説明

蓄電装置

【課題】バッテリコントローラを含む制御装置の接地をアース線を使用することなく行う。
【解決手段】電池モジュール100は、内部に複数の電池セル300を収容した導電性の電池収納ケーシング110を有し、電池収納ケーシング110はモジュールベース220を介して車体500に取り付けられている。電池収納ケーシング110の上面にはバッテリコントローラ300とセルコントローラ200を含む制御装置900が装着されている。電池モジュール100と制御装置900とにより蓄電装置1000を構成する。バッテリコントローラ300とセルコントローラ200は導電性のベース910に実装され、負極端子がベース910に接地されている。したがって、制御装置900のバッテリコントローラ300とセルコントローラ200の負極端子の電位は車体500の接地電池と等しくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池収納ケーシング内部に複数の電池セルを収容した電池モジュールとその管理回路を含む蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回転電機を駆動源として用いる電気自動車や、内燃機関と回転電機とを併用するハイブリッド型自動車が実用化されている。このような車両においては、回転電機に電気エネルギーを供給するための電池が搭載され、搭載される電池としては、例えば、繰り返し充放電が可能なニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池が用いられる。
【0003】
通常、二次電池は、複数の電池セルを積層した電池モジュールとして構成され、電池収納ケーシング底面がモジュールベースを介して車体に取り付けられ、電池収納ケーシング上面や側面など近傍に、蓄電状況の管理のためにバッテリコントローラが取り付けられる(特許文献1)。
バッテリコントローラは電気回路を内蔵しており、その正常な作動のためにはアースをとる必要があり、バッテリコントローラとモジュールベースとを太いアース線で接続することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許公開2004−319304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリコントローラとモジュールベースとを太いアース線で接続した場合、アース線自体の部品原価が高価であるとともに、その組み立て作業は繁雑である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1の発明による蓄電装置は、シャーシに電気的に接続される導電性の電池収納ケーシングと、前記電池収納ケーシングの内部に保持された複数の電池セルと、前記複数の電池セルを管理する回路を含み、前記回路の負極端子と前記電池収納ケーシングが電気的に導通するように前記電池収納ケーシングに装着された制御装置とを備えることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1記載の蓄電装置において、前記電池収納ケーシングを前記シャーシに電気的に接続しつつ固定する搭載部材をさらに有することを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項1記載の蓄電装置において、電池収納ケーシングは、導電性のロワベースと、前記ロワベースに上方から連結され、両側面が開放された環状に形成されたケーシング本体を形成する導電性のアッパベースと、前記ケーシング本体の側面を塞ぎつつ前記電池セルを保持するサイドプレートとを備えていることを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項1記載の蓄電装置において、電池収納ケーシングは、両側面が開放された環状部材と、前記環状部材の側面を塞ぎつつ前記電池セルを保持するサイドプレートとを備えていることを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、請求項4記載の蓄電装置において、前記電池収納ケーシングを前記シャーシに電気的に接続しつつ固定する搭載部材をさら有することを特徴とする。
(6)請求項6の発明は、請求項5記載の蓄電装置において、前記複数の電池セルから成る組電池を収納した前記電池収納ケーシングを複数有し、前記複数の電池収納ケーシングの上面に跨って前記制御装置を装着することを特徴とする。
(7)請求項7の発明は、請求項1乃至6項のいずれか1項に記載の蓄電装置において、前記電池収納ケーシングはアルミニウムダイキャストにより形成されていることを特徴とする。
(8)請求項8の発明による電気車は、電力により走行駆動を発生する走行駆動装置と、前記電力を走行駆動装置に供給する請求項4乃至7のいずれか1項載の蓄電装置と、前記走行駆動装置が設けられる車体とを有し、前記ケーシング本体は、前搭載部材を介して前記車体に装着され、前記車体は接地電位に設定されていることを特徴とする。
(9)請求項9の発明による蓄電装置は、並設される導電性の第1および第2の電池収納ケーシングと、前記第1および第2の電池収納ケーシングの内部に保持され、それぞれが複数の電池セルから構成される第1および第2の組電池と、前記第1および第2の組み電池を管理する回路を含み、前記回路の負極端子と前記第1および第2の電池収納ケーシングが電気的に導通するように、かつ前記第1および第2の電池収納ケーシングが一体化するように、前記第1および第2の電池収納ケーシングに装着される制御装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バッテリコントローラ等を含む制御装置の車体アースを単純化でき、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態による蓄電装置が用いられた車載電機システムの構成を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施の形態によるリチウムイオンバッテリ装置全体の外観構成を示す斜視図。
【図3】図2に示すリチウムイオンバッテリ装置を冷却媒体入口側から観た斜視図。
【図4】一実施の形態によるリチウムイオンバッテリ装置を構成する蓄電装置の一つの電池ブロック全体の外観構成を示す斜視図。
【図5】図4に示す電池ブロックの分解斜視図。
【図6】バッテリコントローラの車体アースを説明する電池ブロックの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態による蓄電装置について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
以下では、一実施の形態による蓄電装置を、電動車両、特に電気自動車の車載電源装置を構成する蓄電装置に適用した場合を例として説明する。電気自動車は、内燃機関であるエンジンと電動機とを車両の駆動源として備えたハイブリッド電気自動車、および電動機を車両の唯一の駆動源とする純正電気自動車等を含む。
【0011】
