説明

蓄電モジュールおよびその製造方法

【課題】接続導体を固定する一次成形部と、この一次成形部を覆う二次成形部とが熱衝撃により剥離され難いようにする。
【解決手段】
電圧検出導体805は、ケース側板130、131にインサートモールドされる。電圧検出導体805の検出線806は、一次成形により形成される樹脂部807により固定される。樹脂部807は複数の接合部820を有する。各接合部820は、固定部821と溶融可能部822とを有する。一次成形部である樹脂部807を二次成形する際、射出される二次成形材料の熱と射出圧力により、溶融可能部822のエッジ部822aが溶融し、二次成形材料と融合する。これにより、一次成形材料と二次成形材料は強固に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを収納する電池容器を備える蓄電モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池等の電池セルを、保護回路等の電装品を樹脂モールドで一体に形成した電池容器に収納した蓄電装置が知られている。
電装品を樹脂モールドによって一体化する構造として、電線用モールドハウジングが知られている。この一例として、シールド電線の外周にウレタン等の柔軟性を備えた一次成形樹脂部で覆い、この一次成形樹脂部の外周をPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の硬質の二次成形樹脂部で覆う構造がある
(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−186129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構造は、蓄電装置に関するものではない。蓄電装置では、一次成形樹脂部と二次成形樹脂部とを硬質の樹脂で形成する必要がある。一次成形樹脂部と二次成形樹脂部とが、成形樹脂部の境界面で接触しているだけの構造の場合には、接合強度が弱く、温度や衝撃の厳しい環境下では接合面から剥がれてしまう可能性が大きい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の蓄電モジュールは、複数の蓄電セルが収納されたケース本体と、ケース本体に収納された蓄電セルの電極端子に接続され、蓄電セルの電圧を検出するための接続導体が一体に形成されたケース側板とを備え、ケース側板は、接続導体の少なくとも一部が一体に形成された一次成形部と、一次成形部を覆って形成された二次成形部とを有し、一次成形部は、接続導体の外面を覆う本体部と、本体部から突出状に形成され、二次成形部の外面に露出される露出面を有する固定部と、本体部と固定部の露出面との間に設けられた溶融可能部とを有することを特徴とする。
【0006】
また、本発明の蓄電モジュールの製造方法は、複数の蓄電セルが収納されたケース本体に、蓄電セルの電極端子に接続され、蓄電セルの電圧を検出するための接続導体が一体に形成されたケース側板が取り付けられた蓄電モジュールの製造方法であって、ケース側板を形成する工程は、接続導体を覆う本体部と、本体部から突出状の固定部と、固定部における本体部側に設けられた溶融可能部を有する一次成形体を成形する工程と、一次成形体の固定部を固定した状態で、一次成形体の外面を覆う二次成形体を成形する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、二次成形材料により一次成形部の本体側に形成された溶融可能部が溶融するので、一次成形部と二次成形部の接合強度を向上することができる。また、一次成形部の固定部を固定した状態で二次成形部を形成するので、二次成形部の厚さ方向における接続導体の位置を確実に所要の位置に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の蓄電モジュールを備えた一実施の形態としてのハイブリッド自動車駆動システムのブロック回路図。
【図2】本発明の一実施の形態としての蓄電モジュールを備えた蓄電装置の外観斜視図。
【図3】図2に示す蓄電装置を冷却媒体入口側から観た斜視図。
【図4】本発明の一実施の形態としての蓄電モジュールの外観斜視図。
【図5】図4に示す蓄電モジュールの分解斜視図。
【図6】電圧検出導体の構成を示す平面図。
【図7】電圧検出導体をケース側板に組み込んだ状態を示す平面図。
【図8】一次成形樹脂部の要部の拡大斜視図
【図9】図8に図示された一次成形樹脂部の断面図。
【図10】接続導体が一体に成形されたケース側板を有する蓄電モジュールの斜視図。
【図11】ケース側板に一体に成形された接続導体の導出部とバスバーの接続状態を示す斜視図。
【図12】(a)は図11に図示されたケース側板にバスバーを装着した状態の平面図、(b)は図12(a)のb−bの断面図、(c)は図12(a)のc−c断面図。
【図13】本発明の蓄電モジュールの製造手順を示す一実施の形態としてのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態の蓄電モジュールを、図面を参照して詳細に説明する。
以下では、一実施の形態による蓄電モジュールを、電動車両、特に電気自動車の車載電源装置を構成する蓄電装置に適用した場合を例として説明する。電気自動車は、内燃機関であるエンジンと電動機とを車両の駆動源として備えたハイブリッド電気自動車、および電動機を車両の唯一の駆動源とする純正電気自動車等を含む。
そこで、本発明の蓄電モジュールが適用されたハイブリッド自動車用駆動システムについて説明する。
【0010】
[ハイブリッド自動車駆動システム]
図1は、本発明の一実施の形態としての蓄電モジュールを有するハイブリッド自動車駆動システムのブロック回路図である。図1に示すハイブリッド自動車駆動システムは、一例として、車載電機システムを例示しており、モータジェネレータ10、インバータ装置20、車両全体を制御する車両コントローラ30、および車載電源装置を構成する蓄電装置1000等を備える。蓄電装置1000は、例えば、複数の電池セル等を備えたリチウムイオンバッテリ装置として構成される。
【0011】
モータジェネレータ10は、三相交流同期機である。モータジェネレータ10は、車両の力行時及び内燃機関であるエンジンを始動する時など、回転動力が必要な運転モードでは、モータ駆動し、発生した回転動力を車輪及びエンジンなどの被駆動体に供給する。この場合、車載電機システムは、モータジェネレータ10に、蓄電装置1000から電力変換装置であるインバータ装置20を介して、直流電力を三相交流電力に変換して供給する。
【0012】
また、モータジェネレータ10は、車両の減速時や制動時などの回生時及び蓄電装置1000の充電が必要な時など、発電が必要な運転モードでは、車輪或いはエンジンからの駆動力によって駆動し、ジェネレータとして三相交流電力を発生させる。この場合、車載電機システムは、モータジェネレータ10からの三相交流電力を、インバータ装置20を介して直流電力に変換し、蓄電装置1000に供給する。これにより、蓄電装置1000には電力が蓄積される。
【0013】
インバータ装置20は、前述した電力変換、すなわち直流電力から三相交流電力への変換、及び三相交流電力から直流電力への変換をスイッチング半導体素子の作動(オン・オフ)によって制御する電子回路装置である。インバータ装置20は、パワーモジュール21、ドライバ回路22、モータコントローラ23を備えている。
【0014】
パワーモジュール21は、6つのスイッチング半導体素子を備え、この6つのスイッチング半導体素子のスイッチング動作(オン・オフ)によって、前述した電力変換を行う電力変換回路である。
直流正極側モジュール端子は直流正極側外部端子に、直流負極側モジュール端子は直流負極側外部端子にそれぞれ電気的に接続されている。直流正極側外部端子及び直流負極側外部端子は、蓄電装置1000との間において直流電力を授受するための電源側端子であり、蓄電装置1000から延びる電源ケーブル610、620が電気的に接続されている。交流側モジュール端子は交流側外部端子に電気的に接続されている。交流側外部端子は、モータジェネレータ10との間において三相交流電力を授受するための負荷側端子であり、モータジェネレータ10から延びる負荷ケーブルが電気的に接続されている。
【0015】
モータコントローラ23は、電力変換回路を構成する6つのスイッチング半導体素子のスイッチング動作を制御するための電子回路装置である。モータコントローラ23は、上位制御装置、例えば車両全体を制御する車両コントローラ30から出力されたトルク指令に基づいて、6つのスイッチング半導体素子に対するスイッチング動作指令信号(例えばPWM(パルス幅変調)信号)を生成する。この生成された指令信号はドライバ回路22に出力される。
【0016】
蓄電装置1000は、電気エネルギーを蓄積及び放出(直流電力を充放電)するための蓄電モジュール100a、100b、および蓄電モジュール100a、100bの状態を管理及び制御するための制御装置900(図2参照)を備えている。
蓄電モジュール100a、100bは、それぞれ、電気的に直列に接続される高電位側および低電位側の蓄電モジュールである。各蓄電モジュール100a、100bには、直列に接続された複数のリチウムイオン電池セル(以下、「電池セル」とする)を有している。複数の電池セルおよびこれらの電池セルを直列に接続する接続部材により、後述する、第1、第2の電池セル列が構成される。各蓄電モジュール100a、100bの構成については後述する。
【0017】
高電位側の蓄電モジュール100aの負極側(低電位側)と低電位側の蓄電モジュール100bの正極側(高電位側)との間にはSD(サービスディスコネクト)スイッチ700が設けられている。SDスイッチ700は蓄電装置1000の保守、点検の時の安全性を確保するために設けられた安全装置であり、スイッチとヒューズとを電気的に直列に接続した電気回路から構成され、サービスマンによって保守、点検時に操作される。
【0018】
