説明

蒸着装置

【課題】無駄になる材料を少なくして蒸着効率を高め、さらに生産性の向上も可能にした蒸着装置を提供する。
【解決手段】被処理基板Wに蒸着材料を蒸着させる蒸着装置1である。蒸着室2内に配置されて蒸着材料を収容する蒸着容器4と、蒸着容器4の開口を覆う蓋部11に設けられて、被処理基板Wに向けて収容した蒸着材料を飛散させる複数の口部15と、蒸着容器4内の蒸着材料を加熱する加熱手段と、少なくとも複数の口部15を、蒸着容器4の周方向に回転させる回転手段と、を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空蒸着法は、材料を加熱して蒸発もしくは昇華させることにより、基板に成膜する方法であり、真空中で行うことで、基板表面を清浄に保ち、かつ高純度の膜質を生成することができる。したがって、各種半導体装置や電気光学装置の製造では、従来、真空蒸着法による薄膜形成が多くなされている。例えば、電気光学装置として有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)を製造する場合には、マスク蒸着法により、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などとして機能する有機膜(有機機能層)を、基板上に順次成膜している。
【0003】
真空蒸着法によって基板に成膜を行う蒸着装置としては、蒸着源として坩堝を一つ備えたものが一般的である。このような蒸着装置では、蒸着によって形成する膜の厚さを均一にするため、例えば蒸着中に基板を回転させている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、坩堝が一つでは、膜厚を均一にするためにはより厚く成膜する必要があり、無駄になる材料が多くなることによって蒸着効率が低くなるといった課題がある。また、基板を一枚ずつしか蒸着できないため、生産性が低いといった課題もある。なお、基板を回転させるのに代えて、回転機構により蒸着源を回転させる構成としてもよいことが、特許文献1には記載されている。
【0004】
また、生産性向上を目的として、基板を連続的に移動させつつ蒸着を行う、インラインの蒸着装置も知られている。このインラインの蒸着装置では、複数枚の基板を連続的に成膜処理できるため、生産性が向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−114517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されているように回転機構によって蒸着源を回転させた場合でも、坩堝が一つの場合ではこの坩堝から飛散させる蒸着材料にムラが生じ、このムラを無くして膜厚を均一にするためにはより厚く成膜する必要があり、やはり無駄になる材料が多くなって蒸着効率が低くなってしまう。
また、坩堝を複数備えることで、坩堝を一つだけ備えた場合に比べて蒸着効率を高めることも考えられるが、その場合には、坩堝間での蒸着材料のバラツキなどによってこれら坩堝間で飛散させる蒸着材料にムラが生じ易くなり、やはり蒸着効率を十分に高めるのは困難である。
【0007】
また、基板を連続的に移動させつつ蒸着を行うインライン蒸着装置では、膜厚を均一にするのが難しく、さらに坩堝が固定されていることで蒸着粒子の入射方向がほぼ固定されるため、蒸着マスクの影になる部分では特に蒸着がされにくくなり、膜厚の不均一化がより顕著になってしまう。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、無駄になる材料を少なくして蒸着効率を高め、さらに生産性の向上も可能にした蒸着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の蒸着装置では、被処理基板に蒸着材料を蒸着させる蒸着装置であって、
蒸着室内に配置されて前記蒸着材料を収容する収容容器と、
前記収容容器の開口を覆う蓋部に設けられて、前記被処理基板に向けて収容した蒸着材料を飛散させる複数の口部と、
前記収容容器内の蒸着材料を加熱する加熱手段と、
少なくとも前記複数の口部を、前記収容容器の周方向に回転させる回転手段と、を含むことを特徴としている。
【0010】
この蒸着装置によれば、一つの収容容器に複数の口部を設けているので、これら口部から飛散される蒸着材料は同じ収容容器内に収容されていた同じ蒸着材料の一部であることにより、蒸着材料間のバラツキがなくなり、したがって口部間で飛散される蒸着材料にムラが生じるのが防止される。
また、複数の口部を回転させているので、被処理基板に対する蒸着粒子の入射方向が固定されることなく360度に亘る全方向となり、したがって蒸着マスクの影になる部分がほとんどなくなって膜厚の不均一化が抑制される。