まず、図1を用いて、一実施の形態による蓄電装置を含む車載電機システム(電動機駆動システム)の構成について説明する。
【0012】
車載電機システムは、モータジェネレータ10、インバータ装置20、車両全体を制御する車両コントローラ30、および車載電源装置を構成する蓄電装置1000等を備える。蓄電装置1000は、複数の蓄電池を備えており、例えば、複数のリチウムイオン電池セルを備えたリチウムイオンバッテリ装置として構成される。
【0013】
このような車載電機システムを搭載する電気車(電気自動車やハイブリッド自動車を含む)は、電力により走行駆動を発生する走行駆動装置と、電力を走行駆動装置に供給する本発明による蓄電装置と、走行駆動装置が設けられる車体とを有する。蓄電装置は、複数の電池セルからなる組電池を導電性のケーシング内に収納して構成される電池ブロックと、電池セルを管理するバッテリコントローラやセルコントローラを含む制御装置とを有している。本発明による蓄電装置では、とくに、バッテリコントローラやセルコントローラの回路基板の負極端子のアース経路を設けるにあたり、従来のようなアース線を別途引き回すことなく、制御装置を電池ブロックに一体化するだけで上記コントローラのアースを車体アースに接地するようにしたものである。
【0014】
モータジェネレータ10は、三相交流機である。三相交流機としては同期機と誘導機とがあるが、どちらを採用しても構わない。モータジェネレータ10は、車両の力行時及び内燃機関であるエンジンを始動する時など、回転動力が必要な運転モードでは、モータ駆動し、発生した回転動力を車輪及びエンジンなどの被駆動体に供給する。この場合、車載電機システムは、モータジェネレータ10に、リチウムイオンバッテリ装置1000から電力変換装置であるインバータ装置20を介して、直流電力を三相交流電力に変換して供給する。
【0015】
また、モータジェネレータ10は、車両の減速時や制動時などの回生時及びリチウムイオンバッテリ装置1000の充電が必要な時など、発電が必要な運転モードでは、車輪或いはエンジンからの駆動力を受けて、ジェネレータとして三相交流電力を発生させる。この場合、車載電機システムは、モータジェネレータ10からの三相交流電力をインバータ装置20を介して直流電力に変換し、リチウムイオンバッテリ装置1000に供給する。これにより、リチウムイオンバッテリ装置1000には電力が蓄積される。
【0016】
モータジェネレータ10は、電機子(例えば固定子)と、電機子に対向配置され、回転可能に支持された界磁(例えば回転子)との磁気的な作用によって動作する電気機械である。モータジェネレータ10は、界磁の回転軸が車輪及びエンジンなどの被駆動体の回転軸に機械的に接続され、その被駆動体との間において回転動力を授受できるように構成されている。
【0017】
電機子は、モータジェネレータ10のモータ駆動時、ジェネレータ駆動時に応じて三相交流電力の供給を受け、回転磁界を発生させる部位である。。電機子は、磁性体である電機子鉄心(固定子鉄心)と、電機子鉄心に装着された三相の電機子巻線(固定子巻線)とを備えている。
【0018】
界磁は、モータジェネレータ10をモータ駆動或いはジェネレータ駆動する時、界磁磁束を発生させる部位であり、磁性体である界磁鉄心(回転子鉄心)と、界磁鉄心に装着された永久磁石或いは界磁巻線(回転子巻線)又は導体バー若しくは永久磁石と界磁巻線(又は導体バー)との両方を備えている。界磁巻線は外部電源から界磁電流の供給を受けて励磁されることにより磁束を発生する。
【0019】
インバータ装置20は、前述した電力変換、すなわち直流電力から三相交流電力への変換、及び三相交流電力から直流電力への変換をスイッチング半導体素子の作動(オン・オフ)によって制御する電子回路装置である。インバータ装置20は、パワーモジュール21、ドライバ回路22、モータコントローラ23及び平滑コンデンサ24を備えている。
【0020】
パワーモジュール21は、六つのスイッチング半導体素子を備え、この六つのスイッチング半導体素子のスイッチング動作(オン・オフ)によって、前述した電力変換を行う電力変換回路である。スイッチング半導体素子には金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)或いは絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)を用いる。パワーモジュール21をMOSFETから構成する場合は、寄生ダイオードがドレイン電極とソース電極との間に電気的に逆並列に接続されている。一方、パワーモジュール21をIGBTから構成する場合には、別途、ダイオードをコレクタ電極とエミッタ電極との間に電気的に逆並列に接続する必要がある。電力変換回路は、二つ(上アーム及び下アーム)のスイッチング半導体素子を電気的に直列に接続した直列回路(一相分のアーム)を三相分、電気的に並列に接続した三相ブリッジ回路により構成されている。
【0021】
各上アームの下アーム接続側とは反対側は直流正極側モジュール端子に、各下アームの上アーム接続側とは反対側は直流負極側モジュール端子にそれぞれ電気的に接続されている。各上下アームの中点、すなわち上アームと下アームとの接続側は交流側モジュール端子に電気的に接続されている。直流正極側モジュール端子は直流正極側外部端子に、直流負極側モジュール端子は直流負極側外部端子にそれぞれ電気的に接続されている。直流正極側外部端子及び直流負極側外部端子は、リチウムイオンバッテリ装置1000との間において直流電力を授受するための電源側端子であり、リチウムイオンバッテリ装置1000から延びる電源ケーブル600が電気的に接続されている。交流側モジュール端子は交流側外部端子に電気的に接続されている。交流側外部端子は、モータジェネレータ10との間において三相交流電力を授受するための負荷側端子であり、モータジェネレータ10から延びる負荷ケーブルが電気的に接続されている。
【0022】
平滑コンデンサ24は、電力変換回路を構成するスイッチング半導体素子の高速スイッチング動作により生じる電圧変動を抑制するために、電力変換回路の直流正極側と直流負極側との間に電気的に並列に接続されている。
【0023】
モータコントローラ23は、電力変換回路を構成する六つのスイッチング半導体素子のスイッチング動作を制御するための電子回路装置である。モータコントローラ23は、上位制御装置、例えば車両全体を制御する車両コントローラ30から出力されたトルク指令に基づいて、六つのスイッチング半導体素子に対するスイッチング動作指令信号(例えばPWM(パルス幅変調)信号)を生成する。この生成された指令信号はドライバ回路22に出力される。
【0024】
ドライバ回路22は、モータコントローラ23から出力されたスイッチング動作指令信号に基づいて、電力変換回路を構成する六つのスイッチング半導体素子に対する駆動信号を生成する。この生成された駆動信号は、電力変換回路を構成する六つのスイッチング半導体素子のゲート電極に出力される。これにより、電力変換回路を構成する六つのスイッチング半導体素子は、ドライバ回路22から出力された駆動信号に基づいてスイッチング(オン・オフ)が制御される。
【0025】
