説明

蓄電装置

【課題】 単電池間の電圧を検出できる構成において、無駄な領域を省略して小型化することのできる蓄電装置を提供する。
【解決手段】 電解質層と、電解質層を介して積層され、積層方向視において略重なる複数の電極体と、蓄電装置内で積層方向に延び、一端が蓄電装置外に露出するとともに、他端側が互いに異なる電極体に電気的に接続された複数の導電部材とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電極体が電解質層を介して積層された二次電池等の蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)及び燃料電池車(FCV)等では、モータ駆動用の電池として二次電池が用いられている。この場合には、高出力及び高エネルギ密度が要求されるために、複数の単電池を積層して電気的に直列に接続された組電池が用いられている。
【0003】
この組電池においては、各単電池が正常に機能しているか否かを監視するために、単電池毎に電圧を検出するタブ(以下、電圧検出タブと称す)を設けている(特許文献1等参照)。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のバイポーラ型電池では、各単電池の正極層に、突形状の電圧検出タブを一体的に設けており、これらの電圧検出タブが積層方向視において互いに重ならないように配置している。
【特許文献1】特開2005−11658号公報(段落0014、図2,3等)
【特許文献2】特開2006−127857号公報(段落0032−0036、図15,16等)
【特許文献3】特開2006−156357号公報(段落0022−0029、図2等)
【特許文献4】特開2002−231300号公報(段落0030,0031、図1,2等)
【特許文献5】特開2005−235428号公報(段落0014,0015、図2等)
【特許文献6】特開2004−158222号公報(段落0058,0059、図7等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のバイポーラ型電池では、以下に説明する不具合が生じる。
【0006】
各正極層に一体的に形成された電圧検出タブは、各正極層に対して、積層方向と直交する方向に突出しており、この突出した分のスペースを確保するために、電池が大型化してしまう。言い換えれば、積層方向と直交する面内において、正極層及び電圧検出タブが形成されていない領域は、無駄な領域となってしまう。
【0007】
また、複数の電圧検出タブが積層方向視において互いに重ならないように配置しているため、互いに異なる形状のバイポーラ電極を形成しなければならず、製造工程が複雑になってしまう。
【0008】
そこで、本発明の主な目的は、単電池間の電圧を検出できる構成において、無駄な領域を省略して小型化することのできる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願第1の発明である蓄電装置は、電解質層と、電解質層を介して積層され、積層方向視において略重なる複数の電極体と、蓄電装置内で積層方向に延び、一端が蓄電装置外に露出するとともに、他端側が互いに異なる電極体に電気的に接続された複数の導電部材とを有することを特徴とする。
【0010】
ここで、導電部材は、導電性材料で形成された導電部と、導電部を覆う絶縁部とで構成することができる。また、複数の導電部材は、積層方向と直交する面内において、所定方向に並んで配置することができる。
【0011】
また、複数の導電部材のうち、一方の導電部材の端部を、蓄電装置の積層方向における一端面にて露出させ、他方の導電部材の端部を、蓄電装置の積層方向における他端面にて露出させることができる。ここで、複数の導電部材を含む、積層方向における断面において、複数の導電部材を対称(点対称又は線対称)に配置することができる。
【0012】
本願第2の発明は、複数の電極体が電解質層を介して積層された蓄電ユニットを複数有し、これらの蓄電ユニットが電流取り出し部材を介して積層された蓄電装置であって、蓄電装置内で積層方向に延び、複数の蓄電ユニットにおける等電位面を電気的に接続するとともに、一端が蓄電装置外に露出した複数の導電部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の導電部材を、積層方向において互いに異なる位置の電極体に接続することにより、蓄電装置を構成する単電池毎の電圧を検出することができる。
【0014】
しかも、積層方向視で複数の電極体が略重なるように配置した蓄電装置の構成において、この蓄電装置内で導電部材を積層方向に延ばしているため、蓄電装置内に、導電部材の形成に伴う無駄な領域が発生するのを抑制することができる。これにより、蓄電装置の大型化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1である蓄電装置としてのバイポーラ型電池(組電池)について、図1〜図3を用いて説明する。ここで、図1は、バイポーラ型電池の外観斜視図であり、図2は、バイポーラ型電池の一部の概略構成を示す断面図であり、図1のA−A断面図を示す。また、図3は、図2に示す構成を詳細に示した図である。
