説明

蒸気加減弁動作テスト方法

【課題】 蒸気加減弁の設置基数が2基である蒸気タービンプラントについて、蒸気加減弁動作テスト時のタービン負荷変動を効果的に抑制できるようにする。
【解決手段】 所定のテスト圧力と動作テスト前のタービン負荷からテスト可能開度を算出し(ステップS1)、第1、第2の両蒸気加減弁それぞれの開度をテスト可能開度に設定する(ステップS2)。それから第1蒸気加減弁のテスト動作のために第1蒸気加減弁をテスト可能開度から全閉状態まで閉じつつ、第2蒸気加減弁をテスト可能開度から開く第1のテスト動作処理を行う(ステップS3〜S6)。次いで、第1、第2の両蒸気加減弁それぞれの開度を再度前記テスト可能開度に設定し(ステップS7)、それから第2蒸気加減弁のテスト動作のために第2蒸気加減弁をテスト可能開度から全閉状態まで閉じつつ、第1蒸気加減弁をテスト可能開度から開く第2のテスト動作処理を行う(ステップS8〜S11)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンプラントでなされる蒸気加減弁の動作テストに関し、特に蒸気加減弁が2基で設けられる2基型の蒸気タービンプラントのための蒸気加減弁動作テストに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンプラントは、ボイラなどの蒸気発生源で発生させた蒸気を主蒸気管で蒸気タービンに供給し、その蒸気が持つ熱エネルギで蒸気タービンを回転駆動し、さらに蒸気タービンの回転で発電機などを回転駆動するようになっている。また蒸気タービンプラントは、主蒸気管に蒸気加減弁が設けられ、その蒸気加減弁の開度制御により蒸気タービンへの蒸気流量を調節して蒸気タービンの負荷を制御するようになっており、蒸気加減弁の設置基数について、2基型や4基型などの各タイプがある。
【0003】
こうした蒸気タービンプラントでは、蒸気加減弁の動作テストが例えば1ヶ月に1度というようにして定期的に行われる。動作テストは、蒸気加減弁の動作性に異常がないことを確認するためになされるもので、蒸気タービンプラントの負荷運転中に蒸気加減弁にテスト用の開閉動作を行わせることでなされる。こうした動作テストは、蒸気加減弁の設置基数が2基型の場合、2基の蒸気加減弁を交互にテスト対象とし、テスト対象の蒸気加減弁の開度を全閉状態まで閉じるようにして行われる。したがって動作テスト中は非テスト対象の蒸気加減弁だけで主蒸気を蒸気タービンに供給する状態を生じ、そのために蒸気タービンの負荷が低下することになる。つまり動作テスト中にはタービン負荷に変動を招くことになるということである。
【0004】
以上のような蒸気加減弁の動作テストについては、例えば特許文献1〜特許文献3などに開示の例が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−176502号公報
【特許文献2】特開平9−189204号公報
【特許文献3】特開平8−151902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蒸気タービンプラントでは、それに接続される発電機などの接続負荷からの要求に基づいてなされるタービン負荷制御を常に安定的になせることが望ましい。このような観点からすると、負荷運転中になされる定期的な蒸気加減弁動作テストにおける上述のようなタービン負荷変動は、これをできるだけ抑制できるようにすることが望まれ、特に蒸気加減弁が2基型の蒸気タービンプラントにおいてその要求が大きい。すなわち、4基型では、動作テスト中にテスト対象として全閉とする蒸気加減弁が全基数の1/4であり、動作テストに伴うタービン負荷変動が小さなもので済むのに対し、2基型では、動作テスト中に全閉とする蒸気加減弁が全基数の1/2となることから、大きなタービン負荷変動を招くということである。
【0007】
