説明

落橋防止装置

【課題】支持体からの橋桁の落下を防止することができるとともに、支持体と橋桁との接触や橋桁同士の接触によって橋梁を破損させることがなく、しかも支持体に対して橋桁を所定の高さに支持することのできる落橋防止装置を提供する。
【解決手段】上面側が橋桁1側に取付けられるとともに下面側が橋脚2側に取付けられることにより、橋桁1と橋脚2とを連結するゴム支承50を備え、地震によって橋桁1が橋脚2に対して大きく移動して各鉛直方向支持機構3が破損した場合でも、橋脚2に対する橋桁1の移動をゴム支承50の剪断変形及び引張変形の範囲内に規制するようにしたので、橋脚2からの橋桁1の落下を防止することができる。この際、ゴム支承50を高減衰ゴムから形成したので、ゴム支承50の剪断変形により移動する橋桁1の運動エネルギーを大幅に減衰することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば橋梁に地震による外力が加わった際、橋脚や橋台などの支持体からの橋桁の落下を防止するための落橋防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の落橋防止装置としては、橋脚や橋台などの支持体と橋桁とを橋軸方向に連結するケーブルを備え、ケーブルによって支持体からの橋脚の落下を防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−64914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記落橋防止装置では、例えば橋梁に地震による大きな外力が加わった際、ケーブルに引張力が加わる方向には支持体に対する橋桁の移動を規制することができるが、橋桁がケーブルの弛む方向に移動する場合、例えば支持体と橋桁とが橋軸方向に接近するように移動する場合にはその移動を規制することができず、支持体と橋桁とが接触して橋梁が損傷するという問題点があった。
【0004】
また、ケーブルは支持体と橋桁とを橋軸方向に連結しているのみで、支持体に対して橋桁を鉛直方向に支持することができないので、例えば支持体に対して橋桁を鉛直方向に支持するために別途設けられた鉛直方向支持機構が地震によって破損すると、橋桁が下方に移動して隣り合う橋桁同士が上下に大きくずれるという問題点があった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、支持体からの橋桁の落下を防止することができるとともに、支持体と橋桁との接触や橋桁同士の接触によって橋梁を破損させることがなく、しかも支持体に対して橋桁を所定の高さに支持することのできる落橋防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、橋桁と橋桁を支持する支持体とを連結することにより、支持体からの橋桁の落下を防止する落橋防止装置において、上面側が橋桁側に取付けられるとともに下面側が支持体側に取付けられることにより橋桁と支持体とを連結可能なゴム支承を備え、ゴム支承を補強板と高減衰ゴムとを互いに上下方向に交互に積層してなる積層ゴム構造体から形成している。
【0007】
これにより、橋桁と支持体とがゴム支承によって連結されていることから、支持体に対する橋桁の移動がゴム支承の剪断変形及び引張変形の範囲内に規制される。また、ゴム支承は高減衰ゴムから形成されているので、支持体に対して移動する橋桁の運動エネルギーをゴム支承の剪断変形によって大幅に減衰することができる。さらに、各補強板により高減衰ゴムが拘束されてゴム支承の圧縮方向の変形が規制されることから、ゴム支承の圧縮方向の剛性を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、支持体に対する橋桁の移動がゴム支承の剪断変形及び引張変形の範囲内に規制されるので、例えば橋梁に地震による大きな外力が加わった際に、支持体からの橋桁の落下を防止することができる。また、支持体に対して移動する橋桁の運動エネルギーをゴム支承の剪断変形によって大幅に減衰することができるので、例えば地震の際に支持体に対する橋桁の移動範囲を小さくすることができ、支持体と橋桁との接触や橋桁同士の接触によって橋梁を損傷させることがない。さらに、ゴム支承の圧縮方向の剛性を大きくすることができるので、例えば支持体に対して橋桁を鉛直方向に支持するために別途設けられた鉛直方向支持機構が地震によって破損した場合でも、ゴム支承によって橋桁を所定の高さに支持することができる。即ち、隣り合う橋桁同士が上下に大きくずれることがなく、橋梁上からの円滑な避難が可能となる点において極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1乃至図6は本発明の第1の実施形態を示すもので、図1は橋梁の橋軸直角方向における一部断面図、図2は落橋防止装置の橋軸直角方向における断面図、図3は落橋防止装置の橋軸方向における断面図、図4は落橋防止装置の斜視図、図5は橋桁が橋脚に対して橋軸直角方向にずれた状態を示す橋梁の橋軸直角方向における一部断面図、図6は橋桁が橋脚に対して橋軸直角方向にずれた状態を示す落橋防止装置の橋軸直角方向における一部断面図である。