【0017】
以下に説明する本発明の実施例であるバイポーラ型電池は、車両等に搭載することができる。
【0018】
本実施例のバイポーラ型電池100は、図1及び図2に示すように、複数の単電池1を積層して、電気的に直列に接続したものである。ここで、単電池1とは、後述するように、固体電解質層と、この固体電解質層の両側に配置された正極層及び負極層とによって構成される発電要素である。
【0019】
また、バイポーラ型電池100において、積層方向(Z方向)における両端面には、図1に示すように、電流を取り出すための正極タブ15及び負極タブ16が設けられている。正極タブ15及び負極タブ16は、モータ等の電気機器(不図示)に接続されている。
【0020】
図2及び図3を用いて、バイポーラ型電池100の具体的な構成について説明する。
【0021】
図3において、集電体11の互いに向かい合う面のうち、一方の面には正極層12が形成され、他方の面には負極層13が形成されている。正極層12及び負極層13を備えた集電体11によって、バイポーラ電極(電極体)10が構成される。
【0022】
集電体11は、積層方向視において略矩形状(製造誤差を含む)に形成されている。また、正極層12及び負極層13は、集電体11の両面における概ね全体に形成されている。
【0023】
なお、本実施例では、バイポーラ電極10を用いた場合について説明するが、これに限るものではない。すなわち、バイポーラ電極10以外の構成の電極を用いることもできる。具体的には、集電体の両面に同一の電極層(正極層又は負極層)が形成された電極を用いたり、集電体の片面のみに電極層が形成された電極を用いたりすることができる。
【0024】
また、本実施例では二次電池について説明するが、蓄電装置としての電気二重層キャパシタ(コンデンサ)にも本発明を適用することができる。このキャパシタは、複数の正極及び負極を、セパレータを介在させて交互に重ね合わせたものである。そして、このキャパシタにおいては、例えば、集電体としてアルミ箔、正極活物質及び負極活物質として活性炭、セパレータとしてポリエチレンからなる多孔質膜を用いることができる。
【0025】
集電体11は、例えば、アルミニウム箔で形成したり、複数の金属で形成したりすることができる。また、金属表面にアルミニウムを被覆させたものを集電体11として用いることもできる。
【0026】
なお、複数の金属泊を貼り合わせた、いわゆる複合集電体を用いることもできる。この複合集電体を用いる場合には、正極用集電体の材料としてアルミニウム等を用い、負極用集電体の材料としてニッケルや銅等を用いることができる。また、複合集電体としては、正極用集電体及び負極用集電体を直接接触させたものを用いたり、正極用集電体及び負極用集電体の間に導電性を有する層を設けたものを用いたりすることができる。
【0027】
各電極層12、13には、正極又は負極に応じた活物質が含まれている。また、各電極層12、13には、必要に応じて、導電助剤、バインダ、イオン伝導性を高めるための無機電解質、高分子ゲル電解質、高分子電解質、添加剤などが含まれる。各電極層12、13を構成する材料については、公知の材料を用いることができる。
【0028】
例えば、ニッケル−水素電池では、正極層12の活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極層13の活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlMnCo(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。また、リチウム二次電池では、正極層12の活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極層13の活物質として、カーボンを用いることができる。また、導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維又はカーボンナノチューブを用いることができる。
【0029】
積層方向において隣り合うバイポーラ電極10の間には、固体電解質層14が配置されている。具体的には、固体電解質層14は、一方のバイポーラ電極10の正極層12と、他方のバイポーラ電極10の負極層13との間に配置されている。これらの固体電解質層14は、積層方向視において、略矩形状(製造誤差を含む)に形成され、集電体11と略重なるように配置されている。必要に応じて、反応面積を大きくすることでイオン伝導度を高め、抵抗を下げるために固体電解質は各電極層12,13に含ませてもよい。
【0030】