本発明は、以上のような事情を背景になされてものであり、蒸気加減弁の設置基数が2基である蒸気タービンプラントについて、蒸気加減弁動作テスト時のタービン負荷変動を効果的に抑制できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では上記課題を解決するために、蒸気タービンと前記蒸気タービンに接続する蒸気加減弁を備え、前記蒸気加減弁として第1蒸気加減弁と第2蒸気加減弁の2基が設けられている蒸気タービンプラントについて前記蒸気加減弁の動作テストを行うための蒸気加減弁動作テスト方法において、予め定めてあるテスト圧力と動作テスト前のタービン負荷からテスト可能開度を算出するテスト可能開度算出処理、主蒸気圧力を前記テスト圧力まで上昇させつつ、前記第1、第2の両蒸気加減弁それぞれの開度を前記テスト可能開度にするテスト可能開度設定処理、前記第1蒸気加減弁のテスト動作のために前記第1蒸気加減弁を前記テスト可能開度から全閉状態まで閉じつつ、前記第2蒸気加減弁を前記テスト可能開度から開く第1のテスト動作処理、前記第1、第2の両蒸気加減弁それぞれの開度を再度前記テスト可能開度にするテスト可能開度再設定処理、および前記第2蒸気加減弁のテスト動作のために第2蒸気加減弁を前記テスト可能開度から全閉状態まで閉じつつ、前記第1蒸気加減弁を前記テスト可能開度から開く第2のテスト動作処理を含むことを特徴としている。
【0009】
このように本発明による蒸気加減弁動作テスト方法では、全閉状態とするテスト動作を蒸気加減弁に行わせるに先立って主蒸気圧を所定のテスト圧力まで上昇させつつ、テスト圧力に相関するテスト可能開度を両蒸気加減弁に設定し、それからテスト動作を各蒸気加減弁に交互に行わせるようにしている。このため、タービン負荷を低下させることなく、あるいはほとんど低下させることなく動作テストを行うことができ、したがって動作テスト時のタービン負荷変動を効果的に抑制することができ、しかもその動作テストに際して蒸気加減弁での圧損増大を招かずに済む。
【0010】
蒸気加減弁が行う開閉動作には通常開閉動作と急開閉動作があり、したがって蒸気加減弁の動作テストでは、通常開閉動作と急開閉動作のそれぞれについて動作テストを行えるようにするのが望ましい。そこで、本発明では、上記のような蒸気加減弁動作テスト方法について、前記第1、第2の各テスト動作処理は、通常開閉動作についてのテスト動作のために前記第1蒸気加減弁または前記第2蒸気加減弁を通常閉動作でテスト開度まで閉じつつ、前記第2蒸気加減弁または前記第1蒸気加減弁を前記テスト可能開度から開く通常開閉動作用テスト動作処理、および急開閉動作についてのテスト動作のために前記第1蒸気加減弁または前記第2蒸気加減弁を急閉動作で前記テスト開度から全閉状態まで閉じつつ、前記第2蒸気加減弁または前記第1蒸気加減弁を前記テスト可能開度から開く急開閉動作用テスト動作処理を含むものとしている。
【発明の効果】
【0011】
以上のような本発明によれば、蒸気加減弁の設置基数が2基である蒸気タービンプラントについて、蒸気加減弁動作テスト時のタービン負荷変動を効果的に抑制することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明の一実施形態では、図1に示すような構成の発電プラントに組み込まれている蒸気タービンプラント1に対して蒸気加減弁動作テスト方法を適用する。
【0013】
まず、蒸気タービンプラント1の概要について説明する。蒸気タービンプラント1は、蒸気発生源としてボイラ2を備え、またボイラ2で発生する蒸気が持つ圧力エネルギで回転駆動させられる蒸気タービン3を備え、その蒸気タービン3の回転で発電機4を回転駆動するようになっている。そして図の例の場合、蒸気タービン3は、互いに回転軸で連結された高圧タービン3H、中圧タービン3I、およびダブルフローの低圧タービン3Lで構成され、低圧タービン3Lの出力軸に発電機4が接続されている。
【0014】
ボイラ2には2系統で設けられた主蒸気管5(第1主蒸気管5a、第2主蒸気管5b)が接続されており、これらの主蒸気管5によりボイラ2からの主蒸気が高圧タービン3Hに供給される。主蒸気管5には止め弁6(第1止め弁6a、第2止め弁6b)と蒸気加減弁7(第1蒸気加減弁7a、第2蒸気加減弁7b)が設けられており、蒸気加減弁7の開度制御により高圧タービン3Hへの主蒸気流量を調節して高圧タービン3Hの負荷を制御できるようにされている。
【0015】
高圧タービン3Hで仕事をした蒸気は再びボイラ2を経ることで再熱蒸気となり、インタセプト弁8を有する再熱蒸気管9により中圧タービン3Iに供給され、さらに中圧タービン3Iで仕事をした蒸気が低圧タービン3Lに供給される。そして低圧タービン3Lで仕事をした蒸気は復水器10で凝集されて復水となり、その復水が復水ポンプ11によりボイラ2に供給される。
