説明

蒸気調理装置

【課題】 初期給蒸による空気障害を防止することを目的としている。
【解決手段】 被調理物1を収容する調理室2と、蒸気発生器12から前記調理室2への給蒸ライン13およびこの給蒸ライン13に設けた給蒸弁14を含む給蒸手段3と、前記調理室2内の減圧手段5と、前記給蒸手段3および前記減圧手段5を制御して前記調理室2内を減圧する減圧工程により排気を行う空気排除工程およびこの空気排除工程後に前記調理室2内へ給蒸して加熱目標圧力にて給蒸調理する給蒸調理工程を行う制御器28とを備え、前記制御器28は、前記空気排除工程の初期減圧工程において前記給蒸弁14を開くことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被調理物を蒸気により蒸したり、煮たりする蒸気調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種調理装置は、例えば特許文献1などにて知られている。この特許文献1に記載の調理装置は、調理室内へ蒸気を供給して被調理物を蒸煮するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2005−65797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような調理装置においては、給蒸調理を効果的に行うために、減圧排気による空気排除工程の後、給蒸調理工程が行われる。発明者らは、蒸気調理器の研究開発の過程において、調理室内の圧力を大気圧未満の低圧として給蒸調理(負圧蒸煮)を行う場合、給蒸開始時ボイラに溜まっていた空気が調理室内へ供給され、この空気により所期の調理が行えない(空気障害が発生する)という課題を見出した。
この発明は、初期給蒸による空気障害を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被調理物を収容する調理室と、蒸気発生器から前記調理室への給蒸ラインおよびこの給蒸ラインに設けた給蒸弁を含む給蒸手段と、前記調理室内の減圧手段と、前記給蒸手段および前記減圧手段を制御して前記調理室内を減圧する減圧工程により排気を行う空気排除工程およびこの空気排除工程後に前記調理室内へ給蒸して調理する給蒸調理工程を行う制御器とを備え、前記制御器は、前記空気排除工程の初期減圧工程において前記給蒸弁を開くことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、前記空気排除工程において、給蒸開始時に前記蒸気発生器に存在する空気を効果的に排出でき、空気障害による調理不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、蒸気により、被調理物を煮たり、蒸したりする蒸煮機,蒸し庫,蒸煮冷却機などの蒸気調理装置に適用される。
【0008】
この発明の装置の実施の形態について具体的に説明する。この実施の形態は、被調理物を収容する調理室と、蒸気発生器から前記調理室への給蒸ラインおよびこの給蒸ラインに設けた給蒸弁を含む給蒸手段と、前記調理室内の減圧手段と、前記給蒸手段および前記減圧手段を制御して前記調理室内の減圧排気を行う空気排除工程およびこの空気排除工程後に前記調理室内へ給蒸して加熱目標圧力にて給蒸調理する給蒸調理工程を行う制御器とを備え、前記制御器は、前記空気排除工程の初期減圧工程において前記給蒸弁を開くことを特徴とする蒸気調理装置である。
【0009】
この実施の形態においては、前記調理室内を低圧に保持して蒸気調理を行う場合には、被調理物を前記調理室内へ収容し、まず前記調理室内の空気排除処理(第一空気排除処理)をなす空気排除工程を行う。この空気排除工程は、前記減圧手段を作動させて前記調理
室内の空気を前記調理室外へ排出する。この空気排除工程においては、前記調理室内の減圧は、前記減圧手段を作動させて減圧目標圧力まで行われる。その後、前記減圧手段を停止して前記給蒸手段を作動させ、前記調室内圧力が加熱目標圧力となるまで加圧する加圧工程を行う。加熱目標圧力となると、その後は、前記調理室内圧力が加熱目標圧力を保持するように前記給蒸手段を制御する調理工程を行う。この調理工程においては、前記調理室内圧力が前記給蒸手段を停止しても基本的には前記減圧手段を作動させず、前記調理室内圧力が設定値まで上昇した場合のみ前記減圧手段を作動させて加熱目標圧力となるように制御する。
