢を変更した状態でこの揺動台座を上記固定台座に対し、結合固定自在とする。
この様に構成すれば、上記他方の部材に対し、上記揺動台座を上記固定台座から引き離す方向の力を付与しつつ、上記プランマブロック等の軸受装置の構成部材の耐久性に関する試験を行なえる。この為、この試験の自由度を向上させて、この耐久性に関してより信頼性の高い試験結果を得られる。
【0018】
又、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項7に記載した様に、アキシアル荷重付与用アクチュエータを、上記他方の部材と同心に配置する。そして、このアキシアル荷重付与用アクチュエータの出力部をこの他方の部材の軸方向端部に係合させる事により、この他方の部材の軸方向端部にアキシアル荷重を付与自在とする。
この様に構成すれば、上記プランマブロック等の軸受装置の構成部材にアキシアル荷重を付加する事ができて、この構成部材の耐久性に関する試験の信頼性をより一層向上させる事ができる。
【実施例1】
【0019】
図1〜3は、請求項1〜4に対応する、本発明の実施例1を示している。尚、本実施例の荷重負荷装置の構成各部材は、鋼材等の十分な強度及び剛性を有する金属材料により造られている。水平面上に載置された基板7の上面に、4本の支柱8、8の基端部を固定している。これら各支柱8、8は、互いに平行に、鉛直方向に配置されている。そして、これら各支柱8、8の上部に天板9を、高さ位置の調節可能に、且つ、調節後の位置を固定できる様に、支持している。そして、上記天板9の中央部に、荷重付与手段である油圧アクチュエータ5を、鉛直方向に支持している。この油圧アクチュエータ5の出力ロッド6は、上記天板9の下方に垂下された状態となる。
【0020】
上記基板7の上面中央部で、上記4本の支柱8、8に囲まれた部分には、固定台座10を支持固定している。この固定台座10の上面に設けた支承面12は、試験対象品である、プランマブロック1を含む軸受装置11の回転中心(このプランマブロック1に収めたラジアル転がり軸受を構成する外輪及び内輪の中心軸)を曲率中心とする、部分円筒状凹面である。尚、上記支承面12の幅方向中央部には凹部13を、この支承面12の全長に亙って形成している。
【0021】
上述の様な固定台座10に、複数枚の板材を、溶接或いはねじ止め等により結合固定して成る揺動台座14を、揺動変位を可能に載置している。この揺動台座14の下面に設けた被支承面15は、上記軸受装置11の回転中心を曲率中心とする部分円筒状凸面である。又、本実施例の場合には、上記被支承面15と上記支承面12とを(複数本のニードルや滑り軸受を介してではなく)直接当接させる為に、上記被支承面15の曲率半径と、上記支承面12の曲率半径とを、互いに等しくしている。一方、上記揺動台座14の上面は平坦面としており、試験時にはこの上面に、上記プランマブロック1を、ボルトにより結合固定する。
【0022】
又、上記揺動台座14の下面の幅方向中央部には、部分円弧状のラック16を、この揺動台座14の下面の、ほぼ全長に亙って固設(一体成形若しくは別体のものを固定)している。上記ラック16の幅寸法及び高さ寸法は、上記凹部13の幅寸法及び深さ寸法よりも少し小さい。従って、上記揺動台座14を上記固定台座10に載置した状態で、上記ラック16は上記凹部13内に収まり、上記支承面12と上記被支承面15とが密接する。そして、この状態で、上記固定台座10の内部に回転自在に設けたピニオン17が、上記ラック16と噛合する。このピニオン17は、図示しないハンドルにより手動で、或いは、やはり図示しないモータにより自動的に回転駆動される。尚、付与する荷重の大きさによっては、上記支承面12と上記被支承面15との間に、滑り軸受若しくは複数本のニードルを設ける事もできる。
【0023】
上述の様に構成する本実施例の荷重負荷装置による、上記軸受装置11の試験は、次の様にして行なう。先ず、試験の準備として、上記揺動台座14の上面に、上記軸受装置11を支持固定する。この作業は、この軸受装置11を構成する上記プランマブロック1の取付座3を上記揺動台座14の上面に、ボルト等の固定手段により固定する事により行なう。又、上記プランマブロック1のケーシング部2内に収納されたラジアル転がり軸受の内輪に内嵌した軸18に前記油圧アクチュエータ5の出力ロッド6の下端部を、結合ブラケット19を介して結合する。この状態で、上記試験の準備が完了する。尚、この状態で、必要に応じて、上記揺動台座14を上記固定台座10に、ボルト等により結合固定する。
