説明

薄層被着方法

本発明は、基材と、少なくとも部分的に結晶化した酸化チタンを含有し当該基材の第1の面に被着した少なくとも1つの薄層とを含む材料を得るための方法であって、次の工程、すなわち、前記酸化チタンを含有する少なくとも1つの薄層を被着させる工程、前記酸化チタンを含有する少なくとも1つの薄層を、当該酸化チタンを含有する少なくとも1つの薄層の各箇所を少なくとも300℃の温度に加熱する一方で当該基材の当該第1の面の反対側の面のいずれの箇所も150℃以下の温度に維持することが可能なパワーを供給することによる結晶化処理にかける工程を含み、前記結晶化処理に先立ち、前記酸化チタンを含有する薄層の上及び/又は下に、当該結晶化処理の間に供給されるエネルギーを前記酸化チタンを含有する少なくとも1つの薄層よりも効率的に吸収することができ、及び/又は当該結晶化処理中に追加のパワーを生じさせることができるとともに、当該エネルギーの少なくとも一部を当該結晶化処理の間に当該酸化チタンを含有する少なくとも1つの薄層に移すことができるパワー供給膜を被着させる工程を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機薄膜、特にガラス基材上に被着したもの、の分野に関する。より詳しく言えば、それは、前記薄膜を少なくとも部分的に結晶化するための方法と、この方法を使って得られる特定の製品とに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの薄膜が、基材上に、特に平板ガラス又はわずかに湾曲したガラス製の基材上に被着されており、これは得られた材料に特定の特性、すなわち、光学的特性、例えば所定の波長範囲の放射線についての反射又は吸収特性、特定の電気伝導特性、あるいはクリーニングの容易さ又は材料が自己クリーニング性となる可能性に関連した特性、を与えようとするものである。
【0003】
これらの薄膜は、通常、酸化物や窒化物などの無機化合物、あるいは金属を基礎材料としている。それらの厚さは一般に、数ナノメートルから数百ナノメートルまで様々であり、よってそれらは「薄い」と称される。
【0004】
特に、酸化チタンを基礎材料とする薄膜は、自己クリーニング性であるという特別な特徴があり、有機化合物を紫外線の作用で分解するのと無機の汚染物質(ダスト)を流水の作用により除去するのをより容易にする。
【0005】
これらの膜は、少なくとも部分的に結晶化した状態にあるとき、それらの改善された特性の一部が見えるという特別な特徴がある。一般に、ねらうのは、これらの層の結晶化の度合い(結晶した物質の重量によるか体積による比率)と結晶性粒子の大きさ(又はX線回折法により測定したコヒーレント回折ドメインの大きさ)を最大限にすること、あるいは場合により特定の結晶形態を増進することである。
【0006】
酸化チタンの場合、アナタース型に結晶化した酸化チタンは、アモルファスの酸化チタンあるいはルチル又はブルッカイト型に結晶化した酸化チタンよりも有機化合物の分解の点に関してはるかに有効であることが知られている。
【0007】
薄膜の、特にガラス基材上への、被着のための工業規模で普通に用いられる一つの方法は、マグネトロンスパッタリングと呼ばれる、磁気的に増進されるスパッタリング法である。この方法では、被着させようとする化学元素を含むターゲットに近接して高真空中でプラズマを生じさせる。ターゲットに衝突するプラズマの活性種が当該元素を飛散させ、それが基材上に被着して所望の薄膜を形成する。この方法は、膜がターゲットから飛散した元素とプラズマ中に含まれるガスとの化学反応の結果得られた物質からなる場合、「反応性」であると言われる。例えば、金属チタンターゲット又はTiOx(ここではx<2)製のセラミックターゲットと酸素を基にしたプラズマガスとを使用する反応性マグネトロンスパッタリング法により酸化チタン膜を被着させることが知られている。この方法の利点は、種々のターゲットの下を基材を連続して走らせることによって、同一ラインで非常に複雑な多層被覆を被着する可能性にあり、これは一般に一つの同じ装置で行われる。
【0008】
マグネトロンスパッタリング法を工業規模で実施する場合、基材は周囲温度のままであるか、特に基材の走行速度が速い(これは一般に経済的理由から好ましい)場合には、適度の温度(80℃未満)に昇温される。とは言え、利点であると見えるかもしれないことが、前述の膜の場合には、関連する低温が一般に十分な結晶の成長を可能にはしないので、欠点となる。これは、薄い厚さの薄膜及び/又は融点が非常に高い材料製の膜の場合に最も特に言えることである。従って、この方法により得られる膜は大部分が、又は更には完全に、アモルファスあるいはナノ結晶性(結晶性粒子の平均の大きさが数ナノメートル未満)となり、所望の結晶度又は所望の粒子の大きさを得るために熱処理が必要になることが分かる。
【0009】
可能性のある熱処理は、基材を、被着中にか、又は被着後、マグネトロンラインを出たならば、再加熱するものである。最も一般的には、少なくとも200℃又は300℃の温度が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、工業的なマグネトロンラインでは、基材の加熱(被着中の)は、特に、必然的に本来放射性である真空中での熱移動が、制御が難しくそして幅が数メートルに達する大きな基材の場合非常に費用がかかるので、実施するのが困難であることが分かる。厚さの小さいガラス基材の場合は、この種の処理では破壊する危険が非常に高くなることがよくある。