固体電解質層14としては、無機固体電解質や高分子固体電解質を用いることができる。無機固体電解質としては、例えば、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩、硫化リン化合物を用いることができる。また、高分子固体電解質としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)等の高分子化合物にアルカリ金属塩を複合化した電解質を用いることができる。ここで、アルカリ金属塩としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)を用いることができる。なお、無機固体電解質及び高分子固体電解質を併用することもできる。
【0031】
本実施例では、図1に示すように、バイポーラ型電池100内に複数の導電層(導電部材)2a〜2hが形成されている。これらの導電層2a〜2hの一端は、バイポーラ型電池100の上面(積層方向における一端面)において露出している。具体的には、正極タブ15の上面において露出している。
【0032】
正極タブ15上で露出している導電層2a〜2hの端部には、フレキシブルプリント基板等の配線板(不図示)が取り付けられる。ここで、配線板は、導電層2a〜2hに対応した複数の配線を有しており、各配線は、対応する導電層2a〜2hに電気的及び機械的に接続される。この配線板(複数の配線)は、電圧検出回路(不図示)に接続されている。
【0033】
ここで、図1〜図3では、導電層2a〜2hを示しているが、実際には、バイポーラ型電池100において、積層される単電池1の数に応じた数の導電層が形成されている。言い換えれば、導電層2a〜2hを用いて各単電池1の電圧を検出できる構成となっている。
【0034】
すなわち、配線板に接続された電圧検出回路において、単電池1間の電圧を検出することができる。ここで、制御回路(不図示)は、電圧検出回路で検出された電圧値に基づいて、充電電圧及び放電電圧を単電池毎に制御することができる。すなわち、制御回路は、電圧検出回路を介して単電池の電圧を検出し、この検出電圧に基づいて充放電時の電流を単電池毎に調整することができる。
【0035】
なお、本実施例のバイポーラ型電池100を車両に搭載した場合には、車両の駆動を制御する制御回路によって、上述した単電池の充放電制御を行うことができる。
【0036】
導電層2a〜2hは、図2及び図3に示すように、バイポーラ型電池100の積層方向(Z方向)に延びており、導電層2a〜2hの積層方向における長さ(以下、単に長さと称す)は、互いに異なっている。すなわち、各導電層2a〜2hは、積層方向において互いに異なる位置に配置されたバイポーラ電極10(集電体11)に電気的及び機械的に接続されている。
【0037】
具体的には、バイポーラ型電池100の最も側面側に位置する導電層2aは、図2及び図3に示すように、バイポーラ型電池100の上面(正極タブ15が設けられた面)から2層目に位置する単電池1(集電体11)に接続されている。また、導電層2aと隣り合う導電層2bは、バイポーラ型電池100の上面から3層目に位置する単電池1(集電体11)に接続されている。さらに、導電層2cは、バイポーラ型電池100の上面から4層目に位置する単電池1(集電体11)に接続されている。他の導電層2d〜2hについては、上記と同様に、バイポーラ型電池100の上面から5層目以降の単電池1(集電体11)に接続されている。
【0038】
導電層2aは、図2及び図3に示すように、積層方向(Z方向)に延びる導電部2a1と、導電部2a1を覆う絶縁部2a2とで構成されている。導電部2a1としては、導電性を有する材料を用いればよく、例えば、金属を用いることができる。また、絶縁部2a2としては、接続される集電体11以外の部材(具体的には、電極層12、13や固体電解質層14)に対して導電部2a1を電気的に絶縁状態にできる材料を用いればよく、例えば、エポキシ樹脂を用いることができる。なお、他の導電層2b〜2hの構成も、上述した導電層2aの構成と同様である。
【0039】
なお、本実施例では、図1に示すように、バイポーラ型電池100の一側面(短辺側)の近傍において、この一側面に沿って導電層2a〜2hを形成したが、これに限るものではない。すなわち、導電層2a〜2hは、バイポーラ型電池100内のいかなる位置に形成してもよい。
【0040】
例えば、バイポーラ型電池100の長辺に相当する側面に沿って導電層2a〜2hを形成することができる。また、図4の一点鎖線又は二点鎖線に沿って導電層2a〜2hを形成することもできる。ここで、一点鎖線は、バイポーラ型電池100のX−Y平面(積層方向と直交する面)において、短辺の中心を通り、長辺方向に延びる線である。また、二点鎖線は、バイポーラ型電池100のX−Y平面(積層方向と直交する面)において、長辺の中心を通り、短辺方向に延びる線である。
【0041】
ただし、導電層2a〜2hに接続される配線板のレイアウトを考慮すると、本実施例のように導電層2a〜2hを配置することが好ましい。
【0042】