【0010】
この実施の形態では、前記蒸気発生器および前記給蒸ライン中の空気を給蒸開始時に排除する空気排除処理(第二空気排除処理)を行う。この第二空気排除処理は、前記空気排除工程の初期減圧工程において、前記給蒸弁を開くことにより行う。前記給蒸弁を開くと、前記蒸気発生器から前記調理室内への給蒸が開始される。
【0011】
前記蒸気発生器には、初期給水しているときや運転停止後の最初の給蒸を行うとき、前記蒸気発生器および給蒸ライン中には空気が存在する。前記蒸気発生器による給蒸開始時の蒸気には、この空気が含まれるが、この空気は前記減圧手段の減圧により前記調理室内の空気とともに外部へ排出される。その結果、空気障害による調理不良を防止できる。この調理不良は、この実施の形態では、調理室内に空気がないとして飽和蒸気圧力と温度の関係によって制御を行うので、空気があるとその分圧だけ温度が狂うことによる。また、調理不良は、空気が残っていると加熱むらを生ずることにもよる。
【0012】
つぎに、この実施の形態の各構成要素について説明する。前記被調理物は、解凍した肉など種々の蒸気調理用の食品または食材であって、通常、調味液とともに食材容器(ホテルパンや鍋)に入れた状態で前記調理室内へ収容されて、蒸気調理が行われる。
【0013】
前記調理室は、被調理物を入れて加熱調理する密閉容器であり、内部に被調理物を収容する空間と被調理物を出し入れするための扉付き開口を備えている。
【0014】
前記給蒸手段は、被調理物の加熱用蒸気を前記調理室内へ供給する手段であり、前記調理室と蒸気発生器との間に接続される給蒸ライン(配管)とこの給蒸ライン(配管)中に設ける給蒸弁とを含んで構成される。前記蒸気発生器(ボイラ)は、好ましくは、純水または軟水を加熱して得られる清浄蒸気を生成するリボイラとする。前記給蒸弁は、好ましくは、開度が調整可能な弁とするが、ON−OFFのみの開閉弁とすることができる。
【0015】
前記減圧手段は、前記調理室と接続される減圧ライン(配管)と、この減圧ライン中に設ける減圧器を含む。この減圧器は、好ましくは、蒸気エゼクタ,凝縮用の熱交換器、および真空ポンプまたは水エゼクタの組み合わせとするが、これらの要素の1つまたは複数を組み合わせて構成することができる。また、この減圧手段は、前記排蒸手段として使用することも可能である。
【0016】
前記調理室には、内部の空気や蒸気を排出するための排蒸手段とドレン排出手段を備える。この排蒸手段は、前記調理室と接続される排蒸ラインとこの排蒸ライン中に設ける排蒸弁を含む。前記ドレン排出手段は、前記調理室と接続されるドレンラインとこのドレンライン中に設けられるドレン排出弁を含む。
【0017】
また、前記調理室には、その内部を大気圧に復圧する復圧手段を備える。この復圧手段は、前記調理室と接続される復圧ラインと、この復圧ライン中に設ける復圧制御弁および空気清浄フィルタを含む。
【0018】
さらに、前記調理室には、その内部の圧力を検出する圧力検出手段を備え、必要に応じて被調理物温度(品温)を検出する温度検出手段を備える。前記調理室内の飽和蒸気圧力は、飽和蒸気温度と所定の関係を有するので、前記圧力検出手段を温度検出手段(温度センサ)に代えることができる。従って、この出願の明細書において使用する圧力検出手段は温度検出センサを含む。前記温度検出手段は、好ましくは、被調理物に検出部を差し込んで直接的に被調理物の温度を検出する温度センサとするが、被調理物温度を間接的に検出するセンサを用いることができる。
【0019】
前記制御手段は、前記圧力検出手段および前記温度検出手段からの信号を入力して、調理プログラムに基づき前記給蒸手段,前記排蒸手段および前記減圧手段などを制御する。前記調理プログラムは、前記調理室内の空気を排除する空気排除工程,空気排除工程後に前記調理室内へ蒸気を供給して所定の加熱目標圧力に制御しながら加熱調理する給蒸調理工程および給蒸調理工程後に前記調理室内を大気圧に復圧する復圧工程などを含む。前記加熱目標圧力は、大気圧以上とすることもできるし、大気圧以下とすることもできる。大気圧以上の加熱目標圧力による給蒸調理を正圧蒸煮と称し(正圧蒸気調理と称することもできる。)、大気圧以下の加熱目標圧力による給蒸調理を負圧蒸煮と称し(負圧蒸気調理と称することもできる。)ている。加熱目標圧力は、調理目標圧力と称することもできる。
