説明

蒸気調理装置

【課題】多彩な蒸気調理を実現し、多様な被調理物の高品質蒸気調理を可能とすることを目的としている。
【解決手段】被調理物を収容する調理槽と、この調理槽への給蒸手段と、前記調理槽内の減圧手段と、前記給蒸手段および前記減圧手段を制御する制御器とを備え、前記制御器が、負圧蒸煮を行う第一運転プログラムと、無圧蒸煮を行う第二運転プログラムと、正圧蒸煮を行う第三運転プログラムと、負圧蒸煮,無圧蒸煮および正圧蒸煮のうち少なくとも二つを組み合わせた第四運転プログラムとを選択して実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、調理槽内へ被調理物を収容し、この調理槽内へ飽和蒸気を供給して被調理物を調理する蒸気調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の調理装置は、たとえば特許文献1などにて知られている。この特許文献1に記載の調理装置は、調理槽内へ飽和蒸気を供給して被調理物を蒸煮するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2005−180858号公報
【0004】
特許文献1に記載のような調理装置においては、調理槽内の温度または圧力を所定パターンとする運転プログラムに基づいて加熱を制御している。そして、この出願の発明者等は、蒸気調理の研究を重ねた結果、多様な被調理物の調理を行うためには、種々の加熱パターンが必要であるという課題を見出した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、多彩な蒸気調理を実現し、多様な被調理物の高品質蒸気調理を可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被調理物を収容する調理槽と、この調理槽への給蒸手段と、前記調理槽内の減圧手段と、前記給蒸手段および前記減圧手段を制御する制御器とを備え、前記制御器が、負圧蒸煮を行う第一運転プログラムと、無圧蒸煮を行う第二運転プログラムと、正圧蒸煮を行う第三運転プログラムと、負圧蒸煮,無圧蒸煮および正圧蒸煮のうち少なくとも二つを組み合わせた第四運転プログラムとを選択して実行することを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明によれば、多様な被調理物の調理に応じて前記各運転プログラムを選択して実行することで、多彩な蒸気調理ができるとともに、低温から高温までの広い温度範囲での蒸気調理が可能となり、多様な被調理物の高品質蒸気調理をすることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記各運転プログラムのうち正圧蒸煮または負圧蒸煮を多段で行うことを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明によれば、請求項1による効果に加えて、正圧蒸煮または負圧蒸煮を多段に行うことで、より多彩な蒸気調理制御を行うことができ、多様な被調理物の高品質蒸気調理をすることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2において、前記各運転プログラムを選択し、前記各運転プログラムの内容を変更可能とすることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2による効果に加えて、運転プログラムの内容を変更することで、より一層多様な被調理物に応じた蒸気調理を可能とすることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2において、前記各運転プログラムの
内容の変更を通信により行うことを特徴としている。
【0013】
請求項4の発明によれば、請求項1または請求項2による効果に加えて、運転プログラムの内容の変更を通信により行うことで、より一層多様な被調理物に応じた蒸気調理を可能とすることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3または請求項4において、前記各運転プログラムの変更した内容を記憶可能とすることを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明によれば、請求項3または請求項4による効果に加えて、変更した運転プログラムの内容を記憶しておくことで、使用者が変更した運転プログラムを再度呼び出して実行することができる。
【0016】
さらに、請求項6に記載の発明は、請求項1または請求項2において、前記各運転プログラムの内容の変更を着脱自在の記憶媒体の交換により行うことを特徴としている。
【0017】
請求項6の発明によれば、請求項1または請求項2による効果に加えて、着脱自在の記憶媒体に複数の運転プログラムを記憶させ、運転プログラムの内容の変更を記憶媒体の交換により行うことで、より一層多様な被調理物に応じた蒸気調理を可能とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、低温から高温まで広い温度範囲で、多彩な蒸気調理することで、多様な被調理物の高品質蒸気調理をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、被調理物を飽和蒸気(以下、単に「蒸気」と云う。)で蒸したり、煮たりする蒸煮機,蒸し庫,蒸煮冷却機などの蒸気調理装置であって、調理後の被調理物を真空冷却する真空冷却機能,凍結した被調理物を真空下にて蒸気により解凍する真空解凍機能を必要に応じて付加することができる。
【0020】
(実施の形態1)
この実施の形態1は、被調理物を収容する調理槽と、この調理槽への給蒸手段と、前記調理槽内の減圧手段と、前記給蒸手段および前記減圧手段を制御する制御器とを備え、前記制御器が、負圧蒸煮を行う第一運転プログラムと、無圧蒸煮を行う第二運転プログラムと、正圧蒸煮を行う第三運転プログラムと、負圧蒸煮,無圧蒸煮および正圧蒸煮のうち少なくとも二つを組み合わせた第四運転プログラムとを選択して実行することを特徴とする蒸気調理装置である。
【0021】
この実施の形態1においては、被調理物に応じて前記第一〜第四運転プログラムを選択的に実行することで、多彩な蒸気調理が可能となり、多様な被調理物の高品質蒸気調理が可能になる。
【0022】
つぎに、この実施の形態の各構成要素について説明する。被調理物は、解凍した肉など種々の蒸気調理用の食品または食材であって、通常、調味液とともに食材容器(ホテルパンや鍋)に入れた状態で前記調理槽内へ収容されて、蒸気調理が行われる。
【0023】
前記調理槽は、被調理物を入れて加熱調理する密閉容器であり、内部に被調理物を収容する空間と、被調理物を出し入れするための扉付き開口とを備えている。
【0024】
前記給蒸手段は、被調理物の加熱用蒸気を前記調理槽内へ供給する手段であり、前記調理槽と蒸気発生装置との間に接続される給蒸ライン(配管)と、この給蒸ライン(配管)中に設ける給蒸弁とを含んで構成される。前記蒸気発生装置(ボイラ)は、好ましくは、純水または軟水を加熱して得られる清浄蒸気を生成するリボイラとする。前記給蒸弁は、好ましくは、比例弁などの開度が調整可能な調整弁とするが、ON−OFFのみの開閉弁としたり、開閉弁および調整弁を直列に接続したものとすることができる。
【0025】
前記減圧手段は、前記調理槽と接続される減圧ライン(配管)と、この減圧ライン中に設ける減圧器とを含む。この減圧器は、好ましくは、蒸気エゼクタ,凝縮用の熱交換器、および真空ポンプまたは水エゼクタの組み合わせとするが、これらの要素の1つまたは複数を組み合わせて構成することができる。また、この減圧手段は、前記排蒸手段として使用することも可能である。
【0026】
前記調理槽には、内部の空気や蒸気を排出するための排蒸手段と、ドレン排出手段とを備える。この排蒸手段は、前記調理槽と接続される排蒸ラインと、この排蒸ライン中に設ける排蒸弁とを含んで構成される。前記ドレン排出手段は、前記調理槽と接続されるドレンラインと、このドレンライン中に設けられるドレン排出弁とを含んで構成される。
【0027】
また、前記調理槽には、その内部を大気圧に復圧する復圧手段を備える。この復圧手段は、前記調理槽と接続される復圧ラインと、この復圧ライン中に設ける復圧制御弁と、空気清浄フィルタとを含んで構成される。
【0028】
