説明

蓄電装置

【課題】低抵抗化に優れた蓄電装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明における蓄電装置は、シート状の正極2および負極3の間にセパレータを介在させて積層され、正極2と負極3のそれぞれ対向する2箇所に形成された電極を引き出すリード部2c、3cをそれぞれ備えた素子1と、この素子1の内部に含浸された電解質と、リード部2c、3cに夫々接合された一対の接続部5a、8aを有した第1フレーム5と第2フレーム8とを少なくとも備え、これら第1フレーム5と第2フレーム8は互いに絶縁され、第1フレーム5の内側表面が素子1と対向し、第2フレーム8の内側表面の一部が第1フレーム5の外側表面と対向し、第1フレーム5は、第2フレーム8と対向する箇所に突出部を有し、かつ、第2フレーム8は第1フレーム5と対向する箇所に対向方向の貫通孔を有し、上記突出部がこの貫通孔を介して第2フレーム8の外側表面に表出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器、ハイブリッド自動車や燃料電池車のバックアップ電源用や回生用、あるいは電力貯蔵用等に使用される蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、機器の動作時には、使用されるエネルギーの一部が熱エネルギー等としてその機器から不必要に消費されるエネルギーとなっている。この消費されるエネルギーを、電気エネルギーとして一旦、蓄電素子に貯蔵して必要な際に再利用することにより、消費されるエネルギーを低減し、効率化することが考えられている。
【0003】
この際に、機器の動作に必要なエネルギーを必要な出力で取り出すことが出来る蓄電素子が必須となる。その蓄電素子の候補には、大別してキャパシタと二次電池の2種類がある。
【0004】
図13は従来のキャパシタの一例として示した電気二重層キャパシタの各電極の取出し方法を示した正面断面図である。
【0005】
図13において、素子100は対向した帯状の正極および負極と、正極と負極との間に介在するセパレータからなる。
【0006】
これら正極と負極は夫々、一端辺に電極部が形成されていない引き出し電極部101、102が形成されており、これら引き出し電極部101、102は、互いが突出するようにずれて対向している。そして、これら引き出し電極部101、102が夫々、巻回軸方向の両端部を形成するように前記正極、負極、ならびにセパレータを巻回して素子100を形成している。
【0007】
この正極の引き出し電極部101は、金属製の端子板103と溶接などにより接合され、この端子板103から外部回路へと正極が引き出されていく。
【0008】
また、負極の引き出し電極部102は、有底筒状の金属ケース104の内底面と外底面などからの溶接により接合され、金属ケース104の外表面から負極が外部回路へと引き出されていく。
【0009】
そして、この端子板103の表面と金属ケース104は内面とが接触しないように、この間に絶縁テープ(図示なし)などを介在させている。
【0010】
このように夫々の電極を取り出すことによって、端子板103や金属ケース104のような引き出し端子の役割をする部材と素子100との接触面積を増やすことができるため、キャパシタ内部における低抵抗化を図ることができる。
【0011】
なお、この出願に関する先行技術文献情報として、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−258414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
確かに、上記電気二重層キャパシタのように従来の蓄電装置は、上記引き出し電極部101、102のような電極未形成部からそれぞれの電極を引き出すことにより、電極の集電抵抗を減少させるとともに、この電極未形成部を端子板の底面または外装ケースの内底面へ直接接合させることにより、素子100と端子板103および外装ケース104との接触面積を増やし低抵抗化を図ってきた。
【0014】
しかしながら、瞬時により多くのエネルギーを要する電子機器に搭載される蓄電装置については、上記電気二重層キャパシタの構成による低抵抗化に留まらず、更なる低抵抗化による出力密度の向上が求められている。
【0015】
そこで、本発明は低抵抗化によって出力特性が向上した蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題に対して本発明における蓄電装置は、シート状の一対の電極の間にセパレータが介在して積層されて外周面の対向する2箇所に形成されて一方の電極から電極を引き出す一対の第1電極引出部と、これらの第1電極引出部と異なる外周面の対向する2箇所に形成されて他方の電極から電極を引き出す一対の第2電極引出部を備えた素子と、この素子の内部に含まれた電解質と、上記素子に形成された一対の第1電極引出部に夫々接合された一対の第1接続部を有した第1フレームと、この素子に形成された第2電極引出部に夫々接合された一対の第2接続部を有した第2フレームとを少なくとも備え、これら第1フレームおよび第2フレームは互いに絶縁され、この第1フレームの内側表面が上記素子と対向し、上記第2フレームの内側表面の一部が上記第1フレームの外側表面と対向し、上記第1フレームはその外側表面において、上記第2フレームと対向する箇所に突出部を有し、かつ、上記第2フレームは上記第1フレームと対向する箇所に対向方向の貫通孔を有し、上記突出部が上記貫通孔を介して上記第2フレームの外側表面に表出していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
この構成により本発明の蓄電装置は、帯状である電極体の一端辺から電流を取り出す従来の方法と比べて、電極の集電抵抗を半減させることができる。
【0018】
さらに、立方体である同じ空間に素子を可能な限り納める場合では、約2.55倍の接続面積を設けることができる。従って、各フレームと素子との間の接続抵抗を大幅に低減させることができ、より低抵抗な製品特性の発現が可能となり蓄電装置として出力特性を高めることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1における電気二重層キャパシタを示した分解斜視図
【図2】(a)本発明の実施例1における電気二重層キャパシタを示した斜視図、(b)同電気二重層キャパシタに用いられる第2フレームおよびケースの接合方法の一例を示した部分正面断面図
【図3】本発明の実施例1における電気二重層キャパシタに用いられる一方の電極の集電の様子を示した上面図
【図4】本発明の実施例2における電気二重層キャパシタを示した分解斜視図
【図5】(a)本発明の実施例2における電気二重層キャパシタを示した斜視図、(b)同電気二重層キャパシタに用いられる第2フレームの上面部および接続部の接合方法の一例を示した部分正面断面図、(c)同電気二重層キャパシタに用いられる第2フレームの上面部および接続部の接合方法の別の一例を示した部分正面断面図
