蓄電装置
【課題】 充放電に伴う蓄電素子の面圧のバラツキを抑制する。
【解決手段】 所定方向(X方向)に並んで配置され、充放電を行う反応領域(A)を内部に含む複数の蓄電素子(1)と、所定方向において複数の蓄電素子を挟んで拘束する拘束機構(20,30)と、を有する。所定方向で隣り合う2つの蓄電素子は、反応領域の一端を含む一部の領域(E1)が所定方向で互いに重なった状態において、所定方向と直交する方向にずれて配置されている。
【解決手段】 所定方向(X方向)に並んで配置され、充放電を行う反応領域(A)を内部に含む複数の蓄電素子(1)と、所定方向において複数の蓄電素子を挟んで拘束する拘束機構(20,30)と、を有する。所定方向で隣り合う2つの蓄電素子は、反応領域の一端を含む一部の領域(E1)が所定方向で互いに重なった状態において、所定方向と直交する方向にずれて配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電素子に拘束力を与える構造を備えた蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の単電池を用いて組電池を構成する場合には、複数の単電池を一方向に並べて配置しておき、複数の単電池を、配列方向における両端から拘束することがある。ここで、単電池の配列方向において、組電池を見たときに、複数の単電池は互いに重なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−053019号公報
【特許文献2】特開2007−109546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、単電池の充放電によっては、単電池の一部分における面圧だけが、他の部分における面圧よりも大きく変化してしまうことが分かった。ここで、単電池の面圧が上昇するときには、単電池が膨張しており、単電池の面圧が低下するときには、単電池が収縮している。したがって、面圧の大きな変化を抑制すれば、単電池の入出力特性が劣化するのを抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明である蓄電装置は、所定方向に並んで配置され、充放電を行う反応領域を内部に含む複数の蓄電素子と、所定方向において複数の蓄電素子を挟んで拘束する拘束機構と、を有する。ここで、所定方向で隣り合う2つの蓄電素子は、反応領域の一端を含む一部の領域が所定方向で互いに重なった状態において、所定方向と直交する方向にずれて配置されている。所定方向で隣り合う2つの蓄電素子は、互いに接触させることができる。
【0006】
蓄電素子は発電要素を含んでおり、発電要素は、反応領域を含み、正極板、負極板および電解質層が積層された積層体を所定軸の周りで巻くことによって構成することができる。ここで、反応領域の一部の領域としては、所定軸の方向における反応領域の端部を含む領域とすることができる。
【0007】
所定軸の方向における一部の領域の幅WE2と、所定軸の方向における反応領域の幅WAとは、下記式(I)の関係を満たすことが好ましい。
14≦WE2/WA×100≦27 ・・・(I)
【0008】
拘束機構は、一対のエンドプレートおよび連結部材で構成することができる。一対のエンドプレートは、所定方向において、複数の蓄電素子を挟んでいる。連結部材は、所定方向に延び、一対のエンドプレートに連結される。ここで、エンドプレートのうち、蓄電素子と対向する面には、蓄電素子の側に突出する突起部を設けることができる。突起部は、一部の領域に拘束力を与える位置において、蓄電素子と接触させることができる。
【0009】
拘束機構の拘束力を受けて、蓄電素子の一部の領域に荷重を与える加圧部材を配置することができる。所定方向で隣り合う2つの蓄電素子のうち、互いに接触する領域とは異なる領域に対して、加圧部材を接触させることができる。
【0010】
蓄電装置を構成する複数の蓄電素子は、所定方向に並ぶ複数の蓄電素子と、所定方向と直交する方向に並ぶ複数の蓄電素子とで構成することができる。蓄電素子としては、20C以上のレートで充電又は放電が行われるリチウムイオン二次電池を用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定方向で隣り合う2つの蓄電素子は、反応領域の一端を含む一部の領域が所定方向で互いに重なった状態において、所定方向と直交する方向にずれて配置される。このため、拘束機構を用いて、所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子を拘束すれば、反応領域内の一部の領域に対して拘束力を与えることにより、一部の領域における面圧の変化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における単電池の外観図である。
【図2】実施例1における単電池の内部構造を示す図である。
【図3】実施例1における発電要素の展開図である。
【図4】実施例1における発電要素の外観図である。
【図5】実施例1である電池パックの上面図である。
【図6】実施例1である電池パックの一部の外観図である。
【図7】実施例1である電池パックの組み立て方法の一部を説明する図である。
【図8】実施例1の変形例である電池パックの一部の上面図である。
【図9】実施例1において、反応領域および拘束領域を説明する図である。
【図10】レート1Cの充電における単電池の面圧を示す図である。
【図11】レート12Cの充電における単電池の面圧を示す図である。
【図12】レート20Cの充電における単電池の面圧を示す図である。
【図13】レート32Cの充電における単電池の面圧を示す図である。
【図14】レート1Cの放電における単電池の面圧を示す図である。
【図15】レート12Cの放電における単電池の面圧を示す図である。
【図16】レート20Cの放電における単電池の面圧を示す図である。
【図17】レート32Cの放電における単電池の面圧を示す図である。
【図18】抵抗増加率およびサイクル数の関係を示す図である。
【図19】第1拘束領域のサイズを変更した場合において、抵抗増加率およびサイクル数の関係を示す図である。
【図20】発電要素のサイズを変更した場合において、抵抗増加率およびサイクル数の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1である単電池(蓄電素子に相当する)について説明する。図1は、単電池の斜視図であり、図2は、単電池の内部構造を示す図である。図1および図2において、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸である。X軸、Y軸およびZ軸の関係は、他の図面においても同様である。
【0015】
単電池1としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。単電池1は、電池ケース10と、電池ケース10に収容された発電要素14とを有する。電池ケース10は、金属で形成されており、ケース本体10aおよび蓋10bを有する。ケース本体10aは、発電要素14を組み込むための開口部を有しており、蓋10bは、ケース本体10aの開口部を塞いでいる。これにより、電池ケース10の内部は、密閉状態となる。蓋10bおよびケース本体10aは、例えば、溶接によって固定することができる。
【0016】
