説明

蓄圧アシスト付過給エンジン

【課題】蓄圧タンク内に貯留されている凝縮水を容易に排除することのできる蓄圧アシスト付過給エンジンを提供する。
【解決手段】排気エネルギーを蓄圧する蓄圧タンク41と、一端が排気通路32に連通され、他端が蓄圧タンク41に連通された連通路42と、連通路42に配設された制御弁43とを含む蓄圧アシスト機構40を備える蓄圧アシスト付過給エンジンにおいて、蓄圧アシスト機構40により蓄圧タンク41に蓄圧された排気エネルギーを供給する際に、蓄圧タンク41に貯留された凝縮水を排出する排出手段を備える。この排出手段は、一端が蓄圧タンク41内の下方に開口されて、他端が連通路42内にガスの排出方向に沿って開口されて配設された排出パイプ44又は他端が連通路42に形成されたベンチュリー42Aの縮径部42Bに開口されて配設された排出パイプ45であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給エンジン、特に、ターボチャージャと、タービンの上流に蓄圧されたガスを供給する蓄圧アシスト機構とを備える蓄圧アシスト付過給エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ターボチャージャ等の過給器を備え出力の向上を図るようにしたエンジンは広く知られている。また、かかるターボチャージャにおいては、特に、その加速初期におけるいわゆるターボラグを改善する目的で、タービンの上流に蓄圧された排気ガスや空気などを供給する蓄圧アシスト機構を設けるようにした提案が、種々、なされている。
【0003】
この蓄圧アシスト機構では、エンジンのある所定の運転状態において排気ガスが有する圧力エネルギー(排気エネルギー)を回収して蓄圧タンクなどに蓄えるようにしている。
【0004】
ところで、排気ガス中には、燃料に含まれる硫黄分の燃焼により生成される亜硫酸(SO2)ガスに基づく、硫酸(H2SO4)、無水硫酸(SO3)等の酸性物質が含まれており、高温の排気ガスが冷却されると、これらの酸性物質を含む凝縮水が生じることがある。すなわち、高温・高圧の状態で蓄圧タンクに回収された排気ガスの温度が低下すると、そこで凝縮し、酸性物質を含む凝縮水が蓄圧タンクの下部に溜まることになる。この凝縮水の貯留は、蓄圧タンクの内容積を減少させて蓄圧効率を低下させたり、蓄圧タンク内壁面の腐食、最悪の場合には破損を引起すおそれがあることから、これらを防止することが求められている。
【0005】
かかる凝縮水を排除する技術として、特許文献1には、EGR通路を介して排気エネルギーを回収するシステムであって、EGR弁を開くことにより、EGR通路及び回収通路の凝縮水を排除する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−71034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示された技術では、EGR通路及び回収通路の凝縮水を排除することは可能であるが、蓄圧タンク内に貯留されている凝縮水を排除することに関しては考慮されておらず、実際には不可能である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、かかる従来の問題を解消し、蓄圧タンク内に貯留されている凝縮水を容易に排除することのできる蓄圧アシスト付過給エンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の一形態に係る蓄圧アシスト付過給エンジンは、排気エネルギーを蓄圧する蓄圧タンクと、一端が排気通路に連通され、他端が前記蓄圧タンクに連通された連通路と、該連通路に配設された制御弁とを含む蓄圧アシスト機構を備える蓄圧アシスト付過給エンジンにおいて、前記蓄圧アシスト機構により前記蓄圧タンクに蓄圧された排気エネルギーを供給する際に、前記蓄圧タンクに貯留された凝縮水を排出する排出手段を備えることを特徴とする。
【0010】
この一形態によれば、蓄圧アシスト機構により蓄圧タンクに蓄圧された排気エネルギーを供給する際に、排出手段によって蓄圧タンクに貯留された凝縮水が排出される。したがって、蓄圧タンク内に凝縮水が長期間に亘り貯留することがないので、蓄圧効率の低下や、蓄圧タンク内壁面の腐食を防止することができる。