【図6】本発明の実施例3における電気二重層キャパシタを示した分解斜視図
【図7】本発明の実施例3における電気二重層キャパシタを示した斜視図
【図8】本発明の実施例4における電気二重層キャパシタを示した分解斜視図
【図9】(a)本発明の実施例4における電気二重層キャパシタを示した斜視図、(b)同電気二重層キャパシタの端子部を備えた構成を示した斜視図
【図10】本発明の実施例5における電気二重層キャパシタに用いられる素子および第1フレームとの接合の様子を抜粋して示した正面断面図
【図11】本発明の実施例6における電気二重層キャパシタに用いられる素子の構成を示した分解斜視図
【図12】(a)本発明の実施例6における電気二重層キャパシタに用いられる素子を示した上面図、(b)本発明の実施例1における電気二重層キャパシタに用いられる素子を示した上面図
【図13】従来の蓄電装置の一例である電気二重層キャパシタを示した正面断面図
【図14】(a)従来の蓄電装置に用いられる素子を示した斜視図、(b)同素子を分解して一方の電極箔の一部を抜粋して示した分解図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を用いて本発明の実施例1および請求項1、3、4、6、7、9、11、12に記載の発明について説明を行うが、下記の内容に限定されない。
【0021】
また、以下の本発明における蓄電装置の説明において、蓄電装置の一例として電気二重層キャパシタを用いて説明を行うが、本発明における蓄電装置は上記電気二重層キャパシタに限定されない。
【実施例1】
【0022】
図1は本発明の実施例1における電気二重層キャパシタの分解斜視図であり、図2(a)は同電気二重層キャパシタの斜視図であり、図2(b)は同電気二重層キャパシタの第2フレームおよびケースの接合方法の一例を示した部分正面断面図である。
【0023】
本実施例の電気二重層キャパシタは矩形箔状である正極2および負極3を一対の電極として対向させ、この一対の電極の間にセパレータ4を介在させて積層した積層体を形成するために、正極2および負極3、セパレータ4を複数枚用意し、これらを交互に積層して構成された素子1と、この素子1に含浸される電解液(図示なし)と、これら素子1および電解液を収容すると共に、略コの字状の第1フレーム5および第2フレーム8とこれらの第1フレーム5、第2フレーム8の間に介在して絶縁を行う絶縁板6とOリング7、これらの部材を収容する有底筒状のケース9から構成されている。
【0024】
正極2および負極3は、例えばアルミニウム箔から成る矩形状の集電体2a、3aの表裏面上に活性炭を主成分とする電極層2b、3bを形成したものである。この電極層2b、3bを集電体2a、3aへ夫々形成する際、矩形状である集電体2a、3aの長手方向の両端辺上には、上記電極層2b、3bを形成しない集電体表出部であるリード部2c、3cを設けるように形成する。
【0025】
これら正極2および負極3を、矩形状である正極2および負極3それぞれの長手方向が直交するように対向させ、その間にセパレータ4を介在させて複数の正極2および負極3、セパレータ4を積層し、素子1を構成する。その際、正極2および負極3はそれぞれの長手方向が直交関係となるように配置されているため、リード部2c、3cは互いに直交関係となるように表出している。
【0026】
つまり、積層された素子1の積層距離を素子1の高さとすると、本実施例の電気二重層キャパシタに用いられる素子1は略十字状の柱体を形成し、四方の突出した端部はそれぞれリード部2c、3cの集合体により構成されることとなる。
【0027】
この素子1を構成するために、上記矩形状などの集電体2a、3aが方形状のものを用いた正極2および負極3を用いる場合、それぞれの電極に形成される電極層2b、3bの形状は互いに合同な正方形状とすることが好ましく、かつ、正極2の電極層2bが負極3の電極層3bとズレが少なく対向していることが望ましい。さらには、本実施例において、各電極を積層する際のズレを考慮すると、電極層3bが電極層2bの面積より大となる構成が好ましい。これは、充電において電極層2bの近傍に電解質アニオンが寄るが電極層3bが対向していない場合は特に、電極層2bの近傍が酸性となり、これにより電極層2bのバインダ材料や、セパレータ4の電極層2bと対向した箇所が劣化してしまう可能性があるためである。リード部2c、3cが互いに直交方向に表出するように素子1が構成されるため、それぞれ単に同じ形状に電極層2b、3bを形成しただけでは、一方の電極が他方の電極に対して略90度転回して対向することとなり、それぞれの電極層2b、3bにおいて未対向部分が形成されることが多い。
【0028】
したがって、電極層2b、3bの形状は正方形などが好ましい。
【0029】
なお、素子1を構成するセパレータ4は、例えばセルロースなどの紙製のものなど正極2および負極3を絶縁するものであれば特に限定されない。
【0030】
第1フレーム5は、例えば略コの字状のアルミニウム板から構成され、対向する一対の接続部5aとこの一対の接続部5aを繋ぐ中継部である上面部5bと、この上面部5b上に形成されて図1において上方向に突出した外部接続部5cとから構成されている。この第1フレーム5は、上記上面部5bの内面が上記素子1と対向して、上記素子1の一部を覆うように素子1の上側に位置し、第1フレーム5の一対の接続部5aの内面が、素子1が有する正極2の一対のリード部2cの集合体と当接すると共に、接合されている。つまり、本実施例ではリード部2cが上記第1電極引出部に該当する。
【0031】
絶縁板6は、上記第1フレーム5の上面部5b上に配設されている。この絶縁板6には厚み方向へ貫通孔である通過孔6aが形成され、この通過孔6aに第1フレーム5の外部接続部5cが挿入され、この絶縁板6から上記外部接続部5cが外部へ表出するように構成されている。
【0032】
この絶縁板6は第1フレーム5および第2フレーム8(詳細は後述)を絶縁する材料であれば、特に限定されないが、例えば、ブチルゴムやエチレンプロピレンゴムなどからなるゴム状弾性体から成るシートを介在させる方法や、予め、各フレームの上面部5bの外表面、上面部8bの底面のうち少なくとも一方に、絶縁材を形成し、互いの絶縁を図る方法などがある。なお、形成する上記絶縁材には、ポリアミノアミド化合物、変性ポリオレフィン系樹脂を塗工する方法やアクリル−メラミン系樹脂を水、イソプロピルアルコール、プチセロソルブなどの混合溶媒に溶かしたものを塗工し、電圧を印加することにより形成する方法などがある、また、第1フレーム5および第2フレーム8のどちらか一方の対向する箇所にアルマイトを形成する処理を行う構成でもよい。従って、絶縁板6は部材名の如く板材に限定されず、層状であってもよい。
【0033】