リチウムイオンバッテリ装置1000は、電気エネルギーを蓄積及び放出(直流電力を充放電)するための電池モジュール100、及び電池モジュール100の状態を管理及び制御するための制御装置900(図2参照)を備えている。
【0026】
電池モジュール100は二つの電池ブロック(或いは電池パック)、すなわち電気的に直列に接続される高電位側電池ブロック100a及び低電位側電池ブロック100bから構成されている。各電池ブロックには組電池が収納されている。各組電池は、複数のリチウムイオン電池セルを電気的に直列に接続した接続体から構成されている。各電池ブロックの構成については後述する。
【0027】
高電位側電池ブロック100aの負極側(低電位側)と低電位側電池ブロック100bの正極側(高電位側)との間にはSD(サービスディスコネクト)スイッチ700が設けられている。SDスイッチ700はリチウムイオンバッテリ装置1000の保守、点検の時の安全性を確保するために設けられた安全装置であり、スイッチとヒューズとを電気的に直列に接続した電気回路から構成され、サービスマンによって保守、点検時に操作される。
【0028】
制御装置900は、上位(親)に相当するバッテリコントローラ300及び下位(子)に相当するセルコントローラ200から構成されている。図示はしないが、制御装置900は、導電性の材料で形成したベース910の基板実装面にバッテリコントローラ300の制御基板とセルコントローラ200の制御基板を実装して構成されている。これら制御基板を実装するに際しては、バッテリコントローラ300およびセルコントローラ200の各制御基板の負極端子をベース910に電気的に接続する。
なお、以下では説明の便宜上、バッテリコントローラ300およびセルコントローラ200の接地とは、各制御基板の負極端子を車体アース電位に接続することと同義として説明する。
【0029】
後述するように、高電位側電池ブロック100a及び低電位側電池ブロック100bは並設され、それぞれの上面に制御装置900が跨って配置されている。すなわち、制御装置900すなわちベース910をブロック100a,100bに装着することにより、両ブロック100a,100bが一体化される。
【0030】
なお、後述するように、電池ブロック100a,100bは、導電性のケーシング110内に複数の電池セルを収容して構成されている。そして、ケーシング110は導電性のモジュールベース101を介して車体に電気的、機械的に接続される。したがって、バッテリコントローラ300およびセルコントローラ200の負極端子の電位は、ケーシング110を介して車体の接地電位と等しくなる。その結果、バッテリコントローラ300およびセルコントローラ200を車体に接地するアース線が不要となる。
【0031】
バッテリコントローラ300は、リチウムイオンバッテリ装置1000の状態を管理及び制御すると共に、上位制御装置である車両コントローラ30やモータコントローラ23にリチウムイオンバッテリ装置1000の状態や許容充放電電力などの充放電制御指令を通知する。リチウムイオンバッテリ装置1000の状態の管理及び制御には、リチウムイオンバッテリ装置1000の電圧及び電流の計測、リチウムイオンバッテリ装置1000の蓄電状態(SOC:State Of Charge)及び劣化状態(SOH:State Of Health)などの演算、各電池ブロックの温度の計測、セルコントローラ200に対する指令(例えば各リチウムイオン電池セルの電圧を計測するための指令、各リチウムイオン電池セルの蓄電量を調整するための指令など)の出力などがある。
【0032】
セルコントローラ200は、バッテリコントローラ300からの指令によって複数のリチウムインオン電池セルの状態の管理及び制御を行う、いわゆるバッテリコントローラ300の手足であり、複数の集積回路(IC)によって構成されている。複数のリチウムイオン電池セルの状態の管理及び制御には、各リチウムイオン電池セルの電圧の計測、各リチウムイオン電池セルの蓄電量の調整などがある。各集積回路は、対応する複数のリチウムイオン電池セルが決められており、対応する複数のリチウムイオン電池セルに対して状態の管理及び制御を行う。
【0033】
バッテリコントローラ300の電源には、車載補機、例えばライトやオーディオ機器などの電源装置として搭載された補機用バッテリ(自動車の場合、公称出力電圧12ボルトの鉛バッテリ)を用いている。このため、バッテリコントローラ300には補機用バッテリからの電圧(例えば12ボルト)が印加されている。バッテリコントローラ300は、印加された電圧をDC−DCコンバータ(直流−直流電力変換器)から構成された電源回路によって降圧(例えば5ボルトに降圧)し、この降圧された電圧を、バッテリコントローラ300を構成する電子部品に駆動電圧として印加する。これにより、バッテリコントローラ300を構成する電子部品は作動する。
【0034】
セルコントローラ200を構成する集積回路の電源には、対応する複数のリチウムイオン電池セルを用いている。このため、セルコントローラ200と電池モジュール100の両者は接続線800を介して電気的に接続されている。各集積回路には、対応する複数のリチウムイオン電池セルの最高電位の電圧が接続線800を介して印加されている。各集積回路は、印加された電圧を電源回路によって降圧(例えば5ボルトに降圧)し、これを動作電源として用いる。
【0035】
バッテリコントローラ300には、イグニションキースイッチから出力された信号が入力されている。イグニションキースイッチから出力された信号はリチウムイオンバッテリ装置1000の起動及び停止の合図として用いられている。
【0036】
イグニションキースイッチがオン状態になると、バッテリコントローラ300では、イグニションキースイッチからの出力信号に基づいて電源回路が動作し、複数の電子回路部品に対して電源回路から駆動電圧が印加されて複数の電子回路部品が動作する。これにより、バッテリコントローラ300が起動する。バッテリコントローラ300が起動すると、セルコントローラ200に対してバッテリコントローラ300から起動指令が出力される。セルコントローラ200では、バッテリコントローラ300からの起動指令に基づいて複数の集積回路の電源回路が順次動作し、複数の集積回路が順次起動する。これにより、セルコントローラ200が起動する。セルコントローラ200が起動すると、所定の初期処理が実行され、リチウムイオンバッテリ装置1000が起動する。
【0037】
所定の初期処理としては、例えば各リチウムイオン電池セルの電圧の測定、異常診断、リチウムイオンバッテリ装置1000の電圧及び電流の測定、各電池ブロックの温度の測定、リチウムイオンバッテリ装置1000の蓄電状態及び劣化状態の演算、リチウムイオンバッテリ装置1000の許容充放電電力の演算などがある。
【0038】
イグニションキースイッチがオフ状態になると、セルコントローラ200に対してバッテリコントローラ300から停止指令が出力される。セルコントローラ200が停止指令を受けると、所定の終了処理が実行された後、複数の集積回路の電源回路が順次停止して、複数の集積回路が順次停止する。これにより、セルコントローラ200が停止する。セルコントローラ200が停止し、セルコントローラ200との間において通信ができなくなると、バッテリコントローラ300では、電源回路の動作が停止し、複数の電子回路部品の動作が停止する。これにより、バッテリコントローラ300が停止し、リチウムイオンバッテリ装置1000が停止する。
