説明

蓄熱体、電子機器および電子機器の製造方法

【課題】従来の回路装置の製造工程において配線基板と一体化したケースに蓄熱材を流し込むには、配線基板およびケースを冶具で適切に支持した上で蓄熱材を流入しなければならず、製造工程が複雑であった。
【解決手段】蓄熱体は、電子回路の発熱により相変化し得る蓄熱材と、蓄熱材を内包する内包フィルムとを備える。電子機器は、電子回路と、電子回路の発熱により相変化し得る蓄熱材および蓄熱材を内包する内包フィルムを備える蓄熱体とを備え、蓄熱体は電子回路に貼り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱体、電子機器および電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回路素子の放熱対策として蓄熱材を用いる技術が知られている。例えば、配線基板の一方の面上に回路素子を設けるとともに、他方の面上にケースを接着してケースに蓄熱材を封入した回路装置が提案されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2007−234731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の回路装置の製造工程において配線基板と一体化したケースに蓄熱材を流し込むには、配線基板およびケースを冶具で適切に支持した上で蓄熱材を流入しなければならず、製造工程が複雑であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様における蓄熱体は、電子回路の発熱により相変化し得る蓄熱材と、蓄熱材を内包する内包フィルムとを備える。
【0005】
本発明の第2の態様における電子機器は、電子回路と、電子回路の発熱により相変化し得る蓄熱材および蓄熱材を内包する内包フィルムを備える蓄熱体とを備え、蓄熱体は電子回路に貼り付けられている。
【0006】
本発明の第3の態様における電子機器の製造方法は、電子回路の発熱により相変化し得る蓄熱材および蓄熱材を内包する内包フィルムを備える蓄熱体を電子回路に貼り付けるステップと、蓄熱体を貼り付けた電子回路を電子機器の筐体に組み込むステップとを含む。
【0007】
本発明の第4の態様における電子機器の製造方法は、電子回路の発熱により相変化し得る蓄熱材および蓄熱材を内包する内包フィルムを備える蓄熱体を電子機器の筐体に貼り付けるステップと、電子回路と筐体に貼り付けられた蓄熱体とが接触するように、電子回路を筐体に組み込むステップとを含む。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態に係る蓄熱体を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る電子機器の概要を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る電子機器における回路ユニットの取付工程の第1の例を説明する図である。
【図4】第1実施形態に係る電子機器における回路ユニットの取付工程の第2の例を説明する図である。
【図5】第1実施形態に係る蓄熱体の他の形状の例を示す図である。
【図6】第2実施形態に係る蓄熱体を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る電子機器の概要を示す図である。
【図8】第2実施形態に係る蓄熱体の配置を説明する図である。
【図9】第2実施形態に係る導電部材の立体構造の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る蓄熱体を示す図である。図1(a)は蓄熱体の外観を示す図であり、図1(b)は図1(a)のP面における蓄熱体の断面図である。図1に示すとおり、蓄熱体10は、内包フィルム20と蓄熱材30とを有している。蓄熱体10はシート状に形成されている。
【0012】
内包フィルム20は、フィルムで形成された容器であり、後述する蓄熱材30を内包するための内部空間を有する。例えば、内包フィルム20は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン等のプラスチックで形成された袋である。
【0013】