第2フレーム8は、第1フレーム5と同様に例えば略コの字状のアルミニウム板から構成され、対向する平板状の一対の接続部8aとこの一対の接続部8aを繋ぐ中継部である上面部8bと、この上面部8b上に厚み方向へ形成された貫通孔である表出孔8dと、この表出孔8dの周囲を囲うように形成され、上記第1フレーム5に設けた外部接続部5cと同じように上面に向かって突出した第2フレーム8の外部接続部8cから構成されている。因みに、この外部接続部8cを形成する方法として、例えばプレス加工、鍛造加工、インパクト加工などが考えられる。
【0034】
この第2フレーム8は上記第1フレーム5の外部接続部5cが第2フレーム8の外部へ表出するように、外部接続部5cが上記表出孔8dに挿入され、図2(a)のように、この表出孔8dの開口部から外部接続部5cが表出する構成である。その際、外部接続部5cと表出孔8dの内周面とが絶縁されるように、本実施例では上記外部接続部5cと表出孔8dの間にOリング7が介在している。
【0035】
このOリング7を構成する材料は絶縁性に優れていれば特に限定されないが、例えばエチレンプロピレンゴム、あるいはブチルゴム(イソブチレンイソプロピレンゴム)等の過酸化物加硫ゴムもしくは、樹脂加硫ゴムなどが用いられる。これら材料を用いることにより、物性として応力緩和が少なく、水分透過性が低いことから、蓄電装置外部から内部への水分浸入の抑制が可能となる。
【0036】
なお、本実施例では、絶縁板6およびOリング7を用いて第1フレーム5の上面部5bおよび外部接続部5c表面部分の絶縁を行っているが、これに限定されず、上記絶縁板6がブチルゴムなどから成る場合、絶縁板6の一部を伸ばして外部接続部5cの側面を覆うように構成することによって、上記Oリング7の機能を、絶縁板6に代替させてもよい。これにより、Oリング7と絶縁板6とが、一体の部材として構成されるため、Oリング7と絶縁板6の界面がなくなり、外部から浸入する水分の浸入経路が減り、蓄電装置内部への水分の浸入を抑制することができる。
【0037】
この第2フレーム8の上面部8bが、上記絶縁板6の上面上に配設されている。そして、第2フレーム8の一対の接続部8aの内面が、素子1が有する負極3のリード部3cの集合体と当接すると共に、接合されている。つまり、本実施例ではリード部3cが上記第2電極引出部に該当する。
【0038】
なお、第1フレーム5および第2フレーム8はアルミニウム板の他にニッケルや鉄、銅などによって構成されていても良い。
【0039】
また、素子1と接続部5a、8aとを接合する際には、例えば溶接により接合を行うが、その際、素子1の積層方向と平行になるように溶接痕を形成するように溶接を行うことが好ましい。これは、一度の溶接によりリード部2c、3cの集合体である正極引出部および負極引出部と接続部5a、8aとの接合点を多く設けることができ、生産性や信頼性の向上を図ることができる。
【0040】
そして、本実施例では素子1、第1フレーム5、絶縁板6、Oリング7、第2フレーム8、これらの部材を有底筒状のケース9に収容している。
【0041】
そして、本実施例ではこのケース9の開口部を第2フレーム8の上面部により封止した構成である。
【0042】
上記ケース9の開口部の封止をする際に、ケース9に例えばアルミニウム材を用い、ケース9の外側面から第2フレーム8が配設された箇所へ、図2(b)へ示されている矢印方向へ溶接痕9eを形成しながら溶接を行い、ケース9の開口部の封止および第2フレーム8の固定を行う。
【0043】
上記ケース9は、より容易に溶接を行うことを考慮してアルミニウムのような金属などの導電性を有したものでもよいが、絶縁性を有した材料で構成されていてもよく、例えばポリフェニレンサルファイド樹脂や、液晶ポリマーでもよい。なお、ケース9が金属などの導電性材料からなる場合、第1フレーム5、第2フレーム8のうちケース9の内面と対向する箇所には絶縁層を介在させる構成が好ましい。この絶縁層を設ける方法として、例えば、ケース9と各フレームの間に樹脂テープ、絶縁性シート、樹脂コート層などを設ける方法がある。
【0044】
上記のように本実施例の電気二重層キャパシタを一例とする本発明における蓄電装置は、一対のリード部2c、3cをそれぞれ有した正極2および負極3がセパレータ4を介在させて積層された素子1と、この素子1の側周面において、対向する2箇所に形成されたリード部2cの集合体により構成された一対の正極引出部と、上記正極引出部と直交する方向に対向する2箇所に形成されたリード部3cの集合体により構成された一対の負極引出部を備え、これらそれぞれが一対である正極引出部および負極引出部とそれぞれ接合される一対の接続部5a、8aを備えた第1フレーム5および第2フレーム8とを少なくとも備え、この第1フレーム5および第2フレーム8は互いに絶縁され、第1フレーム5の内側表面は素子1と対向し、第1フレーム5の外側表面の一部は第2フレーム8の内側表面の一部と対向していると共に、上記第1フレーム5の外側表面において第2フレーム8と対向する箇所に突出部である外部接続部5cを有し、上記第2フレーム8は第1フレーム5と対向する箇所に貫通孔を有し、この貫通孔を介して上記外部接続部5cが第2フレーム8の外側表面へ表出している構成である。
【0045】
上記構成により、本発明における蓄電装置は、これまで正極および負極がそれぞれ素子の一箇所から引き出されていた従来の構成に対して、それぞれの電極において2箇所から電極を引き出すことができるため、引出端子の役割を果たす第1フレーム5および第2フレーム8と接続する上で、接触面積を広げることができ、素子1と第1フレーム5および第2フレーム8の間における接触抵抗を低減させることができる。これは、仮に、一辺の長さをrとした立方体形状を有した同じ容積の空間に内接するように素子を収容した場合、上記一端辺から電流を取り出す従来の巻回状の素子(概算接続面積:π×r2/4)と比べて、本発明の素子1(概算接続面積:r2×2)は、一方の電極において約2.55倍の接続面積を得ることができるためである。
【0046】
さらに、上記従来の素子と比べて、本発明の素子1は各電極の集電抵抗を半減させることができる。その理由を以下に詳しく述べる。
【0047】
図3は本発明の蓄電装置に用いられる素子1を分解して一方の電極における接合箇所および電極内の集電方向を示した分解図である。
【0048】
図14(a)は従来の蓄電装置に用いられる素子100を表した斜視図であり、(b)は同素子を分解して一方の電極における接合箇所および電極内の集電方向を示した上面図である。
【0049】