【0011】
被着後の被覆された基材を、例えば基材を炉又はオーブンに入れて、あるいは基材を例えば赤外線ランプなどの慣用的なヒーターからの赤外線にさらすことによって加熱することにも、これらのいろいろな方法は基材と薄膜を差別なく加熱することになるので、やはり欠点がある。基材を150℃より高い温度に加熱することは、大きな基材(幅が数メートルのもの)の場合、基材の幅全体にわたり同じ温度とすることは不可能なので、破壊の原因となりがちである。基材を加熱することはまた、一般に基材を別の基材の上に重ねて行われるそれらの切断又は保管をすることができるようにする前に、基材を完全に冷却する間待機することが必要なので、プロセス全体を減速する。ガラス中に応力が発生し、そのために破壊の可能性が生じるのを防ぐ目的で、非常に制御された冷却も不可欠である。そのような非常に制御された冷却は非常に費用がかかるので、徐冷処理は一般に、ガラス中の熱応力を除去するのに十分なだけ制御されず、それによりインラインでの破壊の数が増加する。徐冷処理にも、ガラスの切断をより困難にし、直線状に伝播する傾向の低い割れを生じさせるという欠点がある。
【0012】
基材の加熱は、ガラス材を曲げ及び/又は強化する場合に、ガラスをその軟化温度に(一般に600℃より高いあるいは更に700℃より高い温度に数分間)再加熱するために行われる。従って、強化又は曲げ処理は、薄膜を結晶化するという所望の結果を得るのを可能にする。しかし、全てのガラス材を膜の結晶化を促進するというただ一つの目的のためにそのような処理にかけるのは、費用がかかる。更に、強化したガラス材はもはや切断することができず、特定の薄膜多層被覆はガラスの強化中に被る高温に耐えることができない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの問題を解決するために、出願人は、基材の第1の面に被着した酸化チタンを基礎材料とする少なくとも1つの連続薄膜を処理するための方法であって、当該少なくとも1つの薄膜の各箇所を少なくとも300℃の温度に上昇させる一方で、当該基材の当該第1の面の反対側の面のいずれの箇所も150℃を超えない温度に維持して、当該薄膜の結晶化の度合いを上昇させる一方で、当該薄膜を溶融させる工程なしに連続したままにしておくようにすることを特徴とする処理方法を開発した。
【0014】
可能性のある方法の中に、特に、赤外線、プラズマトーチ又は火炎による加熱がある。
【0015】
発明者らは、この方法を完成することによって、酸化チタンを基礎材料とする膜の結晶化特性を改善することがなおも可能であることを明らかにした。
【0016】
この目的のために、本発明が対象とするのは、基材と、当該基材の第1の面に被着した少なくとも1つの少なくとも部分的に結晶性の、酸化チタンを基礎材料とする薄膜とを含む材料を得るための方法であって、次の工程、すなわち、
・前記少なくとも1つの酸化チタンを基礎材料とする薄膜を被着させる工程、
・前記少なくとも1つの酸化チタンを基礎材料とする薄膜を結晶化処理にかけ、当該少なくとも1つの酸化チタンを基礎材料とする薄膜の各箇所を少なくとも300℃の温度に上昇させる一方で当該基材の当該第1の面の反対側の面のいずれの箇所も150℃を超えない温度に維持することが可能なエネルギーを供給する工程、
を含む方法である。本発明による方法では、前記結晶化処理の前に、前記酸化チタンを基礎材料とする薄膜の上及び/又は下にエネルギー供給膜を被着させる被着工程であって、当該エネルギー供給膜が当該結晶化処理の間に供給されるエネルギーを当該少なくとも1つの酸化チタン膜よりも効率的に吸収することができ、及び/又は当該結晶化処理中に追加のエネルギーを生じさせることができるとともに、当該エネルギーの少なくとも一部を当該結晶化処理の間に当該少なくとも1つの酸化チタンを基礎材料とする薄膜に移すことができるものである被着工程が行われる。
【0017】
従って、出願人によって先に開発された方法に対してなされた改善は、エネルギーを吸収又は発生させるのと吸収又は発生したエネルギーを酸化チタン膜へ移す結果として酸化チタンの結晶化を促進する上層及び/又は下層(好ましくは上層)が存在することにある。その結果、酸化チタン膜へ供給される最終的なエネルギーは、単に結晶化処理だけにより供給されるのよりも多くなる。こうして本発明による方法は、結晶化処理の間に供給される同じエネルギーについて、結晶化特性を改善すること、あるいはエネルギー消費がより少ない結晶化処理について、同等の結晶化特性を得ることを可能にする。
【0018】
「膜の箇所」という用語は、所定の瞬間に処理を受けている膜の領域を意味するものと理解される。本発明によれば、膜全体(従って各箇所)を少なくとも300℃の温度に上昇させるが、膜の各箇所は必ずしも同時には処理されない。膜は、その全体を同じ瞬間に処理してもよく、膜の各箇所は同時に少なくとも300℃の温度に昇温される。あるいは、膜の様々な箇所又は複数組の箇所を少なくとも300℃の温度に連続して上昇させるように膜を処理してもよく、この第2の方法は工業規模で連続に実施する場合により多く使用される。
【0019】