制御装置900は、上位(親)に相当するバッテリコントローラ300及び下位(子)に相当するセルコントローラ310を含んでいる。
バッテリコントローラ300は、蓄電装置1000の状態を管理及び制御すると共に、上位制御装置である車両コントローラ30やモータコントローラ23に蓄電装置1000の状態や許容充放電電力などの充放電制御指令を通知する。蓄電装置1000の状態の管理及び制御には、蓄電装置1000の電圧及び電流の計測、蓄電装置1000の蓄電状態(SOC:State Of Charge)及び劣化状態(SOH:State Of Health)などの演算、各蓄電モジュールの温度の計測、セルコントローラ310に対する指令(例えば各電池セルの電圧を計測するための指令、各電池セルの蓄電量を調整するための指令など)の出力などがある。
【0019】
セルコントローラ310は、バッテリコントローラ300からの指令によって複数のリチウムインオン電池セルの状態の管理及び制御を行う、いわゆるバッテリコントローラ300の手足であり、複数の集積回路(IC)によって構成されている。複数の電池セルの状態の管理及び制御には、各電池セルの電圧の計測、各電池セルの蓄電量の調整などがある。すなわち、図1には図示しないが、セルコントローラ310は各電池セルの電圧を計測する電圧センサを有する。電圧センサは、蓄電モジュール100a、100b内の各電池セルの正極端子および負極端子に接続された作動増幅器により構成される。作動増幅器からの出力電圧は、セルコントローラ310に内蔵されたA/D変換器(図示せず)によりアナログ値からデジタル値に変換される。また、各電池セルの正極端子および負極端子には、抵抗器およびスイッチング素子が直列に接続された放電回路(図示せず)が並列に接続されている。各電池セルあるいは電池セルの平均値が所定の電圧値を越えた場合には、セルコントローラ310の指令によりスイッチング素子がオンし、所定の電圧値以下となるまで放電される。このように、各集積回路は、対応する複数の電池セルが決められており、対応する複数の電池セルに対して状態の管理及び制御を行う。
【0020】
セルコントローラ310を構成する集積回路の電源には、対応する複数の電池セルを用いている。このため、セルコントローラ310と蓄電モジュール100の両者は接続配線800を介して電気的に接続されている。各集積回路には、対応する複数の電池セルの最高電位の電圧が接続配線800を介して印加されている。
高電位側の蓄電モジュール100aの正極端子とインバータ装置20の直流正極側外部端子との両者は正極側の電源ケーブル610を介して電気的に接続されている。低電位側の蓄電モジュール100bの負極端子とインバータ装置20の直流負極側外部端子との間は負極側の電源ケーブル620を介して電気的に接続されている。
【0021】
電源ケーブル610、620の途中にはジャンクションボックス400、負極側メインリレー412が設けられている。ジャンクションボックス400の内部には、正極側メインリレー411及びプリチャージ回路420から構成されたリレー機構が収納されている。リレー機構は、蓄電モジュール100a、100bとインバータ装置20との間を電気的に導通及び遮断するための開閉部であり、車載電機システムの起動時には蓄電モジュール100a、100bとインバータ装置20との間を導通、車載電機システムの停止時及び異常時には蓄電モジュール100a、100bとインバータ装置20との間を遮断する。このように、蓄電装置1000とインバータ装置20との間をリレー機構によって制御することにより、車載電機システムの高い安全性を確保できる。
【0022】
リレー機構の駆動はモータコントローラ23により制御される。モータコントローラ23は、車載電機システムの起動時には、蓄電装置1000の起動完了の通知をバッテリコントローラ300から受けることにより、リレー機構に対して導通の指令信号を出力してリレー機構を駆動させる。また、モータコントローラ23は、車載電機システムの停止時にはイグニションキースイッチからオフの出力信号を受けることにより、また、車載電機システムの異常時には車両コントローラからの異常信号を受けることにより、リレー機構に対して遮断の指令信号を出力してリレー機構を駆動させる。
【0023】
メインリレーは正極側メインリレー411及び負極側メインリレー412から構成されている。正極側メインリレー411は正極側の電源ケーブル610の途中に設けられ、蓄電装置1000の正極側とインバータ装置20の正極側との間の電気的な接続を制御する。負極側メインリレー412は負極側の電源ケーブル620の途中に設けられ、蓄電装置1000の負極側とインバータ装置20の負極側との間の電気的な接続を制御する。
【0024】
プリチャージ回路420は、プリチャージリレー421及び抵抗422を電気的に直列に接続した直列回路であり、正極側メインリレー411に電気的に並列に接続されている。
車載電機システムの起動時にあたっては、まず、負極側メインリレー412が投入され、この後に、プリチャージリレー421が投入される。これにより、蓄電装置1000から供給された電流が抵抗422によって制限された後、インバータ搭載の平滑コンデンサに供給されて充電される。平滑コンデンサが所定の電圧まで充電された後、正極側メインリレー411が投入され、プリチャージリレー421が開放される。これにより、蓄電装置1000から正極側メインリレー411を介してインバータ装置20に主電流が供給される。
【0025】
また、ジャンクションボックス400の内部には電流センサ430が収納されている。電流センサ430は、蓄電装置1000からインバータ装置20に供給される電流を検出するために設けられたものである。電流センサ430の出力線はバッテリコントローラ300に電気的に接続されている。バッテリコントローラ300は、電流センサ430から出力された信号に基づいて、蓄電装置1000からインバータ装置20に供給された電流を検出する。この電流検出情報は、バッテリコントローラ300からモータコントローラ23や車両コントローラ30などに通知される。
【0026】
電流センサ430はジャンクションボックス400の外部に設置しても構わない。蓄電装置1000の電流の検出部位は、正極側メインリレー411のインバータ装置20側のみならず、正極側メインリレー411の蓄電モジュール100a側であってもよい。
【0027】
各電池セルに充電された電圧値を検出するための電圧センサを、ジャンクションボックス400の内部に収納してもよい。ジャンクションボックス400の内部に電圧センサを収納する場合には、電圧センサの出力線は電流センサ430と同様にバッテリコントローラ300を介して各電池セルの正・負極端子に接続される。バッテリコントローラ300は、電圧センサの出力信号に基づいて蓄電装置1000の全体の電圧を検出する。この電圧検出情報はモータコントローラ23や車両コントローラ30に通知される。
【0028】
[蓄電装置の構造]
図2および図3は、蓄電装置1000の全体構成を表す斜視図を示す。図2は、蓄電装置1000の冷却媒体の出口側から観た図であり、図3は冷却媒体の入口側から観た図である。蓄電装置1000は大きく分けて、蓄電モジュール100a、100b及び制御装置900の二つのユニットから構成されている。まず、蓄電モジュール100a、100bの構成について説明する。
【0029】
上述したように、蓄電モジュール100a、100bは、それぞれ、高電位側及び低電位側の蓄電モジュールであり、蓄電モジュール100a、100bには、それぞれ、電気的に直列に接続され複数の電池セルが収納されている。図2に示すように、高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bは、各ブロックの長手方向同士が平行となるように互いに隣接して並列に配置される。
【0030】
高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bは、モジュールベース101上に並置され、ボルトなどの固定手段により固定されている。モジュールベース101は、短手方向に三分割された剛性のある薄肉の金属板(例えば鉄板)により構成され、車両に固定されている。すなわち、モジュールベース101は、短手方向の両端部と中央部に配置された3つの部材から構成されている。このような構成により、モジュールベース101の面を各蓄電モジュール100a、100bの下面と面一にでき、蓄電モジュール100a、100bの高さ方向の寸法をさらに低減することができる。
高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bの上部は、後述する制御装置900の筐体910によって固定されている。
なお、高電位側の蓄電モジュール100aと低電位側の蓄電モジュール100bは、基本的に同一の構造を有している。このため、以下においては、高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bを代表して、蓄電モジュール100として説明する。
【0031】
[蓄電モジュール]
(電池容器)
図4は、蓄電装置1000を構成する蓄電モジュール100の外観斜視図を示す。また、図5は、蓄電モジュール100の分解斜視図である。
図5に図示されるように、蓄電モジュール100は、ケース本体110、ケース本体110の両側面に配置された一対のケース側板130、131および各ケース側板の外側に配置された一対の覆い板160から構成される電池容器を有する。電池容器内には、16個の電池セル140が収納されている。16個の電池セル140は、後述する、複数のバスバーにより電気的に直列に接続されて構成されている。
【0032】
ケース本体110は、両側面が開口された略六面体状のブロック筐体を構成している。
具体的には、入口流路形成部111、出口流路形成部118、入口側案内部112(図3参照)および出口側案内部113(図2、5参照)を有する。ケース本体110の内部空間は、複数の電池セル(蓄電セル)140が収納される収納室として機能するとともに、これらの電池セル140を冷却するための冷却媒体(冷却空気)が流通する冷却通路として機能する。