【0020】
前記空気排除工程は、前記排蒸弁および前記ドレン排出弁を閉じ、前記減圧手段を作動させ、前記調理室内圧力が減圧目標圧力となるまで減圧することにより行う。そして、この減圧工程後に、前記減圧手段を停止して前記給蒸手段を作動させて給蒸目標圧力まで加圧する(加圧工程)。ここで、1回のみの減圧工程により前記空気排除工程を行う場合には、前記加圧工程は、前記空気排除工程に含めないものとする。前記空気排除工程は、1回のみの減圧工程ではなく、前記減圧工程−前記加圧工程−前記減圧工程といったように前記減圧工程を複数回と前記減圧工程間に前記加圧工程を入れて行うように構成することができる。この構成を複数回真空パルスと称する。
【0021】
前記給蒸調理工程は、前記空気排除工程後に前記排蒸弁および前記ドレン排出弁を閉じ、前記減圧手段の作動を停止し前記給蒸手段を作動させて前記調理室内圧力が加熱目標圧力となるまでに加圧する加圧工程と、この加圧工程後に前記調理室内圧力が加熱目標圧力を保持するように前記給蒸手段および前記減圧手段の作動を制御する調理工程とを含む。
【0022】
前記負圧蒸煮における調理工程は、前記排蒸弁および前記ドレン排出弁を閉じ、前記給蒸手段の作動と停止とを繰り返して行い、前記調理室内圧力が加熱目標圧力より所定値上昇した時のみ前記減圧手段を作動させ、前記調理室内圧力を大気圧より低い圧力として調理する。
【0023】
この実施の形態においては、負圧蒸煮時および/または正圧蒸煮時に前記第二空気排除処理を実行する。この第二空気排除処理は、前記給蒸調理工程前の空気排除工程中の最初の減圧工程(初期減圧工程)において実施される。前記第二空気排除処理は、初期減圧工程中に前記給蒸弁を開くことにより行われる。そして、前記第二空気排除処理は、好ましくは、前記初期減圧中の途中において所定の間だけ前記給蒸弁を開くことにより行う。こうすることにより、前記給蒸弁をずっと開いて行う場合の不都合,すなわち減圧ができなかっったり、減圧時間が長くかかるという問題や省エネルギーとならないという問題を解消することができる。
【0024】
まず、前記給蒸弁開閉の第一の態様を説明する。この第一態様においては、前記給蒸弁の開放開始は、好ましくは、前記初期減圧工程の開始から前記調理室内圧力Pが第一設定圧力P1まで所定圧力低下した時点とし、前記給蒸弁の閉止は、好ましくは、前記給蒸弁
の開放開始から第一設定時間T1経過か、または前記調理室内圧力Pが第二設定圧力P2まで下がった時点とする。前記給蒸弁の開度は、初期設定値に対してその値を調整可能に構成することができる。
【0025】
この第一態様において、前記第二設定圧力の条件を付加することにより、つぎの効果を奏することができる。すなわち、前記第二設定圧力の条件を付加しないと、前記減圧手段による減圧能力の方が強くて給蒸中もどんどん圧力が下がってしまう場合、被調理物の温度相当の飽和蒸気圧力より下がってしまい、被調理物が冷えてしまったり飛散する虞がある。前記第二設定圧力の条件を付加することにより、こうした不都合を解消することができる。また、この第一態様によれば、前記蒸気発生器や給蒸ラインからの空気排除を行えるのみならず、初期減圧工程時に給蒸することにより、その後の減圧終了時に前記調理室内の空気分圧をさらに低めることができるという効果を奏する。
【0026】
前記第一設定圧力P1は、初期減圧工程の減圧目標圧力P0に第一調整値Aを加えた圧力とすることができる。前記減圧目標圧力P0は、固定値P4とするか、品温に第二調整値Bを加えた値の相当圧力とすることができる。前記第一調整値Aおよび前記第二調整値Bはその値を可変とすることができる。また、前記第一設定時間T1も可変とすることができる。
【0027】
以上は、前記空気排除工程における減圧工程が1回の場合であるが、複数回の場合は、各減圧工程毎に各減圧工程開始前に品温を確認して、前記第二調整値Bを変更するように構成することができる。