「当該基材の第1の面に被着」という表現は、膜を基材上に直接被着させることを意味するとは必ずしも理解されない。そうであってもよいし、あるいは後に説明するように基材と酸化チタンを基礎材料とする膜との間に1以上の下層を挿入してもよい。
【0020】
エネルギー供給膜は、好ましくは、酸化チタンを基礎材料とする薄膜の上に被着させる。この場合、それは上層となる。
【0021】
本発明による方法は、膜に既に存在していて固相中に残存している核の周囲の結晶成長のメカニズムによって薄膜の結晶化を促進する少なからぬエネルギーを提供する。
【0022】
本発明による方法には、基材全体を有意に加熱することなく薄膜(あるいは多層被覆の場合複数の薄膜)のみを加熱するという利点がある。従って、もはやガラスを切断又は保管する前に基材を制御してゆっくりと冷却する必要はない。この方法はまた、加熱用装置を既存の連続生産ラインに、より詳しく言えばマグネトロンラインの真空被着チャンバーの出口とガラスを重ねて保管するための装置との間にある空間に、統合するのを可能にする。場合によっては、本発明による処理を現実の真空被着チャンバー内で行うことも可能である。
【0023】
マグネトロンラインを組み込んで行う工業的実施では、上記の方法は、基材がそれを通り抜け、従ってX方向に直線的な動きをするという意味で、一般的に連続である。従って、薄膜の各箇所は、次の方法のうちの一つ、すなわち、加熱手段を取り付けてX方向に垂直なY方向に沿って線を形成する一組の箇所を同時に処理できるようにするか、あるいは加熱手段がY方向に沿って動けるようにして各箇所を継続して処理することの一つによって処理するのが好ましい。本発明による方法は、水平にあるいは垂直に配置した基材で実施することができる。両面に薄膜を設け、それらの面の一方又は各面の少なくとも1つの膜が本発明により処理される基材で実施してもよい。基材の両方の面に被着した薄膜を本発明により処理する場合には、各面の当該薄膜を同時か、あるいは、特に処理される膜の性質が同じであるかそれとも異なるかに応じて、同一の又は異なる技術により連続して処理することが可能である。従って、本発明による処理を基材の両面で同時に行う場合は、十分本発明の範囲内にある。
【0024】
膜内の温度を上昇させることは必然的に、結果として熱伝導のメカニズムにより膜に一番近い帯域の基材を加熱することになり、従って基材の厚みにおいて大きな熱勾配を生じさせることになるので、基材を加熱することなく膜を加熱することは物理的に可能でない。時として熱衝撃と呼ばれる、このような大きな熱勾配は、平板ガラス産業で普通に用いられるソーダ−石灰−シリカガラスの場合に組織的に破損の原因になることが知られている。異なる温度にさらされるガラスの様々な領域間の熱膨張の差に起因するこれらの破損は、ソーダ−石灰−シリカガラスの場合にそれらの膨張率が極めて大きいので容易に起きやすい。それらはまた、大きな基材(幅が少なくとも1mに達する、あるいは更に2m又は3mにも達する)の場合に、高い温度を大きな基材の場合均一にするのがより困難なため、やはり容易に起きやすい。
【0025】
しかしながら、発明者らは、基材の限られた領域の中程度の制御された加熱のみを必要とする熱処理が、これまでは避けられないと考えられていたこの破損の問題を回避するということを示した。従って、本発明を実施する際には、基材の処理した薄膜を備えた側と反対側の温度を150℃より高くならないようにするのが不可欠である。この特徴は、特に薄膜を加熱し基材を加熱しないようにする加熱の方法を選ぶことにより、及び後により詳しく説明するように、使用する加熱方法に応じて加熱時間もしくは加熱の強さ及び/又はそのほかのパラメータを制御することによって得られる。
【0026】
本発明により使用することができる全ての加熱方法に共通の1つの特徴は、それらが単位面積当たりに極めて大きいパワーを発生するのを可能にするということにあるが、とは言えこれは、薄膜の性質と厚さを含めた多くの因子に依存するので、絶対的に定量化することはできない。単位面積当たりのこの大きなパワーは、薄膜の温度を極めて素早く所望の温度にする(一般に1秒を超えない時間で)のを可能にし、従ってそれに相応して処理の時間を制限するのを可能にし、そのため発生した熱は基材中に拡散する時間がない。薄膜の各箇所は、一般に1秒を超えない、あるいは更には0.5秒を超えない時間、本発明による処理にかけられる(すなわち300℃又はそれより高い温度に昇温される)。それに対して、従来から用いられている赤外線ランプは単位面積当たりのこれらの高レベルのパワーを得るのを可能にしないので、所望の温度に達するために処理時間を長くしなければならず(多くの場合、数秒)、そして基材はその後熱拡散により必然的に高温に昇温される。
【0027】
最も大きな基材(例えば長さ6m、幅3mに達する)の場合に破損の数を最小限にするためには、基材の薄膜を被着させた側と反対側のいずれの箇所においても処理の全体にわたって100℃を超えない、特に50℃を超えない温度を維持するのが好ましい。
【0028】
本発明のもう一つの利点は、上記の方法が薄膜又は薄膜多層被覆を強化作業と同等のものにかけるということにある。特定の薄膜多層被覆は、ガラスを強化する時に改変された光学的特性(測色座標、光透過率又はエネルギー透過率)を有するということになる。従って、本発明による方法は、あたかも強化されたのと実質的に同じ光学的特性を有する未強化のガラス(従って、強化ガラスに特有の応力プロファイルがなく、切断を可能にするもの)を得るのを可能にする。