正極端子11および負極端子12は、蓋10bに固定されている。正極端子11は、正極タブ15aを介して、発電要素14と接続されており、負極端子12は、負極タブ15bを介して、発電要素14と接続されている。また、蓋10bには、弁13が設けられている。弁13は、電池ケース10の内部でガスが発生したときに、電池ケース10の外部にガスを排出するために用いられる。具体的には、ガスの発生に伴って電池ケース10の内圧が弁13の作動圧に到達すると、弁13は、閉じ状態から開き状態に変化することにより、電池ケース10の外部にガスを排出させる。
【0017】
図3は、発電要素14の展開図である。発電要素14は、正極板141と、負極板142と、セパレータ143とを有する。正極板141は、集電板141aと、集電板141aの表面に形成された正極活物質層141bとを有する。正極活物質層141bは、正極活物質、導電剤、バインダーなどを含んでいる。正極活物質層141bは、集電板141aの一部の領域に形成されており、集電板141aの他の領域は露出している。負極板142は、集電板142aと、集電板142aの表面に形成された負極活物質層142bとを有する。負極活物質層142bは、負極活物質、導電剤、バインダーなどを含んでいる。負極活物質層142bは、集電板142aの一部の領域に形成されており、集電板142aの他の領域は露出している。セパレータ143は、電解液を含んでいる
【0018】
図3に示す順番で、正極板141、負極板142およびセパレータ143を積層し、この積層体を図4の矢印Rで示す方向に巻くことにより、発電要素14が構成される。積層体の巻き終わる部分は、テープを用いて固定しておくことができる。図3において、Y方向における発電要素14の一端では、正極板141の集電板141aだけが巻かれている。この集電板141aには、図2を用いて説明したように、正極タブ15aが固定される。Y方向における発電要素14の他端では、負極板142の集電板142aだけが巻かれており、この集電板142aには、負極タブ15bが固定される。
【0019】
図2および図4に示す領域(反応領域という)Aは、正極活物質層141bおよび負極活物質層142bが互いに重なっている領域であり、単電池1の充放電を行うときに、化学反応が行われる領域である。
【0020】
次に、本実施例である電池パック(蓄電装置に相当する)について、図5および図6を用いて説明する。図5は、電池パック100の上面図であり、図6は、電池パック100の一部を示す斜視図である。図5および図6に示す電池パックは、ケース(不図示)に収容することができる。
【0021】
電池パック100は、複数の単電池1を有する。単電池1の数は、電池パック100の要求出力に基づいて、適宜設定することができる。電池パック100は、例えば、車両に搭載することができる。電池パック100から出力された電気エネルギをモータ・ジェネレータによって運動エネルギに変換すれば、この運動エネルギを用いて車両を走行させることができる。また、車両の制動時に発生する運動エネルギをモータ・ジェネレータによって電気エネルギに変換すれば、この電気エネルギを電池パック100に蓄えることができる。
【0022】
複数の単電池1は、X方向およびY方向に並んでいる。X方向で隣り合う2つの単電池1は、Y方向にずれて配置されており、単電池1の一部の領域において互いに接触している。2つの単電池1が互いに接触していない領域には、スペースSが形成されている。スペースSは、単電池1の温度調節に用いられる空気の移動スペースとして用いることができる。
【0023】
単電池1が発熱しているときには、冷却用の空気をスペースSに流すことにより、冷却用の空気および単電池1の間で熱交換を行わせ、単電池1の温度上昇を抑制することができる。単電池1が過度に冷却されているときには、加温用の空気をスペースSに流すことにより、加温用の空気および単電池1の間で熱交換を行わせ、単電池1の温度低下を抑制することができる。
【0024】
電池パック100を構成する複数の単電池1は、複数のバスバー50によって電気的に直列に接続されている。バスバー50は、電気的に直列に接続される2つの単電池1のうち、一方の単電池1の正極端子11と、他方の単電池1の負極端子12とに固定されている。
【0025】
複数のバスバー50は、絶縁材料(例えば、樹脂)で形成されたホルダに固定することができる。これにより、複数のバスバー50をまとめて取り扱うことができる。本実施例では、図5に示すように、バスバー50を配置しているが、これに限るものではない。すなわち、複数の単電池1を電気的に直列に接続することができれば、バスバー50の配置は適宜設定することができる。
【0026】
X方向における電池パック100の両端には、一対のエンドプレート(拘束機構の一部)20が配置されている。エンドプレート20は、例えば、樹脂で形成することができる。エンドプレート20は、単電池1と対向する面に、複数の突起部21を有する。突起部21は、X方向に突出している。
【0027】
一対のエンドプレート20には、X方向に延びる拘束バンド(連結部材に相当する)30の両端31が固定されている。拘束バンド30の両端31は、エンドプレート20に沿って曲げられており、例えば、ボルトやリベットを用いてエンドプレート20に固定されている。
【0028】
本実施例では、一対の拘束バンド30が、Y方向における電池パック100の両端に配置されているが、拘束バンド30の数や、拘束バンド30を配置する位置は、適宜設定することができる。また、拘束バンド30の形状は、適宜設定することができる。拘束バンド30の形状には、拘束バンド30の長手方向と直交する断面における形状が含まれる。拘束バンド30は、一対のエンドプレート20に接続することができればよい。
【0029】
一対のエンドプレート20に拘束バンド30を固定すれば、一対のエンドプレート20によって挟まれる複数の単電池1に対して、拘束力Fを与えることができる。拘束力Fは、X方向において、複数の単電池1を挟む力である。
【0030】
Y方向における電池パック100の両端には、複数のスペーサ40が配置されている。スペーサ40は、X方向において2つの単電池1によって挟まれたり、X方向において単電池1およびエンドプレート20によって挟まれたりしている。スペーサ40は、例えば、樹脂で形成することができる。
【0031】
エンドプレート20の突起部21および単電池1が互いに接触する部分では、拘束力Fが作用する。また、スペーサ40および単電池1が互いに接触する部分や、2つの単電池1が互いに接触する部分にも、拘束力Fが作用する。本実施例では、図6に示すように、各単電池1の一部の領域(拘束領域という)E1だけに、拘束力Fが作用している。単電池1のうち、Y−Z平面を構成する側面には、図6に示すように、2つの拘束領域E1が設けられている。拘束領域E1を決定する方法については、後述する。
【0032】
次に、電池パック100の製造方法について、図7を用いて簡単に説明する。図7は、複数の単電池1を所定位置に配置するための治具200を示す図である。
【0033】
治具200は、複数の第1ストッパ201および第2ストッパ202を有する。第2ストッパ202は、Y方向における治具200の両端に設けられており、X方向に延びている。第1ストッパ201および第2ストッパ202は、単電池1およびスペーサ40を、図5に示す位置に位置決めするために用いられる。単電池1やスペーサ40は、第1ストッパ201および第2ストッパ202の間に形成されたスペースに配置することができる。第1ストッパ201および第2ストッパ202を用いることにより、単電池1およびスペーサ40の位置決めを容易に行うことができる。
