説明

蓄冷型膨張機、パルス管冷凍機、磁気共鳴イメージング装置、核磁気共鳴装置、超伝導量子干渉素子磁束計及び蓄冷型膨張機の磁気シールド方法

【課題】磁性蓄冷材を有する蓄冷型膨張機を具備した蓄冷型冷凍機において、冷凍機の冷凍能力を低下させることなく、磁性蓄冷材による磁界変化をシールドすることのできる蓄冷型膨張機を提供する。
【解決手段】冷媒ガスの膨張時の冷熱を蓄冷する蓄冷管1、2と、蓄冷管1、2の低温端側と連通され、蓄冷管1、2を通して冷媒ガスの圧縮、膨張を繰り返して冷熱を発生するシリンダ3、4と、蓄冷管1、2の内部に充填され、磁性体よりなり、冷媒ガスと接触して冷熱を蓄冷する磁性蓄冷材23と、磁性蓄冷材23を囲繞して設けられた磁気シールド部材27と、を有する蓄冷型膨張機10において、磁気シールド部材27は、常温での電気抵抗率が50μΩcm以下であることを特徴とする蓄冷型膨張機10、パルス管冷凍機、磁気共鳴イメージング装置、核磁気共鳴装置、超伝導量子干渉素子磁束計及び蓄冷型膨張機の磁気シールド方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄冷型膨張機、パルス管冷凍機、磁気共鳴イメージング装置、核磁気共鳴装置、超伝導量子干渉素子磁束計及び蓄冷型膨張機の磁気シールド方法に係り、特に磁性蓄冷材に起因する磁界変化をシールドする蓄冷型膨張機、パルス管冷凍機、磁気共鳴イメージング装置、核磁気共鳴装置、超伝導量子干渉素子磁束計及び蓄冷型膨張機の磁気シールド方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置等の超伝導磁石を備えたシステムにおいて、超伝導磁石を極低温に冷却するために、極低温冷凍機が用いられている。極低温冷凍機として、例えば、ギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon:GM)冷凍機、パルス管冷凍機等の冷凍機が用いられている。これらの冷凍機は、冷媒ガスを断熱膨張させ、その際に発生する冷熱を蓄冷材に蓄冷することによって冷凍冷却を行う蓄冷型冷凍機である。
【0003】
蓄冷型冷凍機は、冷媒ガスが断熱膨張するときに発生した冷熱を蓄冷する蓄冷型膨張機と、蓄冷型膨張機から冷媒ガスを回収し、回収した冷媒ガスを圧縮し、圧縮した冷媒ガスを再び蓄冷型膨張機に供給する圧縮機と、を備える。
【0004】
蓄冷型膨張機は、冷熱を蓄冷するための蓄冷材を備える。蓄冷材は、使用温度である極低温で大きな比熱を有する必要がある。しかしながら、一般に鉛等の金属の比熱は、15K以下の極低温において、温度の低下とともに急激に減少する。逆に、冷媒ガスとして用いられるヘリウムの比熱は、温度の低下とともに増大する。従って、断熱膨張によって冷却されたヘリウムガスは、蓄冷材を十分熱交換することができず、蓄冷型膨張機を例えば4.2K等の極低温に到達させることができない。
【0005】
そこで、蓄冷型膨張機を極低温に到達させるため、15K以下の温度で鉛よりも大きな比熱を有する、例えば「HoCu」など(以下、磁性蓄冷材)が蓄冷材として用いられる。磁性蓄冷材は、15K以下で相転移し反強磁性体となる。反強磁性体となった磁性蓄冷材は、鉛などと比較して、大きな磁化率を有するため、蓄冷型冷凍機の動作に伴って磁界中を移動すると、蓄冷型冷凍機の周辺に磁界の変化を発生することになる。例えば、蓄冷型冷凍機が超伝導磁石に近接して配置される場合、蓄冷型冷凍機に含まれる磁性蓄冷材が超伝導磁石の発生する磁界によって磁化し、磁化した磁性蓄冷材が超伝導磁石の発生する磁界中を移動するため、超伝導磁石の発生する磁界が乱される。
【0006】
そこで、蓄冷型膨張機に含まれる磁性蓄冷材の発生する磁界を、超伝導磁気シールド部材を用いてシールドする方法が行われてきた。特許文献1には、希土類金属を用いた合金または化合物を磁性蓄冷材とするGM冷凍機において、磁性蓄冷材の周囲に超伝導体からなる磁気シールド部材が設けられることを特徴とするGM冷凍機の例が開示されている。GM冷凍機の可動部分であるディスプレーサの内部に磁性蓄冷材が充填され、磁性蓄冷材が充填されたディスプレーサの周囲に超伝導磁気シールド部材が設けられる。
【0007】
一方、パルス管冷凍機は、例えばGM冷凍機のディスプレーサのような可動部分を含まないため、GM冷凍機等の他の冷凍機より磁性蓄冷材の移動距離が小さく、磁界が擾乱される量が少ない。そのため、超伝導磁石を備えたシステムにおいて、パルス管冷凍機を用いることは大きな利点である。しかし、MRIのような微小な磁界を測定する微小磁界測定システムに用いる場合、パルス管冷凍機の微小振動による微小な磁界変化も磁界の擾乱となる。従って、MRI等の微小磁界測定システムに用いる場合、パルス管冷凍機にも超伝導磁気シールド部材が設けられる。
【0008】
図10を参照して、パルス管冷凍機に超伝導磁気シールド部材が設けられた例を説明する。図10は、パルス管冷凍機用蓄冷型膨張機の構成を模式的に示す図である。図10に示されるように、蓄冷型膨張機110は、第1蓄冷管111、第2蓄冷管112、第1パルス管113、第2パルス管114、1段冷却ステージ115、2段冷却ステージ116、フランジ117、バルブユニット118、蓄冷材122、磁性蓄冷材123、超伝導磁気シールド部材127を有する。フランジ117を高温側の起点とし、1段冷却ステージ115、2段冷却ステージ116が離間して設けられ、フランジ117と1段冷却ステージ115との間に第1蓄冷管111と第1パルス管113とが設けられ、1段冷却ステージ115と2段冷却ステージ116との間に第2蓄冷管112が設けられ、フランジ117と2段冷却ステージ116との間に第2パルス管114が設けられる。第2蓄冷管112には、1段冷却ステージ115側から2段冷却ステージ116側への方向に沿って、蓄冷材122、磁性蓄冷材123の順に充填される。第2蓄冷管112の磁性蓄冷材123が充填された部分を囲繞し、2段冷却ステージ116に熱的に接触されるように、超伝導磁気シールド部材127が設けられる。超伝導磁気シールド部材127の下端は、2段冷却ステージ116にはんだ付けされる。1段冷却ステージ115の温度は20〜100K程度に保持され、2段冷却ステージ116の温度は4〜10K程度に保持される。超伝導磁気シールド部材127は、2段冷却ステージ116に熱的に接触されるため、2段冷却ステージ116と略同じ温度に保持される。また、蓄冷型膨張機110が低温容器中において液体ヘリウムを冷却する場合、フランジ117より下側の部分は液体ヘリウムが蒸発したヘリウムガス中に配置される。
【0009】
また、特許文献2には、超伝導磁気シールド部材を有する蓄冷型膨張機を備えたパルス管冷凍機の例が開示されている。更に、特許文献3には、超伝導磁石システムに備えられ、磁性蓄冷材が充填されたパルス管冷凍機であって、磁性蓄冷材による漂遊磁界を低減するために超伝導磁気シールド部材が設けられたパルス管冷凍機の例が開示されている。
【特許文献1】特開平2−161260号公報
【特許文献2】特開2007−155319号公報
【特許文献3】特開2006−38446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、蓄冷型膨張機を備えた蓄冷型冷凍機の磁性蓄冷材による磁界変化を、超伝導磁気シールド部材を用いてシールドする場合、次のような問題があった。
【0011】
特許文献1乃至3いずれに開示された方法においても、超伝導磁気シールド部材の超伝導状態が維持されるように、超伝導磁気シールド部材を超伝導臨界温度以下に冷却しなくてはならない。ところが、例えば図10に示されるように、超伝導磁気シールド部材127が磁界をシールドする磁性蓄冷材123が充填される第2蓄冷管112は、1段冷却ステージ115と2段冷却ステージ116との間に配置されるため、温度が4〜20K程度の領域にある。超伝導磁気シールド部材127と第2蓄冷管112との間にはヘリウムガスが存在するため、ヘリウムガスを介した熱伝導により超伝導磁気シールド部材127の温度が上昇し、超伝導磁気シールド部材127と熱的に接触された2段冷却ステージ116の温度が上昇する。その結果、冷凍機の冷凍能力が低下し、所定の極低温に到達することができないという問題があった。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、磁性蓄冷材を有する蓄冷型膨張機を具備した蓄冷型冷凍機において、冷凍機の冷凍能力を低下させることなく、磁性蓄冷材による磁界変化をシールドすることのできる蓄冷型膨張機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0014】