また、前記調理槽には、その内部の圧力を検出する圧力検出手段を備え、必要に応じて被調理物温度を検出する温度検出手段を備える。前記調理槽内の飽和蒸気圧力は、飽和蒸気温度と所定の関係を有するので、前記圧力検出手段を温度検出手段(温度センサ)に代えることができる。従って、この出願の明細書において使用する圧力検出手段は温度検出センサを含む。前記温度検出手段は、好ましくは、被調理物に検出部を差し込んで直接的に被調理物の温度を検出する温度センサとするが、被調理物温度を間接的に検出するセンサを用いることができる。
【0029】
前記制御器は、前記圧力検出手段および前記温度検出手段からの信号を入力して、運転プログラムに基づき前記給蒸手段,前記排蒸手段および前記減圧手段などを制御し、所定の加熱パターンを実現する。前記運転プログラムは、負圧蒸煮を行う第一運転プログラムと、無圧蒸煮を行う第二運転プログラムと、正圧蒸煮を行う第三運転プログラムと、負圧蒸煮,無圧蒸煮および正圧蒸煮のうち少なくとも二つを組み合わせた第四運転プログラムとを含み、これらの運転プログラムが選択的に実行される。
【0030】
各運転プログラムの選択は、使用者の選択により行われるが、多数の調理メニューを表示して、特定の調理メニューを選択することにより、前記第一〜第四運転プログラムが自動的に選択されるように構成する。あるいは、被調理物を選択した後、調理パターンを変えるべく前記第一〜第四運転プログラムを選択する。
【0031】
ここで、負圧蒸煮,無圧蒸煮および正圧蒸煮について説明する。負圧蒸煮とは、大気圧より低い加熱目標圧力,すなわち大気圧の飽和温度100℃よりも低い温度による給蒸調理を云い、負圧蒸気調理と称することもできる。無圧蒸煮とは、大気圧を加熱目標圧力,すなわち100℃による給蒸を行いながら排蒸を行う給蒸調理を云い、吹出蒸煮または吹出蒸気調理と称することもできる。さらに正圧蒸煮は、大気圧より高い加熱目標圧力,すなわち100℃よりも高い温度による給蒸調理を云い、正圧蒸気調理と称することもできる。
【0032】
つぎに、前記運転プログラムについて説明する。前記運転プログラムは、第一〜第四運転プログラムにおいて、それぞれに以下の個別プログラムを含ませることができる。すなわち、前記個別プログラムとしては、調理槽内を蒸気で満たすために運転開始時に調理槽内の空気を排除する運転(空気排除運転と称する),温度を一定に保って加熱(蒸煮)する運転(加熱運転または蒸煮運転と称する),一定時間において一定圧力移行する運転(圧力移行運転と称する),被調理物から揮発した成分や空気を排除するために調理槽内を間歇的に排気する運転(間歇排気運転と称する),被調理物の調理槽内の圧力をパルス的に変化させる運転(パルス運転と称する),加熱調理が終了した後に調理槽内を大気圧に戻す運転(復圧運転と称する)そして調理後の被調理物の粗熱を取る運転(粗熱取り運転と称する)を含む。具体的には、前記空気排除運転および加熱運転は、前記各運転プログラムにおいて全ての運転プログラムにて実行される。また、圧力移行運転または復圧運転は、前記第二運転プログラム以外の運転プログラムにて実行される。さらに、前記間歇排気運転,パルス運転および粗熱取り運転は、被調理物の性状に応じて実行される。また、ここで云う「運転」は、工程,段階,操作等とも称することができる。
【0033】
ここで、前記第四運転プログラムについて詳しく説明する。前記第四運転プログラムは、二つの蒸煮を含む運転プログラム,三つの蒸煮を含む運転プログラムおよび四つ以上の蒸煮を含む運転プログラムを組み合わせて構成することができる。以下、二つまたは三つの蒸煮を含む運転プログラムの形態を例示する。二つの蒸煮を含む運転プログラムの場合、負圧蒸煮・無圧蒸煮を順次行う運転プログラム,負圧蒸煮・正圧蒸煮を順次行う運転プログラム,無圧蒸煮・負圧蒸煮を順次行う運転プログラム,無圧蒸煮・正圧蒸煮を順次行う運転プログラム,正圧蒸煮・負圧蒸煮を順次行う運転プログラム,正圧蒸煮・無圧蒸煮を順次行う運転プログラムとして構成することができる。三つの蒸煮を含む運転プログラムの場合、負圧蒸煮・無圧蒸煮・正圧蒸煮を順次行う運転プログラム,負圧蒸煮・正圧蒸煮・無圧蒸煮を順次行う運転プログラム,無圧蒸煮・負圧蒸煮・正圧蒸煮を順次行う運転プログラム,無圧蒸煮・正圧蒸煮・負圧蒸煮を順次行う運転プログラム,正圧蒸煮・無圧蒸煮・負圧蒸煮を順次行う運転プログラム,正圧蒸煮・負圧蒸煮・無圧蒸煮を順次行う運転プログラム,負圧蒸煮・無圧蒸煮・負圧蒸煮を順次行う運転プログラム,負圧蒸煮・正圧蒸煮・負圧蒸煮を順次行う運転プログラム,無圧蒸煮・負圧蒸煮・無圧蒸煮を順次行う運転プログラム,無圧蒸煮・正圧蒸煮・無圧蒸煮を順次行う運転プログラム,正圧蒸煮・負圧蒸煮・正圧蒸煮を順次行う運転プログラム,正圧蒸煮・無圧蒸煮・正圧蒸煮を順次行う運転プログラムとして構成することができる。
【0034】
この実施の形態1によれば、前記第一〜第四運転プログラムを選択的に実行することで、多彩な蒸気調理制御が可能となり、蒸煮調理温度を低温から高温へ上昇変化させたり、高温から低温へ下降変化させたりして多様な被調理物に応じた蒸煮調理を行うことができる。
【0035】
この発明は、前記の実施の形態1に限定されるものではなく、つぎの実施の形態2を含む。
【0036】
(実施の形態2)
実施の形態2は、前記実施の形態1において、前記各運転プログラムのうち負圧蒸煮または正圧蒸煮を多段で行うことを特徴とする蒸気調理装置である。
【0037】
前記実施の形態1は、各蒸煮を一段階とした蒸気調理装置であったのに対して、この実施の形態2は、各蒸煮を二段階もしくは三段階以上として、蒸煮調理温度を変化させて被調理物を蒸煮調理する装置である。
【0038】
この実施の形態2によれば、負圧または正圧蒸煮を含む前記各運転プログラムにおいて、負圧または正圧蒸煮における調理温度を多段に変化させることで、より多彩な蒸気調理が可能になる。
【0039】
(実施の形態3)
実施の形態3は、前記実施の形態1または2において、前記各運転プログラムを選択し、前記運転プログラムの内容を変更可能とすることを特徴とする蒸気調理装置である。
【0040】
この実施の形態3においては、前記各運転プログラムを選択,すなわち呼び出して、使用者が望む運転プログラムの内容に変更することができる。この運転プログラムの変更内容としては、個別プログラムの追加または削除,設定温度(または圧力)または設定時間の変更等を含んでいる。
【0041】
(実施の形態4)
実施の形態4は、前記実施の形態1または2において、前記各運転プログラムの内容の変更を通信により行うことを特徴とする蒸気調理装置である。
【0042】
この実施の形態4においては、変更内容は前記実施の形態3と同様である。前記通信は、インターネット回線,ISDN回線等の通信回線手段を用いて行うことができる。この実施の形態4においては、調理レシピ提供者と使用者とが運転プログラム内容の変更のメンテナンス契約を結び、調理レシピ提供者が定期的に運転プログラム内容を変更するサービスを提供する代わりに、使用者がメンテナンス料を貰うビジネスを行うように構成することができる。とくに、このビジネスには、使用者のニーズに応じた前記運転プログラムの内容を迅速に変更可能な実施の形態4が好適である。
【0043】
(実施の形態5)
実施の形態5は、前記実施の形態3または4において、前記各運転プログラムの変更した内容を記憶可能とすることを特徴とする蒸気調理装置である。
【0044】
この実施の形態5においては、変更した内容の運転プログラムを記憶しておくで、使用者が再度その運転プログラムを呼び出して実行することが可能になる。これにより、使用者は再度運転プログラムを変更する手間が省ける。
【0045】
(実施の形態6)
実施の形態6は、前記実施の形態1または2において、前記各運転プログラムの内容の変更を着脱自在の記憶媒体の交換により行うことを特徴とする蒸気調理装置である。
【0046】
この実施の形態6においては、前記記憶媒体に前記運転プログラムの内容を記憶し、この記憶媒体を別の運転プログラム,すなわち各運転プログラムについて修正または追加したプログラム記憶媒体と交換する。これにより、蒸気調理装置は、多彩な運転プログラムの実行が可能となる。この実施の形態6においては、前記実施の形態4に記載したビジネスを同様に実施可能である。前記記憶媒体としては、半導体メモリ,磁気記憶媒体,光ディスク等を用いることができる。
【0047】
この実施の形態3〜6によれば、使用者の所期の運転プログラムにて蒸気調理を行うことで、より一層多様な被調理物を調理することが可能になる。
【実施例】
【0048】
