説明

荷電流体液滴を生成するための装具及び方法

本明細書において、極小又はナノ寸法の荷電液滴を生成する装具、及びそのような荷電流体液滴を生成するための方法が開示される。荷電可能な流体と流体連通する流体エミッタであって、基材を含み、この基材がそこに固定されるほぼ等しい長さの均等に間置されたフィラメント及び対となる電極を有する、流体エミッタを使用することによって、荷電可能な流体が到達すると、フィラメントの頂点が荷電され、フィラメント頂点と対となる電極との間の距離は、電界強度を形成するために十分であり、荷電流体が、フィラメントの頂点と対となる電極との間に形成される帯電界の力線に沿って、対となる電極の方向にフィラメントの頂点から移動する荷電流体液滴の流れに変換するようにし、本装具は、小さい流体液滴を生成するために極小開口部を有する、噴霧ノズルを使用する場合に存在することが知られている問題を回避し、それらの問題には、ノズルの詰まりが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において請求される装具は、極小又はナノ寸法の荷電流体液滴を生成する。これらの液滴は、特に家庭用及び商業利用のために設計される装具において用いられてもよく、給気の質を制御する。
【背景技術】
【0002】
極小荷電流体液滴は、コーティング表面を適用すること、及び空気中の埃を捕捉することを含む、多数の用途に有用であることが判明している。多様な実践適用で用いるためのナノ液滴の使用に対して多数の利点がある。例えば、大量のナノ液滴を生成することは、少量の流体から達成することができ、そこでのデバイスによる流体消費を減少させる。ナノ液滴は、芳香剤等のアジュバントの空気中への急速な蒸発及び効率的な送達をもたらす、大きい表面積も有する。ナノ液滴は、空気流の中に容易に同化され、空気流中に浮遊したままであるが、より大きい液滴は、空気循環ダクトの表面上に沈着する。これらの利益は、洗浄、芳香剤送達、鼻腔及び口腔への活性体の送達を含むが、これらに限定されない、様々な適用に対する有益性を有する。
【0003】
種々のサイズの極小流体液滴は、多数の代替物によって形成されてもよい。これらの小液滴を生成するための1つの既知の代替物は、湿式エミッタを備える装具であり、極細開口部を有するノズルを通して水が押し出され、極小水滴を生じる。米国特許第6,656,253号は、この噴霧システムとともに設計される、空気洗浄デバイスを開示する。デバイスは、空気流に導入される第1の極性を有する、半導体水滴の荷電噴霧を生じる。空気中の埃又は他の粒子は、噴霧液滴に静電的に引き付けられ、それによって保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,656,253号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そのようなシステムは、例えば、流体中の微細な非溶解沈殿物及び、又は異物がノズルを詰まらせると、ノズルの破損を経験することが分かっている。流体中に固体が存在しない場合であっても、より高い流体粘度が、ノズルを通る流量に十分に干渉し得るため、所望のサイズの液滴を形成できない。例えば、上記又は他の問題が存在する場合、複数個のノズルに対して一定の流圧を送達することは、当業者が直面する技術的課題である。
【0006】
極小荷電粒子の安定供給をもたらそうとする時に遭遇する、ノズル関連の詰まり問題を解決するための代替アプローチは、乾式イオン化の原理を使用することを含む。乾式イオン化は、荷電粒子を形成するために流体の必要性を排除する。乾式イオン化の原理に基づいて機能するデバイスは、先行技術においてよく知られており、通常、一方は高電圧であり、他方はいくらか低い電位である、2つの電極を備える。この電位の低下が電極間に適用され、光電圧電極の周囲にコロナ又はハロを形成する、電界を生成する。コロナ形成の時点で、2つの電極間の空間にある気体は分解し、より低い電位の電極に向かって直接移動する電極又はイオンを放出する。乾式イオン化空気清浄デバイスの場合、気体、本例では空気の分解は、オゾンの発生をもたらし、ここでは枚挙にいとまがないが、多数の理由から非常に望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、固体又は半固体のフィラメントに沿って移動する、導電又は半導電性の流体を使用する装具であり、高電位を流体に印加すると、流体は対となる電極に向かって電気的に引かれるため、第2又は対となる電極に対する流体の高電位が、小さい荷電流体液滴の流れを形成するために十分な電界強度を形成する。この時点で、流体の荷電又は偏光は十分な強度であり、流体が不安定な微細流体ジェットに押し込まれ、極小の荷電流体液滴の流れを形成する。これらの微細液滴は、微細流体ジェットから分離する時に荷電又は偏光され、帯電界力線に沿って、対となる電極に向かって移動する。対となる電極は、導電性又は半導電性、あるいは偏光されることができる(以下「偏光可能な」)材料を備え、流体液滴の標的表面として機能し得るか、又は機能し得ない。本装具は、ノズルの詰まりに関連する一般に知られている流体装具の問題を生じることなく、流体液滴を生成するための効率的かつ確実な方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】流体荷電システムの概略図。
【図2】流体供給システムの概略図。
【図3】空気清浄デバイスの側面図。
【図4】流体供給システムの概略図。
【図5】流体エミッタの側面図。
【図5a】基材の斜視図。
【図6】基材の断面図。
【図7】基材の等角図。
【図7a】基材の第1断面図。
【図7b】基材の第2断面図。
【図7c】基材の第3断面図。
【図7d】基材の第4断面図。
【図8】基材の斜視図。
【図9】眼の治療デバイスの概略図。
【図10】口腔治療デバイスの概略図。