次に、本実施例のバイポーラ型電池100の製造方法について、説明する。ここで、以下に説明する製造方法は、一例であり、上述したバイポーラ型電池100の構成が得られるものであれば、いかなる製造方法を用いることもできる。
【0043】
本実施例のバイポーラ型電池100は、導電層2a〜2hが形成される領域を除いて、集電体11、電極層12,13及び固体電解質層14を、インクジェット方式等を用いた塗布によって形成することができる。
【0044】
すなわち、集電体11、電極層12,13及び固体電解質層14のそれぞれを形成する材料を、順に塗布することにより、単電池1を形成する。ここで、導電層2a〜2hを形成する領域に対しては、マスク等の遮蔽部材を用いることにより、集電体11等が形成されないようにすることができる。
【0045】
上述した塗布工程が完了した状態においては、導電層2a〜2hが形成される部分が開口部として存在していることになる。
【0046】
次に、上述した開口部の内周面に絶縁部2a2を形成する。そして、絶縁層2a2の内側に、導電性材料を充填することによって、導電部2a1を形成する。これにより、本実施例のバイポーラ型電池100を得ることができる。
【0047】
本実施例によれば、バイポーラ型電池100内において、単電池1の電圧検出に用いられる導電層2a〜2hを積層方向に延びるように形成しているため、特許文献1に記載のバイポーラ型電池のように、突形状の電圧検出タブを形成する必要が無くなる。これにより、電圧検出タブの形成に伴う無駄な領域が発生するのを防止することができ、バイポーラ型電池100を小型化することができる。
【0048】
また、複数の単電池1を積層した構成のバイポーラ型電池100では、積層方向の両端側から、狭持部材によって互いに向かい合う方向の加圧力を与えることによって、充放電に伴う熱膨張等を抑制するようにしている。
【0049】
ここで、特許文献1(特に、図2)に記載のバイポーラ型電池では、電圧検出タブが形成されていない領域において、積層方向で隣り合う電解質が、狭持部材による加圧力を受けて変形してしまうことがある。一方、本実施例のバイポーラ型電池100では、電極層12、13及び固体電解質14が積層方向視において略重なるように配置されているため、すべての単電池1に対して略均等な加圧力を与えることができる。
【0050】
次に、本実施例の変形例であるバイポーラ型電池について、図5を用いて説明する。図5は、バイポーラ型電池の断面図であり、実施例1で説明した図2に対応する図である。以下、本変形例のバイポーラ型電池200について、具体的に説明する。なお、実施例1で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用いている。
【0051】
実施例1では、バイポーラ型電池100の積層方向における一端面(上面)において、すべての導電層2a〜2hの端部が露出しているが、本変形例では、バイポーラ型電池200の積層方向における両端面(上下面)を用いて、導電層2a〜2zの端部を露出させている。
【0052】
具体的には、バイポーラ型電池200の積層方向における中心に対して上方に位置する第1の層群L1では、実施例1と同様に、バイポーラ型電池200の最も側面側(図5中の左側)に位置する導電層2aから順に積層方向における長さが長くなっている。そして、これらの導電層2a〜2dは、一端がバイポーラ型電池200の上面において露出しているとともに、他端が積層方向において互いに異なる位置の単電池1に電気的及び機械的に接続されている。
【0053】
一方、バイポーラ型電池200の上記中心に対して下方に位置する第2の層群L2では、バイポーラ型電池200の最も側面側(図5中の右側)に位置する導電層2zから順に積層方向における長さが長くなっている。そして、これらの導電層2w〜2zは、一端がバイポーラ型電池200の下面において露出しているとともに、他端が積層方向において互いに異なる位置の単電池1に電気的及び機械的に接続されている。
【0054】
ここで、すべての導電層2a〜2zは、バイポーラ型電池200における互いに異なる単電池1に接続されている。
【0055】
本変形例では、図5に示すように、導電層2a〜2zを含む断面において、第1の層群L1中の導電層2a〜2dと、第2の層群L2中の導電層2w〜2zとが、特定点(図5に示す断面の中心点)を基準として点対称に配置されている。本変形例のように、複数の導電層2a〜2zを形成すれば、第1の層群L1を構成する積層体と、第2の層群L2を構成する積層体とを別々に形成しておき、これらを重ねることによって、本変形例のバイポーラ型電池200を得ることができる。
【0056】
なお、本変形例では、導電層2a〜2d及び導電層2w〜2zを点対称に配置したが、これに限るものではなく、線対称に配置することもできる。具体的には、図5に示す断面の中心点を通り、X方向に延びる線を基準として、線対称に配置することができる。
【0057】