【0039】
所定の終了処理としては、例えば各リチウムイオン電池セルの電圧の測定、及び各リチウムイオン電池セルの蓄電量の調整などがある。
【0040】
バッテリコントローラ300と、車両コントローラ30及びモータコントローラ23などの上位制御装置との間の情報伝達には、車載ローカルエリアネットワークによる通信を用いている。バッテリコントローラ300とセルコントローラ200との間の情報伝達には、車載ローカルエリアネットワークによる通信に準拠するLIN通信を用いている。
【0041】
高電位側電池ブロック100aの正極端子とインバータ装置20の直流正極側外部端子との両者は正極側電源ケーブル610を介して電気的に接続されている。低電位側電池ブロック100bの負極端子とインバータ装置20の直流負極側外部端子との間は負極側電源ケーブル620を介して電気的に接続されている。
【0042】
電源ケーブル600の途中にはジャンクションボックス400が設けられている。ジャンクションボックス400の内部には、メインリレー410及びプリチャージ回路420から構成されたリレー機構が収納されている。リレー機構は、電池モジュール100とインバータ装置20との間を電気的に導通及び遮断するための開閉部であり、車載電機システムの起動時には電池モジュール100とインバータ装置20との間を導通、車載電機システムの停止時及び異常時には電池モジュール100とインバータ装置20との間を遮断する。このように、リチウムイオンバッテリ装置1000とインバータ装置20との間をリレー機構によって制御することにより、車載電機システムの高い安全性を確保できる。
【0043】
リレー機構の駆動はモータコントローラ23により制御される。モータコントローラ23は、車載電機システムの起動時には、リチウムイオンバッテリ装置1000の起動完了の通知をバッテリコントローラ300から受けることにより、リレー機構に対して導通の指令信号を出力してリレー機構を駆動させる。また、モータコントローラ23は、車載電機システムの停止時にはイグニションキースイッチからオフの出力信号を受けることにより、また、車載電機システムの異常時には車両コントローラ30からの異常信号を受けることにより、リレー機構に対して遮断の指令信号を出力してリレー機構を駆動させる。
【0044】
メインリレー410は正極側メインリレー411及び負極側メインリレー412から構成されている。正極側メインリレー411は正極側電源ケーブル610の途中に設けられ、リチウムイオンバッテリ装置1000の正極側とインバータ装置20の正極側との間の電気的な接続を制御する。負極側メインリレー412は負極側電源ケーブル620の途中に設けられ、リチウムイオンバッテリ装置1000の負極側とインバータ装置20の負極側との間の電気的な接続を制御する。
【0045】
プリチャージ回路420は、プリチャージリレー421及び抵抗422を電気的に直列に接続した直列回路であり、正極側メインリレー411に電気的に並列に接続されている。
【0046】
車載電機システムの起動時にあたっては、まず、負極側メインリレー412が投入され、この後に、プリチャージリレー421が投入される。これにより、リチウムイオンバッテリ装置1000から供給された電流が抵抗422によって制限された後、平滑コンデンサ24に供給されて充電される。平滑コンデンサ24が所定の電圧まで充電された後、正極側メインリレー411が投入され、プリチャージリレー421が開放される。これにより、リチウムイオンバッテリ装置1000から正極側メインリレー411を介してインバータ装置20に主電流が供給されるが、この時の主電流は、正極側メインリレー411及び平滑コンデンサ24の許容電流以下になる。従って、車載電機システムの起動時、平滑コンデンサ24の電荷が略ゼロにあることに起因してリチウムイオンバッテリ装置1000から瞬間的に大きな初期電流がインバータ装置20に流れ込み、平滑コンデンサ24が高発熱して損傷する、正極側メインリレー411の固定接点と可動接点とが融着する、などの異常を招くことがなく、平滑コンデンサ24及び正極側メインリレー411を大きな電流から保護することができる。
【0047】
また、ジャンクションボックス400の内部には電流センサ430が収納されている。電流センサ430は、リチウムイオンバッテリ装置1000からインバータ装置20に供給される電流を検出するために設けられたものである。電流センサ430の出力線はバッテリコントローラ300に電気的に接続されている。バッテリコントローラ300は、電流センサ430から出力された信号に基づいて、リチウムイオンバッテリ装置1000からインバータ装置20に供給された電流を検出する。この電流検出情報は、バッテリコントローラ300からモータコントローラ23や車両コントローラ30などに通知される。電流センサ430はジャンクションボックス400の外部に設置しても構わない。リチウムイオンバッテリ装置1000の電流の検出部位は、正極側メインリレー411のインバータ装置20側のみらならず、正極側メインリレー411の電池モジュール100側であってもよい。
【0048】
尚、ジャンクションボックス400の内部にはリチウムイオンバッテリ装置1000の電圧を検出するための電圧センサを収納してもよい。電圧センサの出力線は電流センサ430と同様にバッテリコントローラ300に電気的に接続される。バッテリコントローラ300は、電圧センサの出力信号に基づいてリチウムイオンバッテリ装置1000の全体の電圧を検出する。この電圧検出情報はモータコントローラ23や車両コントローラ30に通知される。リチウムイオンバッテリ装置1000の電圧の検出部位は、リレー機構の電池モジュール100側とインバータ装置20側の両方にあるほうがよい。
【0049】
正極側電源ケーブル610とリチウムイオンバッテリ装置1000の筐体グランド(車両のシャーシと同電位)との間には正極側キャパシタ500が電気的に接続されている。負極側電源ケーブル620とリチウムイオンバッテリ装置1000の筐体グランドとの間には負極側キャパシタ510が電気的に接続されている。正極側キャパシタ500及び負極側キャパシタ510はインバータ装置20が発生するノイズを除去し、弱電系回路であるバッテリコントローラ300及びセルコントローラ200の誤作動防止、及びセルコントローラ200を構成する集積回路(IC)のサージ電圧による破壊防止などを図るために設けられている。インバータ装置20にもノイズを除去するためのフィルタが設けられているが、正極側キャパシタ500及び負極側キャパシタ510を設けることにより、弱電系回路であるバッテリコントローラ300及びセルコントローラ200の誤作動防止、及びセルコントローラ200を構成する集積回路(IC)のサージ電圧による破壊防止などの効果をさらに高め、リチウムイオンバッテリ装置1000の耐ノイズ性に対する信頼性をさらに高めることができる。
【0050】