なお、以下の説明において、ケース本体110の長さが最も長い方向、および入口側案内部112側から出口側案内部113側に至る方向を、長手方向と定義する。
また、二つのケース側板130、131が対向する方向を、短手方向と定義する。電池セル140の軸芯(正極端子及び負極端子の二つの電極が対向する方向)は短手方向に向いている。
さらに、入口流路形成部111と出口流路形成部118とが対向する方向を、蓄電モジュール100の設置方向に関係なく高さ方向と定義する。
【0033】
入口流路形成部111はケース本体110の上面を形成する長方形状の平板部である。出口流路形成部118(図5参照)はケース本体110の底面を形成する平板部である。入口流路形成部111と出口流路形成部118とは全長がほぼ同じ長さであるが、その長手方向端部の位置は、相互に、長手方向にずれている。
【0034】
入口側案内部112(図3参照)は、ケース本体110の長手方向に対向する側面の一方側を形成する板状部である。出口側案内部113は、ケース本体110の長手方向に対向する側面の他方側を形成する板状部である。
入口流路形成部111、出口流路形成部118、入口側案内部112及び出口側案内部113は、例えば、アルミダイキャスト法により、ケース本体110として、一体に形成されている。
入口流路形成部111と入口側案内部112との間には、冷却媒体である冷却空気のケース本体110内部への導入口を構成する冷却媒体入口114(図3参照)が形成されている。
【0035】
上述したように、入口流路形成部111と出口流路形成部118とは互いに長手方向端部が長手方向にずれて配置されている。この長手方向端部のずれ量は、長手方向における電池セル140のピッチの1/2であり、ケース本体110の入口側端部には、このずれ量分の段差が形成されている。このため、長手方向において冷却媒体入口114と入口側案内部112との間に空間が形成される。この空間には、ガス排出管139(図3参照)が配置される。
【0036】
このような構成により、蓄電モジュール100の長手方向の寸法を短縮することができる。
出口流路形成部118と出口側案内部113との間には、冷却空気をケース本体110内部から導出する冷却媒体出口115が形成されている。冷却媒体出口115には、冷却空気を冷却媒体出口115から外部に導くための冷却媒体出口ダクト117が設けられている。
【0037】
冷却媒体入口114及び冷却媒体出口115は高さ方向において位置がずれている。すなわち、高さ方向においては、冷却媒体入口114は入口流路形成部111側に位置し、冷却媒体出口115は出口流路形成部118側に位置している。
【0038】
ケース側板130、131は、ケース本体110の短手方向に対向して配置されている。
ケース側板130、131は、それぞれ、ほぼ平板状の部材であり、電気的な絶縁性を有するPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の合成樹脂からなる成形体である。
ケース側板130、131の外側、すなわち電池セル140が収容される収納室と反対側には、サイドカバーと呼ばれる覆い板160が設けられている。覆い板160は、ボルト或いはリベットなどの締結部材161(図4参照)によってケース側板130、131に固定されている。
【0039】
覆い板160は、鉄或いはアルミニウムなどの金属板をプレス加工した平板、又はPBTなどの樹脂を成形して形成した平板であり、ケース側板130、131の平面形状とほぼ同じ形状に構成されている。覆い板160は、後述するケース側板130、131の側板貫通孔132に対応する部位を含む領域がケース側板130とは反対側に、すなわちケース本体110の外側に向けて一様に膨らんでいる。これにより、覆い板160とケース側板130、131との間には空間が形成される。この空間は、過充放電等により電池セル140から噴出したミスト状のガスが、冷却通路を流通する冷却媒体とは分離して放出されるガス放出流路として機能する。
【0040】
(電池セル収納構造)
複数の電池セル140は、ケース本体110の内部に形成された収納室に整列して収納されていると共に、短手方向からケース側板130、131により挟持され、銅等の導電性の良好な材料により形成されたバスバー150との接合によって電気的に直列に接続されている。
電池セル140は、一端側に正極端子140aが形成され、他端側に負極端子140bが形成された円筒形の例えば、リチウムイオン二次電池であり、非水電解液が注入された電池缶の内部に発電ユニットおよび安全弁等の構成部品が収納されて構成されている。正極端子140aは、中央部に開口部140a1を有し、軸芯方向における正極端子140aの開口部140a1の直下には、過充電などの異常によって電池容器の内部の圧力が所定の圧力になったときに開裂する開裂弁(図示せず)が形成されている。開裂弁は、開裂によって電池蓋と電池素子の正極側との電気的な接続を遮断するヒューズ機構として機能するとともに、電池容器の内部に発生したガス、すなわち非水電解液を含むミスト状の炭酸系ガスを電池容器の外部に噴出させる減圧機構として機能する。
【0041】
負極端子140bは、電池セル140の缶底であり、この缶底である負極端子140bにも開裂弁140b1が設けられている。この開裂弁140b1は、電池セル140の缶底を、プレスにより断面V字形状の溝を形成することにより形成される。開裂弁140b1は、過充電などの異常によって電池容器の内部の圧力が所定の圧力以上になったときに開裂する。これにより、電池缶の内部に発生したガスを負極端子側からも噴出させることができる。電池セル140の公称出力電圧は3.0〜4.2ボルト、平均公称出力電圧は3.6ボルトである。
【0042】
一実施の形態においては、円筒形の電池セル140が16個、ケース本体110の内部に整列配置されている。具体的には、電池セル140を横倒しにし、換言すれば、電池セル140の軸芯を短手方向に平行に配置し、長手方向に沿って8本の電池セル140を上段側に並列に配列して第1電池セル列121を構成する。また、第1電池セル列121と同様に8本の電池セル140を、長手方向に沿って下段側に並列に配列して第2電池セル列122を構成する。すなわち、ケース本体110の内部には、電池セル140が長手方向に8列、高さ方向に二段並べて構成される。第1電池セル列121および第2電池セル列122により電池セル列120が構成される。
【0043】
第1電池セル列121及び第2電池セル列122は互いに長手方向にずれている。すなわち第1電池セル列121は、第2電池セル列122よりも入口流路形成部111側であって、冷却媒体入口114側にずれて配置されている。一方、第2電池セル列122は、第1電池セル列121よりも出口流路形成部側であって、冷却媒体出口115側にずれて配置されている。
図5に示すように、一実施の形態では、例えば第1電池セル列121の最も冷却媒体出口115側に位置する電池セル140の中心軸の長手方向の位置が、第2電池セル列122の最も冷却媒体出口115側に位置する電池セル140の中心軸と、それに隣接する電池セル140の中心軸との間の中間位置になるように、第1電池セル列121及び第2電池セル列122が長手方向にずれて配置されている。
【0044】
第1電池セル列121を構成する電池セル140は正極端子140aと負極端子140bとが交互に逆向きになるようにして軸芯を平行にして配列されている。第2電池セル列122を構成する電池セル140も同様に、正極端子140aと負極端子140bとが交互に逆向きになるようにして軸芯を平行にして配列されている。ただし、第1電池セル列121を構成する電池セル140の正・負極端子140a、140bの冷却媒体入口114(図3参照)側から冷却媒体出口115側への並び順は、第2電池セル列122を構成する電池セル140の端子の並び順と異なる。
【0045】
すなわち、第1電池セル列121は、ケース側板130側に面する電池セル140の端子が、冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側に向かって負極端子140b、正極端子140a、負極端子140b、…、正極端子140aの順に配置されている。一方、第2電池セル列122は、ケース側板130側に面する電池セル140の端子が、冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側に向かって正極端子140a、負極端子140b、正極端子140a、…、負極端子140bの順に配置されている。
このように、第1電池セル列121と第2電池セル列122とを長手方向にずらして配置することにより、ケース本体110の高さ方向の寸法を低くでき、蓄電モジュール100を高さ方向に小型化することができる。
【0046】
(ケース側板)
次に、第1電池セル列121および第2電池セル列122を両側から挟持する一対のケース側板130、131の構造について説明する。ここでは、一方のケース側板130の構造のみを説明するが、他方のケース側板131も基本的にはケース側板130と同様に構成されている。
【0047】
ケース側板130、131の構造を説明するに当たって、図1に戻り、蓄電モジュール100を、高電位側の蓄電モジュール100aと低電位側の蓄電モジュール100bとに分けて説明する。
高電位側の蓄電モジュール100aの正極側入出力端子(図示せず)には正極側の電源ケーブル610(図1参照)の端子が接続され、負極側入出力端子(図示せず)には、SDスイッチ700の一端側に電気的に接続されたケーブルの端子が接続される。低電位側の蓄電モジュール100bの正極側入出力端子183(図2参照)には、SDスイッチ700の他端側に電気的に接続されたケーブルの端子が接続される。低電位側の蓄電モジュール100bの負極側入出力端子184(図2参照)には負極側の電源ケーブル620(図1参照)の端子が接続される。なお、図2において、高電位側の蓄電モジュール100aのサブアセンブリ185は端子カバーで覆われた状態を示し、低電位側の蓄電モジュール100bのサブアセンブリ185は端子カバーを取り外した状態を示している。
