落書き防止板
【課題】 安価にして落書き防止を行う(落書きを除去し易くする)。
【解決手段】 FRP板基材1の表面にプライマーを塗布して、その表面を平滑化し、その表面に周辺の景観に合った模様4をUV出力印刷し、さらに、セラミック塗料3を、塗膜厚5〜10μmの範囲となるように塗布した落書き防止板Pである。ラッカースプレーによる落書きの場合、その落書きを2時間ほど放置して乾燥後、粘着テープをその塗膜面に貼着して剥がす。又は、ラッカーシンナーによって除去する。油性インクによる落書きの場合には、その直後においては、ティッシュペーパーで拭き取り、乾燥後においては、乾燥したウェスで擦り取る。落書きが剥がれた(除去した)面3は、全くその形跡がないものとなる。車の排気ガス、塵などの汚染物質を付着させた場合も同様である。
【解決手段】 FRP板基材1の表面にプライマーを塗布して、その表面を平滑化し、その表面に周辺の景観に合った模様4をUV出力印刷し、さらに、セラミック塗料3を、塗膜厚5〜10μmの範囲となるように塗布した落書き防止板Pである。ラッカースプレーによる落書きの場合、その落書きを2時間ほど放置して乾燥後、粘着テープをその塗膜面に貼着して剥がす。又は、ラッカーシンナーによって除去する。油性インクによる落書きの場合には、その直後においては、ティッシュペーパーで拭き取り、乾燥後においては、乾燥したウェスで擦り取る。落書きが剥がれた(除去した)面3は、全くその形跡がないものとなる。車の排気ガス、塵などの汚染物質を付着させた場合も同様である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、落書きがし難く、仮に落書きをしても容易にその落書きを除去できる落書き防止板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋脚面、駅構内の壁面、公衆トイレ内壁面などには、心ない者が落書きを行い、その落書きは、街の景観を損なうだけでなく、治安の悪化を招く社会問題となっている。
【0003】
このため、従来から、その落書きを防止したり、その落書きを容易に除去して落書き意欲を喪失させるための手段が考えられ、その一つとして、壁面などに落書き防止用塗料を塗布する手段がある(特許文献1、2参照)。
また、その落書き防止用塗料を表面に塗布した落書き防止板(パネル)も提案されており(特許文献3、4参照)、そのパネルを壁面に設ける手段がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−321545号公報
【特許文献2】特開2004−67783号公報
【特許文献3】特開平8−197678号公報
【特許文献4】特開2001−315253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、落書きは、その落書き用インクが、水性、油性のどちらにしろ、壁面の微細な穴(凹凸)にそのインクが染み込む(入り込む)ことにより、その除去が困難となる。その凹凸は、塗布層が固ければ固いほどなくなるため、従来の落書き防止用には、セラミック塗料などの常温硬化型無機質塗料を採用している。
このとき、常温硬化型無機質塗料、特にセラミック塗料は、その塗膜を薄くすることが困難であり、現場作業では、50μm厚が限界である。また、落書き防止板にあっても、その塗膜厚は、50μm以上である(特許文献3 段落0016第14〜16行参照)。
しかし、落書き防止用塗膜は、その膜厚は薄い方が好ましく、特に、セラミック塗料は、50μm厚程度では、クラックが生じ、そのクラックに落書きインクが染みて、その落書きを確実に消せない(除去できない)。
このように、従来の塗膜面及び落書き防止板では十分な効果を得ていないのが実情である。また、落書き防止板は高価なものであった。
【0006】
この発明は、安価にして落書きを確実に除去し得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、この発明は、FRP板基材の表面にその表面を平滑化するプライマー層を形成し、そのプライマー層の表面に、工場で塗膜厚12μm以下の常温硬化型無機質塗料層を形成することとしたのである。
【0008】
FRP板は、繊維強化プラスチックから成る板(ボード)であって、樹脂塗料との親和性が高いとともに、高強度及び高靭性を有する。このため、塗布層のプライマーとして使用される樹脂製のものと親和性があって、そのプライマーにより、表面の凹凸が円滑になって、平滑なプライマー塗布面を形成する。
【0009】