図14(a)において、従来の素子100は、巻回軸方向両端から電流を取り出しているため、この両端部に位置する上記引き出し電極部101、102において、上記電極引き出し部材(図示なし)と接合される。その際、図14(a)に示される矢印方向へ伸びるようにレーザー溶接などによって接合される。そして、図14(b)のように、溶接により形成された接合箇所110が形成される。この接合箇所110は、素子100が巻回状であるため、巻回軸(図示なし)により近い部分は各接合箇所110の間隔が小さい。しかし、巻回軸から遠い部分は、同時に、集電体端部により構成される略円環の径が大きくなるため、接合箇所110の間隔が広くなってしまう。この際、図14(b)に示される矢印のように、電極内を流れる電流は、接合箇所110へ到達するために移動する経路が、少なくとも集電体箔の幅の距離Wの分だけ要し、加えて、接合箇所110の間隔が広い部分はその間隔の距離Dだけ移動することを要する。また、特に巻回状の素子100の最外周近傍に該当する部分は、いくら巻回軸を中心にして放射線状に接合箇所を増やしても、素子100の最外周近傍に位置する接合箇所110の間隔を狭めることは難しい。
【0050】
上記構成に比べ、図3のように、本発明に用いられる正極2あるいは負極3は、リード部2c、3cの一対の端部に接合箇所10を有する構成となる。これにより、例えば、図14(b)の電極の集電体箔の幅と同じ大きさに形成したとしても、各電極の両端に形成された接合箇所10へ移動しようと電極内部を流れる電流の集電経路は、矢印のように約半分になる。また、上記巻回状の素子100と異なり、本実施例における素子1は積層される各電極において、接合箇所10どうしの間隔が広がることは少ないため、間隔方向に集電経路が増加することを抑えることができると共に、接合箇所10の増加によって各接合箇所の間隔を狭めることが容易である。このように本発明の蓄電装置は、素子1内部における集電抵抗を大幅に低減させることができる。
【0051】
このように蓄電装置として低抵抗化が図れることにより、素子1と、第1フレーム5および第2フレーム8との接合箇所における発熱が抑制され、セパレータ4の炭化や電解液の分解などの性能劣化を抑制させることができる。
【0052】
さらに、上記のように、第1フレーム5および第2フレーム8を用いることにより、正極2および負極3から計4箇所の電極引出部を形成し、これら電極引出部から短絡を防ぎながら素子1から電極の引き出しを行うことができる。かつ、ケース9により素子1と第1フレーム5、第2フレーム8を収容することにより、気密性の高い蓄電装置を構成することができる。
【0053】
また、外部接続部5cが、第2フレーム8に形成した表出孔8dを介して、第2フレーム8の外側表面に表出していることにより、上記のように蓄電装置として低抵抗を維持しつつ、正極2および負極3を外部回路などと接続させるバスバーなどの接続部材(図示なし)と一方で接続させることができるため、本実施例の電気二重層キャパシタを複数個用いて蓄電ユニットを構成する場合や、あるいは他の電子部品(図示なし)と電気的に接続させて電子機器を構成する場合において、一方から両方の電極を引き出せるため、他の電子部品、蓄電装置どうしを接続する接続部材(図示なし)を一方に集約させて配置させることが可能となり、蓄電ユニットや電子機器として低抵抗化および小型化を図ることができる。
【0054】
両フレームを用いる更なる効果として、本発明の蓄電装置は従来の巻回状の素子を用いた蓄電装置とは異なり、表出孔8dの孔径を調整することにより、外部接続部5cの表出部分の大きさを自由に調整することができる。これにより、両方の電極を本発明の蓄電装置から引き出す際に、外部端子として十分な接触面積を確保することができる。これにより、接続部材などとの外部回路と本発明の蓄電装置との間の低抵抗化を図ることができる。これにより、本願発明の蓄電装置を用いた蓄電ユニットや電子機器は更に抵抗を低減させることができる。
【0055】
これは、図13のように、従来の巻回状の素子100を用い、この素子100の巻回軸方向両端部に金属ケース104と端子板103を接合させてこの素子100から電極を引き出す構成である蓄電装置は、素子100と接触抵抗を低減させようとすると、上記端子板103の素子100との接触面の面積は上記素子100の巻回径から算出される端部の面積より大きい必要があり、かつ、この端子板103は上記金属ケース104の開口端部を封止する機能も有するため、金属ケース104の開口端部に配設される必要がある。そのため、従来の蓄電装置において一方で両方の電極を引き出そうとすると、金属ケース104から引き出される一方の電極は、金属ケース104の開口端部から引き出される必要がある。このように、端子板103の大きさの調整には制限があり、また、金属ケース104内部の素子100の収容効率や蓄電装置として省スペース化を考慮すると、金属ケース104の開口端部の接触面積を広げることは困難であるからである。
【0056】
このように本発明では、蓄電装置の内部抵抗および外部回路との抵抗の抑制に優れるという格別な効果を奏するものである。
【0057】
なお、素子1と第1フレーム5の上面部5bの間や、素子1とケース9の内底面の間にゴム材などの弾性に優れた部材を介在させて、ケース9内における素子1の固定強度向上を図る構成であってもよい。
【0058】
また、例えば外部接続部5cにケース9内部に至る貫通孔(図示なし)を設け、その貫通孔の外側の開口部を塞ぐように自己復帰型の圧力調整弁を配設した構成であってもよい。ただし、この貫通孔の形成箇所は上記に限らない。
【0059】
なお、本実施例に用いる電解液には、溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)などのうち少なくとも一つを用いた溶媒に、電解質として例えばテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TEABF4)や、トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TEMABF4)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMIBF4)、1−エチル−2、3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EDMIBF4)、1、2、3−トリメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(TMIBF4)及び1、3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(DMIBF4)などのうち少なくとも一つを用いることができるが、特に溶媒、電解質を限定するものではない。
【0060】
上記のように電解液として用いることに限らず、溶媒中にバインダを含ませ、ゲル状のものを用いた構成や、固体状の電解質を用いた構成であってもよい。
【0061】
また、集電体2a、3aは上記のアルミニウム箔の他に、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、珪素、鉄、銀、鉛、ニッケル、銅、白金、金や、これらの合金を用いてもよい。また、この集電体2a、3aは無処理のプレーン箔でもよいし、電極層2b、3bとの接着強度を高めるためにエッチング処理を施したエッチング箔であってもよい。
【0062】