【0011】
また、前記蒸着装置において、前記回転手段は、前記複数の口部を前記収容容器と一体にして、該収容容器の周方向に回転させるよう構成されているのが好ましい。
このようにすれば、収容容器を回転させることでこの収容容器内の蒸着材料も流動させることができ、したがって複数の口部から飛散する蒸着材料間のバラツキをより確実になくすことができる。
【0012】
また、前記蒸着装置においては、前記被処理基板を、前記蒸着室に対して連続的に搬入・搬送する搬送機構を備えているのが好ましい。
このようにすれば、基板を連続的に移動させつつ蒸着を行うことが可能になり、したがって複数枚の基板を連続的に成膜処理できるため、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の蒸着装置の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明の蒸着装置の第1実施形態を示す側面図である。
【図3】収容容器の説明図であって、(a)は斜視図、(b)は側断面図である。
【図4】有機EL装置を示す図であり、(a)は側断面図、(b)は平面図である。
【図5】本発明の蒸着装置の変形例を示す蓋部の平面図である。
【図6】本発明の蒸着装置の第2実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0015】
(第1実施形態)
図1、図2は、本発明の蒸着装置の第1実施形態を示す図であり、図1は内部を透視した平面図、図2は内部を透視した側面図である。これらの図において符号1は蒸着装置である。この蒸着装置1は、図2に示すようにチャンバー(蒸着室)2と、このチャンバー2内に配置されて蒸着材料を収容する蒸着容器4と、蒸着容器4内の蒸着材料を加熱するヒーター(加熱手段)とを備えたもので、基板(被処理基板)Wに対して蒸着材料を蒸着させるよう構成されたものである。
【0016】
また、この蒸着装置1は、図1に示すようにチャンバー2を複数(本実施形態では3つ)備えてこれらを一列に連設・配置したもので、基板Wを保持する保持手段(図示せず)とこの保持手段を移動させる移動手段とを含む公知の搬送機構(図示せず)を備えたものである。このような搬送機構によって蒸着装置1は、図1中矢印で示すように、一方の側のチャンバー2Aから真ん中のチャンバー2Bを通って他方の側のチャンバー2Cに向けて、基板Wが連続的に搬入・搬送されるようになっている。
【0017】
また、図2に示すようにそれぞれのチャンバー2(2A、2B、2C)には、排気孔6を介して真空ポンプ(図示せず)が接続されており、この真空ポンプによってチャンバー2内は、成膜処理中やその待機中などの間、常時真空引きされている。このチャンバー2内には、内部の真空度を検知するための真空計(図示せず)が設けられている。
【0018】
また、このチャンバー2内の上方には、前記搬送機構が基板Wを保持した状態でこれを移動させる空間となる、基板搬送部8が設けられている。なお、チャンバー2には、基板Wを出し入れするための搬入口(図示せず)及び搬出口(図示せず)が、それぞれ開閉可能に設けられている。
【0019】
蒸着容器4は、基台9上に配置されたもので、図3(a)の斜視図、図3(b)の側断面図に示すように、有底円筒状の容器本体(収容容器)10とこれの開口を覆う円盤状の蓋部11とからなるものである。この容器本体10内には、図3(b)に示すように蒸着材料3が収容されている。
容器本体10には、該容器本体10を加熱することで、これに収容された蒸着材料3を加熱するためのヒーター5が内蔵されている。ヒーター5は、図示しない制御装置によって加熱温度が制御されるようになっており、これにより、収容した蒸着材料3に対応して、蒸着に最適な温度で加熱できるようになっている。
【0020】
蓋部11は、容器本体8に対して回転可能に配設されたもので、その外周面にはギア11aが形成されている。このギア11aには、図2に示すように蒸着容器4の側方に配置された駆動ギア12が歯合しており、この駆動ギア12は、駆動軸13を介してモーター等の駆動源14に連結している。このような構成のもとに、駆動源14が駆動し、駆動軸13を介して駆動ギア12が回転することにより、これに歯合する蓋部11も、収容容器10に対して回転するようになっている。ここで、前記の駆動源14と、駆動軸13及び駆動ギア12と、ギア11aとにより、本発明における回転手段の一形態が構成されている。なお、この回転手段による蓋部11の回転速度については、例えば5〜20rpm程度とされるが、これに限定されることなく、任意の速度を設定することができる。
【0021】