【0028】
また、前記給蒸弁の開閉は、つぎ第二の態様とすることができる。すなわち、前記空気排除工程の開始という条件と前記蒸気発生器内の圧力が第三設定値P3以上との条件とを共に満たした状態が第二設定時間T2だけ継続されると、前記給蒸弁を設定開度以上で開く。前記給蒸弁の閉止条件は、開放開始から第三時間T3が経過した時点とすることができる。この第二態様は、前記第一態様よりも高い圧力で空気排除のための給蒸を行なう場合に有効であり、高い圧力状態とすることにより前記減圧手段の能力が高いので、早く空気排除を完了することができる。
【0029】
また、この実施の形態においては、前記第二空気排除処理に加えて、つぎの二つの第二空気排除処理の一つまたは二つを加えることができる。これにより、空気排除をより確実におこなうことができる。
【0030】
追加の第二空気排除処理の一つは、負圧蒸煮による調理工程の開始時に、前記減圧手段を所定時間作動させて前記調理室内の空気排除を強制的に行う(強制排気運転)ものである。この強制排気運転とは、この調理工程においては前記調理室内を加熱目標圧力に制御するために前記減圧手段を作動させることがあるが、これと独立して前記減圧手段を作動させるということを意味している。前記強制排気運転は、好ましくは、前記減圧手段を連続的に作動させることにより行うが、間欠的に作動させて行うように構成することができる。
【0031】
追加の第二空気排除処理の二つ目は、前記蒸気発生器と前記調理室とを結ぶ給蒸ラインの前記給蒸弁上流側に、検出温度が設定値より低いと開き、設定値より高いと閉じる空気排除弁を設けることにより行うものである。この形態によれば、給蒸開始時当初は空気を含んだ温度の低い蒸気が前記空気排除弁に流れてくるので、この空気排除弁が開き、空気を排出する。空気が抜けると蒸気の温度が上昇するので、閉じ、その後の給蒸中も閉止を維持する。前記空気排除弁は、自ら温度検出部を有する機械的作動弁とするか、前記給蒸ラインの温度を検出するセンサにより開閉される電磁弁とすることができる。
【0032】
また、前記正圧蒸煮における前記調理工程は、前記排蒸弁を閉じ、前記給蒸手段を作動させて、加熱目標圧力を大気圧以上の高圧として行う。この場合において、前記ドレン排出弁を間欠的に開いて調理槽内のドレンを排出する。そして、ドレン排出弁の下流側にスチームトラップを設けている場合は、前記ドレン排出弁を常時開いてドレンを排出するように構成することができる。この正圧蒸煮時には、給蒸とともに空気が供給されたとしても前記ドレン排出弁や前記スチームトラップを通して蒸気とともに空気が排出される。しかしながら、前記スチームトラップから空気がすべて効率よく抜けるわけではないので、この実施の形態においては、好ましくは、前記第二空気排除処理を正圧蒸煮時にも行うように構成する。
【0033】
この実施の形態1においては、少なくと負圧蒸煮を行うものとし、好ましくは負圧蒸煮に加えて正圧蒸煮を行うように構成する。
【実施例1】
【0034】
(実施例1の構成)
以下、この発明の調理装置の具体的実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、実施例1の概略構成図であり、図2は、同実施例1の負圧蒸煮時の空気排除工程を説明するフローチャート図である。
【0035】
この実施例1の調理装置は、蒸気を用いて被調理物を蒸煮により加熱調理する蒸気調理装置である。この蒸気調理装置は、前記正圧蒸煮と前記負圧蒸煮とを選択して行うように構成されている。
【0036】
そして、この実施例1の蒸気調理装置は、被調理物1を収容する調理室2、前記調理室2内へ蒸気を供給して被調理物1を加熱する加熱手段としての給蒸手段3、前記調理室2内の蒸気を排出する排蒸手段4、前記調理室2内を吸引排気する減圧手段5、減圧された前記調理室2へ外気を導入することにより復圧する復圧手段6を主要部として備えている。そして、前記調理室2内に溜まったドレンを排出するドレン排出手段7、前記調理室2内圧力を検出する第一圧力センサ8および被調理物1に検出部を差し込んで被調理物温度(品温)を検出する温度センサ9を備えている。