第1の発明に係る蓄冷型膨張機は、冷媒ガスの膨張時の冷熱を蓄冷する蓄冷管と、前記蓄冷管の低温端側と連通され、前記蓄冷管を通して前記冷媒ガスの圧縮、膨張を繰り返して冷熱を発生するシリンダと、前記蓄冷管の内部に充填され、磁性体よりなり、前記冷媒ガスと接触して前記冷熱を蓄冷する磁性蓄冷材と、前記磁性蓄冷材を囲繞して設けられた磁気シールド部材と、を有する蓄冷型膨張機において、前記磁気シールド部材は、常温での電気抵抗率が50μΩcm以下であることを特徴とする。
【0015】
第2の発明は、第1の発明に係る蓄冷型膨張機において、前記磁気シールド部材は、銅又はアルミニウムであることを特徴とする。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る蓄冷型膨張機において、前記蓄冷管の前記磁性蓄冷材が充填される部分は、前記磁気シールド部材であることを特徴とする。
【0017】
第4の発明は、第1又は第2の発明に係る蓄冷型膨張機において、前記磁気シールド部材は、前記蓄冷管の前記磁性蓄冷材が充填される部分に、接して取り囲むように設けられたことを特徴とする。
【0018】
第5の発明に係るパルス管冷凍機は、第1乃至第4の発明の何れか一つに係る蓄冷型膨張機を備え、前記シリンダはパルス管であることを特徴とする。
【0019】
第6の発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、第5の発明に係るパルス管冷凍機を備えたことを特徴とする。
【0020】
第7の発明に係る核磁気共鳴装置は、第5の発明に係るパルス管冷凍機を備えたことを特徴とする。
【0021】
第8の発明に係る超伝導量子干渉素子磁束計は、第5の発明に係るパルス管冷凍機を備えたことを特徴とする。
【0022】
第9の発明に係る蓄冷型膨張機の磁気シールド方法は、磁性蓄冷材を備えた蓄冷型膨張機の磁気シールド方法であって、常温での電気抵抗率が50μΩcm以下である電気良導体を用いて前記磁性蓄冷材を囲繞し、前記磁性蓄冷材が発生する磁界が変化することによって前記電気良導体にシールド電流が流れ、前記磁性蓄冷材が発生する前記磁界をシールドすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、磁性蓄冷材を有する蓄冷型膨張機を具備した蓄冷型冷凍機における冷凍機の冷凍能力を低下させることなく、磁性蓄冷材による磁界変化をシールドすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
図1を参照し、本発明の第1の実施の形態に係る蓄冷型膨張機を説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係る蓄冷型膨張機の構成を模式的に示す図である。
【0026】
図1に示されるように、本実施の形態に係る蓄冷型膨張機10は、第1蓄冷管1、第2蓄冷管2、第1パルス管3、第2パルス管4、1段冷却ステージ5、2段冷却ステージ6、フランジ7、バルブ/オリフィス/バッファユニット8を有する。蓄冷型膨張機10は、蓄冷管及びパルス管が2段構造を構成する。従って、高温端側から低温端側に向かって、フランジ7、1段冷却ステージ5、2段冷却ステージ6が離間して設けられ、それらの間を結ぶように、第1蓄冷管1、第2蓄冷管2、第1パルス管3、第2パルス管4が配設される。
【0027】
第1蓄冷管1、第2蓄冷管2は、フランジ7側を基点として、各々1段目、2段目に設けられた蓄冷管である。第1蓄冷管1、第2蓄冷管2は、冷媒ガスであるヘリウムガスが断熱膨張を繰り返して発生する冷熱を蓄冷するためのものである。第1蓄冷管1は、一端がフランジ7、他端が1段冷却ステージ5に固定され、フランジ7側を高温端、1段冷却ステージ5側を低温端とする。第2蓄冷管2は、一端が1段冷却ステージ5に、他端が2段冷却ステージ6に固定され、1段冷却ステージ5側を高温端、2段冷却ステージ6側を低温端とする。
【0028】
第1パルス管3、第2パルス管4は、フランジ7側を基点として、各々1段目、2段目に設けられたパルス管である。第1パルス管3、第2パルス管4は、第1蓄冷管1、第2蓄冷管2を通して供給される冷媒ガスであるヘリウムガスが断熱膨張を繰り返して冷熱を発生するためのものである。第1パルス管3は、一端がフランジ7に、他端が1段冷却ステージ5に固定され、フランジ7側を高温端、1段冷却ステージ5側を低温端とする。第2パルス管4は、一端がフランジ7に、他端が2段冷却ステージ6に固定され、フランジ7側を高温端、2段冷却ステージ6側を低温端とする。
【0029】
第1パルス管3は、高温端、低温端に各々整流器11、12を有する。第2パルス管40は、高温端、低温端に各々整流器13、14を有する。整流器11、12、13、14は、第1パルス管3、第2パルス管4における冷媒ガスの供給又は回収に伴う冷媒ガスの流れを安定化させるためのものである。
【0030】
1段冷却ステージ5は、第1蓄冷管1の低温端及び第1パルス管3の低温端が固定される部分である。1段冷却ステージ5は、第1蓄冷管1から冷熱が伝導され、低温に維持される。また、1段冷却ステージ5は、第2蓄冷管2の高温端が固定される部分でもある。1段冷却ステージ5は、第2蓄冷管2から高温側へ冷熱が伝導されるのを防止するバッファとして機能する。1段冷却ステージ5の到達温度としては、特に限定されるものではないが、例えば40Kとすることができる。
【0031】
2段冷却ステージ6は、第2蓄冷管2の低温端及び第2パルス管4の低温端が固定される部分である。2段冷却ステージ6は、約40Kの低温に維持される1段冷却ステージ5をバッファとして、第2蓄冷管2から冷熱が伝導され、極低温に維持される。2段冷却ステージ6の到達温度としては、特に限定されるものではないが、例えば4Kとすることができる。
【0032】
第1蓄冷管1の低温端の内部は、1段冷却ステージ5の内部に設けられた配管を介して、第1パルス管3の低温端の内部及び第2蓄冷管2の高温端の内部と連通される。第2蓄冷管2の低温端の内部は、2段冷却ステージ6の内部に設けられた配管を介して、第2パルス管4の低温端の内部と連通される。
【0033】
バルブ/オリフィス/バッファユニット8は、フランジ7の、第1蓄冷管1、第1パルス管3、第2パルス管4と反対側に配設される。第1蓄冷管1の高温端の内部、第1パルス管3の高温端の内部、第2パルス管4の高温端の内部は、フランジ7の内部に設けられた配管と、バルブ/オリフィス/バッファユニット8の内部に設けられた配管とを介して、外部の圧縮機から冷媒ガスを供給する供給管15、冷媒ガスを外部の圧縮機に回収する回収管16と接続される。
【0034】
第1蓄冷管1の内部には、第1蓄冷材21が充填される。第1蓄冷材21としては、例えば銅網(網状の形状に加工された銅線)を用いることができる。また、第1蓄冷管1は、軸方向の伝導損失を最小に抑えるため、肉薄のSUS材を用いることができる。SUS材として、例えばSUS304等の材質を用いることができる。
【0035】
第2蓄冷管2の内部には、高温端側から低温端側に向かって順に、第2蓄冷材22、磁性蓄冷材23が充填される。第2蓄冷材22として、例えば鉛球を用いることができる。鉛は15〜40Kの温度領域では、金属の中では大きな比熱を有するためである。
【0036】
磁性蓄冷材23は、第2蓄冷管2の高温端側から低温端側に向かって順に、第1磁性蓄冷材24、第2磁性蓄冷材25を有する。第1磁性蓄冷材24として、例えば、10〜15Kの温度領域で大きな比熱を有するErNiを用いることができ、例えば、直径0.2mm程度の球状のErNiを第2蓄冷管2の中に充填して用いることができる。第2磁性蓄冷材25として、例えば、5〜10Kの温度領域で大きな比熱を有するHoCuを用いることができる。例えば、直径0.2mm程度の球状のHoCuを第2蓄冷管2の中に充填して用いることができる。
【0037】
なお、第1の磁性蓄冷材24、第2の磁性蓄冷材25に、例えばErNiを用いるように、同一の材料を用いることもでき、この場合は、第1の磁性蓄冷材24、第2の磁性蓄冷材25は一体として磁性蓄冷材23を構成する。
【0038】
第2蓄冷管2は、第2蓄冷管部材26と、磁気シールド部材27と、を有する。第2蓄冷管部材26は、第2蓄冷材22が充填される部分を含めた第2蓄冷管2の高温端側の部分である。第1蓄冷管1と同様に、軸方向の伝導損失を最小に抑えるため、肉薄の例えばSUS304等のSUS材で構成される。第2蓄冷管部材26の軸方向に垂直な断面の形状は、例えば外径35mm、内径30mm、厚さは2.5mmである。