内包フィルム20は、蓄熱材30を内部空間に導入するための開口部21を有する。蓄熱材30の導入後に、開口部21は接着材、クリップ等により接着される。
【0014】
蓄熱材30は、蓄熱体10の貼り付け対象である電子回路の発熱により相変化し得る素材である。例えば、蓄熱材30は、電子回路の動作保証温度の範囲内で相変化し得る素材である。具体的には、電子回路の動作保証温度の範囲が−10℃から60℃である場合に、相変化温度である融点が55℃の酢酸ナトリウム、融点が40〜50℃のポリエチレングリコール、融点が50℃近傍に調整されたn−パラフィンなどが蓄熱材30として用いられる。電子回路は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やメモリ等のチップ、パワートランジスタである。
【0015】
蓄熱材30は、相変化し終えるまでの間、蓄熱体10が貼り付けられた電子回路から熱を吸収する。そのため、電子回路に貼り付けられた蓄熱体10は、電子回路の温度を相変化の温度以下に保つ。例えば、酢酸ナトリウムを蓄熱材30として用いた場合、酢酸ナトリウムが固相から液相に変化し終えるまでの間、蓄熱体10は電子回路の温度を酢酸ナトリウムの融点55℃以下に保つ。
【0016】
図2は、第1実施形態に係る電子機器の概要を示す図である。電子機器100は、例えばデジタルカメラ、携帯電話である。図2に示すとおり、電子機器100は回路ユニット40を備える。回路ユニット40は、基板50と、基板50に搭載されたチップ51、52、53、54、55と、チップ51、52、53に貼り付けられ且つ基板50に取り付けられた上述の蓄熱体10を有する。回路ユニット40は、電子機器100の筐体60に取り付けられている。筐体60には、内部の温度上昇を抑えるためのファン等を用いた周知の放熱機構が設けられている。なお、電子機器100のディスプレイ、操作ボタン等の他の構成は省略する。
【0017】
チップ51、52、53は、ASIC、メモリ等の高速動作を実行するチップである。高速動作時にこれらチップ51、52、53の発熱量が急激に大きくなるので、筐体60に設けられた周知の放熱機構では高速動作時のチップ51、52、53の局所的な温度上昇を防げない。そこで、チップ51、52、53に蓄熱体10を貼り付けて、チップ51、52、53の高速動作時の温度を動作保証温度の範囲内に抑制できる。
【0018】
具体的には、チップ51、52、53の動作保証温度の上限値が60℃である場合に、上述した酢酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、n−パラフィンなどが蓄熱材30として用いられる。例えば、酢酸ナトリウムを蓄熱材30として用いた場合、酢酸ナトリウムが固相から液相へ相変化し終えるまでの間、蓄熱体10は、チップ51、52、53を酢酸ナトリウムの融点55℃より低い温度に保つことができる。
【0019】
チップ51、52、53の動作保証温度の範囲内で且つ上限値近傍の温度で相変化する素材を蓄熱材30として用いるとよい。例えば、上限値から10℃低い温度と上限値との間の温度範囲で相変化する素材を蓄熱材30として用いる。また、動作保証温度の範囲のうち上限から5%の範囲で相変化する素材を蓄熱材30として用いるようにしてもよい。チップ51、52、53の動作保証温度の範囲内で且つ上限値近傍の温度で相変化する素材を蓄熱材30として備える蓄熱体10により、温度チップ51、52、53の温度を動作保証温度の上限近傍に保持できる。そのため、チップ51、52、53と筐体60の外部との温度差が大きくなり、チップと外部との温度差を用いてチップの放熱を実行する筐体60内の放熱機構の効率を高められる。
【0020】
チップ54、55は、高速動作を実行しないチップであり、筐体60に設けられた放熱機構により動作保証温度の範囲内で動作する。そのため、チップ54、55には、蓄熱体10を設ける必要がない。この場合に、内包フィルム20の形状を調整して、放熱が必要なチップの配置にあわせた蓄熱体10を容易に製造できる。
【0021】