【図11】硬表面治療デバイスの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、極小の荷電流体液滴を生成するための装具を提供する。これらの液滴は、それらの最適な適用に応じて、正又は負に荷電されてもよい。本装具は、流体供給、流体を荷電する手段、及び流体エミッタを備える。エミッタは、流体を移送し、微細な流体液滴の生成を容易にするフィラメントを有する、基材を更に備える。基材と流体連通すると、流体は、荷電手段がオン位置にある時に流体が荷電される、フィラメント上の地点に移動する。このとき、フィラメントの頂点にある流体は、最大又は最高電界強度の地点にある。頂点と最低電界強度の地点との間の距離と同時に、流体は、自発的に、フィラメントから放出される極小液滴に分裂し、標的表面を含む低電位の地点に向かって移動する。本発明の装具は、表面処置及び大気質制御技術を含む、特定の目的のための多数の実施形態において用いることができる。
【0010】
A.荷電可能な流体
本発明の荷電可能な流体は、帯電を取得及び維持することができ、流体が極小液滴の流れを形成することを可能にする、いずれかの流体又は流体の混合であり得る。流体は、指定条件下でそれを噴霧可能にすることができる、物理特性を有する。電界単独で噴霧可能になる流体の能力は、液滴直径、及び基材を通って最終的にフィラメントの頂点に至る流量も制御する、流体のある物理特性の関数である。流体の物理特性は、主に、そのフィラメントとの相溶性、及び必要に応じて基材との相溶性を保証するものである。そのような物理特性には、粘度、密度、電気固有抵抗、表面張力、誘電定数、引火点、及び沸点又は蒸気圧が含まれ得るが、これらに限定されない。流体を移送する基材の層(以下、「移送層」と称される)から移動する流体と、フィラメントの頂点との間の流体のかん流測定値(又は要望により流量)は、流体が対となる電極に向かって電気的に引き込まれるにつれて、フィラメントの頂点において極細の荷電流体液滴の持続可能な流れを形成するために十分でなければならず、測定値は、毎時少なくとも流体約1ナノmL3である。
【0011】
荷電を取得及び維持する流体の能力は、流体のいくつかの特性に依存する。流体の一次特性は、流体の伝導度である。例えば、流体が、より低い伝導度を有することによって絶縁し、その固有抵抗が約1000MΩを超える場合、流体が荷電を取得するために必要な時間は長くなり、流体エミッタとともに使用される時、十分に機能しない可能性がある。反対に、流体が過度に導電性である場合、流体の荷電は迅速に消散し、流体エミッタに印加されると、それ自体を液滴に分裂しない。したがって、本発明の帯電可能な流体は、Cole Parmer,Inc.(イリノイ州バーノンヒルズ)から入手可能なWTW(登録商標)InoLab Cond 7300ベンチトップ伝導度計を含む、多数の商業用伝導度計によって測定されるように、約1kΩ/cm〜約1000MΩ/cm、あるいは約100kΩ/cm〜約500MΩ/cmの固有抵抗を有するはずである。一般的に使用される標準電池は、1cmの幅を有し、したがって、空気と均衡している極めて純粋な水は、メガオームMΩ/cmとして知られる、約106ohm/cmの抵抗又は1S/cmの伝導度を有する。
【0012】
小液滴への流体の分裂を制御する、流体の二次物理特性は、その粘度である。流体は、いずれも毛管運動によって流体の源から高電界強度が流体の極小液滴への分裂を誘導する、本明細書において、フィラメントの「頂点」と称される、フィラメント上の地点にそれが移動することを可能にする粘度を有しなければならない。図1は、フィラメント101まで伸長する荷電可能な流体の図を提供し、流体がフィラメントの頂点101aに移動し、頂点での荷電流体と対となる電極108との間の電界差異の存在は、流体に所望の小流体液滴102を形成させる。したがって、流体の粘度は、流体をフィラメントの頂点に送達するための電気機械的手段の非存在下で考慮されなければならない。流体を移動させるためのそのような手段が使用される場合であっても、高粘度の流体の凝集力は、流体を所望の小荷電流体液滴に分裂することを妨げる傾向があり、結果として、「電気スピニング」とも称される合成押出繊維を作製するプロセスにおいて通常行われるように、及びPhillipsらの米国特許第6,251,322号において開示されるとおり、毛管チャネル繊維を作製する領域において知られているように、流体を「ストリング化する」か、又はストリングに引き延ばすことになる。本発明の目的で、流体の粘度は、製造者の指示に従って、Brookfield RVDV−IP粘度計によって測定されるように、0.001m2/s(1000センチストーク)未満、好ましくは、0.0005m2/s(500センチストーク)未満である必要がある。
【0013】
上述される荷電可能な流体の物理パラメーターの中で、本発明において使用される流体は、これらの荷電流体液滴の形態である流体に起因して最適化されるという利益を提供しなければならない。例えば、脱イオン水は、空気供給あるいは熱帯植物又はケラチン性動物又はヒト組織等の他の水を好む物体を加湿することが所望される場合、荷電可能な流体として使用することができる。液滴の形成を妨げないことを前提に、流体は、所望の利益を促進又は向上させる他の材料で強化され得る。
【0014】
0.001m2/s(1000センチストローク)未満の粘度を有する請求項1の荷電可能な流体は、水系流体及び油系流体からなる群から選択され、その選択は、適量のそれぞれの流体をフィラメントの頂点に移送して噴霧を形成する、流体エミッタを備える材料に対する流体の相溶性に基づく。例えば、油系流体は、例えば、未処理のポリプロピレンポリマー不織布又は炭素コーティングされた多孔質媒体等の疎水性移送材料に対する分子引力を有する。これら2つの材料は、「相溶性」がある。したがって、荷電可能な流体は、油系であり、水と不混和性であって、水に溶解しない流体から選択される。
【0015】