【0039】
磁気シールド部材27は、第1磁性蓄冷材24、第2磁性蓄冷材25が充填される部分を含めた第2蓄冷管2の低温端側の部分である。磁気シールド部材27は、SUS材ではなく、例えば無酸素銅等の銅材またはアルミニウム材を含む電気良導体よりなる。磁気シールド部材27は、第1磁性蓄冷材24、第2磁性蓄冷材25により発生する磁界変化をシールドするためのものである。磁気シールド部材27の軸方向に垂直な断面の形状は、例えば外径35mm、内径30mm、厚さは2.5mmである。
【0040】
第2蓄冷管部材26と、磁気シールド部材27とは、例えば、一方を他方に螺入する接合方法、継手を用いる接合方法、溶接による接合方法等を用いて接合される。
【0041】
次に、本実施の形態において、蓄冷型膨張機10が冷熱を蓄冷する作用、磁性蓄冷材23が磁界変化を発生する作用、及び磁気シールド部材27が磁界変化をシールドする作用について説明する。
【0042】
初めに、蓄冷型膨張機10が冷熱を蓄冷する作用について説明する。
【0043】
上記構成を有する蓄冷型膨張機10は、バルブ/オリフィス/バッファユニット8によって、第1蓄冷管1の高温端を供給管15又は回収管16と切換え連通し、第1パルス管3内で冷媒ガスが圧縮と膨張とを繰返し、その際に断熱膨張で発生する冷熱を第1蓄冷管1に充填された第1蓄冷材21に蓄冷することにより、1段冷却ステージ5が例えば40K程度に冷却される。
【0044】
さらに、蓄冷型膨張機10は2段に構成されているため、上記バルブ/オリフィス/バッファユニット8から第1蓄冷管1に導入された冷媒ガスは、第1蓄冷管1の低温端から第2蓄冷器2の高温端に導入される。そして、第2蓄冷管2の低温端に至り、第2パルス管4内で冷媒ガスが圧縮と膨張を繰返し、その際に断熱膨張で発生する冷熱を第2蓄冷管2に充填された第2蓄冷材22、磁性蓄冷材23に蓄冷することにより、2段冷却ステージ6が冷却される。第1パルス管3によって例えば40K程度に冷却された冷媒ガスの圧縮・膨張が繰り返されるため、2段冷却ステージ6は例えば4K程度に冷却される。
【0045】
次に、磁性蓄冷材23が磁界変化を発生する作用について説明する。
【0046】
供給管15と回収管16とに切換える繰返し速度、及び第1パルス管3、第2パルス管4での冷媒ガスの圧縮・膨張が繰り返される繰返し速度は、例えば2Hz程度であるが、圧縮膨張に伴って第2パルス管4が同一の繰返し速度で軸方向に伸縮振動し、それに伴って、2段冷却ステージ6、第2蓄冷管2も軸方向に伸縮振動し、磁性蓄冷材22も第2蓄冷管2の軸方向に伸縮振動する。磁性蓄冷材23の周期的な振動振幅は、例えば数10μmである。この伸縮振動により、磁性蓄冷材23の周囲においては、同じ繰返し速度で磁界変化が発生する。
【0047】
冷媒ガスとの熱交換により、磁性蓄冷材23の温度も微小に変化する。磁性蓄冷材23の磁化率には温度依存性があるため、温度変化によって磁性蓄冷材23の磁化の大きさが変化する。従って、温度変化によっても同じ繰返し速度で磁界変化が発生する。
【0048】
次に、磁気シールド部材27が磁界変化をシールドする作用について説明する。
【0049】
磁界変化が発生した場合、磁気シールド部材27が、無酸素銅等の銅材またはアルミニウム材を含む電気良導体よりなるため、レンツの法則(ファラデーの電磁誘導の法則と同じ)により、磁界変化によって発生した磁界の向きを打ち消すように、磁気シールド部材27にシールド電流が流れ、磁界変化をシールドすることができる。ここで、電界をE、磁界をB、時間をtとするときのファラデーの電磁誘導の法則(rotE=−∂B/∂t)、単位長さ辺りn回巻きの無限長ソレノイドに電流Iが流れるときに無限長ソレノイドが発生する磁界Bを表す式(B∝nI)を用い、電気良導体の電気抵抗率をρ、磁気シールド部材27の厚さをd、時間Δtの間の磁界変化をΔBとしたとき、レンツの法則により発生する磁界Bを求めると、B∝(d/ρ)・(ΔB/Δt)となり、Bはdに比例し、ρに逆比例する。従って、電気抵抗率ρが小さい電気良導体を用いて磁気シールド部材27を形成し、磁気シールド部材27の厚さdを大きくすることにより、磁性蓄冷材23の発生する磁界変化をシールドすることができる。
【0050】
ここで、電気良導体である磁気シールド部材27として、絶縁体(1012Ωcm以上)、半導体(10―3〜1012Ωcm)に比べて電気抵抗率ρが小さい金属(10―3Ωcm以下)のうち、第2蓄冷管部材26の材質であるステンレス(例えばSUS304の電気抵抗率ρ=72μΩcm)よりも電気抵抗率ρが小さく50μΩcm以下である材質を用いることができ、例えば銅(2μΩcm)、アルミニウム(3μΩcm)等の材質を用いることができる。銅材としては、無酸素銅等を用いることができる。
【0051】
また、磁気シールド部材27の厚さdが大きすぎると、1段冷却ステージ5と2段冷却ステージ6との間の熱伝導によって、冷凍機の冷凍能力が低下する。従って、例えば、2.5mmの厚さとすることができる。磁気シールド部材27の厚さを2.5mmの厚さとすることにより、磁性蓄冷材23が発生する磁界をシールドすることができ、2段冷却ステージ6の温度を4Kに維持することができる。
【0052】
以上、本実施の形態に係る蓄冷型膨張機によれば、電気良導体を用いた磁気シールド部材によって、磁性蓄冷材が発生する磁界変化をシールドするため、超伝導磁気シールド部材によって磁界変化をシールドする場合に比べ、超伝導体磁気シールド部材を冷却する分の冷熱の損失がなく、蓄冷型膨張機を備えた冷凍機の冷凍能力の低下を防ぐことができる。
(第1の実施の形態の第1の変形例)
次に、図2を参照し、本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る蓄冷型膨張機を説明する。
【0053】
図2は、本変形例に係る蓄冷型膨張機の構成を模式的に示す図である。ただし、以下の文中では、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある(以下の変形例、実施の形態についても同様)。
【0054】
本変形例に係る蓄冷型膨張機は、電気良導体を用いた磁気シールド部材が第2蓄冷管の磁性蓄冷材が充填される部分に接して取り囲むように設けられる点で、第1の実施の形態に係る蓄冷型膨張機と相違する。
【0055】
図2を参照するに、第1の実施の形態において、第2蓄冷管の磁性蓄冷材が充填される部分が電気良導体を用いた磁気シールド部材で形成されるのと相違し、本変形例に係る蓄冷型膨張機10aは、電気良導体を用いた磁気シールド部材27aが第2蓄冷管2aの磁性蓄冷材23が充填される部分に接して取り囲むように設けられることが特徴である。
【0056】
図2に示されるように、本変形例に係る蓄冷型膨張機10aは、第2蓄冷管2a、磁気シールド部材27a以外の構成は、第1の実施の形態と同一である。
【0057】
しかし、第2蓄冷管2aは、高温端から低温端まで一体で構成される。第2蓄冷管2aは、軸方向の伝導損失を最小に抑えるため、肉薄の例えばSUS304等のSUS材により形成される。第2蓄冷管2aの内部には、第1の実施の形態と同様に、高温端側から低温端側に向かって、第2蓄冷材22、磁性蓄冷材23が充填され、磁性蓄冷材23は、高温端側から低温端側に向かって、第1磁性蓄冷材24、第2磁性蓄冷材25を有する。
【0058】
加えて、第2蓄冷管2aの磁性蓄冷材23が充填される部分に接して取り囲むように、無酸素銅等の銅材またはアルミニウム材を含む電気良導体を用いた磁気シールド部材27aが設けられる。磁気シールド部材27aは、磁性蓄冷材23により発生する磁界変化をシールドするためのものである。
【0059】
本変形例において、蓄冷型膨張機10aが冷熱を蓄冷する作用、磁性蓄冷材23が磁界変化を発生する作用は、第1の実施の形態と同一である。また、磁気シールド部材27aが磁界変化をシールドする作用は、第1の実施の形態と同様である。即ち、磁界変化が発生した場合、磁気シールド部材27aが、レンツの法則により、磁界変化によって発生した磁界の向きを打ち消すように、磁気シールド部材27aにシールド電流を流し、磁界変化をシールドする。電気抵抗率ρが小さい電気良導体を選択し、磁気シールド部材27aの厚さdを大きくすることにより、磁界変化をシールドすることができるのも、第1の実施の形態と同様であり、例えば無酸素銅等の銅、アルミニウムを含む電気抵抗率が常温で50μΩcm以下の電気良導体を用いることができ、磁気シールド部材27aの厚さは、例えば2.5mmの厚さとすることができる。