図3は、第1実施形態に係る電子機器における回路ユニットの取付工程の第1の例を説明する図である。回路ユニット40の取付工程は、電子機器100の製造工程の一部である。なお、図3において、蓄熱体10の貼り付け対象となる電子回路の代表として、チップ51を用いる。まず、図3(a)に示すとおり、チップ51が搭載された基板50を用意する。次に、図3(b)に示すとおり、蓄熱体10をチップ51に貼り付けるとともに、蓄熱体10の端を基板50に取り付ける。蓄熱体10のチップ51への貼り付けには、熱伝導性の高い接着剤等が用いられる。また、蓄熱体10の基板50への取り付けには、接着剤、クリップ等が用いられる。なお、図3(b)に示す工程の前に、内包フィルム20の開口部21から蓄熱材30を導入して、その後に開口部21を接着するという簡単な工程で蓄熱体10を製造する。
【0022】
そして、図3(c)に示すとおり、蓄熱体10を取り付けた基板50を電子機器100の筐体60に組み込み、回路ユニット40の電子機器100への取り付けが完了する。したがって、上述のように簡単に製造された蓄熱体10を貼り付けるという容易な工程により、チップの高速動作時の熱対策を施した電子機器を製造できる。
【0023】
さらに、図3(d)に示すとおり、蓄熱体10の熱を筐体60に排出するための排熱部材70を蓄熱体10および筐体60に取り付けてもよい。排熱部材70は、ヒートパイプ等の熱伝導性の高い部材である。排熱部材70により蓄熱体10の熱を筐体60に排出して、蓄熱材30が相変化し終えるまでの時間すなわち蓄熱可能時間を長くすることができる。なお、排熱部材70は、蓄熱体10に予め設けられていてもよい。
【0024】
図4は、第1実施形態に係る電子機器における回路ユニットの取付工程の第2の例を説明する図である。なお、図4においても、図3と同様に、蓄熱体10の貼り付け対象となる電子回路の代表として、チップ51を用いる。まず、図4(a)に示すとおり、電子機器100の筐体60を用意する。次に、図4(b)に示すとおり、蓄熱体10の一面を筐体60に貼り付ける。蓄熱体10の筐体60への貼り付けには、熱伝導性の高い接着剤等が用いられる。なお、図4(b)に示す工程の前に、内包フィルム20の開口部21から蓄熱材30を導入して、その後に開口部21を接着するという簡単な工程で蓄熱体10を製造する。
【0025】
図4(c)に示すとおり、蓄熱体10における筐体60との貼り付け面とは反対側の面にチップ51が接触するように、チップ51を搭載した基板50を筐体60に組み込み、回路ユニット40の電子機器100への取り付けが完了する。したがって、上述のように簡単に製造された蓄熱体10を貼り付けるという容易な工程により、チップの高速動作時の熱対策を施した電子機器を製造できる。
【0026】
さらに、第2の例によれば、蓄熱体10の熱を蓄熱体10の一面から筐体60に排出して、蓄熱材30が相変化し終えるまでの時間すなわち蓄熱可能時間を長くすることができる。なお、チップ51は熱伝導性の高い接着剤等により蓄熱体10と接着してもよい。
【0027】
上述の第1実施形態において、蓄熱体10をシート形状としたが、これに限らない。例えば、図5に示すとおり、チップの形状に沿った凹形状の取付部11を蓄熱体10に予め形成する。凹形状の取付部11により、蓄熱体10のチップへの取り付けが容易になるとともに蓄熱体10とチップとの接触面積を大きくすることができる。
【0028】
図6は、第2実施形態に係る蓄熱体を示す図である。図6(a)は蓄熱体の外観を示す図であり、図6(b)は図6(a)のQ面における蓄熱体の断面図である。図6に示すとおり、蓄熱体15は、内包フィルム20と蓄熱材30と導電部材80とを有している。蓄熱体15はシート状に形成されている。
【0029】
内包フィルム20は、蓄熱材30とともに導電部材80を内包している。導電部材80は、導電材で形成された平板である。具体的には、導電部材80は、銅、鉄、カーボン素材等で形成された平板である。なお、内包フィルム20および蓄熱材30は、上述の第1実施形態と同様である。内包フィルム20の開口部21から蓄熱材30を導入するとともに導電部材80を挿入し、その後に開口部21を接着するという簡単な工程により、蓄熱体15は製造される。
【0030】
図7は、第2実施形態に係る電子機器の概要を示す図である。電子機器110は、第1実施形態の電子機器100と同様に、例えばデジタルカメラ、携帯電話である。図7に示すとおり、電子機器110は回路ユニット90を備える。回路ユニット90は、基板50と、基板50に搭載されたチップ51、52、53、54、55と、チップ51、52、53に貼り付けられ且つ基板50に取り付けられた上述の蓄熱体15を有する。回路ユニット90は、電子機器110の筐体60に取り付けられている。筐体60には、内部の温度上昇を抑えるためのファン等を用いた周知の放熱機構が設けられている。なお、基板50、チップ51、52、53、54、55および筐体60は、上述の第1実施形態と同様である。また、電子機器110のディスプレイ、操作ボタン等の他の構成は省略する。