この平滑なプライマー面に落書き防止に優れた常温硬化型無機質塗料層を形成することとなるため、その常温硬化型無機質塗料層は、薄くすることができる。その塗膜の層が薄ければ、クラックが生じにくく、凹凸や穴は極小となり、かつ極めて少なくなり、落書きされてもそのインクがその穴等内に入り込むことが殆どない。このため、落書きは、塗料層表面から、容易に剥がす(除去する)ことができる。
【0010】
さらに、従来では、手塗りが主流であり、その塗膜厚は、上述のように、50μm以上であり、その膜厚では、落書きを円滑に除去できなかった。すなわち、発明者は、その落書き防止用塗料層(塗膜)厚が12μm以下になると、落書き除去効果が増すことを発見した。
【0011】
落書き防止用塗料としては、セラミック塗料が優れており、そのセラミック塗料の場合、プライマー層は、そのセラミック塗料と親和性のあるアクリルシリコーン系塗料で形成するとよい。このとき、そのセラミック塗料の塗膜厚は5μm以上として、十分な落書き剥離性を発揮するようにすることが好ましい。
【0012】
因みに、従来、落書き防止用塗料層厚が50μm以上であったのは、熟練の者でもその程度の膜厚で塗布するのが限度であるからと考える。
この発明においては、工場における厳しい管理下で、その落書き防止用塗料の塗布を行うことにより、その薄い膜厚が可能になった。工場生産であれば、常温硬化型無機質塗料の塗膜厚の管理を正確に行うことができ、高品質の製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、以上のように、FRP板基材表面をプライマーにより平滑化し、その上に塗膜厚12μm以下の常温硬化型無機質塗料層を工場で形成した構成としたので、水性インク、油性インクの別なく、そのインクによる落書きを容易に除去することができる。
落書きが容易に除去されれば、落書きする心ない者も落書きする意欲がなくなって、落書きが抑制される。すなわち、落書き防止が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に一実施形態を示し、この実施形態は、工場において、FRP板基材1の表面を、No.1000のサンドペーパーを用いて目荒らしを行った後、アルコールにて脱脂して下地処理を行った。この下地処理後のFRP板基材1の表面にプライマー塗料2としてアクリルシリコーン系2液硬化塗料(例えば、「大橋化学工業株式会社製 商品名:エバハートNo800(S)(アクリル樹脂を主剤、シリコーン樹脂を硬化剤とし、その重量比が主剤:硬化剤=10:1))を層厚:15〜20μmで塗布して、その表面を平滑化してプライマー塗布面とした(下塗り)。
【0015】
そのプライマー塗布面2に、さらに、常温硬化型無機質塗料である無機系セラミック塗料(例えば、大橋化学工業株式会社製 商品名:エバハートNo100(S)(塗料分類としてはセラミック塗料であり、樹脂骨格は無機質のシリコーンであって、主剤と硬化剤の重量比が主剤:硬化剤=10:1))3を層厚:5〜10μmで塗布した(上塗り)。
ここで、上記エバハートNo100(S)は、層厚:5μm以上では、後述の落書きなどの剥離性がほぼ一定となり、一方、クラックの発生危険度は、層厚:7μmまでは殆どなく、それ以後、徐々に上昇し、層厚:10μm付近において10%程度となり、以後も上昇を続け、層厚:20μmで危険度:20%を超える。このため、許容範囲として、層厚:5〜10μmが好ましい。
【0016】
その層2、3の塗布手段は、ローラ塗布、エアーガン塗布などの周知のものを採用し、そのエアーガン塗布の際には、適宜にシンナーを混ぜて噴霧性を高める。このシンナーの混合は、下塗り剤と上塗り剤の界面を形成して両者が直接に接しない(付着しない)効果を発揮し、また、平滑化も高める。特に、トルエン系のシンナーを使用するとよい。
また、プライマー塗料や常温硬化型無機質塗料のその主剤と硬化剤との混合比は、上記に限らず、FRP板との付着性、落書き防止性を考慮に入れて、適宜に設定する。
【0017】
この実施例において、図2に示すように、下塗り層2の表面に、種々の模様(例えば、木目、石面模様、花、絵画、全面着色など)を印刷し、その模様4の上に、透明の上塗り層3を形成した板Pとすることができる。
このようにすれば、装飾性の高い落書き防止板Pとすることができ、例えば、周辺の景観に合った壁面とすることができる。このとき、その模様4はUV出力プリントとすることが好ましい。因みに、UV出力プリントとは、紫外線を強制的にあてて硬化させるもので、紫外線による劣化が無い利点を有する。