【0029】
本発明による方法を使用して得られる結晶化の度合いは、好ましくは少なくとも10%、あるいは20%又は50%、特に70%、そして更には90%である。物質の全質量に対する結晶化した物質の質量として定義される結晶化度は、リートベルト法を使用してX線回折により測定することができる。核又は種からの結晶性粒子の成長による結晶化メカニズムのため、結晶化度の上昇は一般に、結晶化粒子の大きさ又はX線回折により測定されるコヒーレント回折ドメインの大きさの増大によってなされる。
【0030】
基材は好ましくは透明で、ガラス製、とりわけソーダ−石灰−シリカガラス製である。基材はまた、無色でも着色されていてもよく、例えば青、緑、ブロンズ又はグレーに着色されていてもよい。それはまた、例えばポリカーボネートやポリメチルメタクリレートなどのプラスチック製でもよい。有利には、それは1m以上、又は2m、そして更には3mのうちの少なくとも1つの寸法を有する。基材の厚さは一般に0.5〜19mmであり、本発明による方法は厚さが4mmを超えない、更には2mmを超えない、薄い基材の場合に特に有利である。
【0031】
基材の酸化チタンを基礎材料とする膜を被着した面と反対の面は、被覆なしでもよく、あるいは1以上の薄膜で被覆してもよい。それは特に、熱的機能を有する、酸化チタンを基礎材料とする1又は複数の膜(特に少なくとも1つの銀膜を含むタイプの、日照制御又は低E膜又は多層)、あるいは光学的機能を有する同様のもの(例えば反射防止膜又は多層)であることができる。
【0032】
酸化チタンを基礎材料とする膜は、好ましくは、酸化チタン製の膜(任意選択的に、金属イオン、例えば遷移金属イオンをドープされた、又は窒素、炭素、フッ素原子などをドープされた)である。
【0033】
この膜の全面は、酸化チタンがその自己クリーニング機能を十分に果たすことができるように外部と接するのが好ましい。とは言え、酸化チタンを基礎材料とする膜を薄い親水性の膜、特にシリカを基礎材料とするもの、で被覆するのが有利なことがある。本発明による方法の利点の1つは、後で説明するように、この薄い膜を結晶化処理後のエネルギー供給膜から生じさせてもよいということである。
【0034】
これらの膜の結晶化を更に改善するために、酸化チタンを基礎材料とする膜の真下に、酸化チタン、特にアナタース型の酸化チタンの結晶成長を促進する効果を有する下層を設けることが可能である。これは特に、国際公開第02/40417号パンフレットに記載されたようなZrO2の下層でもよく、あるいは、例えば国際公開第2005/040058号パンフレットに記載されたようなアナタース型の酸化チタンのヘテロエピタキシャル成長を促進する下層、とりわけBaTiO3又はSrTiO3膜、でもよい。
【0035】
そのほかの下層を、基材と酸化チタンを基礎材料とする膜との間に挿入してもよい。これらは、例えば、アルカリ金属のマイグレーションに対するバリアとして働く膜、特にSiO2、SiOC、アルミナAl23又は窒化ケイ素Si34を基礎材料とする膜、でよい。それらはまた、熱的機能を有する膜又は多層(少なくとも1つの銀膜を含むタイプの日照制御又は低E膜又は多層)、あるいは光学的機能を有する同様のもの(例えば反射防止膜又は多層)でもよい。
【0036】
酸化チタンを基礎材料とする薄膜又はエネルギー供給膜は、任意のタイプの方法、特に、大部分がアモルファスの又はナノ結晶性の膜を生じさせる方法、例えばマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相成長(PECVD)法、真空蒸着法又はゾル−ゲル法など、により得ることができる。とは言え、それは、例えばゾル−ゲル法により得られる「湿潤」膜と対照的に、水性又は有機溶媒を含まない「乾燥」膜であるのが好ましい。
【0037】
酸化チタンを基礎材料とする薄膜及びエネルギー供給膜は、スパッタリング、特にマグネトロンスパッタリングにより被着させるのが好ましい。
【0038】
ゾル−ゲル法により得られる膜の場合は、溶液(ゾル)中の前駆物質を基材上に堆積させ、得られた膜を次いで痕跡量の溶媒を除去するよう乾燥させ徐冷する。この場合には、加熱により提供されるエネルギーが、膜の結晶化特性に必然的に影響を及ぼすことなく、主としてこの溶媒を除去する働きをし、そしてその結果、基材をも加熱することのない十分短い時間で当該特性を向上させるのがより困難になる。
【0039】
エネルギー供給膜は、酸化チタンを基礎材料とする膜と直接接触して、好ましくはその上に、被着させるのが好ましい。このようにして、エネルギー供給膜から酸化チタンを基礎材料とする膜へのエネルギー移動が最適化される。
【0040】
エネルギー供給膜は、300〜3000nmの波長範囲、好ましくは600〜1100nm、特に800〜1100nmの波長範囲に吸収を有するのが好ましい。こうして、この範囲内にある放射線を利用する技術、例えばYAGレーザー、レーザーダイオード、集光装置と組み合わせた赤外線ランプなど、を用いることが可能になる。エネルギー供給膜はこの放射線を吸収して、エネルギーの一部を伝導により酸化チタン膜へ移動させる。エネルギー供給膜がないと、酸化チタンはこの波長範囲に特定の吸収がないので、このタイプの放射線の影響をほとんど受けない。
【0041】