【0037】
前記調理室2は、被調理物1の出し入れのための扉11(図1では、紙面の奥側に設けている)を備え、内部を大気圧以上で蒸気加熱する正圧蒸煮を行うために、耐圧性の圧力容器として形成している。
【0038】
前記給蒸手段3は、一端を前記調理室2と接続し、リボイラからなる蒸気発生器12からの蒸気を前記調理室2内へ供給するための給蒸ライン(配管)13,蒸気の供給を制御する給蒸弁14,前記給蒸ライン13に設けられ前記調理室2内へ蒸気を噴出する蒸気ノズル15を含んで構成される。前記給蒸弁14は、比例弁などの開度が調節可能な開度調整弁としている。
【0039】
前記排蒸手段4は、主として大気圧を超える正圧蒸煮終了後、蒸気を前記調理室2外へ排出するために使用されるもので、一端を前記調理室2と接続し、前記調理室2内の蒸気を室外へ排出する排蒸ライン16、排蒸を制御する排蒸弁17を含んで構成されている。
【0040】
前記ドレン排出手段7は、前記調理室2内に溜まったドレンを排出するためのもので、一端を前記調理室2と接続し前記調理室2内底部に溜まったドレンを室外へ排出するドレンライン18、所定温度以下を検出して開くスチームトラップ19、ドレンの排出を制御するドレン排出弁21を含んで構成されている。
【0041】
前記減圧手段5は、真空吸引用の減圧ライン22とこれに設けるエゼクタ,熱交換器,真空ポンプまたは水エゼクタ(いずれも図示省略)の一つまたは複数を組み合わせて構成される減圧器23および前記調理室2方向への流れを阻止する逆止弁(図示省略)を含んで構成される。
【0042】
前記復圧手段6は、一端を前記調理室2と接続した復圧ライン(外気導入ライン)24、このライン24中に設ける復圧弁(外気導入弁)25、空気清浄用フィルタ26および逆止弁27を含んで構成されている。
【0043】
前記各弁14,17,21,25,前記減圧器23,前記第一圧力センサ8および温度センサ9は、制御器28と接続される。前記制御器28は、前記第一圧力センサ8などからの信号を入力し、所定の処理手順(調理プログラム)に従い、前記各制御弁14,17,21,25および前記減圧器23を制御するように構成されている。
【0044】
前記調理プログラムは、前記処理室2内の空気を排除する空気排除工程,空気排除工程後に前記調理室2内へ蒸気を供給して所定の加熱目標圧力PKに制御しながら加熱調理する給蒸調理工程,給蒸調理工程後に前記調理室2内の蒸気を排出し、大気圧に復圧する復圧工程などを含む。
【0045】
前記調理プログラムは、被調理物1の種類などに適した複数のプログラムを前記制御器28に記憶しておき、被調理物1の種類などに応じて選択して実行するように構成することができる。この調理プログラムの選択方法として、被処理物1の包装材などに添付のICタグやバーコードに被調理物1に対応した調理情報を記憶しておき、調理の前にバーコードリーダーなどの調理情報読み取り手段(図示省略)により前記調理情報を読み取って、この調理情報に対応する調理プログラムを選択する方法を採用することができる。また、前記調理情報として、温度,圧力,時間などの調理条件を記憶しておき、調理の前に前記調理情報を読み取って、読み取った調理情報に対応する調理条件で調理を実行するように構成することができる。さらに、前記調理プログラムや前記調理条件は、前記制御器28に記憶させるのではなく、通信回線や通信網で前記制御器28と接続された管理装置(図示省略)に記憶しておき、前記調理情報の読み取り後に前記管理装置へアクセスして前記調理プログラムや前記調理条件を前記制御器28にダウンロードして、調理を実行するように構成することができる。
【0046】
前記空気排除工程は、前記減圧器23を作動させて、前記調理室2内の圧力が減圧目標圧力P0となるまで減圧を続けて気体を排出する。この減圧工程は、この実施例では1回としている。
【0047】
この空気排除工程中に前記蒸気発生器12および前記給蒸ライン13に含まれる空気を排除する第二空気排除処理を実行する。この第二空気排除処理は、前記給蒸調理工程前の空気排除工程中の減圧工程(初期減圧工程)において実施される。前記第二空気排除処理は、初期減圧工程中に前記給蒸弁14を開くことにより行われる。
【0048】