【0018】
これらの落書き防止板Pに、ラッカースプレーで落書きし、その落書きを2時間ほど放置してその落書き塗膜が乾燥した後、粘着テープをその塗膜面に貼着後、剥がすことにより、その落書きは容易に除去できた。また、ラッカーシンナーによっても容易に除去できた。前者は、塗膜が厚い場合に有利であり、粘着テープで除去できない場合には、クリアーラッカーをその落書き塗膜に重ね塗りしてその厚みを厚くしたのち剥がすようにする。
この落書きが剥がれた(除去した)面3は、耐薬品性に優れ、全くその痕跡がないものとなった。
【0019】
この落書き防止板Pに、油性インクで落書し、その直後においては、ティッシュペーパーで簡単に拭き取ることができた。乾燥後においては、乾燥したウェスで擦り取ることができ、また、上記の粘着テープ、ラッカーシンナーによる方法で容易に除去することができた。
この落書きが剥がれた(除去した)面3は、同様に、全くその痕跡がないものとなった。
【0020】
車の排気ガス、塵などの汚染物質をこの落書き防止板Pに付着させた場合には、ラッカーシンナーによって容易に除去することができ、その汚染物質が剥離除去された面(上塗り層)3は、同様に、全くその痕跡がないものとなった。
これらのことから、この板Pは、落書きの除去のみならず、貼り紙やシールを貼着されても、それを容易に剥がすことができる。
【0021】
この実施例の落書き防止板Pは、直接に下地に取付けることができるため、その取付け面の態様を選ばない。このため、下地処理も不要となり、工期の短縮が可能で、落書き防止面(壁面)の構築のコストダウンを図ることができる。
【0022】
その取付け態様としては、橋脚、構造物などの定期的に母材の打音試験を行う場所等の取り外しを必要とする場所では、図3に示すように、その周りに当て板11を当て、その当て板11をビス12で母材Aに止めることにより、取付けるようにすると良い。
一方、建物の外壁、門塀、定期的に母材Aの打音試験を行なわない場所等の取り外しを必要としない場所では、図4に示すように、この落書き防止板Pを母材Aにビス12により直接に取付けることができる。
【0023】
このような落書き防止板Pであると、現場では、その取付け作業しか発生しない(取付け作業のみでその取り付けが完了する)。このため、天候に影響を受けずに作業を進めることができて作業性がよい。この作業性が良いことは、施工日数、作業時間に制約がある場所でも、計画的に作業を遂行できるため、塗布が現場施工の現状に比べれば、工期の短縮、コスト削減が可能である。また、塗布作業がなく、取付け作業だけでよいことは、塗布という特殊な技能を要求されず、熟練を要しないため、この落書き防止板Pは取り扱いが容易といえる。
【0024】
この落書き防止板Pの使用個所としては、種々の落書きされる壁面に採用できるが、例えば、鉄道分野においては、線路側部の法面、民家との境界のブロック壁面、高架下通路部の側壁面、駅構内側壁面などが考えられる。
道路、河川分野においては、橋の橋脚面、道路脇の法面などが考えられる。公園分野においては、公園内の案内看板、公衆便所の側壁面などが考えられる。また、建築分野においては、門塀面、外壁面などが考えられる。
【0025】
さらに、この実施例の落書き防止板Pは、塗膜3表面の水接触角が約118°と大きいため、着雪し難く、着雪防止材としても使用できる。また、この落書き防止板Pは部分補修、交換が可能のため、維持管理費を安価とすることもできる。
【0026】
FRP板1に代えてポリカボネート板、アルミニウム板などの金属板等を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施例の断面図
【図2】他の実施例の断面図
【図3】実施例の取付け説明図
【図4】同他の取付け説明図
【符号の説明】
【0028】
1 FRP板
2 プライマー層
3 常温硬化型無機質塗料(塗膜)層
4 模様
P 落書き防止板
【技術分野】
【0001】
この発明は、落書きがし難く、仮に落書きをしても容易にその落書きを除去できる落書き防止板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋脚面、駅構内の壁面、公衆トイレ内壁面などには、心ない者が落書きを行い、その落書きは、街の景観を損なうだけでなく、治安の悪化を招く社会問題となっている。
【0003】
このため、従来から、その落書きを防止したり、その落書きを容易に除去して落書き意欲を喪失させるための手段が考えられ、その一つとして、壁面などに落書き防止用塗料を塗布する手段がある(特許文献1、2参照)。