【0048】
ケース側板130は、図5に図示されるように、略長方形の平板形状に形成されている。
ケース側板130は、外周部に所定の厚さの側部を有し、側部の内側には、電池セル140を収納するための16個の側板貫通孔132が形成されている。各側板貫通孔132は、電池セル140の外径より少し小さい円形形状に形成されている。
16個の側板貫通孔132は、下段側の第2電池セル列122に対応する8個の側板貫通孔132が上段側の第1電池セル列121に対応する8個の側板貫通孔132に対して、電池セル140の(1/2)ピッチだけ冷却媒体出口115寄りに位置して配列されている。
【0049】
16個の電池セル140がケース本体110内に収納されると、ケース側板130の16個の側板貫通孔132は、すべて、電池セル140の正極端子140aまたは負極端子140bで塞がれる。同様に、ケース側板131側の16個の側板貫通孔132も、図示はしないが、すべて、いずれかの電池セル140の正・負極端子140a、140bの一方の端子により塞がれる。但し、ケース側板130の側板貫通孔132が塞がれる電池セル140の端子と、ケース側板130の当該側板貫通孔132に対応するケース側板131の側板貫通孔132とが塞がれる電池セル140の端子とは、正極と負極が逆である。
【0050】
各側板貫通孔132の直径は、正極端子140aおよび負極端子140bの直径よりも少し小さく形成され、正極端子140aおよび負極端子140bのそれぞれ一部を露出している。ケース側板130の内面側には、各側板貫通孔132に対応して、当該貫通孔より径大のリング型のリブが形成されている。このリング型のリブは、電池セル140を収納する際の案内部材となり、かつ、収納後には、電池セル140を保持する保持部材の機能を兼用している。
【0051】
ケース側板130の各貫通孔に対応して形成されたリブに保持される各電池セル140は、正・負極端子140a、140bの周縁部が、上述したリブの内側と側板貫通孔132との間に形成された溝(図示せず)に塗布された接着剤によりケース側板130に接着される。
このため、ケース本体110内を、冷却媒体入口114から冷却媒体出口115に向かって流通する冷却媒体は、正・負極端子140aまたは140bをケース側板130の内面に接着する接着剤により遮断され、ケース側板130の外面側に流出することはない。
【0052】
電池セル140への過充電等に起因して電池セル140内の内圧が上昇し、開裂弁が破断して電池セル140の内部からミスト状のガス(電解液などを含む液体と気体とが混じったガス)が噴出あるいはリークしたりすることがある。このミスト状のガスは、ケース側板130と覆い板160により形成される内部空間に噴出する。しかし、このような場合においても、ミスト状のガスは、正・負極端子140aまたは140bをケース側板130の内面に接着する接着剤により遮断され、ケース側板130の内部側に流入することはない。
【0053】
ケース側板130の外周部に形成された側部には、覆い板160と対向する面に、溝134が形成され、この溝134にシール部材135が嵌め込まれている。シール部材135は、弾性を有する円環状のシール部材(例えばゴム製のOリング)である。シール部材135には液状ガスケットを用いても構わない。
【0054】
図5に図示されるように、ケース側板130と覆い板160との間には、隣接する電池セル140の正極端子140aと負極端子140bとを接続するバスバー150が配置されている。バスバー150についての詳細は後述する。
ケース側板130の外壁面170における側板貫通孔132同士の間に、電池セル140と接続されるバスバー150を配置するための複数の固定ガイド130aが形成されている。固定ガイド130aは、バスバー150で接続される一対の正極端子140aと負極端子140bとの間に形成されている。バスバー150を固定ガイド130aに取り付けることにより、バスバー150の接合部が、電池セル140の正・負極端子140a、140bの所定の箇所に対応する。
ケース側板130の外壁面170側には、側板貫通孔132の外縁に突起部136が形成されている。突起部136は、固定ガイド130aに隣接する一対の側板貫通孔132を連結するように、ほぼ8の字形状に形成されている。突起部136および固定ガイド130aは、導電材料で形成された覆い板160とバスバー150との接触を防止する機能も備えている。
【0055】
(ガス排出路)
ケース側板130には、ケース側板130と覆い板160との間のガス放出室に放出されたミスト状のガスを蓄電モジュール100の外部に排出するためのガス排出通路138(図5参照)が設けられている。ガス排出通路138の開口部は、電池セル140の正・負極端子140a、140bの開裂弁からケース本体110の外壁面170に噴出されたミスト状のガスの排出を考慮してケース側板130の下部に形成されている。具体的には、ケース側板130の冷却媒体入口114側であり、かつ出口流路形成部118側のケース側板130に形成されている。ガス排出通路138の先端部分は管状に形成されており、ガス排出通路138から排出されたガスを外部に導くためのガス排出管139(図3参照)が接続されている。
【0056】
ケース側板130の上面、すなわち入口流路形成部111側の面には、2つの接続端子810が長手方向に並んで設けられている。接続端子810は、ケース側板130と同じ成形材料によってケース側板130に一体に成形され、ケース側板130の上面において冷却媒体入口114側に配置されている。
【0057】
(電圧センサ接続配線)
各接続端子810は、電流遮断部811(後述の図6、図7参照)を備えており、制御装置900の電圧検出用のコネクタ912(図2、3参照)から延びる接続配線800と、後述する電圧検出導体805とを電流遮断部811を介して電気的に接続している。
【0058】
電圧検出用のコネクタ912は、制御装置900の短手方向両端部にそれぞれ設置されている。高電位側の蓄電モジュール100aに設けられた接続端子810に接続された接続配線800は、高電位側の蓄電モジュール100aの上方に配置された制御装置900の電圧検出用のコネクタ912に接続される。一方、低電位側の蓄電モジュール100bに設けられた接続端子810に接続された接続配線800は、低電位側の蓄電モジュール100bの上方に配置された制御装置900の電圧検出用のコネクタ912に接続される。接続配線800の長さは、配線ミスを防止するために、各接続端子810と対応する電圧検出用のコネクタ912までの距離に相当するように設定されている。例えば、高電位側の蓄電モジュール100aの接続端子810に接続された接続配線800は、低電位側の蓄電モジュール100b用の電圧検出用のコネクタ912まで到達しないような短さに設定されている。電流遮断部811は、ヒューズワイヤを備え、制御装置900や接続配線800の異常時に溶断して各電池セル140からの電流を遮断し、製品を保護する機能を有している。
【0059】
電圧検出導体805は、複数の電池セル140についてそれぞれ電圧を検出するために、電池セル140を直列に接続するバスバー150に接続されている。電圧検出導体805はケース側板130と一体化されている。具体的にはケース側板130に埋め込まれている。図6に電圧検出導体805の形状の一例を示す平面図を示し、図7に、図6に示す電圧検出導体805をケース側板130に埋め込んだ状態の平面図を示す。
【0060】
図6に示すように、電圧検出導体805は、例えば銅などの金属製の薄板をプレス加工等により成形された細長い平角線状の検出線(接続導体)806を有する。電圧検出導体805を構成する検出線806は、先端がケース側板130に形成された複数の側板貫通孔132から露出するように、検出線806の一部は、その先端部800aが、所定の側板貫通孔132の内方に露出される。すなわち、検出線806は延出され、その一部は、先端部800aがケース側板130の側板貫通孔132から導出されている(図7参照)。検出線806の各先端部800aは、ケース側板130の外側に向けて折り曲げられており、後述する如く、バスバー150に溶接される。電圧検出導体805の先端部800aと反対の他端部は、電流遮断部811を介して接続端子810と電気的に接続されている。
【0061】
電圧検出導体805の形状は、ケース側板130を小型化して蓄電モジュール100全体を小型化するように、ケース側板130の利用可能なスペースを効率的に利用するように設計されている。また、複数の電池セル140は、バスバー150を介して直列に接続されているため、電圧検出導体805が接続される複数のバスバー150の間で電位差が発生することとなる。そこで、電圧検出導体805は、隣接する検出線806間の電位差ができるだけ小さくなるように検出線806の配置が決定されている。
【0062】
検出線806は、プレス加工等により所定の形状に成形された後、例えばケース側板130と同様の樹脂からなる樹脂部(一次成形部)807によって固定される。具体的には、樹脂部807によって、複数の検出線806をそれぞれ分離した状態にするとともに、各検出線806がその形状を保つように固定されている。
【0063】
図6に示すように樹脂部807によって固定された電圧検出導体805は、例えばケース側板130を構成する樹脂によるインサートモールド成形によりケース側板130と一体化して形成される。検出線806同士はそれぞれ分離して固定されているので、電圧検出導体805がケース側板130と一体化されると、検出線806の短絡は実質的に発生しない。しかしながら、検出線806同士の短絡に対する更なる信頼性の向上の為に、検出線806間の距離を、このシステムで必要とされる絶縁沿面距離の2〜2.5倍以上としている。それにより、信頼性の高いケース側板130を供給することを可能としている。また、その距離は大きければ大きいほど汚染された環境に対し効果がある。
【0064】