【0010】
本実施形態の落橋防止装置は、橋桁1に取付けられた上側の支持部材としてのソールプレート10と、支持体としての橋脚2に取付けられた下側の支持部材としてのベースプレート20と、ソールプレート10に支持される上端部側のフランジプレートとしての上沓30と、ベースプレート20に支持される下端部側のフランジプレートとしての下沓40と、上沓30と下沓40との間に配置されたゴム支承50とを備えている。
【0011】
橋桁1は上面に自動車用道路が設けられ、橋軸直角方向Yに並ぶように設けられた2つの鉛直方向支持機構3によって橋脚2に支持されている。また、鉛直方向支持機構3は周知の積層ゴム構造体からなり、上面側が橋桁1の下面に取付けられるとともに、下面側が橋脚2の上面に取付けられている。
【0012】
ソールプレート10は、橋桁1の下面に取付けられたプレート11と、プレート11の下面における橋軸直角方向Yの両端部にそれぞれ下方に延びるように設けられた第1延設部材12と、各第1延設部材12の下面にそれぞれ設けられた第1係止部材13と、プレート11の下面における橋軸方向Xの両端部にそれぞれ下方に延びるように設けられた第2延設部材14と、各第2延設部材14の下面にそれぞれ設けられた第2係止部材15とから構成されている。
【0013】
プレート11は各鉛直方向支持機構3の間に配置され、複数のアンカーボルト11aによって橋桁1に取付けられている。尚、橋桁1が鉄鋼材料で形成されている場合は、プレート11を橋桁1にボルトや溶接によって取付けることも可能である。また、プレート11はステンレスからなり、橋軸方向Xが長手方向となる長方形の板状に形成されている。
【0014】
各第1延設部材12はプレート11における橋軸直角方向Yの両端部に沿うように形成され、プレート11に溶接によって固定されている。
【0015】
各第1係止部材13は各第1延設部材12の下面に沿うように形成されるとともに、プレート11における橋軸直角方向Yの内側に延びるように形成され、各第1延設部材12に溶接によってそれぞれ固定されている。
【0016】
尚、延設部材12及び係止部材13をその下面側から挿通するボルトによってプレート11に固定することも可能である。
【0017】
各第2延設部材14はプレート11における橋軸方向Xの両端部に沿うように形成され、プレート11に溶接によって固定されている。
【0018】
各第2係止部材15は各第2延設部材14の下面に沿うように形成されるとともに、プレート11における橋軸方向Xの内側に延びるように形成され、各第2延設部材14に溶接によってそれぞれ固定されている。
【0019】
尚、延設部材14及び係止部材15をその下面側から挿通するボルトによってプレート11に固定することも可能である。
【0020】
ベースプレート20はソールプレート10と同様の形状に形成されるとともに、橋軸直角方向Yが長手方向になるように橋脚2に取付けられている。即ち、ベースプレート20は、橋脚2の上面に取付けられたプレート21と、プレート21の上面における橋軸直角方向Yの両端部にそれぞれ上方に延びるように設けられた第1延設部材22と、各第1延設部材22の上面にそれぞれ設けられた第1係止部材23と、プレート21の上面における橋軸方向Xの両端部にそれぞれ上方に延びるように設けられた第2延設部材24と、各第2延設部材24の上面にそれぞれ設けられた第2係止部材25とから構成されている。
【0021】
プレート21は各鉛直方向支持機構3の間に配置され、複数のアンカーボルト21aによって橋脚2に取付けられている。尚、橋脚2が鉄鋼材料で形成されている場合は、プレート21を橋脚2にボルトや溶接によって取付けることも可能である。また、ベースプレート20はステンレスからなり、橋軸直角方向Yが長手方向となる長方形の板状に形成されている。
【0022】
各第1延設部材22はプレート21における橋軸直角方向Yの両端部に沿うように形成され、プレート21に溶接によって固定されている。