また、蓋部11には、図3(a)に示すように口部15が複数(本実施形態では4つ)設けられている。口部15は、蓋部11の上面から上方に突出した円筒状のもので、基板Wに向けて、蒸着容器4内に収容した蒸着材料を飛散させるためのものである。これら口部15は、蓋部11の回転中心、すなわち円盤状の蓋部11の中心点を中心にした円の円周上に等間隔で配置されたものである。また、これら口部15は、それぞれの向き、つまりその中心軸が、蓋部11の中心点を通る法線と交差するように配置されている。具体的には、図2に示すように、蓋部11の中心点を通る法線Pと、各口部15の中心軸Qとが、基板Wの下面上で交差するように、それぞれ配置されているのが好ましい。このようにすれば、全ての口部15が、基板Wに対して同じ箇所を中心にして蒸着材料を飛散させることができ、蒸着ムラを抑制することができるからである。
【0022】
蒸着容器4に収容される蒸着材料3としては、例えば有機EL装置を構成する有機EL素子の有機機能層、すなわち正孔注入/輸送層、発光層、電子注入/輸送層等となる有機膜の各形成材料が用いられる。もちろん、有機EL装置以外の用途においては、その用途に応じた種々の成膜材料が用いられる。
【0023】
次に、このような構成の蒸着装置1による成膜方法について説明する。ここでは、有機EL装置の有機機能層の成膜を例にして説明する。
まず、有機EL装置の概略構成について説明する。
図4(a)、(b)は、有機EL装置の一例であるラインヘッドを示す図であり、(a)は要部側断面図、(b)は平面図である。
【0024】
図4(a)、(b)に示す有機EL装置50は、電子写真方式を利用したプリンタに使用されるラインヘッドであり、複数の有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)53を配列してなる発光素子列(発光部ライン)53Aを1列または複数列、例えば、3列備えている。このようなラインヘッドでは、発光素子列53Aに含まれる有機EL素子53のうち、所定の有機EL素子53を点灯させて感光ドラム上に照射することにより、感光ドラム上に電荷による像(潜像)を形成する。
【0025】
ここで、有機EL装置50は細長い矩形形状を有しており、通常は1枚の大型基板W上に有機EL素子53などを形成した後、単品サイズの複数枚の素子基板に切り出される。また、特にボトムエミッション方式の場合には、素子基板に封止基板が貼られることで、有機EL装置50とされる。
【0026】
すなわち、この有機EL装置50は、図3(a)に示すように発光層57で発光した光を画素電極54側から出射するボトムエミッション方式とされ、素子基板52側から発光光を取り出すようになっている。このため、素子基板52としては透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。また、素子基板52上には、画素電極54に電気的に接続された駆動用トランジスタ55a(薄膜トランジスタ)などを含む回路部55が、発光素子列53Aに沿って形成されており、その上層側に有機EL素子53が形成されている。
【0027】
有機EL素子53は、陽極として機能する画素電極54と、この画素電極54からの正孔を注入/輸送する正孔注入/輸送層56と、有機EL物質からなる発光層57と、電子を注入/輸送する電子注入/輸送層58と、陰極59とがこの順に積層された構造になっている。素子基板52の回路部55には、外部接続端子(図示せず)が接続されており、各有機EL素子53を外部より制御可能となっている。
【0028】
次に、このような構成の有機EL装置50における、有機機能層の成膜について説明する。
まず、有機機能層の材料として、前記の正孔注入/輸送層56、発光層57、電子注入/輸送層58の各形成材料を用い、それぞれを別々のチャンバー2の蒸着容器4に収容する。すなわち、図1に示した基板W搬入側のチャンバー2Aに正孔注入/輸送層56の形成材料を配し、次のチャンバー2Bに発光層57の形成材料を配し、搬出側のチャンバー2Cに電子注入/輸送層58の形成材料を配する。
【0029】
そして、各チャンバー2(2A、2B、2C)内を真空引きして所定の真空度にするとともに、チャンバー2A内の蒸着容器4のヒーター5により、収容した蒸着材料(正孔注入/輸送層56の形成材料)を加熱する。
【0030】
チャンバー2A内が所定の真空度に達し、その蒸着容器4を所望の温度に加熱したら、まず、前記回転手段によって蒸着容器4の蓋部11を回転させ、4つの口部15を収容容器11の周方向に回転させる。そして、基板Wを、搬送機構によってチャンバー2A内の基板搬送部8に搬入する。なお、この基板Wは、図4(a)に示した、画素電極4及び隔壁(図示せず)までを形成した個片化する前の素子基板52を、多数含んでなるものとする。
【0031】