図4および5において、180および181は、それぞれ、蓄電モジュール100の電池容器内に収納され、直列に接続された16個の電池セル140の両端部、換言すれば、最高電位および最低電位の電池セル140の正極端子140aおよび負極端子140bに接続される接続端子である。
接続端子180、181は、それぞれ、接続部180a、181aとバスバー150a、150bを有し(図5参照)、インサートモールド成形によりケース側板130に一体成形されている。
【0065】
(ケース側板の形成)
電圧検出導体805は、ケース側板130に一体成形される。
上述した如く、電圧検出導体805は、側板貫通孔132に導出される先端部800aを有する検出線806が一次成形により、樹脂部807に固定される。
樹脂部807は、図6に図示されるように複数の接合部820を有する。
図8は、図6における電圧検出導体805の接合部820周辺の領域Aの拡大斜視図であり、図9は、その断面図である。
【0066】
樹脂部807は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)により形成されている。樹脂部807は、細長い平角線状の検出線(接続導体)806の外周を覆う本体部808と、この本体部808から検出線806の上下両面側に突出して形成された一対の接合部820とを有する。一対の接合部820は、樹脂部807の本体部808の複数箇所に形成されている。
各接合部820は、上面821aを有する円柱形状の固定部821と、固定部821の本体部808側に設けられた溶融可能部822とを有する。溶融可能部822は、固定部821よりも径の大きい円柱形状を有し、固定部821と同軸に形成されている。溶融可能部822は、固定部821の高さよりも低く、かつ、薄く形成されている。溶融可能部822の上面の周縁部は、角のあるエッジ部822aとなっており、後述する、二次成形時に射出される、溶融した二次成形材料により溶融可能となっている。
【0067】
ケース側板130を形成する方法について述べる。
一次成形により検出線806が樹脂部807にインサートモールド成形された、図6に図示される電圧検出導体805を、予め、作製しておく。樹脂部807には、固定部821および溶融可能部822を有する接合部820が複数箇所に形成されている。
次に、電圧検出導体805を二次成形用金型内に収容し、下型と上型とを型閉じする。
このとき、本体部808の上側における接合部820の固定部821の上面821aは上型により、本体部808の下側における接合部820の固定部821の上面(図9では下面)821aは下型によって押し付けられる。
【0068】
このため、樹脂部807にインサートモールド成形されている検出線806は、金型内の高さ(厚さ)方向における位置が、確実に、所定の位置に固定される。
この状態で、二次成形を行う。
ケース側板130を形成することとなる二次成形材料は、一次成形材料と同一の材料、例えば、PBTが好ましい。
二次成形における樹脂成形温度は、樹脂部807を形成する一次成形材料の溶融温度と同一もしくは僅かに高い温度とする。
【0069】
二次成形材料は、図9に図示された二次成形部130’を構成する。二次成形材料が
二次成形用金型内に射出されると、熱と射出圧力により一次成形材料で形成された樹脂部807の溶融可能部822が溶融する。特に、溶融可能部822における上面の周縁部のエッジ部822aが溶融する。溶融した一次成形材料は、二次成形材料と融合する。このため、この後、二次成形材料を冷却することにより、一次成形部である樹脂部807と強固に接合する。
【0070】
上記において、二次成形材料を射出しても、樹脂部807は溶融温度よりも遥かに低温であるため、樹脂部807の本体部808および固定部821の表面は、余り溶融せず、一次成形材料と二次成形材料の融合が行われ難く、接合されずに分離する境界面が生じることがある。
上述した如く、ケース側板130と覆い板160との間の空間には、過充放電等により電池セル140から噴出したミスト状のガスが流出する。樹脂部807と二次成形部130’の境界面が分離されていると、このミスト状のガスが、樹脂部807と二次成形部130’の境界部からケース側板130の内側に流入する。ケース側板の内側は、冷却媒体の流路となっているため、ミスト状のガスが蓄電装置1000の内部に侵入してしまう。
しかし、本発明の一実施の形態では、固定部821と本体部808との間に溶融可能部822のエッジ部822aが形成されている。このエッジ部822aは、円形状に形成され、二次成形部130’の外部に露出しない閉じた平面形状に形成されている。
従って、ミスト状のガスが固定部821と二次成形部130’の境界部に流入しても、一次成形材料と二次成形材料が融合したエッジ部822aで遮断され、ミスト状のガスがケース側板130の内側に流入することを防止することができる。
【0071】
二次成形材料として、一次成形材料よりも溶融温度が高い材料を用いることも可能ではある。しかし、二次成形材料と一次成形材料の線膨張係数が異なると、熱衝撃の激しい環境下で使用すると線膨張係数の差に起因して、溶融部で両材料が剥がれる可能性が大きい。
従って、一次および二次成形材料は、例えば、同一の材料を用いるとか、異なる材料とする場合には、線膨張係数が同等の材料を用いることが望ましい。
【0072】
(バスバーと電池セル)
図10に、ケース側板130にバスバー150を装着した状態の蓄電モジュール100の斜視図を示す。
バスバー150は、電池セル140の間を電気的に接続する金属製、例えば銅製の板状部材であり、ケース側板130とは別体に構成されている。ただし、上述した如く、バスバー150a、150b(図5参照)を有する接続端子180、181は、それぞれ、ケース側板130と一体化して形成されている。
【0073】
バスバー150は、帯状に延在する中央部156と、中央部156の両端側に位置する端子部157とから構成される。中央部156と端子部157とは、それぞれ屈曲部158を介して連続している。すなわち、バスバー150は、折り曲げられてステップ状に形成されている。バスバー150の各端子部157には、貫通孔151、電池セル140の正・負極端子140a、140bに溶接される電極接合部152、および電圧検出導体805の先端部800aに溶接される配線接合部154が形成されている。
【0074】
貫通孔151は、上述したように電池セル140からガスが噴出した場合に、噴出したガスが通るように設けられている。バスバー150の中央部156には、ケース側板130に設けられた固定ガイド130aを挿入するための2つの位置決め孔155が形成されている。
【0075】
図11は、ケース側板に一体に成形された接続導体の導出部とバスバーの接続状態を示す斜視図であり、図12(a)は図11に図示されたケース側板にバスバーを装着した状態の平面図、図12(b)は図12(a)のb−bの断面図、図12(c)は図12(a)のc−c断面図である。
バスバー150は、中央部156の2つの位置決め孔155を、ケース側板130に設けられた2つの固定ガイド130aに嵌合させてケース側板130に装着される。バスバー150がケース側板130に装着されると、バスバー150の両端子部157は、側板貫通孔132に入り込んだ状態となり、電池セル140の端子面と当接する。また、バスバー150の配線接合部154は、ケース側板130に形成された側板貫通孔132から露出した電圧検出導体805の先端部800aと当接する。なお、バスバー150により溶接された一対の正極端子140aと負極端子140bとは同電位である。このため、先端部800aは、この同電位である一対の正・負極端子140a、140bに対し1本引き出されている。従って、図6、7に図示されるように、先端部800aは、一対となる側板貫通孔132の一方のみから露出され、他方の側板貫通孔132からは露出していない。
【0076】
バスバー150は、両端子部157に設けられた電極接合部152において電池セル140の正・負極端子140a、140bに接合される。具体的には、溶接トーチを電極接合部152に位置合わせして電極接合部152と電池セル140の正・負極端子140a、140bとをアーク溶接により接合する。アーク溶接としては、例えばTIG(Titan Inert Gas)溶接、ガスシールドアーク溶接等が挙げられる。
【0077】
アーク溶接は高熱で母材および溶加材を溶融させて接合させるものであり、溶接時には超高熱を発生する。溶接時の熱は、溶接部の周辺に伝導され、周辺も溶融する程の高温となる。特に、溶接部近傍が角部のある矩形形状であったり、矩形の貫通孔があったりする場合、角部に熱が集中し、溶融され易い。また、上述したように、貫通孔151は電池セル140からガスが噴出した場合にガスの排出口として機能するため、端子部157が溶けて開口が閉じてしまうことを避ける必要がある。
【0078】
そこで、本実施の形態においては、図11および12に示すように、バスバー150の各端子部157の外側の側縁に立ち上がり部159を設けている。この立ち上がり部159は、ケース側板130の側板貫通孔132の中心部付近に対応する位置に形成されている。
バスバー150に立ち上がり部159を設けることにより、バスバー150の体積が増大して溶接時の放熱を大きくする効果がある。以下、このことについて説明する。
【0079】
バスバー150の端子部157はケース側板130の円形形状の側板貫通孔132内に収まる形状とされる。このため、端子部157の幅は、いずれの部位も、対応する円形形状の貫通孔の部位の幅よりも小さくする必要がある。したがって、端子部157が平板形状の場合には、側板貫通孔132の中心部を超えた領域では、側板貫通孔132の直径より小さい幅となる。
これに対し、本発明の実施形態では、図11に図示されるように、バスバー150の各端子部157には、ケース側板130の側板貫通孔132の中心部付近に対応する位置に立ち上がり部159が設けられている。このため、立ち上がり部159は側板貫通孔132の形状による制約を受けること無く、立ち上がり部159の根元から先端まで同一の幅とすることができる。すなわち、立ち上がり部159を設けることにより端子部157の面積は、立ち上がり部159を設けない場合よりも大きくすることができ、結果、バスバー150の体積を大きくして溶接時の放熱量を大きくすることが可能となる。