本変形例のバイポーラ型電池200は、実施例1で説明した製造方法と同様の方法によって製造することができる。また、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0058】
本変形例では、上述したように、第1及び第2の層群L1、L2が点対称の構成となっているため、第1及び第2の層群L1、L2のうちの一方だけを形成するだけでよい。このため、バイポーラ型電池200を構成するすべての単電池1を順に形成する場合に比べて、バイポーラ型電池200を容易に製造することができる。
【0059】
また、本変形例では、バイポーラ型電池200の中心層に対して、複数の導電層2a〜2zを両端側に振り分けているため、実施例1で説明した構成(図2及び図3)に比べて、導電層の積層方向における長さを短くすることができる。例えば、実施例1の構成では、バイポーラ型電池100の端に位置する導電層の長さが最も長くなり、バイポーラ型電池100の厚さと概ね等しい長さになる。一方、本変形例では、最も長い導電層は、バイポーラ型電池200の厚さに対して略半分の長さになる。
【0060】
本変形例のように、導電層の長さを短くすることで、導電層2a〜2zの形成領域を低減することができ、導電層2a〜2zの形成に伴うバイポーラ型電池200の強度低下を抑制することができる。
【0061】
なお、上述した実施例及び変形例において、互いに隣り合う導電層の間隔は、適宜設定することができる。実施例1の構成では、バイポーラ型電池100のX−Y平面内に、複数の導電層2a〜2hを配置できればよく、この間隔は適宜設定することができる。また、本変形例の構成では、バイポーラ型電池200のX方向における幅全体を用いて、第1の層群L1中の導電層2a〜2d(又は、第2の層群L2中の導電層2w〜2z)を等間隔に配置することができる。
【0062】
また、上述した実施例及び変形例では、バイポーラ型電池のX方向における一端から中心に向かって、導電層の長さを長くしているが、これに限るものではない。すなわち、複数の導電層が互いに異なる単電池1(集電体11)に接続されていればよく、各導電層の長さと各導電層を形成する位置との関係は、適宜設定することができる。
【0063】
また、上述した実施例及び変形例では、導電部2a1及び絶縁部2a2で構成された導電層2aを用いた場合について説明したが、これに限るものではない。すなわち、バイポーラ型電池内を貫通して、特定の単電池1(集電体11)に電気的及び機械的に接続されるものであって、この単電池1からの電圧を取り出せるものであれば、いかなる構成としてもよい。
【0064】
例えば、バイポーラ型電池100内に、互いに異なる単電池1まで延びる複数の開口部を形成し、これらの開口部内に、絶縁層で覆われた金属ピン(導電部材)を挿入することができる。この場合には、金属ピンの先端が、単電池1(集電体11)に電気的及び機械的に接続される。なお、開口部内に挿入される金属ピンの長さ(積層方向の長さ)は、互いに異なることになる。
【0065】
ここで、絶縁層で覆われた金属ピンを用いた場合には、固体電解質層14の代わりに、ゲル状又は液状の電解質を用いることもできる。
【0066】
ここで、ゲル状又は液状の電解質を用いる場合には、積層方向において隣り合う集電体11の間にシール材(不図示)を配置して、電解質が外部(単電池1外)に漏れないようにする必要がある。すなわち、シール材及び集電体11によって、電解質が収容される空間を密閉状態とする必要がある。
【0067】
また、絶縁層で覆われた金属ピンを用いた場合には、金属ピンを冷却することにより、バイポーラ型電池内の冷却を行うことも可能である。具体的には、金属ピンに対して、冷却媒体(例えば、冷却用の空気や液体)を接触させることにより、金属ピンを介したバイポーラ型電池内の冷却を行うことができる。一方、金属ピンを温めることにより、バイポーラ型電池を温める(昇温する)ことも可能である。具体的には、金属ピンに対して、昇温用の熱交換媒体を接触させることにより、金属ピンを介してバイポーラ型電池を温めることができる。
【0068】
単電池1を積層した構成のバイポーラ型電池では、充放電等によって、積層方向と直交する面内(X−Y平面内)の中心部において、最も温度が高くなる傾向がある。また、積層方向において、中心層に位置する単電池1が、外層側に位置する単電池1よりも温度が高くなる傾向がある。
【0069】
この場合において、上述したように、金属ピンを用いた冷却(又は昇温)を行うことによって、積層方向と直交する面内(X−Y平面内)での温度分布のバラツキを抑制することができる。また、積層方向における温度分布のバラツキを抑制することもできる。ここで、図4に示す一点鎖線又は二点鎖線に沿って、金属ピンを配置すれば、X−Y平面内での温度分布のバラツキや、積層方向における温度分布のバラツキを効率良く抑制することができる。
【0070】
一方、本実施例及び変形例では、導電層の長さが互いに異なっているが、等しい長さに形成することもできる。具体的には、すべての導電層の長さを、バイポーラ型電池の厚さ(Z方向の長さ)と略等しい長さにすることができる。