また、その落書き防止用塗料を表面に塗布した落書き防止板(パネル)も提案されており(特許文献3、4参照)、そのパネルを壁面に設ける手段がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−321545号公報
【特許文献2】特開2004−67783号公報
【特許文献3】特開平8−197678号公報
【特許文献4】特開2001−315253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、落書きは、その落書き用インクが、水性、油性のどちらにしろ、壁面の微細な穴(凹凸)にそのインクが染み込む(入り込む)ことにより、その除去が困難となる。その凹凸は、塗布層が固ければ固いほどなくなるため、従来の落書き防止用には、セラミック塗料などの常温硬化型無機質塗料を採用している。
このとき、常温硬化型無機質塗料、特にセラミック塗料は、その塗膜を薄くすることが困難であり、現場作業では、50μm厚が限界である。また、落書き防止板にあっても、その塗膜厚は、50μm以上である(特許文献3 段落0016第14〜16行参照)。
しかし、落書き防止用塗膜は、その膜厚は薄い方が好ましく、特に、セラミック塗料は、50μm厚程度では、クラックが生じ、そのクラックに落書きインクが染みて、その落書きを確実に消せない(除去できない)。
このように、従来の塗膜面及び落書き防止板では十分な効果を得ていないのが実情である。また、落書き防止板は高価なものであった。
【0006】
この発明は、安価にして落書きを確実に除去し得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、この発明は、FRP板基材の表面にその表面を平滑化するプライマー層を形成し、そのプライマー層の表面に、工場で塗膜厚12μm以下の常温硬化型無機質塗料層を形成することとしたのである。
【0008】
FRP板は、繊維強化プラスチックから成る板(ボード)であって、樹脂塗料との親和性が高いとともに、高強度及び高靭性を有する。このため、塗布層のプライマーとして使用される樹脂製のものと親和性があって、そのプライマーにより、表面の凹凸が円滑になって、平滑なプライマー塗布面を形成する。
【0009】
この平滑なプライマー面に落書き防止に優れた常温硬化型無機質塗料層を形成することとなるため、その常温硬化型無機質塗料層は、薄くすることができる。その塗膜の層が薄ければ、クラックが生じにくく、凹凸や穴は極小となり、かつ極めて少なくなり、落書きされてもそのインクがその穴等内に入り込むことが殆どない。このため、落書きは、塗料層表面から、容易に剥がす(除去する)ことができる。
【0010】
さらに、従来では、手塗りが主流であり、その塗膜厚は、上述のように、50μm以上であり、その膜厚では、落書きを円滑に除去できなかった。すなわち、発明者は、その落書き防止用塗料層(塗膜)厚が12μm以下になると、落書き除去効果が増すことを発見した。
【0011】
落書き防止用塗料としては、セラミック塗料が優れており、そのセラミック塗料の場合、プライマー層は、そのセラミック塗料と親和性のあるアクリルシリコーン系塗料で形成するとよい。このとき、そのセラミック塗料の塗膜厚は5μm以上として、十分な落書き剥離性を発揮するようにすることが好ましい。
【0012】
因みに、従来、落書き防止用塗料層厚が50μm以上であったのは、熟練の者でもその程度の膜厚で塗布するのが限度であるからと考える。
この発明においては、工場における厳しい管理下で、その落書き防止用塗料の塗布を行うことにより、その薄い膜厚が可能になった。工場生産であれば、常温硬化型無機質塗料の塗膜厚の管理を正確に行うことができ、高品質の製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、以上のように、FRP板基材表面をプライマーにより平滑化し、その上に塗膜厚12μm以下の常温硬化型無機質塗料層を工場で形成した構成としたので、水性インク、油性インクの別なく、そのインクによる落書きを容易に除去することができる。
落書きが容易に除去されれば、落書きする心ない者も落書きする意欲がなくなって、落書きが抑制される。すなわち、落書き防止が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に一実施形態を示し、この実施形態は、工場において、FRP板基材1の表面を、No.1000のサンドペーパーを用いて目荒らしを行った後、アルコールにて脱脂して下地処理を行った。この下地処理後のFRP板基材1の表面にプライマー塗料2としてアクリルシリコーン系2液硬化塗料(例えば、「大橋化学工業株式会社製 商品名:エバハートNo800(S)(アクリル樹脂を主剤、シリコーン樹脂を硬化剤とし、その重量比が主剤:硬化剤=10:1))を層厚:15〜20μmで塗布して、その表面を平滑化してプライマー塗布面とした(下塗り)。