【0060】
また、本変形例に係る蓄冷型膨張機10aでは、第2蓄冷管2aが1段冷却ステージ5側から2段冷却ステージ6側まで一体で構成されるため、機械的強度に優れ、第1の実施の形態に係る蓄冷型膨張機10のように、第2蓄冷管部材26と、磁気シールド部材27aとを接合する加工が必要でないため、簡便で機械的強度に優れた構成とすることができる。
【0061】
以上、本変形例に係る蓄冷型膨張機によれば、電気良導体を用いた磁気シールド部材によって、磁性蓄冷材が発生する磁界変化をシールドするため、超伝導磁気シールド部材によって磁界変化をシールドする場合に比べ、超伝導体磁気シールド部材を冷却する分の冷熱の損失がなく、蓄冷型膨張機を備えた冷凍機の冷凍能力の低下を防ぐことができる。
(第1の実施の形態の第2の変形例)
次に、図3を参照し、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る蓄冷型膨張機を説明する。
【0062】
図3は、本変形例に係る蓄冷型膨張機の構成を模式的に示す図である。
【0063】
本変形例に係る蓄冷型膨張機は、電気良導体を用いた磁気シールド部材が第2蓄冷管の磁性蓄冷材が充填される部分の内周面に設けられる点で、第1の実施の形態に係る蓄冷型膨張機と相違する。
【0064】
図3を参照するに、第1の実施の形態において、第2蓄冷管の磁性蓄冷材が充填される部分が電気良導体を用いた磁気シールド部材で形成されるのと相違し、本変形例に係る蓄冷型膨張機10bは、電気良導体を用いた磁気シールド部材27bが第2蓄冷管2bの磁性蓄冷材23が充填される部分の内周面に設けられることが特徴である。
【0065】
図3に示されるように、本変形例に係る蓄冷型膨張機10bは、第2蓄冷管2b、磁気シールド部材27b以外の構成は、第1の実施の形態と同一である。
【0066】
しかし、第1の実施の形態の第1の変形例と同様に、第2蓄冷管2bは、高温端から低温端まで一体で構成される。また、第2蓄冷管2bが、肉薄の例えばSUS304等のSUS材により形成されること、第2蓄冷管2bの内部に、第2蓄冷材22と、第1磁性蓄冷材24、第2磁性蓄冷材25よりなる磁性蓄冷材23とが充填されるのは、第1の実施の形態の第1の変形例と同様である。
【0067】
加えて、第2蓄冷管2bの磁性蓄冷材23が充填される部分の内周面に、無酸素銅等の銅材またはアルミニウム材を含む電気良導体を用いた磁気シールド部材27bが設けられる。磁気シールド部材27bとして、例えば、銅管、アルミニウム管等の管状の部材を用いることができる。また、第2蓄冷管2bの内周面に形成された、例えば銅、アルミニウム、金等の膜を用いることができる。
【0068】
本変形例において、蓄冷型膨張機10bが冷熱を蓄冷する作用、磁性蓄冷材23が磁界変化を発生する作用は、第1の実施の形態と同一である。また、磁気シールド部材27bが磁界変化をシールドする作用は、第1の実施の形態と同様である。即ち、磁界変化が発生した場合、磁気シールド部材27bが、レンツの法則により、磁界変化によって発生した磁界の向きを打ち消すように、磁気シールド部材27bにシールド電流を流し、磁界変化をシールドする。電気抵抗率ρが小さい電気良導体を選択し、磁気シールド部材27bの厚さdを大きくすることにより、磁界変化をシールドすることができるのも、第1の実施の形態と同様であり、例えば銅、アルミニウム、金等の電気抵抗率が常温で50μΩcm以下の電気良導体を用いることができ、磁気シールド部材27bの厚さは、例えば2.5mmの厚さとすることができる。
【0069】
また、本変形例に係る蓄冷型膨張機10bでは、第2蓄冷管2bが1段冷却ステージ5側から2段冷却ステージ6側まで一体で構成されるため、機械的強度に優れ、第1の実施の形態に係る蓄冷型膨張機10のように、第2蓄冷管部材26と、磁気シールド部材27とを接合する加工が必要でないため、簡便で機械的強度に優れた構成とすることができる。
【0070】
以上、本変形例に係る蓄冷型膨張機によれば、電気良導体を用いた磁気シールド部材によって、磁性蓄冷材が発生する磁界変化をシールドするため、超伝導磁気シールド部材によって磁界変化をシールドする場合に比べ、超伝導体磁気シールド部材を冷却する分の冷熱の損失がなく、蓄冷型膨張機を備えた冷凍機の冷凍能力の低下を防ぐことができる。
(第2の実施の形態)
次に、図4を参照し、本発明の第2の実施の形態に係る蓄冷型膨張機を説明する。
【0071】
図4は本実施の形態に係る蓄冷型膨張機の構成を模式的に示す図である。
【0072】
図4に示されるように、本実施の形態に係る蓄冷型膨張機10cは、第1蓄冷管1c、第2蓄冷管2c、第1シリンダ3c、第2シリンダ4c、1段冷却ステージ5c、2段冷却ステージ6c、フランジ7c、バルブ/動力室ユニット8cを有する。蓄冷型膨張機10cはGM冷凍機用蓄冷型膨張機であるため、第1蓄冷管1c、第2蓄冷管2cは、GM冷凍機の第1ディスプレーサ、第2ディスプレーサとして機能する。また、高温端側から低温端側に向かって、フランジ7c、1段冷却ステージ5c、2段冷却ステージ6cが離間して設けられ、フランジ7cと1段冷却ステージ5cとを結ぶように第1蓄冷管1c、第1シリンダ3cが配設され、1段冷却ステージ5cと2段冷却ステージ6cとを結ぶように第2蓄冷管2c、第2シリンダ4cが配設される。
【0073】
第1シリンダ3c、第2シリンダ4cは、それらの軸に垂直な断面が円形の形状を有する。第1シリンダ3c、第2シリンダ4cは、例えばSUS等で形成され、互いに異なる内径を有する。
【0074】
第1蓄冷管1cは、第1蓄冷管1cの1段冷却ステージ5c側(低温端)が、第1シリンダ3cの1段冷却ステージ5c側(低温端)と1段冷却ステージ5cとの間に第1膨張空間32を形成するように、第1シリンダ3cに挿入される。第1蓄冷管1cは、例えばフェノール樹脂で形成された円筒容器状の部材である。
【0075】
第1蓄冷管1cの高温端側には、第1蓄冷管1cの内部と外部とを連通する開口部33が形成され、第1蓄冷管1cの低温端側には、第1蓄冷管1cの内部と第1膨張空間32とを連通する開口部34が形成される。第1蓄冷管1cの内部には、第1蓄冷材21cが充填されている。第1蓄冷材21cは、例えば球状の形状を有する鉛、銅製金網等を用いることができる。第1蓄冷管1cの外周には、第1シール部材35が設けられている。第1シール部材35は、第1シール部材35の上側と第1膨張空間32との間を、第1蓄冷管1cの外周面と第1シリンダ3cの内周面との間の間隙を介して連通させないためのものである。
【0076】
第2蓄冷管2cは、第2蓄冷管2cの1段冷却ステージ5c側(高温端)が、第2シリンダ4cの1段冷却ステージ5c側(高温端)と1段冷却ステージ5cとの間に第1膨張空間32を形成し、第2蓄冷管2cの2段冷却ステージ6c側(低温端)が、第2シリンダ4cの2段冷却ステージ6c側(低温端)と2段冷却ステージ6cとの間に第2膨張空間36を形成するように、第2シリンダ4cに挿入される。第2蓄冷管2cは、例えばSUS等で形成された円筒容器状の部材である。
【0077】
第2蓄冷管2cの高温端側には、第2蓄冷管2cの内部と第1膨張空間32とを連通する開口部37が形成され、第2蓄冷管2cの低温端側には、第2蓄冷管2cの内部と第2膨張空間36とを連通する開口部38が形成される。
【0078】
第2蓄冷管2cの内部には、高温端側から低温端側に向かって順に、第2蓄冷材22c、磁性蓄冷材23cが充填され、磁性蓄冷材23cは、高温端側から低温端側に向かって順に、第1磁性蓄冷材24c、第2磁性蓄冷材25cを有する。第2蓄冷材22cとして、例えば直径0.2mm程度の球状の鉛を用いることができる。第1磁性蓄冷材24cとして、例えば直径0.2mm程度の球状のErNiを用いることができる。第2磁性蓄冷材25cとして、例えば直径0.2mm程度の球状のHoCuを用いることができる。
【0079】
第2蓄冷管2cの外周には、第2シール部材39が設けられている。第2シール部材39は、第1膨張空間32と第2膨張空間36との間を、第2蓄冷管2cの外周面と第2シリンダ4cの内周面との間の間隙を介して連通させないためのものである。
【0080】