【0071】
このように構成すれば、バイポーラ型電池におけるすべての電極体の面積を略等しくすることができ、バイポーラ型電池内の単電池1の容量を略等しくすることができる。また、上述したインクジェット方式等を用いた塗布方法においては、バイポーラ型電池のすべての層(単電池1)に対して同一のパターンで塗布することができる。
【0072】
ここで、導電層の長さをバイポーラ型電池の厚さと略等しくする場合には、導電層の全体を導電部及び絶縁部で構成してもよいが、導電層の一部を導電部及び絶縁部で構成し、他の部分を絶縁部だけで構成することもできる。すなわち、1つの導電層のうち、電圧検出の対象となる特定の単電池1(集電体11)までの部分を導電部2a1及び絶縁部2a2で構成し、この特定の単電池1から最下層の単電池1までの部分を絶縁部だけで構成することができる。この構成では、導電部2a1の量を低減することができる。
【実施例2】
【0073】
次に、本発明の実施例2であるバイポーラ型電池について、図6を用いて説明する。ここで、図6は、バイポーラ型電池の概略構成を示す断面図である。
【0074】
本実施例のバイポーラ型電池300は、図6に示すように、複数の電池モジュール(蓄電ユニット)30を、電流取り出し板20a〜20cを介して積層したものである。各電池モジュール30は、複数の単電池1を積層した構成であり、単電池1の構成は、実施例1で説明した単電池1の構成(図2、3参照)と同様である。
【0075】
実施例1では、本実施例の電池モジュール30に相当する構成について説明したが、本実施例では、複数の電池モジュール30を積層し、これらの電池モジュール30のうち、等電位の単電池1を導電層2a〜2zによって電気的に接続している。以下、具体的に説明する。
【0076】
複数の電池モジュール30は、互いに同一の構成となっており、各電池モジュール30において、256[V]の出力が得られるように構成されている。また、複数の電池モジュール30は、各電流取り出し板20a〜20cを境界として、等電位面が対称となるように配置されている。
【0077】
なお、図6では、3つの電池モジュール30を積層した構成について示しているが、電池モジュール30の数は適宜設定することができる。
【0078】
図6において、P1〜Pnは、導電層2a〜2zが形成されている位置を示す。ここで、導電層2a〜2zは、実施例1で説明した導電層2aと同様の構成である。すなわち、導電層2a〜2zは、導電性材料で形成された導電部と、この導電部を覆う絶縁部とで構成されている。なお、実施例1でも説明したように、導電層2a〜2zの代わりに、絶縁層で覆われた金属ピンを用いることもできる。
【0079】
各導電層2a〜2zは、バイポーラ型電池300の積層方向における一端面から他端面に延びている。すなわち、各導電層2a〜2zは、各電池モジュール30の単電池1や電流取り出し板20a〜20cを貫通している。
【0080】
また、各導電層2a〜2zの一端は、バイポーラ型電池300の上面(図6の最も上部に位置する電流取り出し板20aの上面)において露出している。この露出した部分は、配線板(不図示)に設けられた複数の配線に電気的及び機械的に接続される。
【0081】
ここで、各導電層2a〜2zは、図6に示す黒丸(●)で示す位置において、各電池モジュール30の単電池1(具体的には、集電体)に電気的及び機械的に接続されている。なお、電流取り出し板20a上に位置する黒丸では、導電層2a〜2zが配線板と電気的及び機械的に接続されていることを示している。また、各導電層2a〜2zのうち、黒丸以外の部分は、電気的に絶縁状態となっている。
【0082】
電流取り出し板20a〜20dのうち、電流取り出し板20a、20cは配線を介して互いに接続されており、電流取り出し板20b、20dは配線を介して互いに接続されている。すなわち、電圧値の等しい電流取り出し板が互いに接続されている。
【0083】
本実施例のバイポーラ型電池300も、実施例1で説明した方法によって製造することができる。ここで、各電池モジュール30を連続して形成することによって、バイポーラ型電池300を製造することもできるが、複数の電池モジュール30を別々に形成しておき、これらの電池モジュール30を積層させてもよい。
【0084】
本実施例によれば、各導電層2a〜2zを、複数の電池モジュール30における等電位の単電池1に接続し、バイポーラ型電池300の上面から等電位の電圧を取り出しているため、配線板の数を減らすことができる。すなわち、電池モジュール30毎に、各単電池1の電圧を取り出すための配線板を設ける場合に比べて、配線板の数を減らすことができる。本実施例では、1つの配線板を用いるだけでよい。
【0085】
また、本実施例では、複数の電池モジュール30を、電流取り出し板20a〜20dを介して積層しているが、このような構成とすることによって、以下に説明する利点が得られる。
【0086】