【0015】
そのプライマー塗布面2に、さらに、常温硬化型無機質塗料である無機系セラミック塗料(例えば、大橋化学工業株式会社製 商品名:エバハートNo100(S)(塗料分類としてはセラミック塗料であり、樹脂骨格は無機質のシリコーンであって、主剤と硬化剤の重量比が主剤:硬化剤=10:1))3を層厚:5〜10μmで塗布した(上塗り)。
ここで、上記エバハートNo100(S)は、層厚:5μm以上では、後述の落書きなどの剥離性がほぼ一定となり、一方、クラックの発生危険度は、層厚:7μmまでは殆どなく、それ以後、徐々に上昇し、層厚:10μm付近において10%程度となり、以後も上昇を続け、層厚:20μmで危険度:20%を超える。このため、許容範囲として、層厚:5〜10μmが好ましい。
【0016】
その層2、3の塗布手段は、ローラ塗布、エアーガン塗布などの周知のものを採用し、そのエアーガン塗布の際には、適宜にシンナーを混ぜて噴霧性を高める。このシンナーの混合は、下塗り剤と上塗り剤の界面を形成して両者が直接に接しない(付着しない)効果を発揮し、また、平滑化も高める。特に、トルエン系のシンナーを使用するとよい。
また、プライマー塗料や常温硬化型無機質塗料のその主剤と硬化剤との混合比は、上記に限らず、FRP板との付着性、落書き防止性を考慮に入れて、適宜に設定する。
【0017】
この実施例において、図2に示すように、下塗り層2の表面に、種々の模様(例えば、木目、石面模様、花、絵画、全面着色など)を印刷し、その模様4の上に、透明の上塗り層3を形成した板Pとすることができる。
このようにすれば、装飾性の高い落書き防止板Pとすることができ、例えば、周辺の景観に合った壁面とすることができる。このとき、その模様4はUV出力プリントとすることが好ましい。因みに、UV出力プリントとは、紫外線を強制的にあてて硬化させるもので、紫外線による劣化が無い利点を有する。
【0018】
これらの落書き防止板Pに、ラッカースプレーで落書きし、その落書きを2時間ほど放置してその落書き塗膜が乾燥した後、粘着テープをその塗膜面に貼着後、剥がすことにより、その落書きは容易に除去できた。また、ラッカーシンナーによっても容易に除去できた。前者は、塗膜が厚い場合に有利であり、粘着テープで除去できない場合には、クリアーラッカーをその落書き塗膜に重ね塗りしてその厚みを厚くしたのち剥がすようにする。
この落書きが剥がれた(除去した)面3は、耐薬品性に優れ、全くその痕跡がないものとなった。
【0019】
この落書き防止板Pに、油性インクで落書し、その直後においては、ティッシュペーパーで簡単に拭き取ることができた。乾燥後においては、乾燥したウェスで擦り取ることができ、また、上記の粘着テープ、ラッカーシンナーによる方法で容易に除去することができた。
この落書きが剥がれた(除去した)面3は、同様に、全くその痕跡がないものとなった。
【0020】
車の排気ガス、塵などの汚染物質をこの落書き防止板Pに付着させた場合には、ラッカーシンナーによって容易に除去することができ、その汚染物質が剥離除去された面(上塗り層)3は、同様に、全くその痕跡がないものとなった。
これらのことから、この板Pは、落書きの除去のみならず、貼り紙やシールを貼着されても、それを容易に剥がすことができる。
【0021】
この実施例の落書き防止板Pは、直接に下地に取付けることができるため、その取付け面の態様を選ばない。このため、下地処理も不要となり、工期の短縮が可能で、落書き防止面(壁面)の構築のコストダウンを図ることができる。
【0022】
その取付け態様としては、橋脚、構造物などの定期的に母材の打音試験を行う場所等の取り外しを必要とする場所では、図3に示すように、その周りに当て板11を当て、その当て板11をビス12で母材Aに止めることにより、取付けるようにすると良い。
一方、建物の外壁、門塀、定期的に母材Aの打音試験を行なわない場所等の取り外しを必要としない場所では、図4に示すように、この落書き防止板Pを母材Aにビス12により直接に取付けることができる。
【0023】
