説明

蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法

【課題】 蒸留酒製造施設から排出されるCOD値が60000mg/lを越える極めて孔濃度の汚濁物質を含有する廃水を、外部への排出が可能なCOD値が2000〜3000mg/l程度のほぼ無色、透明な廃水に簡単に、しかも安定して処理できるようにした廃水の浄化処理方法を提供する。
【解決手段】 廃水にポリグルタミン酸架橋物を主体とする凝集剤を混合する凝集剤添加工程と、凝集剤添加工程からの廃水内の固形物を除去する第1遠心分離工程と、遠心分離工程からの廃水にアルカリ剤と過酸化水素を加えて廃水内の有機物を分解させる化学処理工程と、化学処理工程からの廃水内の固形物を除去する第2遠心分離工程及び第3遠心分離工程と、第3遠心分離工程からの廃水を浄化処理する第1濾過・吸着工程及び第2濾過・吸着工程とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイスキーやテキーラ、コニャック、焼酎等の蒸留酒の製造施設から排出された廃水の処理方法の改良に関するものであり、廃水中に含まれる高濃度の有機物等を効率よく除去して無色透明に近い廃水に処理出来るようにした蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウイスキーや焼酎等の蒸留酒製造施設から排出される廃水には、多量の有機物が含まれており、また、それ等の有機物の中には、難分解性の着色性物質が比較的多量に含まれている。そのため、蒸留酒製造施設から出る高濃度の汚濁物質(例えばCOD値が60000mg/l以上)を含んだ廃水は、単に廃水に従前の生物処理を施したり、沈澱処理や濾過処理を施しただけでは、これを十分に浄化することが困難で、透明に近い廃水とすることが出来ないと云う問題がある。
【0003】
そのため、沈澱装置や生物処理装置、オゾン発生装置、濾過装置、吸着装置等を組合せた構造の複雑な大型処理装置を用いたり、或いは難分解性物質(着色性物質)を分解する微生物を用いた処理装置が、蒸留酒製造施設等の廃水処理用として開発されている。
【0004】
しかし、前者の沈澱装置やオゾン発生器、濾過装置、吸着装置等から成る一次処理装置や二次処理装置、三次処理装置等を組み合せた大型処理装置は、設備費が高額になるうえ、装置の運転管理に手数がかかり過ぎると云う問題を有している。
【0005】
また、後者の難分解性物質を分解する微生物を用いた処理装置は、処理に要する時間が長いために設備の小型化が困難で、設備費が高騰するうえ微生物の管理が極めて難しいと云う問題を有している。
【0006】
このように、アルコール発酵工程を備えた施設から排出される高濃度の汚濁物質を含有した廃水の浄化処理は、極めて困難なものであって、これ等の廃水を簡単且つ円滑に、しかも安定して浄化処理できるようにした処理方法の開発が待たれている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−223746号
【特許文献2】特開2003−274929号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、蒸留酒製造施設から排出される極めて高濃度の汚濁物質を含んだ廃水の浄化処理に於ける上述の如き問題、即ち(i)構造の複雑な大型処理装置を必要とするため、設備費が高騰したり、装置の運転管理に多くの手数を必要とすること、(ii)微生物を用いる処理装置では、処理に長時間を必要とするうえ、微生物の管理に手数がかかること等の問題を解決せんとするものであり、極めて高濃度の汚濁物質を含んだ廃水を構造の簡単な安価な処理装置でもって、簡単且つ高能率で、しかも安定して透明に近い廃水にまで浄化処理することができるようにした、蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法を提供することを発明の主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、先ず、蒸留酒製造設備からの廃水に凝集剤、例えばポリグルタミン酸架橋物を主体とする生分解性の凝集剤(日本ポリグル株式会社製・以下、PGα21Caと呼ぶ)を添加すると共に、当該凝集剤を添加した廃水を遠心分離処理して廃水内の凝集物(固形物)を除去し、次に、凝集物(固形物)を除去した後の廃水内の残留有機物をアルカリ剤と過酸化水素とを用いて化学的に分解させ、更に、化学的に処理をした後の廃水から固形物を遠心分離により除去すると共に、この固形物を除去したあとの廃水を濾過、吸着処理して残留有機物を除去することにより、蒸留酒製造設備から出る高濃度の汚濁物質を含んだ廃水をほぼ透明に近い廃水にまで高能率で、安価に、しかも安定して処理することを可能にしたものである。
【0010】
即ち、本願発明は、蒸留酒製造施設から出た高濃度の汚濁物質を含んだ廃水に凝集剤を混合する凝集剤添加工程と、凝集剤添加工程からの廃水内の固形物を除去する第1遠心分離工程と、遠心分離工程からの廃水にアルカリ剤と過酸化水素を加えて廃水内の有機物を分解させる化学処理工程と、化学処理工程からの廃水内の固形物を除去する第2遠心分離工程及び第3遠心分離工程と、第3遠心分離工程からの廃水を浄化処理する第1濾過・吸着工程及び第2濾過・吸着工程とから構成したことを特徴とする蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法である。
【0011】
凝集剤添加工程で添加する凝集剤としては、ポリグルタミン酸架橋物を主体とする凝集剤が望ましく、また、ポリグルタミン酸架橋物を主体とする凝集剤の混合量は、廃水内の凝集剤の濃度が150ppmとなる量とするのが望ましい。
【0012】
また、凝集剤添加工程からの廃水を処理する第1遠心分離工程は、廃水温度40〜60℃、遠心分離力2500〜3500G及び遠心分離時間6〜8分間で廃水を処理する遠心分離工程とするのが望ましい。
【0013】
更に、前記第1遠心分離工程と化学処理工程との間に、廃水内へ重金属除去剤(キレート剤)として、廃水内濃度が1wt%となる量のジエチレントリアミン5酢酸を添加するようにした重金属除去剤添加工程を設けるのが望ましい。
【0014】
前記化学処理工程は、廃水内へ過酸化水素と、ケイ酸ナトリウムと苛性ソーダと水とを混合して成るアルカリ剤溶液とを攪拌混合して廃水のPH値をほぼ10.8程度に自動調整すると共に、温度を40〜60℃に保持した状態で廃水内の有機物を分解する化学処理工程とするのが望ましい。
【0015】
前記第2遠心分離工程からの廃水に、廃水内濃度が0.5wt%となる量の酸化カルシウムを添加する酸化カルシウム添加工程を設けるのが望ましい。
【0016】
第2遠心分離工程及び第3遠心分離工程は、遠心分離力2500〜3500G及び遠心分離時間6〜8分間で廃水を処理する遠心分離工程とするのが望ましい。
【0017】
前記第1濾過・吸着工程の上流側に、第3遠心分離工程からの廃水に硫酸を添加して廃水のPH値をほぼ7.0に調整する硫酸添加工程を設けるのが望ましい。
【0018】
前記第1濾過・吸着工程は、濾過、吸着剤として炭酸カルシウムと珪藻土とを充填したカラムを用いた濾過吸着工程とするのが望ましい。
【0019】
前記第2濾過・吸着工程は、濾過・吸着剤として活性炭を充填したカラムを用いた濾過・吸着工程とするのが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明では基本的に、従前から広く活用されている固形物を除去する遠心分離処理と、有機物の化学的分解処理と、固形物の濾過及び吸着処理とを有機的に組み合せすることより廃水の浄化処理方法を構成すると共に、この浄化処理方法を用いて蒸留酒製造施設から出た高濃度廃水を処理するようにしている。
その結果、本発明の浄化処理方法は、従前の慣用技術をベースにして実施することができ、高能率でしかも安定した廃水の浄化処理が可能となる。
【0021】
また、本発明では、最初に廃水内へ生分解性の凝集剤PGα21Caを混合すると共に、その混合濃度や混合温度を最適値に保持するようにしている。そのため、廃水内の有機物を効率よく迅速に凝集させることができると共に、遠心分離処理によって凝集物(固形物)を容易に除去することが可能となる。