以下、この発明の調理装置の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明の調理装置の概略構成の説明図である。図2は、第一,第二および第三運転プロ
グラムの処理手順を示すフローチャート図である。図3は、第四運転プログラムの処理手順を示すフローチャート図である。図4は、第一運転プログラムの調理槽内温度/圧力の概略的時間変化を示す特性図である。図5は、第二運転プログラムの調理槽内温度/圧力の概略的時間変化を示す特性図である。図6は、第三運転プログラムの調理槽内温度/圧力の概略的時間変化を示す特性図である。図7は、第四運転プログラムの調理槽内温度/圧力の概略的時間変化を示す特性図である。
【0049】
図1に示す調理装置は、飽和蒸気(以下、単に「蒸気」と云う。)を用いて被調理物(以下、「食材」と云う。)を加熱調理する蒸気調理装置,すなわち蒸煮装置である。
【0050】
図1に基づいて前記蒸煮装置について説明する。この蒸煮装置1は、食材2を収容する調理槽3と、前記調理槽3内へ蒸気を供給して食材2を加熱する加熱手段としての給蒸手段4と、前記調理槽3内の蒸気を排出する排蒸手段5と、前記調理槽3内に溜まったドレンを排出するドレン排出手段6と、前記調理槽3内を吸引排気する減圧手段7と、減圧された前記調理槽3へ外気を導入する外気導入手段8と、前記調理槽3内の圧力を検出する圧力センサ9と、前記圧力センサ9の信号を入力してメモリに記憶した制御手順に基づき前記調理槽3内の蒸気による食材2の調理を制御する制御器10とを主要部として備えている。
【0051】
前記調理槽3は、食材2の出し入れのための扉(符号省略)を備え、内部を大気圧より低い圧力(以下、「負圧」と云う。)から大気圧より高い圧力(以下、「正圧」と云う。)の蒸気で加熱するために、耐圧性の圧力容器として形成している。また、前記調理槽3の外側には、使用者の望む運転プログラムを選択するとともに、所望の調理温度(圧力)と調理時間を任意で入力する設定部11を設ける。
【0052】
前記給蒸手段4は、一端を前記調理槽3に接続し、リボイラからなる蒸気発生源(図示省略)からの清浄蒸気を前記調理槽3内へ供給するための給蒸ライン(配管)12,蒸気の供給を制御する給蒸制御弁13,前記給蒸ライン12に設けられ前記調理槽3内へ蒸気を噴出する蒸気ノズル14を含んで構成される。この蒸気ノズル14は、省略可能である。
【0053】
前記排蒸手段5は、蒸煮中または蒸煮終了後、蒸気を前記調理槽3外へ排出するとともに、正圧の前記調理槽3内を復圧するもので、一端を前記調理槽3と接続し、前記調理槽3内の蒸気を槽外へ排出する排蒸ライン15、排蒸を制御する排蒸制御弁16を含んで構成されている。前記ドレン排出手段6は、前記調理槽3内に溜まったドレンを排出するとともに、前記排蒸手段5と同様に正圧の前記調理槽3内を復圧するもので、一端を前記調理槽3に接続し前記調理槽3内底部に溜まったドレンを槽外へ排出するドレンライン17、ドレンが溜まったのを検知して開くドレントラップ18、ドレンの排出を制御するドレン制御弁19を含んで構成されている。
【0054】
前記減圧手段7は、負圧に前記調理槽3内を減圧するもので、真空吸引用の減圧ライン20と、減圧度を制御する減圧制御弁21、前記減圧ライン20に設けるエゼクタ,熱交換器,真空ポンプ(いずれも図示省略)の一つまたは複数を組み合わせて構成される減圧器22を含んで構成される。前記エゼクタ(図示省略)は、蒸気エゼクタまたは水エゼクタのどちらでも適用できる。前記外気導入手段8は、負圧の前記調理槽内を復圧するもので、一端を前記調理槽3と接続した外気導入ライン23、このライン中に設ける外気導入制御弁24、空気清浄用フィルタ25および逆止弁26を含んで構成されている。
【0055】
前記制御器10は、前記圧力センサ9からの信号を入力し、所定の運転プログラムにしたがい、前記各制御弁13,16,19,21,24および前記減圧器22を制御するよ
うに構成されている。前記各制御弁13,16,19,21,24は、開度調整可能な電磁弁,モータバルブまたは比例制御弁とすることができる。前記制御器10は、前記設定部11にて入力された調理温度(圧力)と調理時間から前記調理槽3内の圧力移行特性線を演算する演算部(図示省略)、前記圧力センサ9にて検出した前記調理槽3内の圧力から温度への換算および前記設定部11から入力された温度から圧力への換算を行う換算部(図示省略)、運転プログラムを記憶する第一記憶装置(たとえばフラッシュメモリ)27を備える。この第一記憶装置27は、着脱自在であって、別の前記第一〜第四運転プログラムを記憶する第二記憶装置27’と交換可能に構成している。さらに、前記制御器10は、ネットワーク28を通じて、運転プログラム情報を配信するサーバ29と通信も可能である。
【0056】
前記運転プログラムとしては、負圧蒸煮を行う第一運転プログラムと、大気圧,すなわち無圧蒸煮を行う第二運転プログラムと、正圧蒸煮を行う第三運転プログラムと、負圧蒸煮,無圧蒸煮および正圧蒸煮のうち少なくとも二つを組み合わせた第四運転プログラムとがある。前記制御器10は、前記各運転プログラムを選択して実行できるように構成されている。
【0057】
<第一運転プログラム>
以下に、前記第一運転プログラムを実行する場合における動作を図1および図4にしたがい説明する。
【0058】
[運転プログラムの選択]
使用者は、前記設定部11にて自らが所望する調理に適した運転プログラムを前記第一〜第四運転プログラムから選択することができ、前記第一運転プログラムを選択する。前記制御器10は、前記第一運転プログラムの選択により、図2に示す個別プログラムを順次実行する。すなわち、前記調理槽3内の空気を排除する空気排除運転(ステップS1),空気排除した後に前記調理槽3内へ蒸気を供給して設定した温度(圧力)に達するまで加圧する圧力移行運転(ステップS2),前記調理槽3内へ蒸気を供給して設定した温度(圧力)に制御しながら加熱調理する加熱運転(ステップS3),加熱運転(ステップS3)終了後に前記調理槽3内を大気圧まで復圧する復圧運転(ステップS4)を順次実行する。
【0059】
[運転条件の設定等]
まず、前記調理槽3内へ食材2を収容し、扉(図示省略)を閉めて密閉状態にする。そして、使用者は、前記設定部11にて蒸気調理を行う際の所望の温度と時間を設定する。この設定時においては、各運転の温度制御を行うための第一設定温度t1,第二設定温度t2、各運転の時間制御を行うための圧力移行運転時間T1,加熱運転時間T2,復圧運転時間T3を使用者によって任意に設定する。
【0060】
ここで、前記第一および第二設定温度t1,t2について詳しく説明する。この前記第一運転プログラムにおいて、前記第一設定温度t1は、圧力移行運転開始温度であって、使用者が前記蒸煮装置1の使用前に初期設定してもよいが、あらかじめ前記運転プログラムに初期設定しておく。これにより使用者の煩雑さを軽減することができる。前記第二設定温度t2は、圧力移行運転終了温度,加熱運転温度および復圧運転開始温度である。この第二設定温度t2は、前記加熱運転(ステップS3)における負圧蒸煮時の設定温度であって、前記第一設定温度t1より高く、かつ大気圧(約1013hPa)の換算温度100℃より低く設定する。この第一および第二設定温度t1,t2は、前記換算部(図示省略)で圧力換算されて、第一および第二設定圧力p1,p2になる。すなわち、前記第一設定圧力p1は、圧力移行運転開始圧力であって、前記第二設定圧力p2は、圧力移行運転終了圧力,加熱運転圧力および復圧運転開始圧力である。
【0061】
[圧力移行特性線の演算]
前記制御器10は、前記第一および第二設定圧力p1,p2と、前記各運転時間T1〜3とに基づいて、前記演算部(図示省略)にて前記圧力移行運転(ステップS2)および前記復圧運転(ステップS4)における図4の各圧力移行特性線A,Bを演算する。図4の各圧力移行特性線A,Bは、破線で表されている時間−調理槽内圧力特性線であって、前記調理槽3内の圧力をフィードバック制御するための基準となる特性線である。また、図4の実線は、時間−調理槽内温度特性線(以下、「温度特性線」と云う。)を表している。演算終了後、使用者は、運転スイッチ(図示省略)をオンにし、前記空気排除運転(ステップS1)を開始する。
【0062】
[個別プログラムの実行]
(空気排除運転:ステップS1)