【0016】
次に、蒸気タービンプラント1における蒸気加減弁7に対してなされる動作テストについて説明する。動作テストは、例えば蒸気タービンプラント1の全体的な制御を行う制御システムにその一機能要素として組み込むなどして設けられる蒸気加減弁動作テスト制御部12による制御の下で処理が進められ、その処理は、図2に流れを示すように、ステップS1〜ステップS12の各処理を基本的なものとして含む。
【0017】
まずステップS1では、テスト可能開度を求めるためのテスト可能開度算出処理を行う。テスト可能開度は、予め設定してあるテスト圧力と動作テスト開始時直前における高圧タービン3Hのタービン負荷に基づいて求める。具体的には、主蒸気圧をテスト圧力とした条件の下で、動作テスト開始時直前のタービン負荷に見合うタービン負荷となる主蒸気供給量を、第1、第2の両蒸気加減弁7a、7bが同一開度である状態にあって、できるだけ確保でき、しかも後述のようなテスト動作のために第1、第2の両蒸気加減弁7a、7bの一方にテスト可能開度状態から全閉動作を行わせるとともに、その閉分だけ他方にテスト可能開度状態から開動作を行わせた際にも、動作テスト開始時直前のタービン負荷に見合うタービン負荷となる主蒸気供給量をできるだけ確保できることになる開度としてテスト可能開度を求める。
【0018】
すなわち主蒸気圧をテスト圧力とした条件の下で、テスト動作のために第1、第2の両蒸気加減弁7a、7bの一方にテスト可能開度状態から全閉動作を行わせるとともに、その閉分だけ他方にテスト可能開度状態から開動作を行わせた際の主蒸気供給量が動作テスト開始時直前のタービン負荷におけるそれに比べて不足する場合に、その不足分を最小化することがきるようなものとしてテスト可能開度を求めるということである。
【0019】
より具体的にいうと、例えば動作テスト開始時直前の第1、第2の両蒸気加減弁7a、7bの開度が100%であったとする。そしてこの場合に、主蒸気圧をテスト圧力まで昇圧した条件であれば、第1、第2の両蒸気加減弁7a、7bそれぞれの開度が例えば60%であれば、動作テスト開始時直前のタービン負荷に見合う主蒸気供給量を不足なく確保できるとする。しかしこの場合は、その開度60%をそのままテスト可能開度とすると、第1、第2の両蒸気加減弁7a、7bの一方にテスト可能開度状態から全閉動作を行わせ際に開度が不足し、そのために負荷の低下を招いてしまうことになる。そこで、その負荷低下を最小化するための開度を、開度60%を基に求め、その開度(例えば開度50%)をテスト可能開度とする。
【0020】
このようなテスト可能開度の算出に用いるテスト圧力は、蒸気タービンプラント1における主蒸気についての設計上の最大圧力に基づいて設定し、通常はその設計最大圧力をテスト圧力に用いる。
【0021】
ステップS2では、テスト可能開度設定処理を行う。具体的には、ボイラ2からの主蒸気圧力をテスト圧力まで上昇させつつ、第1、第2の両蒸気加減弁7a、7bそれぞれの開度をテスト可能開度にする。
【0022】
ステップS3〜ステップS6では、第1、第2の両蒸気加減弁7a、7bの一方、図の例では第1蒸気加減弁7aについてのテスト動作である第1のテスト動作処理を行う。第1のテスト動作処理では、まずステップS3で、第1蒸気加減弁7aについて通常開閉動作用テスト動作処理を行う。具体的には、第1蒸気加減弁7aを通常閉動作でテスト開度まで閉じつつ、第1蒸気加減弁7aの当該開度閉分だけ第2蒸気加減弁7bをテスト可能開度から通常開動作で開く。それからステップS4で、異常の有無を判定する。異常ありとされた場合にはステップ12に進んで異常報知処理を行い、動作テスト終了となる。一方、異常なしであった場合にはステップS5に進み、第1蒸気加減弁7aの急開閉動作用テスト動作処理を行う。具体的には、第1蒸気加減弁7aをテスト開度から急閉動作で全閉状態まで閉じつつ、第1蒸気加減弁7aの当該開度閉分だけ第2蒸気加減弁7bをテスト可能開度から急開動作で開く。それからステップS6で、異常の有無を判定する。異常ありとされた場合にはステップ12に進んで異常報知処理を行い、動作テスト終了となる。一方、異常なしであった場合にはステップS7に進む。
【0023】