【0034】
複数の単電池1および複数のスペーサ40を位置決めした後は、一対のエンドプレート20を配置するとともに、一対のエンドプレート20に拘束バンド30を固定する。また、複数の単電池1に対して複数のバスバー50を接続すれば、電池パック100を組み立てることができる。
【0035】
本実施例では、図5および図6に示すように、2つの単電池1の間に1つのスペーサ40を配置しているが、これに限るものではない。例えば、図8に示すスペーサ41を用いることができる。スペーサ41は、複数の突起部41aを有する。突起部41aは、図8に示すように、2つの単電池1の間に挟まれたり、単電池1およびエンドプレート20の間に挟まれたりする。
【0036】
本実施例では、単電池1をX方向だけでなく、Y方向にも並べているが、これに限るものではない。具体的には、複数の単電池1をX方向に並べるだけでもよい。この場合にも、X方向で隣り合う2つの単電池1は、一部の拘束領域E1において、互いに接触する。また、各単電池1は、スペーサ40と接触する。
【0037】
次に、単電池1に拘束力Fを与える拘束領域E1について、具体的に説明する。
【0038】
本願発明者は、レートが異なる条件で充放電を行いながら、単電池1の複数箇所における面圧を測定したら、充放電時のレートが高くなるにつれて、Y方向における発電要素14の両端における面圧が大きく変化することが分かった。単電池1の面圧とは、単電池1(発電要素14)が膨らんだり、縮んだりするときの圧力である。単電池1が膨らめば、面圧が上昇し、単電池1が縮めば、面圧が低下することになる。例えば、圧力センサを測定箇所に配置することにより、面圧を測定することができる。
【0039】
図9は、正極板141、負極板142およびセパレータ143の位置関係を示す図である。反応領域Aは、正極活物質層141bおよび負極活物質層142bがセパレータ143を挟んで互いに重なっている領域であり、Y方向における反応領域Aの幅はWAである。本実施例では、Y方向の長さに関して、正極活物質層141bが最も短くなっているため、反応領域Aの幅WAは、正極活物質層141bの幅に対応している。拘束領域E1は、第1拘束領域E2および第2拘束領域E3を含む。
【0040】
図10から図13には、レートを変えながら充電を行ったときの単電池1の面圧を示している。図10から図13において、縦軸は、単電池1の面圧を示し、横軸は、発電要素14のY方向における位置を示している。横軸の一端は、Y方向における発電要素14の一端側に相当し、横軸の他端は、Y方向における発電要素14の他端側に相当する。図10から図13において、点線は、充電を開始する前の単電池1の面圧(0秒時の面圧)を示し、実線は、充電を開始して10秒経過した後の単電池1の面圧を示している。
【0041】
図10は、レート1Cで充電を行ったときの面圧の変化を示し、図11は、レート12Cで充電を行ったときの面圧の変化を示している。また、図12は、レート20Cで充電を行ったときの面圧の変化を示し、図13は、レート32Cで充電を行ったときの面圧の変化を示している。図10から図13に示すように、充電時のレートが高くなるにつれて、反応領域Aの両端(第1拘束領域E2に相当する)における面圧が、反応領域Aの他の領域よりも高くなる。図10から図13に示す面圧分布から分かるように、充電時のレートが20C以上になると、面圧のバラツキが大きくなりやすい。
【0042】
図14から図17には、レートを変えながら放電を行ったときの単電池1の面圧を示している。図14から図17において、縦軸は、単電池1の面圧を示し、横軸は、発電要素14のY方向における位置を示している。また、図14から図17において、点線は、放電を開始する前の単電池1の面圧(0秒時の面圧)を示し、実線は、放電を開始して10秒経過した後の単電池1の面圧を示している。
【0043】
図14は、レート1Cで放電を行ったときの面圧の変化を示し、図15は、レート12Cで放電を行ったときの面圧の変化を示している。また、図16は、レート20Cで放電を行ったときの面圧の変化を示し、図17は、レート32Cで放電を行ったときの面圧の変化を示している。図14から図17に示すように、放電時のレートが高くなるにつれて、反応領域Aの両端(第1拘束領域E2に相当する)における面圧が、反応領域Aの他の領域よりも低下している。図14から図17に示す面圧分布から分かるように、放電時のレートが20C以上になると、面圧のバラツキが大きくなりやすい。
【0044】
本実施例では、X方向で隣り合う2つの単電池1をY方向にずらして、単電池1の一部の領域を互いに接触させることにより、拘束領域E1(特に、第1拘束領域E2)に拘束力Fを作用させ、第1拘束領域E2が充放電によって変形(膨張および収縮)するのを抑制するようにしている。発電要素14が部分的に変形するのを抑制することにより、発電要素14の内部における劣化のバラツキを抑制することができる。
【0045】
第1拘束領域E2は、以下の式(1)に基づいて決定することができる。
【0046】
14≦WE2/WA×100≦27 ・・・(1)
ここで、WAは、反応領域Aの幅(Y方向の長さ)を示し、WE2は、第1拘束領域E2の幅(Y方向の長さ)を示す(図9参照)。幅WE2は、反応領域Aの両端を基準とした長さである。
【0047】
幅WAを決定すれば、上記式(1)に基づいて幅WE2を決定することができる。第1拘束領域E2は、面圧の変化量が、反応領域Aの他の領域よりも大きい領域を特定するものである。
【0048】
上記式(1)において、幅WA,WE2の関係が下限値(WE2/WA=14)よりも小さいと、拘束力Fを与える領域が不十分となるおそれがある。すなわち、発電要素14の膨張および収縮を抑制することに関して、不十分な領域が発生してしまう。また、幅WA,WE2の関係が、上記式(1)の上限値(WE2/WA=27)よりも大きいと、面圧の変化量が小さい領域にも拘束力Fを与えることになる。
【0049】
図18は、本実施例における単電池1の抵抗増加率と、比較例としての単電池の抵抗増加率との関係を示す図である。図18の縦軸は抵抗増加率を示し、横軸はサイクル数を示す。抵抗増加率は、初期状態(製造時)における単電池1の抵抗値と、充放電後における単電池1の抵抗値との関係を示す値であり、抵抗値の増加率を示す値である。抵抗増加率が上昇するほど、単電池1が劣化していることが分かる。サイクル数は、所定時間の充放電を繰り返して行うときの回数であり、1サイクルにおいて、所定時間の充放電が1回行われる。
【0050】
比較例では、発電要素14の全体、言い換えれば、図9で説明した反応領域Aおよび第2拘束領域E3に対して拘束力Fを与えている。本実施例では、拘束領域E1だけに拘束力Fを与えている。図18に示すグラフは、25℃の温度条件において、レート25Cで充放電を繰り返した結果を示している。
【0051】
図18に示すように、本実施例では、比較例に比べて、抵抗増加率の上昇を抑制することができ、単電池1の劣化を抑制することができる。
【0052】
図19に示すグラフは、第1拘束領域E2の幅(Y方向の長さ)を変えたときの抵抗増加率の変化を示している。図18と同様に、図19の縦軸は、抵抗増加率を示し、横軸は、サイクル数を示している。図19に示すデータは、レート32Cで充放電を繰り返したときの測定結果を示している。