第2蓄冷管2cは、第2蓄冷管部材26cと、磁気シールド部材27cとを有する。磁気シールド部材27cは、第2蓄冷材22cが充填される第2蓄冷管2cの高温端側の部分である。第1蓄冷管1cと同様に、軸方向の伝導損失を最小に抑えるため、肉薄のSUS材で構成される。第2蓄冷管部材26cの軸方向に垂直な断面の形状は、例えば外径40mm、内径35mm、厚さは2.5mmである。
【0081】
磁気シールド部材27cは、第1磁性蓄冷材24c、第2磁性蓄冷材25cが充填される第2蓄冷管2cの低温端側の部分である。磁気シールド部材27cは、SUS材ではなく、無酸素銅等の銅材またはアルミニウム材を含む電気抵抗率が常温で50μΩcm以下の電気良導体よりなる。磁気シールド部材27cは、第1磁性蓄冷材24c、第2磁性蓄冷材25cの後述する往復運動により発生する磁界変化をシールドするためのものである。磁気シールド部材27cの軸方向に垂直な断面の形状は、例えば外径40mm、内径35mm、厚さは2.5mmである。
【0082】
次に、本実施の形態において、蓄冷型膨張機10cが冷熱を蓄冷する作用、磁性蓄冷材23cが磁界変化を発生する作用、及び磁気シールド部材27cが磁界変化をシールドする作用について説明する。
【0083】
初めに、蓄冷型膨張機10cが冷熱を蓄冷する作用について説明する。
【0084】
第1蓄冷管1c、第2蓄冷管2cは、連結部材41によって互いに連結される。第1蓄冷管10cは、連結部材41を介して、バルブ/動力室ユニット8cに配置されるモータ42の回転軸に接続される。連結部材41は、モータ42の回転運動を変換し、第1蓄冷管1c、第2蓄冷管2cを、第1シリンダ3c、第2シリンダ4cの軸方向に往復運動させるためのクランクとしての機能を有する。
【0085】
バルブ/動力室ユニット8c内には、2つのバルブ43、44が設けられる。バルブ43、44の一端には供給管15c、回収管16cが接続され、バルブ43、44の他端は、合流され、開口部45を介して、第1膨張空間33に接続される。
【0086】
蓄冷型膨張機10cを動作させる際には、所定のタイミングで供給管15cから第1シリンダ3c内へ冷媒ガスが供給され、次の所定のタイミングで第1シリンダ3c内から回収管16cへ冷媒ガスが回収される。冷媒ガスとして、例えば0.5〜2.5MPaの圧力を有するヘリウム(He)ガスが用いられる。
【0087】
第1シリンダ3c内に供給された冷媒ガスは、第1蓄冷管1c内、第1膨張空間32内、第2蓄冷管2c内、第2膨張空間36内に達する。この際、開口部33、34、37、38は、冷媒ガスの流路となる。
【0088】
蓄冷型膨張機10cは、第1膨張空間32、第2膨張空間36の拡張に伴って冷媒ガスが断熱膨張するように構成されている。供給管15cから第1シリンダ3c内への冷媒ガスの供給と、第1シリンダ3c内から回収管16cへの冷媒ガスの回収が、第1蓄冷管1c、第2蓄冷管2cの往復運動と所定の位相差の下に行われる。第1蓄冷管1c、第2蓄冷管2cを第1シリンダ3c、第2シリンダ4cの軸方向に繰返し往復運動させることにより、冷媒ガスの断熱膨張が繰返し起こる。その結果、第1蓄冷管1cに充填された第1蓄冷材21c、第2蓄冷管2cに充填された第2蓄冷材22c、第1磁性蓄冷材24c、第2磁性蓄冷材25cが徐々に冷却され、やがて一定の温度となる。更に、1段冷却ステージ5c、2段冷却ステージ6cも冷却され、一定の温度となる、例えば、1段冷却ステージ5cを40K、2段冷却ステージ6cを4Kに冷却することができる。
【0089】
次に、磁性蓄冷材23cが磁界変化を発生する作用について説明する。
【0090】
第1蓄冷管1c、第2蓄冷管2cは、連結部材41を介したモータ42の動力により、第1シリンダ3c、第2シリンダ4cの軸方向に繰返し往復運動させられる。往復運動のストロークは、例えば10〜30mmとすることができ、往復運動の繰返し速度は、例えば1〜2Hzとすることができる。それに伴って、第2蓄冷管2cに充填される第1磁性蓄冷材24c、第2磁性蓄冷材25cの位置も周期的に第2シリンダ4cの軸方向に往復運動する。この往復運動により、第1磁性蓄冷材24c、第2磁性蓄冷材25cの周囲においては、例えば1〜2Hzの繰返し速度で磁界変化が発生する。
【0091】
更に、10〜30mmのストロークの往復運動が発生すると、第1磁性蓄冷材24c、第2磁性蓄冷材25cの温度も周期的に変化する。一般的に磁性蓄冷材の磁化率には温度依存性があるため、往復運動に伴う温度変化によって第1磁性蓄冷材24c、第2磁性蓄冷材25cの磁化の大きさが変化する。従って、温度変化によっても、例えば1〜2Hzの繰返し速度で磁界変化が発生する。
【0092】
次に、磁気シールド部材27cが磁界変化をシールドする作用について説明する。
【0093】
この作用は、第1の実施の形態で説明した作用と同様である。磁気シールド部材27cが、無酸素銅等の銅材またはアルミニウム材を含む電気抵抗率が常温で50μΩcm以下の電気良導体よりなるため、レンツの法則により、磁気シールド部材27cの周方向にシールド電流が流れ、磁界変化を打ち消すことができる。電気抵抗率ρが小さい電気良導体を選択し、磁気シールド部材27cの厚さdを大きくすることにより、磁界変化をシールドすることができる。例えば、銅またはアルミニウムを用い、厚さ2.5mmの円筒状の磁気シールド部材27cを用いることにより、往復運動に伴う磁界変化をシールドすることができる。
【0094】
更に、本実施の形態に係る蓄冷型膨張機10cにおいては、第1の実施の形態に係る蓄冷型膨張機10に比べ、繰返し速度は略同じで、ストローク距離が増大するため磁界変化ΔB/Δtが増大し、発生する磁界Bも増大する。従って、第1の実施の形態に係る蓄冷型膨張機10に比べ、より大きな磁気シールド効果を有する。
【0095】
このように、超伝導磁気シールド部材を用いずに磁界変化をシールドすることができるため、MRI等の磁気計測装置応用に際して問題となる磁気ノイズを低減することができるとともに、超伝導磁気シールドを備える場合に問題となる熱損失による冷凍機の負荷を低減することができる。
【0096】
以上、本変形例に係る蓄冷型膨張機によれば、電気良導体を用いた磁気シールド部材によって、磁性蓄冷材が発生する磁界変化をシールドするため、超伝導磁気シールド部材によって磁界変化をシールドする場合に比べ、超伝導体磁気シールド部材を冷却する分の冷熱の損失がなく、蓄冷型膨張機を備えた冷凍機の冷凍能力の低下を防ぐことができる。
(第3の実施の形態)
次に、図5を参照し、本発明の第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機を説明する。
【0097】
図5は本実施の形態に係るパルス管冷凍機の構成を模式的に示す図である。
【0098】
図5に示されるように、本実施の形態に係るパルス管冷凍機50は、第1の実施の形態に係る蓄冷型膨張機10と、圧縮機51とを備えたことを特徴とする。即ち、本実施の形態に係るパルス管冷凍機50は、2段構造のパルス管冷凍機であり、第1蓄冷管1、第2蓄冷管2、第1パルス管3、第2パルス管4、1段冷却ステージ5、2段冷却ステージ6、フランジ7の構造は、第1の実施の形態に係る蓄冷型膨張機10と同一である。
【0099】
バルブ/オリフィス/バッファユニット8は、第1の実施の形態に係る蓄冷型膨張機10と同様に、供給管15、回収管16を有する。また、切換バルブ52、オリフィス53、54、55、56、バッファ57、58、を有する。
【0100】
第1蓄冷管1の高温端側は、切換バルブ52を介して供給管15、回収管16に接続される。また、切換バルブ52には切換バルブ52を回転駆動するモータが設けられる。従って、切換バルブ52を回転駆動することによって、第1蓄冷管1の高温端側は、供給管15または回収管16に切換え連通される。
【0101】
第1パルス管3の高温端側は、オリフィス53を介して第1蓄冷管1の高温端側に接続される。同様に、第2パルス管4の高温端側は、オリフィス54を介して第1蓄冷管1の高温端側に接続される。また、第1パルス管3の高温端側は、オリフィス55を介してバッファ57に連通される。同様に、第2パルス管4の高温端側は、オリフィス56を介してバッファ58に連通される。
【0102】
次に、パルス管冷凍機の動作について説明する。
【0103】
切換バルブ52を切換え、第1蓄冷管1の高温端側を供給管15に切換え連通することによって、第1蓄冷管1の低温端側を通して第1パルス管3の低温端側から第1パルス管3に冷媒ガスを供給し、第1パルス管3内で冷媒ガスの圧縮と膨張とを繰返し、その際の断熱膨張によって冷熱を発生させる。
【0104】