【0031】
電子機器110における回路ユニット90は、図3で示される回路ユニット40の取付工程の第1の例、若しくは図4で示される回路ユニット40の取付工程と同様の工程で、電子機器110に取り付けられる。
【0032】
チップ51、52、53に蓄熱体15を貼り付けることで、第1実施形態と同様に、チップ51、52、53の高速動作時の温度を動作保証温度の範囲内に抑制できる。これに加え、蓄熱体15は、導電部材80を介して、チップ51、52、53が発生する熱を蓄熱材30に拡散して、蓄熱効率を高められる。さらに、蓄熱体15は、チップ51、52、53が高速動作時に発生する電磁波を導電部材80により遮蔽できる。
【0033】
導電部材80は、チップ51、52、53の接触面よりも大きな面を有している。チップ51、52、53の接触面よりも大きな面を有する導電部材80により、蓄熱体15は、チップ51、52、53から離れた蓄熱材30にチップ51、52、53の熱を拡散できる。また、蓄熱体15は、チップ51、52、53が高速動作時に発生する電磁波の漏れを少なくできる。
【0034】
導電部材80の素材の特性により、上述の導電部材80の熱拡散の効果および電磁波遮蔽の効果を調整できる。具体的には、銅、アルミ、カーボン素材等の熱伝導率が大きい素材を用いると、熱拡散の効果を重視した導電部材80を形成できる。また、鉄、ニッケル等の強磁性体を用いると、電磁波遮蔽の効果を重視した導電部材80を形成できる。
【0035】
ここで、蓄熱体15を用いたデジタルカメラの実施例を説明する。本実施例において、蓄熱体15は、縦40mm、横50mm、厚さ3mmのシートである。導電部材80は、縦40mm、横50mm、厚さ0.5mmの銅板である。内包フィルムの厚さは、蓄熱体15および導電部材80の厚さと比べて無視できるほど小さい。
【0036】
酢酸ナトリウムである蓄熱材30の重量は、40mm×50mm×(3−0.5)mm×1.45×10−3g/mm=7.25gである。したがって、蓄熱材30の潜熱は、7.25g×150J/g=1087.5Jである。
【0037】
本実施例において、蓄熱材30は、デジタルカメラにおいて画像処理を実行するASIC、メモリ等の複数のチップに貼り付けられている。これら画像処理用チップの動作保証温度の上限値は60℃である。画像処理用チップは、連写処理、動画撮影処理の場合に高速動作を実行する。高速動作時における画像処理用チップの総発熱量は3W=3J/秒である。そして、画像処理用チップの総発熱量のうち、80%は基板に伝熱し、筐体60に設けられている放熱機構を介して排出される。そのため、残りの20%の発熱量0.6J/秒が、画像処理用チップの局所的な温度上昇の要因となる。
【0038】
画像処理用チップが高速動作を継続し続けた場合に、1087.5J÷0.6J/秒=1812.5秒=30.2分の間、蓄熱体15は画像処理用チップの温度を55℃に保つことができる。この計算された時間30.2分は、チップ温度が55℃に達した状態から温度上昇を抑制できる時間であるので、この計算された時間30.2分には、チップ温度が55℃に達するまでの時間は含まれない。したがって、本実施例において、画像処理用チップが高速動作を継続しても、蓄熱材30は、少なくとも30分間、画像処理用チップを動作保証温度の範囲内である55℃に保つことができる。
【0039】
また、本実施例における電磁波の放射レベルは、蓄熱体15を用いない場合に比べ、約10〜20dB小さくなった。
【0040】
図8は、第2実施形態に係る蓄熱体の配置を説明する図である。なお、図8において、貼り付け対象の電子回路の代表としてチップ51を用いて説明する。図8(a)に示すとおり、蓄熱体15におけるチップ51への貼り付け面が導電部材80側の面となるように、蓄熱体15をチップ51に貼り付けられる。この配置により、導電部材80を介してチップ51の熱を蓄熱体15の端部まで拡散し易くなり、蓄熱体15の蓄熱効率を高められる。
【0041】