【0053】
グラフG11は、発電要素14の全体(反応領域Aおよび第2拘束領域E3)に拘束力Fを与えたときの抵抗増加率の変化を示す。グラフG12,G13は、拘束領域E1に拘束力Fを与えたときの抵抗増加率の変化を示す。グラフG12の試験では、下記式(2)の条件を満たすように、拘束領域E1(第1拘束領域E2)を設定し、グラフG13の試験では、下記式(3)の条件を満たすように、拘束領域E1(第1拘束領域E2)を設定している。なお、グラフG11〜G13において、発電要素14における反応領域Aおよび第2拘束領域E2のサイズは同一である。
【0054】
WE2/WA×100=35 ・・・(2)
WE2/WA×100=27 ・・・(3)
【0055】
図19に示すように、グラフG11,G12では、サイクル数が増えるにつれて、抵抗増加率が上昇している。一方、グラフG13では、サイクル数が増えても、抵抗増加率が上昇していない。
【0056】
図20に示すグラフは、幅WAのサイズ(言い換えれば、発電要素14のサイズ)を変更したときの抵抗増加率の変化を示している。図18と同様に、図20の縦軸は、抵抗増加率を示し、横軸は、サイクル数を示している。図20に示すデータは、レート32Cで充放電を繰り返したときの測定結果を示している。
【0057】
グラフG21,G22,G23は、発電要素14の全体(反応領域Aおよび第2拘束領域E3)に拘束力Fを与えたときの抵抗増加率の変化を示す。グラフG21の試験では、基準サイズの反応領域Aを有する発電要素14を用いている。基準サイズとは、図19で説明した試験に用いられた発電要素14の反応領域Aと同じサイズである。グラフG22では、反応領域Aのサイズを、基準サイズの1.4倍としている。グラフG23では、反応領域Aのサイズを、基準サイズの1.65倍としている。
【0058】
グラフG24,G25,G26は、下記式(4)の条件において、拘束領域E1に拘束力Fを与えたときの抵抗増加率の変化を示している。
【0059】
WE2/WA×100=27 ・・・(4)
【0060】
グラフG24では、反応領域Aのサイズを基準サイズとしている。グラフG25では、反応領域Aのサイズを、基準サイズの1.4倍とし、グラフG26では、反応領域Aのサイズを、基準サイズの1.65倍としている。
【0061】
図20に示すように、グラフG21,G22,G23では、サイクル数が増加するにつれて、抵抗増加率も上昇している。一方、グラフG24,G25,G26では、サイクル数が増加しても、抵抗増加率が変化していない。また、グラフG24,G25,G26では、反応領域Aのサイズが異なっていても、抵抗増加率の変化は、同様の挙動を示している。図20に示す試験結果から分かるように、反応領域Aおよび第1拘束領域E2の比率が所定条件(上記式(1))を満たせば、反応領域Aのサイズが変わっても、抵抗増加率の上昇を抑制することができる。
【0062】
本実施例の変形例としては、発電要素14をラミネートフィルムで覆った単電池1を用いることができる。ラミネートフィルムを用いた単電池1であっても、本実施例と同様に、単電池1を配置することができる。ここで、単電池1の内部に配置される発電要素14は、正極板141、セパレータ143および負極板142が積層されることによって構成されており、発電要素14には、正極端子および負極端子が接続される。正極端子および負極端子は、ラミネートフィルムに挟まれた状態において、単電池1の外部に突出している。
【0063】
ラミネートフィルムを用いた単電池1において、発電要素14は、正極板141、セパレータ143および負極板142を積層しただけの構成である。そこで、面圧の変化(膨張および収縮)を抑制するとともに、発電要素14の外部に電解液が漏れてしまうのを抑制するためには、発電要素の外縁全体に拘束力Fを与えることが好ましい。拘束力Fは、正極板141、セパレータ143および負極板142の積層方向に作用するものであり、発電要素14の外縁とは、拘束力Fが作用する方向と直交する面内における発電要素14の端部である。拘束力Fを与える領域は、本実施例と同様の方法で決定することができる。
【符号の説明】
【0064】
100:電池パック(蓄電装置) 1:単電池(蓄電素子)
10:電池ケース 10a:ケース本体
10b:蓋 11:正極端子
12:負極端子 13:弁
14:発電要素 15a:正極タブ
15b:負極タブ 141:正極板
141a:集電板 141b:正極活物質層
142:負極板 142a:集電板
142b:負極活物質層 143:セパレータ(電解質層)
20:エンドプレート 21:突起部
30:拘束バンド(連結部材) 40:スペーサ(加圧部材)
50:バスバー 200:治具
201:第1ストッパ 202:第2ストッパ
A:反応領域 E1:拘束領域
E2:第1拘束領域 E3:第2拘束領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電素子に拘束力を与える構造を備えた蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の単電池を用いて組電池を構成する場合には、複数の単電池を一方向に並べて配置しておき、複数の単電池を、配列方向における両端から拘束することがある。ここで、単電池の配列方向において、組電池を見たときに、複数の単電池は互いに重なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−053019号公報
【特許文献2】特開2007−109546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、単電池の充放電によっては、単電池の一部分における面圧だけが、他の部分における面圧よりも大きく変化してしまうことが分かった。ここで、単電池の面圧が上昇するときには、単電池が膨張しており、単電池の面圧が低下するときには、単電池が収縮している。したがって、面圧の大きな変化を抑制すれば、単電池の入出力特性が劣化するのを抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明である蓄電装置は、所定方向に並んで配置され、充放電を行う反応領域を内部に含む複数の蓄電素子と、所定方向において複数の蓄電素子を挟んで拘束する拘束機構と、を有する。ここで、所定方向で隣り合う2つの蓄電素子は、反応領域の一端を含む一部の領域が所定方向で互いに重なった状態において、所定方向と直交する方向にずれて配置されている。所定方向で隣り合う2つの蓄電素子は、互いに接触させることができる。
【0006】
蓄電素子は発電要素を含んでおり、発電要素は、反応領域を含み、正極板、負極板および電解質層が積層された積層体を所定軸の周りで巻くことによって構成することができる。ここで、反応領域の一部の領域としては、所定軸の方向における反応領域の端部を含む領域とすることができる。
【0007】
所定軸の方向における一部の領域の幅WE2と、所定軸の方向における反応領域の幅WAとは、下記式(I)の関係を満たすことが好ましい。
14≦WE2/WA×100≦27 ・・・(I)
【0008】