水系流体は、セルロース、ガラス、又は綿等の親水性の材料を湿らせる。この材料特性の一致は、流体の表面張力及び多孔質媒体の接触角に関して、必要な流体移送に不可欠である。水系流体がいくつかの疎水性構造を通って湿潤及び移動する一方で、油は、多数の親水性構造を通って移動し、噴霧の先端又はフィラメントの頂点において得られる流体量は、適切な材料と流体との「相溶性」がなく、不適切となる。したがって、荷電可能な流体は、水系の流体であり、水と混和性であり、かつ、水に溶解する流体から選択される。本発明において有用な流体は、水溶液から米国特許第6,607,586号、同第6,656,253号、及び同第6,607,579号に記載されるもの等の疎水性、不揮発性の油であるものに及ぶ。本発明の好適な流体には、ニュートン流体及び非ニュートン流体が含まれる。極性流体である水は、単独又は水溶液、分散液、及びエマルションの形態のいずれかで好適な候補であり、塩、特に等張塩溶液、抗菌剤を含む生体活性材料、漂白剤、触媒、アミン、及びアルデヒド反応種からなる群から選択される材料、例えば、米国特許出願第2005−0124512A1号及び同第2008−0249490A1号に開示されるものを有する。またこれらの材料には、芳香原材料、製剤化芳香剤、界面活性剤、ワックス、油、ポリマー、生物学的に利用可能な市販の処方成分が含まれ、鎮咳薬、鼻炎薬、鎮痛薬、ビタミン類、及び他の局所医薬化合物及び薬剤、着色材料、カラー化粧品、ケラチン性組織の洗浄、消毒、剥離、調製、スタイリング、調色、及び湿潤剤を含む。
【0016】
非水性製剤である、50%未満の水を有する本明細書において定義される溶液も、本発明において流体として有用であり、エマルション及び分散液を含む種々の形態であってもよい。そのような溶液には、噴霧可能なワックス、芳香剤、スタイリングポリマー、指爪コーティング等が含まれるが、これらに限定されない。シリコーン系水エマルションは、家庭用具表面、織物、自動車の内装、コンバーティブルトップ、皮膚、及び毛髪に保護コーティング、及び/又は高艶若しくは光沢コーティングを適用するために有用である。本明細書には、接着剤放出コーティング並びに整髪接着ポリマーを提供するように、低坪量のポリマーフィルムも含まれる。そのような製剤の水対油の比は、流体を液滴に変換するために必要とされる電圧、高電圧活性化学反応速度、空中粒子分散パターン特性、及び液滴直径に影響を及ぼし得る。
【0017】
B.流体荷電手段
流体は、直接配線又はバッテリーを含む、いずれかの便宜的な電源によって荷電されてもよい。これらの電源から得られる電圧が、それぞれProcter & Gambleに譲渡される、米国特許第6,656,253号、同第6,607,586号、同第6,607,579号、及び同第7,360,724号において開示されるように、静電噴霧プロセスに好適な高電圧に変換されなければならないことは、当業者に明らかとなるであろう。荷電手段は、入力電圧を静電噴霧に所望される電圧に変換する、一般に入手可能な変換器を通して達成され得る。例えば、EMCO(登録商標)High Voltage Corporation(カリフォルニア州サタークリーク)は、本発明に適した多様な高電圧電源を提供する。
【0018】
図2は、本発明において有用な1つの荷電システムを示す。電源203は、エミッタ基材205をリザーバ206からの流体で飽和させる流体を荷電するために十分に近接して、プレート204の形態の荷電電極に接続される直流電源である。図2において、近接は、荷電電極204及びエミッタ基材205の隣接表面の直接接触として定義される。装具実施例1は、空気を精製するためのデバイスであり、図3として示され、荷電電極304は、流体リザーバ306に取り付けられ、流体と直接接触する。図9及び図10は、同様に、荷電電極が、リザーバ内の流体と直接接触していることを示す。荷電手段が流体リザーバ1106内の電極並びに基材1105の直後及びそれに隣接する銅プレート1104の両方に接続される、別の代替例が図11に示される。流体が供給され、リザーバが自由に流れる水道406の形態である、別の実施形態が図4に示される。荷電電極404は、流体フロー内に配置される。本実施形態において、流体に対する荷電は、荷電を隔離するように機能する、水中の絶縁制限器407から下流で起こり、それによって、電気が水道施設等の流体源に戻ることを回避する。
【0019】
流体が高電圧電極と接触している必要があることは、当業者に明らかとなるであろう。高電圧は、一般に500ボルトを超えると考えられる。高電圧電極は、一般に、流体と相溶する任意の好適な材料を含み、グラファイト、導電樹脂、及び炭素充填導電樹脂、並びにそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。電極の配置は、図2と同様に、基材/フィラメントに極めて近接し得るか、又は図4と同様に、基材/フィラメントから更に離れてもよい。しかし、一般に、電極を基材/フィラメントと密接に関連付ける必要はなく、そのような配置は、流体からの抵抗損失に起因する電力の損失を減少させる。
【0020】
C.流体エミッタ
図5に示されるような流体エミッタは、基材505と、そこに固定されるウィッキングフィラメント501の均等に間置された均一の配列と、を備える。「固定される」とは、フィラメントが基材に係留され、取付手段とは正反対に延びることを意味する。フィラメントを係留することは、取り付けるためのいずれかの手段を含むことができ、フィラメントが、実際に基材から形成されるか、又は機織、音波溶接、又は溶融及び接着を含むが、これらに限定されない手段によって固定されることを含むが、これに限定されない。図6は、フィラメント601が基材605を通して機織される、実施形態を示す。糸601は、均一な長さの遊離末端フィラメントを基材605の単一側面上に形成するように切断されてもよい。
【0021】
基材移送層及びフィラメントは、フィラメント頂点に対する毛管現象によって、流体を移送するそれらの能力に基づいて選択される。図1において、頂点101aは、荷電流体が、最低電位の領域又は地面に対して、その最高電位である、フィラメント上の地点として定義される。頂点において、荷電流体は、最低電位の領域108又は地面の存在下で極小液滴102の流れを形成する。このプロセスは、静電噴霧ないしは「E噴霧」として、当該技術分野において既知である。荷電流体液滴を形成するために十分な電界強度を最も効率的に形成するために、フィラメント頂点が丸いか、又は湾曲していることは、十分に理解された原理である。
【0022】