ここで、各単電池1をX−Y平面内で大型化して積層すれば、この組電池において、高出力を得ることができるが、単電池1を大型化した分だけ、電流ロスが生じてしまう。すなわち、単電池1が大型化すると、電流取り出し板も大型化することになるが、電流取り出し板における抵抗値が増加することで、電流取り出し板を流れる電流量が低下してしまう。
【0087】
そこで、本実施例のように、単電池1が積層された電池モジュール30を複数用意しておき、これらの電池モジュール30を、電流取り出し板20a〜20dを介して積層することで、単電池1の大型化を抑制でき、単電池1の大型化に伴う電流ロスを低減することができる。
【0088】
なお、本実施例では、各導電層2a〜2zを、バイポーラ型電池300の積層方向における一端から他端まで形成しているが、これに限るものではない。すなわち、複数の電池モジュール30における等電位の単電池1を、1つの導電層によって電気的に接続できるものであればよい。
【0089】
例えば、図6に示す導電層2aでは、図中最も下に位置する電池モジュール30を貫通しているが、電気的に接続される単電池1の位置(黒丸で示す位置)まで導電層を形成するだけでもよい。言い換えると、この単電池1以外の単電池1については、導電層2aを形成しなくてもよい。
【0090】
なお、本実施例では、1つの電池モジュール30における図6に示す断面において、導電層2a〜2zの単電池1との接続部分(図6の黒丸で示す部分)は、特定点(図6に示す電池モジュール30の断面における中心点)を基準として点対称に配置されているが、上記特定点を通り、X方向に延びる線を基準として線対称に配置することもできる。また、上述した実施例1、2では、導電層がX−Y平面(積層方向と直交する面)に対して直交しているが、X−Y平面に対して傾斜していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例1であるバイポーラ型電池の外観斜視図である。
【図2】実施例1であるバイポーラ型電池の部分断面を示す概略図である。
【図3】実施例1であるバイポーラ型電池の部分断面を示す詳細な図である。
【図4】実施例1において、導電層の形成位置を説明するための図である。
【図5】実施例1の変形例であるバイポーラ型電池の部分断面を示す概略図である。
【図6】本発明の実施例2であるバイポーラ型電池を示す概略図である。
【符号の説明】
【0092】
1:単電池
2a〜2h:導電層
2a1、2b1、2c1:導電部
2a2、2b2、2c2:絶縁部
10:バイポーラ電極(電極体)
11:集電体
12:正極層
13:負極層
14:固体電解質層
20a〜20d:電流取り出し板
30:電池モジュール
100、200、300:バイポーラ型電池(蓄電装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、
該電解質層を介して積層され、積層方向視において略重なる複数の電極体と、
該蓄電装置内で積層方向に延び、一端が該蓄電装置外に露出するとともに、他端側が互いに異なる前記電極体に電気的に接続された複数の導電部材とを有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記導電部材は、導電性材料で形成された導電部と、該導電部を覆う絶縁部とを有することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記複数の導電部材は、積層方向と直交する面内において、所定方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記複数の導電部材のうち、一方の導電部材の端部が、該蓄電装置の積層方向における一端面にて露出し、他方の導電部材の端部が、該蓄電装置の積層方向における他端面にて露出していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記複数の導電部材を含む、積層方向における断面において、前記複数の導電部材が対称に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の蓄電装置。
【請求項6】
複数の電極体が電解質層を介して積層された蓄電ユニットを複数有し、これらの蓄電ユニットが電流取り出し部材を介して積層された蓄電装置であって、
該蓄電装置内で積層方向に延び、前記複数の蓄電ユニットにおける等電位面を電気的に接続するとともに、一端が該蓄電装置外に露出した複数の導電部材を有することを特徴とする蓄電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−251305(P2008−251305A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90151(P2007−90151)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】