次に、図2〜図6を用いて、リチウムイオンバッテリ装置1000の構成について説明する。図2,3に、リチウムイオンバッテリ装置1000の全体構成を表す斜視図を示す。図4にリチウムイオンバッテリ装置1000を構成する電池ブロックの斜視図を示し、図5に、図4に示す電池ブロックの分解斜視図を示す。
【0051】
リチウムイオンバッテリ装置1000は大きく分けて、電池モジュール100及び制御装置900の二つのユニットから構成されている。まず、電池モジュール100の構成について説明する。
【0052】
上述したように、電池モジュール100は、高電位側電池ブロック100a及び低電位側電池ブロック100bから構成され、二つの電池ブロック100a,100bは、電気的に直列に接続されている。なお、高電位側電池ブロック100aと低電位側電池ブロック100bは、全く同じ構成を有している。このため、図4,5には、高電位側電池ブロック100a及び低電位側電池ブロック100bを代表して、高電位側電池ブロック100aのみを示し、低電位側電池ブロック100bの詳細な構成については説明を省略する。
【0053】
図2に示すように、高電位側電池ブロック100a及び低電位側電池ブロック100bは、各ブロックの長手方向同士が平行となるように互いに隣接して並列に配置される。高電位側電池ブロック100a及び低電位側電池ブロック100bは、モジュールベース101上に並置され、後述するように、高電位側電池ブロック100a及び低電位側電池ブロック100bの上面に跨って制御装置900を装着することにより、両ブロック100a,100bが制御装置900のベース910によって一体化される。モジュールベース101は、短手方向に三分割された剛性のある薄肉の金属板(例えば鉄板)により構成され、車両に固定されている。すなわち、モジュールベース101は、短手方向の両端部と中央部に配置された3つの部材から構成されている。このような構成により、モジュールベース101の面を各電池ブロック100a,100bの下面と面一にでき、電池モジュール100の高さ方向の寸法をさらに低減することができる。
【0054】
図5に示すように、高電位側電池ブロック100aは大きく分けて、電池収納ケーシング(以下、ケーシング)110及び組電池120から構成されている。組電池120はケーシング110の内部に収納されて保持されている。
【0055】
ケーシング110は、アッパベースUPBと、ロワベースLOBと、サイドプレート130,131とにより略六面体状のブロック筐体を構成している。すなわちケーシング110は、3つの部材の結合体から構成されている。図3〜図5を参照して説明すると、アッパベースUPBは、入口流路形成板111、出口側案内板113、冷却媒体入口114及び冷却媒体入口ダクト116をアルミダイキャストで一体成形したものである。ロワベースLOBは、出口流路形成板118、入口側案内板112、冷却媒体出口115及び冷却媒体出口ダクト117をアルミダイキャストで一体成形したものである。なお、アッパベースUPBと、ロワベースLOBは互いに長手方向端部をボルト締結して両側面が開放された環状部材を形成するケーシング本体である。ケーシング110の内部空間は、複数の電池セル140で構成される組電池120が収納される収納室として機能するとともに、組電池120を冷却するための冷却媒体(冷却空気)が流通する冷却通路として機能する。
【0056】
なお、以下の説明において、ケーシング110の長さが最も長い方向、および、冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側に至る方向を、長手方向と定義する。また、ケーシング110の長手方向に対向する二つの側面(入口側案内板112及び出口側案内板113)とは異なる二つの側面(二つの側板130,131)が対向する方向、リチウムイオン電池セル140の中心軸方向(正極端子及び負極端子の二つの電極が対向する方向)、および二つのリチウムイオン電池セル140を電気的に接続する導電部材150と二つのリチウムイオン電池セル140とが対向する方向を、短手方向と定義する。さらに、入口流路形成板111と出口流路形成板118とが対向する方向を、電池モジュール100の設置方向に関係なく高さ方向と定義する。
【0057】
入口流路形成板111はケーシング110の上面を形成する長方形状の平板である。出口流路形成板118はケーシング110の底面を形成する平板である。入口流路形成板111及び出口流路形成板118は互いに長手方向にずれている。このため、入口流路形成板111及び出口流路形成板118は互いの長手方向端部の位置が長手方向にずれている。
【0058】
入口流路形成板111、すなわちアッパベースUPBの上面には、制御装置900を装着する装着部110Sが設けられている。装着部111Sは雌ねじが刻設されたボスである。図1および図2に示すように、バッテリコントローラ300とセルコントローラ200を実装する導電性の制御装置900のベース910は、1組の電池ブロック100a、100bの装着部111Sにボルトにより、電気的に導通するように固着されている。上述したように、バッテリコントローラ300およびセルコントローラ200は、それらの負極端子が制御装置900のベース910に電気的に導通するようにベース910に実装されている。制御装置900を両電池ブロック100a,100bに跨るように装着することにより、高電位側電池ブロック100a及び低電位側電池ブロック100bは並設して一体化される。すなわち、制御装置900すなわちベース910を電池ブロック100a,100bに装着することにより、両ブロック100a,100bが一体化される。
【0059】
なお、電池ブロック100a,100bは、導電性のケーシング110内に複数の電池セル140を収容して構成されている。そして、ケーシング110は導電性のモジュールベース101を介して車体(シャーシ)に電気的、機械的に接続される。したがって、バッテリコントローラ300およびセルコントローラ200の負極端子の電位は、ケーシング110を介して車体の接地電位と等しくなる。その結果、バッテリコントローラ300およびセルコントローラ200を車体に接地するアース線が不要となる。
【0060】
入口側案内板112は、ケーシング110の長手方向に対向する側面の一方側を形成する板状部材である。出口側案内板113は、ケーシング110の長手方向に対向する側面の他方側を形成する板状部材である。
【0061】
入口流路形成板111と入口側案内板112との間には、冷却媒体である冷却空気のケーシング110内部への導入口を構成する冷却媒体入口114が形成されている。冷却媒体入口114には、冷却空気を冷却媒体入口114まで導くための冷却媒体入口ダクト116が設けられている。上述したように、入口流路形成板111と出口流路形成板118とは互いにずれて配置されており、ケーシング110の入口側端部はステップ状に形成されている。このため、長手方向において冷却媒体入口114と入口側案内板112との間に空間が形成される。この空間には、後述するガス排出管139が収納される。図3に示すように、入口側案内板112は、ガス排出管139の後方に配置される。このような構成により、電池モジュール1000の長手方向の寸法を短縮することができる。出口流路形成板118と出口側案内板113との間には、冷却空気のケーシング110内部からの導出口を構成する冷却媒体出口115が形成されている。冷却媒体出口115には、冷却空気を冷却媒体出口115から外部に導くための冷却媒体出口ダクト117が設けられている。