また、図8(b)に示すとおり、蓄熱体15におけるチップ51への貼り付け面が蓄熱材30側の面となるように、蓄熱体15をチップ51に貼り付けられる。この配置により、蓄熱材30が変形して蓄熱体15とチップ51とが密着する。したがって、蓄熱体15とチップ51との間の伝熱効率を高められる。
【0042】
第2実施形態において、導電部材80は平板であるが、これに限らない。導電部材80はメッシュ板であってもよい。メッシュ板を用いることで、厚さおよび面積が同一の平板を用いる場合に比べ、蓄熱体15を軽くすることができる。また、遮蔽したい周波数にあわせたメッシュ構造を有するメッシュ板を用いるようにしてもよい。このメッシュ構造により、上述の電磁波遮蔽の効果を高められる。
【0043】
また、導電部材80は粉末状であってもよい。粉末状の導電部材80により、上述の熱拡散の効果を高められる。さらに、導電部材80は、シート形状の蓄熱体15の厚さ方向にも特定の構造を有する立体構造であってもよい。この立体構造により、蓄熱体15はチップの熱をシート状の厚さ方向に効率的に拡散できる。
【0044】
図9は、第2実施形態に係る導電部材の立体構造の例を示す図である。図9(a)は、導電部材の立体構造の第1の例である。導電部材81は、平板部82と、平板部82から突出した複数の凸部83とを有する。なお、平板部82および凸部83は、一体で形成されても別体で形成されてもよい。
【0045】
図9(b)は、導電部材の立体構造の第2の例である。導電部材84は、上平板部85と、下平板部86と、上平板部85および下平板部86を結合する複数の中間部87とを有する。なお、上平板部85、下平板部86および中間部87は、一体で形成されても別体で形成されてもよい。
【0046】
図9(c)は、導電部材の立体構造の第3の例である。導電部材88は、各面がメッシュ板で形成された直方体である。導電部材88は、遮蔽したい周波数にあわせたメッシュ構造を有するメッシュ板で形成された直方体であってもよい。このメッシュ構造により、上述の電磁波遮蔽の効果を高められる。なお、導電部材88は、6枚のメッシュ板の接合により形成されても、1枚のメッシュ板の折り曲げおよび接合により形成されてもよい。
【0047】
上述の第1実施形態において、内包フィルム20を導電材で形成するようにしてもよい。導電材で形成された内包フィルム20が第2実施形態の導電部材80と同様の機能を果たす。
【0048】
上述の実施形態において、内包フィルム20は可撓性を有してもよい。内包フィルム20の可撓性により、内包フィルム20は、相変化による蓄熱材30の体積の増減にあわせて変形できる。また、蓄熱体をチップに貼り付けた場合に、蓄熱体の接触面がチップの表面に沿って変形して、蓄熱体とチップとの接触面積を大きくすることができる。
【0049】
上述の実施形態において、蓄熱材30は粉末状であってもよい。粉末状の蓄熱材30により、蓄熱体をチップに貼り付けた場合に、蓄熱体がチップの表面に沿って変形して、蓄熱体とチップとの接触面積を大きくすることができる。また、蓄熱材30はゲル状であってもよい。ゲル状の蓄熱材30は、上述の粉末状の蓄熱材30と同様の機能を果たす。
【0050】
また、上述の実施形態ではASIC、メモリ等のチップに蓄熱体を貼り付けたが、蓄熱体を貼り付ける対象はこれに限らない。例えば、デジタルカメラにおいて、撮像素子を含む撮像ユニットの裏面および側面のいずれか一方に上述の蓄熱体を貼り付ける。
【0051】
以上、本発明を上述の実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上述の実施形態に記載の範囲には限定されない。上述の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0052】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0053】
10 蓄熱体、11 取付部、15 蓄熱体、20 内包フィルム、21 開口部、30 蓄熱材、40 回路ユニット、50 基板、51、52、53、54、55 チップ、60 筐体、70 排熱部材、80、81 導電部材、82 平板部、83 凸部、84 導電部材、85 上平板部、86 下平板部、87 中間部、88 導電部材、90 回路ユニット、100、110 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路の発熱により相変化し得る蓄熱材と、