このようにして基板Wをチャンバー2A内に搬入し、所定の速度で基板搬送部8を通過させると、その間に蒸着容器4の各口部15から飛散してきた蒸着材料(正孔注入/輸送層56の形成材料)が基板Wの下面に蒸着し、これによって図4(a)に示した正孔注入/輸送層56が形成される。
また、この間に、チャンバー2B、チャンバー2Cのそれぞれの蒸着容器4についてもヒーター5によって加熱しておき、さらに前記回転手段によって蒸着容器4の蓋部11を回転させ、4つの口部15を収容容器11の周方向に回転させる。
【0032】
そして、正孔注入/輸送層56を形成した基板Wを、搬送機構によってチャンバー2B内の基板搬送部8に搬入し、ここで発光層57を形成する。
さらに、この発光層57を形成した基板Wを、搬送機構によってチャンバー2C内の基板搬送部8に搬入し、ここで電子注入/輸送層58を形成する。これにより、基板Wに対して図4(a)に示した有機機能層を全て形成する。
なお、1枚目の基板Wがチャンバー2Aにて成膜を終了したら、この基板Wをチャンバー2Bに移動するとともに、2枚目の基板Wをチャンバー2Aに搬入し、成膜処理する。同様にして、チャンバー2A、2B、2C順に多数枚を連続的に処理するようにする。
【0033】
前記構成の蒸着装置1にあっては、各チャンバー2毎で、一つの蒸着容器4に4つの口部15を設けているので、これら口部15から飛散される蒸着材料は同じ蒸着容器4内に収容されていた同じ蒸着材料の一部であることにより、蒸着材料間のバラツキがなくなり、したがって4つの口部15間で飛散される蒸着材料にムラが生じるのを防止することができる。よって、この蒸着装置1によれば、口部15間で飛散される蒸着材料にムラが生じるのが防止されているため、必要以上に膜厚を厚くする必要がなくなることなどにより、無駄になる材料を少なくして蒸着効率を高めることができる。
【0034】
また、4つの口部15を回転させているので、基板Wに対する蒸着粒子の入射方向が固定されることなく360度に亘る全方向となり、したがって蒸着マスクの影になる部分をほとんどなくして膜厚の不均一化を抑制することができる。よって、これによっても蒸着効率を高めることができる。
さらに、チャンバー2に対して基板Wを連続的に搬入・搬送する搬送機構を備えているので、基板Wを連続的に移動させつつ蒸着を行うことができ、したがって複数枚の基板Wを連続的に成膜処理できるため、生産性を向上することができる。
【0035】
なお、この蒸着装置1では、口部15をそれぞれ傾けて形成しているが、口部15の向きについては、基板Wに向いていれば、その傾斜角等については形成する膜に応じて任意に選択することができる。また、口部15の数についても、複数であれば4つに限ることなく、2つ、3つ、あるいは5つ以上の任意の数に設定することができる。したがって、予め口部15の向き(傾斜角)や数を所望の形態に形成しておいた蓋部11を複数用意しておき、形成する膜に応じて蓋部11を適宜に選択し、用いるのが好ましい。
【0036】
さらに、口部15の配置についても、全てを一つの円周上に配置することなく、例えば図5の平面図に示すように、蓋部11の中心点Oを中心とする複数の同心円R1〜R4に対して、それぞれ一つの口部15を配置してもよい。なお、図5に示す例では、前記同心円R1〜R4のうちの最少の円R1の半径をrとすると、他の同心円の半径は2r、3r、4rとなるように設定する。このように回転中心からの口部15の配置を等間隔でずらすことにより、基板Wに対してより効率的に蒸着を行うことが可能になる。
【0037】
(第2実施形態)
図6は、本発明の蒸着装置の第2実施形態を示す図であり、図6は収容容器とこれを保持する基台とを示す斜視図である。
第2実施形態の蒸着装置が第1実施形態の蒸着装置1と異なるところは、第1実施形態では回転手段によって蓋部11のみを回転させ、これによって口部15を回転させているのに対し、第2実施形態では、収容容器20全体を回転させるように構成した点である。
【0038】
図6に示すように第2実施形態の収容容器20では、容器本体10と蓋部11とからなるものの、蓋部11にはその外周面にギア11aが形成されていない。代わって、この第2実施形態では、収容容器20を保持する基台21の上面側が回転可能になっており、この上面側が回転手段によって回転させられるようになっている。
【0039】
すなわち、基台21は、底部側に対して上面側が回転可能に支持されており、この上面側の外周面にギア21aが形成されている。そして、このギア21aには、基台21の側方に配置された駆動ギア22が歯合しており、この駆動ギア22は、駆動軸23を介してモーター等の駆動源24に連結している。このような構成のもとに、駆動源24が駆動し、駆動軸23を介して駆動ギア22が回転することにより、これに歯合する基台21の上面側も回転するようになっている。なお、前記の駆動源24と、駆動軸23及び駆動ギア22と、ギア21aとにより、本発明における回転手段の一形態が構成されている。