【0062】
冷却媒体入口114及び冷却媒体出口115は高さ方向(入口流路形成板111と出口流路形成板118との対向方向)に位置がずれている。すなわち冷却媒体入口114は入口流路形成板111側に位置し、冷却媒体出口115は出口流路形成板118側に位置している。
【0063】
アッパベースUPBとロワベースLOBを構成する入口流路形成板111、出口流路形成板118、入口側案内板112、出口側案内板113、冷却媒体入口114及び冷却媒体出口115と、側板130,131との結合はネジ或いはボルト若しくはリベットなどの締結手段により行われる。それらの結合部位の結合部材間には、ケーシング110の内部の気密性を高め、冷却媒体入口114からケーシング110の内部に導入された冷却媒体が外部に漏れずに冷却媒体出口115から排出されるように、シール部材(図示省略)が設けられている。
【0064】
側板130,131は、ケーシング110の短手方向に対向する二つの側面を形成する平板状部材であり、電気的な絶縁性を有するPTBなどの樹脂からなる成型体である。側板130,131の肉厚は入口流路形成板111、出口流路形成板118、入口側案内板112及び出口側案内板113の肉厚よりも厚い。側板130,131の詳細な構成については、後述する。
【0065】
側板130,131の外側、すなわち組電池120の収納室と反対側には、サイドカバーと呼ばれる覆い部材160が設けられている。図5には、側板130の外側の覆い部材160のみが図示されているが、側板131の外側にも覆い部材160が設置される。覆い部材160は、ボルト或いはリベットなどの固定手段161によって側板130に固定されている。
【0066】
覆い板160は、鉄或いはアルミニウムなどの金属板をプレス加工した平板、又はPBTなどの樹脂を成型して形成した平板であり、側板130の平面形状とほぼ同じ形状に構成されている。覆い板160は、後述する側板160の貫通孔132に対応する部位を含む領域が側板130とは反対側に一様に膨らんでいる。これにより、覆い板160と側板130との間には空間が形成される。この空間は、リチウムイオン電池セル140から噴出したミスト状のガスが、冷却通路を流通する冷却媒体とは分離して放出されるガス放出室(あるいはガス放出通路)として機能する。
【0067】
組電池120は複数のリチウムイオン電池セル140の集合体(リチウムイオン電池セル群)である。複数のリチウムイオン電池セル140は、ケーシング110の内部に形成された収納室に整列して収納されていると共に、短手方向から側板130,131により挟持され、バスバーと呼ばれる複数の導電部材150との接合によって電気的に直列に接続されている。
【0068】
リチウムイオン電池セル140は、円柱形状の構造体であり、電解液が注入された電池ケースの内部に電池素子および安全弁等の構成部品が収納されて構成されている。正極側の安全弁は、過充電などの異常によって電池ケースの内部の圧力が所定の圧力になったときに開裂する開裂弁である。安全弁は、開裂によって電池蓋と電池素子の正極側との電気的な接続を遮断するヒューズ機構として機能するとともに、電池ケースの内部に発生したガス、すなわち電解液を含むミスト状の炭酸系ガス(噴出物)を電池ケースの外部に噴出させる減圧機構として機能する。
【0069】
電池ケースの負極側にも開裂溝が設けられており、過充電などの異常によって電池ケー スの内部の圧力が所定の圧力になったときに開裂する。これにより、電池ケースの内部に発生したガスを負極端子側からも噴出させることができる。リチウムイオン電池セル140の公称出力電圧は3.0〜4.2ボルト、平均公称出力電圧は3.6ボルトである。
【0070】
一実施の形態においては、円筒形のリチウムイオン電池セル140を十六本、ケーシング110の内部に整列配置することにより組電池120を構成している。具体的には、リチウムイオン電池セル140の中心軸が短手方向に沿って延在するように横倒しした状態で、八本のリチウムイオン電池セル140を並列に配置して第1電池セル列121を構成する。また、第1電池セル列121と同様に八本のリチウムイオン電池セル140を配置して第2電池セル列122を構成する。組電池120は、第1電池セル列121と第2電池セル列122を高さ方向に積層(段積み或いは俵積み)することによって構成される。すなわち、組電池120は、リチウムイオン電池セル140を長手方向に八列、高さ方向に二段或いは二層並べて構成される。
【0071】
第1電池セル列121及び第2電池セル列122は互いに長手方向にずれている。すなわち第1電池セル列121は、第2電池セル列122よりも入口流路形成板111側であって、冷却媒体入口114側にずれて配置されている。一方、第2電池セル列122は、第1電池セル列121よりも出口流路形成板側であって、冷却媒体出口115側にずれて配置されている。図5に示すように、一実施の形態では、例えば第1電池セル列121の最も冷却媒体出口115側に位置するリチウムイオン電池セル140の中心軸の長手方向の位置が、第2電池セル列122の最も冷却媒体出口115側に位置するリチウムイオン電池セル140の中心軸と、それに隣接するリチウムイオン電池セル140の中心軸との間の中間位置になるように、第1電池セル列121及び第2電池セル列122が長手方向にずれて配置されている。
【0072】
第1電池セル列121を構成するリチウムイオン電池セル140は端子の向きが交互に逆向きになるように並置されている。第2電池セル列122を構成するリチウムイオン電池セル140も同様に、端子の向きが交互に逆向きになるように並置されている。ただし、第1電池セル列121を構成するリチウムイオン電池セル140の端子の冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側への並び順は、第2電池セル列122を構成するリチウムイオン電池セル140の端子の並び順と異なる。すなわち、第1電池セル列121は、側板130側に面するリチウムイオン電池セル140の端子が、冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側に向かって負極端子、正極端子、負極端子、…、正極端子の順に配置されている。一方、第2電池セル列122は、側板130側に面するリチウムイオン電池セル140の端子が、冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側に向かって正極端子、負極端子、正極端子、…、負極端子の順に配置されている。
【0073】
このように、第1電池セル列121と第2電池セル列122とを長手方向にずらして配置することにより、組電池120の高さ方向の寸法を低くでき、高電位側電池ブロック110aを高さ方向に小型化することができる。
【0074】