【0023】
各第1係止部材23は各第1延設部材22の上面に沿うように形成されるとともに、プレート21における橋軸直角方向Yの内側に延びるように形成され、各第1延設部材22に溶接によってそれぞれ固定されている。
【0024】
尚、延設部材22及び係止部材23をその上面側から挿通するボルトによってプレート21に固定することも可能である。
【0025】
各第2延設部材24はプレート21における橋軸方向Xの両端部に沿うように形成され、プレート21に溶接によって固定されている。
【0026】
各第2係止部材25は各第2延設部材24の上面に沿うように形成されるとともに、プレート21における橋軸方向Xの内側に延びるように形成され、各第2延設部材24に溶接によってそれぞれ固定されている。
【0027】
尚、延設部材24及び係止部材25をその上面側から挿通するボルトによってプレート21に固定することも可能である。
【0028】
上沓30は鉄鋼材料からなり、矩形の板状に形成されている。また、上沓30の幅寸法はソールプレート10の各第1延設部材12の間隔よりもわずかに小さく形成されている。さらに、上沓30の厚み寸法はソールプレート10のプレート11と各係止部材13,15との間隔よりもわずかに小さく形成されている。また、上沓30の上面には低摩擦抵抗性の材料であるフッ素樹脂からなるコーティング部30aが設けられている。即ち、上沓30はソールプレート10の各第1延設部材12に橋軸直角方向Yに係合することにより、橋軸直角方向Yへの移動を規制されるようになっている。また、上沓30は各係止部材13,15に係止することにより、下方への移動を規制されるようになっている。さらに、上沓30は各第2延設部材14の間で橋軸方向Xに移動可能になっている。また、上沓30の下面には凹状部30bが設けられ、凹状部30bは水平方向の断面が円形状に形成されている。
【0029】
下沓40は鉄鋼材料からなり、上沓30と同様の形状である矩形の板状に形成されている。また、下沓40の幅寸法はベースプレート20の各第2延設部材24の間隔よりもわずかに小さく形成されている。さらに、下沓40の厚み寸法はベースプレート20のプレート21と各係止部材23,25との間隔よりもわずかに小さく形成されている。また、下沓40の下面には低摩擦抵抗性の材料であるフッ素樹脂からなるコーティング部40aが設けられている。即ち、下沓40はベースプレート20の各第2延設部材24に橋軸方向Xに係合することにより、橋軸方向Xへの移動を規制されるようになっている。また、下沓40は各係止部材23,25に係止することにより、上方への移動を規制されるようになっている。さらに、下沓40は各第1延設部材22の間で橋軸直角方向Yに移動可能になっている。また、下沓40の上面には凹状部40bが設けられ、凹状部40bは水平方向の断面が円形状に形成されている。
【0030】
ゴム支承50は、上沓30に取付けられた上側補強板51と、下沓40に取付けられた下側補強板52と、上側補強板51と下側補強板52との間に互いに上下方向に間隔をおいて設けられた複数の補強板53と、各補強板51,52,53を加硫接着によって連結するゴム部材54とから構成されている。
【0031】
上側補強板51は鉄鋼材料からなり、矩形の板状に形成されるとともに、複数のボルト51aによって上沓30に取付けられている。また、上側補強板51の上面には凹状部51bが設けられ、凹状部51bは水平方向の断面が円形状に形成されている。さらに、凹状部51bには円柱状のキー部材51cが挿入され、キー部材51cの上端部は上沓30の凹状部30bに挿入されている。
【0032】
下側補強板52は鉄鋼材料からなり、矩形の板状に形成されるとともに、複数のボルト52bによって下沓40に取付けられている。また、下側補強板52の下面には凹状部52bが設けられ、凹状部52bは水平方向の断面が円形状に形成されている。さらに、凹状部52bには円柱状のキー部材52cが挿入され、キー部材52cの下端部は下沓40の凹状部40bに挿入されている。
【0033】
各補強板53は鉄鋼材料からなり、矩形の板状に形成されている。また、各補強板53は上側補強板51及び下側補強板52よりも薄く形成されている。
【0034】
ゴム部材54は高減衰ゴムからなり、各補強板51,52,53を被覆するように形成されるとともに、水平方向の断面形状が矩形となる直方体に形成されている。一方、上沓30及び下沓40はゴム支承50の側面よりも橋軸直角方向Y及び橋軸方向Xに突出するように形成されている。ここで、高減衰ゴムとしては、特開平10−219029号公報、特開平10−219033号公報、特開2000−336207号公報、特開2002−020546号公報などに示されているものを使用することが望ましい。