さらに、電極層2b、3bには上記のように活性炭の他に、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩やポリテトラフルオロエチレンなどのバインダやアセチレンブラックなどの導電剤が含まれた方が活性炭どうしの距離の短縮や導電性を向上させることができるため、素子1としてより低抵抗化を図ることができる。
【0063】
そして、本実施例において用いられる絶縁板6は第1フレーム5および第2フレーム8を絶縁する必要があるが、それぞれのフレームが対向する箇所全てに介在する必要はない。
【0064】
この絶縁板6の主な機能は、絶縁と封止であり、これら機能を満たすために、少なくとも、第1フレーム5および第2フレーム8が互いに対向する部分に位置すると共に、第2フレーム8の表出孔8dの開口部外形より外側に位置し、この外形を囲うように形成されることが好ましい。このように必要最小限だけ形成された絶縁板6を、第1フレーム5および第2フレーム8が、付勢することにより、絶縁および封止が可能となる。従って、本実施例では、Oリング7を構成要素の一つとして説明してきたが、必須構成要素ではなく、用いない場合であっても、同様に本発明の蓄電装置として効果を奏する。
【実施例2】
【0065】
以下に、図面を用いながら本発明の実施例2および請求項2、8、9に記載の発明の説明を行うが、本発明は下記の内容に限定されない。また、上記実施例1と同じ構成要素については実施例1と同じ符号を付与して説明を行う。
【0066】
図4は本発明の実施例2における電気二重層キャパシタの分解斜視図であり、図5(a)は同電気二重層キャパシタの斜視図であり、図5(b)は同電気二重層キャパシタの第2フレーム18の上面部18bおよび接続部18aの接合方法の一例を示した部分正面断面図であり、図5(c)は同電気二重層キャパシタの上面部18bおよび接続部18aの接合方法の他の例を示した部分正面断面図である。
【0067】
本実施例では、図4、図5(a)のように素子1と溶接痕18eを形成しながら接合される第2フレーム18は有底角筒状の接続部18aを備えるとともに、接続部18aの開口部に接合されてこの開口部を封止する板状の蓋体である上面部18bにより構成されている。そして、この上面部18bは実施例1の第2フレーム8の表出孔8dのように厚み方向へ形成された表出孔18dを有している。さらに上面部18bは、実施例1の外部接続部8cのように、この表出孔18dの外側の開口部を囲うように配設された外部へ突出した外部接続部18cを備え、実施例1と同様に、電気二重層キャパシタの一方から外部へ正極および負極を取り出すことが可能となっている。
【0068】
この外部接続部18cの形成方法は実施例1の外部接続部5cと同様のものを用いることができる。また、第1フレーム5は実施例1と同様に略コの字状のものを用いている。
【0069】
さらに図5(b)のように、上面部18bと接続部18aを接合する場合、この上面部18bを接続部18aの開口端部上に載置し、上面部18bの端辺を溶接して接合し、図5(a)のように、溶接痕18fを形成する構成や、図5(c)のように、上面部18bの外形が接続部18aの開口面の外形より小さくなるように構成し、また接続部18aの開口端の内側に切り欠き部18gを形成し、この切り欠き部18gへ上面部18bを係止し、係止された上面部18bを図5(c)に記載された矢印方向へ溶接を行い図5(a)のように溶接痕18fを形成する構成などでもよい。
【0070】
図5(b)のように接合することにより、工数少なく接合を行うことができるため、生産性向上を図ることができる。また、図5(c)のように接合することにより、上面部18bの位置決めが容易となるため、電気二重層キャパシタとして接合の信頼性を高めることができる。
【0071】
本実施例では、素子1から正極2および負極3がそれぞれ2箇所から引き出される構成であるが、実施例1と異なり、素子1から電極を引き出す第2フレーム18が接続部18aおよび上面部18bによって構成されることにより、素子1を収容する外装部材の機能も同時に果たしている。
【0072】
この構成により、本実施例の電気二重層キャパシタは、実施例1と同様に低抵抗化を図ることができることに加え、実施例1と比べて部品点数が減るため、電気二重層キャパシタとして、低コスト化および生産性向上を図ることができる。
【0073】
また、外部接続部18cを形成する際、板材である上面部18bだけを持ち運びして形成することができるので、実施例1の蓄電装置と比べて生産性向上を図ることができる。
【0074】
なお、本実施例において、素子1を収容する機能も果たす第2フレーム18は一方の極性を有した構成となる。従って、素子1と共に第2フレーム18内部に収容される第1フレーム5は第2フレーム18の内面と当接しないように第1フレーム5の上面部5bの外形が、有底角筒状である第2フレーム18の接続部18aの筒状部分の内形より小さくなるように構成する必要がある。あるいは、接続部5a、18aの間など当接し易い箇所へ絶縁性に優れた部材を介在させ、絶縁を図る構成でもよい。介在させる絶縁部材としては、電解質が溶媒および溶質から構成される電解液を用いる場合などは、その電解液と常時接触する可能性も考慮して、例えば電解液との反応性が低い変性ポリプロピレンやポリメチルペンテンなどが挙げられる。
【実施例3】
【0075】
以下に、図面を用いながら本発明の実施例3および請求項5に記載の発明の説明を行うが、本発明は下記の内容に限定されない。また、上記実施例1と同じ構成要素については実施例1と同じ符号を付与して説明を行う。
【0076】
図6は本発明の実施例3における電気二重層キャパシタの分解斜視図であり、図7は同電気二重層キャパシタの斜視図である。
【0077】
本実施例では、図6のように第2フレーム28が、角筒状の接続部28aとその接続部28aの上部を覆うように上面部28bから構成され、側面と天面を備えた略筐体状の金属部材である。
【0078】
そして、この上面部28bは実施例1の第2フレーム8の表出孔8dのように厚み方向へ形成された表出孔28dを有している。さらに上面部28bは、この表出孔28dの外側の開口部を囲うように配設された外部へ突出した外部接続部28cを備え、実施例1と同様に、電気二重層キャパシタの一方から外部へ正極および負極を取り出すことが可能となっている。
【0079】
なお、第1フレーム5は実施例1と同様に略コの字状のものを用いる。
【0080】
そして、本実施例における電気二重層キャパシタは、上記接続部28aの下側の開口部を封止するために、板状である底板29を用いて上記第2フレーム28の下側の開口端部と接合する構成である。この構成により、第2フレーム28および底板29によって素子1を収容する機能を果たす。
【0081】
本実施例において用いられる底板29にまず求められる機能は、接続部28aの下側の開口部を封止することである。底板29に軽い材質を用いることにより、軽量化を図ることができる。底板29の曲げ弾性率および第2フレーム28の下側開口部の封止を考慮すると、アルミニウムなどの金属材料などが好ましい。