このような落書き防止板Pであると、現場では、その取付け作業しか発生しない(取付け作業のみでその取り付けが完了する)。このため、天候に影響を受けずに作業を進めることができて作業性がよい。この作業性が良いことは、施工日数、作業時間に制約がある場所でも、計画的に作業を遂行できるため、塗布が現場施工の現状に比べれば、工期の短縮、コスト削減が可能である。また、塗布作業がなく、取付け作業だけでよいことは、塗布という特殊な技能を要求されず、熟練を要しないため、この落書き防止板Pは取り扱いが容易といえる。
【0024】
この落書き防止板Pの使用個所としては、種々の落書きされる壁面に採用できるが、例えば、鉄道分野においては、線路側部の法面、民家との境界のブロック壁面、高架下通路部の側壁面、駅構内側壁面などが考えられる。
道路、河川分野においては、橋の橋脚面、道路脇の法面などが考えられる。公園分野においては、公園内の案内看板、公衆便所の側壁面などが考えられる。また、建築分野においては、門塀面、外壁面などが考えられる。
【0025】
さらに、この実施例の落書き防止板Pは、塗膜3表面の水接触角が約118°と大きいため、着雪し難く、着雪防止材としても使用できる。また、この落書き防止板Pは部分補修、交換が可能のため、維持管理費を安価とすることもできる。
【0026】
FRP板1に代えてポリカボネート板、アルミニウム板などの金属板等を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施例の断面図
【図2】他の実施例の断面図
【図3】実施例の取付け説明図
【図4】同他の取付け説明図
【符号の説明】
【0028】
1 FRP板
2 プライマー層
3 常温硬化型無機質塗料(塗膜)層
4 模様
P 落書き防止板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FRP板基材1の表面にその表面を平滑化するプライマー層2が形成され、そのプライマー層2の表面に、工場にて塗膜厚12μm以下の常温硬化型無機質塗料層3が形成された落書き防止板。
【請求項2】
上記プライマー層2がアクリルシリコーン系塗料、上記常温硬化型無機質塗料層3がセラミック塗料からなることを特徴とする請求項1に記載の落書き防止板。
【請求項3】
上記セラミック塗料の塗膜厚を5μm以上としたことを特徴とする請求項2に記載の落書き防止板。
【請求項4】
上記プライマー層2の表面に模様4を印刷し、上記常温硬化型無機質塗料層3を透明としたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の落書き防止板。
【請求項1】
FRP板基材1の表面にその表面を平滑化するプライマー層2が形成され、そのプライマー層2の表面に、工場にて塗膜厚12μm以下の常温硬化型無機質塗料層3が形成された落書き防止板。
【請求項2】
上記プライマー層2がアクリルシリコーン系塗料、上記常温硬化型無機質塗料層3がセラミック塗料からなることを特徴とする請求項1に記載の落書き防止板。
【請求項3】
上記セラミック塗料の塗膜厚を5μm以上としたことを特徴とする請求項2に記載の落書き防止板。
【請求項4】
上記プライマー層2の表面に模様4を印刷し、上記常温硬化型無機質塗料層3を透明としたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の落書き防止板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2006−1126(P2006−1126A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179644(P2004−179644)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 株式会社日刊工業新聞社 刊行物名 日刊工業新聞 発行年月日 平成16年3月8日 発行者名 有限会社産業資材新聞社 刊行物名 プラスチック産業資材新聞 発行年月日 平成16年3月15日
【出願人】(000164885)栗本化成工業株式会社 (32)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 株式会社日刊工業新聞社 刊行物名 日刊工業新聞 発行年月日 平成16年3月8日 発行者名 有限会社産業資材新聞社 刊行物名 プラスチック産業資材新聞 発行年月日 平成16年3月15日
【出願人】(000164885)栗本化成工業株式会社 (32)
【Fターム(参考)】
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