【0011】
ここで、前記排出手段は、一端が前記蓄圧タンク内の下方に開口され、他端が前記連通路内にガスの排出方向に沿って開口されて配設された排出パイプであってもよい。
【0012】
また、前記排出手段は、一端が前記蓄圧タンク内の下方に開口され、他端が前記連通路に形成されたベンチュリーの縮径部に開口されて配設された排出パイプであってもよい。
【0013】
かかる排出パイプを配設する形態によれば、外部からの駆動エネルギーを必要とすることなく、蓄圧タンクに蓄圧された排気エネルギーの供給の際に自らのエネルギーにより蓄圧タンクに貯留された凝縮水が排出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明が適用された蓄圧アシスト付過給エンジンの概要を示すシステム図であり、10はエンジン本体である。
【0015】
このエンジン10の吸気系としては、上流端にエアクリーナ11が設けられた吸気通路12、この吸気通路12に連通されたサージタンクと一体の吸気マニフォルド13を備え、この吸気マニフォルド13のそれぞれの枝管が吸気ポートに連通されている。そして、吸気マニフォルド13の上流の吸気通路12に吸気絞り弁14が設けられ、該吸気絞り弁14の上流の吸気通路12には、インタークーラ15及びターボチャージャ20のコンプレッサ20Cが配設されている。なお、コンプレッサ20C下流の吸気通路12を、以下、吸気管とも称す。さらに、各気筒の吸気ポートの直上流には、不図示の燃料噴射弁が配設され、また、シリンダヘッドの気筒毎に不図示の点火プラグが配設されている。
【0016】
一方、エンジン10の排気系としては、排気ポートにそれぞれの枝管が連通する排気マニフォルド31により排気が合流され、排気マニフォルド31に排気通路32が接続されている。そして、排気通路32にはターボチャージャ20のタービン20Tが配設され、その下流に、三元触媒などを内蔵する触媒コンバータ33及び排気絞り弁34が配設されている。
【0017】
ここで、排気絞り弁34は、本実施の形態では、タービン20Tの下流側の触媒コンバータ33の下流側に設けられているが、排気通路32の他の箇所に設けられてもよい。なお、本実施の形態では、排気絞り弁34はバタフライ弁であり、例えば、電動モータである不図示のアクチュエータにより駆動される。排気絞り弁34は、その閉弁時には排気通路32を流れる排気ガスすなわち燃焼ガスや空気である流体を効果的にせき止め、排気絞り弁34よりも下流側へのそのような流体の流れを概ね遮断する遮断弁として機能する。なお、排気絞り弁34は、閉弁時に、排気通路の流路断面積を50%程度減少させるような構成を有する弁であってもよく、あるいは、閉弁時に、排気通路32を完全に閉塞するような構成を有する弁であってもよい。
【0018】
ターボチャージャ20は、タービン20Tに導入される排気ガスのエネルギーによりタービン20Tが回転駆動され、延いてはこれに回転軸で連結されているコンプレッサ20Cが回転駆動され、空気を吸入、加圧して過給するものである。
【0019】
さらに、本実施の形態における蓄圧アシスト機構40は、蓄圧タンク41と、一端が排気通路32に連通され他端が蓄圧タンク41の上方空間に連通された連通路42と、連通路42に配設されたアシスト制御弁43とを含んで構成されている。このアシスト制御弁43は、本実施の形態では、ポペット弁であり、例えば、電動モータからなる不図示のアクチュエータにより不図示の電子制御ユニット(ECU)の指令により駆動される。
【0020】
ここで、排気通路32の圧力(排気エネルギー)は、アシスト制御弁43を開くことにより、連通路42を介してアシストガス(排気ガス又は空気)の移動を伴いつつ蓄圧タンク41内に回収される。他方、蓄圧タンク41内に蓄えられた圧力は、アシスト制御弁43を閉じられた状態から開くことにより、連通路42を介して排気通路32にアシストガスが放出されて利用に供される。すなわち、本実施の形態では、蓄圧タンク41内への圧力回収及びそこからの圧力放出が、排気通路32への開口が一つであり一つのアシスト制御弁43が設けられた一つの連通路42を用いて行われる。