基材の構成は、それがフィラメントの頂点への流体の毛管運動を妨げないようでなければならない。基材の移送層を含む材料を選択することは、一般に、荷電可能な流体との材料の「相溶性」に基づく。「相溶性」とは、材料が成功裏に流体を移送することを意味する。更に、基材は、流体の所望される特性を維持するような方法で構成されなければならない。例えば、流体が揮発性であり、かつ、加速蒸発にさらされる場合、基材は、依然として流体を移送することができる一方で、流体の蒸発に対する抵抗が存在するように構成されなければならない。これは、通常、図6に示されるように、複数の層を使用して基材を構成することによって行われる。移送層610は、毛管現象によって流体をそれらの最終目的地であるフィラメントの頂点に移動させる一方で、第2の層609又はトップシートは、流体を絶縁する。トップシートは、流体を実際に移送しないが、その移送を抑止してはならず、蒸発損失のみでなく、その得られる荷電も最小化するように、移送を維持しなければならない。
【0023】
図5aにおける図示の目的で、基材505は、図5に示されるように、流体リザーバ506内の1つの末端部505aにおいて流体連通するように設計される、矩形のシートである。図5aは、流体リザーバ506内に存在する、基材末端部の1つの末端部505aを示す。反対の末端部である505bは、フィラメント501の配列を含む。図5を参照して、流体がリザーバ506内に入れられると、流体は、基材505の流体移送層に沿って移動する。トップシートは、フィラメントに対して移動するにつれて、流体蒸発及び流体荷電の放出を最小化するように、流体移送層の上を覆う。フィラメント501に到達すると、流体は、フィラメントを形成する相溶性材料の毛管現象を介してフィラメントに取り込まれ、流体は、最終的にフィラメントの頂点に到達する。図7は、トップシート709が、移送層710を通して、又はフィラメント701に沿って毛管現象によって流体の移送を阻害しないような方法で、フィラメント701を、トップシート709を通して押し出す様子を示す。本実施形態は、当業者によって多層フィルムとして見なされる。
【0024】
上記基材用のトップシートは、実質上いずれかのウェブ材料であり得、唯一の要件は、以下に記載されるプロセスによって、それがラミネート中に形成されるために十分な一体性を有すること、及び十分に低い伸長特性を有することであり、伸長の失敗に起因する断裂によって、トップシートを破裂させるように、トップシートの方向に平面の外に押し出される、基材の移送層から繊維のひずみを経験する時に、移送層の部分が、トップシートを通して延び、トップシートの第1の側面にフィラメントを形成できるようにする。一実施形態において、トップシートは、ポリマーフィルムである。トップシートは、織布ウェブ、不織布ウェブ、ポリマーフィルム、有孔ポリマーフィルム、紙ウェブ(例えば、組織紙)、発泡体(例えば、ウレタン発泡シート)等でもあり得る。フィラメントは、ある意味では、トップシート「を通して穿孔」され、摩擦係合又はこれらの開口部とともに接着剤を使用する等の他の係合手段によって、適切な位置に「係止」され得るが、フィラメントに沿った荷電可能な流体の移送は、そのような摩擦係合によって妨害され得ない。トップシートを製造するための方法は、当該技術分野において周知であり、米国特許第7,410,683号において開示される。
【0025】
あるいは、移送層は、流体を移送するように、片側に偏倚を有する単一層を形成するような方法で処理することができるが、反対側は、それが反対の未処理側に沿って移動する流体の特性を維持するように処理される。これは、上述されるトップシートを排除する。そのような処理は、基材が流体蒸発の損失に耐えるとともに、流体による荷電損失に絶縁又は固有抵抗するようにするものを含む。基材に適用される表面処理は、バリアトップシートを排除するように、ワックス等の材料を含んでもよい。
【0026】
本発明で使用される「フィラメント」という用語は、毛管現象によって流体を移送することができる細長い繊維/微細繊維、又は繊維/微細繊維の群を意味する。前述される基材並びにフィラメントの両方は、同一材料又はそれらの物理及び/又は化学特性に関して、著しく異なる材料を含むことができる。例えば、図7は、フィラメント701が基材の移送層710から一体形成される例を示す。したがって、一体形成されるフィラメント及び基材移送層は、同一材料である。
【0027】
流体が水性系である場合、フィラメント及び基材移送層材料は、親水性である水系流体の誘引、可溶性材料の群から選択される。これらの材料には、セルロース系物質、セルロース誘導ポリマーから選択されるものが含まれ、再生セルロース、紙、綿、レーヨン、及びそれらの組み合わせを含む。流体が油系である場合、材料は、油可溶性、撥水性の疎水性/親油性材料の群から選択される。これらの材料は、一般に、当該技術分野において周知の合成繊維を含む。そのような合成繊維には、2008年8月12日に発行された米国特許第7,410,983号、及び2009年12月21日に発行された米国特許出願第2009/0289343号において開示されるものが含まれる。
【0028】
合成繊維は、一般に、ポリマー製である。これらのポリマーは、フィラメントを作製するために当該技術分野において周知であり、ホモポリマー及び複数個の異なるモノマーから作製されるコポリマーを含む。フィラメントは、単一のポリマー種又はポリマーの混合から作製されてもよい。フィラメントは、それらの意図される目的、及び繊維ウェブの意図される目的に対して、安全かつ効果的ないずれかの一般的な添加剤を更に含んでもよく、界面活性剤を含むが、これに限定されない。フィラメントを含む特定のポリマーには、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、及びポリ4−メチルペンテン(PMP)を含むポリオレフィン、ナイロン(登録商標)、再生セルロースを含むセルロース由来ポリマー、紙、綿レーヨンを含むポリアミド、ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステルからなる群から選択されるもの、並びに前述のポリマーすべての組み合わせ及び/又は混合が含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
いずれかの場合において、流体エミッタフィラメント及び基材移送層は、使用される流体と相溶しなければならない。好適な材料を選択することに関連するガイドラインは、材料の表面エネルギーを流体の表面張力に一致させることによって、材料を選択することである。当業者であれば、表面接触角が、流体の表面張力と材料の表面エネルギーとの間の一致を決定する便利な方法を提供することを認識するであろう。流体材料の適切性は、静的接触角が30°未満、好ましくは20°未満、より好ましくは15°未満である場合に示される。静的接触角は、通常、Kruss USA(米国ペンシルバニア州ナザレス)から入手可能なKruss DSA 100システムを使用して、便宜的に決定することができる。