この給蒸弁14の開閉は、つぎのように制御される。すなわち、前記給蒸弁14の開放開始は、前記初期減圧工程の開始から前記調理室内圧力Pが第一設定圧力P1まで所定圧力低下した時点としている。そして、前記給蒸弁14の閉止は、前記給蒸弁14の開放開始から第一設定時間T1(たとえば、約30秒)経過という条件と、前記調理室内圧力Pが第二設定圧力P2まで下がったという条件とのいずれかが満たされたときとしている。この第二空気排除処理における前記給蒸弁14の開度は、たとえば、約25%としている。ここで、前記給蒸弁14を全開でなく、約25%としているのは、この実施例1では、
全開にすると前記減圧器23の減圧能力が比較的低いために、前記調理室2内の圧力が上昇してしまうことを防止するためである。したがって、前記減圧器23の減圧能力如何では前記給蒸弁14を全開とすることができる。
【0049】
前記第一設定圧力P1は、初期減圧工程の減圧目標圧力P0(たとえば、100hPa)に第一調整値A(たとえば、30hPa)を加えた圧力としている。
【0050】
前記空気排除工程の後に前記給蒸手段3を作動させて給蒸調理工程が行われる。この給蒸調理工程は、前記空気排除工程後に前記排蒸弁17および前記ドレン排出弁21を閉じ、前記減圧手段5の作動を停止し、前記給蒸手段3を作動させて前記調理室2内圧力が加熱目標圧力PKとなるまでに加圧する加圧工程と、この加圧工程後に前記調理室2内圧力が加熱目標圧力PKを保持するように前記給蒸手段3の作動を制御する調理工程とを含む。
【0051】
前記負圧蒸煮における調理工程は、前記排蒸弁17および前記ドレン排出弁21を閉じ、前記給蒸手段3の作動と停止とを繰り返して行い、前記調理室2内圧力が加熱目標圧力P1より所定値上昇した時のみ前記減圧手段3を作動させ、前記調理室2内圧力を大気圧より低い圧力として調理する。
【0052】
また、前記正圧蒸煮における調理工程は、前記排蒸弁17を閉じ、前記給蒸手段3を作動させて、加熱目標圧力PKを大気圧以上の高圧とする。そして、前記ドレン排出弁21を間欠的に開いて調理槽内のドレンを排出する。これに加えて、前記ドレン排出弁21を常時開き前記スチームトラップ19を開いてドレンを排出するように構成している。
【0053】
(実施例1の動作)
以上の構成による実施例1の負圧蒸煮時の動作を図1および図2に基づき説明する。
【0054】
被調理物1を前記調理室2内へ入れて、前記扉11を閉じ、まず空気排除工程を行う。図2を参照して、処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する。)において、前記制御器28は、前記給蒸弁14,排蒸弁17,ドレン排出弁21,復圧弁25を閉じ、前記減圧器23を作動させて、減圧工程を開始する。
【0055】
そして、S2において、前記調理室内圧力Pが第一設定圧力P1となったかどうかを判定する。NOが判定されると、S2に止まり、前記調理室内圧力Pが第一設定圧力P1に低下して、YESが判定されると、S3へ移行して、前記給蒸弁14を設定の開度にて開く。
【0056】
すると、前記蒸気発生器12から前記調理室2への給蒸が前記給蒸ライン13を通して開始される。この給蒸開始当初、蒸気中には空気が含まれている。この空気は、前記減圧器23が作動されているので、前記減圧ライン22を通して室内空気とともに前記調理室2外へ排出される。こうして前記第二空気排除処理が行われる結果、前記給蒸調理工程における空気障害による調理不良を防止できる。
【0057】
その後、S4にて、給蒸開始から第一設定時間T1が経過した条件と、前記調理室内圧力Pが第二設定圧力P2に到達したという条件が判定される。ここでいずれかの条件が満たされると、S5へ移行して、前記給蒸弁14を閉じて、前記第二空気排除処理を終了する。
【0058】
その後、S6へ移行して、前記調理室内圧力Pが減圧目標圧力P0に到達したかどうかを判定する。ここで、YESが判定されると、空気排除工程を終了し、S7へ移行して、
次工程である給蒸調理工程を行う。
【0059】