次に、組電池120を両側から挟持する側板130,131の構成について詳細に説明する。ここでは、簡単のため、一方の側板130の構成のみを説明するが、他方の側板131も基本的には側板130と同様に構成されている。
【0075】
ただし、組電池120の正極側に電気的に接続された電池モジュール側接続端子180、及び組電池120の負極側に電気的に接続された電池モジュール側接続端子181は、側板130のみに設けられている。接続端子180,181は、側板130の上面、すなわち入口流路形成板111側の面に長手方向に並んで設けられている。接続端子180,181には、電池モジュール100とは別にサブアセンブリ185として形成された直流正極側入出力端子183および負極側入出力端子184がそれぞれ接続される。高電位側電池ブロック110aの正極側入出力端子183には正極側電源ケーブル610の端子が接続され、負極側入出力端子184には、SDスイッチ700の一端側に電気的に接続されたケーブルの端子が接続される(図1参照)。低電位側電池ブロック110bの正極側入出力端子183には、SDスイッチ700の他端側に電気的に接続されたケーブルの端子が接続される。低電位側電池ブロック110bの負極側入出力端子184には負極側電源ケーブル620の端子が接続される。なお、図2において、高電位側電池ブロック100aのサブアセンブリ185は端子カバーで覆われた状態を示し、低電位側電池ブロック100bのサブアセンブリ185は端子カバーを取り外した状態を示している。
【0076】
側板130は、図5に示すように、略長方形の平板形状に形成されている。側板130には、短手方向に貫通する十六個の円形の貫通孔132が形成されている。十六個の貫通孔132は、前述のように配列された十六本のリチウムイオン電池セル140の電極位置に対応して開口するように、十六本のリチウムイオン電池セル140の配置に合わせて設けられている。したがって、組電池120がケーシング110内に収納されると、側板130の十六個の貫通孔132は、十六本のリチウムイオン電池セル140一端側の端子面で塞がれ、側板131側の十六個の貫通孔132は、十六本のリチウムイオン電池セル140の他端側の端子面で塞がれる。
【0077】
側板130において、組電池120の収納室を形成する内壁面とは反対側の外壁面170には、貫通孔132の周囲を部分的に取り囲むように突起部133が形成されている。さらに外壁面170には、貫通孔132同士の間に、リチウムイオン電池セル140と接続される導電部材150を配置するための複数の固定ガイド130aが形成されている。突起部133および固定ガイド130aは、それぞれ外壁面170から突出し、覆い部材160と導電部材150との接触を防止するように構成されている。これにより、覆い部材160が例えば鉄等の金属製の平板から構成されている場合に、覆い部材160と導電部材150との間の短絡を防止することができる。
【0078】
側板130には、側板130と覆い部材160との間のガス放出室に放出されたガス(電解液などを含む液体と気体とが混じったガス)を高電位側電池ブロック100aの外部に排出するためのガス排出通路138が設けられている。ガス排出通路138の開口部は、ガスに含まれる電解液などを液体の排出を考慮して側板130の下部に形成されている。具体的には、側板130の冷却媒体入口140側、かつ出口流路形成板118側の側板130に形成されている。ガス排出通路138の先端部分は管状に形成されており、ガス排出通路138から排出されたガスを外部に導くためのガス排出管139(図3参照)が接続されている。
【0079】
側板130の上面、すなわち入口流路形成板111側の面には、2つの接続端子810が長手方向に並んで設けられている。接続端子810は、側板130と同じ成形材料によって側板130に一体に成形され、側板130の上面において冷却媒体入口114側に配置されている。各接続端子810は、電流遮断部811を備えており、制御装置900の電圧検出用コネクタ912から延びる配線(接続線)800と、図示しない電圧検出導体とを電流遮断部を介して電気的に接続している。電圧検出用コネクタ912は、制御装置900の短手方向両端部にそれぞれ設置されている。高電位側電池ブロック100aに設けられた接続端子810に接続された接続線800は、高電位側電池ブロック100aの上方に配置された制御装置900のコネクタ912に接続される。一方、低電位側電池ブロック100bに設けられた接続端子810に接続された接続線800は、低電位側電池ブロック100bの上方に配置された制御装置900のコネクタ912に接続される。接続線800の長さは、配線ミスを防止するために、各接続端子810と対応するコネクタ912までの距離に相当するように設定されている。例えば、高電位側電池ブロック100aの接続端子810に接続された接続線800は、低電位側電池ブロック100b用のコネクタ912まで到達しないような短さに設定されている。電流遮断部811は、ヒューズワイヤを備え、制御回路900や配線800の異常時に溶断して組電池120からの電流を遮断し、製品を保護する機能を有している。
【0080】
図6を参照して蓄電装置1000の特徴的な構成についてまとめると以下のとおりである。符号500は、電池モジュール100の電力で走行駆動する駆動装置を搭載した電気車のシャーシである。電池モジュール100は、搭載部材であるモジュールベース101を介してシャーシ500にボルトで固定締結されるとともに電気的にも接続されている。モジュールベース101は、ロワベースLOBに固定締結されるとともに電気的にも接続され、ロワベースLOBはアパベースUPBに固定締結されるとともに電気的にも接続されている。さらに、アッパベースUPBには制御装置900のベース910が固定締結されるとともに電気的にも接続されている。ベース910にはバッテリコントローラ300とセルコントローラがそれらの負極端子が導通するように実装されている。このような構成により、ベース910に実装されているバッテリコントローラ300とセルコントローラ200の負極端子は、ベース910、アッパベースUPB、ロワベースLOB、モジュールベース101を経由してシャーシ500に電気的に接続される。したがって、アース線を用いることなく、制御装置900、すなわち、バッテリコントローラ300とセルコントローラ200の負極端子をシャーシ500に導通することができる。
【0081】
制御装置900のベース910、アッパベースUPB、ロワベースLOBはアルミニウムダイキャストであり、高い導電性と強度を備える。モジュールベース101は鉄板により形成され、充分な導電性と高い強度を備える。
【0082】
以上説明した蓄電装置の一実施の形態では次のような作用効果を奏することができる。
(1)電池セルを収納するケーシング110を導電性材料で形成し、かつ制御装置9000のベース910を電池収納ケーシング110に電気的に接続したことによって、別段のアース線を電池収納ケーシング110の外部に配線する必要はない。これによって、バッテリコントローラ300やセルコントローラ200を含む制御装置900のアース構造を単純化でき、配線作業は容易となり、また、バッテリコントローラ300やセルコントローラ200へのアース線からのノイズ混入を防止することができる。
【0083】