【0030】
図7は、フィラメント配列を示す。図7a〜図7dは、フィラメントが、図7aの単一ストランド又は繊維701a、図7bの独立した繊維の群又は束701b、図7cの組織化された繊維の群701c、並びにループ状の単一及び/又は複数の繊維701dで構成され得るという事実を示す。フィラメントは、通常、1〜約50、あるいは約3〜約30、あるいは約5〜約20個の個別のストランド又は繊維を含む。
【0031】
図7bは、フィラメントの中の電気アーチング及び/又は電界中和等の問題を回避するために、相互から距離「D」だけ離れて均等に間置されることを示す。この距離Dは、約1.0mm〜約100.0mm、あるいは約1.0mm〜約35.0mm、あるいは約3.0mm〜約15.0mm、あるいは最後に約4.0mm〜約5.0mmの値を有する。図7aは、フィラメント701aが、基板705の平坦な表面又は面からフィラメントの頂点701aまでを測定した長さ「L」を有することを示す。Lは、通常、約0.50mm〜約10.00mmであるが、最適には、長さLは、選択される流体及び電界強度の程度に依存する。
【0032】
フィラメント長(L)は、十分な電界強度をもたらすために、約1〜約10mm、あるいは約1〜約5mm、あるいは約2〜約4mmである必要がある。フィラメント配列が存在する場合、各フィラメントの頂点は、ほぼ同一の長さ(L)であることが重要である。これを保証する一方法は、自由末端を有するフィラメントを形成して取り付ける時に、自由末端部を均一のフィラメント長に切り取ることである。
【0033】
フィラメントは、毛管現象によって、フィラメントに沿って距離(L)だけ荷電流体を移動させて頂点に到達させるが、荷電されると流体は電界に曝露され、約1.0nm〜約5000nm、あるいは約5.00nm〜約500.00nm、またあるいは約10.00nm〜約100.00nmの粒子液滴直径を有する、帯電荷電流体を生成する。移送層は、十分な流体が静電噴霧に使用できるように、流体エミッタフィラメントを飽和するために十分な量の毛管現象を呈しなければならない。同様に、十分な毛管現象は、静電噴霧を維持するように、流体源からフィラメントの頂点に流体を引き込む必要がある。一旦毛管力が満たされると、電力が印加され、地表面に向かって流体を誘引する電界による誘引力に起因して、補足の流体移送を達成する。地表面に対するこの補足流体誘引は、毛管現象と区別することが難しい。
【0034】
基材の単位面積当たりのフィラメントの数、すなわち、フィラメントの面密度は、単位面積又は平方センチメートル(cm2)当たり1フィラメントから10フィラメント/cm2まで異なり得る。最終用途に応じて、少なくとも1、又は少なくとも10フィラメント/cm2が存在し得る。一般的に、面密度は、基材の全領域に渡って均一である必要はないが、フィラメントは、線、ストリップ、バンド、円等のような、既定の形状を有する領域内のような、基材のある領域内にのみに存在し得る。
【0035】
当該技術分野において既知である多様な方法は、フィラメントを形成するために利用されてもよい。その点において、フィラメントが荷電流体を移送する要件は、フィラメントとして選択される材料を最適に決定する。フィラメントが基材の移送層と一体形成される場合、フィラメントを生成する有効な手段は、基材をニードルパンチングすることによる。ニードルパンチングは、ニードルを基材の中及びそこを通して押すことを含み、基材の個別の局在部分において、基材のZ方向の平面又は水平面外に移送層を形成する個々の繊維又は繊維の群を付勢して、フィラメントを形成する。Z面外に付勢することは、繊維変位のためであり得、すなわち繊維を他の繊維に対して移動させ、いわば面外に「引っ張られる」ことができる。しばしば、しかしながら、大部分の織布及び不織布基材の場合、面外の付勢は、フィラメントを形成するように、少なくとも部分的に塑性伸長され、かつ、永久に変形又は破断されたフィラメントの繊維に起因する。それらの通常平面外に繊維を付勢することによって、変形繊維は、遊離末端繊維、ループ状繊維、流体移送材料の成形突出部、刺繍入りのタフト、及び有孔のポリマーフィルムの形態を取り得る。フィラメントの所望の高さに依存して、不織布基材の構成繊維は、繊維9を破壊してフィラメントを形成するための伸長を呈し得る。これらのフィラメントは、塑性変形及び伸長された基材の繊維であることができ、したがって、基材と一体化している。本明細書で使用するとき、「一体化」は、例えば、従来のカーペット作製において一般的に行われるように、フィラメントを形成するために別個の基材に導入されるか、又は追加される繊維とは区別されるものである。
【0036】
自由末端又はループ状であるかにかかわらず、フィラメントは、それらが個別の線状配向及び縦軸を有するように実質的に配列される。フィラメントは、縦軸に一般的に直交する横軸も有する。当然のことながら、破断するための伸長は、簡素な引張試験によって、例えば、インストロン(登録商標)引張試験装置を使用することによって決定することができる。好適な織布及び不織布基材が、十分な塑性変形及び引張伸びを経験することができる繊維を含む必要があるか、又は十分な繊維移動が可能であり、自由末端又はループ状の繊維が形成されるようにする。しかしながら、基材の第一表面の面外に付勢された、あるパーセンテージの繊維は、ループを形成しないが、代わりに破断してルースな末端部を形成することが認識される。自由繊維末端部は、切断短繊維からなる又は切断短繊維を含む不織布ウェブからフィラメントを形成する結果である。そのような場合、ある数の短繊維末端部は、ウェブ内の短繊維の数、短繊維切断長さ、及びフィラメントの高さ等により、フィラメント内に突き出ることもある。
【0037】
