説明

蒸留装置用ヒータ

【課題】蒸留装置とヒータとをより一体化することにより熱伝導効率を高め、大型化とメンテナンス性の良い蒸留装置用ヒータを提供する。
【解決手段】蒸留装置の蒸留槽10の底部に一体化され、円筒型ヒータエレメント12を装着するための角型の溝を有するケーシング11と、蒸留槽内の液体を加熱し、蒸留するための円筒型ヒータエレメント12と、円筒型ヒータエレメント12をケーシング11に圧着して装着する圧着板13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄の後工程におけるリンス兼乾燥のための蒸留装置用ヒータに係り、詳しくは、蒸留装置とヒータとをより一体化することにより、熱伝導効率を高めた蒸留装置用ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒータは、ユニット化されて蒸留槽とは独立しており、伝熱セメントを介し、蒸留槽の底部のスタッドボルトにより固定されていた。図3は、従来の蒸留装置のヒータ取り付け部分の構成を示す構成図である。図3において、蒸留槽10にはスタッドボルト18が直結している。ヒータのケーシング11は、伝熱セメント20を介し、スタッドボルト18に装着され、ナット19により蒸留槽10に締め付けられ固定されている。円筒型ヒータエレメント12は、ヒータ挿入穴16に挿入されて、ボルト17によりネジ締めされて固定されている。
【0003】
このように、ヒータのケーシング11は、伝熱セメント20を介して蒸留槽10に固定されるため、取り付け時に、伝熱セメント20と蒸留槽10及びヒータのケーシング11との接触面に気泡が入り易かった。従って、蒸留槽10の底部を均一に加熱することが難しく、伝熱効率にバラツキが生じていた。このため施行には熟練を要し、蒸留槽10が大型化するにつれて、伝熱効率のバラツキが増大する傾向にあった。
【0004】
また円筒型ヒータエレメント12は、ヒータ挿入穴16に挿入され、ボルト17によりネジ締めされて固定されている。このため、円筒型ヒータエレメント12とヒータのケーシング11との接触部分は直線状に接触し、ボルト17とは、点接触している。従って断面で見ると、丸孔に対し丸断面のヒータエレメントなので点接触となり、熱を伝える効率が下がる原因となっていた。
【0005】
図4は、従来の蒸留装置のヒータ取り付け部分の構成を、三角法により展開した展開図である。300mm×500mm×25mmのヒータのケーシング11に、直径12mmの円筒型ヒータエレメント12が挿入されるヒータ挿入穴16が空けられ、円筒型ヒータエレメント12が挿入されボルト17(図示せず)で固定されてユニット化されている。ヒータのケーシング11は、厚さ1〜5mmの伝熱セメントを介して、蒸留槽10にスタッドボルト(図示せず)で固定されている。またヒータのケーシング11は、温度センサを挿入して固定する温度検出孔21を有している。特許文献1には、ベース部材の表面に、溶射等の成膜手段により金属膜からなるヒータ線を成膜し、このヒータ線を覆うようにベース部材にカバー部材を被せてヒータ線をその内部に埋設したことで、成膜されたヒータ線、が記載されている。
【特許文献1】特開2002−43033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、蒸留装置とヒータとをより一体化することにより熱伝導効率を高め、大型化とメンテナンス性の良い蒸留装置用ヒータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蒸留装置用ヒータは、洗浄の後工程におけるリンス兼乾燥のための蒸留装置用ヒータであって、
前記蒸留装置の蒸留槽の底部に一体化され、円筒型ヒータエレメントを装着するための角型溝を有するケーシングと、
前記蒸留槽内の液体を加熱し、蒸留するための前記円筒型ヒータエレメントと、
前記円筒型ヒータエレメントを前記ケーシングに圧着して装着する圧着板とから成ることを特徴とする。
【0008】
本発明の蒸留装置用ヒータの、前記円筒型ヒータエレメントの一部が、前記角型溝の底面に面接触するよう平面加工されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の蒸留装置用ヒータの、装着された前記円筒型ヒータエレメントと前記角型溝の壁面との間隙が、耐熱性高熱伝導物で充填されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蒸留装置用ヒータによれば、蒸留装置とヒータのケーシングとを一体化し、円筒型ヒータエレメントの一部を加工してケーシングとの接触面積を増加させ、円筒型ヒータエレメントと角型溝との間隙を耐熱性高伝導物で充填して圧着板で圧着することにより、熱伝導効率をより高めることが可能となる。また、圧着板を円筒型ヒータエレメント毎に設けることにより、断線等によるヒータエレメントの交換のメンテナンス性が向上すると共に、角型溝とすることで大型のケーシングの加工が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明による実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明の蒸留装置のヒータ取り付け部分の構成を示す構成図である。図1において、蒸留槽10とヒータのケーシング11は、切削あるいは溶接により一体化して形成されている。ヒータのケーシング11は、円筒型ヒータエレメント12が装着されるよう、角型溝を有している。円筒型ヒータエレメント12は、この角型溝に装着されて、圧着板13で覆われ、圧着ボルト14によりネジ締めされて溝の面に圧着されている。円筒型ヒータエレメント12の円筒部分の一部は平坦になっており、この平坦部が角型溝の底面に接触して圧着されている。また円筒型ヒータエレメント12と角型溝との間隙には、耐熱性高熱伝導物15が充填されている。