【0080】
また、溶接時に発生する熱の影響を受けに難くするために、貫通孔151を電極接合部152からできる限り遠ざけるように構成している。具体的には、貫通孔151を楕円形としている。楕円形の貫通孔151は、各端子部157に設けられた2つの電極接合部152の中間位置に配置されている。各端子部157には、正極端子140aおよび負極端子140bに接合される2つの電極接合部152が形成されている。したがって、1つのバスバー150は、4つの電極接合部152を有していることになる。電極接合部152は、電池セル140側に向かって突出した円形の凸部として構成されている。
【0081】
このように、バスバー150の各端子部157に立ち上がり部159を設け、放熱効果を高めると共に、貫通孔151を楕円形として貫通孔151の縁部が溶融し難い形状としている。このため、バスバー150と電池セル140との溶接時に発生する熱に対して、高い信頼性が確保される。
【0082】
電極接合部152は、図12に図示されるように、電池セル140に対して凸部となっており円形を成している。溶接時の熱は、バスバー150の電極接合部152から、電池セル140の正・負極端子140a、140bに伝導され、両部材の接合部位が溶融されることにより接合される。このことから、バスバー150の電極接合部152は溶接時の溶接起点となる機能を有する。このため、円形の直径は、溶接設備のトーチ位置のばらつき、また蓄電装置1000を構成する各部品の組み合わせによるばらつきを考慮して大きさが決められている。円形はいずれの方向のばらつきに対しても同一の公差を有し、円形の直径を、必要とされる溶接強度の最小面積が確保できる大きさとすることにより、いかなる場合でも、安定した高品質な蓄電装置1000とすることが可能となる。
【0083】
上述した如く、接続端子180、181は、それぞれ、バスバー150a、150b(図5参照)を有する。
接続端子180、181は、それぞれ、バスバー150を中央部156で切断したような形状を有し、それぞれ、バスバー150の片側の端子部157と同様な構造を有する。
すなわち、各バスバー150a、150bは、それぞれ、貫通孔151、配線接合部154および2つの電極接合部152が形成された端子部157を有している。
この場合、接続端子180、181は、バスバー150に対し90度回転した向きに配置されており、それぞれ、接続部180a、181aをケース側板130の上方の外部に突き出した状態でケース側板130に一体成形されている。
図5に図示されるように、最高電位の電池セル140の正極端子140aに接続される先端部800bおよび最低電位の負極端子140bに接続される先端部800cが側板貫通孔132から露出されている。
そして、先端部800b、800cが、それぞれ、バスバー150a、150bの配線接合部154に溶接される。各バスバー150a、150bの貫通孔151、配線接合部154および2つの電極接合部152の機能は、バスバー150の場合と同様であるので、ここでは説明を省略する。
接続端子180、181のバスバー150a、150bと、電池セル140の正極端子140a、140bとの溶接もバスバー150の溶接と同様に行われる。
【0084】
図2および3に図示された蓄電装置1000において、制御装置900は、蓄電モジュール100の上に載置されている。具体的には、制御装置900は高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bの上に跨って載置された電子回路装置であり、筐体910及び筐体910の内部に収納された一つの回路基板を備えている。
筐体910は、扁平な直方体状の金属製箱体であり、高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bに対して、ボルト或いはネジなどの固定手段により固定されている。これにより、高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bは互いの短手方向の端部同士が制御装置900によって接続されて固定される。すなわち、制御装置900が支持具の機能を兼ねているので、蓄電モジュール100の強度をより向上させることができる。
【0085】
筐体910の側面、すなわち、制御装置900の短手方向の両端面には複数のコネクタが設けられている。複数のコネクタとしては電圧検出用のコネクタ912、温度検出用のコネクタ913、および外部接続用のコネクタ911を備えている。電圧検出用のコネクタ912には、32個の電池セル140に電気的に接続された接続配線800のコネクタが結合される。温度検出用のコネクタ913には、蓄電モジュール100の内部に配置された複数の温度センサ(図示省略)の信号線941のコネクタが結合される。
【0086】
外部接続用のコネクタ911には、バッテリコントローラ300に駆動電源を供給するための電源線、イグニションキースイッチのオンオフ信号を入力するための信号線、及び車両コントローラ30やモータコントローラ23とCAN通信するための通信線などのコネクタ(図示省略)が結合される。
【0087】
[蓄電装置の製造方法]
以上説明した蓄電モジュール100および制御装置900から構成される蓄電装置1000の製造方法、特に、組み立て方法について、図13のフローチャートを用いて説明する。
図13において、ステップS1〜S11までは蓄電モジュール100を作製する工程である。
蓄電装置1000は、高電位側の蓄電モジュール100aおよび低電位側の蓄電モジュール100bを備えているが、高電位側の蓄電モジュール100aと低電位側の蓄電モジュール100bとは構造は同一であり、各蓄電モジュールを制御装置900に接続する際の接続方法により、いずれかに確定する。つまり、蓄電モジュール100の組立方法は同一であり、以下に説明する蓄電モジュール100の作成方法は、高電位側および低電位側に共通する。
【0088】
高電位側の蓄電モジュール100aおよび低電位側の蓄電モジュール100bの組み立てを開始するにあたって、ステップS1でケース本体110と各ケース側板130、131を作製しておく。
ケース本体110は、入口流路形成部111、出口側案内部113、冷却媒体入口114及び冷却媒体入口ダクト116、さらに、出口流路形成部118、入口側案内部112、冷却媒体出口115及び冷却媒体出口ダクト117を一体に形成する。このようなケース本体110は、一例として、アルミダイキャスト法により作製することができる。
【0089】
ケース側板130と131とは、同様な方法で作製することができる。ここでは、ケース側板130の作製について説明する。
先ず、電圧検出導体805を作製する。これには、接続端子810および電流遮断部811に接続される検出線806を、成形材料として、例えば、PBTを用いてインサートモールドし、一次成形部である樹脂部807を形成する。樹脂部807は、固定部821および溶融可能部822を有する複数の接合部820を備える。
【0090】
次に、電圧検出導体805を二次成形用金型に装着し、成形材料として、例えば、PBTを用いてインサートモールドし、ケース側板130を形成する。この場合、上述した如く、二次成形用金型に装着された電圧検出導体805は、樹脂部807の上下の固定部821の上面821aが二次成形用金型に挟圧される。このため、樹脂部807に固定された検出線806は、金型内の高さ方向における位置が、確実に、所定の位置に固定される。
また、溶融可能部822のエッジ部822aが二次成形用材料の射出時の熱と圧力により溶融し、二次成形材料と融合する。このため、樹脂部807と二次成形部130’とは、エッジ部822aおよびその近傍において、強固に接合する。
【0091】
ケース本体110および電圧検出導体805が一体化されたケース側板130、131を作製した後は、ステップS2に示された組立を行う。
ステップS2では、先ず、ケース側板130、131に、電池セル140の正極端子140aまたは負極端子140bを接着するための接着剤を塗布しておく。
そして、ケース本体110にケース側板130、131の一方、ここではケース側板131として例示する、を締結部材により締結する。
【0092】
次に、ステップS3において、電池セル140をケース本体110に収納する。
ステップS2においてケース本体110とケース側板131が締結されたケース組立体を、ケース側板131を下側にして、図示しない、取付台にセットする。
そして、ケース本体110内に電池セル140を挿入する。各電池セル140を、ケース本体110内を高さ方向に挿通してケース側板131に形成されたリング状のリブ(図示せず)をガイドにして順次差し込む。
【0093】
次に、ステップS4において、ケース本体110にケース側板130を締結部材により固定する。
これにより、電池セル140の正極端子140aおよび負極端子140bは、ケース側板130、131に塗布された接着剤に接着され、固定される。また、ケース本体110内に収納された各電池セル140は、正・負極端子140a、140bの一部が、ケース側板130の側板貫通孔132から露出する。
【0094】
次に、ステップS5において、バスバー150を、ケース側板130の側板貫通孔132から露出した各電池セル140の正・負極端子140a、140bに溶接する。
先ず、各バスバー150をケース側板130に取り付ける。バスバー150の取り付けは、ケース側板130の固定ガイド130aにバスバー150の位置決め孔155を嵌合する(図11参照)ことによりなされる。これにより、各バスバー150の電極接合部152が、電池セル140の正・負極端子140a、140bの所要の箇所に位置決めされる。
【0095】
この状態で、バスバー150を各電池セル140の正、負極端子140a、140bに接合する。
これには、電池セル140の正、負極端子140a、140に位置合わせされたバスバー150の電極接合部152を、例えば、TIG(Titan Inert Gas)溶接、ガスシールドアーク溶接等により接合する。