【0022】
更に、本発明では、ポリグルタミン酸架橋物を主体とする生分解性凝集剤による凝集処理と、有機物の化学的分解処理と、分解後の固形物を除去する遠心分離処理と、残留固形物を除去する濾過及び吸着処理とを組み合せ使用するようにしているため、COD値が60000〜65000mg/lの極めて高濃度の汚濁物質を含有する蒸留酒製造プロセスからの廃水(ヴィナサス・Vinasses)をCOD2000〜3000mg/lのほぼ無色、無臭の廃水にまで浄化処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の廃水の浄化処理方法を説明する。
図1は、本発明による蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法の工程図である。ここでは、メキシコ国に於ける蒸留酒(テキーラ)の最終製造工程から排出された温度約80℃の廃水Aが処理対象となっている。即ち、この廃水Aは、アガペ芋を主成分とする原材料を発酵させ、これを蒸留処理した後の多量の植物繊維を含んだ茶色状の液体であって、高濃度のアルコール発酵残渣を含んだ廃液であり、ヴィナサス(Vinasses)と呼ばれているものである。また、このヴィナサスの汚濁のレベルは、COD(化学的酸素要求量)値で60000〜65000mg/l程度で、PH値は約3〜3.5である。
【0024】
廃水Aの浄化処理に際しては、先ず、凝集剤添加工程1に於いて、廃水A内へ凝集剤Bが混合・攪拌され、次に、第1遠心分離工程2において、凝集物の分離、除去が行われる。
使用する凝集剤Bは、本件出願人が先に開発して実用に供している商品名PGα21Caと呼ばれる粉体状凝集剤であり、生分解性を有するγ−ポリグルタミン酸を主体とする新規な自然分解性の物質であり、下記の構造式であらわされるものである。
【0025】
【化1】

【0026】
当該凝集用薬剤Bは、下記の各成分含有量(wt%)を有している。
PGα21=14%、C=0.5%、O=45%、Na=8%、Al=0.5%、Si=12%、Cl=0.4、Ca=15%、K=0.1%、Fe=15%。
また、凝集剤B内のO、Ca、Fe、Si等は通常2CaSO4・H2O、NaCO3・H2O、NaSO4、MgSO4、6H2O、Al2(SO4)・18H2O等の化学構造式で表される物質の型で、当該凝集剤内に含まれている。
【0027】
前記廃水A内に含まれる有機物(汚濁物質)の除去効率は、主として凝集剤Bの添加量と廃水Aの温度と遠心分離機の作動条件に大きく依存する。そのため、凝集剤Bの添加量、廃水Aの処理温度及び分離機の運転時間等が汚濁の除去効率に及ぼす影響を調査した。
【0028】
図2は、分離機としてデカンタ型の遠心分離機(decantor)を用いた場合の廃水A内のNTU値(Nephelometric Turbidify Unit・比濁分析の汚濁単位)と、分離処理時間(min)と、遠心分離力(G)との関係を示すものであり、図2からも明らかなように、遠心分離機の回転速度は有機物の除去に大きな影響を与えるものであり、電力消費量や分離処理した廃水AのNTU値等から判断して、2500〜3500Gの遠心分離力で7.5〜10分間(望ましくは、3300G程度の遠心分離力で7.5分間)の遠心分離処理を行うのが望ましい。尚、本実施形態では、遠心分離機としてデカンタ型の遠心分離機を用いているが、使用する遠心分離機の形式は、如何なるものであっても良い。
【0029】
次に、凝集剤(PGα21Ca)Bの最適な混合量を調査するために、廃水(ヴィナサス)A内への凝集剤Bの混合量と、3300Gの遠心分離力で7.5分間分離処理を行った場合のNTU値を調査した。
【0030】
図2はその結果を示すものであり、凝集剤Bの混合量は、凝集剤濃度が100〜150ppmになる程度の量とするのが、適当であることが判る。凝集剤Bの混合量が過大になると、逆に廃水AのNTU値を増大させることになるからである。
【0031】