【0024】
この状態で、上記油圧アクチュエータ5のシリンダ室内に所定圧の油圧を導入し、上記ラジアル転がり軸受の内輪に所定のラジアル荷重を付加すれば、上記軸受装置11に所定の荷重を付与できる。尚、このラジアル荷重の大きさは、上記シリンダ室内に導入する油圧から求められる他、上記出力ロッド6の途中に設けたロードセル20の測定値からも求められる。実際の場合には、このロードセル20の測定値を、上記油圧の制御弁にフィードバックする事によって、上記軸受装置11に付加するラジアル荷重の値を所望値に規制する。そして、この軸受装置11に、繰り返し若しくは連続的にラジアル荷重を付加する等により、上記プランマブロック1等、この軸受装置11の構成部品の耐久性に関する試験を行なう。
【0025】
この軸受装置11に対する上記ラジアル荷重の作用方向を変える場合には、前記ピニオン17を回転させる。この結果、このピニオン17と前記ラック16との噛合に基づき、上記揺動台座14が、図3に示す様に揺動変位する。この図3中、(A)はこの揺動台座14の上面を水平方向に向けた状態を、(B)は同じく少し傾斜させた状態を、(C)は同じく大きく傾斜させた状態を、それぞれ示している。この様な、図3の(A)〜(C)の状態は、前記ハンドル或いはモータにより上記ピニオン17を回転させる事で、容易に実現できる。この為、上記ラジアル荷重の作用方向を変更する為の段取り作業を容易に行なえる。
【実施例2】
【0026】
図4〜6は、請求項1〜6に対応する、本発明の実施例2を示している。本実施例の構造は、風力発電装置を構成する風車を支持する為等に使用する、大型のプランマブロックの試験を行なうのに適したものである。本実施例の場合には、他方の部材である軸18の軸方向両端部に対向する部分に、それぞれラジアル荷重付与用アクチュエータ21、21を、1対配置している。これら両ラジアル荷重付与用アクチュエータ21、21は、複動式の油圧シリンダ、或いは送りねじ機構等の様に、全長を伸縮自在としたもので、それぞれの基端部(下端部)を基板7の上面に、上記軸18と直角方向に配置された枢軸22により、若干の揺動を可能に結合されている。又、上記ラジアル荷重付与用アクチュエータ21、21の先端部(上端部)に結合した軸受ハウジング23、23に自動調心ころ軸受、調心輪付の転がり軸受等、調心機能を有する転がり軸受24を内蔵し、この転がり軸受24により、上記軸18の両端部を回転自在に支持している。尚、図示は省略するが、上記枢軸22に調心機能を持たせれば、上記軸受ハウジング23、23に内蔵する軸受は、調心機能を有しない転がり軸受(例えば一般の円筒ころ軸受)でも良い。
【0027】
又、本実施例の場合には、固定台座10の上方に揺動に基づく姿勢の変更を自在に載置した揺動台座14を、この固定台座10に対し、この揺動台座14の姿勢を変更した状態で、結合固定自在としている。この為に本実施例の場合には、この揺動台座14の下端部両側に張り出した、揺動中心である上記軸18を中心とする円弧状の揺動側フランジ25と、上記固定台座10の上端部両側に張り出した、上記軸18を中心とする円弧状の固定側フランジ26と突き合わせている。これら両フランジ25、26のうちの揺動側フランジ25には複数の通孔を、固定側フランジ26には複数のねじ孔を、互いに等ピッチで形成している。上記揺動台座14の姿勢を変える際には、上記各通孔及び上記各ねじ孔にはボルト等の部材を挿通或いは螺合させず、モータ27によりピニオン17を回転させて、ラック16を固設した上記揺動台座14の姿勢を調節する。そして、調節後に、上記各通孔を上方から挿通した各ボルト31、31を上記各ねじ孔に螺合し更に緊締する事で、上記揺動台座14を上記固定台座10に対し結合固定する。
【0028】
本実施例の場合には、上述の様な構成により上記軸18に、上記両ラジアル荷重付与用アクチュエータ21、21の伸縮方向に応じたラジアル荷重又はモーメントを付与自在としている。例えば、これら両ラジアル荷重付与用アクチュエータ21、21を同じ量だけ収縮させれば、上記軸18に下向きのラジアル荷重を付加する事ができる。又、上記両ラジアル荷重付与用アクチュエータ21、21の収縮量を異ならせれば、上記軸18に下向きのラジアル荷重及び所定方向のモーメントを付加する事ができる。又、上記両ラジアル荷重付与用アクチュエータ21、21を同量伸長させれば上記軸18に上向きのラジアル荷重を付加する事ができ、同じく伸長量を異ならせれば、この軸18に上向きのラジアル荷重及び所定方向のモーメントを付加する事ができる。更に、上記両ラジアル荷重付与用アクチュエータ21、21のうちの一方を収縮させ、他方を伸長させれば、上記軸18に、大きなモーメントを付加する事ができる。この結果、この軸18とケーシング部2との間に、各種方向の荷重又はモーメントを付加する事ができて、これら軸18及びケーシング部2を含む軸受装置11の耐久性に関して、信頼性の高い試験を行なえる。