【0040】
そして、このように基台21の上面側が回転させられることにより、この基台21の上面上に保持された収容容器20は、全体が回転するようになっている。なお、収容容器20は、その中心軸が基台21の回転軸に一致するように、基台21上に配置されるようになっている。したがって、回転手段によって基台21の上面側が回転し、これによって収容容器20もその全体が回転することにより、蓋部11の口部15も収容容器20の周方向に回転するようになっている。
【0041】
したがって、このような構成からなる蒸着装置にあっても、4つの口部15から飛散される蒸着材料は同じ収容容器20内に収容されていた同じ蒸着材料の一部であることにより、蒸着材料間のバラツキがなくなり、これによって第1実施形態の蒸着装置1と同様に、無駄になる材料を少なくして蒸着効率を高めることができる。
また、特に複数の口部15を、収容容器20と一体にして該収容容器20の周方向に回転させるようにしているので、収容容器20内の蒸着材料も流動させることができ、したがって複数の口部15から飛散する蒸着材料間のバラツキをより確実になくすことができる。よって、蒸着効率をより一層高めることができる。
【0042】
また、4つの口部15を回転させているので、基板Wに対する蒸着粒子の入射方向が固定されることなく360度に亘る全方向となり、したがって、第1実施形態の蒸着装置1と同様に、膜厚の不均一化を抑制して蒸着効率を高めることができる。
さらに、チャンバー2に対して基板Wを連続的に搬入・搬送する搬送機構を備えることにより、第1実施形態の蒸着装置1と同様に複数枚の基板Wを連続的に成膜処理することができ、したがって生産性を向上することができる。
【0043】
なお、この第2実施形態の蒸着装置にあっても、第1実施形態の蒸着装置1と同様に、有機EL装置(有機EL素子)の有機機能層の成膜に適用することができる。
また、図5に示したような蓋部11を用いることができ、さらには、口部15の向き(傾斜角)や数を所望の形態に形成しておいた蓋部11を複数用意しておき、形成する膜に応じて蓋部11を適宜選択して用いてもよい。
【0044】
さらに、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態では本発明の蒸着装置1を、有機EL装置の有機機能層の成膜に適用する例について説明したが、本発明の蒸着装置はこれに限定されることなく、種々の蒸着膜の形成に用いることができる。
【0045】
また、前記実施形態では、回転手段としてギアや駆動ギア等からなる構成のものを用いたが、本発明における回転手段はこれらに限定されることなく、口部(蓋部)を選択的に回転させることができ、あるいは収容容器全体を回転させることができれば、従来周知の種々の回転手段を用いることができる。
さらに、蒸着容器内の蒸着材料を加熱する加熱手段(ヒーター5)については、容器本体に内蔵するのに代えて、例えば基台に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…蒸着装置、2…チャンバー(蒸着室)、3…蒸着材料、4、20…蒸着容器、5…ヒーター(加熱手段)、9、21…基台、10…容器本体(収容容器)、11…蓋部、11a、21a…ギア、12、22…駆動ギア、13、23…駆動軸、14、24…駆動源、W…基板(被処理基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に蒸着材料を蒸着させる蒸着装置であって、
蒸着室内に配置されて前記蒸着材料を収容する収容容器と、
前記収容容器の開口を覆う蓋部に設けられて、前記被処理基板に向けて収容した蒸着材料を飛散させる複数の口部と、
前記収容容器内の蒸着材料を加熱する加熱手段と、
少なくとも前記複数の口部を、前記収容容器の周方向に回転させる回転手段と、を含むことを特徴とする蒸着装置。
【請求項2】
前記回転手段は、前記複数の口部を前記収容容器と一体にして、該収容容器の周方向に回転させるよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項3】
前記被処理基板を、前記蒸着室に対して連続的に搬入・搬送する搬送機構を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−94196(P2011−94196A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250079(P2009−250079)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】