拘束機構は、一対のエンドプレートおよび連結部材で構成することができる。一対のエンドプレートは、所定方向において、複数の蓄電素子を挟んでいる。連結部材は、所定方向に延び、一対のエンドプレートに連結される。ここで、エンドプレートのうち、蓄電素子と対向する面には、蓄電素子の側に突出する突起部を設けることができる。突起部は、一部の領域に拘束力を与える位置において、蓄電素子と接触させることができる。
【0009】
拘束機構の拘束力を受けて、蓄電素子の一部の領域に荷重を与える加圧部材を配置することができる。所定方向で隣り合う2つの蓄電素子のうち、互いに接触する領域とは異なる領域に対して、加圧部材を接触させることができる。
【0010】
蓄電装置を構成する複数の蓄電素子は、所定方向に並ぶ複数の蓄電素子と、所定方向と直交する方向に並ぶ複数の蓄電素子とで構成することができる。蓄電素子としては、20C以上のレートで充電又は放電が行われるリチウムイオン二次電池を用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定方向で隣り合う2つの蓄電素子は、反応領域の一端を含む一部の領域が所定方向で互いに重なった状態において、所定方向と直交する方向にずれて配置される。このため、拘束機構を用いて、所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子を拘束すれば、反応領域内の一部の領域に対して拘束力を与えることにより、一部の領域における面圧の変化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における単電池の外観図である。
【図2】実施例1における単電池の内部構造を示す図である。
【図3】実施例1における発電要素の展開図である。
【図4】実施例1における発電要素の外観図である。
【図5】実施例1である電池パックの上面図である。
【図6】実施例1である電池パックの一部の外観図である。
【図7】実施例1である電池パックの組み立て方法の一部を説明する図である。
【図8】実施例1の変形例である電池パックの一部の上面図である。
【図9】実施例1において、反応領域および拘束領域を説明する図である。
【図10】レート1Cの充電における単電池の面圧を示す図である。
【図11】レート12Cの充電における単電池の面圧を示す図である。
【図12】レート20Cの充電における単電池の面圧を示す図である。
【図13】レート32Cの充電における単電池の面圧を示す図である。
【図14】レート1Cの放電における単電池の面圧を示す図である。
【図15】レート12Cの放電における単電池の面圧を示す図である。
【図16】レート20Cの放電における単電池の面圧を示す図である。
【図17】レート32Cの放電における単電池の面圧を示す図である。
【図18】抵抗増加率およびサイクル数の関係を示す図である。
【図19】第1拘束領域のサイズを変更した場合において、抵抗増加率およびサイクル数の関係を示す図である。
【図20】発電要素のサイズを変更した場合において、抵抗増加率およびサイクル数の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1である単電池(蓄電素子に相当する)について説明する。図1は、単電池の斜視図であり、図2は、単電池の内部構造を示す図である。図1および図2において、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸である。X軸、Y軸およびZ軸の関係は、他の図面においても同様である。
【0015】
単電池1としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。単電池1は、電池ケース10と、電池ケース10に収容された発電要素14とを有する。電池ケース10は、金属で形成されており、ケース本体10aおよび蓋10bを有する。ケース本体10aは、発電要素14を組み込むための開口部を有しており、蓋10bは、ケース本体10aの開口部を塞いでいる。これにより、電池ケース10の内部は、密閉状態となる。蓋10bおよびケース本体10aは、例えば、溶接によって固定することができる。
【0016】
正極端子11および負極端子12は、蓋10bに固定されている。正極端子11は、正極タブ15aを介して、発電要素14と接続されており、負極端子12は、負極タブ15bを介して、発電要素14と接続されている。また、蓋10bには、弁13が設けられている。弁13は、電池ケース10の内部でガスが発生したときに、電池ケース10の外部にガスを排出するために用いられる。具体的には、ガスの発生に伴って電池ケース10の内圧が弁13の作動圧に到達すると、弁13は、閉じ状態から開き状態に変化することにより、電池ケース10の外部にガスを排出させる。
【0017】
図3は、発電要素14の展開図である。発電要素14は、正極板141と、負極板142と、セパレータ143とを有する。正極板141は、集電板141aと、集電板141aの表面に形成された正極活物質層141bとを有する。正極活物質層141bは、正極活物質、導電剤、バインダーなどを含んでいる。正極活物質層141bは、集電板141aの一部の領域に形成されており、集電板141aの他の領域は露出している。負極板142は、集電板142aと、集電板142aの表面に形成された負極活物質層142bとを有する。負極活物質層142bは、負極活物質、導電剤、バインダーなどを含んでいる。負極活物質層142bは、集電板142aの一部の領域に形成されており、集電板142aの他の領域は露出している。セパレータ143は、電解液を含んでいる
【0018】
図3に示す順番で、正極板141、負極板142およびセパレータ143を積層し、この積層体を図4の矢印Rで示す方向に巻くことにより、発電要素14が構成される。積層体の巻き終わる部分は、テープを用いて固定しておくことができる。図3において、Y方向における発電要素14の一端では、正極板141の集電板141aだけが巻かれている。この集電板141aには、図2を用いて説明したように、正極タブ15aが固定される。Y方向における発電要素14の他端では、負極板142の集電板142aだけが巻かれており、この集電板142aには、負極タブ15bが固定される。
【0019】
図2および図4に示す領域(反応領域という)Aは、正極活物質層141bおよび負極活物質層142bが互いに重なっている領域であり、単電池1の充放電を行うときに、化学反応が行われる領域である。
【0020】
次に、本実施例である電池パック(蓄電装置に相当する)について、図5および図6を用いて説明する。図5は、電池パック100の上面図であり、図6は、電池パック100の一部を示す斜視図である。図5および図6に示す電池パックは、ケース(不図示)に収容することができる。
【0021】
電池パック100は、複数の単電池1を有する。単電池1の数は、電池パック100の要求出力に基づいて、適宜設定することができる。電池パック100は、例えば、車両に搭載することができる。電池パック100から出力された電気エネルギをモータ・ジェネレータによって運動エネルギに変換すれば、この運動エネルギを用いて車両を走行させることができる。また、車両の制動時に発生する運動エネルギをモータ・ジェネレータによって電気エネルギに変換すれば、この電気エネルギを電池パック100に蓄えることができる。
【0022】
複数の単電池1は、X方向およびY方向に並んでいる。X方向で隣り合う2つの単電池1は、Y方向にずれて配置されており、単電池1の一部の領域において互いに接触している。2つの単電池1が互いに接触していない領域には、スペースSが形成されている。スペースSは、単電池1の温度調節に用いられる空気の移動スペースとして用いることができる。