あるいはまた、もしくは更に加えて、エネルギー供給膜は発熱反応、特に燃焼又は酸化反応によって、エネルギーを発することができてもよい。例えば、エネルギー供給膜は結晶化処理の実施下で燃焼して、その結晶化を促進するのに役立つ実質的なエネルギーをすぐ近くに放出し、酸化チタン膜へ移動させることができる。
【0042】
エネルギー供給膜は、結晶化処理中に、少なくとも部分的に又は完全に、気化することができてもよい。燃焼又は酸化反応の場合には、この膜は少なくとも一部がガスに変えられる。
【0043】
エネルギー供給膜はまた、結晶化処理中に、少なくとも部分的に又は完全に、酸化することができ、あるいは可視範囲において少なくとも部分的に透明になることができてもよい。
【0044】
気化し又は酸化するこれらのエネルギー供給膜は、酸化チタンにとって有益なエネルギーを提供するという機能を果たした後にはそれら自体が(それらの最初の形態では)もはや最終材料の一部を形成しないという意味において、犠牲膜と呼ぶことができる。
【0045】
あるいは、エネルギー供給膜、又は結晶化処理中に生じるその反応生成物は、処理後の材料の表面に残存してもよい。この場合には、それを、例えば化学的処理又はクリーニング処理により除去することが必要になろう。
【0046】
種々のタイプの膜が、これらの有利な特性の1つ以上をもたらすことができる。
【0047】
エネルギー供給膜は、例えば金属チタンで製作することができる。金属チタンは、その酸化物が透明である可視及び近赤外波長範囲において吸収する。更に、金属チタンの一部は熱処理中に気化し、ほかの部分は酸化チタンになるよう酸化する。その結果、金属チタン膜は結晶化処理中に消失し、得られた最終生成物はもはや吸収性のあるチタンの上層を含まない。チタン膜は、好ましくは、アルゴン雰囲気中でチタンターゲットを使用するマグネトロンスパッタリングにより被着される。
【0048】
エネルギー供給膜はまた、炭素、特にグラファイト及び/又はダイアモンドタイプの炭素、で製作してもよい。炭素は赤外線を吸収し、そして結晶化処理の実施下で、とりわけそれが火炎又はプラズマトーチを必要とする場合に、炭素は燃焼反応を受ける。この発熱反応によって放出されたエネルギーは、酸化チタンの結晶化を促進するのに役立つ。有利には、グラファイト膜を、アルゴン雰囲気中でグラファイトターゲットを使用するマグネトロンスパッタリングにより被着させる。このほかの考えられる方法としては、イオンビーム被着とプラズマ化学気相成長(PECVD)が挙げられる。
【0049】
エネルギー供給膜はまた、任意選択的にアルミニウムと合金化した、ケイ素で製作してもよい。ケイ素は、可視から近赤外までの波長範囲に強い吸収を有する。結晶化処理の実施下で、とりわけそれが赤外のレーザー光を使用する場合に、ケイ素はやはり酸化して、アルミニウムを任意選択的に含有するシリカ層を生じさせる。この酸化は発熱であり、従ってエネルギーを放出して、その一部が酸化チタンの結晶化を促進するのに役立つ。得られたシリカ層は親水性であり、その厚さが小さい(5nm未満、あるいは更に2nm未満)場合、酸化チタンの光に誘起される親水性を、従ってその自己クリーニング及び汚れ防止特性を、向上させるのに一役買うことができる。ケイ素にはアルミニウムを、特に5〜10wt%の含有量で、ドープしてもよい。アルミニウムが存在することは、実際に膜の化学的安定性を向上させる。更に、アルミニウムはケイ素ターゲットの電気伝導率を上昇させるのに役立つので、スパッタリングによるそのような膜の被着が促進される。
【0050】
エネルギー供給膜はまた、炭化チタン又は炭化ケイ素で製作することもできる。これらの膜は、酸化チタンが透明となる可視及び近赤外範囲で強い吸収を示す。結晶化処理の実施下で、これらの膜は酸化して、それぞれ、上述の利点を有する、酸化チタンになり(従って下にある酸化チタン膜と一体化して追加の厚さをもたらす)、又は酸化ケイ素になる。
【0051】
有利には、エネルギー供給膜は1〜100nm、特に1〜20nmの厚さを有する。
【0052】
より簡単にするために、結晶化処理は空気中及び/又は大気圧で実施するのが好ましい。とは言え、一部の処理は真空との相性がよく、結晶化処理を現実に真空の被着チャンバー内で行うことが有利な場合がある。
【0053】
単位面積当たり非常に大きなパワーを発生するのを可能にする種々の加熱手段を、結晶化処理を実施するために用いることができる。加熱手段の出力や加熱時間などの加熱パラメータを、加熱プロセスの種類、膜厚、処理する基材の大きさと厚さなどといった種々のパラメータに従って、ケースバイケースで適合させる。
【0054】
結晶化処理は、赤外線を使って実施してもよい。基材への熱の供給を最小限にするために、選択する放射線の波長は基材により吸収される赤外線部分の範囲内にないことが好ましい。上述の理由から、放射線は単位面積当たりのパワーが大きいことを特徴とする必要がある。この理由のため、薄膜は赤外線を放射するレーザーを使用して加熱するのが好ましい。得られる単位面積当たりのパワーを高レベルにすることができる集光装置(例えば円柱レンズ)と組み合わせた赤外ランプを基にした装置を使用することもできる。
【0055】
波長が5〜15μmの放射線を放射するレーザー、例えば波長10.6μmの放射線を放射するCO2レーザー、を使用することが可能である。利点は、酸化チタンがこの波長範囲に吸収を有することである。
【0056】