【0021】
次に、上述した蓄圧アシスト機構40の第1の実施形態につき、図2を参照して説明する。この第1の実施形態に係る蓄圧アシスト機構40では、蓄圧タンク41に蓄圧された排気エネルギーを連通路42に供給する際に、蓄圧タンク41に貯留された凝縮水を排出する排出手段として、一端が蓄圧タンク41内の下方に開口され、他端が連通路42内にガスの排出方向(矢印Dで示す)に沿って開口された排出パイプ44が蓄圧タンク41内に配設されている。より詳しくは、蓄圧タンク41の頂壁41Aに連結されて蓄圧タンク41の上方空間に連通された所定の断面積Aを有する連通路42に対し、この断面積Aよりも小さい断面積Bを有する排出パイプ44が用いられている。そして、この排出パイプ44の一端は蓄圧タンク41内でその底壁41B近傍の下方に開口され、その他端は折り曲げられて連通路42内のガスの排出方向Dに沿って開口されている。
【0022】
また、上述した蓄圧アシスト機構40の第2の実施形態を図3に示す。この第2の実施形態に係る蓄圧アシスト機構40では、蓄圧タンク41に貯留された凝縮水を排出する排出手段の構成が変更されている。すなわち、この第2の実施形態における排出手段では、一端が蓄圧タンク41内の下方に開口され、他端が連通路42に形成されたベンチュリー42Aの縮径部42Bに開口された排出パイプ45が蓄圧タンク41の外側に配設されている。より詳しくは、蓄圧タンク41の頂壁41Aに連結されて蓄圧タンク41の上方空間に連通された所定の断面積Aを有する連通路42にベンチュリー42Aが形成され、この断面積Aよりも小さい断面積Bを有する排出パイプ45の一端は蓄圧タンク41の側壁41Cにおいて底壁41B近傍の下方に開口され、その他端はベンチュリー42Aの縮径部42Bに開口されている。
【0023】
ところで、エンジン10には、エンジン10の回転数を求めるためのクランクポジションセンサ、要求負荷を検出するためのアクセルペダルの踏み込み量に比例した信号を出力するアクセル開度センサが設けられている。さらに、エンジン10の冷却水温を検出する水温センサや過給圧を制御するのに用いられる吸気圧センサ、吸気絞り弁14の開度を検出するスロットル開度センサ、蓄圧タンク41内の圧力を検出する蓄圧タンク圧力センサ、排気通路32の排気ガスすなわち燃焼ガスや空気である流体の背圧を検出するための背圧センサ、及び吸入空気量を検出するためのエアフローメーターなど(いずれも不図示)が設けられ、上述のセンサと共に、これらの各種センサの出力がCPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータや、A/D変換器、入力インタフェース、出力インタフェース等で構成される不図示の電子制御ユニット(ECU)に送られるようになっている。
【0024】
ECUは、各センサから送られてきた出力値に応じて、燃料噴射量、点火時期、過給圧等を制御する。なお、燃料噴射量、点火時期、過給圧等の制御のために使用される制御値は、例えば縦軸にエンジンの負荷をとり、横軸にエンジン回転数をとったエンジン10の運転状態を表すマップに、エンジン10の要求特性等に合わせて実験的に求めた最適値が制御値として設定されており、これらのマップはECUのテーブルに保存されている。
【0025】
ここで、上述の構成になる蓄圧アシスト付過給エンジン10では、所定の運転状態(例えば、車両の減速ないしは航続走行のときのフュエルカット状態)で蓄圧タンク41内へ排気エネルギーを蓄圧するための圧力回収制御が実行される。すなわち、例えば、吸気絞り弁14が開弁制御されて排気絞り弁34が閉弁制御されると共に、アシスト制御弁43が開弁制御されて、排気通路32の高められた圧力が、連通路42を介した排気ガスの移動を伴いつつ、蓄圧タンク41内に回収される。一方、所定の運転状態(例えば、車両の加速要求が生じたとき)に蓄圧アシスト制御が実行される。すなわち、アシスト制御弁43が開弁制御されて、蓄圧タンク41内に蓄圧されていた排気エネルギーが連通路42を介して排気通路32に放出されて、タービン20Tの速やかな回転上昇などの利用に供される。