【0023】
単電池1が発熱しているときには、冷却用の空気をスペースSに流すことにより、冷却用の空気および単電池1の間で熱交換を行わせ、単電池1の温度上昇を抑制することができる。単電池1が過度に冷却されているときには、加温用の空気をスペースSに流すことにより、加温用の空気および単電池1の間で熱交換を行わせ、単電池1の温度低下を抑制することができる。
【0024】
電池パック100を構成する複数の単電池1は、複数のバスバー50によって電気的に直列に接続されている。バスバー50は、電気的に直列に接続される2つの単電池1のうち、一方の単電池1の正極端子11と、他方の単電池1の負極端子12とに固定されている。
【0025】
複数のバスバー50は、絶縁材料(例えば、樹脂)で形成されたホルダに固定することができる。これにより、複数のバスバー50をまとめて取り扱うことができる。本実施例では、図5に示すように、バスバー50を配置しているが、これに限るものではない。すなわち、複数の単電池1を電気的に直列に接続することができれば、バスバー50の配置は適宜設定することができる。
【0026】
X方向における電池パック100の両端には、一対のエンドプレート(拘束機構の一部)20が配置されている。エンドプレート20は、例えば、樹脂で形成することができる。エンドプレート20は、単電池1と対向する面に、複数の突起部21を有する。突起部21は、X方向に突出している。
【0027】
一対のエンドプレート20には、X方向に延びる拘束バンド(連結部材に相当する)30の両端31が固定されている。拘束バンド30の両端31は、エンドプレート20に沿って曲げられており、例えば、ボルトやリベットを用いてエンドプレート20に固定されている。
【0028】
本実施例では、一対の拘束バンド30が、Y方向における電池パック100の両端に配置されているが、拘束バンド30の数や、拘束バンド30を配置する位置は、適宜設定することができる。また、拘束バンド30の形状は、適宜設定することができる。拘束バンド30の形状には、拘束バンド30の長手方向と直交する断面における形状が含まれる。拘束バンド30は、一対のエンドプレート20に接続することができればよい。
【0029】
一対のエンドプレート20に拘束バンド30を固定すれば、一対のエンドプレート20によって挟まれる複数の単電池1に対して、拘束力Fを与えることができる。拘束力Fは、X方向において、複数の単電池1を挟む力である。
【0030】
Y方向における電池パック100の両端には、複数のスペーサ40が配置されている。スペーサ40は、X方向において2つの単電池1によって挟まれたり、X方向において単電池1およびエンドプレート20によって挟まれたりしている。スペーサ40は、例えば、樹脂で形成することができる。
【0031】
エンドプレート20の突起部21および単電池1が互いに接触する部分では、拘束力Fが作用する。また、スペーサ40および単電池1が互いに接触する部分や、2つの単電池1が互いに接触する部分にも、拘束力Fが作用する。本実施例では、図6に示すように、各単電池1の一部の領域(拘束領域という)E1だけに、拘束力Fが作用している。単電池1のうち、Y−Z平面を構成する側面には、図6に示すように、2つの拘束領域E1が設けられている。拘束領域E1を決定する方法については、後述する。
【0032】
次に、電池パック100の製造方法について、図7を用いて簡単に説明する。図7は、複数の単電池1を所定位置に配置するための治具200を示す図である。
【0033】
治具200は、複数の第1ストッパ201および第2ストッパ202を有する。第2ストッパ202は、Y方向における治具200の両端に設けられており、X方向に延びている。第1ストッパ201および第2ストッパ202は、単電池1およびスペーサ40を、図5に示す位置に位置決めするために用いられる。単電池1やスペーサ40は、第1ストッパ201および第2ストッパ202の間に形成されたスペースに配置することができる。第1ストッパ201および第2ストッパ202を用いることにより、単電池1およびスペーサ40の位置決めを容易に行うことができる。
【0034】
複数の単電池1および複数のスペーサ40を位置決めした後は、一対のエンドプレート20を配置するとともに、一対のエンドプレート20に拘束バンド30を固定する。また、複数の単電池1に対して複数のバスバー50を接続すれば、電池パック100を組み立てることができる。
【0035】
本実施例では、図5および図6に示すように、2つの単電池1の間に1つのスペーサ40を配置しているが、これに限るものではない。例えば、図8に示すスペーサ41を用いることができる。スペーサ41は、複数の突起部41aを有する。突起部41aは、図8に示すように、2つの単電池1の間に挟まれたり、単電池1およびエンドプレート20の間に挟まれたりする。
【0036】
本実施例では、単電池1をX方向だけでなく、Y方向にも並べているが、これに限るものではない。具体的には、複数の単電池1をX方向に並べるだけでもよい。この場合にも、X方向で隣り合う2つの単電池1は、一部の拘束領域E1において、互いに接触する。また、各単電池1は、スペーサ40と接触する。
【0037】
次に、単電池1に拘束力Fを与える拘束領域E1について、具体的に説明する。
【0038】
本願発明者は、レートが異なる条件で充放電を行いながら、単電池1の複数箇所における面圧を測定したら、充放電時のレートが高くなるにつれて、Y方向における発電要素14の両端における面圧が大きく変化することが分かった。単電池1の面圧とは、単電池1(発電要素14)が膨らんだり、縮んだりするときの圧力である。単電池1が膨らめば、面圧が上昇し、単電池1が縮めば、面圧が低下することになる。例えば、圧力センサを測定箇所に配置することにより、面圧を測定することができる。
【0039】
図9は、正極板141、負極板142およびセパレータ143の位置関係を示す図である。反応領域Aは、正極活物質層141bおよび負極活物質層142bがセパレータ143を挟んで互いに重なっている領域であり、Y方向における反応領域Aの幅はWAである。本実施例では、Y方向の長さに関して、正極活物質層141bが最も短くなっているため、反応領域Aの幅WAは、正極活物質層141bの幅に対応している。拘束領域E1は、第1拘束領域E2および第2拘束領域E3を含む。
【0040】
図10から図13には、レートを変えながら充電を行ったときの単電池1の面圧を示している。図10から図13において、縦軸は、単電池1の面圧を示し、横軸は、発電要素14のY方向における位置を示している。横軸の一端は、Y方向における発電要素14の一端側に相当し、横軸の他端は、Y方向における発電要素14の他端側に相当する。図10から図13において、点線は、充電を開始する前の単電池1の面圧(0秒時の面圧)を示し、実線は、充電を開始して10秒経過した後の単電池1の面圧を示している。
【0041】
図10は、レート1Cで充電を行ったときの面圧の変化を示し、図11は、レート12Cで充電を行ったときの面圧の変化を示している。また、図12は、レート20Cで充電を行ったときの面圧の変化を示し、図13は、レート32Cで充電を行ったときの面圧の変化を示している。図10から図13に示すように、充電時のレートが高くなるにつれて、反応領域Aの両端(第1拘束領域E2に相当する)における面圧が、反応領域Aの他の領域よりも高くなる。図10から図13に示す面圧分布から分かるように、充電時のレートが20C以上になると、面圧のバラツキが大きくなりやすい。