しかし、波長が0.5〜3μmの放射線を放射するレーザーを使用するのが好ましい。従って、好ましくは、例えばチタン、グラファイト形態の炭素、ケイ素(任意選択的にアルミニウムをドープした)、あるいは更に炭化ケイ素又は炭化チタンなどといったような、この波長範囲に強い吸収を有するエネルギー供給膜が選ばれる。波長がおよそ1μmの放射線を連続又はパルスモードで放射する、ネオジムをドープしたYAG(イットリウムアルミニウムガーネット、Y2Al152)レーザーが、とりわけ基材がこの波長範囲で吸収しない場合(これは酸化鉄の重量含有量が0.1%以下の透明ガラスに当てはまる)に、特に適していることが分かった。放射波長がおよそ800nmのダイオードレーザーを用いることも可能である。
【0057】
紫外範囲の放射線を放射するエキシマレーザーを使用することも、そのような放射線を吸収する膜に対しては、可能である。
【0058】
実施をより簡単にするために、本発明の範囲内で使用するレーザーはファイバー導波レーザーでもよく、これはレーザー放射線が光ファイバー中に照射され、その後被処理表面近くに集光ヘッドを介して供給されることを意味する。レーザーは、増幅媒体がそれ自体光ファイバーであるという意味において、ファイバーレーザーであってもよい。
【0059】
レーザーは小さな領域(一般に0.1mm2台から数百mm2まで程度)のみを照射することができるだけであるから、表面全体を処理するためには、基材の平面でレーザー光を移動させるための装置、あるいは基材の幅全体を同時に照射しその下を基材が走行する線としてのレーザー光を形成する装置を用意することが必要である。
【0060】
結晶化処理は、溶射処理技術により、特にプラズマ溶射技術により、実施してもよい。
【0061】
プラズマは、一般に、「プラズマガス」と呼ばれるものを強いDC又はAC電界などで励起して得られる電離したガスである(例えば電気アーク)。この励起の作用を受けて、電子がガスの原子から飛び出し、こうして生じた電荷は反対電荷の電極に向かって移動する。次に、これらの電荷は衝突によりガスのその他の原子を励起し、アバランシェ効果によって均一な又は微小繊維状の放電、あるいはアークを生じさせる。プラズマは、「高温」プラズマ(ガスは完全に電離し、プラズマ温度はほぼ106℃程度である)でもよく、あるいは「熱」プラズマ(ガスはほとんど完全に電離し、プラズマ温度は、例えば電気アークの場合、ほぼ104℃程度である)でもよい。プラズマは、多くの活性種、すなわち、イオン、電子又はフリーラジカルを含めて、物質と相互作用することができる種を含有している。プラズマトーチの場合は、ガスを電気アーク中へ注入し、形成された熱プラズマを被処理基材上へ吹き付ける。プラズマトーチは、粉末形態の前駆物質をプラズマに加えることにより種々の基材上に薄膜を被着するのに広く使用されている。
【0062】
本発明の範囲内において、プラズマトーチは、被覆された基材が走行する方向に対して垂直に位置して基材上を前後に連続して移動するトーチによって表面全体を処理するのを可能にする自動式の移動装置と組み合わせるのが好ましい。
【0063】
注入するガスは、好ましくは窒素、空気又はアルゴンであり、水素の体積容量が5〜50%、特に15〜30%であるのが有利である。
【0064】
結晶化処理は、薄膜に少なくとも1つの火炎を作用させることにより実施してもよい。
【0065】
この火炎処理は、基材の走行方向に対して垂直に位置する火炎処理装置で実施するのが好ましい。火炎処理装置の長さは、被覆した基材の幅と少なくとも等しいのが好ましく、それによれば走行中に処理を実施するのが容易に、すなわち位置換え用の装置を必要とすることなく、可能になる。使用するガスは、酸化剤ガス、特に空気、酸素又はそれらの混合物から選ばれるガスと、可燃性ガス、特に天然ガス、プロパン、ブタン、あるいは更にアセチレンもしくは水素、又はそれらの混合物から選ばれるガスとの混合物でよい。酸化剤ガスとしては、酸素が、特に天然ガス(メタン)又はプロパンと組み合わせたものが、一方においてはより高い温度を得るのを可能にし、その結果処理を短くして基材が過熱されるのを防止することから、そして他方においては窒素酸化物NOxの発生を防止することから、好ましい。薄膜を所望の温度にするためには、一般に、被覆した基材を目視可能な火炎内に、特に火炎の一番高温の領域に配置し、このときその目視可能な火炎の一部は被処理領域の周りに達する。
【0066】
火炎処理は、ポリマー表面の濡れ特性を改善しそれらに塗料を塗布するのをより容易にするようポリマーの表面を処理するのに幅広く使用されている技術である。火炎処理を使用する際、原則は、被処理表面を燃焼により発生するラジカルの作用に、当該表面を高温に上昇させることなくさらすことである。米国特許出願公開第2006/128563号明細書には、酸化チタン膜の表面をそれらの親水性を改善するよう活性化するためにこの技術を使用することが記載されている。そこに記載されている、ポリマー基材で実施されるのと全く同様である処理は、基材を目視可能な火炎の先端を通し、又はそのわずかに下方(数センチメートル下方)を走行させるというものである。しかし、この種の処理は、酸化チタンの表面にヒドロキシル基を生じさせるのを目的としており、酸化チタン薄膜を300℃より高い温度に上昇させるのに適さず、また、目視可能な火炎の先端の温度は十分でないため、酸化チタンの結晶化度を上昇させるのに適さない。