【0035】
以上のように構成された落橋防止装置は、各鉛直方向支持機構3によって橋桁1が鉛直方向に支持されていることから、ほとんど圧縮方向に変形しない状態で橋桁1と橋脚2との間に取付けられる。また、ゴム支承50がソールプレート10及びベースプレート20の長手方向の中央部に位置するように、ソールプレート10及びベースプレート20が橋桁1及び橋脚2に取付けられている。
【0036】
ここで、気温や活荷重によって橋桁1が橋軸方向Xに伸びた場合は、橋桁1が橋脚2に対して橋軸方向Xに移動して各鉛直方向支持機構3が剪断変形するが、上沓30はソールプレート10に橋軸方向Xに移動可能に設けられているので、ゴム支承50が剪断変形することはない。また、上沓30の上面にはコーティング部30aが設けられているので、ソールプレート10に対して上沓30が円滑に移動する。
【0037】
また、風などによって橋桁1に橋軸直角方向Yの力が加わる場合は、橋桁1が橋脚2に対して橋軸直角方向Yに移動して各鉛直方向支持機構3が剪断変形するが、下沓40はベースプレート20に橋軸直角方向Yに移動可能に設けられているので、ゴム支承50が剪断変形することはない。また、下沓40の下面にはコーティング部40aが設けられているので、ベースプレート20に対して下沓40が円滑に移動する。即ち、気温、活荷重、風などによる常時の橋桁1の移動によってゴム支承50が剪断変形することはなく、繰返しの変形による材料疲労によってゴム支承50の強度が低下することはない。
【0038】
次に、地震によって橋桁1が橋脚2に対して橋軸直角方向Yに大きく移動することにより、各鉛直方向支持機構3が剪断変形の許容範囲を越えて破損した場合でも、下沓40がベースプレート20の第1延設部材22に係止することによりゴム支承50が剪断変形し、橋脚2に対する橋桁1の移動がゴム支承50の剪断変形の範囲内に規制される。この際、上沓30はソールプレート10の各係止部材13,15によって下方への移動を規制されるとともに、下沓40はベースプレート20の各係止部材23,25によって上方への移動を規制されるので、橋脚2に対する橋桁1の上方への移動に対してもゴム支承50が引張変形し、橋脚2に対する橋桁1の移動がゴム支承50の引張変形の範囲内に規制される。尚、地震によって橋桁1が橋脚2に対して橋軸方向Xに大きく移動することにより、各鉛直方向支持機構3が破損した場合でも、上沓30がソールプレート10の第2延設部材14に係止し、前述と同様の作用・効果を奏する。
【0039】
ここで、ゴム支承50を構成するゴム部材54が高減衰ゴムから形成されているので、橋脚2に対して移動する橋桁1の運動エネルギーをゴム支承50の剪断変形によって大幅に減衰することができる。また、各補強板51,52,53によりゴム部材54が水平方向に拘束されているので、ゴム支承50の圧縮方向の剛性が大きくなり、各鉛直方向支持機構3が破損した場合でも、ゴム支承50によって橋桁1を所定の高さに支持することができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、上面側が橋桁1側に取付けられるとともに下面側が橋脚2側に取付けられることにより、橋桁1と橋脚2とを連結するゴム支承50を備え、地震によって橋桁1が橋脚2に対して大きく移動して各鉛直方向支持機構3が破損した場合でも、橋脚2に対する橋桁1の移動をゴム支承50の剪断変形及び引張変形の範囲内に規制するようにしたので、橋脚2からの橋桁1の落下を防止することができる。
【0041】
また、ゴム支承50を構成するゴム部材54が高減衰ゴムから形成され、橋脚2に対して移動する橋桁1の運動エネルギーをゴム支承50の剪断変形によって大幅に減衰することができるので、地震の際に橋脚2に対する橋桁1の移動範囲を小さくすることができ、橋脚2と橋桁1との接触や橋桁1同士の接触によって橋桁1や橋脚2を損傷させることがない。
【0042】
さらに、各補強板51,52,53によりゴム部材54が水平方向に拘束されることから、ゴム支承50の圧縮方向の剛性を大きくすることができ、各鉛直方向支持機構3が破損した場合でも、ゴム支承50によって橋桁1を所定の高さに支持することができる。即ち、隣り合う橋桁1同士が上下に大きくずれることがなく、橋桁1上からの円滑な避難が可能となる点において極めて有利である。
【0043】