この給蒸調理工程においては、前記減圧器23の作動を停止し、前記給蒸手段3を作動させ、前記調理室2内圧力が加熱目標圧力PKとなるまで加圧を続ける加圧工程が行われる。この加圧工程後、前記制御器28は、前記調理室2内圧力が大気圧より低い加熱目標圧力PKとなるように前記給蒸弁14の開閉を制御して、調理工程を行う。この給蒸調理工程において、前記調理室2内の圧力が加熱目標圧力PKより所定値高くなると前記減圧器23を作動させて、前記調理室2内圧力を加熱目標圧力PKに保持するための減圧(圧力保持減圧)運転を行う。
【0060】
この給蒸調理工程が終了すると、前記制御器28は、前記給蒸弁14を閉じ、前記減圧器23の作動を停止し、前記復圧弁25を開いて、復圧を行う。これにより前記調理室2内の圧力は、加熱目標圧力PKから大気圧へと復圧する。
【実施例2】
【0061】
つぎに、この発明の実施例2を図3および図4に基づいて説明する。この実施例2において、前記実施例1と同じ構成要素は、同じ符号を付して説明を省略する。以下、前記実施例1と異なる構成について説明する。
【0062】
前記実施例1と異なるのは、前記蒸気発生器12に、その缶体内の圧力を検出し、検出信号が前記制御器28へ入力される第二圧力センサ29を設けるとともに、前記第二空気排除処理を別の方法にて行っている点である。この第二空気排除処理は、前記空気排除工程中に図4の処理手順にて実行される。図4において、図2と同じ処理ステップは、同じ符号を付している。
【0063】
すなわち、図4において、ステップS1において、前記制御器28は、前記給蒸弁14,排蒸弁17,ドレン排出弁21,復圧弁25を閉じ、前記減圧器23を作動させて、減圧工程を開始する。
【0064】
そして、S10において、前記空気排除工程の開始という条件と前記第二圧力センサ29により検出される前記蒸気発生器12の圧力が第三設定圧力P3以上という条件を満たした状態が第二設定時間T2(たとえば約30秒)だけ継続されているかどうかを判定する。YESが判定されると、前記調理室内の圧力Pは、ほどよく低下しており、S3へ移行して、前記給蒸弁14を設定の開度にて開く。
【0065】
すると、前記蒸気発生器12から前記調理室2への給蒸が開始される。そして、前記実施例1と同様の第二空気排除処理が行われる結果、前記給蒸調理工程における空気障害による調理不良を防止できる。
【0066】
その後、S11にて、給蒸開始から第三設定時間T3が経過したかどうかが判定される。ここで、YESが判定されると、S5へ移行して、前記給蒸弁14を閉じて、前記第二空気排除処理を終了する。
【0067】
この発明は、前記実施例1、2に限定されるものではなく、正圧蒸煮時においても負圧蒸煮時と同様に前記第二空気排除処理を行うように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例1の概略構成を示す説明図である。
【図2】同実施例1の負圧蒸煮時の動作を説明するタイミングチャート図である。
【図3】本発明の実施例2の概略構成を示す説明図である。
【図4】同実施例3の負圧蒸煮時の動作を説明するタイミングチャート図である。
【符号の説明】
【0069】
1 被調理物
2 調理室
3 給蒸手段
4 排蒸手段
5 減圧手段
6 復圧手段
28 制御器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収容する調理室と、蒸気発生器から前記調理室への給蒸ラインおよびこの給蒸ラインに設けた給蒸弁を含む給蒸手段と、前記調理室内の減圧手段と、前記給蒸手段および前記減圧手段を制御して前記調理室内を減圧する減圧工程により排気を行う空気排除工程およびこの空気排除工程後に前記調理室内へ給蒸して調理する給蒸調理工程を行う制御器とを備え、
前記制御器は、前記空気排除工程の初期減圧工程において前記給蒸弁を開くことを特徴とする蒸気調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−252580(P2007−252580A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80329(P2006−80329)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】