【0082】
上記底板29を第2フレーム28に接合する際には、実施例2の第2フレーム18の上面部18bを接続部18aへ接続するように、底板29上面に第2フレーム28の接続部28aの下端が配設され、底板29の底面側から溶接などによって底板29および第2フレーム28を接合させる方法や、筒状である接続部28aの下端において、厚み方向の内側に環状の切り欠きを形成し、この環状の切り欠きへ底板29が、底板29の底面と接続部28aの下端面が面一となるように収容され、接続部28aの外表面側から溶接する方法をとることにより、底板29を容易に固定できるため、安定して接合させることができ、蓄電装置の外装体として封止強度を向上させることができる。
【0083】
なお、本実施例では第2フレーム28の上面部28bは筒状である接続部28aと一体になったものを用いたが、これに限定されず、上面部28bが接続部28aに接合されたものであってもよい。また、本実施例において、上面部28bを第2フレーム28の天面に位置するとして説明を行ったが、これに限定されず、本実施例の蓄電装置を配置する際に上記上面部28bが下側に位置するように配置した場合は、名称が上部面28bであっても本実施例における蓄電装置の底面となる。
【実施例4】
【0084】
以下に、図面を用いながら本発明の実施例4および請求項10に記載の発明の説明を行うが、本発明は下記の内容に限定されない。また、上記実施例1と同じ構成要素については実施例1と同じ符号を付与して説明を行う。
【0085】
図8は本発明の実施例4における電気二重層キャパシタを示した分解斜視図である。
【0086】
図8のように、本実施例では、実施例1と同様の素子1を用い、実施例1のように対向する一対の接続部35aを有し、これら接続部35aが板状の上面部35bにより中継されたコの字状の接続部材である第1フレーム35と素子1の正極2が接続されており、有底筒状であり筒部の内側面の対向する2箇所を接続部38aとした第2フレーム38と素子1の負極3が接続されている。
【0087】
それぞれ素子1と接続されたこれら第1フレーム35および第2フレーム38は、第1フレーム35の上面部35bの内面と、有底筒状である第2フレーム38の底面部38bの内底面とが素子1を介在させて対向するように配置され、第1フレーム35と共に素子1を第2フレーム38が収容するように構成されている。なお、本実施例は実施例2のように、第2フレーム38内において、接続部35aの外表面と、第2フレーム38の内面の一部が互いに対向する構成となる。従って、この対向する箇所については、特に上記実施例2のように、変性ポリプロピレンなどの絶縁材料を介在させる必要がある。
【0088】
第1フレーム35は、蓄電装置を構成後、外部接続における自由度を高めるため、外部端子の機能を果たす突起状の外部接続部35cを上面部35bの外表面上に形成することが好ましい。
【0089】
本実施例の外部接続部35cは、上記実施例1〜3と異なり、第2フレームに設けられた貫通孔から外部へ表出させる必要がないため、少なくとも、外部接続部35cの頂点が、有底筒状の第2フレーム38の開口端の頂点よりも高くなるように構成されることが好ましい。因みに、本実施例では、例えば上面部35bに設けられた平板状の突起を外部接続部35cとして構成する。
【0090】
図9(a)は本発明の実施例4における電気二重層キャパシタを示した斜視図であり、図9(b)は、第2フレーム38に外部接続部38cを設けた本発明の実施例4における電気二重層キャパシタの斜視図である。
【0091】
図9(a)において、本実施例における電気二重層キャパシタは、一つの蓄電装置を構成するために、第2フレーム38の開口部から表出した第1フレーム35の上面部35bと第2フレーム38の開口部の間に、樹脂などの絶縁材料から成る封止絶縁材37が介在すると共に融着されて封止されている。
【0092】
因みに、各接続部35a、38aと素子1との接合については、他の実施例と同様に、素子1の積層方向に対して、平行方向に溶接痕38eなどが形成されていることが好ましい。なお、この図9(a)において、接続部35aに形成される溶接痕の図示は省略されている。
【0093】
以上により、本実施例の電気二重層キャパシタが構成される。
【0094】
上記構成により、本実施例における電気二重層キャパシタは、他の実施例と同様に、素子1と各フレーム間における接続抵抗および集電抵抗を抑制させることができると共に、他の実施例と比べて、部品点数が少なく電気二重層キャパシタを構成できるため、生産性が向上する。
【0095】
また、図9(b)のように、例えば、第2フレーム38と一体であり、第2フレーム38の開口部の一端が折り曲げられて形成された金属片部である外部接続部38cが設けられた構成であってもよい。この外部接続部38cは、折り曲げられて、上記封止絶縁材37を介して、上記第1フレーム35の上面部35b上に配置される。
【0096】
これにより、本実施例における電気二重層キャパシタは、外部接続部35c、38cが同方向に設けられることとなるため、一対の電極を一方の方向から引き出すことができ、外部回路や本実施例の電気二重層キャパシタを複数個用意して蓄電ユニットを構成した場合、バスバー(図示なし)などを用いて行う接続に必要なスペースが省略できるため、蓄電ユニットを構成する上で小型化が可能である。
【実施例5】
【0097】
以下に、図面を用いながら本発明の実施例5および請求項13に記載の発明の説明を行うが、本発明は下記の内容に限定されない。また、上記実施例1と同じ構成要素については実施例1と同じ符号を付与して説明を行う。
【0098】
図10は本実施例における電気二重層キャパシタに用いられる第1フレーム5と正極42が当接する前の様子を示した正面断面図である。
【0099】
本実施例では、図10のように正極42の集電体42aの電極引き出し方向(リード部対向方向)の両端の距離が第1フレーム5の一対の接続部5aの距離より長くしている。
【0100】
この構成により、接続部5aの内面とリード部42cを当接させる時に、本実施例における集電体42aは、リード部42cが収まらないため、接続部5aの内面に圧接されたリード部42cどうしが折曲がって重なり合った状態(スウェージ部42d)で接続部5aの内面と当接する構成となる。
【0101】
この構成により本実施例における電気二重層キャパシタは、リード部3cの端部のみが当接し接合される実施例1と比べ、リード部42cの端部を押圧しながら当接するようにスウェージ部42dを形成することにより、リード部42cの端部付近の集電体42aは重なるように押し倒され、この結果第1フレーム5の接続部5aとリード部42cとの接触面積が大となり、前記スウェージ部42dにおいては集電体42aが密集した(集電体42aどうしの隙間が狭まり密度が大きい)状態となるため、レーザー溶接による集電体42aの溶断の防止や、第1フレーム5の接続部5aに孔が開くことを防止することができ、ものつくりの信頼性を向上させることができるものである。