【0067】
火炎処理は、基材の上方で機械的な移動装置を使用するのが望ましくない場合に好ましい。赤外線処理を、マグネトロンラインの真空塗装装置内で使用してもよい。それは、大量のガスを消費しないことが求められる場合にも有利である。
【0068】
様々なタイプのエネルギー供給膜と様々な結晶化法の全ての考えられる組み合わせが可能である。本発明の一つの好ましい実施形態によれば、エネルギー供給膜はチタン製であり、そして結晶化処理は赤外線を用いて、特に0.5〜3μm放射線を放射するレーザー、例えばYAGレーザー又はレーザーダイオードを使って、実施される。別の好ましい実施形態によれば、エネルギー供給膜はグラファイト製であり、結晶化処理は火炎処理である。
【0069】
本発明による方法は、アルカリ金属イオンを含有している基材(例えばソーダ−石灰−シリカタイプのガラス)を高温に上昇させる場合にはそれらのイオンが酸化チタン膜中へ拡散しがちであり、それによりその光触媒特性をかなり低下させ、あるいはなくすこともあるので、特に有利である。この理由から、ヨーロッパ特許出願公開第0850204号明細書に教示されているように、アルカリ金属の移動を防ぐように酸化チタン薄膜と基材との間にバリア層を挿入すること、あるいは、ヨーロッパ特許出願公開第0966409号明細書に教示されているように、膜の少なくとも最も外側の表面が汚染されないように酸化チタン膜の厚さを増加させることが、一般的な方法になっている。本発明による方法の場合は、基材は事実上加熱されず、そのためアルカリ金属の移動は実際上ゼロである。従って、本発明による方法は、酸化チタン薄膜(例えば厚さがおよそ10nm程度の)で直接被覆されたソーダ−石灰−シリカガラス製であって、それにもかかわらず非常に高い光触媒活性を有する基材を得るのを可能にする。
【0070】
以下の限定されない実施例により、本発明を説明する。
【実施例】
【0071】
フロート法により得られ、その後切断して幅3m、長さ6mの大きさにしたソーダ−石灰−シリカガラスの基材を、マグネトロンスパッタリング法による既知の方法でもって、厚さ20nmのシリカ膜で被覆し、次いで厚さ10nmの酸化チタン薄膜で被覆した。
【0072】
比較例C1は、エネルギー供給膜を含んでいない。対照的に、本発明による例には、厚さ5nmのTiの上層を被覆する。このチタン膜は、好ましくは、アルゴン雰囲気中でチタンターゲットを使用するマグネトロンスパッタリングにより被着させる。
【0073】
マグネトロンラインの出口と保管装備との間に、基材の幅に対応する線に沿って、Tiの上層に集光する波長808nmの放射線を放射するダイオードレーザーを含む装置を挿入する。
【0074】
例C2を除く全ての例で、この結晶化処理を行う。処理中のガラス基材の温度は、基材の上記薄膜被覆を設けた側と反対側の高温測定で測定して、50℃を超えない。
【0075】
下記の表1は、処理の前後の膜の光触媒活性を示している。各試験は、チタンの上層の厚さと処理速度により特徴付けられる。膜の加熱に直接関係する処理速度は、m/minで示され、ガラスの長手方向の走行速度に対応している。
【0076】
光触媒活性は、ステアリン酸の分解速度の測定値に対応している。
【0077】
光触媒活性の測定は次のようにして行う。すなわち、
・被覆したガラスを切断して5×5cm2の試験片にし、
・UVを照射し酸素の流れ中で試験片を45分間クリーニングし、
・基準スペクトルを設定するため、4000〜400cm-1の波数についてFTIRにより赤外スペクトルを測定し、
・ステアリン酸を被着させ、すなわち、エタノールに5g/lのステアリン酸を溶解したステアリン酸溶液をスピンコーティングにより試験片上に被着させ、
・FTIRにより赤外スペクトルを測定し、3000〜2700cm-1のCH2−CH3結合について伸縮バンドの面積を測定し、
・UVA放射線に暴露し、すなわち、屋外暴露をシミュレートするため試験片ごとに受け取る約35W/m2のパワーを、315〜400nmの波長範囲内で光電池により制御し、
・30分、続いて30分、そしてその後1時間の連続暴露後のステアリン酸の光分解を、3000〜2700cm-1のCH2−CH3結合について伸縮バンド面積を測定して観測し、
・そして0〜2時間の間の3000〜2700cm-1のCH2−CH3結合についての伸縮バンドの面積を表す直線の傾斜によって、cm-1・min-1で表される光触媒活性を求める。
【0078】
【表1】

【0079】
比較例C1はエネルギー供給膜を含まない。光触媒活性は低いが、ゼロではなく、これは処理中におそらくわずかな結晶化が起きていることを証明している。酸化チタンは使用した波長では透明であり、従ってエネルギーを吸収しないので、結晶化はわずかである。比較例C2は、金属チタン膜で被覆したが、結晶化処理を受けなかった。表面にチタンが存在することは光触媒活性を大きく低下させ、それを測定することができない。本発明による例1〜4は、エネルギー供給膜を使用すると光触媒活性を相当に向上させることができることを示している。この結果は、チタンがレーザー放射線を吸収してこのエネルギーを酸化チタンへ移し、従ってそれが再組織して結晶化することができることに起因している。更に、処理後の光透過率は上層を被着する前のそれとほとんど同程度に高いので、チタンは大体が気化し及び/又は酸化する。レーザー下での走行速度が遅くなると、膜の加熱が多くなるので、光触媒活性がより高くなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、当該基材の第1の面に被着した少なくとも1つの、少なくとも部分的に結晶性の、酸化チタンを基礎材料とする薄膜とを含む材料を得るための方法であって、次の工程、すなわち、