この空気排除運転(ステップS1)では、まず、前記制御器10は、前記給蒸制御弁13,前記排蒸制御弁16,前記ドレン制御弁19,前記外気導入制御弁24を閉じ、前記減圧器22を作動させるとともに、前記減圧制御弁21を開く。これにより、前記調理槽3内の空気が前記減圧ライン20を通って槽外へ排出される。そして、前記制御器10は、前記調理槽3内の前記圧力センサ9による検出圧力が、前記第一設定圧力p1に達すると、前記減圧手段7を停止させる。この空気排除運転(ステップS1)により、前記調理槽3内の温度(圧力)制御の妨げとなる空気が排出される。このとき、この空気排除運転(ステップS1)では、空気排除を目的とした前記調理槽3内の減圧であるため、図4の温度特性線のように温度変化は起こらない。そして、前記制御器10は、前記減圧器22を停止させるとともに、前記減圧制御弁21を閉じ、この空気排除運転(ステップS1)を終了し、前記圧力移行運転(ステップS2)へ移行する。
【0063】
(圧力移行運転:ステップS2)
つぎに、前記制御器10は、前記圧力移行運転時間T1にて、前記圧力移行特性線Aに基づいて前記第一設定圧力p1,すなわち前記第一設定温度t1から第二設定圧力p2,すなわち前記第二設定温度t2まで前記調理槽3内を加圧する。この圧力移行運転(ステップS2)では、前記給蒸制御弁13の開度を調整して前記蒸気ノズル14から蒸気を前記調理槽3内へ連続的に蒸気供給する。このとき前記給蒸制御弁13以外の制御弁16,19,21,24は閉じている。この圧力移行運転(ステップS2)において、前記制御器10は、前記調理槽3内の温度を前記圧力移行特性線A上に乗るようにフィードバック制御する。そして、前記空気排除運転(ステップS1)後に、この圧力移行運転(ステップS2)を行うことにより、前記圧力移行特性線Aに沿った温度制御が行われる。そして、前記制御器10は、前記第二設定温度t2に到達したことを検知し、前記加熱運転(ステップS3)へ移行する。
【0064】
(加熱運転:ステップS3)
つぎに、前記加熱運転(ステップS3)について説明する。前記制御器10は、前記圧力移行運転(ステップS2)に引き続いて、前記給蒸制御弁13の開度を調整して、前記圧力センサ9にて圧力を検出しながら第二設定圧力p2,すなわち前記第二設定温度t2を一定に維持するように前記調理槽3内へ蒸気を供給し、食材2の蒸煮を行う。この負圧蒸煮時(以下の負圧蒸煮時も同様)は、前記給蒸制御弁13の開度を調整して制御しても、前記調理槽3内の圧力が設定圧力値より上昇する場合がある。この場合、前記制御器8は、所定値上昇すると前記減圧器22を作動させるとともに、前記減圧調整弁21の開度を調整することで設定圧力値を維持する制御をすることができる。前記加熱運転時間T2経過した後、前記制御器10は、前記給蒸制御弁13を閉じ、前記加熱運転(ステップS3)を終了し、前記復圧運転(ステップS4)へ移行する。
【0065】
(復圧運転:ステップS4)
この復圧運転(ステップS4)では、前記制御器10が前記復圧運転時間T3にて、前記圧力移行特性線Bに基づいて前記第二設定圧力p2,すなわち前記第二設定温度t2から大気圧(約1013hPa)までフィードバック制御により前記調理槽3内を復圧する。この第一運転プログラムでは、前記復圧運転(ステップS4)開始時、前記調理槽3内が負圧状態であるため、前記外気導入制御弁24の開度を調整しながら開いて外気導入することで復圧する。この復圧運転(ステップS4)では、負圧状態からの復圧であるため、図4の温度特性線のように温度変化は起こらない。そして、前記制御器10は、前記調理槽3内が大気圧(約1013hPa)まで復圧された後、前記外気導入制御弁24を閉じ、前記復圧運転(ステップS4)終了する。使用者は、前記扉(図示省略)を開いて前記調理槽内から食材2を取り出して、一連の処理を完了する。
【0066】
<第二運転プログラム>
前記第一運転プログラムは、食材2を負圧で蒸煮し、低温でじっくり調理を行う運転プログラムである。これに対して前記第二運転プログラムは、食材2を無圧で蒸煮し、前記調理槽3内を吹き抜けの状態で調理を行う運転プログラムである。以下、前記第二運転プログラムを実行する場合における動作を前記第一運転プログラムと異なる構成のみ、図1および図5にしたがい説明する。
【0067】
[運転プログラムの選択]
使用者は、前記設定部11にて前記第二運転プログラムを選択する。前記制御器10は、前記第二運転プログラムの選択により、図2に示す個別プログラムを順次実行する。前記個別プログラムの流れは前記第一運転プログラムと同様であるので、その説明は省略する。
【0068】
[運転条件の設定等]
使用者は、前記設定部11にて蒸気調理を行う際の所望の温度と時間を設定する。この設定時においては、各運転の温度制御を行うための第一設定温度t1,第三設定温度t3、各運転の時間制御を行うための圧力移行運転時間T1,加熱運転時間T2,復圧運転時間T3を使用者によって任意に設定する。
【0069】
ここで、前記第三設定温度t3について詳しく説明する。この第二運転プログラムにおいて、前記第三設定温度t3は、圧力移行運転終了温度,加熱運転温度,復圧運転開始温度および復圧運転終了温度である。この第三設定温度t3は、前記加熱運転(ステップS3)における無圧蒸煮時の設定温度であるため、大気圧(約1013hPa)の換算温度100℃を設定する。この第三設定温度t3は、前記換算部(図示省略)で圧力換算されて、第三設定圧力p3になる。すなわち、前記第三設定圧力p3は、圧力移行運転終了圧力,加熱運転圧力,復圧運転開始圧力および復圧運転終了圧力であって、大気圧(約1013hPa)である。
【0070】
[圧力移行特性線の演算]
前記制御器10は、前記第一および第三設定圧力p1,p3と、前記各運転時間T1〜3とに基づいて、前記演算部(図示省略)にて前記圧力移行運転(ステップS2)および前記復圧運転(ステップS4)における図5の各圧力移行特性線C,Dを演算する。演算終了後、前記空気排除運転(ステップS1)を開始する。
【0071】
[個別プログラムの実行]
(空気排除運転:ステップS1)
前記空気排除運転(ステップS1)は、前記第一運転プログラムの空気排除運転(ステップS1)と同様であるので、その説明は省略する。
【0072】
(圧力移行運転:ステップS2)
前記空気排除運転(ステップS1)を行った後、前記制御器10は、前記圧力移行運転時間T1にて、前記圧力移行特性線Cに基づいて前記第一設定圧力p1,すなわち前記第一設定温度t1から第三設定圧力p3,すなわち前記第三設定温度t3まで前記調理槽3内の加圧をする。この圧力移行運転(ステップS2)では、前記給蒸制御弁13の開度を調整して前記蒸気ノズル14から蒸気を前記調理槽3内へ連続的に蒸気供給する。このとき前記給蒸制御弁13以外の制御弁16,19,21,24は閉じている。この圧力移行運転(ステップS2)において、前記制御器10は、前記調理槽3内の温度を前記圧力移行特性線C上に乗るようにフィードバック制御する。そして、前記空気排除運転(ステップS1)後に、この圧力移行運転(ステップS2)を行うことにより、前記圧力移行特性線Cに沿った温度制御が行われる。そして、前記制御器10は、前記第三設定温度t3に到達したことを検知し、前記加熱運転(ステップS3)へ移行する。
【0073】
(加熱運転:ステップS3)
前記加熱運転(ステップS3)開始時、前記調理槽3内は無圧状態である。前記制御器10は、この無圧状態で蒸煮を行うため、前記圧力移行運転(ステップS2)に引き続いて、前記給蒸制御弁13の開度を調整するとともに、前記排蒸制御弁16,前記ドレン制御弁19を全開にすることで、前記調理槽3内を吹き抜け状態とする。そして、前記制御器10は、前記圧力センサ9にて圧力を検出しながら第三設定圧力p3,すなわち前記第三設定温度t3である100℃を一定に維持するように前記調理槽3内へ蒸気を供給し、食材2の蒸煮を行う。前記加熱運転時間T2経過した後、前記制御器10は、前記給蒸制御弁13を閉じ、前記加熱運転(ステップS3)を終了し、前記復圧運転(ステップS4)へ移行する。
【0074】
(復圧運転:ステップS4)
この第二運転プログラムでは、前記復圧運転(ステップS4)開始時、前記第三設定圧力p3が大気圧(1013hPa)であるため、前記圧力移行特性線Dおよび図5の温度特性線のように圧力および変化は起こらない。ただし、前記制御器10は、前記調理槽3内の温度を前記圧力移行特性線D上に乗るようにフィードバック制御,すなわち大気圧に沿った温度制御を行う。前記制御器10は、前記加熱運転(ステップS4)に引き続いて、前記排蒸制御弁16および前記ドレン制御弁19を全開にして、前記調理槽3内のドレンを排出する。このとき前記排蒸制御弁16および前記ドレン制御弁19以外の制御弁13,21,24は閉じている。そして、前記制御器10は、前記復圧運転時間T3経過した後、前記排蒸制御弁16,前記ドレン制御弁19を閉じ、前記復圧運転(ステップS4)を終了する。使用者は、前記扉(図示省略)を開いて前記調理槽3内から食材2を取り出して、一連の処理を完了する。