【0042】
図14から図17には、レートを変えながら放電を行ったときの単電池1の面圧を示している。図14から図17において、縦軸は、単電池1の面圧を示し、横軸は、発電要素14のY方向における位置を示している。また、図14から図17において、点線は、放電を開始する前の単電池1の面圧(0秒時の面圧)を示し、実線は、放電を開始して10秒経過した後の単電池1の面圧を示している。
【0043】
図14は、レート1Cで放電を行ったときの面圧の変化を示し、図15は、レート12Cで放電を行ったときの面圧の変化を示している。また、図16は、レート20Cで放電を行ったときの面圧の変化を示し、図17は、レート32Cで放電を行ったときの面圧の変化を示している。図14から図17に示すように、放電時のレートが高くなるにつれて、反応領域Aの両端(第1拘束領域E2に相当する)における面圧が、反応領域Aの他の領域よりも低下している。図14から図17に示す面圧分布から分かるように、放電時のレートが20C以上になると、面圧のバラツキが大きくなりやすい。
【0044】
本実施例では、X方向で隣り合う2つの単電池1をY方向にずらして、単電池1の一部の領域を互いに接触させることにより、拘束領域E1(特に、第1拘束領域E2)に拘束力Fを作用させ、第1拘束領域E2が充放電によって変形(膨張および収縮)するのを抑制するようにしている。発電要素14が部分的に変形するのを抑制することにより、発電要素14の内部における劣化のバラツキを抑制することができる。
【0045】
第1拘束領域E2は、以下の式(1)に基づいて決定することができる。
【0046】
14≦WE2/WA×100≦27 ・・・(1)
ここで、WAは、反応領域Aの幅(Y方向の長さ)を示し、WE2は、第1拘束領域E2の幅(Y方向の長さ)を示す(図9参照)。幅WE2は、反応領域Aの両端を基準とした長さである。
【0047】
幅WAを決定すれば、上記式(1)に基づいて幅WE2を決定することができる。第1拘束領域E2は、面圧の変化量が、反応領域Aの他の領域よりも大きい領域を特定するものである。
【0048】
上記式(1)において、幅WA,WE2の関係が下限値(WE2/WA=14)よりも小さいと、拘束力Fを与える領域が不十分となるおそれがある。すなわち、発電要素14の膨張および収縮を抑制することに関して、不十分な領域が発生してしまう。また、幅WA,WE2の関係が、上記式(1)の上限値(WE2/WA=27)よりも大きいと、面圧の変化量が小さい領域にも拘束力Fを与えることになる。
【0049】
図18は、本実施例における単電池1の抵抗増加率と、比較例としての単電池の抵抗増加率との関係を示す図である。図18の縦軸は抵抗増加率を示し、横軸はサイクル数を示す。抵抗増加率は、初期状態(製造時)における単電池1の抵抗値と、充放電後における単電池1の抵抗値との関係を示す値であり、抵抗値の増加率を示す値である。抵抗増加率が上昇するほど、単電池1が劣化していることが分かる。サイクル数は、所定時間の充放電を繰り返して行うときの回数であり、1サイクルにおいて、所定時間の充放電が1回行われる。
【0050】
比較例では、発電要素14の全体、言い換えれば、図9で説明した反応領域Aおよび第2拘束領域E3に対して拘束力Fを与えている。本実施例では、拘束領域E1だけに拘束力Fを与えている。図18に示すグラフは、25℃の温度条件において、レート25Cで充放電を繰り返した結果を示している。
【0051】
図18に示すように、本実施例では、比較例に比べて、抵抗増加率の上昇を抑制することができ、単電池1の劣化を抑制することができる。
【0052】
図19に示すグラフは、第1拘束領域E2の幅(Y方向の長さ)を変えたときの抵抗増加率の変化を示している。図18と同様に、図19の縦軸は、抵抗増加率を示し、横軸は、サイクル数を示している。図19に示すデータは、レート32Cで充放電を繰り返したときの測定結果を示している。
【0053】
グラフG11は、発電要素14の全体(反応領域Aおよび第2拘束領域E3)に拘束力Fを与えたときの抵抗増加率の変化を示す。グラフG12,G13は、拘束領域E1に拘束力Fを与えたときの抵抗増加率の変化を示す。グラフG12の試験では、下記式(2)の条件を満たすように、拘束領域E1(第1拘束領域E2)を設定し、グラフG13の試験では、下記式(3)の条件を満たすように、拘束領域E1(第1拘束領域E2)を設定している。なお、グラフG11〜G13において、発電要素14における反応領域Aおよび第2拘束領域E2のサイズは同一である。
【0054】
WE2/WA×100=35 ・・・(2)
WE2/WA×100=27 ・・・(3)
【0055】
図19に示すように、グラフG11,G12では、サイクル数が増えるにつれて、抵抗増加率が上昇している。一方、グラフG13では、サイクル数が増えても、抵抗増加率が上昇していない。
【0056】
図20に示すグラフは、幅WAのサイズ(言い換えれば、発電要素14のサイズ)を変更したときの抵抗増加率の変化を示している。図18と同様に、図20の縦軸は、抵抗増加率を示し、横軸は、サイクル数を示している。図20に示すデータは、レート32Cで充放電を繰り返したときの測定結果を示している。
【0057】
グラフG21,G22,G23は、発電要素14の全体(反応領域Aおよび第2拘束領域E3)に拘束力Fを与えたときの抵抗増加率の変化を示す。グラフG21の試験では、基準サイズの反応領域Aを有する発電要素14を用いている。基準サイズとは、図19で説明した試験に用いられた発電要素14の反応領域Aと同じサイズである。グラフG22では、反応領域Aのサイズを、基準サイズの1.4倍としている。グラフG23では、反応領域Aのサイズを、基準サイズの1.65倍としている。
【0058】
グラフG24,G25,G26は、下記式(4)の条件において、拘束領域E1に拘束力Fを与えたときの抵抗増加率の変化を示している。
【0059】
WE2/WA×100=27 ・・・(4)
【0060】
グラフG24では、反応領域Aのサイズを基準サイズとしている。グラフG25では、反応領域Aのサイズを、基準サイズの1.4倍とし、グラフG26では、反応領域Aのサイズを、基準サイズの1.65倍としている。
【0061】
図20に示すように、グラフG21,G22,G23では、サイクル数が増加するにつれて、抵抗増加率も上昇している。一方、グラフG24,G25,G26では、サイクル数が増加しても、抵抗増加率が変化していない。また、グラフG24,G25,G26では、反応領域Aのサイズが異なっていても、抵抗増加率の変化は、同様の挙動を示している。図20に示す試験結果から分かるように、反応領域Aおよび第1拘束領域E2の比率が所定条件(上記式(1))を満たせば、反応領域Aのサイズが変わっても、抵抗増加率の上昇を抑制することができる。
【0062】
本実施例の変形例としては、発電要素14をラミネートフィルムで覆った単電池1を用いることができる。ラミネートフィルムを用いた単電池1であっても、本実施例と同様に、単電池1を配置することができる。ここで、単電池1の内部に配置される発電要素14は、正極板141、セパレータ143および負極板142が積層されることによって構成されており、発電要素14には、正極端子および負極端子が接続される。正極端子および負極端子は、ラミネートフィルムに挟まれた状態において、単電池1の外部に突出している。