【0029】
しかも、本実施例の場合には、上記軸18に荷重を付加する状態で、上記揺動台座14が上記固定台座10から浮き上がらない様にできる。この為、上記軸18に上向きの力を付与しつつ、上記軸受装置11の構成部材の耐久性に関する試験を行なえる。この為、この軸受装置11に対し、使用状態で加わる可能性がある、各種方向の荷重及び力を付加できる等、上記試験の自由度を向上させて、上記耐久性に関してより信頼性の高い試験結果を得られる。その他の部分の構成及び作用は、前述の実施例1と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【実施例3】
【0030】
図7は、請求項1〜7に対応する、本発明の実施例3を示している。本実施例の場合には、アキシアル荷重付与用アクチュエータ28を、他方の部材である内輪に内嵌固定した軸18と同心に配置している。そして、このアキシアル荷重付与用アクチュエータ28の出力部を上記軸18の軸方向端部に係合させる事により、この軸18の軸方向一端部にアキシアル荷重を付与自在としている。尚、この軸18の軸方向一端部と上記アキシアル荷重付与用アクチュエータ28の出力部との係合部には、スラスト転がり軸受を組み込んで、この出力部と上記軸18との相対回転を許容しつつ、アキシアル荷重の伝達を可能としている。上記アキシアル荷重付与用アクチュエータ28も、1対のラジアル荷重付与用アクチュエータ21、21と同様に伸縮自在として、両方向のアキシアル荷重の付加を可能としている。
【0031】
又、上記軸18の軸方向他端部には、駆動モータ29の出力軸を、継手30を介して結合し、この軸18を回転駆動自在としている。軸受装置11の試験時には、上記駆動モータ29により上記軸18を回転駆動しつつ、上記各アクチュエータ21、28を所望の方向に伸縮させる事により、上記軸18とケーシング部2との間に各種方向の荷重やモーメントを付加する。この為、この軸受装置11に対し、使用状態で加わる可能性がある、あらゆる方向の荷重及び力を付加できる等、上記試験の自由度を更に向上させて、耐久性に関してより信頼性の高い試験結果を得られる。その他の部分の構成及び作用は、上述の実施例2と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明を実施する場合に、荷重の付加方法は、特に限定しない。実施例1の場合に付与可能な、引っ張り方向或いは圧縮方向の荷重に限らず、曲げ方向の荷重やモーメントを付加する事も可能である。例えば、曲げ方向の荷重やモーメントは、実施例2、3に示した様に、内輪に一端部を内嵌した軸の他端部を押し引きする事により付与できる。又、疲労試験ではなく、単なる引張り試験、圧縮試験、曲げ試験、モーメント試験の評価を行なう事もできる。
【0033】
又、固定側、揺動側両台座の凸曲面及び凹曲面は、部分円筒面に限らず、部分球状凹面及び部分球状凸面とする事もできる。この場合には、被試験体である軸受装置を、3次元的方向に揺動変位させる事ができる。
又、揺動台座を揺動変位させる為の機構は、図示の実施例の様な歯車機構の他に、チェーン、ベルト、摩擦駆動等を用いる事もできる。但し、製作コストを抑えつつ、所望量の揺動変位を確実に行なわせる面からは、歯車機構を採用する事が好ましい。
又、揺動台座に対し軸受装置等の被試験体を結合固定する為の固定手段は、ボルト締結の他、ピン、キー、電磁力等を用いる事ができる。但し、試験時に加わる、引っ張り力、圧縮力、モーメントに拘らず、上記揺動台座から上記被試験体が脱落しない様にする為には、ボルト締結が望ましい。
【0034】
又、図示の各実施例では一般的な疲労試験装置と同様に、荷重負荷装置として複動式の油圧アクチュエータを使用した場合に就いて示したが、この荷重負荷装置は、単動式の油圧シリンダであっても良いし、圧縮空気や水等、油以外の流体により作動するものであっても良い。