これらの繊維には、円形及び非円形繊維が含まれる。用語「非円形繊維」は、非円形断面を有する繊維を説明し、「成形繊維」及び「毛管チャネル繊維」を含む。フィラメントの物理構造は、あらゆる形態を取ることができるが、水系又は油系流体を送達することができる構造を維持しなければならない。繊維は、固体又は中空であることができ、3葉(tri-lobal)、デルタ形状であることができ、好ましくはこれらの外側表面上に毛管チャネルを有する繊維である。毛管チャネルは、「U字形」、「H字形」、「C字形」、及び「V字形」などの様々な断面形状のものであり得る。
【0038】
D.対となる電極
基材及び/又はフィラメントは、それらが頂点に対する毛管現象によって、流体を移送するように選択される。一旦流体が頂点に到達して荷電されると、荷電された流体が、システムの最低電位領域に対し、その最高電位に到達する場合、フィラメントに沿って、フィラメントの頂点の付近又は頂点に点が存在する。本明細書に開示されるシステムにおいて、最低電位の地点は、対となる電極である。最高電位の地点にある場合、対となる電極の存在が、一般に電気流体力学的噴霧と称されるか、又は当該技術分野において一般に「E噴霧」として知られるプロセスによって、流体が極小液滴の流れを形成するために十分な電界強度を確立する。図1は、荷電流体が、フィラメント101aの頂点において、対となる電極108の存在下で荷電液滴102の流れを形成し、所望の流体液滴を作製する本現象を示す。
【0039】
対となる電極は、当業者には「グラウンド」としても知られ、あらゆる有生又は無生物体の形態を取ってもよい。装具実施例2の図9を説明する手段として、ヒトの眼球は、システムにおける標的又は対となる電極である。図10は、同様に、眼球ではなく、装具実施例3の喉内の湿潤組織が、対となる電極として作用し、送達される荷電液滴の標的であるこの点について示す。
【0040】
電界強度は、フィラメントの頂点と対となる電極との間の距離を固定して電位又は電圧を増大させるか、あるいは電圧を固定して、フィラメントの頂点と対となる電極との間の距離を減少させるという2つの方法のうちの1つで増大される。アプローチにかかわらず、フィラメントは基材から突出し、対となる電極から十分に離間して、流体が「e噴霧」を形成するために十分な適切な電界強度を形成する。当業者であれば、e噴霧を誘発するために必要な電界は、前述されるような流体の特性に基づいて異なることを認識するであろう。極小液滴の噴霧を開始するために必要な最小電界強度は、フィラメントが約0.5mmよりも大きい長さLである場合に生成される。
【0041】
フィラメントからの極小流体液滴は、その表面張力及びフィラメントの形状によって測定されるように、流体の疎水性を含むいくつかの要素に依存する。極小液滴の噴霧を開始するために必要なフィラメント頂点における電界強度は、一般に、流体の疎水性が増加するにつれて増大する。噴霧を開始するために必要な電界強度は、一般に、フィラメント先端(流体を含む)の直径が減少するにつれて低下する。一般に、フィラメントの頂点における荷電流体の電圧として、フィラメントの頂点から低電位表面又はグラウンドまでの最短直線距離(グラウンドに対して頂点の約ゼロ角度における)で除される、本明細書に定義される閾値電界強度は、約5×104V/mである。電界強度の上限は、空気の破壊電圧によって確立される。本電圧は、概して、大気の電光の場合に発生するもののように、スパークをもたらす空気分子をイオン化するために必要な電圧として、当業者に理解される。本現象は、電極表面の形状及び空気の湿度を含むが、これらに限定されない要素にある程度依存するが、空気の破断は、一般に、約3×106V/mである。
【0042】
代替実施形態において、流体を荷電する高電圧電極は、エミッタ基材の1つの層を形成する。高電圧電極とは反対側の第2層は、高及び低電圧電極からの放出を防止するように、絶縁要素によって分離される、対となる電極又は最低電位を形成する。そのような絶縁は、基材自体又は基材に固定される層であることができる。別の実施形態において、高電圧電極は、フィラメント配列において、基材の直後又は後方にある。本実施形態において、最低電位の領域は、フィラメント頂点の真上の表面である。基材は、荷電流体が、基材中に放出又は接地することを回避するために十分な間隙を有する。
【0043】
別の実施形態において、追加の電極が、加速電極として作用するように追加される。本実施形態において、流体荷電電極は、上述されるように、流体中又はフィラメントの直後に位置付けることができる。低電位電極又は対イオンは、フィラメントの反対に接地プレートの形態で存在する。高電圧フィラメント頂点と対となる電極との間の電圧で、フィラメントと低電位電極との間に位置付けられる、第3の電極が存在する。本電極は、頂点と対となる電極との間のいずれかの位置に位置付けられてもよいが、高電位フィラメントに近い場合に最も有益である。フィラメント頂点と加速電極との間の距離又は高さは、約1mm〜約20mm、あるいは約2mm〜約10mmである。加速電極の電位は、取得及びe噴霧するように、しかし空気の破断電圧より低くなるように(3×106V/m)選択される必要がある。
【0044】
別の実施形態において、高電圧電極は、エミッタ要素の1つの層を形成し、第2のエミッタ要素は、2つの電極間の放出を防止するために十分な絶縁要素によって分離される、2つの要素を有する低電位電極を形成する。
【実施例】
【0045】
エミッタ基材の実施例1
エミッタは、アルミ箔基層、100gm/m2紙を含む第2の層、及び1mmポリエチレンフィルムを含む第3の層を含む多層シートを形成することによって準備される。そのように形成される複合体構造は、Groz−Beckertから商用フエルトニードルを使用してニードルパンチされる(ニードル仕様は、フィラメントを形成する場合、No.15×17×25×38×63ニードルである)。フィラメントは、本複合体構造のポリエチレン面又はトップシートの上約2mmに突き出る。
【0046】
エミッタ基材の実施例2
エミッタは、銅箔基層、平方センチの織布綿布地当たり93スレッド(1平方インチの織布綿布地当たり600スレッド)を含む第2の層、及び2mmポリエチレンフィルムを含む第3の層を含む多層シートを形成することによって準備される。そのように形成される複合体構造は、Groz−Beckertからの商用グレードのフエルトニードルを使用してニードルパンチされる(ニードル仕様は、フィラメントを形成する場合、No.15×17×25×38×9ニードルである)。フィラメントは、複合体構造のポリエチレン面又はトップシートの上約2mmに突き出る。