【0063】
ラミネートフィルムを用いた単電池1において、発電要素14は、正極板141、セパレータ143および負極板142を積層しただけの構成である。そこで、面圧の変化(膨張および収縮)を抑制するとともに、発電要素14の外部に電解液が漏れてしまうのを抑制するためには、発電要素の外縁全体に拘束力Fを与えることが好ましい。拘束力Fは、正極板141、セパレータ143および負極板142の積層方向に作用するものであり、発電要素14の外縁とは、拘束力Fが作用する方向と直交する面内における発電要素14の端部である。拘束力Fを与える領域は、本実施例と同様の方法で決定することができる。
【符号の説明】
【0064】
100:電池パック(蓄電装置) 1:単電池(蓄電素子)
10:電池ケース 10a:ケース本体
10b:蓋 11:正極端子
12:負極端子 13:弁
14:発電要素 15a:正極タブ
15b:負極タブ 141:正極板
141a:集電板 141b:正極活物質層
142:負極板 142a:集電板
142b:負極活物質層 143:セパレータ(電解質層)
20:エンドプレート 21:突起部
30:拘束バンド(連結部材) 40:スペーサ(加圧部材)
50:バスバー 200:治具
201:第1ストッパ 202:第2ストッパ
A:反応領域 E1:拘束領域
E2:第1拘束領域 E3:第2拘束領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に並んで配置され、充放電を行う反応領域を内部に含む複数の蓄電素子と、
前記所定方向において前記複数の蓄電素子を挟んで拘束する拘束機構と、を有し、
前記所定方向で隣り合う2つの前記蓄電素子は、前記反応領域の一端を含む一部の領域が前記所定方向で互いに重なった状態において、前記所定方向と直交する方向にずれて配置されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記所定方向で隣り合う2つの前記蓄電素子は、互いに接触していることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記蓄電素子は、正極板、負極板および電解質層が積層された積層体を、所定軸の周りで巻くことによって構成され、前記反応領域を含む発電要素を有しており、
前記一部の領域は、前記所定軸の方向における前記反応領域の端部を含む領域であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記所定軸の方向における前記一部の領域の幅WE2と、前記所定軸の方向における前記反応領域の幅WAとが下記式(I)の関係を有する、
14≦WE2/WA×100≦27 ・・・(I)
ことを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記拘束機構は、
前記所定方向において、前記複数の蓄電素子を挟む一対のエンドプレートと、
前記所定方向に延び、前記一対のエンドプレートに連結される連結部材と、
を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記エンドプレートは、前記蓄電素子と対向する面において、前記蓄電素子の側に突出する突起部を有しており、
前記突起部は、前記一部の領域に拘束力を与える位置において、前記蓄電素子と接触することを特徴とする請求項5に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記蓄電素子と接触し、前記拘束機構の拘束力を受けて、前記一部の領域に荷重を与える加圧部材を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記複数の蓄電素子は、前記所定方向と直交する方向に並ぶ複数の蓄電素子を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記蓄電素子は、20C以上のレートで充電又は放電が行われるリチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項1】
所定方向に並んで配置され、充放電を行う反応領域を内部に含む複数の蓄電素子と、
前記所定方向において前記複数の蓄電素子を挟んで拘束する拘束機構と、を有し、
前記所定方向で隣り合う2つの前記蓄電素子は、前記反応領域の一端を含む一部の領域が前記所定方向で互いに重なった状態において、前記所定方向と直交する方向にずれて配置されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記所定方向で隣り合う2つの前記蓄電素子は、互いに接触していることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記蓄電素子は、正極板、負極板および電解質層が積層された積層体を、所定軸の周りで巻くことによって構成され、前記反応領域を含む発電要素を有しており、
前記一部の領域は、前記所定軸の方向における前記反応領域の端部を含む領域であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記所定軸の方向における前記一部の領域の幅WE2と、前記所定軸の方向における前記反応領域の幅WAとが下記式(I)の関係を有する、
14≦WE2/WA×100≦27 ・・・(I)
ことを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記拘束機構は、
前記所定方向において、前記複数の蓄電素子を挟む一対のエンドプレートと、
前記所定方向に延び、前記一対のエンドプレートに連結される連結部材と、
を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記エンドプレートは、前記蓄電素子と対向する面において、前記蓄電素子の側に突出する突起部を有しており、
前記突起部は、前記一部の領域に拘束力を与える位置において、前記蓄電素子と接触することを特徴とする請求項5に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記蓄電素子と接触し、前記拘束機構の拘束力を受けて、前記一部の領域に荷重を与える加圧部材を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記複数の蓄電素子は、前記所定方向と直交する方向に並ぶ複数の蓄電素子を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記蓄電素子は、20C以上のレートで充電又は放電が行われるリチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−169108(P2012−169108A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28346(P2011−28346)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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