さらに、本実施の形態におけるパルス管冷凍機50においては、オリフィス53を介して第1パルス管3の高温端側に冷媒ガスを流入させることによって、第1パルス管3の低温端側からの冷媒ガスの流入を抑制する。その結果、第1パルス管3内における冷媒ガスの移動のタイミングが圧力の変化のタイミングに対して遅くなる。その後、第1パルス管3内の圧力がバッファ57内の圧力よりも高くなると、第1パルス管3の高温端側の冷媒ガスがオリフィス55を通ってバッファ57内に流入し、第1パルス管3内の冷媒ガスが第1パルス管3の高温端側に移動する。
【0105】
同様に、切換バルブ52を切換え第1蓄冷管1に導入された冷媒ガスは、第1蓄冷管1の低温端側から第2蓄冷管2の高温端側に導入される。第2蓄冷管2で熱交換を行いながら、第2蓄冷管2の低温端側を通して第2パルス管4の低温端側から第2パルス管4に冷媒ガスが供給される。すると、第2パルス管4にすでに存在している冷媒ガスは、新たに流入した冷媒ガスに押されて第2パルス管4の高温端側に移動し始める。同時にオリフィス54を介して第2パルス管4の高温端側に冷媒ガスが流入し、第2パルス管4の低温端側から流入する冷媒ガスが抑制される。その結果、第2パルス管4内における冷媒ガスの移動のタイミングが圧力の変化のタイミングに対して遅くなる。その後、第2パルス管4内の圧力がバッファ58内の圧力よりも高くなると、第2パルス管4の高温端側の冷媒ガスがオリフィス56を通ってバッファ58内に流入し、第2パルス管4内の冷媒ガスが第2パルス管4の高温端側に移動する。
【0106】
次に、第1蓄冷管1を回収管16に切換え連通することによって、第1蓄冷管1内の減圧に伴って第2蓄冷管2内の冷媒ガスが、第1蓄冷管1に吸入され始める。すると、既に第2パルス管4に存在している冷媒ガスが、第2蓄冷管2に吸入され、第2パルス管4内の冷媒ガスが第2パルス管4の低温端側に移動し始める。同時に、オリフィス54を通って第2パルス管4の高温端側の冷媒ガスが流出し、第2パルス管4の低温端側から流出する冷媒ガスが抑制される。その後、バッファ58内の冷媒ガスがオリフィス56を通って第2パルス管4内に戻ると共に、第2パルス管4内の冷媒ガスが第2蓄冷管2の低温端側に流れ込み、第2蓄冷材22、磁性蓄冷材23を冷却して温度上昇しつつ第2蓄冷管2の高温端側に移動し、第1蓄冷管1を介して回収管16に戻る。
【0107】
こうして、第2パルス管4内において、第1パルス管3によって40K程度に冷却された冷媒ガスの圧縮・膨張が繰り返され、その際の断熱膨張によって発生した冷熱によって、第2パルス管4の低温端側に設けられた2段冷却ステージ6が4K程度に冷却される。冷媒ガスとして、例えば0.5〜2.5MPaの圧力を有するヘリウム(He)ガスが用いられる。
【0108】
ここで、本実施の形態においては、磁気シールド部材27が、無酸素銅等の銅材またはアルミニウム材を含む電気抵抗率が常温で50μΩcm以下の電気良導体よりなるため、レンツの法則により、磁気シールド部材27の周方向にシールド電流が流れ、磁界変化をシールドすることができる。
【0109】
以上、本実施の形態に係るパルス管冷凍機によれば、超伝導磁気シールドを用いずに磁界変化をシールドすることができるため、MRI等の磁気計測装置応用に際して問題となる磁気ノイズを低減することができるとともに、超伝導磁気シールドを備える場合に問題となる熱損失による冷凍機の負荷を低減することができる。
【0110】
なお、本実施の形態では、第1の実施の形態に係る蓄冷型冷凍機を備え、シリンダがパルス管であることを特徴とするパルス管冷凍機を説明したが、第1の実施の形態及び第1の実施の形態の変形例で説明した蓄冷型膨張機を備えた冷凍機であれば、パルス管冷凍機に限定されるものではない。
(第3の実施の形態の変形例)
次に、図6を参照し、本発明の第3の実施の形態の変形例に係るパルス管冷凍機を説明する。
【0111】
図6は、本変形例に係るパルス管冷凍機の構成を模式的に示す図である。
【0112】
本変形例に係るパルス管冷凍機は、電気良導体を用いた磁気シールド部材が第2蓄冷管の磁性蓄冷材が充填される部分に接して取り囲むように設けられる点で、第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機と相違する。
【0113】
図6を参照するに、第3の実施の形態において、第2蓄冷管の磁性蓄冷材が充填される部分が電気良導体を用いた磁気シールド部材で形成されるのと相違し、本変形例に係るパルス管冷凍機50aは、電気良導体を用いた磁気シールド部材27aが第2蓄冷管2aの磁性蓄冷材23が充填される部分に接して取り囲むように設けられることが特徴である。即ち、第3の実施の形態において、第1の実施の形態に係る蓄冷型膨張機10の代わりに、第1の実施の形態の第1の変形例に係る蓄冷型膨張機10aを備えることが特徴である。
【0114】
図6に示されるように、本変形例に係るパルス管冷凍機50aは、第2蓄冷管2a、磁気シールド部材27a以外の構成は、第3の実施の形態と同一である。第2蓄冷管2aは、高温端から低温端まで一体で構成され、第2蓄冷管2aの磁性蓄冷材23が充填される部分に接して取り囲むように、無酸素銅等の銅材またはアルミニウム材を含む電気抵抗率が常温で50μΩcm以下の電気良導体を用いた磁気シールド27が設けられる。
【0115】
本変形例において、パルス管冷凍機50aの動作、磁気シールド部材27aの作用は、第3の実施の形態と同様である。ただし、第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機50に比べて、第2蓄冷管2aを簡便で機械的強度に優れた構成とすることができる。
【0116】
以上、本実施の形態に係るパルス管冷凍機によれば、超伝導磁気シールドを用いずに磁界変化をシールドすることができるため、MRI等の磁気計測装置応用に際して問題となる磁気ノイズを低減することができるとともに、超伝導磁気シールドを備える場合に問題となる熱損失による冷凍機の負荷を低減することができる。
【0117】
なお、本変形例では、磁気シールド部材は、第2蓄冷管の磁性蓄冷材が充填される部分に接して取り囲むように設けられるが、磁気シールド部材は、第2蓄冷管の磁性蓄冷材が充填される部分の内周面に設けられることもできる。
(第4の実施の形態)
次に、図7を参照し、本発明の第4の実施の形態に係る磁気共鳴イメージング装置を説明する。
【0118】
磁気共鳴イメージング装置は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置とも呼ばれ、静磁界中に置かれた物質中の原子核が固有の周波数の電磁波と相互作用する核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)現象によって得られた信号であるNMR信号を処理し、生体内の内部の情報を画像化する装置である。
【0119】
図7は、本実施の形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成を模式的に示す図である。
【0120】
図7に示されるように、本実施の形態に係る磁気共鳴イメージング装置60は、超伝導磁石61、補正磁界コイル62、高周波コイル63、検出コイル64、補正磁界電源65高周波送信器66、受信器67、制御装置68を備える。被検体69が置かれる空間を挟むように超伝導磁石61が配置され、超伝導磁石61の内側に補正磁界コイル62が配置され、補正磁界コイル62の内側に高周波コイル63が配置され、高周波コイル63の内側に、被検体69に近接して検出コイル64が配置される。
【0121】
超伝導磁石61は、被検体69の周りに均一な磁界71を発生する。その磁界71の方向は矢印で示すように床から天井に向かっており、磁界71の磁界均一度は、被検体69が配設される空間で、例えば約5ppm以下になるように調整される。この磁界均一度の調整は、例えば補正磁界コイル62に補正磁界電源65を用いて電流を流すことによって行われる。
【0122】
高周波コイル63は、高周波送信器66を介して制御装置68に接続され、検出コイル64は、受信器67を介して制御装置68に接続される。制御装置68からの制御信号に従って、高周波コイル63は、被検体69の検査部位に核磁気共鳴を励起するための高周波磁界を発生し、被検体69に高周波磁界を印加する。この高周波磁界によって、被検体69に核磁気共鳴が励起される。核磁気共鳴によって得られるNMR信号は、検出コイル64によって検出され、受信器67を介して制御装置68に送られ、画像再構成、スペクトル計算等の演算処理が行われる。
【0123】