【0047】
エミッタ基材の実施例3
エミッタは、ニッケル箔基層、約1〜5mmの10デニール繊維で構成される、100g/m2ポリエチレン短繊維の不織布を含む第2の層、及び2mmポリエチレンフィルムを含む第3の層を含む多層シートを形成することによって準備される。そのように形成される複合体構造は、Groz−Beckertからの商用グレードのフエルトニードルを使用してニードルパンチされ(ニードル仕様は、No.15×17×25×38×9ニードルである)、複合体構造のポリエチレン面又はトップシートの上に約2mm突き出すフィラメント要素を形成する。
【0048】
エミッタ基材の実施例4
米国特許第3,929,135号に記載されるようなポリエチレンフィルムは、図8に示されるように、約5.0mmだけそれらの中心から離れたテーパ毛管を有する、0.20mm円錐形状の開口部の配列を形成するヒドロ生成によって作製される。
【0049】
約2〜約5%のセルロース繊維及び水を含むスラリーを、スクリーンのくぼみ側の上に押し出した後、ポンプは、残留水が約25%未満になるまでパルプを脱水するために十分な紙スラリーのスクリーンの反対側から真空を引く。通常、オーブンである乾燥器は、この複合体パルプ系構造を乾燥する。
【0050】
装具の実施例1:空気清浄デバイス
図3は、本発明の装具を利用し、エミッタ基材の実施例1を基材305として用いるデバイスを示す。したがって、空気清浄装具300は、内部に入力空気の流れが配向される入口311であって、前記入力空気は複数個の粒子を含有する、入口と、出口312であって、そこから外に出力空気の流れが配向される、出口と、少なくとも1つの流体エミッタ313であって、そこを通って流体が複数個の荷電液滴に変換される、流体エミッタとを備え、リザーバ306中の流体が荷電されると、電極304が電源303によって励起される。エミッタ313と接地プレート314との間に形成される、必要な電界強度の存在下で、荷電可能な流体液滴が形成され、前記入力空気と混合される。液滴は、給気中の複数個の粒子を誘引し、それによって、第1の領域315内に複数個の荷電複合体を形成し、前記複合体は、前記入力空気311から除去され、偏向要素316は、第3の極性を備え、かつ、第2の領域317に配置され、前記第2の領域317は、前記第1の領域311と空気流連通し、そこから下流にあり、集合表面318は、第4の極性を備え、かつ、前記第2の領域317に配置され、前記偏向要素316は、前記複数個の荷電複合体の最終部分を、前記集合表面318の上に偏向させて、前記出力空気中の粒子の減少をもたらす。
【0051】
装具の実施例2:眼治療デバイス
図9に示される本装具は、エミッタ基材の実施例1を用いる。基材905に接着しているのは、荷電電極として作用する、アルミ箔裏張りシート904であり、高電圧電源903を使用することによって、4kVの高電圧電力を箔裏張りシートに供給する。ユーザー920は、リザーバ906から等張液の小荷電液滴の噴霧を生成するために必要な電界強度を形成するために必須の接地を確立するように、自身の眼921をデバイスの近位内に配置する。これらの液滴は、眼921の表面に引き込まれ、一般に「疲れ眼」と称される状態を止めることを含む、所望の利点のために眼の治療を提供する。
【0052】
装具の実施例3:口腔治療デバイス
図10に示される本装具は、エミッタ基材の実施例2を用いる。基材1005に接着しているのは銅箔基層1004であり、流体の荷電の枯渇を最小化する。荷電電極は、流体リザーバ1006内に位置付けられ、高電圧電源1003を使用して、4kVの高電圧電力を流体に供給する。第3の層1009は、荷電及び蒸発損失から流体を絶縁する。ユーザー1020は、リザーバ1006から等張液の小荷電液滴の噴霧を生成するために必要な電界強度を形成するために必須の接地を確立するように、デバイスの近位内で口1021を開く。それらの液滴は、口1021及び喉1022の内側の組織の表面に引き込まれ、所望の利益のために、口及び喉の内側に治療を提供し、咽頭炎製品において商業的に見られる局部鎮痛薬を含む、吸収可能な薬剤を経口投与することを含む。
【0053】
装具の実施例4:硬表面洗浄デバイス
図11に示される本装具は、エミッタ基材の実施例3を用いる。基材1105の後部には、銅プレート1104があり、流体リザーバ1106内の第2の電極は、依然としてそこで流体と流体連通している。これらの電極と一緒に、高電圧電源1103を使用して、約4kVの高電圧電力を流体に供給する。複数個のアーム1123は、直接接触表面1120に対する。これらのアーム1123は、等しい長さであり、それらの近位末端部において、ローラー1124で終結する。ローラー1124内又は付近に位置する近位スイッチは、デバイスを回転させると回路を開き、電力が電源1103から銅プレート1104に流れることを可能にする。アーム1123は、そのような長さであるように設計され、表面1120の上に蒸着させるために、硬表面洗浄及び/又は研磨製剤を含有する、流体の荷電流体液滴を生成するために十分な電界強度を確立する。
【0054】
本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく制限されるものとして理解すべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図している。
【0055】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願書類を含め、本明細書において引用されるすべての文献は、明示的に除外ないしは制限されない限り、それら全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。更に、本書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれた文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいて、本書においてその用語に与えられた定義又は意味が適用されるものとする。
【0056】