【0075】
<第三運転プログラム>
前記第二運転プログラムは、食材2を無圧で蒸煮し、前記調理槽3内を吹き抜け状態で調理を行う運転プログラムである。これに対して第三運転プログラムは、食材2を正圧で蒸煮し、高温でじっくりまたはすばやく調理する運転プログラムである。以下、前記第三運転プログラムを実行する場合における動作を前記第一運転プログラムと異なる構成のみ、図1および図6にしたがい説明する。
【0076】
[運転プログラムの選択]
使用者は、前記設定部11にて前記第三運転プログラムを選択する。前記制御器10は、前記第三運転プログラムの選択により、図2に示す個別プログラムを順次実行する。前記個別プログラムの流れは前記第一運転プログラムと同様であるので、その説明は省略する。
【0077】
[運転条件の設定等]
使用者は、前記設定部11にて蒸気調理を行う際の所望の温度と時間を設定する。この設定時においては、各運転の温度制御を行うための第一設定温度t1,第四設定温度t4、各運転の時間制御を行うための圧力移行運転時間T1,加熱運転時間T2,復圧運転時間T3を使用者によって任意に設定する。
【0078】
ここで、前記第四設定温度t4について詳しく説明する。この第三運転プログラムにおいて、前記第四設定温度t4は、前記第一運転プログラムの前記第二設定温度t2と同様、圧力移行運転終了温度,加熱運転温度および復圧運転開始温度である。この第四設定温度t4は、前記加熱運転(ステップS3)における正圧蒸煮時の設定温度であって、前記第一設定温度t1より高く、かつ大気圧(約1013hPa)の換算温度100℃より高く設定する。この第四設定温度t4は、前記換算部(図示省略)で圧力換算されて、第四設定圧力p4になる。すなわち、前記第四設定圧力p4は、前記第一運転プログラムの前記第二設定圧力p2と同様に、圧力移行運転終了圧力,加熱運転圧力および復圧運転開始圧力である。
【0079】
[圧力移行特性線の演算]
前記制御器10は、前記第一および第四設定圧力p1,p4と、前記各運転時間T1〜3とに基づいて、前記演算部(図示省略)にて前記圧力移行運転(ステップS2)および前記復圧運転(ステップS4)における図6の各圧力移行特性線E,Fを演算する。演算終了後、前記空気排除運転(ステップS1)を開始する。
【0080】
[個別プログラムの実行]
(空気排除運転:ステップS1)
前記空気排除運転(ステップS1)は、前記第一運転プログラムの空気排除運転(ステップS1)と同様であるので、その説明は省略する。
【0081】
(圧力移行運転:ステップS2)
前記空気排除運転(ステップS1)を行った後、前記制御器10は、前記圧力移行運転時間T1にて、前記圧力移行特性線Eに基づいて前記第一設定圧力p1,すなわち前記第一設定温度t1から第四設定圧力p4,すなわち前記第四設定温度t4まで前記調理槽3内の加圧をする。この圧力移行運転(ステップS2)では、前記給蒸制御弁13の開度を調整して前記蒸気ノズル14から蒸気を前記調理槽3内へ連続的に蒸気供給する。このとき前記給蒸制御弁13以外の制御弁16,19,21,24は閉じている。この圧力移行運転(ステップS2)において、前記制御器10は、前記調理槽3内の温度を前記圧力移行特性線E上に乗るようにフィードバック制御する。そして、前記空気排除運転(ステップS1)後に、この圧力移行運転(ステップS2)を行うことにより、前記圧力移行特性線Eに沿った温度制御が行われる。そして、前記制御器10は、前記第四設定温度t4に到達したことを検知し、前記加熱運転(ステップS3)へ移行する。
【0082】
(加熱運転:ステップS3)
前記制御器10は、前記圧力移行運転(ステップS2)に引き続いて、前記給蒸制御弁13の開度を調整して、前記圧力センサ9にて圧力を検出しながら第四設定圧力p4,すなわち前記第四設定温度t4を一定に維持するように前記調理槽3内へ蒸気を供給し、食材2の蒸煮を行う。前記加熱運転時間T2経過した後、前記制御器10は、前記給蒸制御弁13を閉じ、前記加熱運転(ステップS3)を終了し、前記復圧運転(ステップS4)へ移行する。
【0083】
(復圧運転:ステップS4)
前記制御器10は、前記復圧運転時間T3にて、前記圧力移行特性線Fに基づいて前記第四設定圧力p4,すなわち前記第四設定温度t4から大気圧(約1013hPa)までフィードバック制御により前記調理槽3内を復圧する。この第三運転プログラムでは、前記復圧運転(ステップS4)開始時、前記調理槽3内が正圧状態であるため、前記排蒸制御弁16,前記ドレン制御弁19の開度を調整して、前記調理槽3内のドレンを排出するとともに前記調理槽3内を復圧(減圧)する。この復圧運転(ステップS4)では、正圧状態から大気圧(約1013hPa)までの復圧に伴って、図6の温度特性線に沿って温度が低下する。そして、大気圧(約1013hPa)まで復圧後の前記調理槽3内の温度は、大気圧(約1013hPa)の換算温度である100℃になる。この復圧運転(ステップS4)では、前記調理槽3内の温度を前記圧力移行特性線F上に乗るようにフィードバック制御,すなわち前記圧力移行特性線Fに沿った温度制御が行われる。そして、前記制御器10は、前記調理槽3内が大気圧(約1013hPa)まで復圧された後、前記排蒸制御弁16,前記ドレン制御弁19を閉じ、前記復圧運転(ステップS4)を終了する。使用者は、前記扉(図示省略)を開いて前記調理槽3内から食材2を取り出して、一連の処理を完了する。
【0084】
<第四運転プログラム>
前記第一,第二および第三運転プログラムは、負圧蒸煮,無圧蒸煮および正圧蒸煮をそれぞれ行う運転プログラムである。これに対して前記第四運転プログラムは、負圧蒸煮,無圧蒸煮および正圧蒸煮のうち少なくとも二つ組み合わせて、負圧状態−正圧状態間で蒸煮温度を段階的変化させて調理を行う運転プログラムである。前記第四運転プログラムは、組み合わせにより多彩な蒸気調理運転が可能であるが、負圧状態から正圧状態に圧力移行させて蒸煮温度を低温から高温に段階的変化させる運転プログラムについてのみ例示する。以下、前記第四運転プログラムを実行する場合における動作を前記第一運転プログラムと異なる構成のみ、図1および図7にしたがい説明する。
【0085】
[運転プログラムの選択]
使用者は、前記設定部11にて前記第四運転プログラムを選択する。前記制御器10は、前記第四運転プログラムの選択により、図3に示す個別プログラムを順次実行する。すなわち、前記調理槽3内の空気を排除する空気排除運転(ステップS5),空気排除した後に前記調理槽3内へ蒸気を供給して設定した温度(圧力)に達するまで加圧する第一圧力移行運転(ステップS6),前記調理槽3内へ蒸気を供給して設定した温度(圧力)に制御しながら加熱調理する第一加熱運転(ステップS7),さらに前記調理槽3内へ蒸気を供給し、前記第一加熱運転(ステップS7)の設定温度(圧力)と異なる設定温度(圧力)に圧力移行する第二圧力移行運転(ステップS8),前記調理槽3内へ蒸気を供給して前記第二圧力移行運転(ステップS8)後の設定温度(圧力)に制御しながら加熱調理する第二加熱運転(ステップS9),前記調理槽3内を大気圧(約1013hPa)まで復圧する復圧運転(ステップS10)を順次実行する。
【0086】
[運転条件の設定等]
使用者は、前記設定部11にて蒸気調理を行う際の所望の温度と時間を設定する。この設定時においては、各運転の温度制御を行うための第一設定温度t1,第五設定温度t5,第六設定温度t6、各運転の時間制御を行うための第一圧力移行運転時間T4,第一加熱運転時間T5,第二圧力移行運転時間T6,第二加熱運転時間T7,復圧運転時間T8を使用者によって任意に設定する。
【0087】
ここで、前記第五および第六設定温度t5,t6について詳しく説明する。この第四運転プログラムにおいて、前記第五設定温度t5は、第一圧力移行運転終了温度,第一加熱運転温度および第二圧力移行運転開始温度である。また、前記第六設定温度t6は、第二圧力移行運転終了温度,第二加熱運転温度および復圧運転開始温度である。前記第五設定