超伝導磁石61は、低温容器72内に収容される。低温容器72は、外側から内側へ順に真空容器72a、輻射シールド72b、液体ヘリウム容器72cとなるような多層構造を有する。液体ヘリウム容器72cの内部には、超伝導磁石61の超伝導状態を維持するため、4.2Kの温度の液体ヘリウム73が満たされ、液体ヘリウム73に浸漬するように超伝導磁石61が配置される。また、液体ヘリウム容器72cには、液体ヘリウム73の蒸発量を低減するため、第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機50が組み込まれる。パルス管冷凍機50は、蓄冷型膨張機10と、圧縮機51と、供給管15と、回収管16とを有する。パルス管冷凍機50は2段型パルス管冷凍機であり、2段冷却ステージ6が液体ヘリウム73と熱接触している。
【0124】
パルス管冷凍機50には、圧縮機51より圧縮されたヘリウムガスが供給管15を経て供給され、断熱膨張後、回収管16を経て再び圧縮機51に戻る動作が、例えば2Hzの周波数で繰り返される。これにより、パルス管冷凍機50の2段冷却ステージ6と液体ヘリウム73は4.2Kに冷却される。
【0125】
圧縮機51からのヘリウムガスの周期的な供給及び回収により、パルス管冷凍機50内の圧力も例えば2Hzの周波数で変化し、第2蓄冷管に充填された磁性蓄冷材が例えば2Hzの周波数で振動し、被検体69に加わる磁界71も例えば2Hzの周波数で変化する。従って、磁性蓄冷材の振動から発生する磁界変化をシールドするための磁気シールド手段を設ける必要がある。
【0126】
磁気シールド手段が、補正磁界コイル62を用いる場合、圧縮機51の動作信号を取り込み、制御装置68から制御信号を送って補正磁界電源65を駆動し、補正磁界コイル62に磁界変化と大きさが同じで位相が逆である磁界を発生するため、電力負荷が大きくなる。
【0127】
また、磁気シールド手段が、超伝導磁気シールド部材を用いる場合、超伝導体が磁性蓄冷材が充填される第2蓄冷管との熱交換によって温度上昇し、2段冷却ステージ6の温度が上昇するため、パルス管冷凍機50の冷凍能力が低下する。
【0128】
しかしながら、本実施の形態において、第2蓄冷管の磁性蓄冷材が充填される部分は、銅又はアルミニウムを含む電気抵抗率が常温で50μΩcm以下の電気良導体を用いた磁気シールド部材で形成される。そのため、磁性蓄冷材の振動から発生する磁界変化は、磁気シールド部材によって、打ち消される。従って、磁性蓄冷材の振動から発生する磁界変化をシールドするために、新たな手段を設ける必要がない。補正磁界電源65を新たに動作させる必要もなく、超伝導磁気シールド部材の冷却のために冷凍機の能力が低下することもない。
【0129】
以上、本実施の形態に係る磁気共鳴イメージング装置によれば、補正磁界電源や超伝導磁気シールドを用いずに磁界変化をシールドすることができるため、MRIの測定に際して問題となる磁界変化を低減することができるとともに、補正磁界を印加する際の電源負荷の増大や、超伝導磁気シールド部材を備える場合に問題となる冷凍機能力の低下を防止することができる。
【0130】
なお、本実施の形態では、第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機を用いた磁気共鳴イメージング装置の構成を説明したが、磁気共鳴イメージング装置に備えられる冷凍機としては、第1の実施の形態の第1の変形例及び第2の変形例に係るパルス管冷凍機用蓄冷型膨張機、第2の実施の形態に係るGM冷凍機用蓄冷型膨張機を備えた冷凍機を用いることができる。
(第5の実施の形態)
次に、図8を参照し、本発明の第5の実施の形態に係る核磁気共鳴装置を説明する。
【0131】
核磁気共鳴装置は、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)装置とも呼ばれ、静磁界中に置かれた物質中の原子核が固有の周波数の電磁波と相互作用するとき、その固有の周波数が、分子内の原子の環境によってわずかに変化する核磁気共鳴現象を利用し、物質を分析する装置である。
【0132】
図8は、本実施の形態に係る核磁気共鳴装置の構成を模式的に示す図である。
【0133】
図8に示されるように、本実施の形態に係る核磁気共鳴装置80は、超伝導磁石81、補正磁界コイル82、高周波コイル83、検出コイル84、補正磁界電源85、高周波送信器86、受信器87、制御装置88を備える。被測定試料89が置かれる空間を挟むように超伝導磁石81が配置され、超伝導磁石81の内側に補正磁界コイル82が配置され、補正磁界コイル82の内側に高周波コイル83が配置され、高周波コイル83の内側に、被測定試料89に近接して検出コイル84が配置される。
【0134】
超伝導磁石81は、水平方向に磁界を発生するように配置され、装置上部から挿入され、鉛直方向に置かれた被測定試料89に横方向から磁界91を印加する。補正磁界コイル82は、磁界91の均一度を向上させるためのものである。
【0135】
高周波コイル83は、高周波送信器86を介して制御装置88に接続され、検出コイル84は、受信器87を介して制御装置88に接続される。制御装置88からの制御信号に従って、高周波コイル83は、被測定試料89に核磁気共鳴を励起するための高周波磁界を発生し、被測定試料89に高周波磁界を印加する。この高周波磁界によって、被測定試料89に核磁気共鳴が励起される。核磁気共鳴によって得られるNMR信号は検出コイル84によって検出され、受信器87を介して制御装置88に送られ、演算処理が行われる。
【0136】
超伝導磁石81は、低温容器92内に配置される。低温容器92は、外側から内側へ順に真空容器92a、輻射シールド92b、液体ヘリウム容器92cとなるような多層構造を有する。液体ヘリウム容器92cの内部には、超伝導磁石81の超伝導状態を維持するため、4.2Kの温度の液体ヘリウム93が満たされ、液体ヘリウム93に浸漬するように超伝導磁石81が配置される。また、液体ヘリウム容器92cには、液体ヘリウム93の蒸発量を低減するため、第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機50が組み込まれる。パルス管冷凍機50が、膨張型冷凍機10、圧縮機51、供給管15、回収管16を備えることは、第4の実施の形態と同様である。更に、パルス管冷凍機50において、圧縮機51からのヘリウムガスの周期的な供給及び回収により振動が発生し、蓄冷管に充填された磁性蓄冷材の振動から磁界変化が発生するのも、第4の実施の形態と同様である。
【0137】
本実施の形態において、蓄冷管の磁性蓄冷材が充填される部分は、銅又はアルミニウムを含む電気抵抗率が常温で50μΩcm以下の電気良導体を用いた磁気シールド部材で形成される。そのため、磁性蓄冷材の振動から発生する磁界変化は、磁気シールド部材によって、打ち消される。従って、磁性蓄冷材の振動から発生する磁界変化をシールドするために、新たな手段を設ける必要がない。補正磁界電源85を新たに動作させる必要もなく、超伝導磁気シールド部材の冷却のために冷凍機の能力が低下することもない。
【0138】
以上、本実施の形態に係る核磁気共鳴装置によれば、補正磁界電源や超伝導磁気シールドを用いずに磁界変化をシールドすることができるため、NMRの測定に際して問題となる磁界変化を低減することができるとともに、補正磁界を印加する際の電源負荷の増大や、超伝導磁気シールド部材を備える場合に問題となる冷凍機能力の低下を防止することができる。
【0139】
なお、本実施の形態では、第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機を用いた核磁気共鳴装置の構成を説明したが、核磁気共鳴装置に備えられる冷凍機としては、第1の実施の形態の第1の変形例及び第2の変形例に係るパルス管冷凍機用蓄冷型膨張機、第2の実施の形態に係るGM冷凍機用蓄冷型膨張機を備えた冷凍機を用いることができる。
(第6の実施の形態)
次に、図9を参照し、本発明の第6の実施の形態に係る超伝導量子干渉素子磁束計を説明する。
【0140】
超伝導量子干渉素子は、SQUID(Superconducting QUantum Interference Device)とも呼ばれ、超伝導の量子化現象を利用した超高感度磁気センサである。ジョセフソン接合を有する超伝導リングを貫く磁界が変化するとジョセフソン接合部分において電圧の変化が生じ、その電圧変化を測定することで微小な磁界の変化を測定することができる。そして、超伝導量子干渉素子磁束計は、SQUIDを超高感度磁気センサとして用いる磁束計である。例えば、脳神経等の生体から発生する微弱な磁界を測定するのに用いられる。