前記蓄熱材を内包する内包フィルムと
を備える蓄熱体。
【請求項2】
導電部材を備え、
前記内包フィルムは、前記蓄熱材とともに前記導電部材を内包する請求項1に記載の蓄熱体。
【請求項3】
前記導電部材は平板である請求項2に記載の蓄熱体。
【請求項4】
前記導電部材はメッシュ板である請求項2に記載の蓄熱体。
【請求項5】
前記導電部材は立体構造を有する請求項2に記載の蓄熱体。
【請求項6】
前記導電部材は粉末状である請求項2に記載の蓄熱体。
【請求項7】
前記電子回路への貼り付け面を前記導電部材側とする請求項2から6のいずれか1項に記載の蓄熱体。
【請求項8】
前記電子回路への貼り付け面を前記蓄熱材側とする請求項2から6のいずれか1項に記載の蓄熱体。
【請求項9】
シート状に形成された請求項1から8のいずれか1項に記載の蓄熱体。
【請求項10】
前記電子回路の形状に沿った取付部が形成された請求項1から9のいずれか1項に記載の蓄熱体。
【請求項11】
前記内包フィルムは可撓性を有する請求項1から10のいずれか1項に記載の蓄熱体。
【請求項12】
前記内包フィルムは導電材で形成された請求項1から11のいずれか1項に記載の蓄熱体。
【請求項13】
前記電子回路以外の物体に接触して前記蓄熱体の熱を排出し得る排熱部材を備える請求項1から12のいずれか1項に記載の蓄熱体。
【請求項14】
前記蓄熱材は粉末状である請求項1から13のいずれか1項に記載の蓄熱体。
【請求項15】
電子回路と、
前記電子回路の発熱により相変化し得る蓄熱材および前記蓄熱材を内包する内包フィルムを備える蓄熱体と
を備え、
前記蓄熱体は前記電子回路に貼り付けられている電子機器。
【請求項16】
前記蓄熱体は導電部材を備え、
前記内包フィルムは、前記蓄熱材とともに前記導電部材を内包する請求項15に記載の電子機器。
【請求項17】
前記導電部材は、前記電子回路の接触面よりも大きな面を有する請求項16に記載の電子機器。
【請求項18】
前記蓄熱材は、前記電子回路の動作保証温度の範囲内で相変化し得る請求項15から17のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項19】
前記電子回路は複数のチップであり、
前記蓄熱体は、前記複数のチップを覆った状態で貼り付けられた請求項15から18のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項20】
前記電子回路は、撮像素子を有する撮像ユニットであり、
前記蓄熱体は、前記撮像ユニットの側面および裏面の少なくとも一方に貼り付けられた請求項15から18のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項21】
前記電子回路および前記蓄熱体を搭載する筐体と、
前記筐体および前記蓄熱体に取り付けられた排熱部材と
を備える請求項15から20のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項22】
前記電子回路および前記蓄熱体を搭載する筐体を備え、
前記蓄熱体は、前記電子回路との貼り付け面と反対側の面で前記筐体と直接接触する請求項15から20のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項23】
電子回路の発熱により相変化し得る蓄熱材および前記蓄熱材を内包する内包フィルムを備える蓄熱体を前記電子回路に貼り付けるステップと、
前記蓄熱体を貼り付けた前記電子回路を電子機器の筐体に組み込むステップと
を含む電子機器の製造方法。
【請求項24】
電子回路の発熱により相変化し得る蓄熱材および前記蓄熱材を内包する内包フィルムを備える蓄熱体を電子機器の筐体に貼り付けるステップと、
前記電子回路と前記筐体に貼り付けられた前記蓄熱体とが接触するように、前記電子回路を前記筐体に組み込むステップと
を含む電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−84710(P2013−84710A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222727(P2011−222727)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】