・前記少なくとも1つの酸化チタンを基礎材料とする薄膜を被着させる工程、
・前記少なくとも1つの酸化チタンを基礎材料とする薄膜を結晶化処理にかけ、当該少なくとも1つの酸化チタンを基礎材料とする薄膜の各箇所を少なくとも300℃の温度に上昇させる一方で当該基材の当該第1の面の反対側の面のいずれの箇所も150℃を超えない温度に維持することが可能なエネルギーを供給する工程、
・前記結晶化処理に先立ち、前記酸化チタンを基礎材料とする薄膜の上及び/又は下にエネルギー供給膜を被着させる被着工程であって、当該エネルギー供給膜は当該結晶化処理の間に供給されるエネルギーを当該少なくとも1つの酸化チタン膜よりも効率的に吸収することができ、及び/又は当該結晶化処理中に追加のエネルギーを生じさせることができるとともに、当該エネルギーの少なくとも一部を当該結晶化処理の間に当該少なくとも1つの酸化チタンを基礎材料とする薄膜に移すことができる被着工程、
を含む、基材と薄膜とを含む材料を得るための方法。
【請求項2】
前記基材がガラス製であり、特にソーダ−石灰−シリカガラス製である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記エネルギー供給膜を前記酸化チタンを基礎材料とする薄膜の上に被着させる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記基材の前記薄膜を被着させる面と反対の面のいずれの箇所でも100℃を超えない、特に50℃を超えない温度を維持する、請求項1〜3の一つに記載の方法。
【請求項5】
前記薄膜の各箇所を1秒以下、あるいは0.5秒以下の時間、300℃以上の温度に昇温する、請求項1〜4の一つに記載の方法。
【請求項6】
得られる結晶化の度合いが少なくとも10%、又は20%、特に50%である、請求項1〜5の一つに記載の方法。
【請求項7】
前記基材が、1m以上、又は2mの寸法を少なくとも1つ有する、請求項1〜6の一つに記載の方法。
【請求項8】
前記酸化チタンを基礎材料とする薄膜が酸化チタン製であり、任意選択的に金属イオンをドープされている、請求項1〜7の一つに記載の方法。
【請求項9】
前記酸化チタンを基礎材料とする薄膜と前記エネルギー供給膜をスパッタリングにより被着させる、請求項1〜8の一つに記載の方法。
【請求項10】
前記エネルギー供給膜を前記酸化チタンを基礎材料とする膜と直接接触するように被着させる、請求項1〜9の一つに記載の方法。
【請求項11】
前記エネルギー供給膜が800〜1100nmの波長範囲に吸収を有する、請求項1〜10の一つに記載の方法。
【請求項12】
前記エネルギー供給層が、前記結晶化処理の間、発熱反応により、特に燃焼又は酸化反応により、エネルギーを放出することができる、請求項1〜11の一つに記載の方法。
【請求項13】
前記エネルギー供給層が、前記結晶化処理の間に、少なくとも部分的に、又は完全に、気化することができる、請求項1〜12の一つに記載の方法。
【請求項14】
前記エネルギー供給膜が、前記結晶化処理の間に、少なくとも部分的に又は完全に酸化されることができ、且つ、可視範囲において少なくとも部分的に透明となることができる、請求項1〜13の一つに記載の方法。
【請求項15】
前記エネルギー供給膜が金属チタン製である、請求項1〜14の一つに記載の方法。
【請求項16】
前記エネルギー供給膜が炭素製、特にグラファイト又はダイアモンドタイプの炭素製である、請求項1〜12の一つに記載の方法。
【請求項17】
前記エネルギー供給膜がケイ素製であり、任意選択的にアルミニウムと合金化されている、請求項1〜14の一つに記載の方法。
【請求項18】
前記エネルギー供給膜が炭化チタン又は炭化ケイ素製である、請求項1〜14の一つに記載の方法。
【請求項19】
前記結晶化処理を赤外線を使用して行う、請求項1〜18の一つに記載の方法。
【請求項20】
前記赤外線の少なくとも一部が900〜1100nmの波長範囲内にある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記結晶化処理を溶射技術により、特にプラズマ溶射技術により行う、請求項1〜18の一つに記載の方法。
【請求項22】
前記結晶化処理を、前記薄膜に少なくとも1つの火炎を作用させることにより行う、請求項1〜18の一つに記載の方法。
【請求項23】
アナタース型の少なくとも部分的に結晶化した酸化チタンに基づく薄膜を得る、請求項1〜22の一つに記載の方法。

【公表番号】特表2011−516390(P2011−516390A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503487(P2011−503487)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050658
【国際公開番号】WO2009/136110
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】