温度t5は、前記第一加熱運転(ステップS7)における負圧蒸煮時の設定温度であり、前記第六設定温度t6は、前記第二加熱運転(ステップS9)における正圧蒸煮時の設定温度である。すなわち、前記第五設定温度t5は、前記第一設定温度t1より高く、かつ大気圧(約1013hPa)の換算温度100℃より低く設定する。また、前記第六設定温度t6は、大気圧(約1013hPa)の換算温度100℃より高く設定する。この第五および第六設定温度t5,t6は、前記換算部(図示省略)で圧力換算されて、第五および第六設定圧力p5,p6になる。すなわち、前記第五設定圧力p5は、第一圧力移行運転終了圧力,第一加熱運転圧力および第二圧力移行運転開始圧力であって、前記第六設定圧力p6は、第二圧力移行運転終了圧力,第二加熱運転圧力および復圧運転開始圧力である。
【0088】
[圧力移行特性線の演算]
前記制御器10は、前記第一,第五および第六設定圧力p1,p5,p6と、前記各運転時間T4〜8とに基づいて、前記演算部(図示省略)にて前記第一圧力移行運転(ステップS6),前記第二圧力移行運転(ステップS8)および前記復圧運転(ステップS10)における図7の各圧力移行特性線G,H,Jを演算する。演算終了後、前記空気排除運転(ステップS5)を開始する。
【0089】
[個別プログラムの実行]
(空気排除運転:ステップS5)
前記空気排除運転(ステップS5)は、前記第一運転プログラムの空気排除運転(ステップS1)と同様であるので、その説明は省略する。
【0090】
(第一圧力移行運転:ステップS6)
前記空気排除運転(ステップS6)を行った後、前記制御器10は、前記第一圧力移行運転時間T4にて、前記圧力移行特性線Gに基づいて前記第一設定圧力p1,すなわち前記第一設定温度t1から第五設定圧力p5,すなわち前記第五設定温度t5まで前記調理槽3内の加圧をする。この第一圧力移行運転(ステップS6)では、前記給蒸制御弁13の開度を調整して前記蒸気ノズル14から蒸気を前記調理槽3内へ連続的に蒸気供給する。このとき前記給蒸制御弁13以外の制御弁16,19,21,24は閉じている。この第一圧力移行運転(ステップS6)において、前記制御器10は、前記調理槽3内の温度を前記圧力移行特性線G上に乗るようにフィードバック制御する。そして、前記空気排除運転(ステップS5)後に、この第一圧力移行運転(ステップS6)を行うことにより、前記圧力移行特性線Gに沿った温度制御が行われる。そして、前記制御器10は、前記第五設定温度t5に到達したことを検知し、前記第一加熱運転(ステップS7)へ移行する。
【0091】
(第一加熱運転:ステップS7)
前記制御器10は、前記第一圧力移行運転(ステップS6)に引き続いて、前記給蒸制御弁13の開度を調整して、前記圧力センサ9にて圧力を検出しながら第五設定圧力p5,すなわち前記第五設定温度t5を一定に維持するように前記調理槽3内へ蒸気を供給し、食材2の蒸煮を行う。前記第一加熱運転時間T5経過した後、前記制御器10は、前記第一加熱運転(ステップS7)を終了し、前記第二圧力移行運転(ステップS8)へ移行する。
【0092】
(第二圧力移行運転:ステップS8)
前記制御器10は、前記第一加熱運転(ステップS7)に続いて、前記給蒸制御弁13の開度を調整して、蒸気の供給による前記調理槽3内の加圧を行う。前記制御器10は、前記第二圧力移行運転時間T6にて、前記圧力移行特性線Hに基づいて前記第五設定圧力p5,前記第五設定温度t5から第六設定圧力p6,すなわち前記第六設定温度t6まで
前記調理槽3内の加圧をする。この第二圧力移行運転(ステップS8)では、前記第一圧力移行運転(ステップS6)と同様、前記調理槽3内の温度を前記圧力移行特性線H上に乗るようにフィードバック制御,すなわち前記圧力移行特性線Hに沿った温度制御が行われる。そして、前記制御器10は、前記第六設定温度t6に到達したことを検知し、前記第二加熱運転(ステップS9)へ移行する。
【0093】
(第二加熱運転:ステップS9)
前記制御器10は、前記第二圧力移行運転(ステップS8)に引き続いて、前記給蒸制御弁13の開度を調整して、前記圧力センサ9にて圧力を検出しながら第六設定圧力p6,すなわち前記第六設定温度t6を一定に維持するように前記調理槽3内へ蒸気を供給し、食材2の蒸煮を行う。前記第二加熱運転時間T7経過した後、前記制御器10は、前記給蒸制御弁13を閉じ、前記第二加熱運転(ステップS9)を終了し、前記復圧運転(ステップS10)へ移行する。
【0094】
(復圧運転:ステップS10)
前記制御器10は、前記復圧運転時間T8にて、前記圧力移行特性線Jに基づいて前記第六設定圧力p6,すなわち前記第六設定温度t6から大気圧(約1013hPa)までフィードバック制御により前記調理槽3内を復圧する。ここで例示する前記第四運転プログラムでは、前記復圧運転(ステップS10)開始時、前記調理槽3内が正圧状態であるため、前記排蒸制御弁16,前記ドレン制御弁19の開度を調整しながら、前記調理槽3内のドレンを排出するとともに前記調理槽3内を復圧(減圧)する。この復圧運転(ステップS10)では、正圧状態から大気圧(約1013hPa)までの復圧に伴って、図7の温度特性線に沿って温度が低下する。そして、大気圧(約1013hPa)まで復圧後の前記調理槽3内の温度は、大気圧(約1013hPa)の換算温度である100℃になる。この復圧運転(ステップS10)では、前記調理槽3内の温度を前記圧力移行特性線J上に乗るようにフィードバック制御,すなわち前記圧力移行特性線Jに沿った温度制御が行われる。そして、前記制御器10は、前記調理槽3内が大気圧(約1013hPa)まで復圧された後、前記排蒸制御弁16,前記ドレン制御弁19を閉じ、前記復圧運転(ステップS10)を終了する。使用者は、前記扉(図示省略)を開いて前記調理槽3内から食材2を取り出して、一連の処理を完了する。
【0095】
以上の実施例によれば、前記第一〜第四運転プログラムを食材2の性状に応じて選択して実行することで、多彩に蒸気調理制御が可能となり、多様な食材2の蒸気調理品質を向上することができる。
【0096】
[運転プログラム内容の変更]
前記第一〜第四運転プログラムの内容は、使用者の任意により変更することも可能である。また、変更後の前記第一〜第四運転プログラムの内容は、使用者が前記設定部11を操作することで、前記第一記憶装置27に記憶させることができる。図8は、運転プログラムの変更処理手順を示すフローチャート図である。変更の仕方としては、図8に示すように、使用者が前記設定部11を操作して前記第一記憶装置27にて記憶された運転プログラムを選択して呼び出す(ステップS11)。そして使用者は、呼び出した運転プログラムを確認した上で、前記設定部11から所期の設定温度(圧力)または時間に修正する(ステップS12)。さらに使用者は、前記設定部11を操作して修正済みの運転プログラムを前記第一記憶装置27へ記憶させる(ステップS13)。このように、使用者は、設定した運転プログラムの内容を変更可能とすることで、より一層多様な食材2の蒸気調理が可能となる。
【0097】
また、使用者は、前記第一〜第四運転プログラムの内容を記憶した前記第一記憶装置27を前記第二記憶装置27’と交換可能である。この第二記憶装置27’には、前記第一
記憶装置27に記憶したものと別の内容の前記第一〜第四運転プログラムが記憶されている。これにより、使用者は、食材2に応じて前記記憶装置27,27’を交換して、所期の運転プログラムを呼び出し実行することで、より一層多様な食材2の蒸気調理が可能となる。
【0098】
さらに、前記サーバ29には、調理レシピ提供者により前記第一〜第四運転プログラムを多様に蓄積することができ、使用者が前記設定部11を操作してネットワーク28を通じて所期の運転プログラムをダウンロードして、この運転プログラムを実行することが可能である。使用者は、ダウンロードした運転プログラムを前記第一記憶装置27へ追加して記憶することが可能であって、この運転プログラムを再度呼び出して実行できる。また、調理レシピ提供者は、使用者の需要に応じてネットワーク28を通じて前記第一〜第四運転プログラムの内容を追加,修正等の変更も可能である。
【0099】
この発明は、前記実施例に限定されるものではなく、前記第一〜第四運転プログラムにおいて負圧蒸煮または正圧蒸煮の蒸煮温度を段階的に変化するように構成することができる。以下に、前記第一運転プログラムの変形例として蒸煮温度を低温から高温に段階的変化させる運転プログラムと、前記第三運転プログラムの変形例として蒸煮温度を低温から高温に段階的変化させる運転プログラムとを例示する。図9は、第一運転プログラムの変形例の調理槽内温度/圧力の概略的時間変化を示す特性図である。図10は、第三運転プログラムの変形例の調理槽内温度/圧力の概略的時間変化を示す特性図である。