又、本発明の荷重負荷装置は、上記疲労試験装置の如き評価試験装置に組み込む場合に限らず、一般的な機械設備に組み込んで、軸受装置等の設置姿勢を種々変更する為に利用する事もできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1を一部を切断して示す正面図。
【図2】一部を切断して図1の側方から見た図。
【図3】揺動台座の姿勢を3通りに異ならせた状態を示す正面図。
【図4】本発明の実施例2を示す、図1と同様の図。
【図5】一部を切断して図4の側方から見た図。
【図6】揺動台座を傾斜させた状態で示す正面図。
【図7】本発明の実施例3を示す、図5と同方向から見た側面図。
【図8】先に考えた構造の第1例を示す、図3と同様の図。
【図9】同第2例を示す、図3と同様の図。
【符号の説明】
【0036】
1 プランマブロック
2 ケーシング部
3 取付座
4a、4b、4c 支持ブロック
5、5a、5b、5c、5d 油圧アクチュエータ
6 出力ロッド
7 基板
8 支柱
9 天板
10 固定台座
11 軸受装置
12 支承面
13 凹部
14 揺動台座
15 被支承面
16 ラック
17 ピニオン
18 軸
19 結合ブラケット
20 ロードセル
21 ラジアル荷重付与用アクチュエータ
22 枢軸
23 軸受ハウジング
24 転がり軸受
25 揺動側フランジ
26 固定側フランジ
27 モータ
28 アキシアル荷重付与用アクチュエータ
29 駆動モータ
30 継手
31 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対変位する少なくとも1対の部材を備えた軸受装置のうちの一方の部材を支持する支持手段と、他方の部材に荷重を加える荷重付与手段とを備えた荷重負荷装置に於いて、この支持手段を構成する揺動台座が、上記一方の部材を支持すると共にこの荷重付与手段から上記他方の部材を介してこの一方の部材に加えられる荷重を支承可能な状態で、姿勢を変更自在である事を特徴とする荷重負荷装置。
【請求項2】
支持手段が、一方の部材を支持する揺動台座を、軸受装置の回転中心を中心とする揺動方向に変位させる揺動支持構造を有する、請求項1に記載した荷重負荷装置。
【請求項3】
揺動支持構造が、軸受装置の回転中心を曲率中心とする部分円筒状凹面である支承面を有する固定台座と、この軸受装置の回転中心を曲率中心とする部分円筒状凸面で、上記支承面とこの軸受装置の回転中心を中心とする揺動変位自在に係合した被支承面を有し、この軸受装置の一方の部材を支持する揺動台座と、上記軸受装置の回転中心を中心としてこの揺動台座を揺動変位させる為の駆動機構とを備えたものである、請求項2に記載した荷重負荷装置。
【請求項4】
支承面と被支承面とが、直接又は滑り軸受若しくは複数本のニードルを介して揺動変位可能に係合しており、揺動台座の一部で軸受装置の回転中心を中心とする位置に部分円弧状のラックが固設されており、このラックと噛合したピニオンの回転駆動に基づき、上記揺動台座の姿勢を変更自在としている、請求項3に記載した荷重負荷装置。
【請求項5】
他方の部材の軸方向両端に対向する部分に、それぞれが伸縮自在な1対のラジアル荷重付与用アクチュエータを配置すると共に、これら両ラジアル荷重付与用アクチュエータの出力部を上記他方の部材の軸方向両端部に係合させる事によりこの他方の部材に、これら両ラジアル荷重付与用アクチュエータの伸縮方向に応じたラジアル荷重又はモーメントを付与自在とした、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載した荷重負荷装置。
【請求項6】
揺動台座が固定台座の上方に、揺動に基づく姿勢の変更を自在に載置されており、この揺動台座の姿勢を変更した状態でこの揺動台座を上記固定台座に対し、結合固定自在とした、請求項5に記載した荷重負荷装置。
【請求項7】
他方の部材と同心に配置したアキシアル荷重付与用アクチュエータの出力部をこの他方の部材の軸方向端部に係合させる事により、この他方の部材の軸方向端部にアキシアル荷重を付与自在とした、請求項1〜6のうちの何れか1項に記載した荷重負荷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−10643(P2007−10643A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12469(P2006−12469)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】