更に、温度が、廃水(ヴィナサス)A内の有機物に対する凝集剤(PGα21Ca)Bの凝集性能に及ぼす影響を調査した。具体的には、廃水A内の凝集剤濃度を約100ppmに及び遠心分離力を約2500G程度にして、7.5分間固形物の遠心分離処理を行ったときの、廃水Aの温度℃とNTU値の関係を調査した。
【0032】
図4はその結果を示すものであり、凝集剤Bは廃水Aの温度が40℃〜60℃の場合により高い凝集性能を発揮することが判る。
【0033】
上記、図2乃至図4の結果から、第1遠心分離工程2において最高の分離性能が得られるのは、廃水Aの温度が50〜60℃、凝集剤Bの添加量が100〜150ppm、遠心分離力が3300G及び遠心分離時間が7.5分間であることが判明した。
【0034】
前記第2遠心分離工程2で凝集物(固形物)が除去された廃水Aは、茶色がかった液体であり、その内部には有機物から成る各種の着色成分が含まれている。
当該第2遠心分離工程2で固形物が除去された廃水A1は、重金属除去剤添加工程3を経て化学処理工程4へ送られ、ここで所謂有機物の酸化還元反応による分解が行われる。
【0035】
前記重金属除去剤添加工程3は、廃水A1内の重金属をキレート化して除去するために必要な工程であり、当該工程3は、廃水A1内に重金属が含有されている場合に設けられるものである。
【0036】
具体的には、ジエチレントリアミン5酢酸(Dietilen tetra amine Pentacetic(DTPA)が重金属除去剤(キレート剤)Cとして廃水A1内へ適宜量混入される。
【0037】
前記化学処理工程4は、過酸化水素を添加したアルカリシステムにより起生する有機物の酸化還元反応が基本となっており、ここで有機物の分解が行われる。
【0038】
図5に示すように、第1遠心分離機11により固形物(スラッジ)S1が除去された廃水A1に、重金属除去剤槽12から重金属除去剤(DTPA)が約0.1wt%の割合で混合され、その後廃水A1は攪拌混合槽13へ投入される。
【0039】
一方、ケイ酸ナトリウム槽15には41ボーメのケイ酸ナトリウムDが、また、苛性ソーダ槽16には50%濃度の苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)Eが貯留されており、更に、前記ケイ酸ナトリウムDと苛性ソーダEと水Wを1:3:4の容積比率で混合して成るアルカリ剤Gが、アルカリ剤槽17内に準備されている。
【0040】
尚、前記41Be(ボーメ度41)のケイ酸ナトリウムDは比重1.38g/cm3、SiO2/Na2Oの重量比3.22のケイ酸ナトリウムを意味するものである。また、当該ケイ酸ナトリウムDは、苛性ソーダEと混合する前に水Wに溶解させる必要がある。
【0041】
前記アルカリ剤(溶液)Gは、攪拌反応槽13内の廃水A1のPH値が10.8となるまで、ポンプP1により攪拌反応槽13内へ自動的に送り込まれる。尚、PH値を約10.8に保持するのは、PH値が10.8の近傍に於いて、もっとも効率よく有機物の分解が行われるからである。
【0042】
また、攪拌反応槽13へは、過酸化水素槽18から過酸化水素HがポンプP2により送られる。
この過酸化水素の添加は、廃水A1のCOD値が80000mg/lより高くしても1wt%以下の量であり、過酸化水素Hが攪拌反応槽13へ加えられて化学反応が始まると、PH値は直ちにPH=8位まで減少する。
【0043】
極端なPH値の減少は好ましくないので、これを避けるために、ペーハコントローラ19が設けられていて、アルカリ剤Gを自動的に供給することによりPH値を10.8近傍に自動的に維持するようにしている。また、この化学反応の間、廃水A1中のポリフェノール等の溶解性物質に起因する沈殿物が形成される。
【0044】
尚、図5において、19aは攪拌反応槽13内に設けたPH値検出用の電極であり、両ポンプP1、P2はPH値が設定範囲内になるようにPHコントローラ19を介して発停制御される。
又、攪拌反応槽13内に於ける化学反応(有機物の分解反応)は温度に大きく影響されるものであるため、廃水A1の温度を前述のように50〜60℃に保持するための温度調整装置(図示省略)が設けられている。
【0045】