【0102】
また、リード部42cにおいてより容易にスウェージ部42dを形成するために、予めリード部42c上に屈曲部分(図示なし)、もしくは切り込み(図示なし)などを入れ、第2フレーム8、もしくは第1フレーム5にスライド挿入することにより得てもよいし、もしくは、上記屈曲部分、もしくは切り込みからリード部42cの端までを優先的に折り曲げるなど行ってもよい。
【0103】
なお、リード部42cに上記屈曲部分を形成する方法として、例えば、リード部42cの所望の位置にローラー(図示なし)などを押し当てることにより、リード部42c側の電極層42bの端辺と平行方向に形成する方法などがある。
【0104】
また、リード部42cに上記切り込みを形成する方法として、例えば、リード部42cの端辺を形成するスリット加工と同時にカットローラー(図示なし)などを押し当てることでリード部42c側の電極層42bの端辺に対して平行方向にリード部42c上に形成する方法などがある。
【0105】
なお、本実施例では正極42および接続部5aを用いて説明を行ったが、実施例1における負極3と接続部8aとの間においても同様の構成を用いて、同様にものつくりの信頼性を向上させることができるものである。
【実施例6】
【0106】
以下に、図面を用いて実施例6と請求項14に記載の発明について説明を行うが、以下の内容に限定されない。
【0107】
図11は本実施例における電気二重層キャパシタに用いられる素子51を形成する様子を示した分解斜視図である。
【0108】
図12(a)は本実施例における電気二重層キャパシタに用いられる素子51と第1フレーム55と第2フレーム58の上面断面図であり、図12(b)は実施例1における電気二重層キャパシタに用いられる素子1の上面断面図である。
【0109】
図11、図12(a)のように、本実施例における電気二重層キャパシタは、実施例1において端部が辺により構成された正極2および負極3のリード部2c、3cに対して、接続部55a、58aと当接する端部が円弧状となるようにリード部52c、53cを形成したものである。
【0110】
これにより、接続部5a、8aが平板状だった実施例1に対して、本実施例の接続部55a、58aは正極52および負極53に形成されたリード部52c、53cの形状に即して曲面を形成する構成となる。そして、第1フレーム5および第2フレーム8、ケース9によりブロック体を形成した実施例1に対して、本実施例は、電気二重層キャパシタの側面に該当する第1フレーム55、第2フレーム58の接続部55a、58aの少なくとも一部に曲面が形成された蓄電装置を形成することができる。
【0111】
これは、これら曲面の内表面には接続部55a、58aとしてリード部52c、53cと電気的に接続した接合箇所が形成されている。この接合箇所は、本発明の蓄電装置を使用して充放電した場合、蓄電装置内部で発生した熱が内部から外部へ伝わる際に、熱の伝達経路となる。そして、蓄電装置の外表面の中で特に温度が高くなるこの接合箇所を積極的に冷却して、冷却効率を高めることができるためである。
【0112】
このように接続部55a、58aに曲面が形成された本実施例における電気二重層キャパシタは、複数個並列に配置してユニットを形成し、接続部55a、58aを側面として冷媒を用いて冷却など行う場合、各本実施例の電気二重層キャパシタの並列方向に上記冷媒を流すと、冷媒は各本実施例の電気二重層キャパシタの有する接続部55a、58aの曲面に従って、この曲面の外周を覆うように通過していく。
【0113】
図12(b)において、実施例1などの様にブロック体の電気二重層キャパシタを構成すると、このブロック体の電気二重層キャパシタを複数個並列させてユニットを構成する場合、容積効率を考慮して平面である各接続部5a、8aが対向し、近接するように並列させることが一般的である。このようにブロック体の電気二重層キャパシタによってユニットを構成すると、他の接続部5a、8aと対向していない接続部5a、8aの外表面が、冷媒によって優先的に冷却されることになる。これに対して、本実施例のように素子51との接合箇所が曲面である電気二重層キャパシタは、図12(a)のように、実施例1のようなブロック体の電気二重層キャパシタに比べて、側面が曲面であるため表面積が拡大し、かつ、冷媒が通過するスペースの確保が容易となるため電気二重層キャパシタの冷却性能を高めることができ、これにより、電気二重層キャパシタの信頼性を高めることができる。
【0114】
なお、本発明は電気二重層キャパシタに限定されることはなく、電解質のカチオンとしてリチウムイオンを用い、負極の電極層に含まれる炭素材料にリチウムを吸蔵させ、かつ、正極は電気二重層キャパシタの正極を用いて充放電を行う電気化学キャパシタや、同様に、リチウム二次電池を始めとする夫々の電極層の集電部材として金属部材を主に用いた蓄電池に応用しても上記のような蓄電装置として低抵抗化の実現という格別な効果を奏することができる。
【0115】
以上のように、本発明における蓄電装置は、シート状の正極および負極の間にセパレータを介在させて積層されて外周面の対向する2箇所に形成されて第1の電極から電極を引き出す一対の第1電極引出部と、これらの第1電極引出部と異なる外周面の対向する2箇所に形成されて第2の電極から電極を引き出す一対の第2電極引出部を備えた素子と、この素子の内部に含まれた電解質とを少なくとも備え、前記一対の第1電極引出部に夫々接合された一対の第1接続部を有した第1フレームと、前記一対の第2電極引出部に夫々接合された一対の第2接続部を有した第2フレームとが設けられ、これら第1フレームおよび第2フレームは互いに絶縁され、かつこの第1フレームが前記素子の一部を覆うように配設されて前記第2フレームが前記第1フレームの外表面を覆うように配置され、これら第1、第2フレームが対向したフレーム対向部が形成され、このフレーム対向部において、前記第2フレームに貫通孔が設けられ、この貫通孔から前記第1フレームの一部が表出したことを特徴としている。
【0116】
これにより、素子と蓄電装置内部で素子から電極を取り出す第1、第2フレームとの接触抵抗を低減できると共に、それぞれの電極を引き出した第1、第2フレームを第1フレームの突出部が第2フレームに設けられた貫通孔を介して表出させた構成であるため、正極および負極を引き出した第1、第2フレームを同方向に表出させることができ、外部回路などとの接続が蓄電装置として一方向で行えるため、蓄電装置との接続に要するスペースを抑えることができ、本発明の蓄電装置を用いた蓄電ユニットあるいは電子機器は小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明における蓄電装置は、シート状である各電極の対向する両端からそれぞれの電極を引き出す素子と、このシート状の電極から電極を引き出す一対の接続部を備えた第1のフレームおよび第2のフレームを少なくとも備え、これにより、素子から第1のフレームおよび第2のフレームを用いて電極を引き出す際の接触面積を増やし、低抵抗化が達成されたものである。