本発明の特定の実施形態が例示され、記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の「特許請求の範囲」で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極小荷電流体液滴を生成するための装具であって、
a.荷電可能な流体と、
b.流体充電器であって、好ましくは、金属、炭素、導電樹脂、導電樹脂を含有する炭素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されて前記荷電可能な流体と相溶する材料を含み、前記荷電可能な流体と流体連通する高電圧電極である、流体充電器と、
c.前記荷電可能な流体と流体連通する流体エミッタであって、基材を含み、この基材がそこに固定されるほぼ等しい長さの均等に間置されたフィラメントを有する、流体エミッタと、
d.対となる電極と、を備え、
前記荷電可能な流体が到達すると、前記フィラメントの頂点が荷電され、前記フィラメント頂点と前記対となる電極との間の距離は、電界強度を形成するために十分であり、前記荷電流体が、前記フィラメントの頂点と前記対となる電極との間に形成される帯電界の力線に沿って、前記対となる電極の方向に前記フィラメントの頂点から移動する、極細の荷電流体液滴の流れに自発的に変換するようにする、装具。
【請求項2】
あるいは、水と不混和性であり、かつ、水に溶解しない流体から選択される油系流体、あるいは水と混和性であり、かつ、水に溶解する流体から選択される水系流体、0.001m2/s(1000センチストーク)未満の粘度、好ましくは、kΩ/cm〜1000MΩ/cm、あるいは100kΩ/cm〜500MΩ/cmの固有抵抗を有する荷電可能な流体であって、該流体は、内部に前記流体エミッタを含む前記材料と相溶する水系流体又は油系流体からなる群から選択され、前記流体が前記対となる電極に向かって電気的に引き込まれるにつれて、前記フィラメントの頂点において極細の荷電流体液滴の持続可能な流れを形成するために十分なレベルの、流体のかん流を、前記流体エミッタ基材の層から移動する前記流体と前記フィラメント頂点との間に形成する、請求項1に記載の荷電可能な流体。
【請求項3】
前記基材のX−Y平面に垂直方向に前記基材から移動する前記材料から形成される請求項1及び2に記載のフィラメントであって、好ましくは、自由末端繊維、ループ状繊維、流体移送材料の成形突出部、刺繍入りタフト、有孔ポリマーフィルム、縫合タフト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、フィラメント。
【請求項4】
前記フィラメントが、平均1〜50の別個の繊維、好ましくは平均5〜20の別個の繊維を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体エミッタ。
【請求項5】
前記フィラメントが、前記対となる電極の存在下で荷電流体液滴を形成する長さ(L)であり、前記液滴が、1.0nm〜5000nm、好ましくは5.0nm〜500nm、より好ましくは10.0nm〜50.0nmの平均直径を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の流体エミッタ。
【請求項6】
前記基材の表面において、フィラメント平均長さ(L)、好ましくは平均長さ(L)の1.5倍、より好ましくは平均長さ(L)の2倍に等しいフィラメント間の距離(D)を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の流体エミッタ。
【請求項7】
トップシートを通して、前記対となる電極の方向に突き出すフィラメント配列を有するトップシートを更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基材。
【請求項8】
前記荷電可能な流体は、流体リザーバ内に保持され、かつ、前記エミッタの基材を飽和させる前記流体を荷電するために十分近接して、好ましくは、前記荷電電極と前記エミッタ基材との隣接表面間で直接接触して、前記流体充電器と流体連通し、500ボルト/cm(V/cm)〜5000V/cm、好ましくは1000V/cm〜3000V/cmの範囲の電界強度を生成するために、前記荷電を前記荷電可能な流体に移送することができる、電界強度の電圧勾配を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装具。
【請求項9】
複数個の電極を含み、1つは、依然として前記リザーバ内の前記流体と流体連通する前記流体リザーバ内の地点にある、請求項1〜8のいずれか一項に記載の流体充電器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の装具を使用して、荷電流体粒子液滴を形成するための方法であって、
a.前記荷電可能な流体に対する荷電を維持する工程と、
b.前記荷電可能な流体と流体連通する流体移送フィラメントを配置する工程と、を含み、荷電されると前記流体が前記フィラメント頂点及び前記対となる電極に対して、その最大電位の地点で、1.0nm〜1000nm、好ましくは1.0nm〜5000nm、より好ましくは5.0nm〜500nm、最も好ましくは10.0nm〜50.0nmの液滴直径を有する、極小荷電流体液滴の持続可能な流れを生成する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5a】
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【図6】
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【図7】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−532019(P2012−532019A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519592(P2012−519592)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/040726
【国際公開番号】WO2011/002969
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】