より具体的には、過酸化水素Hの添加により、攪拌反応槽13内に於いては、
22+OH→OOH-+H2O・・・・(1)
22→H2O+1/2O2 ・・・・(2)
なる反応を通してアクティブなイオンペルヒドロキシル(OOH-)が生成され、これが廃水A1中の有機物を分解処理すると想定されている。
即ち、前記ケイ酸ナトリウムDはポルヒドロキシル基(OOH-)を生み出すための駆動力としてのアルカリ剤Gを提供すると共に、過酸化水素H22の分解を緩和するための緩衝剤として機能するものである。
また、50%苛性ソーダEはペルヒドロキシル基(OOH-)を生み出すための駆動力としてのアルカリ剤Gを提供するものである。
更に、過酸化水素H22はイオンペルヒドロキシル基(OOH-)を生み出すための酸素を提供するものである。
【0046】
前記化学処理工程4で廃水A1内の有機物が分解された廃水A1は、引き続き第2遠心分離処理工程5に於いて、有機物の分解により生じた固形物(凝集物)の除去する処理を受ける。そのあと、この廃水A2に酸化カルシウム添加工程6に於いて、0.5g/l(0.5w%)の割合で酸化カルシウム(CaO)Iが添加され、廃水A2中の不溶性物質が凝集される。そして、この廃水A2は次の第3遠心分離工程7へ供給され、ここで固形物(凝集物)が除去される。
【0047】
更に、前記第3遠心分離工程7で固形物が除去された廃水A3には、硫酸添加工程8に於いて適宜量の硫酸Jが添加され、廃水A3のPHが約8に調整される。
【0048】
PHが約8に調整された廃水A3は、炭酸カルシウムとセライト(珪藻土)を充填したカラムを用いる第1濾過・吸着工程9及び活性炭を充填したカラムを用いる第2濾過・吸着工程10において、固形物等の濾過・吸着による除去処理を受け、清浄な透明色の処理済み廃水A4となって外部へ排出されて行く。
【0049】
図6は、図1の化学処理工程4から第2濾過・吸着処理工程10までを実施するための各処理装置の配置を示す系統図である。
図6を参照して、化学処理工程4の攪拌反応槽13からの廃水A2は、第2遠心分離機21に於いて、3500Gの遠心分離力で約7.5分間遠心分離され、スラッジS2が除去される。
【0050】
第2遠心分離機21からの廃水A2は、不溶解性化合物沈澱槽22へ導入され、ここで、廃水A2内へ酸化カルシウム槽28から0.5g/lの割合で酸化カルシウム(CaO)Iが添加される。
上記酸化カルシウム(CaO)Iの添加により、廃水A2内の不溶解性成分の大部分は凝結され、固形物となる。
【0051】
その後、廃水A2は第3遠心分離機23へ送られ、ここで前記第2遠心分離機21と同条件下で廃水A2を遠心分離することにより、スラッジS3が除去される。
【0052】
第3遠心分離機23からの廃水A2は、引き続きペーハ調整槽24へ送られ、ここで硫酸貯槽29から硫酸(H2SO4)Jを供給することにより、そのPHが7.0まで低下(中和)される。
【0053】
前記PH7.0に調整されたペーハ調整槽24からの廃水A3は、引き続いて炭酸カルシウムCa(CO23とセライト(珪藻土)を夫々0.5g/lの割合で混合して成る充填剤Kを充填した第1濾過・吸着カラム25及び活性炭Lを充填して成る第2濾過・吸着カラム26を通して固形物の濾過・吸着による除去が行われ、処理済み廃水A4が処理済み水槽27へ回収される。
【0054】
尚、前記第1濾過・吸着カラム25内の充填材Kは、大幅な圧力降下によって廃水A3の流通量が大きく制限されないように、カラムの床に300g/lの量の砂で形成した砂床を配置するなど、その充填構造に工夫が加えられている。
【0055】
この実施形態においては、COD値が60000〜65000mg/lのヴィナサス廃水Aを、COD値が2000〜3000mg/lの透明な廃水A4にまで、処理することが出来た。
【0056】