【0096】
次に、ステップS6において、バスバー150と、電圧検出導体805の先端部800aとを接続する。具体的には、電圧検出導体805の先端部800aをバスバー150の立ち上がり部159に当接させ、この状態で、例えば、TIG溶接により接合する。
【0097】
次に、ステップS7において、覆い板160をケース側板130にシール部材(図示せず)を介して組み付け、ボルト、ネジ、リベットなどの締結部材161(図4参照)により固定する。シール部材は、弾性を有する円環状のシール部材(例えばゴム製のOリング)であり、ケース側板130に形成された溝に嵌め込まれている。シール部材には液状ガスケットを用いても構わない。
【0098】
次に、ステップS8において、電池セル140が収納され、覆い板160とケース側板130がケース本体110に締結された組立体を上下反転し、ケース側板131を上側に向ける。
【0099】
次に、ステップS9において、バスバー150をケース側板131に取り付ける。
この工程は、ステップS5と同様に行われるものであり、ここでは説明を省略する。
【0100】
次に、ステップS10において、バスバー150と、電圧検出導体805の先端部800aとを接続する。
この工程は、ステップS6と同様に行われるものであり、ここでは説明を省略する。
【0101】
次にステップS11において、他方の覆い板160をケース側板131にシール部材(図示せず)を介して組み付け、ボルト、ネジ、リベットなどの締結部材161により固定する。
この工程は、ステップS7と同様に行われるものであり、ここでは説明を省略する。
【0102】
ステップS11が完了すると1個の蓄電モジュール100が作製される。
ステップS1〜S11を繰り返して行い、蓄電モジュール100aおよび100bを作製する。
次に、ステップS12において、ステップS1〜ステップS11に示された方法により組立てられた蓄電モジュール100a、100bを、それぞれの長手方向が平行になるように並置した状態で、モジュールベース101(図2、3参照)を組み付ける。モジュールベース101は、ボルト、ネジ、リベットなどの締結定手段によりケース本体110の底部に固定される。
【0103】
そして、2つの蓄電モジュール100a、100bの長手方向中央部に制御装置900の筐体を、ボルト、ネジ、リベットなどの締結手段により固定する。
各蓄電モジュール100の接続配線800のコネクタを各蓄電モジュール100の接続端子810および制御装置900の電圧検出用コネクタ912にそれぞれ接続する。制御装置900には、一端が高電位側の蓄電モジュール100aの高電位側に接続され、他端が低電位側の蓄電モジュール100bの負極側に接続されたSDスイッチ700が設けられている。
【0104】
各蓄電モジュール100a、100bに設けられた複数の温度センサ(図示省略)から延びる信号線のコネクタを制御装置900の温度検出用コネクタ913に接続する。さらに、上位制御装置、例えば車両コントローラ30およびモータコントローラ23と通信するための通信線のコネクタを制御装置900のコネクタに接続する。
以上のステップS1〜S12の組み立て作業により、蓄電装置1000が完成する。
【0105】
なお、蓄電モジュール装置を組立てる方法は、上述した方法に限定されるものではなく、例えば、予め、バスバー150をケース側板130、131に組みつけておいたり、インサートモールドにより、ケース側板130、131に一体化したりしておく等、種々、変更することができる。
【0106】
次に、ステップS8において、接続線800のコネクタを蓄電モジュール装置の接続端子810および制御装置900のコネクタ912にそれぞれ接続する。蓄電モジュール装置の各蓄電モジュール100a、100bに設けられた複数の温度センサ(図示省略)から延びる信号線941のコネクタを制御装置900のコネクタ913に接続する。
以上のステップS1〜S8の組み立て作業により、蓄電装置1000が完成する。
【0107】
[実施形態の効果]
以上説明した一実施の形態による蓄電モジュール100a、100bでは、電圧検出導体805において、一次成形部である樹脂部807は、固定部821とエッジ部822aを有する溶融可能部822とを有する接合部820を備えている。
このため、二次成形材料の射出時に、二次成形材料の熱と射出圧力により樹脂部807がエッジ部822aで溶融し、二次成形材料と融合する。これにより、二次成形材料が冷却されると、エッジ部822aおよびその近傍で、一次成形部である樹脂部807と、二次成形部130’とが強固に接合される。この結果、温度や衝撃の厳しい環境下においても、一次成形部と二次成形部とが剥離することを防止することができる。
【0108】
上記一実施の形態では、電圧検出導体805において、一次成形部である樹脂部807は、上面821aを有する固定部821を備えている。固定部821の上面821aは、二次成形金型により押し付けられて、金型内の高さ方向において固定される。このため、樹脂部807に一体化された検出線806は、二次成形部130’の厚さ方向における所定の位置に固定される。これにより、検出線806および樹脂部807が、ケース側板130、131の外面に露出して、破損したり外観を損なったりすることを防止することができる。
【0109】
上記一実施の形態では、固定部821と本体部808との間に形成された溶融可能部822のエッジ部822aは、円形状に形成され、二次成形部130’の外部に露出しない閉じた平面形状に形成されている。
従って、ミスト状のガスが固定部821と二次成形部130’の境界部に流入しても、一次成形材料と二次成形材料が融合したエッジ部822aで遮断され、ケース側板130の内側に流入することを防止することができる。
【0110】
上記一実施の形態では、一次成形部である樹脂部807と、二次成形部130’とは、同一の成形材料、例えば、PBTにより形成されている。
このため、線膨張係数の差により一次成形部と二次成形部とが剥がれるようなことがなく、熱衝撃の激しい環境下で使用しても、高い信頼性を確保することができる。
【0111】
以上説明した一実施の形態による蓄電モジュール100a、100bによると、上記した効果以外にも、以下の効果を奏する。
(1)蓄電モジュール100a、100bは、複数の電池セル140と、複数の電池セル140を収納するケース本体110と、複数の電池セル140を電気的に接続するための複数のバスバー150と、複数の電池セル140のそれぞれの電圧を検出するための電圧検出導体805とを備える。ケース本体110は、少なくとも、複数の電池セル140を両側から挟みこんで支持する一対の樹脂製のケース側板130、131を有する。図6、7に図示されるように、電圧検出導体805は、所定の形状に成形されて、ケース側板130、131と一体化されている。これにより、電圧検出用のリード線を手作業でケース側板130、131に引回して設置するためのスペースおよび煩雑な製造工程が不要となり、蓄電モジュール100を効率的に製造することができる。特に、小型化が要求される蓄電モジュール100に対する電圧検出導体805の設置を容易に行うことができる。
【0112】
(2)複数のバスバー150は、複数の電池セル140を接続するためにケース本体110の外側からケース側板130、131に取り付けられる。これにより、バスバー150と各電池セル140との接続を容易に行うことができる。
【0113】
(3)電圧検出導体805の先端部800aは、複数のバスバー150に接続され、電圧検出導体805の他端部には、電池セル140からの電流を遮断する電流遮断装置(電流遮断部)811が設けられている。電流遮断部811は、制御装置900や接続配線800の異常時にヒューズワイヤを溶断して電池セルからの電流を遮断し、製品を保護する。
電流遮断部811を電圧検出導体805の他端部に設けることにより、例えば、接続配線800に短絡が発生した場合に、電流遮断部811が電圧検出導体805の他端部で電流が遮断されることになる。これにより、蓄電モジュール100全体を保護することができる。この場合、接続配線800および電流遮断部811を取り替えることにより、蓄電モジュール100を再利用することが可能となる。なお、電圧検出導体805は、所定の形状に成形されたうえでケース側板130、131と一体化されているため、電圧検出導体805自体では実質的に短絡が発生しない。
【0114】
(4)電圧検出導体805は、樹脂部807によって所定の形状に維持された状態で樹脂製のケース側板130、131にインサートモールドされることによって、ケース側板130、131と一体化されている。具体的には、電圧検出導体805を、成形された形状を維持するように樹脂部807で固定してサブユニットを作製し、サブユニットをインサートモールドしてケース側板130、131を作製する。サブユニットを作成することにより、電圧検出導体805の形状維持を確実に行うことができ、製造工程において電圧検出導体805の検出線806同士が誤って接触してしまうことを防止できる。
【0115】
(5)ケース側板130、131には、複数の電池セル140に対応する位置に側板貫通孔132が形成され、各電池セル140は、正・負極端子140a、140bがケース側板130、131に接着剤により接着される。これにより、ケース本体110の内部と外部の空間をより確実に分離することができ、信頼性が向上する。また、蓄電モジュール100に加えられる外力、例えば振動等を接着剤により吸収しながら、ケース側板130、131と電池セル140との接続状態を維持することができる。
【0116】
(6)ケース本体110に対して、一対のケース側板130、131の外側を覆うように設けられた金属製の覆い板160をさらに備え、ケース側板130、131は、覆い板160とバスバー150との接触を防止するための衝突防止用の固定ガイド130a、突起部136を有する。例えば、覆い板160に外力が加わってケース本体110の内側に変形した場合、覆い板160は、最初に、ケース側板130、131の表面から突出した固定ガイド130aまたは突起部136に接触する。これにより、例えば鉄製の覆い板160とバスバー150とが接触して短絡が発生することを防止できる。また、突起部136は、先端部800a付近を除くバスバー150の全周囲を囲んでいるため様々な外力に耐えられる。