(2)ケーシング110を構成するアッパベースUPB、ロワベースLOBはアルミニウムダイキャストである。電池モジュール100は、車両の組立作業中に作業者の体重が作用するおそれがある箇所に設置される。電池セルを収納するケーシング110をアルミニウムダイキャストで製造することにより、電池収納ケーシング110を作業者の体重が作用しても変形しないような強度をもって設計することができる。
【0084】
本発明による蓄電装置を次のように変形して実施することもできる。
(1)以上の実施の形態では、ケーシング110をロワベースLOB、アッパベースUPBによって2分割構成とし、ボルト締結などにより一体化したが、ロワベースLOB、アッパベースUPBを一部材で形成してもよい。
【0085】
(2)コントローラ用ベース910、アッパベースUPB、ロワベースLOB、モジュールベース101を以上で説明した導電性の材料以外の導電性材料で形成することができる。
(3)ケーシング110を両側面が開放された環状に形成したが、一側面のみを開放した形状とし、開放側面のみをサイドプレートで塞ぐこととしてもよい。
【0086】
(4)以上説明した一実施の形態では、16本のリチウムイオン電池セル140を接続した2つの電池ブロック100a、100bから構成される電池モジュール100を例示した。しかし、本発明は上述した電池モジュール100の構成や接続方式(直列、並列)に限定されるものではなく、リチウムイオン電池セル140の本数や電池セル列の本数や配列、方向を変えたものに関しても適用される。
【0087】
(5)以上説明した一実施の形態では、リチウムイオン電池セル140として円筒形電池を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、リチウムイオン電池セル140の形状が、角型蓄電池やラミネート封止の電池に関しても適用され、また、リチウムイオン電池以外に、ニッケル水素電池などの他の電池に関しても適用される。
【0088】
(6)以上説明した一実施の形態による蓄電装置1000を、他の電動車両、例えばハイブリッド電車などの鉄道車両、バスなどの乗合自動車、トラックなどの貨物自動車、バッテリ式フォークリフトトラックなどの産業車両などの車両用電源装置に利用することもできる。
【0089】
(7)一実施の形態による蓄電装置1000を、コンピュータシステムやサーバシステムなどに用いられる無停電電源装置、自家用発電設備に用いられる電源装置など、電動車両以外の電源装置を構成する蓄電装置にも適用しても構わない。
【0090】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明は上記実施の形態の構成に何ら限定されるものではない。したがって、本発明による蓄電装置は、シャーシに電気的に接続される導電性の電池収納ケーシングと、電池収納ケーシングの内部に保持された複数の電池セルと、複数の電池セルを管理する回路を含み、回路の負極端子と電池収納ケーシングが電気的に導通するように電池収納ケーシングに装着された制御装置とを備えればどのような態様の蓄電装置でもよい。
【符号の説明】
【0091】
100:電池モジュール 101:モジュールベース
110:電池収納ケーシング 130,131:側板
140:リチウムイオン電池セル 150:導電部材
200:セルコントローラ 300:バッテリコントローラ
500:車体 900:制御装置
910:制御装置用ベース 1000:リチウムイオンバッテリ装置
UPB:アッパベース LOB:ロワベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシに電気的に接続される導電性の電池収納ケーシングと、
前記電池収納ケーシングの内部に保持された複数の電池セルと、
前記複数の電池セルを管理する回路を含み、前記回路の負極端子と前記電池収納ケーシングが電気的に導通するように前記電池収納ケーシングに装着された制御装置とを備えることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
請求項1記載の蓄電装置において、
前記電池収納ケーシングを前記シャーシに電気的に接続しつつ固定する搭載部材をさらに有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
請求項1記載の蓄電装置において、
電池収納ケーシングは、
導電性のロワベースと、
前記ロワベースに上方から連結され、両側面が開放された環状に形成されたケーシング本体を形成する導電性のアッパベースと、
前記ケーシング本体の側面を塞ぎつつ前記電池セルを保持するサイドプレートとを備えていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項4】
請求項1記載の蓄電装置において、
電池収納ケーシングは、両側面が開放された環状部材と、
前記環状部材の側面を塞ぎつつ前記電池セルを保持するサイドプレートとを備えていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項5】
請求項4記載の蓄電装置において、
前記電池収納ケーシングを前記シャーシに電気的に接続しつつ固定する搭載部材をさら有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項6】
請求項5記載の蓄電装置において、
前記複数の電池セルから成る組電池を収納した前記電池収納ケーシングを複数有し、
前記複数の電池収納ケーシングの上面に跨って前記制御装置を装着することを特徴とする蓄電装置。
【請求項7】
請求項1乃至6項のいずれか1項に記載の蓄電装置において、
前記電池収納ケーシングはアルミニウムダイキャストにより形成されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項8】
電力により走行駆動を発生する走行駆動装置と、
前記電力を発生する請求項4乃至7のいずれか1項載の蓄電装置と、
前記走行駆動装置が設けられる車体とを有し、
前記ケーシング本体は、前搭載部材を介して前記車体に装着され、前記車体は接地電位に設定されていることを特徴とする電気車。
【請求項9】
並設される導電性の第1および第2の電池収納ケーシングと、
前記第1および第2の電池収納ケーシングの内部に保持され、それぞれが複数の電池セルから構成される第1および第2の組電池と、
前記第1および第2の組み電池を管理する回路を含み、前記回路の負極端子と前記第1および第2の電池収納ケーシングが電気的に導通するように、かつ前記第1および第2の電池収納ケーシングが一体化するように、前記第1および第2の電池収納ケーシングに装着される制御装置とを備えることを特徴とする蓄電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−138685(P2011−138685A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297794(P2009−297794)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】