図7は処理前の廃水A(ヴィナサス)の外観を示すものであり、また、図8は当該廃水Aの処理済み廃水A4の外観写真である。図7及び図8からも判るように、本発明によれば、比較的簡単な廃水処理方法によりアルコール発酵を利用する蒸留酒製造設備等からの高濃度の汚濁物質を含有する廃水Aを迅速且つ安価に処理することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、蒸留酒製造設備のみならず、アルコール発酵工程を備えた設備を利用するあらゆる産業設備へ適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による蒸留酒製造施設から出た廃水の処理工程図である。
【図2】廃水A内の固形物を遠心分離機で分離処理した場合の遠心分離力Gと処理時間tと汚濁単位NTDとの関係を示す線図である。
【図3】3300Gの遠心分離力でもって分離処理を7.5分間行った時の、廃水A内へ凝集剤濃度と汚濁単位NTUとの関係を示す線図である。
【図4】2500Gの遠心分離でもって分離処理を7.5分間行った時の、凝集剤濃度100ppmの廃水Aの温度と汚濁単位NTUとの関係を示す線図である。
【図5】図1の凝集剤添加工程1から化学処理工程4までを実施するための各処理装置の配置系統図である。
【図6】図1の化学処理工程4から第2吸着処理工程までを実施するための各処理装置の配置を示す系統図である。
【図7】メキシコ国アトトルニコのテキーラ製造設備から排出された廃水Aの外観を示すものである。
【図8】図7の廃水Aを処理した後の処理済み廃水A4の外観を示すものである。
【符号の説明】
【0059】
A・・処理対象の廃水
1〜A3・・廃水
4・・処理済み廃水
B・・ポリグルタミン酸架橋物を主体とする凝集剤(PGα21Ca)
C・・重金属除去剤(キレート剤)
1〜S3・・スラッジ(凝集・固形物)
D・・41Beケイ酸ナトリウム
E・・50%苛性ソーダ(50%水酸化ナトリウム)
F・・工場
G・・アルカリ剤
H・・過酸化水素
I・・酸化カルシウム(CaO)
J・・硫酸(H2SO4
K・・充填剤(炭酸カルシウム +珪藻土)
L・・活性炭
W・・水
1〜P4・・ポンプ
1・・凝集剤添加工程
2・・第1遠心分離工程
3・・重金属除去剤添加工程
4・・化学処理工程
5・・第2遠心分離工程
6・・酸化カルシウム添加工程
7・・第3遠心分離工程
8・・硫酸添加工程
9・・第1吸着工程
10・・第2吸着工程
11・・第1遠心分離機(遠心脱水器)
12・・重金属除去剤槽(キレート剤槽)
13・・攪拌反応槽
14・・凝集剤槽
15・・ケイ酸ナトリウム槽
16・・苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)槽
17・・アルカリ剤槽
18・・過酸化水素槽
19・・PHコントローラ
19a・・電極
20・・水槽
21・・第2遠心分離機
22・・沈澱槽
23・・第3遠心分離機
24・・PH調整槽
25・・第1濾過・吸着カラム
26・・第2濾過・吸着カラム
27・・処理済み水槽
28・・酸化カルシウム槽(CaO槽)
29・・硫酸貯槽(H2SO4槽)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水に凝集剤を混合する凝集剤添加工程と、凝集剤添加工程からの廃水内の固形物を除去する第1遠心分離工程と、遠心分離工程からの廃水にアルカリ剤と過酸化水素を加えて廃水内の有機物を分解させる化学処理工程と、化学処理工程からの廃水内の固形物を除去する第2遠心分離工程及び第3遠心分離工程と、第3遠心分離工程からの廃水を浄化処理する第1濾過・吸着工程と、第1濾過・吸着工程からの廃水を浄化処理する第2濾過・吸着工程とから構成したことを特徴とする蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法。
【請求項2】
凝集剤添加工程を、廃水にポリグルタミン酸架橋物を主体とする凝集剤を混合するものとした請求項1に記載の蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法。
【請求項3】
凝集剤添加工程で添加する凝集剤の混合量は、廃水内の凝集剤の濃度が120ppm〜150ppmとなる量とした請求項2に記載の蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法。