また、上沓30をソールプレート10に橋軸方向Xに移動可能に支持するとともに、下沓40をベースプレート20に橋軸直角方向Yに移動可能に支持し、気温、活荷重、風などによる常時の橋桁1の移動によってゴム支承50が剪断変形することがなく、繰返しの変形による材料疲労によってゴム支承50の強度が低下しないようにしたので、地震の際にゴム支承50によって橋桁1を確実に移動規制して橋脚2からの橋桁1の落下を防止することができるとともに、橋脚2に対する橋桁1の移動範囲を確実に小さくして橋脚2や橋桁1の損傷を防止することができる。
【0044】
さらに、常時の橋桁1の移動によってゴム支承50が剪断変形することがないので、ゴム支承50の上下方向の寸法を小さくしても耐久性が低下することはなく、ゴム支承50の小型化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0045】
また、上沓30の上面にコーティング部30aが設けるとともに、下沓40の下面にコーティング部40aを設け、ソールプレート10及びベースプレート20に対して上沓30及び下沓40が円滑に移動するようにしたので、気温、活荷重、風などによる常時の橋桁1の移動によるゴム支承50の剪断変形を確実に防止することができる。
【0046】
尚、本実施形態では、上沓30をソールプレート10に対して橋軸方向Xに移動可能に設けるとともに、下沓40をベースプレート20に対して橋軸直角方向Yに移動可能に設けたものを示したが、上沓30をソールプレート10に対して橋軸直角方向Yに移動可能に設けるとともに、下沓40をベースプレート20に対して橋軸方向Xに移動可能に設けることも可能である。
【0047】
また、本実施形態では、落橋防止装置を橋桁1と橋脚2との間に設けたものを示したが、落橋防止装置を橋桁1と図示しない橋台との間に設けることも可能である。
【0048】
図7は本発明における第2の実施形態を示す落橋防止装置の橋軸直角方向における断面図である。尚、第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0049】
本実施形態の落橋防止装置は第1の実施形態の落橋防止装置におけるソールプレート10、ベースプレート20、上沓30及び下沓40の変形例であり、以下の構成になっている。
【0050】
ソールプレート60は、橋桁1の下面に取付けられた円板状のプレート61と、プレート61の下面における外周部に下方に延びるように設けられた延設部材62と、延設部材62の下面に設けられた係止部材63とから構成されている。
【0051】
延設部材62はプレート61の外周部に全周に亘って沿うように形成され、プレート61に溶接によって固定されている。
【0052】
係止部材63は延設部材62の下面に沿うように形成されるとともに、プレート61における径方向内側に延びるように形成され、延設部材62に溶接によって固定されている。
【0053】
ベースプレート70はソールプレート60と同様の形状に形成され、橋脚2の上面に取付けられた円板状のプレート71と、プレート71の上面における外周部に上方に延びるように設けられた延設部材72と、延設部材72の上面に設けられた係止部材73とから構成されている。
【0054】
延設部材72はプレート71の外周部に全周に亘って沿うように形成され、プレート71に溶接によって固定されている。
【0055】
係止部材73は延設部材72の上面に沿うように形成されるとともに、プレート71における径方向内側に延びるように形成され、延設部材72に溶接によって固定されている。
【0056】
上沓80はソールプレート60の延設部材62の内周面よりも小さな外径を有するとともに、係止部材63の内周面よりも大きな外形を有する円板状に形成されている。また、上沓80の厚み寸法はソールプレート60のプレート61と係止部材63との間隔よりもわずかに小さく形成されている。さらに、上沓80の上面には低摩擦抵抗性の材料であるフッ素樹脂からなるコーティング部80aが設けられている。即ち、上沓80は延設部材62に係止しない範囲でソールプレート60に対して水平方向に移動可能になっている。また、上沓80は係止部材63に係止することにより、下方への移動を規制されるようになっている。さらに、上沓80の下面には凹状部80bが設けられ、凹状部80bは水平方向の断面が円形状に形成されている。
【0057】