【0026】
そこで、上述の第1の実施形態では、蓄圧タンク41に蓄圧された排気エネルギーが連通路42を介して排気通路32に放出される際に、ガスは高速で連通路42を流出するので、排出パイプ44の他端が開口されている部位の圧力は、一端が開口されている蓄圧タンク41内の下方部位の圧力よりもエジェクター作用により低くなり、蓄圧タンク41に貯留された凝縮水が吸い出されて排出される。
【0027】
また、上述の第2の実施形態でも同様に、蓄圧タンク41に蓄圧された排気エネルギーが連通路42を介して排気通路32に放出される際に、ガスはベンチュリー42Aの縮径部42Bでさらに高速で連通路42を流出するので、排出パイプ45の他端が開口されている縮径部42B部位の圧力は、一端が開口されている蓄圧タンク41内の下方部位の圧力よりもさらに低くなり、蓄圧タンク41に貯留された凝縮水が効率よく吸い出されて排出される。
【0028】
このように、上述の第1及び第2の実施形態によれば、共に、外部からの駆動エネルギーを必要とすることなく、蓄圧タンク41に蓄圧された排気エネルギーの放出の際に自らのエネルギーにより蓄圧タンク41に貯留された凝縮水を排出することができ、他の駆動装置が不要であるから、コストの上昇を避けることができる。
【0029】
また、上記実施形態では、フュエルカット実行中に蓄圧タンクに回収された排気ガスすなわち空気をターボチャージャのタービンの上流に供給するようにしたが、蓄圧タンクに蓄えられるのは、このようなガスに限定されない。例えば、フュエルカット実行中以外のとき、例えば、排気ブレーキ時に排気通路から排気ガスの排気エネルギーが蓄圧タンクに回収されて蓄えられ、それがターボチャージャに供給されてもよい。この場合が、本発明により得られる効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明が適用された蓄圧アシスト付過給エンジンの概要を示すシステム図である。
【図2】本発明に係る蓄圧アシスト機構における排出手段の第1の実施形態を示す断面模式図である。
【図3】本発明に係る蓄圧アシスト機構における排出手段の第2の実施形態を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0031】
10 エンジン
12 吸気通路
14 吸気絞り弁
20 ターボチャージャ
20C コンプレッサ
20T タービン
32 排気通路
34 排気絞り弁
40 蓄圧アシスト機構
41 蓄圧タンク
42 連通路
42A ベンチュリー
42B 縮径部
43 アシスト制御弁
44、45 排出パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気エネルギーを蓄圧する蓄圧タンクと、一端が排気通路に連通され、他端が前記蓄圧タンクに連通された連通路と、該連通路に配設された制御弁とを含む蓄圧アシスト機構を備える蓄圧アシスト付過給エンジンにおいて、
前記蓄圧アシスト機構により前記蓄圧タンクに蓄圧された排気エネルギーを供給する際に、前記蓄圧タンクに貯留された凝縮水を排出する排出手段を備えることを特徴とする蓄圧アシスト付過給エンジン。
【請求項2】
前記排出手段は、一端が前記蓄圧タンク内の下方に開口され、他端が前記連通路内にガスの排出方向に沿って開口されて配設された排出パイプであることを特徴とする請求項1に記載の蓄圧アシスト付過給エンジン。
【請求項3】
前記排出手段は、一端が前記蓄圧タンク内の下方に開口され、他端が前記連通路に形成されたベンチュリーの縮径部に開口されて配設された排出パイプであることを特徴とする請求項1に記載の蓄圧アシスト付過給エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−133270(P2010−133270A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307574(P2008−307574)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】