【0100】
<第一運転プログラムの変形例>
前記第一運転プログラムの変形例を実行する場合における動作を前記第一運転プログラムと異なる構成のみ、図1および図9にしたがい説明する。
【0101】
[運転プログラムの選択]
使用者は、前記設定部11にて前記第一運転プログラムを選択する。前記制御器10は、前記第一運転プログラムの選択により、図3に示す個別プログラムを順次実行する。前記個別プログラムの流れは前記第四運転プログラムと同様であるので、その説明は省略する。
【0102】
[運転条件の設定等]
使用者は、前記設定部11にて蒸気調理を行う際の所望の温度と時間を設定する。この設定時においては、各運転の温度制御を行うための第一設定温度t1,第七設定温度t7,第八設定温度t8、各運転の時間制御を行うための第一圧力移行運転時間T4,第一加熱運転時間T5,第二圧力移行運転時間T6,第二加熱運転時間T7,第三復圧運転時間T8を使用者によって任意に設定する。
【0103】
ここで、前記第七および第八設定温度t7,t8について詳しく説明する。この第一運転プログラムにおいて、前記第七設定温度t7は、第一圧力移行運転終了温度,第一加熱運転温度および第二圧力移行運転開始温度である。また、前記第八設定温度t8は、第二圧力移行運転終了温度,第二加熱運転温度および復圧運転開始温度である。この第七および第八設定温度t7,t8は、前記第一加熱運転(ステップS7)および前記第二加熱運転(ステップS9)における負圧蒸煮時の設定温度である。前記第七設定温度t7は、前記第一設定温度t1より高く、かつ前記第八設定温度t8より低く設定する。また、前記第八設定温度t8は、前記第七設定温度t7より高く、かつ大気圧(約1013hPa)の換算温度100℃より低く設定する。この第七および第八設定温度t7,t8は、前記換算部(図示省略)で圧力換算されて、第七および第八設定圧力p7,p8になる。すなわち、前記第七設定圧力p7は、第一圧力移行運転終了圧力,第一加熱運転圧力および第二圧力移行運転開始圧力であって、前記第八設定圧力p8は、第二圧力移行運転終了圧力,
第二加熱運転圧力および復圧運転開始圧力である。
【0104】
[圧力移行特性線の演算]
前記制御器10は、前記第一,第七および第八設定圧力p1,p7,p8と、前記各運転時間T4〜8とに基づいて、前記演算部(図示省略)にて前記第一圧力移行運転(ステップS6),前記第二圧力移行運転(ステップS8)および前記復圧運転(ステップS10)における図9の各圧力移行特性線K,L,Mを演算する。演算終了後、前記空気排除運転(ステップS5)を開始する。
【0105】
[個別プログラムの実行]
(空気排除運転:ステップS5)
前記空気排除運転(ステップS5)は、前記第一運転プログラムの空気排除運転(ステップS1)と同様であるので、その説明は省略する。
【0106】
(第一圧力移行運転:ステップS6)
前記空気排除運転(ステップS6)を行った後、前記制御器10は、前記第一圧力移行運転時間T4にて、前記圧力移行特性線Kに基づいて前記第一設定圧力p1,すなわち前記第一設定温度t1から第七設定圧力p7,すなわち前記第七設定温度t7まで前記調理槽3内の加圧をする。この第一圧力移行運転(ステップS6)では、前記給蒸制御弁13の開度を調整して前記蒸気ノズル14から蒸気を前記調理槽3内へ連続的に蒸気供給する。このとき前記給蒸制御弁13以外の制御弁16,19,21,24は閉じている。この第一圧力移行運転(ステップS6)において、前記制御器10は、前記調理槽3内の温度を前記圧力移行特性線K上に乗るようにフィードバック制御する。そして、前記空気排除運転(ステップS5)後に、この第一圧力移行運転(ステップS6)を行うことにより、前記圧力移行特性線Kに沿った温度制御が行われる。そして、前記制御器10は、前記第七設定温度t7に到達したことを検知し、前記第一加熱運転(ステップS7)へ移行する。
【0107】
(第一加熱運転:ステップS7)
前記制御器10は、前記第一圧力移行運転(ステップS6)に引き続いて、前記給蒸制御弁13の開度を調整して、前記圧力センサ9にて圧力を検出しながら第七設定圧力p7,すなわち前記第七設定温度t7を一定に維持するように前記調理槽3内へ蒸気を供給し、食材2の蒸煮を行う。前記第一加熱運転時間T5経過した後、前記制御器10は、前記第一加熱運転(ステップS7)を終了し、前記第二圧力移行運転(ステップS8)へ移行する。
【0108】
(第二圧力移行運転:ステップS8)
前記制御器10は、前記第一加熱運転(ステップS7)に続いて、前記給蒸制御弁13の開度を調整して、蒸気の供給による前記調理槽3内の加圧を行う。前記制御器10は、前記第二圧力移行運転時間T6にて、前記圧力移行特性線Lに基づいて前記第七設定圧力p7,前記第七設定温度t7から第八設定圧力p8,すなわち前記第八設定温度t8まで前記調理槽3内の加圧をする。この第二圧力移行運転(ステップS8)では、前記第一圧力移行運転(ステップS6)と同様、前記調理槽3内の温度を前記圧力移行特性線L上に乗るようにフィードバック制御,すなわち前記圧力移行特性線Lに沿った温度制御が行われる。そして、前記制御器10は、前記第八設定温度t8に到達したことを検知し、前記第二加熱運転(ステップS9)へ移行する。
【0109】
(第二加熱運転:ステップS9)
前記制御器10は、前記第二圧力移行運転(ステップS8)に引き続いて、前記給蒸制御弁13の開度を調整して、前記圧力センサ9にて圧力を検出しながら第八設定圧力p8
,すなわち前記第八設定温度t8を一定に維持するように前記調理槽3内へ蒸気を供給し、食材2の蒸煮を行う。前記第二加熱運転時間T7経過した後、前記制御器10は、前記給蒸制御弁13を閉じ、前記第二加熱運転(ステップS9)を終了し、前記復圧運転(ステップS10)へ移行する。
【0110】
(復圧運転:ステップS10)
前記制御器10は、前記復圧運転時間T8にて、前記圧力移行特性線Mに基づいて前記第八設定圧力p8,すなわち前記第八設定温度t8から大気圧(約1013hPa)までフィードバック制御により前記調理槽3内を復圧する。この第一運転プログラムでは、前記復圧運転(ステップS10)開始時、前記調理槽3内が負圧状態であるため、前記外気導入制御弁24の開度を調整しながら開いて外気導入することで復圧する。この復圧運転(ステップS10)では、負圧状態からの復圧であるため、図9の温度特性線のように温度変化は起こらない。そして、前記制御器10は、前記調理槽3内が大気圧(約1013hPa)まで復圧された後、前記外気導入制御弁24を閉じ、復圧運転(ステップS10)終了する。使用者は、前記扉(図示省略)を開いて前記調理槽3内から食材2を取り出して、一連の処理を完了する。
【0111】
<第三運転プログラムの変形例>
前記第三運転プログラムの変形例を実行する場合における動作を前記第一運転プログラムと異なる構成のみ、図1および図10にしたがい説明する。
【0112】
[運転プログラムの選択]
使用者は、前記設定部11にて前記第三運転プログラムを選択する。前記制御器10は、前記第三運転プログラムの選択により、図3に示す個別プログラムを順次実行する。前記個別プログラムの流れは前記第四運転プログラムと同様であるので、その説明は省略する。
【0113】
[運転条件の設定等]
使用者は、前記設定部11にて蒸気調理を行う際の所望の温度と時間を設定する。この設定時においては、各運転の温度制御を行うための第一設定温度t1,第九設定温度t9,第十設定温度t10、各運転の時間制御を行うための第一圧力移行運転時間T4,第一加熱運転時間T5,第二圧力移行運転時間T6,第二加熱運転時間T7,復圧運転時間T8を使用者によって任意に設定する。
【0114】
ここで、前記第九および第十設定温度t9,t10について詳しく説明する。この第三運転プログラムにおいて、前記第九設定温度t9は、第一圧力移行運転終了温度,第一加熱運転温度および第二圧力移行運転開始温度である。また、前記第十設定温度t10は、第二圧力移行運転終了温度,第二加熱運転温度および復圧運転開始温度である。この第九および第十設定温度t9,t10は、前記第一加熱運転(ステップS7)および前記第二加熱運転(ステップS9)における正圧蒸煮時の設定温度である。前記第九設定温度t9は、大気圧(約1013hPa)の換算温度100℃より高く、かつ前記第十設定温度t10より低く設定する。また、前記第十設定温度t10は、前記第九設定温度t9より高く設定する。この第九および第十設定温度t9,t10は、前記換算部(図示省略)で圧力換算されて、第九および第十設定圧力p9,p10になる。すなわち、前記第九設定圧力p9は、第一圧力移行運転終了圧力,第一加熱運転圧力および第二圧力移行運転開始圧力であって、前記第十設定圧力p10は、第二圧力移行運転終了圧力,第二加熱運転圧力および復圧運転開始圧力である。