【請求項4】
凝集剤添加工程からの廃水の第1遠心分離工程は、廃水温度40〜60℃、遠心分離力2500〜3500g及び遠心分離時間6〜8分間で廃水を処理する遠心分離工程とするようにした請求項1に記載の蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法。
【請求項5】
遠心分離工程と化学処理工程との間に、廃水内へ重金属除去剤として、廃水内濃度が1wt%となる量のジエチレントリアミンペンタアセテート(DIETHYLENETRIAMINEPENTAACETATE・DTPA)を添加する重金属除去剤添加工程を設けるようにした請求項1に記載の蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法。
【請求項6】
化学処理工程を、廃水内へ過酸化水素と、ケイ酸ナトリウムと苛性ソーダと水とを混合して成るアルカリ剤溶液とを攪拌混合して廃水のPH値をほぼ9〜11程度に自動調整すると共に、温度を40〜60℃に保持した状態で廃水内の有機物を分解する化学処理工程とするようにした請求項1に記載の蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法。
【請求項7】
第2遠心分離工程からの廃水に、廃水内濃度が0.5wt%となる量の酸化カルシウムを添加する酸化カルシウム添加工程を設けるようにした請求項1に記載の蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法。
【請求項8】
第2遠心分離工程及び第3遠心分離工程は、遠心分離力2500〜3500G及び遠心分離時間6〜8分間で廃水を処理する遠心分離工程とするようにした請求項1に記載の蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法。
【請求項9】
第3遠心分離工程からの廃水に、硫酸を添加して廃水のPH値をほぼ7.0に調整する硫酸添加工程を設けるようにした請求項1に記載の蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法。
【請求項10】
第1濾過・吸着工程は、濾過、吸着剤として炭酸カルシウムと珪藻土とを充填したカラムを用いた濾過・吸着工程とした請求項1に記載の蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法。
【請求項11】
第2濾過・吸着工程は、濾過・吸着剤として活性炭を充填したカラムを用いた濾過・吸着工程とした請求項1に記載の蒸留酒製造施設から出た廃水の浄化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−296166(P2008−296166A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146909(P2007−146909)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(502426452)日本ポリグル株式会社 (12)
【出願人】(507182405)ポリグル デ メキシコ エス.エー. デ シー.ブイ. (1)
【氏名又は名称原語表記】POLY−GLU DE MEXICO S.A. DE C.V.
【住所又は居所原語表記】AV. SAN JERONIMO 550, PISO 5 COL. JARDINES DEL PEDREGAL C.P.01900 ALVARO OBREGON MEXICO D.F. MEXICO
【出願人】(507182416)
【氏名又は名称原語表記】CIRILO NOLASCO HIPOLITO
【住所又は居所原語表記】c/o POLY−GLU DE MEXICO S.A. DE C.V.  AV. SAN JERONIMO 550, PISO 5 COL. JARDINES DEL PEDREGAL C.P.01900 ALVARO OBREGON MEXICO D.F. MEXICO
【Fターム(参考)】