【0117】
(7)蓄電装置1000は、蓄電モジュール100と、電圧検出導体805と接続された複数の電池セル140の電圧を検出し、複数の電池セル140の蓄電量を制御する制御装置900とを備える。上述したように煩雑な電圧検出線の配線作業を行うことなく蓄電モジュール100を製造することができるので、蓄電装置1000全体を効率的に製造することができる。
【0118】
[実施形態の変形例]
【0119】
以上説明した一実施の形態では、16個の電池セル140を接続した2つの蓄電モジュール100a、100bから構成される蓄電モジュール装置を例示した。しかし、本発明は上述した蓄電モジュール100a、100bの構成や接続方式(直列、並列)に限定されるものではなく、電池セル140の数や電池セル列の数や配列、方向を変えたものに関しても適用される。
【0120】
以上説明した一実施の形態では、電池容器を、ケース本体110、ケース本体110の両側面に配置された一対のケース側板130、131および各ケース側板130、131の外側に配置された覆い板160から構成される構造として例示した。しかし、電池容器はこのような構成部材から形成されるものに限られるものではない。例えば、ケース側板130、131の一方をケース本体110と一体成形により形成してもよい。あるいは、電池収納部を有する下部ケースと、電池収納部を覆う上部ケースの上下分割構造にする等、種々、変形することが可能である。
【0121】
以上説明した一実施の形態では、電圧検出導体805において、一次成形部である樹脂部807の接合部820は、固定部821および溶融可能部822を、それぞれ、円柱形状とした構造として例示した。しかし、円柱形状に限られるものではなく、断面形状、楕円形、多角形状の柱形状としてもよい。また、柱形状ではなく、ドーム形状や、円錐台、多角錐台としてもよい。
【0122】
接合部820における固定部821と溶融可能部822との断面形状を同一形状として例示したが、固定部821と溶融可能部822との断面形状を異なる形状としてもよい。また、固定部821と溶融可能部822との軸心は同軸でなくてもよい。溶融可能部822のエッジ部822aの角度は、直角に限られるものではなく、直角より少し大きい角度としたり、鋭角にしたりしてもよい。また、エッジ部822aは、高さ方向あるいは、検出線806と平行方向に、螺旋状、同心円状あるいは格子状に複数箇所形成するようにしてもよい。
【0123】
接合部820は、検出線806の上下に対向して形成することが好ましい。しかし、断面積の形状や大きさは異なるものとしてもよい。また、各接合部820は、必ずしも、固定部821と溶融可能部822の両方を備えている必要はなく、固定部821のみ、あるいは溶融可能部822のみから構成される接合部820としてもよい。しかし、検出線806の上下に対向して形成された固定部821を、少なくとも1〜2対は形成することが好ましい。
【0124】
以上説明した一実施の形態では、電池セル140として円筒形のリチウムイオン二次電池セルを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。リチウムイオン電池以外に、ニッケル水素電池などの他の電池に関しても適用される。
また、電池セルに限らず、円筒形のリチウムイオン等のキャパシタに適用することができる。
【0125】
以上説明した一実施の形態による蓄電装置1000を、他の電動車両、例えばハイブリッド電車などの鉄道車両、バスなどの乗合自動車、トラックなどの貨物自動車、バッテリ式フォークリフトトラックなどの産業車両などの車両用電源装置に利用することもできる。
【0126】
また、一実施の形態による蓄電装置1000を、コンピュータシステムやサーバシステムなどに用いられる無停電電源装置、自家用発電設備に用いられる電源装置など、電動車両以外の電源装置を構成する蓄電装置にも適用しても構わない。
【0127】
その他、本発明の蓄電モジュールは、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形して構成することが可能であり、要は、複数の蓄電セルが収納されたケース本体と、ケース本体に収納された蓄電セルの電極端子に接続され、蓄電セルの電圧を検出するための接続導体が一体に形成されたケース側板とを備え、ケース側板は、接続導体の少なくとも一部が一体に形成された一次成形部と、一次成形部を覆って形成された二次成形部とを有し、一次成形部は、接続導体の外面を覆う本体部と、本体部から突出状に形成され、二次成形部の外面に露出される露出面を有する固定部と、本体部と固定部の露出面との間に設けられた溶融可能部とを有するものであればよい。
【0128】
また、本発明の蓄電モジュールの製造方法は、複数の蓄電セルが収納されたケース本体に、蓄電セルの電極端子に接続され、蓄電セルの電圧を検出するための接続導体が一体に形成されたケース側板が取り付けられた蓄電モジュールの製造方法であって、
ケース側板を形成する工程は、接続導体を覆う本体部と、本体部から突出状の固定部と、固定部における本体部側に設けられた溶融可能部を有する一次成形体を成形する工程と、一次成形体の固定部を固定した状態で、一次成形体の外面を覆う二次成形体を成形する工程とを含むものであればよい。
【符号の説明】
【0129】
100a、100b 蓄電モジュール、
110 ケース本体、
140 電池セル
140a 正極端子
140b 負極端子
150、150a、150b バスバー
130、131 ケース側板、
130’ 二次成形部
160 覆い板
805 電圧検出導体
806 検出線
807 樹脂部
808 本体部
820 接合部
821 固定部
821a 上面
822 溶融可能部
822a エッジ部
900 制御装置
1000 蓄電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電セルが収納されたケース本体と、
前記ケース本体に収納された前記蓄電セルの電極端子に接続され、前記蓄電セルの電圧を検出するための接続導体が一体に形成されたケース側板とを備え、
前記ケース側板は、前記接続導体の少なくとも一部が一体に形成された一次成形部と、前記一次成形部を覆って形成された二次成形部とを有し、
前記一次成形部は、前記接続導体の外面を覆う本体部と、前記本体部から突出状に形成され、前記二次成形部の外面に露出される露出面を有する固定部と、前記本体部と前記固定部の露出面との間に設けられた溶融可能部とを有することを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電モジュールにおいて、前記一次成形部と前記二次成形部は同一の樹脂材料により形成されていることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蓄電モジュールにおいて、前記一次成形部の本体部は、前記接続導体の上下両面を覆って形成され、前記固定部および前記溶融可能部は、前記接続導体の上下両面に形成されていることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電モジュールにおいて、前記接続導体の上下両面を覆って形成された前記固定部および前記溶融可能部は、同軸上に形成されていることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電モジュールにおいて、前記溶融可能部は、エッジ部を含み、前記エッジ部は、前記二次成形部の外部に露出しない閉じた平面形状に形成されていることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか1項に記載の蓄電モジュールにおいて、前記固定部は、柱状に形成され、前記溶融可能部は、平面形状が前記固定部より大きく、高さが前記固定部よりも低い柱状に形成されていることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の蓄電モジュールにおいて、前記接続導体は前記二次成形部の外部に突き出す導出部を有することを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の蓄電モジュールにおいて、前記一次成形部は前記固定部および前記溶融可能部を複数有することを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項9】
複数の蓄電セルが収納されたケース本体に、前記蓄電セルの電極端子に接続され、前記蓄電セルの電圧を検出するための接続導体が一体に形成されたケース側板が取り付けられた蓄電モジュールの製造方法であって、
前記ケース側板を形成する工程は、
前記接続導体を覆う本体部と、前記本体部から突出状の固定部と、前記固定部における前記本体部側に設けられた溶融可能部を有する一次成形体を成形する工程と、
前記一次成形体の前記固定部を固定した状態で、前記一次成形体の外面を覆う二次成形体を成形する工程とを含むことを特徴とする蓄電モジュールの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の蓄電モジュールの製造方法において、前記固定部は柱状に形成され、前記溶融可能部は、平面形状が前記固定部より大きく、高さが前記固定部よりも低い柱状に形成されていることを特徴とする蓄電モジュールの製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−243515(P2012−243515A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111548(P2011−111548)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】