【0141】
図9は、本実施の形態に係る超伝導量子干渉素子磁束計の構成を模式的に示す図である。
【0142】
図9に示されるように、本実施の形態に係る超伝導量子干渉素子磁束計100は、超伝導量子干渉素子101、検出コイル102、電源も含めた帰還回路103を有する。
【0143】
超伝導量子干渉素子101は、二つのジョセフソン接合104を有する超伝導リングである。ジョセフソン接合104は、例えば二つの超伝導部分の境界が粒界、常伝導膜等であって、その境界を越えて流せる超伝導電流の大きさが限られた超伝導の弱い接合部分である。超伝導量子干渉素子101に隣接して、入力コイル105及び帰還コイル106が磁気結合するように配設される。
【0144】
検出コイル102は、被検体107の発生する微小な磁界変化を検出するコイルであり、超伝導線よりなる。検出コイル102の両端は、超伝導量子干渉素子101と磁気結合された入力コイル105の両端と接続される。その結果、検出コイル102、入力コイル105は、一本の超伝導閉ループをなす。
【0145】
帰還回路103は、帰還コイル106及び超伝導量子干渉素子101に接続され、超伝導量子干渉素子101の出力電圧から得られる非線形の磁束−電圧曲線を、帰還コイル106を通じて超伝導量子干渉素子101に負帰還をかけ、線形の磁束―電圧曲線に変換して出力するためのものである。
【0146】
ここで、被検体により磁界変化が発生すると、検出コイル102に鎖交する磁束の量が変化し、その超伝導閉ループのマイスナー効果(完全反磁性)により、磁束の量の変化の信号は超伝導量子干渉素子101に伝わり、更に帰還コイル106、帰還回路103を経由して、電圧として出力される。
【0147】
本実施の形態においても、超伝導量子干渉素子101、検出コイル106は、超伝導状態を維持するため、外側から内側へ順に真空容器108a、輻射シールド108b、ヘリウム容器108cとなるような多層構造を有する低温容器108内で、液体ヘリウム又は極低温に冷却されたヘリウムガス109に冷却されて低温に保持される。更に、液体ヘリウム又は極低温に冷却されたヘリウムガスを冷却するため、低温容器108にパルス管冷凍機50が組み込まれているのは、第4の実施の形態と同様である。
【0148】
本実施の形態において、パルス管冷凍機50内の蓄冷管の磁性蓄冷材が充填される部分は、銅又はアルミニウムを含む電気抵抗率が常温で50μΩcm以下の電気良導体を用いた磁気シールド部材で形成される。そのため、磁性蓄冷材の振動から発生する磁界変化は、磁気シールド部材によって、打ち消される。従って、磁性蓄冷材の振動から発生する磁界変化をシールドするために、新たな手段を設ける必要がない。補正磁界電源を動作させる必要もなく、超伝導磁気シールド部材の冷却のために冷凍機の能力が低下することもない。
【0149】
以上、本実施の形態に係る超伝導量子干渉素子磁束計によれば、補正磁界電源や超伝導磁気シールド部材を用いずに磁界変化をシールドすることができるため、SQUIDの測定に際して問題となる磁界変化を低減することができるとともに、補正磁界を印加する際の電源負荷や、超伝導磁気シールドを備える場合に問題となる熱損失による冷凍機の負荷を低減することができる。
【0150】
なお、本実施の形態では、第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機を用いた超伝導量子干渉素子磁束計の構成を説明したが、超伝導量子干渉素子磁束計に備えられる冷凍機としては、第1の実施の形態の第1の変形例及び第2の変形例に係るパルス管冷凍機用蓄冷型膨張機、第2の実施の形態に係るGM冷凍機用蓄冷型膨張機を備えた冷凍機を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る蓄冷型膨張機の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る蓄冷型膨張機の構成を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る蓄冷型膨張機の構成を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る蓄冷型膨張機の構成を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るパルス管冷凍機の構成を模式的に示す図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態の変形例に係るパルス管冷凍機の構成を模式的に示す図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成を模式的に示す図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る核磁気共鳴装置の構成を模式的に示す図である。
【図9】本発明の第6の実施の形態に係る超伝導量子干渉素子磁束計の構成を模式的に示す図である。
【図10】従来の蓄冷型膨張機の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0152】
1 第1蓄冷管
2、2a、2b 第2蓄冷管
3 第1パルス管
4 第2パルス管
5 1段冷却ステージ
6 2段冷却ステージ
7 フランジ
8 バルブ/オリフィス/バッファユニット
10、10a、10b、10c 蓄冷型膨張機
15 供給管
16 回収管
21 第1蓄冷材
22 第2蓄冷材
23 磁性蓄冷材
24 第1磁性蓄冷材
25 第2磁性蓄冷材
26 第2蓄冷管部材
27、27a、27b 磁気シールド部材
50、50a パルス管冷凍機
51 圧縮機
52 切換バルブ
53、54、55、56 オリフィス
57、58 バッファ
60 磁気共鳴イメージング装置
80 核磁気共鳴装置
100 超伝導量子干渉素子磁束計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ガスの膨張時の冷熱を蓄冷する蓄冷管と、
前記蓄冷管の低温端側と連通され、前記蓄冷管を通して前記冷媒ガスの圧縮、膨張を繰り返して冷熱を発生するシリンダと、
前記蓄冷管の内部に充填され、磁性体よりなり、前記冷媒ガスと接触して前記冷熱を蓄冷する磁性蓄冷材と、
前記磁性蓄冷材を囲繞して設けられた磁気シールド部材と、
を有する蓄冷型膨張機において、
前記磁気シールド部材は、常温での電気抵抗率が50μΩcm以下であることを特徴とする蓄冷型膨張機。
【請求項2】
前記磁気シールド部材は、銅又はアルミニウムであることを特徴とする請求項1記載の蓄冷型膨張機。
【請求項3】
前記蓄冷管の前記磁性蓄冷材が充填される部分は、前記磁気シールド部材であることを特徴とする請求項1又は2記載の蓄冷型膨張機。
【請求項4】
前記磁気シールド部材は、前記蓄冷管の前記磁性蓄冷材が充填される部分に、接して取り囲むように設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の蓄冷型膨張機。
【請求項5】
請求項1乃至4何れか一項に記載の蓄冷型膨張機を備え、前記シリンダはパルス管であることを特徴とするパルス管冷凍機。
【請求項6】
請求項5記載のパルス管冷凍機を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項5記載のパルス管冷凍機を備えたことを特徴とする核磁気共鳴装置。
【請求項8】
請求項5記載のパルス管冷凍機を備えたことを特徴とする超伝導量子干渉素子磁束計。
【請求項9】
磁性蓄冷材を備えた蓄冷型膨張機の磁気シールド方法であって、
常温での電気抵抗率が50μΩcm以下である電気良導体を用いて前記磁性蓄冷材を囲繞し、前記磁性蓄冷材が発生する磁界が変化することによって前記電気良導体にシールド電流が流れ、前記磁性蓄冷材が発生する前記磁界をシールドすることを特徴とする蓄冷型膨張機の磁気シールド方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−293909(P2009−293909A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151095(P2008−151095)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】