下沓90はベースプレート70の延設部材72の内周面よりも小さな外径を有するとともに、係止部材73の内周面よりも大きな外形を有する円板状に形成されている。また、下沓90の厚み寸法はベースプレート70のプレート71と係止部材73との間隔よりもわずかに小さく形成されている。さらに、下沓90の下面には低摩擦抵抗性の材料であるフッ素樹脂からなるコーティング部90aが設けられている。即ち、下沓90は延設部材72に係止しない範囲でベースプレート70に対して水平方向に移動可能になっている。また、下沓90は係止部材73に係止することにより、上方への移動を規制されるようになっている。さらに、下沓90の下面には凹状部90bが設けられ、凹状部90bは水平方向の断面が円形状に形成されている。
【0058】
以上の構成においては、上沓80をソールプレート60に対して水平方向に移動可能に支持するとともに、下沓90をベースプレート70に対して水平方向に移動可能に支持しているので、気温、活荷重、風などによる常時の橋桁1の移動に対しては、上沓80がソールプレート60に対して水平方向に移動するとともに、下沓90がベースプレート70に対して水平方向に移動することにより、ゴム支承50が剪断変形することがない。これにより、繰返しの変形による材料疲労によってゴム支承50の強度が低下することがなく、地震の際にゴム支承50によって橋桁1を確実に移動規制して橋脚2からの橋桁1の落下を防止することができるとともに、橋脚2に対する橋桁1の移動範囲を確実に小さくして橋脚2や橋桁1の損傷を防止することができる。
【0059】
また、常時の橋桁1の移動によってゴム支承50が剪断変形することがないので、ゴム支承50の上下方向の寸法を小さくしても耐久性が低下することはなく、ゴム支承50の小型化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0060】
図8は本発明における第3の実施形態を示す落橋防止装置の橋軸直角方向における断面図である。尚、第2の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0061】
本実施形態の落橋防止装置は第2の実施形態の落橋防止装置におけるベースプレート70及び下沓90の変形例であり、以下の構成になっている。
【0062】
ベースプレート100は矩形の板状に形成され、アンカーボルト100aによって橋脚2に取付けられている。また、下沓110はベースプレート100よりも小さな矩形の板状に形成され、複数のボルト110aによってベースプレート100に取付けられている。即ち、ゴム支承50の下端部は橋脚2に対して水平方向に移動しないように取付けられ、ゴム支承50の上端部に設けられた上沓80はソールプレート60に対して水平方向に移動可能になっている。
【0063】
以上の構成においては、気温、活荷重、風などによる常時の橋桁1の移動に対しては、上沓80がソールプレート60に対して水平方向に移動することにより、ゴム支承50が剪断変形することがない。これにより、繰返しの変形による材料疲労によってゴム支承50の強度が低下することがないので、地震の際にゴム支承50によって橋桁1を確実に移動規制して橋脚2からの橋桁1の落下を防止することができるとともに、橋脚2に対する橋桁1の移動範囲を確実に小さくして橋脚2や橋桁1の損傷を防止することができる。
【0064】
また、常時の橋桁1の移動によってゴム支承50が剪断変形することがないので、ゴム支承50の上下方向の寸法を小さくしても耐久性が低下することはなく、ゴム支承50の小型化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0065】
尚、本実施形態では、ゴム支承50の下端部を橋脚2に対して水平方向に移動しないように取付けるとともに、ゴム支承50の上端部に設けられた上沓80をソールプレート60に対して水平方向に移動可能に設けたものを示したが、ゴム支承50の上端部を橋桁1に対して水平方向に移動しないように取付けるとともに、ゴム支承50の下端部に設けられた下沓110をベースプレート100に対して水平方向に移動可能に設けることも可能である。
【0066】
尚、第1乃至第3の実施形態の落橋防止装置は、ソールプレート10,60を橋桁1に取付けるとともにベースプレート20,70,100を橋脚2に取付けることにより、橋梁に設置することができるので、既存の橋梁にも容易に取付けることができ、橋梁の安全対策をする上で極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明における第1の実施形態を示す橋梁の橋軸直角方向における一部断面図
【図2】落橋防止装置の橋軸直角方向における断面図