【0118】
従って、本発明における蓄電装置は、短時間でより多くの電力を取り出すことを要する電子機器や電気自動車などの移動体での利用が期待される。
【符号の説明】
【0119】
1、51 素子
2、42、52 正極
2a、3a、42a 集電体
2b、3b、42b 電極層
2c、3c、42c、52c、53c リード部
3、53 負極
4 セパレータ
5、35、55 第1フレーム
5a、8a、18a、28a、35a、38a、55a、58a 接続部
5b、8b、18b、28b、35b 上面部
5c、8c、18c、28c、35c、38c 外部接続部
6 絶縁板
6a 通過孔
7 Oリング
8、18、28、38、58 第2フレーム
8d、18d、28d 表出孔
9 ケース
9e、18e、18f、28e、38e 溶接痕
10 接合箇所
18g 切り欠き部
29 底板
37 封止絶縁材
42d スウェージ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の一対の電極の間にセパレータが介在するように積層されると共に外周面の対向する2箇所に形成されて一方の電極を引き出した一対の第1電極引出部と、これらの第1電極引出部を除いた前記外周面の対向する2箇所に形成されて他方の電極を引き出す一対の第2電極引出部を備えた素子と、この素子の内部に含まれた電解質とを少なくとも備え、
前記一対の第1電極引出部に夫々接合された一対の第1接続部を有した第1フレームと、前記一対の第2電極引出部に夫々接合された一対の第2接続部を有した第2フレームとが設けられ、これら第1フレームおよび第2フレームは互いに絶縁され、かつこの第1フレームが前記素子の一部を覆うように配設されて前記第2フレームが前記第1フレームの外表面を覆うように配置され、これら第1、第2フレームが対向したフレーム対向部が形成され、このフレーム対向部において、前記第2フレームに貫通孔が設けられ、この貫通孔から前記第1フレームの一部が表出した蓄電装置。
【請求項2】
シート状の一対の電極の間にセパレータが介在するように積層されると共に外周面の対向する2箇所に形成されて一方の電極を引き出す一対の第1電極引出部と、これらの第1電極引出部を除いた前記外周面の対向する2箇所に形成されて他方の電極を引き出す一対の第2電極引出部を備えた素子と、この素子の内部に含まれた電解質とを少なくとも備え、
前記一対の第1電極引出部に夫々接合された一対の第1接続部を有した第1フレームと、前記一対の第2電極引出部に夫々接合された一対の第2接続部を有した第2フレームとが設けられ、これら第1フレームおよび第2フレームは互いに絶縁され、この第1フレームが前記素子の一部を覆うように配設され、かつ、前記第2フレームが前記素子および前記第1フレームの外表面の一部を覆うように配設され、
前記第2フレームが少なくとも底部と筒部を有すると共に、前記第1フレームと共に前記素子が前記第2フレームに収容され、前記一対の第2接続部が前記第2フレームの筒部の内面に形成された蓄電装置。
【請求項3】
前記第2フレームの貫通孔から表出する前記第1フレームの一部に、前記貫通孔を介して外部へ突出した端子部が設けられた請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記第1、第2フレームがそれぞれ、平面部の両端をそれぞれ折り曲げて対向した一対の接続部が形成されたコの字型の金属材料から成り、この第1フレームの平面部を前記第2フレームの平面部が覆う様に構成され、前記第1、第2フレームの接続部の位置が略90度回転した状態で配置され、前記電解質を含んだ素子と共に前記第1、第2フレームを収容した有底筒状の外装ケースを備えた請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記第2フレームが筒部と底部を少なくとも備え、前記筒部の内面に前記一対の第2電極引出部が形成され、前記底部が前記第1フレームと共に前記フレーム対向部を形成する請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記第2フレームの筒部の開口部に第2フレームを封止する蓋体を設けた請求項5に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記第1フレームに形成された端子部を第1端子部とし、前記第2フレームにおいて前記貫通孔が形成された箇所の外側表面に、前記第1端子部と同方向に突出した第2端子部が形成された請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記第1フレームの一部が表出するように前記第2フレームの開口部を覆う蓋体を備え、前記蓋体が前記第2フレームと同じ材料又は第2フレームより比重が小さい材料により構成された請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記第1フレームが、一対の対向部とこの対向部を繋ぐ中継部から構成されたコの字型の金属部材であり、これら一対の対向部が前記第1接続部である請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項10】
前記第2フレームの開口端部に形成されると共に、前記第2フレームの外側から内側に向かって折り曲げられた端子部が設けられた請求項9に記載の蓄電装置。
【請求項11】
前記素子は複数枚の前記一対の電極がその間に前記セパレータが介在した状態で交互に積層されて構成された請求項1または請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項12】
前記一対の電極が夫々、シート状の金属から成る集電体と、この集電体の表面に形成された電極部から成り、これら一対の電極夫々に備えられた集電体の対向する端辺に前記集電体が表出した一対の集電体表出部が形成され、前記一方の電極に形成された一対の集電体表出部が前記第1電極引出部であり、前記他方の電極に形成された一対の集電体表出部が前記第2電極引出部である請求項1または請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項13】
前記第1、第2フレームに夫々形成された一対の接続部の対向距離が、前記集電体の電極引き出し方向両端の距離より小さい請求項12に記載の蓄電装置。
【請求項14】
前記一対の電極それぞれに形成された集電体表出部の前記接続部と当接する端辺が円弧状である請求項12に記載の蓄電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−60052(P2012−60052A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204151(P2010−204151)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】