【0012】
このように、一体化により伝熱セメントが介在しないため、組立時に発生する、気泡による温度バラツキが無くなり、熱伝導の向上が図れる。また円筒型ヒータエレメント12は、ヒータのケーシング11の角型溝に装着され、圧着板13で覆われ、圧着ボルト14によりネジ締めされて圧着されている。従って、円筒型ヒータエレメント12の形状が完全に円筒型であっても、溝と圧着板との両方に接することで、従来の一本の直線状接触に比べると、およそ2倍の熱伝導効果が期待できる。また間隙の部分に楔形の金属を挿入し、円筒型ヒータエレメント12を角型溝の壁面に押し付けた後、圧着番13で圧着して装着しても良い。
【0013】
さらに円筒型ヒータエレメント12は、ヒータのケーシング11の角型溝に落とし込むことで装着できるため、従来の挿入穴16に挿入するための穴径の余裕度に対し、少ない余裕度で形成することが可能である。従って間隙の部分が少なくなり、従来に比べて空気の影響を受け難くすることができる。さらにアルミニューム粉末を混入したシリコングリス等の耐熱性高熱伝導物15を、溝の間隙に容易に充填することかできるため、熱伝導の一層の向上が図られる。
【0014】
組立の容易性からすると、圧着板13は一枚の金属板であっても良いが、円筒型ヒータエレメント12に対応して一枚ずつ設置することにより、ヒータエレメントを一本ずつメンテナンスすることが可能となる。このため、断線等によるヒータエレメントの交換が容易となる。また従来の挿入穴の加工に対し角型溝とすることで、大型のケーシングを精度良く加工することが可能となる。
【0015】
図2は、実施例に基づく蒸留装置のヒータ取り付け部分の構成を、三角法により展開した展開図である。340mm×555mm×16mmのヒータのケーシング11は、蒸留槽10と一体化されている。ヒータのケーシング11は、マイナス公差を有する高さ12.0mm、幅12.1mmの角型の溝を有し、プラス公差を有する直径12mmの円筒型ヒータエレメント12が挿入されている。円筒型ヒータエレメント12は圧着板13により覆われ、圧着ボルト14により圧着され固定されている。円筒型ヒータエレメント12と角型溝との間隙には、耐熱性高熱伝導物15(図示されず)が、充填されている。またヒータのケーシング11は、温度センサを挿入して固定する温度検出孔21を有している。
【0016】
以上説明したように、蒸留装置とヒータとをより一体化することにより熱伝導効率を高め、大型化とメンテナンス性の良い蒸留装置用ヒータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による蒸留装置のヒータ取り付け部分の構成を示す構成図。
【図2】実施例に基づく蒸留装置のヒータ取り付け部分の三角法による展開図。
【図3】従来の蒸留装置のヒータ取り付け部分の構成を示す構成図。
【図4】従来の蒸留装置のヒータ取り付け部分の三角法による展開図。
【符号の説明】
【0018】
10 洗浄槽
11 ヒータのケーシング
12 円筒型ヒータエレメント
13 圧着板
14 圧着ボルト
15 耐熱性高熱伝導物
16 挿入穴
17 ボルト
18 スタッドボルト
19 ナット
20 伝熱セメント
21 温度検出溝
22 温度検出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄の後工程におけるリンス兼乾燥のための蒸留装置用ヒータであって、
前記蒸留装置の蒸留槽の底部に一体化され、円筒型ヒータエレメントを装着するための角型溝を有するケーシングと、
前記蒸留槽内の液体を加熱し、蒸留するための前記円筒型ヒータエレメントと、
前記円筒型ヒータエレメントを前記ケーシングに圧着して装着する圧着板とから成ることを特徴とする蒸留装置用ヒータ。
【請求項2】
前記円筒型ヒータエレメントの一部が、前記角型溝の底面に面接触するよう平面加工されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸留装置用ヒータ。
【請求項3】
装着された前記円筒型ヒータエレメントと前記角型溝の壁面との間隙が、耐熱性高熱伝導物で充填されることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸留装置用ヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−152290(P2007−152290A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353962(P2005−353962)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】