【図3】落橋防止装置の橋軸方向における断面図
【図4】落橋防止装置の斜視図
【図5】橋桁が橋脚に対して橋軸直角方向にずれた状態を示す橋梁の橋軸直角方向における一部断面図
【図6】橋桁が橋脚に対して橋軸直角方向にずれた状態を示す落橋防止装置の橋軸直角方向における一部断面図
【図7】本発明における第2の実施形態を示す落橋防止装置の橋軸直角方向における断面図
【図8】本発明における第3の実施形態を示す落橋防止装置の橋軸直角方向における断面図
【符号の説明】
【0068】
1…橋桁、2…橋脚、3…鉛直方向支持機構、10…ソールプレート、11…プレート、12…第1延設部材、13…第1係止部材、14…第2延設部材、15…第2係止部材、20…ベースプレート、21…プレート、22…第1延設部材、23…第1係止部材、24…第2延設部材、25…第2係止部材、30…上沓、30a…コーティング部、40…下沓、40a…コーティング部、50…ゴム支承、51…上側補強板、52…下側補強板、53…補強板、54…ゴム部材、60…ソールプレート、61…プレート、62…延設部材、63…係止部材、70…ベースプレート、71…プレート、72…延設部材、73…係止部材、80…上沓、80a…コーティング部、90…下沓、90a…コーティング部、100…ベースプレート、110…下沓、X…橋軸方向、Y…橋軸直角方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋桁と橋桁を支持する支持体とを連結することにより、支持体からの橋桁の落下を防止する落橋防止装置において、
上面側が橋桁側に取付けられるとともに下面側が支持体側に取付けられることにより橋桁と支持体とを連結可能なゴム支承を備え、
ゴム支承を補強板と高減衰ゴムとを互いに上下方向に交互に積層してなる積層ゴム構造体から形成した
ことを特徴とする落橋防止装置。
【請求項2】
前記ゴム支承の上端部及び下端部にそれぞれ取付けられたフランジプレートと、
橋桁側に取付られるとともに、上端部側のフランジプレートにその下方への移動を規制するように係止し、上端部側のフランジプレートを水平方向に所定範囲だけ移動可能に支持する上側の支持部材と、
支持体側に取付けられるとともに、下端部側のフランジプレートにその上方への移動を規制するように係止し、下端部側のフランジプレートを水平方向に所定範囲だけ移動可能に支持する下側の支持部材とを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の落橋防止装置。
【請求項3】
前記上側の支持部材を、上端部側のフランジプレートを橋軸方向及び橋軸直角方向のうち一方の方向に所定範囲だけ移動可能に支持するとともに、上端部側のフランジプレートの橋軸方向及び橋軸直角方向のうち他方の方向への移動を規制するように形成し、
前記下側の支持部材を、下端部側のフランジプレートを橋軸方向及び橋軸直角方向のうち他方の方向に移動可能に支持するとともに、下端部側のフランジプレートの橋軸方向及び橋軸直角方向のうち一方の方向への移動を規制するように形成した
ことを特徴とする請求項2記載の落橋防止装置。
【請求項4】
前記ゴム支承の上端部に取付けられたフランジプレートと、
橋桁側に取付けられるとともに、フランジプレートにその下方への移動を規制するように係止し、フランジプレートを水平方向に所定範囲だけ移動可能に支持する支持部材とを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の落橋防止装置。
【請求項5】
前記ゴム支承の下端部に取付けられたフランジプレートと、
支持体側に取付けられるとともに、フランジプレートにその上方への移動を規制するように係止し、フランジプレートを水平方向に所定範囲だけ移動可能に支持する支持部材とを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の落橋防止装置。
【請求項6】
前記フランジプレートと支持部材との鉛直方向の当接面のうち少なくとも一方の当接面を低摩擦抵抗性の材料から形成した
ことを特徴とする請求項2、3、4または5記載の落橋防止装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−265935(P2006−265935A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85539(P2005−85539)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】