ステップS7では、テスト可能開度再設定処理を行う。具体的には、第1、第2の両蒸気加減弁7a、7bそれぞれの開度を再度テスト可能開度にする。それからステップS8〜ステップS11で第2蒸気加減弁7bについてのテスト動作である第2のテスト動作処理を行う。
【0024】
第2のテスト動作処理では、まずステップS8で、第2蒸気加減弁7bについて通常開閉動作用テスト動作処理を行う。具体的には、第2蒸気加減弁7bを通常閉動作でテスト開度まで閉じつつ、第2蒸気加減弁7bの当該開度閉分だけ第1蒸気加減弁7aをテスト可能開度から通常開動作で開く。それからステップS9で、異常の有無を判定する。異常ありとされた場合にはステップ12に進んで異常報知処理を行い、動作テスト終了となる。一方、異常なしであった場合にはステップS10に進み、第2蒸気加減弁7bの急開閉動作用テスト動作処理を行う。具体的には、第2蒸気加減弁7bをテスト開度から急閉動作で全閉状態まで閉じつつ、第2蒸気加減弁7bの当該開度閉分だけ第1蒸気加減弁7aをテスト可能開度から急開動作で開く。それからステップS11で、異常の有無を判定する。異常ありとされた場合にはステップ12に進んで異常報知処理を行い、動作テスト終了となり、異常なしであった場合にはそのまま動作テスト終了となる。
【0025】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、これは代表的な例に過ぎず、本発明は、その趣旨を逸脱することのない範囲で様々な形態で実施することができる。例えば上記実施形態では、適用対象の蒸気タービンプラントにおける蒸気発生源がボイラであり、接続負荷が発電機であったが、これに限られるものでなく、ボイラ以外の蒸気発生源を備えたり、接続負荷が発電機以外であったりする蒸気タービンプラントについても本発明は適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一実施形態による蒸気加減弁動作テスト方法を適用する蒸気タービンプラントの構成を示す図である。
【図2】一実施形態による蒸気加減弁動作テスト方法における処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 蒸気タービンプラント
3 蒸気タービン
7a 第1蒸気加減弁
7b 第2蒸気加減弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンと前記蒸気タービンに接続する蒸気加減弁を備え、前記蒸気加減弁として第1蒸気加減弁と第2蒸気加減弁の2基が設けられている蒸気タービンプラントについて前記蒸気加減弁の動作テストを行うための蒸気加減弁動作テスト方法において、
予め定めてあるテスト圧力と動作テスト前のタービン負荷からテスト可能開度を算出するテスト可能開度算出処理、主蒸気圧力を前記テスト圧力まで上昇させつつ、前記第1、第2の両蒸気加減弁それぞれの開度を前記テスト可能開度にするテスト可能開度設定処理、前記第1蒸気加減弁のテスト動作のために前記第1蒸気加減弁を前記テスト可能開度から全閉状態まで閉じつつ、前記第2蒸気加減弁を前記テスト可能開度から開く第1のテスト動作処理、前記第1、第2の両蒸気加減弁それぞれの開度を再度前記テスト可能開度にするテスト可能開度再設定処理、および前記第2蒸気加減弁のテスト動作のために第2蒸気加減弁を前記テスト可能開度から全閉状態まで閉じつつ、前記第1蒸気加減弁を前記テスト可能開度から開く第2のテスト動作処理を含むことを特徴とする蒸気加減弁動作テスト方法。
【請求項2】
前記第1、第2の各テスト動作処理は、通常開閉動作についてのテスト動作のために前記第1蒸気加減弁または前記第2蒸気加減弁を通常閉動作でテスト開度まで閉じつつ、前記第2蒸気加減弁または前記第1蒸気加減弁を前記テスト可能開度から開く通常開閉動作用テスト動作処理、および急開閉動作についてのテスト動作のために前記第1蒸気加減弁または前記第2蒸気加減弁を急閉動作で前記テスト開度から全閉状態まで閉じつつ、前記第2蒸気加減弁または前記第1蒸気加減弁を前記テスト可能開度から開く急開閉動作用テスト動作処理を含むことを特徴とする請求項1に記載の蒸気加減弁動作テスト方法。

【図1】
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【図2】
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