【0115】
[圧力移行特性線の演算]
前記制御器10は、前記第一,第九および第十設定圧力p1,p9,p10と、前記各
運転時間T4〜8とに基づいて、前記演算部(図示省略)にて前記第一圧力移行運転(ステップS6),前記第二圧力移行運転(ステップS8)および前記復圧運転(ステップS10)における図10の各圧力移行特性線N,Q,Rを演算する。演算終了後、前記空気排除運転(ステップS5)を開始する。
【0116】
[個別プログラムの実行]
(空気排除運転:ステップS5)
前記空気排除運転(ステップS5)は、前記第一運転プログラムの空気排除運転(ステップS1)と同様であるので、その説明は省略する。
【0117】
(第一圧力移行運転:ステップS6)
前記空気排除運転(ステップS5)を行った後、前記制御器10は、前記第一圧力移行運転時間T4にて、前記圧力移行特性線Nに基づいて前記第一設定圧力p1,すなわち前記第一設定温度t1から第九設定圧力p9,すなわち前記第九設定温度t9まで前記調理槽3内の加圧をする。この第一圧力移行運転(ステップS6)では、前記給蒸制御弁13の開度を調整して前記蒸気ノズル14から蒸気を前記調理槽3内へ連続的に蒸気供給する。このとき前記給蒸制御弁13以外の制御弁16,19,21,24は閉じている。この第一圧力移行運転(ステップS6)において、前記制御器10は、前記調理槽3内の温度を前記圧力移行特性線N上に乗るようにフィードバック制御する。そして、前記空気排除運転(ステップS5)後に、この第一圧力移行運転(ステップS6)を行うことにより、前記圧力移行特性線Nに沿った温度制御が行われる。そして、前記制御器10は、前記第九設定温度t9に到達したことを検知し、前記第一加熱運転(ステップS7)へ移行する。
【0118】
(第一加熱運転:ステップS7)
前記制御器10は、前記第一圧力移行運転(ステップS6)に引き続いて、前記給蒸制御弁13の開度を調整して、前記圧力センサ9にて圧力を検出しながら第九設定圧力p9,すなわち前記第九設定温度t9を一定に維持するように前記調理槽3内へ蒸気を供給し、食材2の蒸煮を行う。前記第一加熱運転時間T5経過した後、前記制御器10は、前記第一加熱運転(ステップS7)を終了し、前記第二圧力移行運転(ステップS8)へ移行する。
【0119】
(第二圧力移行運転:ステップS8)
前記制御器10は、前記第一加熱運転(ステップS7)に続いて、前記給蒸制御弁13の開度を調整して、蒸気の供給による前記調理槽3内の加圧を行う。前記制御器10は、前記第二圧力移行運転時間T6にて、前記圧力移行特性線Qに基づいて前記第九設定圧力p9,前記第九設定温度t9から第十設定圧力p10,すなわち前記第十設定温度t10まで前記調理槽3内の加圧をする。この第二圧力移行運転(ステップS8)では、前記第一圧力移行運転(ステップS6)と同様、前記調理槽3内の温度を前記圧力移行特性線Q上に乗るようにフィードバック制御,すなわち前記圧力移行特性線Qに沿った温度制御が行われる。そして、前記制御器10は、前記第十設定温度t10に到達したことを検知し、前記第二加熱運転(ステップS9)へ移行する。
【0120】
(第二加熱運転:ステップS9)
前記制御器10は、前記第二圧力移行運転(ステップS8)に引き続いて、前記給蒸制御弁13の開度を調整して、前記圧力センサ9にて圧力を検出しながら第十設定圧力p10,すなわち前記第十設定温度t10を一定に維持するように前記調理槽3内へ蒸気を供給し、食材2の蒸煮を行う。前記第二加熱運転時間T7経過した後、前記制御器10は、前記給蒸制御弁13を閉じ、前記第二加熱運転(ステップS9)を終了し、前記復圧運転(ステップS10)へ移行する。
【0121】
(復圧運転:ステップS10)
前記制御器10は、前記復圧運転時間T8にて、前記圧力移行特性線Rに基づいて前記第十設定圧力p10,すなわち前記第十設定温度t10から大気圧(約1013hPa)までフィードバック制御により前記調理槽3内を復圧する。この第三運転プログラムでは、前記復圧運転(ステップS10)開始時、前記調理槽3内が正圧状態であるため、前記排蒸制御弁16,前記ドレン制御弁19の開度を調整しながら、前記調理槽3内のドレンを排出するとともに前記調理槽3内を復圧(減圧)する。この復圧運転(ステップS10)では、正圧状態から大気圧(約1013hPa)までの復圧に伴って、図10の温度特性線に沿って温度が低下する。そして、大気圧(約1013hPa)まで復圧後の前記調理槽3内の温度は、大気圧(約1013hPa)の換算温度である100℃になる。この復圧運転(ステップS10)では、前記調理槽3内の温度を前記圧力移行特性線R上に乗るようにフィードバック制御,すなわち前記圧力移行特性線Rに沿った温度制御が行われる。そして、前記制御器10は、前記調理槽3内が大気圧(約1013hPa)まで復圧された後、前記排蒸制御弁16,前記ドレン制御弁19を閉じ、前記復圧運転(ステップS10)を終了する。使用者は、前記扉(図示省略)を開いて前記調理槽3内から食材2を取り出して、一連の処理を完了する。
【0122】
前記変形例によれば、前記第一〜第四運転プログラムのうち負圧蒸煮または正圧蒸煮を多段で行うことで、より多彩に蒸気調理制御が可能となり、多様な食材の蒸気調理品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】この発明の調理装置の概略構成の説明図である。
【図2】第一,第二および第三運転プログラムの処理手順を示すフローチャート図である。
【図3】第四運転プログラムの処理手順を示すフローチャート図である。
【図4】第一運転プログラムの調理槽内温度/圧力の概略的時間変化を示す特性図である。
【図5】第二運転プログラムの調理槽内温度/圧力の概略的時間変化を示す特性図である。
【図6】第三運転プログラムの調理槽内温度/圧力の概略的時間変化を示す特性図である。
【図7】第四運転プログラムの調理槽内温度/圧力の概略的時間変化を示す特性図である。
【図8】運転プログラムの変更処理手順を示すフローチャート図である。
【図9】第一運転プログラムの変形例の調理槽内温度/圧力の概略的時間変化を示す特性図である。
【図10】第三運転プログラムの変形例の調理槽内温度/圧力の概略的時間変化を示す特性図である。
【符号の説明】
【0124】
2 食材(被調理物)
3 調理槽
4 給蒸手段
7 減圧手段
10 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収容する調理槽と、この調理槽への給蒸手段と、前記調理槽内の減圧手段と、前記給蒸手段および前記減圧手段を制御する制御器とを備え、前記制御器が、負圧蒸煮を行う第一運転プログラムと、無圧蒸煮を行う第二運転プログラムと、正圧蒸煮を行う第三運転プログラムと、負圧蒸煮,無圧蒸煮および正圧蒸煮のうち少なくとも二つを組み合わせた第四運転プログラムとを選択して実行することを特徴とする蒸気調理装置。
【請求項2】
前記各運転プログラムのうち正圧蒸煮または負圧蒸煮を多段で行うことを特徴とする請求項1に記載の蒸気調理装置。
【請求項3】
前記各運転プログラムを選択し、前記各運転プログラムの内容を変更可能とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸気調理装置。
【請求項4】
前記各運転プログラムの内容の変更を通信により行うことを特徴とする請求項1または2に記載の蒸気調理装置。
【請求項5】
前記各運転プログラムの変更した内容を記憶可能とすることを特徴とする請求項3または4に記載の蒸気調理装置。
【請求項6】
前記各運転プログラムの内容の変更を着脱自在の記憶媒体の交換により行うことを特徴とする請求項1または2に記載の蒸気調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−190173(P2007−190173A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10881(P2006−10881)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】